【実施例1】
【0021】
以下、本発明の一実施例について図面を用いて詳細に説明する。
【0022】
図1は本実施例のポンプ装置の構成概要を示す。ポンプ装置本体は、制御用コントローラ3、操作コントローラ4、モーター10、モーター10よって回転する羽根車13を覆うケーシング11、ケーシング11の外壁に取り付けられるサーミスタ30、揚水された水を取り込む吸込口1、吸込口1から揚水された水の逆流を防ぐ逆止弁12、取り込んだ水を吐き出す吐出口2、吐出し側の水圧を検知する圧力センサ6、吐き出し側の水量を検知する水量センサ7、使用水量の急変による圧力変化を緩和する圧力タンク5、ポンプ装置への給電を行う電源コード8、ポンプ装置を覆うポンプカバー9を主な構成部品としている。
【0023】
図2はポンプ装置のケーシング11および周辺部の断面図である。羽根車13は内部に放射状に溝が切ってある円盤状の形態であり、モーター10によって高速回転し、ケーシング11内に満たされている清水に過流を発生させることにより吸込口1を経て水を汲み上げつつ、吐出口2へ水を圧送し押し上げる。
【0024】
図3はポンプ装置の操作及び表示手段である操作コントローラ4の図である。操作コントローラ4は、発光素子であるLEDの一種で、記号、数字、アルファベット等を表示することが可能な3桁の7セグメントLED22、ポンプ装置の運転開始及び停止を行う運転/停止スイッチ15、7セグメントLED22に表示させる内容の選択を行う表示切替えスイッチ16、圧力表示が選択された場合に発光する圧力LED18、水量表示が選択された場合に発光する水量LED19、運転圧力の切替えを行う圧力切替スイッチ17、切替え選択された圧力設定毎に発光する圧力設定"高"LED20および圧力設定"標準・低(点滅)"LED21、ポンプ装置の異常停止状態からの復帰を行うリセットスイッチ14から構成される。
【0025】
図4は、ポンプ装置の制御ブロック図を示す。サーミスタ30は温度センサであり、ポンプ装置のケーシング11の温度を検出し、その出力信号は制御部34のA/D変換器へ入力され、デジタルデータに変換された結果は最終的にワンチップマイクロコンピュータ35内のRAMへ格納される。制御部34はあらかじめワンチップマイクロコンピュータ35内のROM内にデータとして設定されている複数の温度閾値データと前記RAMに格納されている変換結果の値を比較することにより、低温、高温等の温度異常の判定を行い、必要に応じて、表示手段へ警告表示させたり、自動的にモーター10を停止あるいは駆動させたりする。圧力センサ6は吐出し側の水圧を検出する手段であり、水量センサ7は同じく吐出し側の流路を流れる水量を検出する手段である。検知結果は電気信号として制御部34へ入力され、前記の温度センサと同様に最終的にワンチップマイクロコンピュータ35内のRAMへ格納される。制御部34は、検知された圧力及び水量の変化に応じて自動的に駆動回路36を介しモーター10の回転数を変化させ、吐出し圧力が一定あるいは所定の圧力となるよう制御する。また、必要に応じて表示手段へ警告表示、検出した圧力値または流量を表示させる。電流センサ31はポンプ装置に流れる電流を検知し、検出結果は電気信号として制御部34へ入力され、制御部34は電流値を監視し、所定の電流値以上となるとポンプ装置を保護する為、モーター10の回転数を抑える。
【0026】
次にホールIC32はモーター10の回転子の位置検出に用いられるが、単位時間当たりの出力信号のエッジをカウントすることにより、速度即ち回転数が得られる。制御部34は最適な回転数となるよう駆動回路36を介し、モーター10を制御する。また、モーター10がセンサレスタイプのモーターであれば、ホールIC32は不要となり、モーターのコイルの逆起電力から回転子の位置を推定し、回転数を推定算出して前記と同様な制御をする。
【0027】
次に操作・表示手段33は、
図2の説明で述べたが、操作コントローラの形態となっており、制御部34からの信号に応じて、表示手段へポンプ装置の状態を表示する。また、操作手段であるスイッチを押すことにより制御部34へ入力される信号レベルは変化し、制御部34はスイッチの状態を検知することが可能である。
【0028】
制御部34は、CPU,ROM,RAM,タイマ,A/D変換器等を内蔵するワンチップマイクロコンピュータ35、モーター10を駆動する駆動回路36、ポンプ装置に流れる電流を検出する電流センサ31、及び周辺回路から構成される。ポンプ装置の制御内容または固定的な閾値データはプログラムデータとして、ワンチップマイクロコンピュータ35のROMへ格納されている。
【0029】
また、EEPROM37はデータを電気的に消去、書き込みが可能なROMであり、ワンチップマイクロコンピュ−タ35は通信インターフェースを介し、操作・表示手段33で設定した情報をデータとして書き込みを行うことで記憶し、または記憶されているデータを読み出すことが可能である。値の変更が可能な閾値データ等はEEPROM37へ記憶される。
【0030】
また、EEPROM37に代表されるデータを電気的に消去かつ書き込みが可能な不揮発性メモリを同一パッケージに内蔵し、通信インターフェースを不要としたタイプのワンチップマイクロコンピュータ35を使用した構成としても良い。
【0031】
次に本実施形態を
図5、
図6を用いて説明する。
図5は、揚水性能低下検知処理の動作を示しており、上段に水量、下段にモーター10の回転数を示している。吐き出し側の任意の使用水量が一定状態であれば、モーター10の回転数も一定とり、図示はしていないが吐き出し側圧力も一定状態となる。ポンプ装置は一般的に、回転数を上げていくと比例的に吐き出し側の圧力及び水量も増加するが、やがてモーター10および羽根車13の性能、配管抵抗の増加等により、増加は望めなくなる。そのため制御上、モーター10の回転数の上限である最高回転数Nmaxを定めている。
【0032】
図5では、例えば吐き出し側の水栓を全開にした場合、最高回転数Nmaxで回転させても圧力は制御目標圧であるPtまで上がらず、回転数一定であるため水量はQ0で一定になる。
【0033】
ここで揚水性能の低下とは、同一の吐き出し側の水栓の開き具合、同一の配管条件、同一の回転数で運転状態にあるとき、本来同一となるべき使用水量Qが減少することとする。原因は、据え付け環境および使用条件が同じで羽根車13等の部品の摩耗が無い場合、キャビテーション現象による気泡の発生が考えられる。本実施形態のポンプ装置は、特にキャビテーション現象により生じた気泡が起因する揚水性能の低下を検知することができる。揚水性能が低下していない場合は、
図5のように回転数を下げると水量も下がることに着目し、回転数をNmaxからN1に一定周期T2秒で繰り返し行うこと特徴としている。
【0034】
また、回転数を下げた場合、騒音、振動、あるいは圧力及び水量の検知結果の変動が想定されるため、減速開始してからT1秒後に水量Q1を検知し、比較判定を行うこと特徴とする。回転数をN1に下げた時の水量検知のタイミングであるT1の決定は、実験を通して変動の少ない安定した水量の検知結果が得られる時間とする。
【0035】
次にT2は、揚水性能低下状態に無い場合は、一定周期T2毎に繰り返し行われる動作であるあるため、短い間隔で頻繁に減速、加速が行われると装置が不安定であるといった印象を与えるため、T2はT1より十分に長い周期とすることを特徴とする。
【0036】
また、
図5は揚水性能の低下が検知されなかった場合を示している。
【0037】
以上により、揚水性能の低下状態を検知する方法を実現している。
【0038】
図6は、
図5の揚水性能低下検知処理にて揚水性能が低下状態にあると判定された場合に切り替えられる揚水性能低下中運転処理の動作を示す。
【0039】
図6(a)は、最高回転数Nmaxの時の水量Q0が、回転数N1の時の水量Q1との比較結果が、Q0≦Q1となり、水量が変化無しあるいは増加した場合であり、回転数を下げても吐き出し側流量は減少しない。続いて回転数をN1からN2に下げ、回転数N2における水量Q2を検知し、Q1との比較を行う。
図6(a)の場合、回転数をN2に下げることで水量がQ1>Q2となり、吐き出し側の水量が減少したこととなるので、N2まで下げられた最高回転数をN1まで上げて一定状態とすることで、吐き出し側の水量Qを最高回転数Nmaxの時の水量Q0より減少させずに、モーター10の回転数をNmax−N1の差分だけ下げて運転を行うこととなる。
【0040】
図6(b)は、
図6(a)と同様に、最高回転数をN1、N2と下げていき、回転数N2における水量Q2を検知し、Q1との比較を行い、結果がQ1≦Q2である為更に回転数をN3まで下げた時、水量がQ2>Q3となり、水量が減少したため、吐き出し側の水量が減少することとなるので、回転数を水量の変化の無かったN2まで上げて一定状態とすることで、吐き出し側の水量Qは最高回転数Nmaxの時の水量Q0より減少させずに、モーター10の回転数をNmax−N2の差分だけ下げて運転を行うこととなる。
【0041】
図6(c)は、
図6(b)と同様に、回転数はN1、N2、N3と下げていき、回転数N3における水量Q2を検知し、Q1との比較を行い、結果がQ1≦Q2である為更に回転数をN3まで下げた時、水量がQ2>Q3となり、水量が減少したため、吐き出し側の水量が減少することとなるので、回転数を水量の変化の無かったN2まで上げて一定状態とすることで、吐き出し側の水量Qは最高回転数Nmaxの時の水量Q0より減少させずに、モーター10の回転数をNmax−N2の差分だけ下げて運転を行うこととなる。
【0042】
以上より、
図6(a)、
図6(b)、
図6(c)に示したように、キャビテーション現象による気泡の発生により、ポンプ装置の揚水能力が低下した状態で運転を継続した場合、吐き出し側の水量を減少させることなくモーター10の回転数を下げて運転することが可能であることから、ポンプ装置の消費電力を低減することが可能となる。
【0043】
なお、
図5における揚水性能低下検知処理の開始条件は、吐き出し側圧力が制御開始圧力であるPs未満かつ吐き出し側水量が制御開始水量Qs以上であることとする。
【0044】
また、
図6における揚水性能低下中運転処理の解除条件は、吐き出し側圧力が制御開始圧力であるPs以上または吐き出し側水量が運転停止水量Qe未満であることとする。
【0045】
次に本制御を実現するためのプログラムデータの概要を
図7、
図8、
図9、
図10を用いて説明する。
【0046】
図7は、ポンプ装置の制御部34に搭載されたワンチップマイクロコンピュータ35のROMに組み込まれているポンプ装置の制御プログラムの概略である。
図8は揚水性能低下検知処理の詳細を示す。
図9は揚水性能低下中運転処理の詳細を示す。
図10はポンプ装置の通常運転処理の概要を示す。
【0047】
まず、
図7のポンプ装置の制御プログラムは、電源が立ち上がるとワンチップマイクロコンピュータ35にリセットがかかり、ROMに記録されているプログラムに従い動作を開始する。以下記号順に説明する。
【0048】
(a1)は、初期化処理であり、マイクロコンピューターのI/Oポート設定、内蔵レジスタ設定、タイマ設定等を行う。また、ここでEEPROM37からポンプ装置の運転に関する様々な設定データの読み出しも行い、読み出したデータは所定のRAMにコピーされる。各種センサからの入力信号の取り込み、出力信号の出力、プログラムを所定の周期で実行させるのに必要なタイマを設定し動作を開始させる。通常はリセット毎に1度だけ行われる。
【0049】
(a2)は表示・設定手段に設けられているスイッチからの入力信号、圧力センサ6、水量センサ7からの入力信号、電流センサ31からの入力信号等を一定周期で検知し、検知結果をそれぞれに用意されたRAMへ格納しているセンシング処理である。
【0050】
(a3)センシング処理を構成する要素であり、圧力センサ6からの入力信号を元に、所定の周期で吐き出し側の圧力を算出し、結果を圧力データとして用意されたRAMへ格納する。
【0051】
(a4)センシング処理を構成する要素であり、水量センサ7からの入力信号を元に、所定の周期で吐き出し側の水量を算出し、結果を水量データとして用意されたRAMへ格納する。
【0052】
(a5)ポンプ運転動作制御処理であり、揚水性能低下検知処理及び揚水性能低下中運転処理と、通常運転処理で構成される。
【0053】
(a6)揚水性能低下検知処理及び揚水性能低下中運転処理であり、検知圧力、検知水量、モーター10の回転数が検知開始条件を満たしていれば、モーター10の回転数を下げて水量の変化を確認し、揚水性能の低下を検知する。ここで、揚水性能の低下が検知された場合は、揚水性能低下中運転処理として
図9に示す処理が実行される。詳細は後述する
図8、
図9の説明による。
【0054】
(a7)揚水性能が低下していない場合の、ポンプ装置の通常運転処理であり、センシング処理によって検知された各種センサの検知結果を元に、吐き出し側の圧力が設定されている圧力となるよう、モーターを加減速する処理が行われる。概略を
図10に記載する。
【0055】
(a5)は表示処理であり、操作・表示手段33に設けられた7セグメントLED22またはLEDを介し、それらを消灯または点灯させることにより、ポンプ装置の状態、圧力または水量等の検知結果の表示等を表現する為の出力信号データを生成する。
【0056】
図7において、(a2),(a3),(a4),(a5),(a6),(a7),(a8)は一定の周期を持って繰返し行われる処理である。
【0057】
次に、
図8の揚水性能低下検知処理の流れ図を説明する。
【0058】
(b1)既に揚水性能が低下中か否かを(b14)でセットされるフラグを参照して判定する。揚水性能低下中であれば(b10)へ、低下中でなければ(b2)へ移行する。
【0059】
(b2)揚水性能の低下を検知するために、通常運転時の最高回転数をNmaxからN1に下げる処理が実施済みか否かを、(b7)でセットされるフラグを参照して判定する。最高回転数をN1に変更済であれば、(b11)へ移行する。未変更であれば(b3)へ移行する。
【0060】
(b3)揚水性能低下検知処理を開始する条件を満たしているか否かを判定する。前記条件とは、現在の検知圧力Pxが、運転制御の目標圧であるPt未満かつ制御開始圧力Ps以上であることと、現在の検知水量Qxが、制御開始水量Qs以上であることと、モーターの最高回転数がNmaxであることである。これらの条件が成立していれば(b5)へ、成立していなければ(b4)へ移行する。
【0061】
(b4)T2タイマは揚水性能低下検知処理の開始条件が継続している時間を計測するタイマであり、(b3)で前記検知処理の開始条件が否定されたためクリアされ処理終了する。
【0062】
(b5)揚水性能低下検知処理の開始条件の継続時間がT2秒経過したか否かを、タイマT2を参照して判定する。T2秒経過していなければ処理終了する。経過すれば(b6)へ移行する。
【0063】
(b6)最高回転数Nmaxで回転中の検知水量Q0を所定のRAMへ格納し(b7)へ移行する。
【0064】
(b7)揚水性能低下の検知を目的とした最高回転数のNmaxからN1への引き下げを示す検知中フラグをセットし(b8)へ移行する。
【0065】
(b8)通常運転時は、最高回転数としてRAMにコピーされているNmaxのデータをN1に更新し(b9)へ移行する。更新された最高回転数のRAMは、後述する通常運転動作において、圧力差に応じて算出される回転数と最高回転数との比較判定に使用され、最高回転数を超えないように制御される。
【0066】
(b9)T1タイマをスタートし処理終了する。T1タイマは、最高回転数がN1で回転中の水量Q1を取り込むタイミングを決定している。このとき、最高回転数NmaxからN1に下げるときは、所定の減速レート(rpm/秒)にて回転数を下げるため、ある程度の時間を要する。よって、T1タイマの周期は、N1まで減速に要する時間はもちろん、減速による圧力及び水量の変動が安定するまでの時間とする。
(b10)性能低下中フラグがセットされている場合の処理であり、ポンプ装置は揚水性能低下中の運転制御を行う。詳細は後述する
図9で説明する。
【0067】
(b11)T1タイマのタイムアップ判定を行う。T1秒経過していなければ処理終了する。経過していれば(b12)へ移行する。
(b12)モーター10が回転数N1一定状態で回転している時の吐き出し側水量Q1をRAMへ保存し、(b13)へ移行する。
【0068】
(b13)(b6)でRAMへ保存された回転数Nmaxにおける水量Q0と、(b12)で保存された水量Q1を比較する。Q0≦Q1の判定式が真(Y)の場合は、水量に変化無しとして(b14)へ移行する。偽(N)の場合は水量が減少したと判断し(b17)へ移行する。
【0069】
(b14)回転数をNmaxからN1に下げても、吐き出し側水量が低下していないことから、キャビテーション現象による気泡の発生によって揚水性能が低下していると判断し、性能低下中フラグをセットし(b15)へ移行する。
(b15)最高回転数のデータとしてRAMにコピーされているN1のデータをN2に更新し(b16)へ移行する。
【0070】
(b16)T1タイマをスタートし処理終了する。T1タイマは、最高回転数がN2で回転中の水量Q2を取り込むタイミングを決定している。Q2の取り込み処理は、後述する
図9の揚水性能低下中処理で行われる。
【0071】
(b17)(b13)の判定により、回転数を下げると水量も下がることから、揚水性能は低下していないと判断し、(b7)でセットされた検知中フラグをクリアし(b18)へ移行する。
【0072】
(b18)最高回転数のデータを通常の値であるNmaxに更新する。また、図では省略しているが、再び最高回転数をNmaxからN1に下げるタイミングである周期時間T2を得るために、タイマT2をリセットし処理終了する。
【0073】
以上より、本実施例における処理内容は、吐き出し側に取り付けられた水栓等が開かれ一定量の流水の使用が想定される環境下でポンプ装置が運転中であり、検知される圧力Pが制御目標圧Pt未満かつ検知開始圧力Ps以上、検知される水量Qxが制御開始水量Qs以上、モーター10の回転数が最高回転数であるNmaxでの状態が所定時間T2継続した場合、最高回転数をN1まで下げて水量の変化を確認することにより、揚水性能が低下しているか判断することを特徴としている。揚水性能が低下していない場合はモーター10の回転数はN1から本来の最高回転数であるNmaxへ上げられ、これら一連の動作は
図5に示したように一定周期であるT2秒毎に検知開始条件が成立している間は繰り返されることとなる。ここで、回転数NmaxとN1の差は、揚水性能が低下していない状態であれば確実に流量が変化する回転数であることを特徴とする。
【0074】
また、上記繰り返し動作の周期でもあるT2の時間は短いほど、回転数変動による、騒音、振動等の発生あるいは装置が不安定であるかのような印象を与える恐れがあるため、数十秒から数分の間に設定することとする。
【0075】
次に、
図9は
図8(b10)からの分岐先であり、揚水性能低下中運転処理の流れ図を説明する。
【0076】
(c1)後述する(c9)にて、揚水性能低下中における最高回転数が決定した場合にセットされるフラグを参照し、セットされていれば(c10)へ移行する。セットされていなければ(c2)へ移行する。
【0077】
(c2)現在の最高回転数が
図8(b15)で設定されたN2であるか判定する。N2であれば(c3)へ移行する。それ以外は(c11)へ移行する。
【0078】
(c3)
図8(b16)でスタートしたT1タイマを参照し、T1秒経過したか判定する。T1秒経過していなければ処理終了し、経過していれば(c4)へ移行する。
【0079】
(c4)ここでは、最高回転数をN2に変更しT1秒経過しているため、回転数変化による及び吐き出し側圧力、水量の変動が少ない精度の高い水量を検知可能であり、であり、現在の検知水量QxをQ2としてRAMへ保存し、(c5)へ移行する。
【0080】
(c5)最高回転数N1における水量Q1と、最高回転数N2における水量Q2を比較する。回転数の関係はN1>N2であり、Q1≦ Q2が真(Y)の場合は、回転数を下げても水量は減少していないので、更に回転数を下げるために(c6)へ移行する。Q1≦ Q2が偽(N)の場合は、水量が減少したことになるので、最高回転数を水量の減少が見られなかった回転数まで上げるために(c8)へ移行する。
【0081】
(c6)最高回転数を現在のN2からN3に更新し(c7)へ移行する。回転数の関係はN2>N3である。
【0082】
(c7)T1タイマをスタートし処理終了する。この処理は
図8(b9)、(b16)と同じであり、減速による圧力及び水量の変動が次回検知する水量に影響しない時間とする。
(c8)最高回転数を現在の回転数であるN2から
図8(b13)の判定で水量の減少が見られなかった回転数N1に更新し、(c9)へ移行する。
【0083】
(c9)回転数確定フラグをセットし処理終了する。最高回転数は、初期値でもある本来の値(Nmax)より低い回転数のN1、N2、N3いずれかに更新された値となっており以降の運転は、ポンプ装置の停止条件を満たすまで更新された最高回転数で行われることとなる。
【0084】
(c10)
図10にて示されるポンプ装置の通常運転処理が行われる。
【0085】
(c11)最高回転数がN3に更新されて、T1秒経過したか否かを判定する。T1秒経過していなければ処理終了し、T1秒経過で(c12)へ移行する。
【0086】
(c12)最高回転数がN3で回転中の、現在の検知水量QxをQ3としてRAMへ保存し、(13)へ移行する。
【0087】
(c13)最高回転数N2における水量Q2と、最高回転数N3における水量Q3を比較する。回転数の関係はN2>N3であり、Q2≦ Q3が真(Y)の場合は、回転数を下げても水量は減少していないので更に回転数を下げることも可能であるが、最高回転数N3は制御上の加減回転数でもあるため、減速は行わず(c9)へ移行する。以降、最高回転数はN3で回り続けることとなる。一方、Q2≦ Q3が偽(N)の場合は、水量が減少したことになるので、最高回転数を水量の減少が見られなかった回転数N2まで上げるために(c14)へ移行する。
【0088】
(c14)最高回転数を現在の回転数であるN3から(c5)の判定で水量の減少が見られなかった回転数N2に更新し、(c9)へ移行する。以降、最高回転数はN2で回り続けることとなる。
次に、
図10はポンプ装置の通常運転処理の内容を示す。 (d1)ΔPとは圧力偏差であり、制御目標圧であるPtと現在の検知圧力Pxとの差を算出し、(d2)へ移行する。
【0089】
(d2)圧力偏差ΔPに応じたモーター10の回転数操作量を算出し、(d3)へ移行する。
【0090】
(d3)現在の回転数に対し回転数操作量を加算してモーター10の目標回転数である回転数指令値Ntを算出して(d4)へ移行する。
(d4)(d3)で算出された回転数指令値Ntと、データとして定められている所定の最高回転数Nmaxと比較を行う。
ここで、Nt≧Nmaxであれば(d5)へ移行する。Nt<Nmaxであれば(d6)へ移行する。
(d5)最高回転数Nmaxは運転制御上の上限値であるため、圧力偏差によって算出された回転数指令値Ntが定められた最高回転数Nmax以上である場合は回転数指令値NtをNmaxと同値にして(d6)へ移行する。一般的に、ポンプ装置においては、回転数と吐き出し側圧力が比例関係にある領域で運転されるため、回転数には制御上の上限の回転数が設けられる。
(d6)モーター10の回転数が回転数指令値Ntとなるようにモーター10の回転数を所定の加速レートあるいは減速レートで増減する。
【0091】
以上の処理により、ポンプ装置は吐き出し側圧力が制御目標圧であるPt以上となるまでは回転数は上がり続けようとするが、圧力が上がらない場合は所定の最高回転数Nmax一定で運転される。
【0092】
以上より、本実施例における処理内容は、最高回転数Nmaxはプログラム上に固定データとして記述されているが、これをRAMへコピーし、プログラム実行中はコピーされたRAMの内容を参照することとする。これにより最高回転数のデータを必要に応じて自在に更新することが可能である。最高回転数を所定の値であるNmaxからNmaxより低い所定の回転数N1に切替え、それぞれの回転中に検知された水量を比較することで、ポンプ装置が揚水性能低下状態にあることを検知可能であり、更に回転数をN1から下げて運転する。
【0093】
また,本事例では所定のデータである最高回転数Nmaxとは別に、揚水性能の低下を検知及び揚水性能低下状態におけるNmaxより低い回転数で運転を行うために、3種類のデータを使用している。データは、N1,N2,N3(Nmax>N1>N2>N3)と定義し、プログラムデータとして保有し、段階的に最高回転数の保存先のRAMを前記データに更新することで回転数を下げ、それぞれの回転数における水量の検知結果を保存し、前段の回転数における水量との比較判定を行い、水量の変化が無ければ更に回転数を下げて比較判定を行う。回転数を下限値であるN3まで下げても水量Qが減少しなければ、以降の運転における最高回転数はN3となる。
【0094】
一方、回転数を下げて水量が減少した場合は、水量の変化が無かった前段の判定時の回転数まで加速して以降の運転はその回転数を最高回転数として行われる。
【0095】
また、回転数を変える前の水量と変えた後の水量を比較するタイミングである揚水性能低下検知処理の周期T1,T2を、数値データとしてプログラムに記述し、ワンチップマイクロコンピュータ35に内蔵するタイマを制御することで一定の検知周期であるT1,T2を容易に生成可能である。
【0096】
また、揚水性能が低下していると判定されセットされたフラグにより、本来の定められた最高回転数Nmaxより低い回転数N1,N2,N3のいずれかで運転中において、吐き出し側の水栓操作等により、所定の範囲外となる水量あるいは圧力が検知された場合は、直ちにセットされたフラグをクリアし、最高回転数の保存先のRAMの内容を本来の定められた最高回転数Nmaxに戻すことで、揚水性能低下中運転処理から通常運転に戻る。
【0097】
また、
図9の(c9)でセットされる回転数確定フラグにより、ポンプ装置は揚水性能の低下が検知され、Nmaxより低い回転数N1、N2,N3のいずれかで運転されることとなるので、
図7の(a8)の表示処理にて、回転数確定フラグを参照し、フラグがセットされている間は、通常時は検知圧力あるいは検知水量等の数字データである7セグメントLED22に、その表示用データを例えばアルファベット等の文字データに置き換えることにより表示を更新し、ポンプ装置の運転状態を外部から視認可能とする。