【文献】
仲前 真人,中村 正博,新規モルタル混和材−再乳化型アクリル粉末樹脂−,土木学会第58回年次学術講演会,日本,土木学会,2003年 9月,V−177,p.353−354
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の路面舗装補修用モルタル組成物は、モルタル組成物と混和液や水との混合比率が規定されており、使用する量に応じて、これらを規定された混合比率となるように計量してから、混錬機器などを用いて混合し、補修部位に施工するする必要があった。このため、従来の路面舗装補修用モルタル組成物は、施工するまでに多くの手順を必要とし、簡便に施工することができないという課題があった。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、簡便な施工方法で施工することが可能な路面舗装補修用モルタル組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る路面舗装補修方法は、粉体1材型の路面舗装補修用モルタル組成物を補修部位に充填する工程と、該路面舗装補修用モルタル組成物が充填された該補修部位に水を散布する工程とを備える路面舗装補修方法であって、
該路面舗装補修用モルタル組成物は、アルミナセメントを含有するセメント又は急結材を含有するセメント、再乳化粉末樹脂、繊維及び骨材を含有し、
該路面舗装補修用モルタル組成物中における該再乳化粉末樹脂の含有量が3〜50質量%であることを特徴とする。
【0008】
本発明の
路面舗装補修方法の路面舗装補修用モルタル組成物によれば、再乳化粉末樹脂を含有し、セメントがアルミナセメントを含有するセメント又は急結材を含有するセメントであるため、モルタル組成物は、加水量に幅があっても短時間でセメント強度(圧縮強度及び曲げ強度。以下、同じ。)を発揮することができる。再乳化粉末樹脂が含有されることによって、適度に保水量が調整されると考えられるためである。このため、
粉体1材型である本発明の路面舗装補修用モルタル組成物は、加水量に幅をもたせることができるため、モルタル組成物を補修部位に充填して水を散布する施工方法、モルタル組成物と水をおよその体積比率で混合して充填する施工方法、などのモルタル組成物と水とを正確に計量しない簡便な施工方法であっても施工することが可能なものである。
また、路面舗装補修用モルタル組成物中における再乳化粉末樹脂の含有量が3〜50質量%であることにより、路面舗装補修材の保水量の調整をすることができ、路面舗装補修体の耐摩耗性やひび割れ抵抗性などの物理的強度を高めることができる。また、上記路面舗装補修用モルタル組成物を使用した路面舗装補修方法によれば、モルタル組成物と水とを計量する必要がなく、且つ、混錬器具による混合を必要とすることなく、簡便にモルタル組成物を路面舗装に施工することができる。
【0009】
ここで、上記路面舗装補修用モルタル組成物において、前記セメントを10〜50質量%、前記再乳化粉末樹脂を3〜50質量%、前記繊維を0.2〜2.0質量%、前記骨材を20〜85質量%含有することが好ましい。
【0010】
これによれば、路面舗装補修用モルタル組成物は、セメント、再乳化粉末樹脂、繊維及び骨材の配合バランスに優れるため、付着力や耐摩耗性などの物性に優れたものとすることができる。
【0011】
また、上記路面舗装補修用モルタル組成物において、前記アルミナセメントが、超速硬セメントである構成とすることができる。これによれば、より短時間でセメント強度を発揮することができ、補修後の路面開放までの時間を短くすることができる。
【0012】
また、上記路面舗装補修用モルタル組成物において、前記セメントがカルシウムアルミネート系急結材を含有する構成とすることができる。これによれば、より短時間でセメント強度を発揮することができ、補修後の路面開放までの時間を短くすることができる。
【0013】
また、上記路面舗装補修用モルタル組成物において、前記繊維の長さが、1〜20mmである構成とすることができる。これによれば、補修後の路面舗装補修用モルタル組成物(路面舗装補修体)のひび割れを抑制することができる。
【0015】
また、上記路面舗装補修方法において、前記補修部位に充填された路面舗装補修用モルタル組成物が硬化した後に、2次散水を行う方法とすることができる。これによれば、硬化した路面舗装補修用モルタル組成物が水中養生されるため、硬化した路面舗装補修用モルタル組成物(路面舗装補修体)のモルタル強度をより高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の路面舗装補修用モルタル組成物によれば、簡便な施工方法で施工することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る路面舗装補修用モルタル組成物の実施形態について説明する。本明細書および特許請求の範囲における各用語の意味は次の通りである。
【0018】
・「%」(配合単位における)は、特に断らない限り、「質量%」を意味する。
【0019】
・「メジアン粒径」は、JIS標準ふるい(JIS Z 8801−1:2006)で求めたメジアン径(d50)を意味する。
【0020】
実施形態の路面舗装補修用モルタル組成物は、自動車又は航空機などが走行する路面、工場内の床などの補修に使用することができる。また、湿潤軟弱地盤の緊急補修、凸凹地盤の平滑化、歩行通路等の雑草の繁茂防止としても使用可能なものである。
【0021】
路面舗装補修用モルタル組成物は、アスファルトやコンクリートなどで舗装された路面を補修する粉体状のモルタル組成物であり、水と混合または水が散布されることによって路面舗装補修材を形成する。路面舗装補修材は、補修部位に施工(充填)され、モルタル組成物中のセメントなどが硬化することによって、路面舗装補修体を形成する。
【0022】
路面舗装補修用モルタル組成物は、セメント、再乳化粉末樹脂、繊維及び骨材を含有する路面舗装補修用モルタル組成物において、セメントがアルミナセメントを含有するセメント又は急結材を含有するセメントであって、荷姿が粉体1材型であることを特徴とするものである。
【0023】
セメントとは、水硬性材料の1つであり、水との水和反応することによって凝結硬化し、路面舗装補修体に定型性とセメント強度とを与えるものである。セメントとして、以下のものを使用することができる。ポルトランドセメント(JIS R 5210:2009)に規定される、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント及び耐硫酸塩ポルトランドセメント、高炉セメント(JIS R 5211:2009)、フライアッシュセメント(JIS R 5213:2009)、エコセメント(JIS R 5214:2009)、アルミナセメント(JIS R 2521:1995)。
【0024】
セメントは、アルミナセメントを含有するセメント、又は、急結材を含有するセメントが、短時間でセメント強度を発揮することができるため、好んで使用することができる。また、アルミナセメントとしては、超速硬セメントが、さらに短時間でセメント強度を発揮することができるため、より好んで使用することができる。超速硬セメントとして、ジェットセメント(住友大阪セメント株式会社製)、スーパージェットセメント(太平洋セメント社製)、スーパーセメント(デンカ株式会社製)などを使用することができる。
【0025】
急結材とは、セメントと混合することによって、水和反応するセメントの凝結硬化を促進し、セメントの硬化を早めるものである。急結材には、一般に、カルシウムアルミネート系急結材、珪酸ガラス系急結材、水溶性高分子化合物系急結材などがあるが、路面舗装補修用モルタル組成物を粉体1材型とすることができるカルシウムアルミネート系急結材を好んで使用することができる。カルシウムアルミネート系急結材として、デンカナトミックUS−32(デンカ株式会社製、以下同じ。)、デンカナトミックUS−50、デンカナトミックTYPE−5、デンカナトミックTYPE−10、などを使用することができる。
【0026】
路面舗装補修用モルタル組成物中におけるセメントの含有量は、10〜50質量%であることが好ましい。路面舗装補修体として高いセメント強度を得ることができるためである。セメントの含有量が10質量%未満の場合には、高いセメント強度を得ることができないおそれがある。一方、50質量%を超えると、モルタル組成物における結合材の量が過多となり不経済となるおそれがある。より好ましくは、15〜40質量%であり、さらに好ましくは、20〜35質量%である。
【0027】
セメントにおけるアルミナセメントの含有割合は、50〜100質量%であることが好ましい。また、セメントにおける急結材の含有割合は、5〜50質量%であることが好ましい。短時間でセメント強度を発揮することができるからである。
【0028】
再乳化粉末樹脂とは、高分子エマルションを噴霧乾燥した粉末樹脂で、水が添加されることによって、再度乳化してエマルション状態になるものをいい、セメント混和用ポリーマーディスパージョン及び再乳化型粉末樹脂(JIS A 6203:2015)に記載された再乳化型粉末樹脂などを使用することができる。再乳化粉末樹脂が含有されることによって、路面舗装補修材は、加水量に幅があっても、再乳化粉末樹脂の表面の保水性によって適度に保水量が調整され、セメント強度を発揮することができると考えられ、路面舗装補修体は、耐摩耗性やひび割れ抵抗性などの物理的強度が高められる。なお、再乳化粉末樹脂は、造膜助剤などの有機溶媒を添加しなくても成膜可能な樹脂である。このため、路面舗装補修用モルタルは、再乳化粉末樹脂の製造上の不可避的成分を除いて、有機溶媒が添加される必要がないため、環境に優しいものである。
【0029】
再乳化粉末樹脂には、その樹脂の組成により、酢ビ/ベオバ系、酢ビ/エチレン系、酢ビ/アクリル系、スチレン/アクリル系、アクリル系、酢ビ共重合体系などの再乳化粉末樹脂があるが、耐水性に優れるアクリル系又はスチレン/アクリル系を好んで使用することができる。酢ビ/エチレン系として、日本合成化学株式会社製の、Mowinyl−Powder DM1645P、Mowinyl−Powder DM1646P、スチレン/アクリル系として、BASFジャパン株式会社製の、Acronal P 5033、Acronal S 734P、Acronal S 735P、アクリル系として、日本合成化学株式会社製の、Mowinyl−Powder LDM7000P、Mowinyl−Powder LDM7100P、AkzoNobel製の、ELOTEX WR8600、などを使用することができる。
【0030】
路面舗装補修用モルタル組成物中における再乳化粉末樹脂の含有量は、3〜50質量%であることが好ましい。路面舗装補修材の保水量の調整をすることができ、路面舗装補修体の耐摩耗性やひび割れ抵抗性などの物理的強度を高めることができるからである。再乳化粉末樹脂の含有量が3質量%未満の場合には、路面舗装補修材の保水量の調整が難しく、路面舗装補修体の高い物理的強度を得ることができないおそれがある。一方、50質量%を超えると、樹脂分が多くなり、これまた、路面舗装補修体の高い物理的強度を得ることができないおそれがある。より好ましくは、再乳化粉末樹脂の含有量は5〜40質量%であり、さらに好ましくは7〜30質量%である。
【0031】
繊維とは、路面舗装補修材における骨材の沈降防止のため、路面舗装補修体における、ひび割れ抵抗性の向上、耐変形性向上のために、路面舗装補修用モルタル組成物に含有されるものである。繊維は、公知の鉱物繊維又は化学繊維を使用することができ、例えば、ガラス繊維、鋼繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、セルロース繊維などを使用することができる。これらの中でも、ガラス繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維が、適度な強度を有しているため、好んで使用することができる。なお、鋼繊維や炭素繊維などの高強度繊維は、路面舗装補修体において、繊維が毛羽立ち平滑性に劣るおそれがある。一方、ポリエチレン繊維やセルロース繊維などの低強度繊維は、路面舗装補修用モルタル組成物の混錬に際して、繊維が絡み付く所謂ファイバーボールを形成し易く作業性に劣るおそれがある。
【0032】
繊維の長さは、1〜20mmであることが好ましい。これによれば路面舗装補修体において、ひび割れ抵抗性の向上、表面美観の向上をすることができるからである。繊維の長さが1mm未満だと、路面舗装補修体にひび割れが生じるおそれがある。一方、20mmを超えると、路面舗装補修用モルタル組成物の混錬に際して、ファイバーボールを形成し易く作業性が劣るおそれがあり、また、路面舗装補修体の繊維が毛羽立ち、表面外観が劣るおそれがある。より好ましくは、2〜15mmであり、さらに好ましくは、3〜10mmである。
【0033】
路面舗装補修用モルタルにおける繊維の含有量は、0.2〜2質量%であることが好ましい。これによれば路面舗装補修体において、ひび割れ抵抗性の向上、表面美観の向上をすることができるからである。繊維の含有量が0.2質量%未満だと、路面舗装補修体にひび割れが生じるおそれがある。一方、2質量%を超えると、路面舗装補修用モルタル組成物の混錬に際して、ファイバーボールを形成し易く作業性が劣るおそれがあり、また、路面舗装補修体の繊維が毛羽立ち、表面外観が劣るおそれがある。より好ましくは、0.3〜1.2質量%である。
【0034】
骨材とは、路面舗装補修用モルタル組成物から形成される路面舗装補修体の強度を高める目的、増量材としての目的、路面舗装補修材としての作業性を調整する目的のために、路面舗装補修用モルタル組成物に加えられるものである。骨材として、砕石、珪砂、寒水石(石灰石粉砕物)、セルベン(衛生陶器粉砕物)、高炉スラグ粉末、フライアッシュなどを使用することができる。これらの中でも、砕石、珪砂、寒水石が、安価で且つ入手容易なため、好んで使用することができる。
【0035】
路面舗装補修用モルタル組成物における骨材の含有量は、20〜85質量%であることが好ましい。路面舗装補修体の強度に優れ、経済的に優れるからである。骨材の含有量が20質量%未満の場合には、高価な結合材等が多くなり不経済となるおそれがある。一方、85質量%を超えると、相対的に結合材等が少なくなり、路面舗装補修体の強度が不十分となるおそれがある。より好ましくは、30〜80質量%であり、さらに好ましくは、40〜70質量%である。
【0036】
骨材の粒子径(メジアン粒径)は、0.5〜10mmが好ましい。路面舗装補修の作業性に優れ、路面舗装補修体の強度に優れるからである。骨材の粒子径が0.5mm未満の場合には、路面舗装補修体の強度が不十分となるおそれがある。一方、10mmを超えると、路面舗装補修の作業性が劣るおそれがある。より好ましくは、1〜7mmである。
【0037】
路面舗装補修用モルタル組成物には、上記した原材料以外にも目的に応じて各種の添加剤を含有することができる。各種の添加剤として、セメントの硬化時間を調整する凝結遅延材又は凝結促進剤、必要な水量を減らす減水剤、モルタルに色を加える着色剤又は顔料、モルタルの空隙を調整する消泡剤又は起泡剤、モルタルの作業性を調整する増粘剤又は粘性調整剤、モルタルの体積変化を調整する乾燥収縮低減剤又は膨張剤、モルタルのドライアウトを防ぐ保湿剤、カビ等の発生を防ぐ防藻・防カビ剤、などを必要に応じて使用することができる。
【0038】
路面舗装補修用モルタル組成物は、セメント、再乳化粉末樹脂、繊維、骨材及び各種の添加剤が計量され、パドルミキサー、ナウターミキサー、リボンミキサー、ヘンシェル式ミキサーなどによって撹拌されて、均一に分散された粉体の組成物となる。路面舗装補修用モルタル組成物は、必要に応じた量の保存袋に小分けされて、粉体1材型の製品となる。
【0039】
このようにして製造された路面舗装補修用モルタル組成物は、水と混合等されることによって路面舗装補修材を形成する。路面舗装補修材は、補修部位に施工(充填)され、モルタル組成物中のセメントなどが硬化することによって、路面舗装補修体を形成する。
【0040】
路面舗装補修用モルタル組成物と水との混合は、ハンドミキサー、モルタルミキサー等を用いて行う。混合方法は、およそ必要量の半分の水をハンドミキサー又はモルタルミキサーの容器に入れ、路面舗装補修用モルタル組成物をままこが生じないように少しずつ撹拌しながら容器に入れ混合し、残りの半分の水を路面舗装補修材の粘度を確認しながら投入する。路面舗装補修用モルタル組成物は、再乳化粉末樹脂を含有し、セメントがアルミナセメントを含有するセメント又は急結材を含有するセメントであるため、加水量に幅があっても短時間でセメント強度を発揮することができる。このため、加水量を正確に計量する必要がなく、軽量の手間を省くことができる。路面舗装補修材の粘度は、流動性とレベリング性を考慮して、30〜150dPasが好ましい。粘度は、加水量を正確に計量しなくても短時間でセメント強度を発揮することができるため、作業者の好みによって任意に設定することができる。
【0041】
路面舗装補修用モルタル組成物と水とが混合された路面舗装補修材は、補修部位にモルタルポンプや左官ゴテによって充填・施工することができる。なお、施工にモルタルポンプを使用する場合には、施工時間を要することを考慮して、路面舗装補修用モルタル組成物に凝結遅延材を必要量配合させることが好ましい。
【0042】
また、路面舗装補修用モルタル組成物を補修部位に充填し、路面舗装補修用モルタル組成物が充填された該補修部位に水を散布する施工構成とすることができる。これによれば、モルタル組成物と水とを計量する必要がなく、且つ、混錬器具による混合を必要とすることなく、モルタル組成物を路面舗装に施工することができる。また、充填する路面舗装補修用モルタル組成物は、粉体状であるため、充填作業が容易であり、締固め作業等も必要としないため、簡便に施工することができる。
【0043】
また、上記路面舗装補修方法において、補修部位に充填された路面舗装補修用モルタル組成物が硬化した後に、2次散水を行う施工方法とすることができる。これによれば、硬化した路面舗装補修用モルタル組成物が水中養生されるため、硬化した路面舗装補修用モルタル組成物の強度をより高めることができる。
【0044】
また、上記路面舗装補修方法において、前記補修部位に充填した直後の路面舗装補修材(湿潤状態)の表面をビニールシートで覆うことができる。これによれば、路面舗装補修材の硬化の際のドライアウトを防ぐことができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、試験例1〜14及び試験例18〜28が実施例であり、試験例15〜17,29が比較例である。路面舗装補修用モルタル組成物の組成等と、評価結果を表1と表2に記載する。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
表中の原材料には略称又は一般名称を用いた。使用した略称等を括弧書きに原材料名を添えて以下に記載する。超速硬セメント(スーパージェットセメント(太平洋セメント社製))、急硬セメント(瞬間急硬セメント(トーヨーマテラン株式会社製))、再乳化粉末樹脂A(ELOTEX WR8600(AkzoNobel製))、再乳化粉末樹脂B(Mowinyl−Powder DM1645P(日本合成化学株式会社製))、繊維A(市販品ポリエステル繊維3mm)、繊維B(ARGファイバー6mm(日本電気硝子工業社製ガラスファイバー))、繊維C(市販品ビニロン繊維15mm)、繊維D(市販品ポリプロピレン繊維20mm)、珪砂(愛知県産天然珪砂5号C(粒子径(メジアン粒径):2mm)(トーヨーマテラン株式会社製))、砕石(砕石7号(粒子径(メジアン粒径):5mm)(内津工業社製))、顔料(市販品酸化鉄黒)。なお、瞬間急硬セメントは、普通ポルトランドセメントと急結材(カルシウムアルミネート系急結材)との混合物である。
【0049】
試験例の路面舗装補修用モルタル組成物の施工は、アスファルト舗装体に直径60cm深さ3.5cmの凹み部分を形成し、試験例の路面舗装補修用モルタル組成物(粉体1材型)を補修部位に充填し、施工面の高さがアスファルト舗装体から1cm程度盛り上がるように左官ごてを使用して表面を均した。その後、市販のジョウロを用いて施工部位に1次散水を行い、触指硬化が確認された後に、まんべんなく2次散水を行い、路面舗装補修体とした。
【0050】
加水量は、1次散水に使用した水量であり、路面舗装補修用モルタル組成物100質量部に対して使用した水量を質量部で表中に記載した。
【0051】
そして、これらの試験例について、施工時間、耐摩耗性、ひび割れ抵抗性、付着性、付着力、擦り減り特性、材料コスト、表面美観を評価した。評価方法を以下に記載する。
【0052】
<施工時間>
施工時間は、試験例の路面舗装補修用モルタル組成物の施工において、路面舗装補修用モルタル組成物を補修部位に充填し、表面を均し、路面舗装補修用モルタル組成物が充填された該補修部位に水を散布するまでの時間を計測して評価した。そして、施工が5分以内で完了するものを○、施工が5分を超え10分以内で完了するものを△、施工が10分を超えるものを×、として評価した。なお、施工は、動力機械を使用せず、30代の一般女性が1人で行った。
【0053】
<耐摩耗性>
耐摩耗性は、路面舗装補修用モルタル組成物を施工し、2時間、1日、7日経過後の路面舗装補修体について、重量1300kgの乗用車を時速20km/hで、片側の前輪及び後輪が積載されるように10回走行し、その変化具合で評価した。そして、変化量が2mm以下であるものを○、2mmを超え5mm以下であるものを△、5mmを超えるものを×、として評価した。
【0054】
<ひび割れ抵抗性>
ひび割れ抵抗性は、上記耐摩耗性を測定した試験体について、ひび割れ(クラック)の発生具合で評価した。そして、目視によるひび割れが確認されないものを○、クラックスケールの測定で幅0.2mm未満のクラックが確認されたものを△、幅0.2mmを超えるクラックが確認されたものを×、として評価した。
【0055】
<付着性能>
付着性能は、上記耐摩耗性を測定した試験体について目視とハンマーを用いた打音試験で評価した。そして、目視による剥がれがなく打音試験でも異常が見られないものを○、目視による剥がれがないものの打音試験では異常が見られたものを△、目視による剥がれが見られたものを×、として評価した。
【0056】
<付着力>
付着力は、健全な既存アスファルトに、路面舗装補修用モルタル組成物を1cmの厚みとなるように施工し、10日間養生したものを試験体とし、建研式接着力試験機を用いて測定した。なお、既存アスファルトは、愛知県春日井市明知町1512番地トーヨーマテラン株式会社内の健全な既存アスファルトを使用した。そして、付着力(MPa)を数値で表した。
【0057】
<擦り減り特性>
擦り減り特性は、路面舗装補修用モルタル組成物を施工し、2時間、1日、7日経過後の路面舗装補修体について、重量1300kgの乗用車の片側の前輪を積載し、ハンドルを左右に1往復させて、擦り減り状況を評価した。そして、擦り減り量が2mm以下であるものを○、2mmを超え5mm以下であるものを△、5mmを超えるものを×、として評価した。
【0058】
<材料コスト>
材料コストは、路面舗装補修用モルタル組成物の原材料コストを相対比較した。そして、性能に対して安価であるものを○、同等価であるものを△、高価であるものを×として評価した。
【0059】
<表面美観>
表面美観は、路面舗装補修用モルタル組成物から施工した路面舗装補修体の表面の美観を評価した。そして、見栄えが良く使用上の問題点がないものを○、施工面が平滑でないなどの問題点があるものを×として評価した。
【0060】
(試験例1〜試験例14)
試験例1〜試験例14は、好ましい範囲となる試験例であり、試験例3がベストモードとなる試験例である。これらは、全ての評価項目において優れた評価が得られた。
【0061】
(試験例15〜試験例17)
試験例15〜17は、繊維を含有しない試験例である。繊維がないため、ひび割れ抵抗性が満たされなかった。
【0062】
(試験例18,試験例19)
試験例18,試験例19は、繊維がやや少ない試験例である。繊維がやや少ないため、ひび割れ抵抗性がやや劣るものであった。
【0063】
(試験例20,試験例21)
試験例20,試験例21は、繊維がやや多い試験例である。繊維がやや多いため、表面美観が満たされなかった。
【0064】
(試験例22)
試験例22は、セメントがやや少ない試験例である。セメントがやや少ないため、耐摩耗性と擦り減り特性とがやや劣るものであった。
【0065】
(試験例23)
試験例23は、試験例22から2次散水を行わなかった試験例である。試験例22と比較して、耐摩耗性とひび割れ抵抗性とがより劣るものであった。
【0066】
(試験例24)
試験例24は、セメントがやや多い試験例である。セメントがやや多いため、強度特性等に問題はなかったが、原材料コストが上昇し、材料コストが満たされなかった。
【0067】
(試験例25)
試験例25は、再乳化粉末樹脂がやや少ない試験例である。再乳化粉末樹脂がやや少ないため、擦り減り特性がやや劣るものであった。
【0068】
(試験例26)
試験例26は、繊維の長さがやや長い繊維Dを使用した試験例である。繊維が毛羽立ち表面美観がやや劣るものであった。
【0069】
(試験例27)
試験例27は、1次散水の加水量がやや少ない試験例である。耐摩耗性と擦り減り特性とがやや劣るものであった。
【0070】
(試験例28)
試験例28は、1次散水の加水量がやや多い試験例である。ひび割れ抵抗性がやや劣るものであった。
【0071】
(試験例29)
試験例29は、セメント系路面舗装補修材の市販品Aを用いた試験例である。市販品Aは、規定された量のモルタル組成物と水などを規定された比率で混合するものであり、簡便に施工できるものではなく、施工時間が劣るものであった(施工時間を要した。)。