特許第6591397号(P6591397)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6591397
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】不織布研磨物品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24D 11/00 20060101AFI20191007BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
   B24D11/00 D
   B24D3/00 340
【請求項の数】3
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2016-505499(P2016-505499)
(86)(22)【出願日】2014年3月19日
(65)【公表番号】特表2016-514627(P2016-514627A)
(43)【公表日】2016年5月23日
(86)【国際出願番号】US2014031248
(87)【国際公開番号】WO2014160578
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2017年3月3日
(31)【優先権主張番号】61/806,630
(32)【優先日】2013年3月29日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ウー, エドワード ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】フェドロヴァ, ナタリヤ ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】マーティネズ, ジェイミー エー.
(72)【発明者】
【氏名】バーム, スコット エー.
【審査官】 小川 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−219391(JP,A)
【文献】 特表2002−513685(JP,A)
【文献】 特開平03−043158(JP,A)
【文献】 特表2004−525714(JP,A)
【文献】 特開2001−334473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 11/00
B24D 3/00
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布研磨物品であって、
作用面を有する不織布研磨部材であり、
互いに結合された繊維を含む嵩高な開放型の繊維ウェブと、
バインダ材により前記繊維に接着された研磨粒子であり、前記不織布研磨部材の前記作用面が、本明細書に記述される摩擦試験により少なくとも0.54の動摩擦係数を有する、研磨粒子と、を含む、不織布研磨部材と、
前記作用面に隣接する前記バインダ材及び研磨粒子の少なくとも一部分に配置された被覆層組成物であり、これによって前記不織布研磨物品を形成し、前記被覆層組成物が、脂肪酸金属塩を含む、被覆層組成物と、
を含む、不織布研磨物品。
【請求項2】
研磨物品の製造方法であって、順次、
作用面を有する不織布研磨部材を用意する工程であり、前記不織布研磨部材が、
互いに結合された繊維を含む嵩高な開放型の繊維ウェブと、
バインダ材により前記繊維に接着された研磨粒子であり、前記不織布研磨部材の前記作用面が、本明細書に記述される摩擦試験により少なくとも0.54の動摩擦係数を有する、研磨粒子と、を含む、工程と、
前記作用面に隣接する前記バインダ材及び前記研磨粒子の少なくとも一部分に被覆層組成物を配置する工程であり、これによって前記不織布研磨物品を形成し、前記被覆層組成物が、脂肪酸金属塩を含む、工程と、
を含む、方法。
【請求項3】
研磨物品の製造方法であって、
a)作用面を有する不織布研磨部材を用意する工程であり、前記不織布研磨部材が、
互いに結合された繊維を含む嵩高な開放型の繊維ウェブと、
バインダ材により前記繊維の少なくとも一部分に接着された研磨粒子であり、前記研磨粒子の少なくとも一部分が、前記バインダ材中に少なくとも部分的に埋め込まれている、研磨粒子と、を含む、工程と、
b)前記作用面に隣接する前記バインダ材の一部分をプラズマエッチングして、前記バインダ材中にあらかじめ埋め込まれた前記研磨粒子の一部を露出させることにより、プラズマエッチングされた不織布研磨部材を用意する工程と、
c)前記プラズマエッチングされた前記不織布研磨部材の前記作用面の少なくとも一部分に被覆層組成物を配置する工程であり、前記被覆層組成物が、脂肪酸金属塩を含む、工程と、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広義には、不織布研磨物品及びこれを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
隣接する繊維の間の接触点で接着された3次元繊維ウェブを含む不織布研磨物品は、様々な表面の任意のものの上での、クリーニング、研磨、仕上げ及びポリッシング用として、研磨物品のメーカーで広く使用されている。不織布ウェブに加え、不織布研磨物品は一般に、研磨粒子と、バインダ材(通常、「バインダ」と呼ばれる)とを有し、このバインダ材は、不織布ウェブ内の繊維を互いに接着させ、研磨粒子を不織布ウェブに固定する。
【0003】
不織布研磨物品の一般的なタイプの1つには、嵩高な開放型の繊維ウェブが含まれる。そのような不織布研磨物品の例は、米国特許第2,958,593号(Hooverら)に記述されている。市販されている不織布研磨物品の例としては、3M Company(Saint Paul、Minnesota)から商品名「SCOTCH−BRITE」として販売されているもののような、不織布研磨ハンドパッドが挙げられる。
【0004】
不織布研磨物品の他の例としては、回旋状砥石車及び一体型砥石車が挙げられる。不織布砥石車は、典型的には、不織布ウェブの層同士を接着させ、同様に研磨粒子を不織布ウェブに接着させるバインダにより共に接着した不織布ウェブの層を通じて分布する研磨粒子を有する。一体型砥石車は、中空の軸芯を有する円筒を形成するような様式で平行に配置された不織布ウェブの個々のディスクを有する。あるいは、回旋状砥石車は、芯部材を中心にらせん状に巻かれて芯部材に貼着された不織布ウェブを有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
不織布研磨物品の構成体がどのような形であれ、その研磨性能は一般に、使用するにつれて経時的に低下する。不織布研磨物品の有用な研磨寿命を延ばす方法について、継続的なニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ステアリン酸金属塩を含む被覆層組成物を、バインダ材中に深くは浸漬していない研磨粒子を有する不織布研磨物品に適用することによって、研磨性能を改善し、また一方で、深く浸漬している研磨粒子の場合には、同じ被覆層組成物の添加によって研磨性能の低下が生じることを見出した。
【0007】
一態様において、本開示は、
a)作用面を有する不織布研磨部材であり、
互いに結合された繊維を含む嵩高な開放型の繊維ウェブと、
バインダ材によりこの繊維の少なくとも一部分に接着された研磨粒子であり、この研磨粒子の少なくとも一部分が、不織布研磨部材の作用面に隣接する繊維に沿って、研磨粒子の視認可能な外側層を形成し、この視認可能な外側層にある研磨粒子が、ぎっしり詰まっており、個数ベースで少なくとも80パーセントの、この視認可能な外側層にある研磨粒子が、識別可能な外形を有する、研磨粒子と、を含む、不織布研磨部材と、
b)研磨粒子の視認可能な外側層の少なくとも一部分に配置された被覆層組成物であり、これによって不織布研磨物品を形成し、この被覆層組成物が、脂肪酸金属塩を含む、被覆層組成物と、
を含む、不織布研磨物品を提供する。
【0008】
別の態様において、本開示は、研磨物品の製造方法を提供し、この方法は、順次、
a)作用面を有する不織布研磨部材を用意する工程であり、この不織布研磨部材が、
互いに結合された繊維を含む嵩高な開放型の繊維ウェブと、
バインダ材によりこの繊維の少なくとも一部分に接着された研磨粒子であり、この研磨粒子の少なくとも一部分が、不織布研磨部材の作用面に隣接する繊維に沿って、研磨粒子の視認可能な外側層を形成し、この視認可能な外側層にある研磨粒子が、ぎっしり詰まっており、個数ベースで少なくとも80パーセントの、この視認可能な外側層にある研磨粒子が、識別可能な外形を有する、研磨粒子と、を含む、工程と、
b)研磨粒子の視認可能な外側層の少なくとも一部分に被覆層組成物を配置する工程であり、これによって不織布研磨物品を形成し、この被覆層組成物が、脂肪酸金属塩を含む、工程と、を含む。
【0009】
本発明は更に、ステアリン酸金属塩を含む被覆層組成物の適用によりどの不織布研磨物品が利益を得るかを予測できる便利な試験を開発した。
【0010】
したがって、更に別の態様において、本開示は、
作用面を有する不織布研磨部材であり、
互いに結合された繊維を含む嵩高な開放型の繊維ウェブと、
バインダ材によりこの繊維に接着された研磨粒子であり、不織布研磨部材の作用面が、本明細書に記述される摩擦試験により少なくとも0.54の動摩擦係数を有する、研磨粒子と、を含む、不織布研磨部材と、
作用面に隣接するバインダ材及び研磨粒子の少なくとも一部分に配置された被覆層組成物であり、これによって不織布研磨物品を形成し、この被覆層組成物が、脂肪酸金属塩を含む、被覆層組成物と、
を含む、不織布研磨物品を提供する。
【0011】
同様に、更に別の態様において、本開示は、研磨物の製造方法を提供し、この方法は順次、
作用面を有する不織布研磨部材を用意する工程であり、この不織布研磨部材が、
互いに結合された繊維を含む嵩高な開放型の繊維ウェブと、
バインダ材によりこの繊維に接着された研磨粒子であり、不織布研磨部材の作用面が、本明細書に記述される摩擦試験により少なくとも0.54の動摩擦係数を有する、研磨粒子と、を含む、工程と、
作用面に隣接するバインダ材及び研磨粒子の少なくとも一部分に被覆層組成物を配置する工程であり、これによって不織布研磨物品を形成し、この被覆層組成物が、脂肪酸金属塩を含む、工程と、
を含む。
【0012】
上記の見地から、本開示は、研磨物品の製造方法を提供し、この方法は、
a)作用面を有する不織布研磨部材を用意する工程であり、この不織布研磨部材が、
互いに結合された繊維を含む嵩高な開放型の繊維ウェブと、
バインダ材により繊維の少なくとも一部分に接着された研磨粒子であり、研磨粒子の少なくとも一部分が、バインダ材中に少なくとも部分的に埋め込まれている、研磨粒子と、を含む、工程と、
b)作用面に隣接するバインダ材の一部分をプラズマエッチングして、バインダ材中にあらかじめ埋め込まれた研磨粒子の一部を露出させることにより、プラズマエッチングされた不織布研磨部材を用意する工程と、
c)プラズマエッチングされた不織布研磨部材の作用面の少なくとも一部分に被覆層組成物を配置する工程であり、この被覆層組成物が、脂肪酸金属塩を含む、工程と、を含む。
【0013】
本明細書で使用されるとき、研磨粒子に関する用語「ぎっしり詰まっている」とは、研磨粒子の実質的にすべてが、直近の研磨粒子に対して、ある平均粒径の距離(外側表面間の距離)内にあるが、必ずしもこの研磨粒子が理論的に可能なぎっしり詰まった配置であることを意味しない。
【0014】
本明細書で使用されるとき、研磨粒子に関する用語「識別可能な外形」とは、正常視力(20/20)を有する人間の目で、倍率150倍(すなわち150×)で、少なくとも一方向から見たときに、研磨粒子の周縁外形が認識可能であることを意味する。
【0015】
例えば、研磨粒子はバインダ材の塊の中に実質的に浸漬していないが、ただし、これらは、研磨粒子の形状に一致する場合、研磨粒子を覆うバインダの薄い(例えば実質的に均一な)コーティングを有し得る。
【0016】
本明細書で使用されるとき、「摩擦試験」は下記の通りである:
この試験手順に使用する不織布研磨部材及びポリメチルメタクリレート製ディスクの試験試料を、使用前に、相対湿度17パーセントかつ25℃で少なくとも24時間均衡化させる。標準試験表面は、直径4インチ(10.2cm)×厚さ1/8インチ(3.2mm)のポリメチルメタクリレート(PMMA)ディスク(M Ball硬度90−105)を水平試験ステージに取り付けることにより、試験中にステージに対して動かないようにして調製される。PMMA表面の表面粗さは、R=0.384+/−0.08マイクロインチ(0.0098+/−0.002マイクロメートル)、R=3.95+/−0.32マイクロインチ(0.100+/−0.008マイクロメートル)、Rmax=6.09+/−0.67マイクロインチ(0.155+/−0.017マイクロメートル)である。次に、2インチ×2インチ(5cm×5cm)面積の試験試料を、試験対象の不織布研磨部材から切り出し、両面感圧接着テープを使って2インチ×2インチ(5cm×5cm)の500グラムの金属おもりに取り付け、これにより試験試料の2インチ×2インチ(5センチメートル×5センチメートル)の面積が金属おもりに隣接するようにする。
【0017】
荷重をかけた試験試料を、作用面(すなわち、加工物を研磨するよう意図された不織布研磨部材の表面)がPMMAディスクに接触するように試験表面の上に配置し、相対湿度17パーセントかつ温度25℃で、摩擦試験装置(例えば、Thwing−Albert Instrument Company(West Berlin、New Jersey)から販売されているThwing−Albert Friction/Peel Testerモデル225−100、又は機能的に同様のもの)のロードセルに取り付ける。摩擦試験装置によって、水平ステージ並進速度31cm/分で水平方向の力を印加し、5秒間インターバルにわたる平均動摩擦係数として、動摩擦係数が決定される。不織布研磨部材は典型的に、1つの作用面(例えばベルト)又は2つの作用面(例えばハンドパッド)を有する。不織布研磨部材が多数の作用面を有する場合、任意の作用面を使用することができる。
【0018】
図24は、上述の摩擦試験を実行するための代表的な構成を示す。ここで図24を参照して、PMMAディスク2420が、水平試験ステージ2450に取り付けられている。不織布研磨部材試験試料2410がPMMAディスク2420の上に置かれ、金属おもり2400が両面テープ2415で試験試料2410に固定される。水平ロッド2430が、摩擦試験装置ロードセル2460及び金属おもり2400に取り付けられる。試験中、摩擦試験装置によって、方向2470に沿って力が印加される。
【0019】
本開示の特徴及び利点は、「発明を実施するための形態」、及び添付の「特許請求の範囲」を考慮することで更に深い理解が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A】本開示による例示の不織布研磨物品100の透視図である。
図1B図1Aに示した不織布研磨物品の領域1Bの拡大図である。
図1C図1Bの線1C−1Cに沿った結合した繊維の断面図である。
図2】それぞれ実施例1及び2で使用された不織布研磨部材の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
図3】それぞれ実施例1及び2で使用された不織布研磨部材の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
図4】比較実施例A及びBで使用されたそれぞれの不織布研磨部材のSEM写真である。
図5】比較実施例A及びBで使用されたそれぞれの不織布研磨部材のSEM写真である。
図6】実施例3及び4で使用されたそれぞれの不織布研磨部材のSEM写真である。
図7】実施例3及び4で使用されたそれぞれの不織布研磨部材のSEM写真である。
図8】実施例5で使用された不織布研磨部材のSEM写真である。
図9】実施例6〜8で使用されたそれぞれの不織布研磨部材のSEM写真である。
図10】実施例6〜8で使用されたそれぞれの不織布研磨部材のSEM写真である。
図11】実施例6〜8で使用されたそれぞれの不織布研磨部材のSEM写真である。
図12】比較実施例Cで使用された不織布研磨部材のSEM写真である。
図13】実施例9〜23で使用されたそれぞれの不織布研磨部材のSEM写真である。
図14】実施例9〜23で使用されたそれぞれの不織布研磨部材のSEM写真である。
図15】実施例9〜23で使用されたそれぞれの不織布研磨部材のSEM写真である。
図16】実施例9〜23で使用されたそれぞれの不織布研磨部材のSEM写真である。
図17】実施例9〜23で使用されたそれぞれの不織布研磨部材のSEM写真である。
図18】実施例9〜23で使用されたそれぞれの不織布研磨部材のSEM写真である。
図19】実施例9〜23で使用されたそれぞれの不織布研磨部材のSEM写真である。
図20】実施例9〜23で使用されたそれぞれの不織布研磨部材のSEM写真である。
図21】実施例9〜23で使用されたそれぞれの不織布研磨部材のSEM写真である。
図22】実施例9〜23で使用されたそれぞれの不織布研磨部材のSEM写真である。
図23】実施例9〜23で使用されたそれぞれの不織布研磨部材のSEM写真である。
図24】摩擦試験を実行するための構成の概略図である。
【0021】
明細書及び図面において参照符合が繰り返し使用される場合、本開示の同じ又は類似の特徴又は要素を表わすものとする。多数の他の変更及び実施形態が、当業者によって考案され得ることを理解すべきであり、それは、本開示の原理の範囲及び趣旨の範囲内に含まれる。図面は縮尺通りに描かれていない場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ここで図1A〜1Cを参照して、例示の不織布研磨物品100は、不織布研磨部材110を含む。不織布研磨部材110は、互いに結合された繊維130を含む嵩高で開放型の繊維ウェブ120を含む。不織布研磨部材110は、相対する第1及び第2作用面142、144を含む。研磨粒子150は、バインダ材155により繊維130に接着されている。
【0023】
いくつかの実施形態において、図1A〜1Cに示すように、作用面142、144に隣接する研磨粒子150は、繊維130に沿って、研磨粒子150の視認可能な外側層165を形成する。視認可能な外側層165の研磨粒子150は、ぎっしり詰まっており、識別可能な外形170を有する(図10も参照)。被覆層組成物160は脂肪酸金属塩を含み、不織布研磨部材110の作用面142及び144に隣接するバインダ材155及び研磨粒子150の少なくとも一部分に配置される。
【0024】
いくつかの実施形態において、視認可能な外側層にある研磨粒子は、個数ベースで少なくとも80パーセント、少なくとも85パーセント、少なくとも90パーセント、少なくとも95パーセント、少なくとも97パーセント、又は99パーセント、又は更には100パーセントであり得る。
【0025】
いくつかの実施形態において、視認可能な外側層の隣接する研磨粒子間に、隙間が配置される。例えば、図10を参照して、隣接する研磨粒子150間に、隙間180が配置されている。
【0026】
いくつかの実施形態において、研磨粒子の視認可能な外側層にある研磨粒子の少なくとも一部分が、互いに重なり合っており、例えば、図15に示すように、研磨粒子150が隣接する研磨粒子に重なり合っている。
【0027】
いくつかの実施形態において、少なくとも作用面142、144のうちの一方が、本明細書に記述される摩擦試験により少なくとも0.54であり得る動摩擦係数を有する。
【0028】
嵩高な開放型の繊維ウェブとは、その中を延在する実質的に連続的な空隙のネットワークを有する嵩高の不織布材料である。用語「嵩高な開放型の繊維ウェブ」を使用することにより意図されるのは、典型的に絡まり合い、その中を延在する実質的に連続的な空隙のネットワークを有する、複数の不規則な向きの繊維からなる不織ウェブ材料の層である。
【0029】
不織布ウェブは、典型的には、バインダと研磨粒子との接着に好適に適合すると同時に、物品の他の成分と組み合わせても加工可能であるように選択され、典型的には、硬化性組成物の塗布及び硬化中に使用されるもののような加工条件(例えば、温度)に耐えることができる。繊維は、例えば、可撓性、弾性、耐久性又は耐用寿命、磨耗性、及び仕上げ特性のような研磨物品の特性に影響を与えるように選択することができる。好適であり得る繊維の例としては、天然繊維、合成繊維、並びに天然繊維及び/又は合成繊維の混合物が挙げられる。合成繊維の例としては、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート)、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6/6、及びナイロン10)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリブチレン)、アクリルポリマー(例えば、ポリアクリロニトリル、及びアクリルモノマーを含むコポリマー)、レーヨン、酢酸セルロース、ポリ塩化ビニリデン−塩化ビニルコポリマー、及び塩化ビニル−アクリロニトリルコポリマーから製造されるものが挙げられる。好適な天然繊維の例としては、綿、羊毛、黄麻、及び麻布が挙げられる。繊維は、未使用材料又は、例えば、裁断、カーペット製造、繊維製造、若しくは繊維加工から再生された、回収材料若しくは屑材料によるものであってよい。繊維は、均質であってもよく、又は2成分繊維(例えば、共紡糸芯鞘型繊維)のような複合体であってもよい。繊維は、伸張され、捲縮されてもよい。これらは切断された繊維(すなわち短繊維)であってよく、例えば押出プロセスにより形成されたもののような連続的フィラメントであってもよい。繊維の組み合わせを使用してもよい。
【0030】
繊維は、連続繊維、短繊維、又はこれらの組み合わせを含んでよい。例えば、繊維ウェブは、少なくとも約20ミリメートル(mm)、少なくとも約30mm、又は少なくとも約40mm、かつ約110mm未満、約85mm未満、又は約65mm未満の長さを有する短繊維を含んでよいが、より短い繊維及びより長い繊維(例えば、連続繊維)も有用である場合がある。繊維は、少なくとも約1.7デシテックス(dtex、すなわちg/10000m)、少なくとも約6dtex、又は少なくとも約17dtex、かつ約560dtex未満、約280dtex未満、又は約120dtex未満の繊度又は線密度を有してよいが、より小さな及び/又はより大きな線密度を有する繊維も有用である場合がある。異なる線密度を有する繊維の混合物は、例えば、使用時に特に好ましい表面仕上げが得られる不織布研磨物品を提供するために有用である場合がある。
【0031】
不織布ウェブは、例えば、従来のエアレイド、カード、スティッチボンド、スパンボンド、ウェットレイド及び/又はメルトブローン手順により製造することができる。エアレイド繊維ウェブは、例えば、Rando Machine Company(Macedon,New York)から市販されているRANDO WEBBERとして入手可能なもののような設備を用いて調製することができる。
【0032】
しばしば、研磨材分野において既知であるように、硬化性組成物でコーティングする前に、プレボンド樹脂を不織布ウェブに塗布することが有益である。プレボンド樹脂は、例えば、操作中に不織布ウェブの一体性を維持することを補助するのに役立ち、ウレタンバインダの不織布ウェブへの接着を促進することもできる。プレボンド樹脂の例としては、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、にかわ、アクリル樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、及びこれらの組み合わせが挙げられる。本方式で用いられるプレボンド樹脂の量は、典型的には、架橋接点で繊維同士を接着するよう調節されている。不織布ウェブが熱接着性繊維を含む場合、不織布ウェブの熱接着もまた、加工中のウェブの一体性を維持するのに有益である場合がある。
【0033】
嵩高な開放型の繊維ウェブは典型的に、厚さが少なくとも3mm、より典型的には少なくとも6ミリメートル、更により典型的には少なくとも10ミリメートルであるが、他の厚さも使用することができる。嵩高な開放型の繊維ウェブの一般的な厚さは、例えば、6.35mm(1/4インチ)及び12.7mm(1/2インチ)である。繊維状マットにプレボンドバインダを加えても、嵩高な開放型の繊維ウェブの厚さは顕著に変わらない。
【0034】
嵩高な開放型の繊維ウェブの坪量(繊維のみ、プレボンドバインダ層なし)は典型的に、約50グラム/平方メートル〜約1キログラム/平方メートルであり、より典型的には約70〜約600グラム/平方メートルであるが、他の坪量も使用することができる。典型的に、プレボンドバインダが、嵩高な開放型の繊維ウェブに適用されて、繊維を固定する。嵩高な開放型の繊維ウェブの坪量(プレボンドバインダあり)は典型的に、約60グラム/平方メートル〜約2キログラム/平方メートルであり、より典型的には約80〜約1.5キログラム/平方メートルであるが、これらは必要要件ではない。
【0035】
嵩高な開放型の繊維ウェブは、任意の好適なウェブ形成操作により調製することができる。例えば、嵩高な開放型の繊維ウェブは、毛羽立てられたもの、スパンボンドされたもの、スパンレースされたもの、メルトブローンされたもの、エアレイドされたもの、又は他の、当該技術分野で既知のプロセスによって作製されたものであってよい。例えば、嵩高な開放型の繊維ウェブは、クロスラップ、スティッチボンド、及び/又はニードルタックされ得る。
【0036】
有用な研磨粒子は、有機又は無機粒子であってよい。好適な無機研磨粒子の例としては、アルミナ又は酸化アルミニウム(溶融酸化アルミニウム、熱処理溶融酸化アルミニウム、セラミック酸化アルミニウム、熱処理酸化アルミニウムなど)、炭化ケイ素、二ホウ化チタン、アルミナジルコニア、ダイヤモンド、炭化ホウ素、セリア、ケイ酸アルミニウム、立方晶窒化ホウ素、ガーネット、シリカ、及びこれらの組み合わせが挙げられる。研磨粒子は、例えば個々の粒子、粒塊、複合粒子、及びこれらの混合物の形態であってもよい。好ましい溶融酸化アルミニウムには、Exolon ESK Company(Tonawanda、New York)又はWashington Mills Electro Minerals Corp.(Niagara Falls、New York)により前処理済みで市販されているものが挙げられる。好ましいセラミック酸化アルミニウム研磨粒子には、米国特許第4,314,827号(Leitheiser)、同第4,623,364号(Cottringerら)、同第4,744,802号(Schwabelら)、同第4,770,671号(Monroeら)、同第4,881,951号(Monroeら)、同第4,964,883号(Morrisら)、同第5,011,508(Waldら)、及び同第5,164,348号(Wood)に記述されているものが挙げられる。
【0037】
研磨物品に使用するのに好適な有機研磨粒子は、好ましくは熱可塑性ポリマー及び/又は熱硬化性ポリマーから形成される。有機研磨粒子は熱可塑性材料から形成することができ、例えばポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリスルホン、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、ポリプロピレン、アセタールポリマー、ポリウレタン、ポリアミド、及びこれらの組み合わせが挙げられる。有機研磨粒子は、熱可塑性ポリマーと熱硬化性ポリマーとの混合物であり得る。
【0038】
研磨粒子は、無機であれ有機であれ、任意の精密な形状を有してよく、又は不規則若しくはランダムな形状であってもよい。そのような3次元形状の例としては、ピラミッド形、円筒形、円錐形、球形、ブロック形、立方体、多角形、及び同様の形が挙げられる。あるいは、有機研磨粒子は比較的平坦であり、かつ菱形、十字形、円形、三角形、四角形、正方形、楕円形、八角形、五角形、六角形、多角形及び同様の形などの断面形状を有し得る。成形された研磨粒子及びその製造方法は、米国特許第5,009,676号(Rueら)、同第5,185,012号(Kelly)、同第5,244,477号(Rueら)、同第5,372,620号(Cullerら)、同第8,142,531 B2号(Adefrisら)、同第8,142,532 B2号(Bodenら)、同第8,123,828 B2号(Cullerら)、同第and8,034,137 B2号(Ericksonら)、並びに米国特許出願公開第2010/0146867 A1号(Bodenら)及び同第2010/0151195 A1号(Cullerら)に教示されている。成形された熱硬化性有機研磨粒子は、米国特許第5,500,273号(Holmesら)に従って製造することができる。
【0039】
研磨粒子の表面(表面の一部分、又は表面全体)は、バインダ材への接着性及び/又はバインダ材中での分散性を高めるため、カップリング剤で処理してもよい。
【0040】
研磨粒子は、任意の寸法であってよい。これらは化学的に異なる粒子の混合物を含んでもよい。所与の組成物について、研磨粒子粒径分布は、単峰性又は多峰性(例えば二峰性)であってもよい。研磨粒子は、例えば、少なくとも約0.1マイクロメートル、少なくとも約1マイクロメートル、少なくとも約5マイクロメートル、又は少なくとも約10マイクロメートル、かつ/又は約2000マイクロメートル未満、約1300マイクロメートル未満、又は約1000マイクロメートル未満の平均直径を有してよいが、より大きな及びより小さな研磨粒子も用いることができる。例えば、研磨粒子は、研磨材業界が仕様を定めた公称等級を有する場合がある。このような研磨材業界に認められた等級分け規格としては、アメリカ規格協会(ANSI)規格、欧州砥粒製造協会(FEPA)規格、及び日本工業規格(JIS)規格として知られているものが挙げられる。代表的なANSI等級指定(すなわち、所定の公称等級)には、ANSI 4、ANSI 6、ANSI 8、ANSI 16、ANSI 24、ANSI 36、ANSI 40、ANSI 50、ANSI 60、ANSI 80、ANSI 100、ANSI 120、ANSI 150、ANSI 180、ANSI 220、ANSI 240、ANSI 280、ANSI 320、ANSI 360、ANSI 400、及びANSI 600が挙げられる。代表的なFEPA等級の表記としては、P8、P12、P16、P24、P36、P40、P50、P60、P80、P100、P120、P150、P180、P220、P320、P400、P500、600、P800、P1000、及びP1200が挙げられる。代表的なJIS等級の表記としては、JIS8、JIS12、JIS16、JIS24、JIS36、JIS46、JIS54、JIS60、JIS80、JIS100、JIS150、JIS180、JIS220、JIS240、JIS280、JIS320、JIS360、JIS400、JIS400、JIS600、JIS800、JIS1000、JIS1500、JIS2500、JIS4000、JIS6000、JIS8000、及びJIS10000が挙げられる。
【0041】
典型的には、研磨粒子のコーティング重量(硬化性組成物中の他の成分とは無関係に)は、例えば、用いられる特定のバインダ前駆体、研磨粒子を塗布するプロセス、及び研磨粒子の寸法に依存する可能性がある。例えば、(任意の圧縮前の)不織布ウェブ上の研磨粒子のコーティング重量は、少なくとも50g/平方メートル(gsm)、少なくとも200gsm、若しくは少なくとも400gsm、かつ/又は、2000gsm未満、約1600gsm未満、若しくは約1200gsm未満であってよいが、他のコーティング重量も用いることができる。
【0042】
研磨粒子は、典型的に、熱可塑性(例えば、重合可能及び/又は架橋可能)有機バインダ前駆体から誘導されるバインダ材により繊維ウェブに接着され、この前駆体が、固化又は硬化してバインダ材を形成する。研磨材物品の製造時、バインダ前駆体は、重合の開始又は硬化プロセスを助ける、エネルギー源に曝露される。エネルギー源の例としては、熱エネルギー及び放射線エネルギーが挙げられる。この重合プロセス中に、バインダ前駆体が重合されて、固化されたバインダに変換される。硬化後、結果として得られたバインダは、一般的に非粘着性である。
【0043】
少なくとも部分的に硬化してバインダ材を形成し得るバインダ前駆体の例としては、縮合硬化性材料及び/又は付加重合性材料が挙げられる。そのようなバインダ前駆体は、溶媒系、水溶液系、又は100パーセント固体であり得る。バインダ前駆体/バインダの使用に好適な有機樹脂の例には、フェノール樹脂(レゾールとノボラックの両方)、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ウレタン、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、エチレン系不飽和化合物(アクリル及びメタクリルモノマー)、ペンダント不飽和カルボニル基を有するアミノプラスト誘導体、少なくとも1つのペンダントアクリル基を有するイソシアヌレート誘導体、少なくとも1つのペンダントアクリル基を有するイソシアネート誘導体、ビニルエーテル、エポキシ樹脂、並びにこれらの混合物及び組み合わせが挙げられる。これらの群に該当しない他の材料も、バインダに好適であり得る。
【0044】
バインダ前駆体に使用するのに好適な代表的なフェノール樹脂には、レゾールフェノール樹脂及びノボラックフェノール樹脂が挙げられる。代表的な市販のフェノール材料には、商品名DUREZ又はVARCUM(Occidental Chemical Corporation(Dallas、Tex.)から販売)、RESINOX(Monsanto Company(St.Louis、Mo.)から販売)、AROFENE又はAROTAP(Ashland Chemical Company(Columbus、Ohio)から販売)、及びBAKELITE(Dow Chemical Company(Midland、Michigan)から販売)が挙げられる。好適なフェノール樹脂に関する更なる詳細は、例えば、米国特許第5,591,239号(Larsonら)及び同第5,178,646号(Barber,Jr.ら)に見出し得る。
【0045】
代表的なエポキシ樹脂には、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、並びに、Momentive(Houston、Texas)から商標名EPON(例えば、EPON 828、EPON 1004、及びEPON 1001F)として市販されている材料、及び、Dow Chemical Company(Midland、Michigan)からDER(例えば、DER−331、DER−332、及びDER−334)又はDEN(例えば、DEN−431及びDEN−428)として市販されている材料が挙げられる。
【0046】
代表的な尿素−ホルムアルデヒド樹脂及びメラミン−ホルムアルデヒド樹脂には、商標名UFORMITE(例えば、Reichhold Chemical(Durham、North Carolina)から販売)、DURITE(Borden Chemical Company(Columbus、Ohio)から販売)、及びRESIMENE(例えば、Monsanto(St.Louis、Missouri)から販売)として市販されているものが挙げられる。
【0047】
不織布研磨部材は、周知の従来型プロセスにより製造することができ、このプロセスには例えば、硬化性バインダ前駆体材料(本明細書では以下「バインダ前駆体」と呼ばれる)及び研磨粒子を、嵩高で開放型の不織布ウェブに適用する工程と、次に、バインダ前駆体を硬化させる工程とが含まれる。研磨粒子は、スラリーとしてバインダ前駆体と組み合わせて適用することができ、又はより望ましくは、研磨粒子は、嵩高で開放型の不織布ウェブをバインダ前駆体でコーティングした後に(例えば、浸漬、ブロー、又はスプレーにより)バインダ前駆体に適用される。バインダ前駆体は典型的に、熱硬化性樹脂と、その熱硬化性樹脂のための有効量の硬化剤とを含む。バインダ前駆体には更に、様々な他の添加剤を含み得、例えば、充填剤、可塑剤、界面活性剤、潤滑剤、着色剤(例えば顔料)、殺菌剤、殺真菌剤、研削助剤、及び帯電防止剤が挙げられる。
【0048】
本開示の実践に使用するのに好適な、不織布研磨部材を製造する1つの代表的な方法は、順次、プレボンドコーティングを不織布ウェブに適用する(例えば、ロールコーティング又はスプレーコーティングにより)工程と、プレボンドコーティングを硬化させる工程と、プレボンド処理された不織布ウェブにバインダ前駆体を含浸させる(例えば、ロールコーティング又はスプレーコーティングにより)工程と、硬化性組成物を硬化させる工程と、を含む。
【0049】
典型的には、不織布ウェブ上に、125グラム/平方メートル(gsm)〜2080gsm、より典型的には500〜2000gsm、更により典型的には1250〜1760gsmの量のバインダ前駆体(存在し得る任意の溶媒及び研磨粒子を含む)がコーティングされるが、これらの範囲外の値も用いることができる。
【0050】
バインダ前駆体は典型的に、液体形状で繊維ウェブに適用され(例えば従来型方法により)、その後で硬化させて(例えば少なくとも部分的に硬化させて)、繊維ウェブの少なくとも一部分にコーティングされた層を形成する。本開示による実践に使用されるバインダ前駆体は典型的に、例えば熱エネルギー(例えば、直接加熱、誘導加熱、並びに/又はマイクロ波及び/若しくは赤外線電磁放射線への曝露による)及び/又は化学線(例えば、紫外線、可視光線、微粒子放射線)に曝露させることにより、硬化され得る。代表的な熱エネルギー源としては、オーブン、加熱ロール、及び/又は赤外線ランプが挙げられる。
【0051】
1つの代表的な方法において、研磨粒子とバインダ前駆体材料とを含むスラリーコート前駆体が、繊維ウェブに適用されてから、少なくとも部分的に硬化される。所望により、典型的に、スラリーコート前駆体を少なくとも部分的に硬化させた後に、第2のバインダ前駆体材料(すなわち、サイズコート前駆体)(これはスラリーコートと同じであっても異なっていてもよい)を、スラリーコートに適用することができる。
【0052】
別の代表的な方法において、第1バインダ前駆体を含むメークコート前駆体が、典型的に、繊維ウェブに適用され、研磨粒子をそのメークコートの上に沈積させてから、メークコート前駆体を(例えば、蒸発、冷却、及び/又は少なくとも部分的硬化により)硬化させる。次に、第2のバインダ前駆体(すなわち、サイズコート前駆体)(これはメークコート前駆体と同じであっても異なっていてもよい)を、典型的に、メークコート及び研磨粒子の上に適用してから、少なくとも部分的に硬化させることができる。
【0053】
典型的に、スラリーコート前駆体に用いられるバインダ前駆体、又はメークコート前駆体及び/又はサイズコート前駆体(例えば上述のもの)の少なくとも一方が、モノマー又はポリマー材料を含み、これが少なくとも部分的に硬化され得る(すなわち、重合及び/又は架橋)。典型的に、少なくとも部分的に硬化すると、そのようなバインダ前駆体は非エラストマー性バインダ(例えば、硬質の脆いバインダ)を形成し、これは、研磨粒子を繊維ウェブに接着する、ASTM試験方法D1474−98(2002)「Standard Test Methods for Indentation Hardness of Organic Coatings」に従って測定したとき、ヌープ硬度(KHN、キログラム重/平方ミリメートル(kgf/mm(GPa))で表される)は、例えば、少なくとも約20、少なくとも約40、少なくとも約50、又は更には少なくとも約60(少なくとも約0.2、少なくとも約0.4、少なくとも約0.5、又は更には少なくとも約0.6)であり得る。
【0054】
スラリーコート前駆体、メークコート前駆体、サイズコート前駆体等を適用するための好適な方法は、不織布研磨物品の技術分野において周知であり、例えばカーテンコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティング、及び同様物のコーティング方法が挙げられる。典型的に、スプレーコーティングは、スラリーコート及びメークコート前駆体を適用するための効果的かつ経済的な方法である。任意のサイズコートは、エラストマー性又は非エラストマー性であり得、例えば、1つ以上の潤滑剤及び/又は研削助剤などの様々な添加剤を含み得る。任意のサイズコートは、エラストマー(例えばポリウレタンエラストマー)を含み得る。代表的な有用なエラストマーには、不織布研磨物品用のサイズコートとして使用するための周知のものが挙げられる。例えば、エラストマーはイソシアネート末端ウレタンプレポリマーから誘導することができ、例えば、商品名VIBRATHANE又はADIPRENE(Crompton & Knowles Corporation(Middlebury、Connecticut)から販売)、及びMONDUR又はDESMODUR(Bayer Corporation(Pittsburgh、Pennsylvania)から販売)として市販されているものが挙げられる。
【0055】
所望により、スラリーコート、メークコート、及び/又はサイズコートは、硬化プロセスを開始及び/又は加速するために、1つ以上の触媒及び/又は硬化剤(例えば、熱触媒、硬化剤、架橋剤、光触媒、熱反応開始剤、及び/又は光開始剤)、並びにこれらに加えて、又は代わりに、その他の既知の添加剤、例えば、充填剤、増粘剤、強靱化剤、研削助剤、顔料、繊維、粘着付与剤、潤滑剤、湿潤剤、界面活性剤、消泡剤、染料、カップリング剤、可塑剤、及び/又は懸濁化剤を更に含んでもよい。代表的な潤滑剤には、ステアリン酸金属塩(例えばステアリン酸リチウム及びステアリン酸亜鉛)、又は二硫化モリブデンなどの材料、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0056】
本明細書で使用されるとき、用語「研削助剤」は、研磨の化学的及び物理的プロセスに顕著な影響を持つ、非研磨性(例えば、モース硬度が7未満)の粒子材料を指す。一般に、研削助剤を添加すると、不織布研磨物品の耐用寿命が延びる。代表的な研削助剤には無機及び有機材料が含まれ、これには、ろう、有機ハロゲン化物(例えば塩素化ろう、ポリ塩化ビニル)、ハロゲン化塩(例えば塩化ナトリウム、カリウム氷晶石、氷晶石、アンモニウム氷晶石、テトラフルオロホウ酸カリウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム、フッ化ケイ素、塩化カリウム、塩化マグネシウム)、金属(例えばスズ、鉛、ビスマス、コバルト、アンチモン、カドミウム、鉄、及びチタン、並びにこれらの合金)、硫黄、有機硫黄化合物、硫化金属、グラファイト、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0057】
1つの有用な実施形態において、研磨粒子にプラズマエッチングプロセスを実施することにより、不織布研磨物品が得られ、その研磨特性は、脂肪酸金属塩を含む被覆層を追加することで利益が得られる。図8は、プラズマエッチングされた不織布研磨物品の一例である。繊維に沿って結合している研磨粒子の視認可能な外側層が、深くは埋め込まれていないことがわかる(例えば、粒子がよく露出している)。
【0058】
プラズマエッチングの際、イオン化されたプラズマが、不織布研磨部材の外側表面のバインダを腐食させ又は除去し、徐々に下の研磨粒子の表面領域を露出させる。
【0059】
不織布研磨部材内では高さ及び形状の著しい偏差があるが、不織布研磨部材を等方的にエッチングし架橋バインダを均一に腐食させるよう、プラズマ処理の条件を調整する。
【0060】
プラズマエッチング装置及び条件は、当該技術分野において既知である。簡単に述べると、プラズマ処理中、真空チャンバー内で、チャンバー内の気体から作られるプラズマは、電力(例えば、0.001〜100MHzの範囲の周波数で運転されるRF発生器から)を少なくとも一方の電極に供給することにより、生成かつ維持される。電極系は、対称又は非対称であり得る。いくつかのプラズマ装置では、接地電極と駆動電極との間の電極表面積比は、2:1〜4:1、又は3:1〜4:1である。電力電極は、例えば水により冷却され得る。研磨粒子のような別個の相対的に平面的な物体に対しては、プラズマ蒸着は、例えば物品を左右非対称の電極形体のより小さな電極と直接接触させることにより達成することができる。このことによって、電力電極と物品との間の容量結合により、物品が電極として作用することが可能となる。
【0061】
RF電力源は、0.01〜50MHzの範囲の、又は13.56MHzの、又はこの任意の整数(例えば、1、2、又は3)倍の、標準的な周波数で電力を提供する。RF電力源は、13.56MHz発振器などのRF発生器であり得る。効率的な電力結合を得る(すなわち、反射電力が入力電力の小さい割合である)ためには、電力源は、同軸の送電線によりRF電力を有効に伝送するように、電源のインピーダンスを送電線のインピーダンス(通常50オームリアクタンス)と整合させるように作用するネットワークを介して電極に接続されてもよい。2つの可変コンデンサとインダクタを含む整合ネットワークの1つの種類は、Plasmatherm(St.Petersburg、Florida)から商標名AMN 3000として入手可能である。電力結合の在来の方法は、電力電極と電源との間のインピーダンス整合ネットワーク中で阻止コンデンサを使用することを含む。この阻止コンデンサによって、DCバイアス電圧が電気回路の残余に分流しないようにする。代わりに、DCバイアス電圧を接地電極中で分流させる。RF電力源からの許容可能な周波数範囲は、より小さい電極上に大きな負のDCセルフバイアスを形成するのに充分に高くともよいが、これが生じるプラズマ中に、プラズマ処理に非効率的である定在波を作り出すほど高くあってはならない。
【0062】
研磨物品のバッチ処理に加えて、不織布研磨材料のロール又は連続的なウェブは、米国特許第5,888,594号(Davidら)、同第5,948,166号(Davidら)、同第7,195,360号(Baconら)、及び米国特許出願公開第2003/0134515 A1号(Davidら)に記載されているような技術を用いる連続的プラズマ反応器を用いて処理することができる。連続的プラズマ処理装置としては、典型的には、無線周波数(RF)電源によって駆動することができる回転ドラム電極、接地電極として作用する接地チャンバー、連続移動ウェブの形態として、処理されるべき物品を連続的に供給する給送リール、及び処理済物品を集める巻き取りリールが挙げられる。給送及び巻き取りリールは、所望によりチャンバーの中に入れるか、又は低圧プラズマがチャンバーの中で維持される限り、チャンバーの外で稼動することができる。必要であれば、付加的な間隙制御のために、同心の接地電極を駆動ドラム電力電極の近くに付加することができる。入口は、好適な処理ガスを蒸気又は液体の形でチャンバーに供給する。
【0063】
不織布研磨材料は、好ましくは、等方性プラズマエッチング状況を提供するために酸素(すなわちO)と組み合わせて、より高いガス圧力、より長い処理時間、より高い電力設定、又はフッ化炭素(例えばペルフルオロプロパン(すなわちC))ガスを単一か、又はそれらを組み合わせて用いることにより、均一にプラズマ処理することができる。等方性プラズマエッチング状況は、純酸素ガスをより高い圧力で用いるか、又はより低圧でO及びCガスの組み合わせを用いることができる。処理ガス圧力は、一般に、50〜10,000milliTorr(7〜1300Pa)、又は60〜1,000milliTorr(8〜170Pa)、又は250〜550milliTorr(33〜73Pa)である。処理時間は、一般に、2分〜15分、又は4分〜12分、又は5分〜10分であるが、これは要件ではない。処理ガスには例えば純酸素、又は酸素及びC気体の混合物が含まれる。Cガスの流量をCガス及びOガスの合計混合流量で割った比は、一般に、0.10〜0.30、又は0.15〜0.25、並びに混合ガスの合計流量は典型的に0.1〜10リットル/分である。プラズマエッチングプロセスの処理電力は、一般に、電極面積に対して0.1〜1.0ワット/cmに設定する。
【0064】
不織布研磨部材は、任意の好適な形態であり得る。例としては、ウェブ、ディスク、パッド、ベルト、及び/又はシートが挙げられる。
【0065】
被覆層組成物には、少なくとも1つの脂肪酸金属塩(すなわち、金属と、少なくとも1つの脂肪酸との塩)が挙げられる。有用な脂肪酸金属塩には、例えば、式R−COHで表わされるカルボン酸金属塩が挙げられ、式中、Rは、少なくとも7個、好ましくは少なくとも11個、より好ましくは少なくとも18個の炭素原子を有する脂肪族基である。いくつかの実施形態において、Rは式CH(CHCOHで表わされ、式中、nは整数であり、少なくとも7、好ましくは少なくとも9、少なくとも11、少なくとも13、少なくとも15、又は更には少なくとも17である。脂肪酸のタイプには具体的な制限はないが、典型的には、室温で固体を保つ脂肪酸金属塩が好ましい。使用可能な飽和脂肪酸の例には、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、及びモンタン酸が挙げられる。不飽和脂肪酸の例には、ウンデシレン酸、デセン酸、サピエン酸、バクセン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノレン酸、α−リノレン酸、及びアラキドン酸が挙げられる。これらの中で、好ましい脂肪酸は、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸、及びウンデシレン酸、より好ましくはステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、ベヘン酸、及びモンタン酸である。
【0066】
脂肪酸金属塩に含まれる金属の例には、カルシウム、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、バリウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、及び銀が挙げられる。好ましい金属には、カルシウム、亜鉛、リチウム、及びバリウムが挙げられる。また、2つ以上の脂肪酸金属塩の組み合わせも使用することができる。複数の異なる脂肪酸金属塩により、被覆層組成物のぬれ張力を制御することが可能になり得る。
【0067】
バインダを被覆層組成物に含めることができる。好適なバインダには、例えば、アルキルセルロース樹脂(例えば、メチルセルロース及びエチルセルロース)、アクリル樹脂、アルキルアミド樹脂、ビニルアセテート樹脂、スチレン−アクリロニトリル樹脂、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、天然ゴム、クロロプレンゴム、及びメチルブタジエンゴムが挙げられる。2種以上のバインダ樹脂が、組み合わせて使用されてもよい。
【0068】
被覆層組成物は、所望により、例えば、表面活性剤、可塑剤、帯電防止剤、加湿剤、消泡剤、着色剤、顔料、充填剤、及びこれらの組み合わせなどの添加剤を更に含む。
【0069】
被覆層組成物は、所望により液体媒体(例えば、水及び/又は好適な有機溶媒)の存在下で(望ましい場合)、脂肪酸金属塩とバインダを混合することにより調製できる。
【0070】
コーティングのための被覆層組成物中の脂肪酸金属塩の含有量は、乾燥重量ベースで10〜100重量パーセント、より典型的には60〜100パーセントの範囲であり得るが、他の量も使用できる。
【0071】
研磨粒子は不織布研磨部材中に分布されるが、嵩高で開放型の繊維ウェブの少なくとも1つの主表面に隣接した、視認可能な外側層を有する。被覆層組成物は、研磨粒子の視認可能な外側層の少なくとも一部分に配置される。被覆層組成物はより多くの研磨粒子を覆ってもよいが、一般に、研磨する加工物の表面に接触するのは外側研磨粒子だけであるため、よって、研磨粒子が被覆層組成物に接触しているときに、最大の利益が見られる。
【0072】
被覆層組成物は、例えば、嵩高な開放型の繊維ウェブの主表面に隣接する研磨粒子の一部を覆わないようにするために、不織布研磨部材の主表面の一部分だけに適用され得るか、又は、主表面に適用され得る。被覆層組成物は、研磨部材コーティングが完全に硬化する前又は後に適用することができる。
【0073】
被覆層組成物を不織布研磨部材の主表面に適用する方法には、具体的な制限はない。例えば、ブラシコーティング、ロールコーティング、フローコーティング、ダイコーティング、スプレーコーティング、及び同様の方法によって、研磨表面(すなわち、加工物に接触することによって研磨作用をもたらす表面)に適用することができる。研磨表面に適用する被覆層組成物の量は、使用される研磨粒子の寸法と量、及び研磨物品の意図される用途に適切なように変えることができる。一般に、コーティング乾燥重量で約1〜200gsm、好ましくは約9〜40gsmであるが、他のコーティング乾燥重量も使用可能である。
【0074】
被覆層組成物を研磨表面に適用した後、バインダ樹脂がフィルムに形成されるまで、適切な温度及び時間の条件下で、加熱及び乾燥させることができる。加熱条件は、適切なように決定することができる。
【0075】
本開示による不織布研磨物品は、加工物を研磨するために有用である。1つのそのような方法は、不織布研磨材物品を加工物の表面と摩擦接触させる工程と、不織布研磨材物品又は加工物の少なくとも一方を、他方に対して動かして、表面の少なくとも一部分を研磨する工程と、を含む。加工物材料の例としては、金属、合金、新合金(exotic metal alloys)、セラミック、ガラス、木材、木材様材料、複合材料、塗装表面、プラスチック、強化プラスチック、石、及び/又はこれらの組み合わせが挙げられる。加工物は、平らであってもよく、又は関連した形状若しくは外形を有してもよい。代表的な加工物としては、金属構成成分、プラスチック構成成分、パーティクルボード、カムシャフト、クラクシャフト、家具、及びタービンブレードが挙げられる。
【0076】
本開示による不織布研磨物品は、手で使用してもよく、及び/又は機械と組み合わせて使用してもよい。研磨は、湿潤状態で実施されても、又は乾燥状態で実施されてもよい。代表的な湿潤研磨用液体としては、水、慣用の腐食防止化合物を含有する水、潤滑剤、油、石鹸液、及び切削液が挙げられる。この液体は、例えば、消泡剤及び/又は脱脂剤を更に含み得る。
【0077】
不織布研磨物品、砥石車、及びそれらの製造方法に関する更なる詳細は、例えば、米国特許第2,958,593号(Hooverら)、同第5,591,239号(Larsonら)、同第6,017,831号(Beardsleyら)、及び米国公開特許出願第2006/0041065 A1号(Barber)に見出すことができる。
【0078】
本開示の選択された実施形態
第1の実施形態において、本開示は、
a)作用面を有する不織布研磨部材であり、
互いに結合された繊維を含む嵩高な開放型の繊維ウェブと、
バインダ材によりこの繊維の少なくとも一部分に接着された研磨粒子であり、この研磨粒子の少なくとも一部分が、不織布研磨部材の作用面に隣接する繊維に沿って、研磨粒子の視認可能な外側層を形成し、この視認可能な外側層にある研磨粒子が、ぎっしり詰まっており、個数ベースで少なくとも80パーセントの、この視認可能な外側層にある研磨粒子が、識別可能な外形を有する、研磨粒子と、を含む、不織布研磨部材と、
b)研磨粒子の視認可能な外側層の少なくとも一部分に配置された被覆層組成物であり、これによって不織布研磨物品を形成し、この被覆層組成物が、脂肪酸金属塩を含む、被覆層組成物と、
を含む、不織布研磨物品を提供する。
【0079】
第2の実施形態において、本開示は、第1の実施形態による不織布研磨物品を提供し、この研磨粒子の視認可能な外側層が、隣接する研磨粒子間に配置された隙間を含む。
【0080】
第3の実施形態において、本開示は、第1及び第2の実施形態による不織布研磨物品を提供し、研磨粒子の視認可能な外側層にある研磨粒子の少なくとも一部分が、互いに重なり合っている。
【0081】
第4の実施形態において、本開示は、第1〜第3の実施形態のいずれか1つに記載の不織布研磨物品を提供し、被覆層組成物が、1平方メートル当たり少なくとも2.5グラムの坪量を有する。
【0082】
第5の実施形態において、本開示は、第1〜第4の実施形態のいずれか1つに記載の不織布研磨物品を提供し、被覆層組成物が、ポリマー樹脂を更に含む。
【0083】
第6の実施形態において、本開示は、第1〜第5の実施形態のいずれか1つに記載の不織布研磨物品を提供し、研磨粒子が、少なくとも5マイクロメートルの平均粒径を有する。
【0084】
第7の実施形態において、本開示は、第1〜第6の実施形態のいずれか1つに記載の不織布研磨物品を提供し、研磨粒子が、研磨工業規格の公称等級に適合する。
【0085】
第8の実施形態において、本開示は、研磨物品の製造方法を提供し、この方法は、
a)作用面を有する不織布研磨部材を用意する工程であり、この不織布研磨部材が、
互いに結合された繊維を含む嵩高な開放型の繊維ウェブと、
バインダ材によりこの繊維の少なくとも一部分に接着された研磨粒子であり、この研磨粒子の少なくとも一部分が、不織布研磨部材の作用面に隣接する繊維に沿って、研磨粒子の視認可能な外側層を形成し、この視認可能な外側層にある研磨粒子が、ぎっしり詰まっており、個数ベースで少なくとも80パーセントの、この視認可能な外側層にある研磨粒子が、識別可能な外形を有する、研磨粒子と、を含む、工程と、
b)研磨粒子の視認可能な外側層の少なくとも一部分に被覆層組成物を配置する工程であり、これによって不織布研磨物品を形成し、この被覆層組成物が、脂肪酸金属塩を含む、工程と、を含む。
【0086】
第9の実施形態において、本開示は、第8の実施形態による不織布研磨物品を提供し、この研磨粒子の視認可能な外側層が、隣接する研磨粒子間に配置された隙間を含む。
【0087】
第10の実施形態において、本開示は、第7及び第8の実施形態による不織布研磨物品を提供し、研磨粒子の視認可能な外側層にある研磨粒子の少なくとも一部分が、互いに重なり合っている。
【0088】
第11の実施形態において、本開示は、第8〜第10の実施形態のいずれか1つに記載の方法を提供し、被覆層組成物が、1平方メートル当たり少なくとも2.5グラムの坪量を有する。
【0089】
第12の実施形態において、本開示は、作用面を有する不織布研磨物品を提供し、この不織布研磨部材が、
互いに結合された繊維を含む嵩高な開放型の繊維ウェブと、
バインダ材によりこの繊維に接着された研磨粒子であり、不織布研磨部材の作用面が、本明細書に記述される摩擦試験により少なくとも0.54の動摩擦係数を有する、研磨粒子と、を含む、不織布研磨部材と、
作用面に隣接するバインダ材及び研磨粒子の少なくとも一部分に配置された被覆層組成物であり、これによって不織布研磨物品を形成し、この被覆層組成物が、脂肪酸金属塩を含む、被覆層組成物と、
を含む。
【0090】
第13の実施形態において、本開示は、第12の実施形態に記載の不織布研磨物品を提供し、被覆層組成物が、1平方メートル当たり少なくとも2.5グラムの坪量を有する。
【0091】
第14の実施形態において、本開示は、第12又は第13の実施形態に記載の不織布研磨物品を提供し、被覆層組成物が、ポリマー樹脂を更に含む。
【0092】
第15の実施形態において、本開示は、第12〜第14の実施形態のいずれか1つに記載の不織布研磨物品を提供し、研磨粒子が、少なくとも5マイクロメートルの平均粒径を有する。
【0093】
第16の実施形態において、本開示は、第12〜第15の実施形態のいずれか1つに記載の不織布研磨物品を提供し、研磨粒子が、125マイクロメートル以下の平均粒径を有する。
【0094】
第17の実施形態において、本開示は、第12〜第16の実施形態のいずれか1つに記載の不織布研磨物品を提供し、研磨粒子が、研磨工業規格の公称等級に適合する。
【0095】
第18の実施形態において、本開示は、研磨物品の製造方法を提供し、この方法は、
作用面を有する不織布研磨部材を用意する工程であり、この不織布研磨部材が、
互いに結合された繊維を含む嵩高な開放型の繊維ウェブと、
バインダ材によりこの繊維に接着された研磨粒子であり、不織布研磨部材の作用面が、本明細書に記述される摩擦試験により少なくとも0.54の動摩擦係数を有する、研磨粒子と、を含む、工程と、
作用面に隣接するバインダ材及び研磨粒子の少なくとも一部分に被覆層組成物を配置する工程であり、これによって不織布研磨物品を形成し、この被覆層組成物が、脂肪酸金属塩を含む、工程と、
を含む。
【0096】
第19の実施形態において、本開示は、第18の実施形態に記載の方法を提供し、被覆層組成物が、1平方メートル当たり少なくとも2.5グラムの坪量を有する。
【0097】
第20の実施形態において、本開示は、研磨物品の製造方法を提供し、この方法は、
a)作用面を有する不織布研磨部材を用意する工程であり、この不織布研磨部材が、
互いに結合された繊維を含む嵩高な開放型の繊維ウェブと、
バインダ材により繊維の少なくとも一部分に接着された研磨粒子であり、研磨粒子の少なくとも一部分が、バインダ材中に少なくとも部分的に埋め込まれている、研磨粒子と、を含む、工程と、
b)作用面に隣接するバインダ材の一部分をプラズマエッチングして、バインダ材中にあらかじめ埋め込まれた研磨粒子の一部を露出させることにより、プラズマエッチングされた不織布研磨部材を用意する工程と、
c)プラズマエッチングされた不織布研磨部材の作用面の少なくとも一部分に被覆層組成物を配置する工程であり、この被覆層組成物が、脂肪酸金属塩を含む、工程と、を含む。
【0098】
第21の実施形態において、本開示は、第20の実施形態に記載の方法を提供し、研磨粒子が、125マイクロメートル以下の平均粒径を有する。
【0099】
第22の実施形態において、本開示は、第20又は第21の実施形態に記載の方法を提供し、被覆層組成物が、1平方メートル当たり少なくとも2.5グラムの坪量を有する。
【0100】
本開示の目的及び有利点は、以下の非限定的な実施例によって更に例示されるが、これらの実施例に記載される具体的な材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本開示を不当に限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0101】
特に記載のない限り、実施例及び本明細書の残りの部分における全ての部分、割合、及び比率は、重量による。
【0102】
実施例で用いられる材料の略記を下記表1に記載する。
【0103】
【表1】
【0104】
試験手順
シーファー試験
2つの不織布研磨物品試験試料を、直径10.2cmのディスクとして調製し、重ね合わせ、面ファスナーを用いてフォーム支持パッドに固定した。この支持パッド/ファスナー組立品は、Shore Durometer OO硬度85であった。研磨ディスク及び支持パッド組立品を、Schiefer Uniform Abrasion Tester(Frazier Precision Instrument Company、Inc.(Hagerstown、Maryland)から入手)に取り付け、研磨ディスクを使用して、Seelye−Eiler Plastics Inc.(Bloomington、Minnesota)から入手した酢酸酪酸セルロースポリマーのアニュラリング(外径(OD)10.2cm×内径(ID)5.1cm)を研磨した。荷重は5lb(2.27kg)であった。試験時間は、研磨ディスク500回転又はサイクルを8期間行った(合計4000サイクル)。500サイクル試験期間ごとの終了時に、除去された酢酸酪酸セルロースポリマーの量を測定した。
【0105】
KCF試験
この手順は、「摩擦試験」の手順に加え、下記の詳細事項を追加した。摩擦試験装置は、Thwing−Albert Instrument Company(West Berlin、New Jersey)から入手したThwing−Albert Friction/Peel Testerモデル225−100であった。
【0106】
この摩擦試験装置を500グラム荷重、試験時間5秒、及び速度31cm/分(速度設定「D」)に設定した。荷重をかけた試験試料を試験表面に置き、金属フックで試験装置に取り付けた。試験装置のゼロ点を合わせ、試験を開始した。各実施例において3つの試料を試験した。
【0107】
(実施例1)
CaStの被覆コーティングありとなしの両方について、不織布研磨試験試料を調製し、試験を行った。
【0108】
RANDO−WEBBER装置(Rando Machine Corporation(Macedon、New York)から入手)を使用して、繊維から、軽量で開放型の、低密度のエアレイド不織布ウェブを調製した。結果として得られた嵩高な開放型の繊維ウェブは、公称坪量37グレイン/24平方インチ(155gsm)、厚さは0.35インチ(9mm)を有した。このウェブを水平形2ロールコーターに送り込み、ここで、74.89重量%のPMA、5.53重量%のK450、15.07重量%のBL16、0.01重量%のGEO、及び4.5重量%のP4からなるプレボンド樹脂を、湿潤追加重量は7グレイン/24平方インチ(29.3gsm)で繊維ウェブに適用した。
【0109】
コーティングされたウェブを、163〜177℃に維持された炉に送り込み、滞留時間を3分とした。結果として得られたプレボンド繊維ウェブをスプレーブースに送り込み、ここで、19.11重量%のL1、0.40重量%のP1、1.60重量%のSR、0.10重量%のS1、13.58重量%のResin、1.00重量%のS2、及び64.22重量%のAP280からなる樹脂/研磨粒子スラリーを、ウェブの上表面にスプレーした。ブース内で、スプレーノズル(ウェブ移動方向に対して垂直に往復運動するよう取り付けられている)によりスラリーが、湿潤重量約67グレイン/24平方ンチ(280gsm)で適用された。
【0110】
このスラリーコーティングされたウェブを次に、177℃に維持された炉で3分間加熱した。次にこのウェブを裏返し、ウェブの反対側にスラリースプレーコーティングを適用した。コーティングされたウェブを最後に、177℃に維持された炉で3分間加熱して、不織布研磨部材を得た(図2に示す)。これを、シーファー試験及びKCF試験に従って試験した。試験結果を表2に報告する。
【0111】
次に、不織布研磨部材に、16重量%固形物のCaSt溶液を刷毛塗りし、95℃に維持された強制対流炉で20分間加熱して、18グレイン/24平方インチ(75gsm)の乾燥追加物を形成した。結果として得られた物品を、シーファー試験に従って試験し、その結果が表2に報告されている。コーティングされていない不織布研磨物品と、CaStコーティングされた不織布研磨物品との、シーファー試験結果の差も、表2に報告されている。
【0112】
実施例2〜4及び比較例A〜B
実施例2並びに比較実施例A及びBは、アルミナ研磨粒子での更なる実施形態であり、これらは、実施例1と同様に作製されたが、ただし、比較実施例Aのみ、プレボンド組成物が、53.21重量%のPMA、17.94重量%の10度キシレン、7.74重量%のK450、21.1重量%のBL16、及び0.01重量%のGEOからなり、スラリースプレー組成物は表3に報告されている。結果として得られた不織布研磨部材は、シーファー試験及びKCF試験に従って試験された。次に、CaSt溶液を、実施例1に述べられているように適用し、結果として得られた不織布研磨部材(それぞれ図3〜5に示す)が、シーファー試験に従って試験された。結果を表2示す。
【0113】
実施例3(図6に示す)は、Mirka Abrasives、Inc.(Twinsburg、Ohio)から入手した、MIRKA MIRLON 18−111−447 SCUFF PAD不織布研磨ハンドパッドであった。
【0114】
実施例4(図7に示す)は、Saint−Gobain Abrasives Inc.(Worcester、Massachusetts)から入手した、NORTON BEAR−TEX 74700不織布研磨ハンドパッドであった。
【0115】
(実施例5)
実施例5は、CaStコーティングの有効性について、粒子露出の影響を示すために調製された。実施例5は、比較実施例Bの不織布研磨部材をプラズマ処理プロセスに曝露させることにより作製された。このプロセスは、米国特許出願公開第2010/0255254 A1号(Cullerら)の実施例1に記述されており、ただし処理時間を10分間ではなく20分間とした。実施例5の動摩擦係数と研削量を、前の実施例と同様、CaStコーティングありとなしの両方について測定した。結果として得られた不織布研磨部材を図8に示し、その試験結果を表2に報告する。
【0116】
実施例6〜12及び比較実施例C
実施例6〜8及び比較実施例Cは実施例1と同様に、ただしプレボンド組成物は、78.98%のPMA、5.6%のK450、15.26%のBL16、0.01%のGEO、及び0.151.16%のP2とし、スラリースプレー組成物は表3に示されている。結果として得られた不織布研磨部材(それぞれ図9〜12に示す)は、シーファー試験及びKCF試験に従って試験された。
【0117】
次に、CaSt溶液を、実施例1に述べられているように適用し、結果として得られた不織布研磨物品がシーファー試験に従って試験された。その結果が表2に報告されている。
【0118】
実施例9(図13に示す)は、Mirka Abrasives、Inc.から入手した、MIRKA MIRLON 18−111−448 SCUFF PAD不織布研磨ハンドパッドであった。
【0119】
実施例10(図14に示す)は、Saint−Gobain Abrasives Inc.から入手した、NORTON BEAR−TEX 74800不織布研磨ハンドパッドであった。
【0120】
実施例11(図15に示す)は、3M Company(Saint Paul、Minnesota)から入手した、SCOTCH−BRITE DURABLE FLEX S ULF不織布研磨ハンドパッドであった。
【0121】
実施例12(図162示す)は、3M Companyから入手した、SCOTCH−BRITE 7448B不織布研磨ハンドパッドであった。
【0122】
(実施例13〜19)
実施例13〜19は、様々な付加物でステアリン酸塩のタイプの影響を示すために調製され、実施例7と同様に調製されたが、ただし、表4に示す組成に従って、CaSt又はLiStのいずれかが局所的に適用された。コーティングなし及び様々なコーティングの実施例のシーファー試験結果が表4に報告されている。図17〜23はそれぞれ、実施例13〜19に使用された不織布研磨部材を示す。
【0123】
(実施例20及び21)
実施例17及び18は実施例7と同様であり、ただし、2つの異なる金属塩の一定量を、表4に報告されているように適用した。
【0124】
(実施例22〜25)
実施例22〜25は、様々なステアリン酸金属塩の影響を示すため、同じ追加重量(18gsm)で調製され、実施例7と同様に調製されたが、ただし、表5に報告されている組成に従って、CaSt1、NaSt、NaSt1、又はBaStのいずれかが局所的に適用され、また実施例22及び23は、被覆層組成物中のバインダなしで調製された。コーティングなし及び様々なコーティングの実施例のシーファー試験結果が、表5に報告されている。
【0125】
【表2】
【0126】
【表3】
【0127】
【表4】
【0128】
【表5】
【0129】
上述の出願において引用されたすべての参照、特許、又は特許出願は、一貫した方法で全体が参照により本明細書に組み込まれる。組み込まれた参照文献の部分と本願の部分との間に不一致又は矛盾がある場合、前述の情報が優先されるものとする。前述の説明は、請求する開示内容を当業者が実施することを可能にするためのものであり、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではなく、本開示の範囲は特許請求の範囲及びそのすべての等価物によって定義される。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24