(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6591383
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】交流整流子電動機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/14 20060101AFI20191007BHJP
【FI】
H02K1/14 A
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-209156(P2016-209156)
(22)【出願日】2016年10月26日
(65)【公開番号】特開2018-74665(P2018-74665A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2018年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 賢宏
(72)【発明者】
【氏名】湧井 真一
(72)【発明者】
【氏名】菊地 聡
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 繁則
(72)【発明者】
【氏名】金賀 靖
【審査官】
三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−057487(JP,A)
【文献】
特開2014−155315(JP,A)
【文献】
特開2013−013212(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第103986249(CN,A)
【文献】
特開2005−020931(JP,A)
【文献】
特開2014−057486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略環状のヨーク部と、該ヨーク部の内周側に対向するように形成される一対の磁極部と、該磁極部に巻装される界磁コイルと、からなる固定子と、前記磁極部間に回転自在に配置されたシャフトと、該シャフトに固定された電機子鉄心と、該電機子鉄心の外周に形成される複数のティースに巻装される電機子コイルと、該電機子コイルに接続された整流子と、からなる電機子と、前記整流子と機械的に接触することで電気的に接続される一対のブラシとを有した交流整流子電動機であって、
該固定子は中心軸に対称の形状を有しており、該磁極部の中心にスリットが配置され、そのスリットは、該磁極部外周側は中心軸に対し対称の形状であるが、該スリットの増磁側のスリット辺は、該磁極部外周側から中心軸に平行に形成され、途中に中心軸に向かう傾斜辺を形成する1つの頂点Aを有しており、該スリットの減磁側のスリット辺は、該磁極部外周側から中心軸に平行に形成され、途中に中心軸から離れる傾斜辺と、さらに中心軸に向かう傾斜辺と、をそれぞれ形成する2つの頂点を有しており、該磁極部内周側は中心軸に非対称な形状であることを特徴とした交流整流子電動機。
【請求項2】
請求項1に記載の交流整流子電動機であって、
磁極部外周の凹部底辺幅をwmb、磁極部外周側スリット幅をws1、該スリットの減磁側スリット辺の磁極部外周側頂点Bの中心軸からの距離をwB、磁極部内周側頂点Cの中心軸からの距離をwC、磁極部内周側スリット幅をws2、磁極部内周側幅ws2を中
心軸で分割した減磁側の幅をws2a、増磁側の幅をws2bとしたとき、下記の式(1
)、式(2)、式(3)及び式(4)の条件を満足することを特徴とした交流整流子電動機。
ws1=wmb±10%…(1)
wC>wB…(2) ws1>ws2…(3)
ws2a>ws2b>0…(4)
【請求項3】
請求項1に記載の交流整流子電動機であって、該固定子の磁極部スリットは、該磁極部内周側のスリット辺に開口部を有することを特徴とする交流整流子電動機。
【請求項4】
請求項1に記載の交流整流子電動機であって、該固定子の磁極部のスリットを分割する該磁極部外周がわから該磁極部内周側に伸びる径方向の磁気ブリッジを有することを特徴とした交流整流子電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流整流子電動機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気掃除機に使用される交流整流子電動機は、主に、環状の固定子と、この固定子の内側に対向して形成される磁極部間に配置される電機子で構成されている。この種の交流整流子電動機では、常に小形、軽量、高効率化、カーボンブラシの長寿命化が要求されている。その中でも例えば、電気掃除機はごみの吸込力が製品仕様において重要なファクターであり、また近年の省エネの動向も相まって高効率化は大事な成果の一つである。さらに電気掃除機で使用する際は、吸口の塞がり具合によって風量の変化があり、それに伴って交流整流子電動機の回転数が変化する。とりわけ吸口が塞がった状態では風量が小さいため、交流整流子電動機としては軽負荷での運転となり、電動機によっては50000rpm付近まで高速回転する。この高速回転では整流子電動機の寿命を担っているカーボンブラシにおいて、機械的に接触している整流子との摩擦損が増加するため摩耗量が増加するほか、電気的にも整流期間が短くなることで整流悪化となり、整流火花を生じて摩耗量が増加する懸念がある。そのため、高効率かつ高速回転においてもカーボンブラシの長寿命化を達成する交流整流子電動機を提案する必要がある。
【0003】
高効率化とカーボンブラシの長寿命化は、電機子反作用の低減により達成できる。電機子反作用は、回転する電機子が発生させる磁界が固定子の磁極部から発生する磁界に対して影響を与える現象である。これが交流整流子電動機の高効率化、ブラシの長寿命化に対して悪影響を及ぼしている。
【0004】
この電機子反作用を低減するための技術として、電動機に取り付けるカーボンブラシの位置の工夫により、整流子とカーボンブラシの接触による整流性能を調整し、固定子鉄心の磁極部先端の、電機子の回転後進側(増磁側)の鉄心幅を、電機子の回転前進側(減磁側)に対して広くし、或いは磁極部につながるヨーク部は、増磁側のヨーク幅を、減磁側のヨーク幅に対して狭め、さらに固定子鉄心磁極部の減磁側に対して、磁束の流れを妨げないように磁束密度の疎となり得る箇所に貫通穴となるスリットを設ける構造が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−153471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1では、電機子反作用の低減ができるものの、固定子鉄心形状は中心点を通る中心軸から見ると非対称の形状となる。そのため、巻線性や巻線の占積率の確保が問題となる。対策としてヨーク部に固定子鉄心を2分割できるような分割部を設けることなどがあるが、巻線後にヨーク部の組立作業が追加となるため。生産タクトの増加を招く。またそうしない場合には、巻線の占積率が低下し、トルクの低下などを招いてしまう恐れがある。
【0007】
本発明の目的は、固定子鉄心の形状に普遍的に適用でき、その上で電機子反作用を低減し、トルクや整流性能を向上することで、カーボンブラシの長寿命化と高効率化が達成できる交流整流子電動機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本提案は、略環状のヨーク部と、前記ヨーク部の内周側に対向するように形成される一対の磁極部と、前記磁極部に巻装される界磁コイルと、からなる固定子と、前記磁極部間に回転自在に配置されたシャフトと、前記シャフトに固定された電機子鉄心と、前記電機子鉄心の外周に形成される複数のティースに巻装される電機子コイルと、前記電機子コイルに接続された整流子と、からなる電機子と、前記整流子と機械的に接触することで電気的に接続される一対のブラシとを有した交流整流子電動機において、前記固定子は原点を通る中心軸に対称の形状を有しており、前記磁極部の中心にスリットが配置され、前記スリットは、前記磁極部外周側は中心軸に対し対称の形状であるが、前記スリットの増磁側のスリット辺は、前記磁極部外周側から中心軸に平行に形成され、途中に中心軸に向かう傾斜辺を形成する1つの頂点Aを有しており、前記磁極部内周側は、中心軸に非対称な形状で構成される交流整流子電動機によって解決することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電機子反作用を低減し、トルクと整流性能を向上させることで、高効率かつカーボンブラシの長寿命化できる交流整流子電動機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】電気掃除機用電動送風機の構造を示す断面図である。
【
図2】交流整流子電動機の従来の固定子と電機子の断面図である。
【
図3】第1の実施形態の磁極部にスリットを配置した固定子と電機子断面図である。
【
図4】第1の実施形態の磁極部にスリットを配置した固定子の拡大図である。
【
図5a】従来形状での磁束の流れを示す断面図である。
【
図5b】従来形状でのギャップ磁束密度分布図である。
【
図5c】従来形状での出力トルクの解析結果図である。
【
図5d】従来形状での最大負荷時のブラシ後端電圧の解析結果を示す図である。
【
図6a】第1の実施形態での磁束の流れを示す断面図である。
【
図6b】第1の実施形態でのギャップ磁束密度分布図である。
【
図6c】第1の実施形態での出力トルクの解析結果図である。
【
図6d】第1の実施形態での最大負荷時のブラシ後端電圧の解析結果を示す図である。
【
図7】第2の実施形態の磁極部にスリットを配置した固定子の拡大図である。
【
図8】第3の実施形態の磁極部にスリットを配置した固定子の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を、
図1〜
図9を用いて説明する。なお、ここでは電気掃除機に用いられる電動送風機の交流整流子電動機の実施形態として述べるが、この交流整流子電動機は他の用途に用いられても良い。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の電気掃除機用の電動送風機100の構造断面図である。電動送風機100は、電動機(交流整流子電動機)101と送風機102から構成される。
【0013】
電動機101は、ハウジング3の内周側に固定された固定子1、ハウジング3の軸受5aとエンドブラケット4の軸受5bに回転自在に保持されるシャフト6、シャフト6に固定された電機子鉄心21と整流子25、電機子鉄心21はティース23と電機子スロットSを備え、電機子スロットS中に巻装された電機子コイル22が整流子25に接続された電機子2、および、整流子25と機械的接触によって電気的接続を行うカーボンブラシ7と、カーボンブラシ7を保持するとともにハウジング3に固定するためのブラシホルダ8とからなる。
【0014】
また、整流子25は、複数の整流子片25aを有し、各整流子片25aは電機子2内の電機子コイル22と接続されている。カーボンブラシ7は、つる巻バネ81により整流子25に押し付けられ、整流子25に摺接している。カーボンブラシ7と外部電極に電気的接続するためのリード線82があり、ブラシホルダ8に設けられた端子(図示せず)と接続されている。
【0015】
一方、送風機102は、ナット30によりシャフト6の一端に固定される遠心ファン31、遠心ファン31から出た空気流の速度を落とし圧力回復するディフューザ32、ディフューザ32と一体に成形された空気流を電動機101内へ導くリターンガイド33、遠心ファン31とディフューザ32を覆うファンケーシング34によって構成される。
【0016】
電動送風機100を運転すると電機子2が回転し、電機子2と同軸に固定された遠心ファン31も回転する。遠心ファン31が回転するとファンケーシング34の空気吸込口35から空気が流入し、遠心ファン31、ディフューザ32、リターンガイド33を通り電動機101内部へと流れ込む。流れ込んだ空気は、電動機101を冷却しつつ排出される。
【0017】
図2は、電動機101の固定子1と電機子2の断面図を示す。固定子1は、略円環状のヨーク部11とその内周側に対向するように形成される一対の磁極部12とからなる固定子鉄心13を積層したものと、磁極部12に巻装される界磁コイル14とから構成される。また、対向する一対の磁極部12の間に配置される電機子2は、複数のT字型のティース23を有する電機子鉄心21と、ティース23によって形成されている電機子スロットS1〜S12に巻装される電機子コイル22とから構成される。なお、本実施形態では、ティース23の本数を12本とした例を説明するが、ティース23の本数はこれに限られるものではない。
【0018】
図3は第1の実施形態の固定子1と電機子2の断面図である。
図2と同様の部分については説明を省く。磁極部12の中央部近傍と、原点(電機子2の中心の点、かつ/又は固定子1の中心の点)を通る中心軸が通過するように空隙のスリット15を配置する。以下、さらに詳細に説明する。
【0019】
スリット15は、磁極部12の外周側から内周側にかけて大きく設けられ、それぞれ磁気ブリッジ16が形成される。磁気ブリッジは極力細い方が磁気飽和しやすくなり、磁極部12を横断する電機子反作用磁束を遮断する効果を得やすいが、機械的強度が弱くなるため、電動機101の生産組立方法を考慮し、バランスの取れる厚さが良い。本実施形態では、磁気ブリッジ16の厚みは0.3mm〜0.5mmが適度である。ただし、磁気ブリッジa16aと磁気ブリッジb16bは必ずしも同じ厚みに設定する必要はなく、性能と機械的強度のバランスの取れる厚みで良い。
【0020】
次に
図4などを用い、スリット15のスリット辺151〜155について説明する。
【0021】
スリット15の増磁側のスリット辺151、152は、磁極部12の外周側から中心軸に平行に形成される平行辺151と、中心軸に向かう傾斜辺152と、を有する。増磁側のスリット辺で、平行辺151と傾斜辺152との切り替わる点を頂点Aとする。増磁側のスリット辺のうち、傾斜辺152は、頂点Aから角度を変えて形成され、スリット15の磁極部12の内周側まで到達する。これは、まず中心軸に平行に形成される平行辺151により、電機子2へ向かう磁束の流れをアシストさせる。途中、中心軸に向かう傾斜辺152とするのは、電機子2が回転する中でのティース23の位置での磁束の流れの影響を少なくするためである。
【0022】
一方、スリット15の減磁側のスリット辺153,154,155は、磁極部12の外周側から中心軸に平行に形成される平行辺153と、中心軸から離れる傾斜辺154と、中心軸に向かう傾斜辺155と、を有する。減磁側のスリット辺で、平行辺153と傾斜辺154とが切り替わる点を頂点B、傾斜辺154と傾斜辺155とが切り替わる点を頂点Cとする。減磁側のスリット辺のうち、傾斜辺155は、頂点Cから角度を変えて形成され、スリット15の磁極部内周側まで到達する。こちらもまず中心軸に平行に形成される平行辺53により、電機子2へ向かう磁束の流れをアシストさせる。途中に中心軸から離れる傾斜辺154とするのは、磁極部12の先端側へ向かう磁束の流れを作るためである。さらにその途中、中心軸へ向かう傾斜辺155を形成するのは前述のとおり、電機子2が回転する中でのティース23の位置での磁束の流れの影響を少なくするためである。以上のスリット15を設けることにより、第1の実施形態によってトルクと整流性能を向上させることができる。
【0023】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、概略は実施形態1と同じだが、特に効果の得やすいスリット15の形状である。第1の実施形態と同じ点は説明を省略する。
【0024】
図4は磁極部12の拡大図である。スリット15の幅は、磁極部外周側のスリット幅をw
s1とし、磁極部外周の凹部18の底辺幅をw
mbとしたとき、w
s1=w
mb±10%が良い。これにより、効果的な電機子反作用磁束の遮断を得ることと、不要に磁気ブリッジa16aを形成しないこと、磁束密度分布の過疎を必要以上に発生させなくする。
【0025】
ここで、スリット15のスリット辺に注目する。スリット15の増磁側のスリット辺は、磁極部外周側から中心軸に平行に形成され、途中に中心軸に向かう傾斜辺を形成する1つの頂点Aを有する。頂点Aより増磁側のスリット辺は角度を変えて形成され、スリット15の磁極部内周側まで到達する。一方、スリット15の減磁側のスリット辺は、磁極部外周側から中心軸に平行に形成され、途中に中心軸から離れる傾斜辺を形成する1つの頂点Bを有し、さらに頂点Bより形成された傾斜辺の端点を頂点Cとし、頂点Cより中心軸に向かう傾斜辺が形成され、スリット15の磁極部内周側まで到達する。つまり、頂点Bと中心軸の最短距離をw
B、頂点Cと中心軸の最短距離をw
Cとしたとき、w
B<w
Cとする。これは、磁気ブリッジ16の形成に影響されない部分でスリット15を減磁側に配置することで、磁束密度分布が疎になりやすい部分を削除でき、効率的に磁束を電機子2に誘導するためである。
【0026】
以上の増磁側、減磁側の2つのスリット辺で形成されるスリット15の磁極部外周側のスリット幅をw
s1、磁極部内周側のスリット幅をw
s2としたとき、w
s2<w
s1とする。このとき、w
s2は原点を通る中心軸によって2つに分割可能なように配置し、分割されるw
s2の減磁側をw
s2a、増磁側をw
s2bとしたとき、w
s2a>w
s2b>0とする。磁極部内周は、回転運動をするために電機子2との磁束の往来が顕著な部分であり、特に、電機子鉄心21に形成される複数のティース23の形状に影響される。ティース23に効率良く磁束を流すため、w
s2は幅が小さい方が良い。そして、増磁側は磁束密度が高くなりやすいため、磁束の往来が顕著になる磁極部内周側は少しでも磁束密度を緩和し、効果的に磁束を流せる様、スリット15を設けずに鉄心磁路を設ける。一方で、減磁側については磁束密度がある程度低いため、スリット幅w
s2bが設けられる。但し、前述したとおりティース23に磁束が流れなくしては性能が低下してしまうため、適度なw
s2bとする。そのため、ティース幅w
s2はティース23の形状を踏まえた上で適切な選定をすることが望ましい。
【0027】
図5は従来形状での最大負荷時の磁界解析結果である。
図5aは磁束の流れを示した図である。磁極部12で減磁側から増磁側に向かう磁束が見られ、増磁側の磁束密度の偏りと、磁極部近傍部での磁束密度の疎な部分が生じている。
図5bは、ギャップ磁束密度分布、
図5cは出力トルクの解析結果、
図5dはブラシ後端電圧の解析結果をそれぞれ示している。ブラシ後端電圧においては、同一スロット内にある先に整流が開始するコイルを前コイル、後に整流が開始するコイルを後コイルと称し、それぞれの終端の電圧をブラシ後端電圧と称している。このブラシ後端電圧の値を整流火花の生じやすさの指針とし、小さい方が整流火花は出にくいとしている。但し、前述の前コイルと後コイルは電機子2の巻線方式が異数巻線方式に限った称し方である。
【0028】
図6は第1の実施形態での最大負荷時の磁界解析結果である。
図6aは磁束の流れを示した図である。磁極部中央近傍にスリット15を設けたことにより、減磁側から増磁側へ横断していた磁束が抑制されているのがわかる。
図6bはギャップ磁束密度分布図である。実線で示された第1の実施形態の特性は、点線で示された従来の特性に比べ、増磁側の磁束密度が維持された状態で、減磁側で磁束密度が増えているのがわかる。このことからも、第1の実施形態により効率的に磁束を電機子2へ誘導できていることがわかる。
図6cは出力トルクの解析結果である。従来に比べ、平均トルクが3.75%増加していることがわかる。
図6dはブラシ後端電圧の解析結果である。従来に比べ、前コイル側は3.00V低減、後コイル側は2.72V低減している。以上のことにより、第1の実施形態によってトルクと整流性能を向上させることできる。
【0029】
(第3の実施形態)
図7は、実施形態2の磁極部12の拡大図である。第1の実施形態〜3と同じ点は説明を省略する。第1の実施形態で示したスリット15に対し、磁極部内周に開口部17を設けても良い。これにより、磁気ブリッジ16にわずかに流れていた磁束も抑制することができ、更なるトルク、整流性能の向上が見込める。開口部17については、磁極部内周に対向しているスリット15の辺であればどこに配置しても良い。
【0030】
(第4の実施形態)
図8は、実施形態3の磁極部12の拡大図である。第1の実施形態〜3と同じ点は説明を省略する。第1の実施形態で示したスリット15に対し、スリット15が2分割されるように磁気ブリッジ16を径方向に設けても良い。これにより、第1の実施形態と同等の効果を得られながら機械的強度を確保することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 固定子
2 電機子
3 ハウジング
4 エンドブラケット
5 ベアリング
6 シャフト
7 カーボンブラシ
8 ブラシホルダ
11 ヨーク部
12 磁極部
12a 増磁側
12b 減磁側
12c 磁極バック
13 固定子鉄心
14 界磁コイル
15 スリット
16 磁気ブリッジ
17 開口部
18 凹部
21 電機子鉄心
22 電機子コイル
23 ティース
25 整流子
25a 整流子片
S1〜S12 電機子スロット