(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
患者ケアシステムであって、患者(15a)に治療を施すための医療装置(1)と、患者(15a)及び医療専門家(15b)を含むユーザとの間で通信ネットワーク(16)を介してデータを送受信するよう構成されたサーバシステム(6)とを備え、前記サーバシステムは、さらに患者ケアに関するデータを処理し記憶するよう構成され、前記サーバシステムは、患者ケアに関するデータを記憶するよう構成されたデータベース(6c)と、疾病管理(36)及び患者情報管理プログラム(32)のための患者ケアソフトウェアコンポーネントとを含むアプリケーションサーバ(6b)と、インターネット経由のデータ転送のためのウェブサーバソフトウェアアプリケーションを含む通信サーバ(6a)とを備え、前記患者ケアソフトウェアコンポーネントは、前記通信ネットワークを介して転送される前記医療装置の使用に関するデータを含む医療装置使用データを受け取るように構成され、さらに前記医療装置使用データを患者データ(32c)と関連付けて処理して前記患者の治療に関連した一つのレポート(32f)又は複数のレポートを生成するよう構成され、前記レポートは、前記サーバシステムに記憶された、前記患者ケアシステム登録ユーザそれぞれの役割と権限に応じて、前記通信ネットワークを介して前記登録ユーザによる遠隔アクセスが可能であり、前記患者情報管理プログラムは、投薬歴、遵守状況データ、患者アウトカムレポート、患者健康状態レポート、患者の生理学データレポート、医療装置設定、治療計画データ、及び前記情報の任意の組み合わせの中から選択される情報に基づき、表、チャート、リスト、図、又はグラフィック表示の形態でレポートを生成するよう構成されたレポートコンポーネントを備え、前記レポートコンポーネントは、治療計画の不遵守の影響、又は治療の有効性の評価を容易にする、複合遵守レポートと患者アウトカムレポートを含む、ユーザインターフェース装置(UID)ディスプレイ上に同時に表示するための複合レポートを作成するよう構成され、そしてここで前記システムが、医療装置が使用された時間及び/又は日付が記録されるように、医療装置使用データ、第1データにタイムスタンプするように作動可能であり、そしてここで前記システムが、患者の生理状態の時間及び/又は日付が記録されるように、前記患者データ、第2データにタイムスタンプするように作動可能であり、そして複合遵守レポートと患者アウトカムレポートが、共通する時間間隔について表示されるように、複合遵守レポートが、第1のタイムスケールで表示され、そして患者アウトカムレポートが第2のタイムスケールで表示され、ここで前記第1及び第2のタイムスケールが、相互にずらされ、前記患者アウトカムレポートにおける知覚/測定できる患者アウトカムの時間的遅れが補正され、操作者が前記遵守状況と前記患者アウトカムレポートを一定期間にわたって比較及び/又は関連付けすることができる、患者ケアシステム。
患者ケアシステムであって、患者(15a)に治療を施すための医療装置(1)と、患者(15a)及び医療専門家(15b)を含むユーザとの間で通信ネットワーク(16)を介してデータを送受信するよう構成されたサーバシステム(6)とを備え、前記サーバシステムは、さらに患者ケアに関するデータを処理し記憶するよう構成され、前記サーバシステムは、患者ケアに関するデータを記憶するよう構成されたデータベース(6c)と、疾病管理(36)及び患者情報管理プログラム(32)のための患者ケアソフトウェアコンポーネントとを含むアプリケーションサーバ(6b)と、インターネット経由のデータ転送のためのウェブサーバソフトウェアアプリケーションを含む通信サーバ(6a)とを備え、前記患者ケアソフトウェアコンポーネントは、前記通信ネットワークを介して転送される前記医療装置の使用に関するデータを含む医療装置使用データを受け取るように構成され、さらに前記医療装置使用データを患者データ(32c)と関連付けて処理して患者の治療に関連した一つのレポート(32f)又は複数のレポートを生成するよう構成され、前記レポートは、前記サーバシステムに記憶された前記患者ケアシステムの登録ユーザのそれぞれの役割と権限に応じて、前記通信ネットワークを介して前記登録ユーザによる遠隔アクセスが可能であり、
そしてここで前記システムが、医療装置が使用された時間及び/又は日付が記録されるように、医療装置使用データ、第1データにタイムスタンプするように作動可能であり、そしてここで前記システムが、患者の生理状態の時間及び/又は日付が記録されるように、前記患者データ、第2データにタイムスタンプするように作動可能であり、そして複合遵守レポートと患者アウトカムレポートが、共通する時間間隔について表示されるように、前記複合遵守レポートが、第1のタイムスケールで表示され、そして患者アウトカムレポートが第2のタイムスケールで表示され、ここで前記第1及び第2のタイムスケールが、相互にずらされ、前記患者アウトカムレポートにおける知覚/測定できる患者アウトカムの時間的遅れが補正され、操作者が前記遵守状況と前記患者アウトカムレポートを一定期間にわたって比較及び/又は関連付けすることができる、患者ケアシステム。
前記通信サーバが、無線通信技術(WTT)データ転送のために構成された遠隔サービスデータアップロードソフトウェアアプリケーション(26)をさらに含む請求項1又は2記載の患者ケアシステム。
無線通信ネットワークを介して前記サーバシステムに接続するよう構成された無線通信技術(WTT)送信器を備えた医療装置接続ステーション(22)をさらに備え、前記医療装置接続ステーションは、前記医療装置と相互接続し、前記サーバシステム上の前記WTT遠隔サービスデータアップロードアプリケーションを介して医療装置使用データを前記患者情報管理プログラムアプリケーションに直接アップロードする、請求項3記載の患者ケアシステム。
電話又はタブレット型コンピュータ等のモバイルユーザインターフェース装置(UID)(18b、18c)にインストール可能で、前記サーバシステム上の前記WTT遠隔サービスデータアップロードアプリケーションを介して医療装置使用データを前記患者情報管理プログラムアプリケーションにアップロードするよう構成されたクライアント側ソフトウェアアプリケーションをさらに備えた請求項1から4の何れか1項に記載の患者ケアシステム。
前記医療装置は、無線通信ネットワークを介して前記サーバシステムに接続するよう構成された無線通信技術(WTT)送信器を組み込んでおり、また前記医療装置は、前記サーバシステム上のWTT遠隔サービスデータアップロードアプリケーション(26)を介して医療装置使用データを前記患者情報管理プログラムアプリケーションにアップロードするよう構成された、請求項1又は2記載の患者ケアシステム。
前記サーバシステムは、Eメール及び/又はSMS(ショートメッセージサービス)通知を患者、及び、必要に応じ前記システムの他のユーザに送信するよう構成された通知サービスソフトウェアコンポーネント(30b)をさらに備え、通知はアラーム、訪問リマインダー、治療計画情報、健康情報、薬剤情報を含む群から選択される請求項1から7の何れか1項に記載の患者ケアシステム。
前記サーバシステムは患者がオンラインでアクセスできる検査(40a)を含む患者治療サービスソフトウェアコンポーネントをさらに備え、前記ソフトウェアコンポーネントは視力検査及び歩行検査等の検査結果を取得するよう構成され、前記検査結果を前記レポートソフトウェアコンポーネントに入力する請求項1から8の何れか1項に記載の患者ケアシステム。
前記サーバシステムは、認知訓練及び可動性訓練の中から選択される訓練運動を含む、患者がオンラインでアクセスできる訓練運動(40b)を含む患者治療サービスソフトウェアコンポーネントをさらに備えた請求項1から9の何れか1項に記載の患者ケアシステム。
患者治療サービスが、さらに、前記患者の生理学的計測データの生理学的計測に関するセンサから送られるデータを受け取るように構成され、前記患者の生理学的計測データは、センサにより自動的に感知され、前記患者のユーザインターフェース装置(18)及び/又は医療装置(1)を介し、及び/又は前記感知装置もしくは訓練装置により前記サーバシステムに送信され、前記生理学データは、体温、血圧、脈拍、ガルバニック皮膚反応、表面筋電図、脳波測定値、眼球運動測定値、心電図測定値、呼吸センサ測定値、血糖センサ測定値の中から選択される、請求項9又は10記載の患者ケアシステム。
患者ケアシステムであって、薬剤を投与する医療装置と、前記医療装置の使用に関するデータである第1データを取得するようにした第1データ入力装置と、患者の生理学的状態に関するデータである第2データを取得するようにした第2データ入力装置と、前記第1と第2のデータ入力装置と通信し前記第1と第2のデータを取得し、前記第1データを処理して治療計画の遵守状況に関するデータである処理済第1データを生成するようにした処理部と、前記処理部と通信し、前記治療計画の遵守状況を表す第1グラフィック表示及び前記第2データを表す第2グラフを表示し、ここで前記第1及び第2グラフィック表示がタイムスケールで表示され、ここで前記第1及び第2のタイムスケールが、相互にずらされ、前記患者アウトカムレポートにおける知覚/測定できる患者アウトカムの時間的遅れが補正され、操作者が治療計画遵守状況と、第2データを比較することができるようにした表示部とを備え、前記第2データは臨床的に有効な質問票の質問に対する回答の形で前記患者から集められたデータを含む、患者ケアシステム。
前記第1データに前記医療装置の使用時刻及び/又は日付を記録できるようにし、前記第2データに患者の生理学的状態の時刻及び/又は日付を記録できるようにした請求項12又は13記載のシステム。
関節リウマチ患者、若年性関節リウマチ患者、乾癬患者、プラーク乾癬患者、クローン病患者、若年クローン病患者、喘息患者、乾癬性関節炎患者、潰瘍性大腸炎患者、全身性エリテマトーデス患者、または強直性脊椎炎患者のために構成された請求項1、2、又は12に記載の患者ケアシステム。
治療計画の有効性を監視する方法であって、医療装置の使用に関するデータである第1データを処理部に送信することと、患者の生理学的状態に関するデータである第2データを処理部に送信することと、第1データを処理して、前記治療計画の遵守状況に関するデータである処理済第1データを生成することと、前記治療計画の遵守状況を表す第1グラフィック表示と前記第2データを表す第2グラフィック表示を表示部に表示し、操作者が前記治療計画の遵守状況と前記第2データを比較できるようにすることとを含み、ここで医療装置の使用の時間及び/又は日付が記録されるように、前記医療装置使用データ、第1データにタイムスタンプされ;そしてここで患者の生理的状態の時間及び/又は日付が記録されるように、患者の生理的状態についてのデータ、第2データにタイムスタンプされ、そして前記第1及び第2グラフィック表示がタイムスケールに基づいて表示され、そして前記第1及び第2タイムスケールが相互にずらされ、前記患者アウトカムレポートにおける知覚/測定できる患者アウトカムの時間的遅れが補正され、操作者が前記遵守状況と前記患者アウトカムレポートを一定期間にわたって比較及び/又は関連付けすることができる、方法。
前記第1データに時刻記録が付されて前記医療装置の使用時間及び/又は日付が記録され、前記第2データに時刻記録が付されて患者の生理学的状態の時間及び/又は日付が記録される請求項18記載の方法。
電話又はタブレット型コンピュータ等のモバイルユーザインターフェース装置(UID)にインストールできるクライアント側ソフトウェアアプリケーションを提供することと、
前記サーバシステム上の前記WTT遠隔サービスデータアップロードアプリケーションを介して、医療装置使用データを前記患者情報管理プログラムアプリケーションにアップロードすることと
をさらに含む請求項21記載の方法。
前記治療計画の有効性を評価する方法又は前記治療計画の有効性を監視する方法が、関節リウマチ患者、若年性関節リウマチ患者、乾癬患者、プラーク乾癬患者、クローン病患者、若年クローン病患者、喘息患者、乾癬性関節炎患者、潰瘍性大腸炎患者、全身性エリテマトーデス患者、または強直性脊椎炎患者のために構成された請求項18、21、又は24に記載の方法。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、医療専門家のために患者の治療監視を改善し患者のウェルネスとケアを改善する患者ケアシステムを提供することである。
【0011】
医療専門家(HCP)の意思決定のための、信頼性、関連性のある、判読が容易な情報を提供する患者ケアシステムを提供することには利点がある。
【0012】
患者への薬剤投与を楽にする患者ケアシステムを提供することには利点がある。
【0013】
HCPと患者の間の、健康に関する容易なコミュニケーションを提供する患者ケアシステムを提供することには利点がある。
【0014】
患者の病状に応じて治療とウェルネスのための付随的サービスを提供する患者ケアシステムを提供することには利点がある。
【0015】
特に、薬剤投与の効果が投与後の時間経過に伴い大きく減少する、多発性硬化症や成長ホルモン分泌不全症等の疾患のための治療計画の有効性を、信頼性、経済性をもって追跡することのできる患者ケアシステムを提供することには利点がある。
【0016】
本発明の目的が請求項1及び2の患者ケアシステムにより達成された。様々な有利な特徴が従属請求項で提示される。
【0017】
本明細書では、患者に治療を施す医療装置と、患者と医療専門家を含むユーザとの間で通信ネットワークを介してデータを送受信するよう構成されるサーバシステムとを備え、前記サーバシステムがさらに患者ケアに関するデータを処理し記憶するよう構成される患者ケアシステムが開示される。前記サーバシステムは、患者ケアに関するデータを暗号化し、暗号化したデータを記憶するように構成されたデータベースと、疾病管理及び患者情報管理プログラムのための患者ケアソフトウェアコンポーネントを含むアプリケーションサーバと、インターネット経由のデータ転送のためのウェブサーバソフトウェアアプリケーションを含む通信サーバを備え、前記患者ケアソフトウェアコンポーネントは、前記通信ネットワークを介して転送される前記医療装置の使用に関するデータを含む医療装置使用データを受信することができ、またさらに前記医療装置使用データを患者データと関連付けて処理して、患者の治療に関連した一又は複数のレポートを生成することができ、前記レポートは、サーバシステムに記憶された、患者ケアシステム登録ユーザそれぞれの役割と権限に応じ、通信ネットワークを介して登録ユーザによる遠隔アクセスが可能である。
【0018】
本発明の第1局面によれば、患者情報管理プログラムは、投薬歴、遵守状況データ、患者アウトカムレポート、患者健康状態レポート、患者生理学データレポート、医療装置設定、治療計画データ、及び前記の情報の任意の組み合わせの中から選択される情報に基づき、表、チャート、リスト、図、又はグラフィック表示の形態でレポートを作成するよう構成されるレポートコンポーネントを備え、前記レポートコンポーネントは、ユーザインターフェース装置(UID)ディスプレイ上に同時に表示するための複合レポートを生成するよう構成され、前記複合レポートには、治療計画の不遵守の影響又は治療の有効性の評価を容易にする、計画遵守状況と患者アウトカムの複合レポートが含まれる。
【0019】
本発明は、治療と健康状態に関連した生活の質の有効性評価のための総合的ケアシステムを提供し、これにより、医療専門家(HCP)は患者の治療計画における投薬と治療を改善することができるようになる。
【0020】
本患者ケアシステムの別の利点としては、このシステムはHCPの役に立つだけでなく、患者が治療及びそれに関連する身体的、心理的効果を自己監視することが可能となり、これにより患者が疾病管理と治療上の意思決定に積極的になることが考えられ、さらにそれにより治療計画遵守と、最終的にはアウトカムの改善につながる可能性がある。
【0021】
さらに別の利点としては、アプリケーションは完了した方法の数、又は報告頻度によって患者に限定を加えないので、HCPは、自身の関心に応じて、本システムが特定の間隔(例えば毎月)で特定のPRO評価をするように構成することができる。このため、HCPは積極的に患者を監視するため本システムを用いることができる。
【0022】
通信サーバは、有利には、さらにセル式携帯電話ネットワークを用いた無線通信技術(WTT)データ転送用に構成された遠隔サービスデータアップロードソフトウェアアプリケーションを備えるようにしてもよく、これにより、無線通信技術(WTT)送信器を備えたスマートフォンやタブレット型コンピュータ等のモバイル機器を持つユーザはサーバシステムに遠隔接続することができる。患者ケアシステムは、有利には、さらに無線通信ネットワークを介してサーバシステムに接続するよう構成された無線通信技術(WTT)送信器を備えた医療装置接続ステーションを備え、医療装置接続ステーションは医療装置と相互接続して、サーバシステム上のWTT遠隔サービスデータアップロードアプリケーションを介して医療装置使用データを患者情報管理プログラムアプリケーションにアップロードするようにしてもよい。あるいは、医療装置に、無線通信ネットワークを介してサーバシステムに接続するよう構成された無線通信技術(WTT)送信器を組み込み、医療装置がサーバシステム上のWTT遠隔サービスデータアップロードアプリケーションを介して医療装置使用データを患者情報管理プログラムアプリケーションに直接アップロードするようにしてもよい。
【0023】
一実施形態において、サーバシステム上のWTT遠隔サービスデータアップロードアプリケーションを介して医療装置使用データを患者情報管理プログラムアプリケーションにアップロードするよう構成されたクライアント側ソフトウェアアプリケーションを、電話やタブレット型コンピュータ等のモバイルユーザインターフェース装置(UID)にインストールしてもよい。
【0024】
治療計画の遵守状況は第1グラフィック表示で表すようにしてもよく、患者の生理的状態に関連するアウトカムレポートを第2グラフィック表示で表すようにしてもよい。操作者が治療計画の遵守状況と患者の生理的状態を比較できるよう、第1と第2のグラフィック表示のタイムスケールを共通にしてユーザインターフェース装置のグラフィックディスプレイ上に同時に表示するようにしてもよい。
【0025】
患者ケアシステムは、有利には、さらにEメール及び/又はSMS(ショートメッセージサービス)通知を患者及び必要に応じシステムの他のユーザに送信するよう構成された通知サービスソフトウェアコンポーネントを備えるようにしてもよい。通知には、アラーム、訪問リマインダー、治療計画情報、健康情報、及び薬剤情報を含めることができる。
【0026】
患者ケアシステムは、有利には、さらに、ユーザ、特に患者がサーバシステムからアクセス又はダウンロードが可能な、視力検査や歩行検査等の検査を含む患者治療サービスソフトウェアコンポーネントを備えるようにしてもよく、前記ソフトウェアコンポーネントは、検査結果を取得し、検査結果をレポートソフトウェアコンポーネントに入力するように構成される。前記患者治療サービスソフトウェアコンポーネントには、認知訓練や可動性訓練等の訓練運動を含めることもできる。有利な実施例において、患者治療サービスはさらに、患者の生理学的計測データの生理学的計測に関するセンサから送られるデータ、例えば、センサにより自動的に感知され、患者のユーザインターフェース装置もしくは医療装置を通じ、又は感知装置もしくは訓練装置によりサーバシステムに送信されたデータを受け取るように構成してもよい。生理学データには、例えば、体温、血圧、脈拍、体重、身長、消費カロリー、ガルバニック皮膚反応、表面筋電図、脳波、眼球運動、呼吸、筋肉の動き、血糖値、及び監視中の病状に関係する測定可能な他のパラメータから一又は複数を含めることもできる。
【0027】
本発明の目的が、治療を監視し慢性疾患や病状に苦しむ患者にケアを提供する請求項39の方法により達成された。本発明の方法の様々な有利な特徴が従属請求項で提示される。
【0028】
本明細書において、治療を監視し慢性的な疾患又はや病状に苦しむ患者にケアを提供する方法であって、
・患者に治療薬を投与する医療装置を提供することと、
・通信ネットワークを介して患者及び医療専門家を含むユーザとの間でデータを送受信するよう構成されたサーバシステムを備えたコンピュータ化された患者ケアシステムであって、前記サーバシステムは、患者に関するデータを記憶するよう構成されたデータベースと、神経変性疾患管理及び患者情報管理のための患者ケアソフトウェアコンポーネントを含むアプリケーションサーバと、通信ネットワークを介したデータ転送のための通信サーバとを含む、コンピュータ化された患者ケアシステムを提供することと、
・患者ケアに関するデータをサーバシステム上で処理し記憶することと、
・前記医療装置の使用に関するデータを含む医療装置使用データ通信ネットワークを介しサーバシステムに転送することと、
・前記医療装置使用データを患者データと関連付けて処理し、患者の治療に関連した一又は複数のレポートを生成することと、
・サーバシステムに記憶されている患者ケアシステム登録ユーザそれぞれの役割と権限に応じ、登録ユーザに前記レポートへの遠隔アクセスを通信ネットワークを介して提供することと
を含む方法が開示される。
【0029】
前記方法は、有利には、
・電話やタブレット型コンピュータ等の移動式ユーザインターフェース装置(UID)にインストール可能なクライアント側ソフトウェアアプリケーションを提供することと、
・サーバシステム上のWTT遠隔サービスデータアップロードアプリケーションを介して、医療装置使用データを患者情報管理プログラムアプリケーションにアップロードすることと
を含んでいてもよい。
【0030】
前記方法は、有利には、
・サーバシステム上のWTT遠隔サービスデータアップロードアプリケーションを介して、医療装置使用データを医療装置から直接、患者情報管理プログラムアプリケーションにアップロードすること
を含んでいてもよい。
【0031】
前記方法は、有利には、
・投薬歴、治療計画遵守データ、患者アウトカムレポート、患者健康状態レポート、患者生理学データレポート、医療装置設定、治療計画データ、及び前記の情報の任意の組み合わせの中の任意の一又は複数から選択される情報に基づき、表、チャート、リスト、図、又はグラフィック表示の中の任意の一又は複数から選択される形態でレポートコンポーネントソフトウェアによりレポートを生成すること
を含んでいてもよい。
【0032】
前記方法は、有利には、
・ユーザインターフェース装置(UID)ディスプレイ上に同時に表示するための2つ以上のレポートからなる複合レポートを生成し、前記複合レポートには、治療計画の不遵守の影響評価を容易にする、治療計画遵守状況と患者アウトカムの複合レポートを含むこと
を含んでいてもよい。
【0033】
有利には、治療計画の遵守状況は第1グラフィック表示で表すようにしてもよく、患者の生理的状態に関連する結果レポートを第2グラフィック表示で表し、操作者が治療計画の遵守状況と患者の生理的状態を比較できるよう、第1と第2のグラフィック表示のタイムスケールを共通にしてもよい。
【0034】
あるいは、複合遵守状況レポートを第1タイムスケールについて表示し、患者アウトカムレポートを第2タイムスケールについて表示し、第1と第2のタイムスケールを揃えて同時に表示して複合遵守状況レポートと患者アウトカムレポートが同じタイムスケールについて表示されるようにし、操作者が遵守状況と患者アウトカムレポートを一定期間にわたって比較及び/又は関連付けすることができるようにしてもよい。
【0035】
あるいは、複合遵守状況レポートを第1タイムスケールについて表示し、患者アウトカムレポートを第2タイムスケールについて表示し、第1と第2のタイムスケールを相互にずらし、患者アウトカムレポートを複合遵守状況レポートと共通のタイムスケールについて表示し、操作者が遵守状況と患者アウトカムレポートを一定期間にわたって比較及び/又は関連付けすることができるようにしてもよい。この場合の利点は、健康に対するある種の影響については、薬剤の服用もしくは服用漏れと、患者への、計測可能もしくは知覚されるアウトカムへの影響との間に時間的遅れがあるものがあることである。
【0036】
遵守状況データと患者アウトカムレポートを表示するタイムスケールとしては、時間、日、週、月、年又はこれらの任意の組み合わせとしてもよい。
【0037】
前記方法は、有利には、
・通知サービスソフトウェアコンポーネントによってEメール及び/又はSMS(ショートメッセージサービス)通知を患者及び必要に応じその他のシステム利用者に送信し、通知内容は、アラート、訪問リマインダー、治療計画情報、健康情報、及び薬剤情報を含む群から選ぶこと
を含んでいてもよい。
【0038】
前記方法は、有利には、
・患者に検査へのオンラインのアクセスを提供することと、
・患者治療サービスソフトウェアコンポーネントにより、前記検査の結果をオンラインで自動的に取得することと、
・前記検査結果をレポートソフトウェアコンポーネント及び/又はデータベースに入力することと
を含んでいてもよい。
【0039】
前記方法は、有利には、認知訓練、可動性訓練、言語訓練、視力訓練、心血管強化運動、理学療法から選択される任意の一又は複数の訓練運動へのオンラインのアクセスを患者に提供すること
を含んでいてもよい。
【0040】
前記方法は、有利には、
・患者の生理学的測定データの生理学的測定に関するセンサから送られるデータを受信することと、
・センサからの前記データを、患者のユーザインターフェース装置及び/もしくは医療装置から選択される通信機能つきの装置を介して、及び/又は感知装置もしくは訓練装置により、サーバシステムに送信し、生理学データには、体温、血圧、脈拍、ガルバニック皮膚反応、表面筋電図、脳波測定値、眼球運動測定値、心電図測定値、呼吸センサ測定値、血糖センサ測定値のうちの任意の一又は複数を選ぶことと
を含んでいてもよい。
【0041】
本発明の一局面によれば、慢性的病状又は慢性疾患の治療計画の有効性を評価する方法であって、
・薬剤を投与する医療装置を提供することと、
・医療装置の使用データを計算システムに送信することと、
・処方された治療計画データと前記使用データに基づき治療計画の遵守状況を計算することと、
・計算システムに患者報告アウトカムを送信することと、
・計算システムの中に治療計画の遵守状況の第1グラフィック表示と患者報告アウトカムの第2グラフィック表示を生成し、前記第1と第2のグラフィク表示は同じタイムスケールを含むようにすることと、
・前記報告をユーザインターフェース装置のスクリーン上に表示して医療専門家がアクセスできるようにし、前記第1と第2のグラフィック表示が同時に表示されるようにすることと
を含む方法が本明細書においてさらに開示される。
【0042】
患者報告アウトカムを計測する利点としては、治療の効果と疾患の経過について患者の受け止め方を考慮に入れて多発性硬化症等の疾患を持つ患者の生活経験のより完全な状況が把握でき、定量可能でより包括的な測定基準を提供することができる。
【0043】
前記計算システムは、有利には、上記患者ケアシステムのサーバシステムの一又は複数の特徴を備えていてもよい。
【0044】
本発明の具体的な一局面において、慢性的病状又は慢性疾患は多発性硬化症を含む神経変性疾患である。
【0045】
本発明の具体的な一局面において、慢性的病状又は慢性疾患は成長ホルモン分泌不全症である。
【0046】
本発明の一定の目的は、治療計画の有効性を監視するための、請求項15の患者ケアシステム及び請求項39の方法によっても達成される。
【0047】
患者ケアシステムであって、薬剤を投与する医療装置と、医療装置の使用に関する第1データを取得することができる第1データ入力装置と、患者の生理的状態に関する第2データを取得することができる第2データ入力装置と、第1データと第2データ入力装置と通信し第1データと第2データを取得し、また、第1データを処理して治療計画の遵守状況に関する処理済第1データを作成することができる少なくとも一つの処理部と、前記処理部と通信して治療計画の遵守状況を表す第1グラフィック表示と前記第2データを表す第2グラフィック表示とを表示する表示部を備えたユーザインターフェース装置とを備え、操作者が治療計画の遵守状況と臨床的に有効な質問票への回答の形で患者から収集されたデータを含む第2データとを比較できるようにしたシステムが本明細書において開示される。
【0048】
一実施形態において、本発明は、コンピュータ化された医療システムであって、患者に治療を施すための医療装置と、サーバシステムと、医療装置と通信し、医療装置の使用に関するデータである第1データをサーバに送信するようにした送信器と、患者の健康に関するデータである第2データを、前記第1データと第2データを記憶するようにしたサーバに送信する第1コンピュータ端末と、サーバシステムと通信し前記第1データから得られた治療の遵守状況を表す第1グラフィック表示と前記第2データを表す第2グラフィック表示とを同時に表示する第2コンピュータ端末とを備えたシステムを提供する。
【0049】
本発明の一実施形態に関し、治療計画の有効性を監視する方法であって、医療装置の使用に関する第1データを処理部に送信することと、患者の生理学的状態に関する第2データを処理部に送信することと、データを処理して治療計画の遵守状況に関する処理済第1データを作成することと、治療計画の遵守状況を表す第1グラフと第2データを表す第2グラフとを表示部に表示して、操作者が治療計画の遵守状況と第2データを比較できるようにすることとを含む方法が本明細書中にさらに開示される。
【0050】
前記処理部は遠隔アクセスが可能なサーバシステムであってもよい。
【0051】
前記第1データは、投与した薬剤の種類、投薬量、投与方法、投与時刻、投与日、及び投与頻度から選択されるデータを含むようにしてもよい。第1データ入力装置による第1データの取得とユーザインターフェース装置の表示部による第1データの表示との間に第1データの処理を行うために処理部を設け、所定の治療計画の遵守状況を表すようにしてもよい。前記第2データは、患者報告アウトカム、健康状態検査結果、生理学データの中から選択されるデータを含むようにしてもよい。
【0052】
好ましくは、前記システムは、医療装置の使用時刻及び/又は日付を記録する時計モジュールにより第1データに時刻記録を付すようにする。好ましくは、前記システムは、患者の生理学的状態が記録された時刻及び/又は日付を記録する時計モジュールにより第2データに時刻記録を付すようにする。理想的には、第1データと第2データの両方に時刻記録を付す。好ましい実施形態において、第1データ入力装置は第1データに時刻記録を付し、第2データ入力装置は第2データに時刻記録を付す。「時刻記録を付された」という用語は、データが入力された時刻及び/又は日付を記録することを指す。例えば、第1データ入力装置は、毎回の投薬の時刻及び/又は日付を記録するようにしてもよい。必要に応じ、第2データ入力装置は、毎回の患者報告アウトカム(PRO)、健康状態検査結果、及び生理学データの時刻及び/又は日付を記録するようにしてもよい。
【0053】
好ましくは、表示部は第1グラフィック表示と第2グラフィック表示を共通の時間軸の上に表示する。時間軸は時間を図示したものである。有利なことに、これによりユーザ、特に医療専門家は、決められた経過期間について、処理済第1データと第2データの間の相関の有無を判断することができる。相関関係は、投薬計画等の治療計画の有効性を監視するために用いることができる。例えば、治療計画の遵守状況が患者の生理学的状態に良い影響を与えたか否かを判断することができる。ある種の実施形態においては、治療計画は事前に決定されている。好ましくは、ユーザインターフェース装置(UID)は第1グラフィック表示と第2グラフィック表示を同時に表示部に表示できる。
【0054】
好ましくは、ユーザインターフェース装置は、第1グラフィック表示と第2グラフィック表示を重ね合わせて表示できる。有利には、これにより操作者は、第1と第2のグラフィック表示を同時に見ることができる。これにより、第1と第2のグラフィック表示の間に相関があれば、迅速かつ明確に視認することができる。
【0055】
好ましくは、UID表示部は、処理済第1データを第1グラフィック表示として表示できるようにする。好ましくは、前記表示部は、第2データを第2グラフィック表示として表示できるようにする。有利なことに、これにより操作者は第1データ中の変化、及び/又は第2データ中の変化を視認することができる。必要に応じ、処理済第1データと第2データには時刻記録が付される。この実施形態においては、処理済第1データと第2データを時間軸を持つグラフ上にプロットすることができる。理想的には、処理済第1データと第2データは対応する時間軸上にプロットされる。
【0056】
第1グラフィック表示は第2グラフィック表示の手前又は後ろに重ね合わせることができる。
【0057】
グラフィック表示が表示されるユーザインターフェース装置は、処理部、医療装置、第1データ入力装置、及び第2データ入力装置の中から選択される、他の装置から、物理的及び地理的に隔てられていてもよい。「物理的隔たり」という用語は、一又は複数の物の間に物理的接触が発生しないことを意味する。「地理的隔たり」という用語は、一又は複数の物が地理的に別の場所、例えば、異なる建物、場所、村、町、都市、又は国に位置することを意味する。一般に、「隔てる」、「隔てられた」という語は、物理的隔たりを指し、場合により地理的隔たりを指す。表示部を上記の一又は複数の装置から物理的及び地理的に隔てることには、患者以外の、患者から地理的に隔てられた操作者がデータを評価することができるという利点がある。操作者は、例えば医療実務者もしくは訪問看護師等の医療関係者、又は医療保険会社等の医療費支払者であり得る。医療実務者は医師又は看護師であり得る。
【0058】
表示部のあるUIDは、医療関係者が操作する、携帯電話(例えばスマートフォン)又はコンピュータ(例えばデジタルタブレットもしくはPC)としてもよい。典型的には、訪問看護師は第1データと第2データを携帯電話上で比較することができる。典型的には、医師は処理済第1データと第2データを自身の診察室のPCで比較することができる。典型的には、医療保険会社は処理済第1データと第2データを保険会社事務所のPCで比較することができる。処理済第1データと第2データを比較することにより、医療関係者は処理済第1データと第2データの間の相関の有無を判断することができる。この相関は治療計画の有効性を監視するために用いることができる。表示部の操作者は患者でもあり得る。この実施形態において、表示部は、処理部、医療装置、第1データ入力装置、及び第2データ入力装置の中から選択される装置から、物理的に隔てられていてもよい。あるいは、表示部、第1データ入力装置、及び第2データ入力装置が一つの同じ装置であってもよい。この実施形態のさらに別の変形例においては、表示部、医療装置、第1データ入力装置、及び第2データ入力装置が一つの同じ装置であってもよい。有利には、患者は表示部に表示される処理済第1データと第2データを比較することができ、表示部は、携帯電話(スマートフォン等)又はコンピュータ、例えばPCもしくはデジタルタブレットから選択される。処理済第1データと第2データを比較することにより、患者は処理済第1データと第2データとの間の相関の有無を判断することができる。この相関は治療計画の有効性を監視するために用いることができる。
【0059】
処理部は、医療装置、第1データ入力装置、第2データ入力装置、及び表示部を備えるユーザインターフェース装置を含む、システムの他のハードウェアコンポーネントから物理的及び地理的に隔てられていてもよい。有利なことに、これにより、セキュアな場所にある処理部で第1データと第2データを記憶及び/又は処理することができる。これによりデータのセキュリティが向上する。好ましい実施形態において処理部はサーバシステム内にある。
【0060】
好ましくは、第1データ、処理済第1データ、及び第2データは暗号化される。有利には、これによりデータのセキュリティが向上する。
【0061】
一実施形態において、処理部は、無線通信トランスファー技術(WTT)を備えた一又は複数の医療装置接続ステーションを介し、第1データ入力装置、及び/又は第2データ入力装置、及び/又は表示部のあるUIDと通信することができる。一実施形態において、医療装置接続ステーションは、GSM(グローバルモジュール通信システム)又はUMTS(ユニバーサル移動体通信システム)等の携帯電話ネットワークに接続するための契約者識別モジュールカード(SIMカード)を備える。
【0062】
一実施形態において、医療装置接続ステーションは、処理部と、医療装置と、第1データ入力装置と、第2データ入力装置と、表示部のあるUIDとから選択される他の装置から物理的に隔てることができる。医療装置接続ステーションは、医療装置を取り付ける基部としてもよい。
【0063】
医療装置接続ステーションは、赤外線、ラジオ周波数、又は電気通信を介して医療装置と通信するようにしてもよい。それにより、第1データ及び/又は第2データを、医療装置から医療装置接続ステーションに赤外線、ラジオ周波数、又は電気通信を介してやりとりすることができる。有利な実施形態において、医療装置接続ステーションは、携帯電話通信ネットワークを介してデータを処理部に送信することを可能とするWTT送信器である。
【0064】
一実施形態において、医療装置は、第1及び第2のグラフィック表示を生成することができる前記少なくとも一つの処理部のうちの一つを備える。
【0065】
一実施形態において、医療装置接続ステーションは、患者のPC又はデジタルタブレット等のコンピュータの形態のユーザインターフェース装置に接続される。この接続は無線でも、USB接続等の有線接続でもよい。送信器は第1データ及び/又は第2データをこのコンピュータに送信してもよい。次いでコンピュータは第1データ及び/又は第2データを処理部に送信してもよい。コンピュータはデータの送信をインターネット接続を介して行ってもよい。
【0066】
一実施形態において、第1データ入力装置は医療装置に組み込まれ、これにより医療装置は第1データを取得できる。医療装置は、投与した薬剤の種類、投薬量、投与方法、投与時刻、投与日、及び投与頻度から選択されるデータを記録することができ、必要に応じ、そのデータから、所定の治療計画の遵守状況を計算することができる。医療装置は、医療装置接続ステーションを介してサーバシステム内の処理部と通信するようにしてもよい。あるいは、医療装置に無線送信器、具体的にはWTT送信器を組み込んでもよい。
【0067】
第2データ入力装置は、携帯電話(例えばスマートフォン)、又は、PCもしくはデジタルタブレット等のコンピュータであってもよい。患者は、自身の生理的状態に関するデータである第2データを自身の携帯電話又はコンピュータに入力することができる。この実施形態において、医療装置は第2データ入力装置(例えば、携帯電話又はコンピュータ)から物理的に隔てられている。有利なことに、第2データ入力装置として携帯電話又はコンピュータを用いることにより、第2データ入力装置と医療装置が一つの同じ装置である場合に比べ、医療装置に必要なハードウェアが少なく、そのため医療装置が軽く小さくなる。
【0068】
別の実施形態において、第1データ入力装置、第2データ入力装置、及び場合に応じ、送信器は、単一の装置に組み込まれる。好ましくは、この単一の装置は携帯電話(例えばスマートフォン)又はコンピュータである。コンピュータはPC又はデジタルタブレットでもよい。この実施形態において、医療装置は物理的に第1データ入力装置、第2データ入力装置、及び送信器(例えば携帯電話又はコンピュータ)から隔てられている。有利なことに、これにより例えば1回限りの投薬用とする等、医療装置をより容易に処分可能なものにできる。有利なことに、第1データと第2データを同じユーザインターフェース装置に入力することができる。
【0069】
一実施形態において、携帯電話やコンピュータ等のユーザインターフェース装置は、医療装置、例えば使い捨ての1回使用型医療装置との通信を、当該医療装置に付したラベルを介して行うように構成される。理想的には、ラベルは、近距離通信(NFC)チップ、及び/又はクイックレスポンス(QR)コードである。医療装置は、NFC送受信機又はQRコードリーダーを備えた携帯電話又はコンピュータと接触又は近接させることができる。これにより電話又はコンピュータによるラベルの識別が開始される。有利なことに、携帯電話又はコンピュータが個々の医療装置を識別することができる。したがって、携帯電話又はコンピュータは、第1データと、第2データと、医療装置識別データとの中から選択されるデータを取得するようにしてもよく、そのデータをサーバシステムに送信するようにしてもよい。
【0070】
別の実施形態によれば、医療装置、第1データ入力装置、及び第2データ入力装置が同じ装置内に組み込まれる。この場合、医療装置は第1データと第2データを取得することができる。有利なことに、患者は一つの装置にデータを入力するだけでよい。これは、携帯電話やコンピュータを使いたくないと思う患者には有益である。医療装置はさらに送信器を備え、これにより医療装置が第1データと第2データを医療装置から物理的又は地理的に隔てられた処理部に送信するようにしてもよい。あるいは、送信器は医療装置を取り付ける基部としてもよい。有利には、送信器はWTT送信器とすることができる。さらに必要に応じ、健康状態検査結果等の追加的な第2データを別の第2データ入力装置、例えば患者が所有するコンピュータで取得するようにしてもよい。
【0071】
医療装置は、患者に薬剤を投与する装置としてもよい。医療装置は、注射装置、例えば皮下注射装置、静脈注射装置、筋肉内注射装置としてもよい。医療装置は電子的医療装置又は機械装置としてもよい。好ましくは、医療装置は電子的皮下注射システムである。
【0072】
あるいは、医療装置は、錠剤ディスペンサ、吸入器、又は局所用投与器、例えば噴霧薬ディスペンサとしてもよい。
【0073】
本発明の具体的な一局面において、患者ケアシステム、治療計画の有効性の監視方法、又は治療監視方法は、多発性硬化症、成長ホルモン分泌不全症、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、乾癬、尋常性乾癬、クローン病、若年性クローン病、喘息、乾癬性関節炎、潰瘍性大腸炎、全身性エリテマトーデス、及び強直性脊椎炎の群から選択される疾患のために構成される。
【0074】
「データ」という語は、第1データ、及び/又は第2データ、及び/又は処理済第1データを記述するために用いられる。必要に応じ、「データ」という語を、以下にさらに定義する第3データ、及び/又は第4データを記述するために用いる場合がある。
【0075】
第1データ
一実施形態において、第1データは投与した薬剤の種類、投薬量、投与方法、投与時刻、投与日、及び投与頻度から選択されるデータに関する。
【0076】
本発明の好ましい実施形態において、システムは第1データを処理することができる処理部を備える。好ましい実施形態において、方法はさらに第1データを処理して処理済第1データを作成することを含む。処理済第1データは所定の治療計画の遵守状況に関する。
【0077】
本発明のシステム又は方法は、さらに第3データを備えていてもよい。前記第3データは、所定の治療計画を含む。第3データは、所定の薬剤の種類、所定の投薬量、所定の投与方法、所定の投与時刻、所定の投与日、及び所定の投与頻度から選択されるデータを備えていてもよい。
【0078】
処理済第1データは、所定の治療計画に関連するデータを含むようにしてもよく、これを治療計画遵守状況データと呼ぶことができる。治療計画遵守状況データは、所定の治療計画データと実際の治療計画データの間の相関である。所定の治療計画は、医師等の医療関係者が事前に決定することができる。一実施形態において表示部は処理済第1データ(治療計画遵守状況データ)と第2データ(患者の生理学的状態)を表示する。
【0079】
このように、処理部は、第1データを処理することにより所定の治療計画の遵守状況を計算することができる。処理済第1データは、第1データを第3データと比較することにより計算される。すなわち、所定の治療計画の遵守状況は、実際の治療計画データを所定の治療計画データと比較することにより計算される。
【0080】
所定の治療計画を処方治療計画と呼ぶことがある。
【0081】
したがって、100%の遵守は、患者が所定の治療計画を完全に遵守したことを示し、100%未満の遵守は、患者が所定の治療計画を完全には遵守しなかったこと、例えば、患者が処方された薬剤量を全部注射するには至らなかった場合などを示す。
【0082】
UID表示部は、処理済第1データを、第3データ(すなわち所定の治療計画)に対する遵守状況の百分率として表示することができる。百分率はグラフとして表示することができる。このように、一実施形態において、表示部は処理済第1データのグラフを表示する。
【0083】
好ましくは、UID表示部は、処理済第1データと第2データを同じ時間軸上にグラフィックで表示する。有利には、これにより操作者は所定の治療計画の遵守状況と患者の生理学的状態の間の相関の有無を決定することができる。理想的には、UID表示部は、処理済第1データと第2データを、例えば並べたり、重ね合わせたりして、同時に表示できる。
【0084】
所定の治療計画(すなわち第3データ)は、所定の薬剤の種類、所定の投薬量、所定の投与方法、所定の投与時刻、所定の投与日、及び所定の投与頻度から選択されるデータを含むようにしてもよい。このように、所定の治療計画データは、時刻及び/又は日付の情報を含む。
【0085】
実際の治療計画データ(すなわち第1データ)は、投与した薬剤の種類、投薬量、投与形態、投与時刻、薬剤投与日、及び薬剤投与頻度から選択されるデータを含むようにしてもよい。実際の治療計画データ(すなわち第1データ)には、例えば時計モジュールにより時刻記録を付してもよい。この時刻記録を付した第1データを処理して処理済第1データが得られる。
【0086】
処理部は時刻記録を付した第1データと第3データに含まれる時刻/日を比較することができる。
【0087】
投与方法は、皮下注射、静脈注射、筋肉注射等の注射とすることができ、好ましくは、投与方法は皮下注射である。別の実施形態において、投与方法は経口又は局所的投与である。
【0088】
第1データ入力装置は、スマートフォンアプリケーションを備えた携帯電話、又はウェブベースのアプリケーションを備えたコンピュータの形態を取るUIDであって、アプリケーションで第1データを取得できるものとしてもよい。
【0090】
第2データ
一実施形態において、第2データは、患者報告アウトカム(PRO)、健康状態検査結果、及び生理学データから選択されるデータを含むようにしてもよい。有利には、第2データにはPROを含むようにすることができる。
【0091】
患者報告アウトカム(PRO)とは、臨床的に有効な質問票に対する回答である。質問票には、患者の全体的な健康状態、痛み、認知、疲労感、膀胱の状態、腸の状態、性的満足、視覚障害、心の健康、感情と情動、抑うつ、睡眠、及び健康状態に関する他の判定基準から選択される、判定基準のレベル評価のための質問を含めることができる。質問票は、患者に一又は複数の判定基準について段階評価で点数をつけるよう求めることができる。
【0092】
健康状態検査は可動性検査、歩行検査、視力検査、及び/又は認知検査を含む。検査は患者が自宅でコンピュータ、及び、ラジオ周波数接続(例えばBluetooth(登録商標)又はWi−Fi)によりコンピュータに接続したモーションセンサ等の検査用具を用いて行うようにすることができる。
【0093】
生理学データには、患者の体温、血圧、心拍数、ガルバニック皮膚反応、呼吸、血糖値、脳の活動、眼球運動、筋運動、身長(成長ホルモン治療の場合)が含まれるが、これらに限られない。システムは身長測定器を備えてもよい。
【0095】
第2データ入力装置は、スマートフォンアプリケーションを備えた携帯電話、又はウェブベースのアプリケーションを備えたコンピュータの形態のUIDであって、アプリケーションで第2データを取得できるようにしたものとしてもよい。
【0096】
第3データ
医療装置、コンピュータ、携帯電話、又はサーバは、第3データを備えていてもよい。前記第3データは所定の治療計画を含むようにしてもよい。第3データは、所定の薬剤の種類、所定の投薬量、所定の投与方法、所定の投与時刻、所定の投与日、及び所定の投与頻度から選択されるデータを含むようにしてもよい。有利には、医療装置、コンピュータ、又は携帯電話は、ユーザに、所定の治療計画の実行を思い出させ、又は指示してもよい。
【0097】
第4データ
さらに第4データが医療装置又はUID、例えばコンピュータ又は携帯電話に入力されるようにしてもよい。前記第4データは、医療関係者との面会約束の日付と時刻を含むようにしてもよい。有利には、医療装置又はUIDは、患者に面会約束を思い出させるため合図を出すようにしてもよい。
【0098】
データ入力
第1データは、第1データ入力装置に手動で入力するようにしてもよい。例えば、第1データ入力装置は、タッチスクリーン、キーボード、コンピュータマウス等のユーザインターフェースを備えていてもよい。患者はユーザインターフェースを介してデータを第1データ入力装置に入力することができる。好ましくは、ユーザインターフェースはタッチスクリーンである。理想的には、第1データ入力装置は、タッチスクリーンを備えた医療装置又は携帯電話である。
【0099】
第1データは、第1データ入力装置によって検知されるようにしてもよい。例えば、第1データ入力装置は、投与した薬剤の種類、投薬量、投与方法、投与時刻、投与日、及び投与頻度から選択されるデータを自動的に取得するようにした医療装置としてもよい。
【0100】
第2データは、第2データ入力装置に手動で入力するようにしてもよい。例えば、第2データ入力装置は、タッチスクリーン、キーボード、コンピュータマウス等のユーザインターフェースを有していてもよい。患者はユーザインターフェースを介してデータを第2データ入力装置に入力することができる。好ましくは、ユーザインターフェースはタッチスクリーンである。理想的には、第2データ入力装置は、タッチスクリーンを持つ医療装置又は携帯電話である。
【0101】
第2データは、第2データ入力装置、例えばセンサにより検知されるようにしてもよい。センサは、脳波(EEG)センサ、心電図(ECG又はEKG)センサ、皮膚表面センサ、電子式又はビデオ式の眼球運動センサ、呼吸センサ、血糖値センサ、運動センサ、視力センサ、身長センサから選択してもよい。センサは、ラジオ周波数接続(例えばBluetooth(登録商標)又はWi−Fi)を介し、データを第2データ入力装置に送信してもよい。第2データは複数の第2データ入力装置に入力してもよい。
【0102】
データの記憶と処理
好ましい実施形態において、システムは、遠隔アクセス可能なサーバシステムに組み入れられた第1データ及び/又は第2データを処理するためのデータ処理部を含む。サーバシステムは、第1と第2のグラフィック表示を作成し、表示部に送信することができる。
【0103】
好ましい実施形態において、サーバシステムは、第1データ、処理済第1データ、及び/又は第2データを記憶するためのデータベースを含む。
【0104】
一実施形態において、サーバシステムは、第1データ入力装置、第2データ入力装置、並びに表示部として機能する医療装置及びユーザインターフェース装置(UID)から物理的及び地理的に隔てられている。有利なことに、これにより、セキュアな場所にあるサーバでデータを記憶し、及び/又は処理することができ、個々のユーザがアクセスできる情報の程度と種類はユーザの役割と機能に応じて異なる。これによりグローバルなアクセス可能性及びデータのセキュリティが向上し、また、長期にわたるデータ収集が可能となり、そのデータを疾患治療効果の理解向上のために用いることができる。
【0105】
一実施形態において、医療装置は、第1データ及び/又は第2データをオフラインで記憶するデータ記憶モジュールを備え、前記第1データ及び/又は第2データは、医療装置の操作者の都合の良いタイミングで、サーバシステムに一度に送信することができる。このように、一定期間、例えば数日、数週間、数か月、例えば最大12か月にわたって収集したデータを同時にサーバシステムに送信することができる。
【0106】
データ表示
UID表示部は、処理済第1データと第2データを表示し、操作者が処理済第1データと第2データを比較できるようにする。有利なことに、これにより、操作者はより便利に処理済第1データと第2データの間の相関の有無を決定することができる。
【0107】
好ましい実施形態において、処理済第1データは図、好ましくは第1グラフとして表示することができる。同様に、第2データは図、好ましくは第2グラフとして表示することができる。有利には、第1グラフと第2グラフは同時に表示することができる。例えば、第1グラフと第2グラフを隣合わせで、又は重ね合わせて表示することができる。あるいは、処理済第1データと第2データを日ごと、週ごと、又は月ごと等のカレンダーの形式で表示することができる。
【0108】
通信ネットワーク
システム内でのデータの送信は、携帯電話又はセル式電話ネットワークとしても知られる無線通信技術(WTT)ネットワーク、固定回線電話ネットワーク、インターネットネットワーク、及び、Wi−Fiやイーサネット等の種々の通信プロトコルと通信手段を含むイントラネットネットワークなどのローカルコンピュータネットワークの中から選択される通信ネットワークを介して行われる。
【0109】
多くの実施形態において、データはこれらの一又は複数のネットワーク上で送信することができる。例えば、第1データ入力装置は携帯電話ネットワークを介して第1データをコンピュータに送信してもよい。次いでコンピュータはインターネットネットワークを介してそのデータをサーバシステムに送信してもよい。例えば、第2データ入力装置は、携帯電話ネットワークを介して第2データをサーバに送信してもよい。例えば、サーバシステムは、インターネットネットワークを介して処理済第1データと第2データを表示部に送信してもよい。
【0110】
有利には、装置間のデータ送信は無線で行うことができる。
【0111】
医療装置
医療装置は、患者に対し治療を施すためのもの、具体的には治療薬を投与するためのものである。本発明の一局面において、治療は、インターフェロンベータ1a、例えばRebif(登録商標)又はAvonex(登録商標)による多発性硬化症の治療である。本発明の別の一局面において、治療は、組換え成長ホルモン、例えばSaizen(登録商標)による成長ホルモン分泌不全症の治療である。
【0112】
一実施形態において、医療装置は、皮下注射装置、静脈注射装置、筋肉注射装置等の注射装置である。
【0113】
好ましくは、装置は、電子式皮下注射装置、例えばRebismart(登録商標)、Rebidose(登録商標)、又はEasypod(登録商標)として商業的に知られる種類である。Rebismart(登録商標)は多発性硬化症治療のためにRebif(登録商標)を投与する。Rebidose(登録商標)は、使い捨ての医療装置であり、多発性硬化症治療のためにRebif(登録商標)を投与する。Easypod(登録商標)は成長ホルモン分泌不全症治療のためにSaizen(登録商標)を投与する。
【0114】
一実施形態において、多発性硬化症治療用の医療装置は、第1データ入力装置を組み込んでいる。有利なことに、これは多発性硬化症治療用の医療装置が第1データを取得できることを意味する。この実施形態において、多発性硬化症治療用の医療装置は、所定の治療計画の遵守状況、投与した薬剤の種類、投薬量、投与方法、投与時刻、投与日、及び投与頻度から選択されるデータを記録することができる。
【0115】
多発性硬化症治療用の医療装置は、送信器を介してサーバと通信するようにしてもよい。
【0116】
好ましくは、送信器は、多発性硬化症治療用の医療装置を取り付ける基部とする。多発性硬化症治療用の医療装置は、赤外線、ラジオ周波数、又は電気的接続により通信するようにしてもよい。理想的には、送信器は無線送信器である。
【0117】
成長ホルモン分泌不全症治療用の医療装置は、多発性硬化症治療用の医療装置と同様に動作するようにしてもよい。
【0118】
多発性硬化症又は成長ホルモン分泌不全症の治療用の医療装置は、第2データ入力装置とともに用いてもよい。第2データ入力装置は、データの取得と処理のためのクライアント側ソフトウェアアプリケーションを備えた携帯電話又はPCもしくはデジタルタブレット等のコンピュータとしてもよい。この実施形態において、第2送信器と携帯電話又はコンピュータが同じ装置に組み込まれる。この場合、患者は、自身の生理的状態に関するデータである第2データを、携帯電話又はコンピュータに入力することができる。この実施形態において、多発性硬化症又は成長ホルモン分泌不全症の治療用の医療装置は、第2データ入力装置(例えば携帯電話又はコンピュータ)から物理的に隔てられている。有利なことに、携帯電話又はコンピュータを第2データ入力装置として用いることにより、多発性硬化症又は成長ホルモン分泌不全症の治療用の医療装置に必要なハードウェアが少なくてすむため、医療装置と第2データ入力装置が一つの同じ装置である場合に比較して、装置を軽く小さくすることができる。
【0119】
別の実施形態において、多発性硬化症又は成長ホルモン分泌不全症の治療用の医療装置は、使い捨てであり、第1データ入力装置、第2データ入力装置、及び送信器から物理的に隔てられている。この実施形態において、第1データ入力装置、第2データ入力装置、及び送信器は、例えばデータの取得と処理のためのクライアント側ソフトウェアアプリケーションを備えた携帯電話又はコンピュータなど、同じ装置内に組み込むようにしてもよい。第1データと第2データは同じ携帯電話又はコンピュータに入力することができ、それはユーザの利便性を向上させる。
【0120】
好ましくは、携帯電話又はコンピュータは、使い捨ての多発性硬化症又は成長ホルモン分泌不全症の治療用の医療装置に付されたラベルを介してこの医療装置と通信するように構成される。理想的には、ラベルは、近距離通信チップ及び/又はクイックレスポンスコードである。使い捨ての医療装置は携帯電話又はコンピュータの形態のUIDと接触又は近接させることができ、これにより、携帯電話又はコンピュータによるラベル識別が開始される。
【0121】
有利には、携帯電話又はコンピュータは個々の医療装置を識別できるクライアント側ソフトウェアアプリケーションを備える。このように、携帯電話又はコンピュータは、第1データ、第2データ、及び医療装置を識別するデータを取得し、このデータをサーバシステムに送信することができる。
【0122】
本発明の他の特徴と利点は、以下の詳細な説明を添付の図面を参照しつつ読むことで明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0124】
以下の記載では、本発明の好ましい実施形態において、患者ケアシステム、及び治療の有効性を監視又は評価する方法は、多発性硬化症又は成長ホルモン分泌不全症の治療用に構成される。本発明は、他の疾患、例えば関節リウマチ、若年性関節リウマチ、乾癬、尋常性乾癬、クローン病、若年性クローン病、喘息、乾癬性関節炎、潰瘍性大腸炎、全身性エリテマトーデス、及び強直性脊椎炎にも適用できる。
【0125】
図1を参照すると、本発明による患者ケアシステムは、患者に治療を施す医療装置1、サーバシステム6、ユーザインターフェース装置18、及び、実施形態によっては、医療装置接続ステーション2を備える。サーバシステム6は患者ケアと付随的サービスに関する情報を処理し及び/又は記憶するように構成され、その情報は、通信ネットワーク16、詳細にはインターネット7のようなグローバルコンピュータネットワークを介して送受信される。通信ネットワークには、さらに、携帯電話ネットワーク3等の無線通信転送(WTT)ネットワーク、及びユーザ15とサーバシステム6間の2地点間直接通信を含めることができる。
【0126】
ユーザは、患者と医療専門家(HCP)、特に医師と看護師を含む。ユーザは、例えば訪問看護師を含む患者支援の団体又は個人(PSO)をさらに含むようにしてもよい。ユーザは、一又は複数のシステム管理者、健康保険団体、保健サービス提供者、薬剤製造者及びサプライヤー、薬局、及び保健サービスの支払者をさらに含むようにしてもよい。HCPはシステム内の患者関連情報を管理する。この役割は、患者の治療とケアを向上させるため、患者の登録、患者関連情報の管理と監視を行うものである。システム管理者は、アプリケーション内でのシステム関連機能の管理に責任を持ち、システム関連機能にはユーザ、役割と機能、及びその他のマスターデータの作成が含まれる。訪問看護師は、HCPと似た役割を持つようにしてもよく、全ての患者データを管理することができる。典型的には、訪問看護師はタブレット型コンピュータ又はスマートフォン等の携帯型ユーザインターフェース装置を用いてアプリケーションにアクセスする。訪問看護師は、面会予約を調整し、患者に会い、患者から情報を収集することができる。
【0127】
ユーザインターフェース装置は、ディスプレイと、サーバシステム6又は医療装置接続ステーションとの通信手段とを備えるようにしてもよく、また、パーソナルコンピュータ18a、タブレット型コンピュータ18b、携帯電話18c、又は、グラフィクユーザインターフェースとサーバシステム6もしくは医療装置接続ステーションへの通信手段とを備えた他の電子計算装置を含むようにしてもよい。
【0128】
ユーザインターフェース装置は、医療装置1と一体型としてもよい。そうすれば、実施形態にもよるが、患者は、サーバシステム又は医療装置接続ステーションに接続するための別個のユーザインターフェース装置を必要としない。医療装置及び/又はユーザインターフェース装置に、クライアントアプリケーションプログラムをインストールしてもよく、クライアントアプリケーションプログラムは、サーバシステム6又は医療装置接続ステーション2との接続を確立し、サーバシステム又は医療装置接続ステーションとのデータの送受信を管理するように構成される。
【0129】
医療装置接続ステーション2は、変形例に応じて種々の構成を取り得る。一変形例においては、医療装置接続ステーション2を通信インターフェース装置として構成し、医療装置と、ユーザインターフェース装置、例えば医療専門家15bのユーザインターフェース装置との間の情報のやり取り、及び/又は、通信ネットワーク16を通じた、サーバシステム6との間の情報のやりとりを行うようにしてもよい。別の変形例においては、医療装置接続ステーションがプロセッサとソフトウェアをさらに備え、プロセッサとソフトウェアは、医療装置からの生データを情報として意味のある形に処理し、ユーザインターフェース装置を介してユーザ15に、又はサーバシステム6に送るように構成してもよい。医療装置接続ステーションは、医療装置の接続インターフェースに補完的な接続インターフェースを備える。接続インターフェースはUSB接続等の、直接の電気的接触、又は種々の無線通信システム、特に近距離通信システムを含むようにしてもよい。近距離通信システムは、種々の公知の通信プロトコル、例えば、赤外線、Bluetooth、ZigBee、及び他のラジオ周波数(RF)通信プロトコルで機能させることができる。
【0130】
本発明の範囲内で、医療装置は、再利用可能な注射装置、使い捨ての注射装置、植込み型薬剤投与装置、使い捨て型皮内装置、固形薬剤の電子的に読み取り可能な包装、例えば、電子式容器又はブリスター包装に入った経口投与用錠剤又は坐剤で、薬剤を容器や包装から取り出すと感知するようにしたものを含む。
【0131】
ユーザの医療装置1、及び/又は医療装置接続ステーション2、及び/又はユーザインターフェース装置18を介する、サーバシステム6とユーザ15の間のデータ送信は、例えば、公開鍵/秘密鍵の対による暗号手段、共通鍵暗号手段、又は他の暗号化手段として公知の手段を用いて暗号化することが好ましい。
【0132】
データは、サーバシステム6内に秘匿して記憶され、様々なユーザ15a、15b、15c、15dについて、ユーザの種別に応じて与えられるアクセス権限とユーザの本人確認に基づいて、容易にかつセキュリティを確保しつつアクセス可能となるように、データの処理及び分類がなされる。患者の医療情報は、患者15a及び医師15b、また、場合によっては、訪問看護師等、権限を与えられた患者支援団体構成員15cがアクセスできるが、他のユーザはアクセスできない。
【0133】
サーバシステム6は、通信ネットワーク16内の一又は複数の場所に配置された複数の物理的サーバ及び/又は仮想サーバを含んでいてもよい。したがって、「サーバ」の意味は、ハードウェアサーバ構成に依存する、サーバソフトウェアの入ったハードウェアサーバ、及び、一又は複数のハードウェアサーバコンポーネントにインストールされた、ハードウェアサーバ構成から独立した仮想サーバを包含する。サーバは、コンピュータネットワーク内に配置された複数のサーバハードウェア及び/又はソフトウェアのコンポーネントにより構成してもよい。
【0134】
図1及び
図2を参照すると、有利な実施形態において、サーバシステムは、ウェブサーバ(HTTPサーバ)を含む通信サーバシステム6a、アプリケーションサーバシステム6b、及びデータベース6cを含む。アプリケーションサーバシステムは、ユーザがアクセスできるオンラインサービスを扱うための情報サーバ、ユーザに対する通知サービスを扱うための通知サーバ、モバイルコンポーネントを扱うためのサーバ、ローカルコンポーネント及び装置からのデータロードサービスを扱うためのサーバを備えるようにしてもよい。
【0135】
サーバシステムの例
一つの例において、本実施形態のサーバシステムは以下の特徴を備える。
【0136】
HTTP(ハイパーテキスト転送プロトコル)サーバ
・HTTPサーバは、HTTPS又はHTTPS SOAPリクエストのみを許容するファイアウォールで守られたDMZに置いたApache HTTPウェブサーバとすることができる。他のプロトコルはHTTPサーバへの接触を許されない。ユーザ装置からのリクエストは全て、SSL(セキュア・ソケット・レイヤー)を通し、ユーザ装置とHTTPサーバ間の通信は、送信中、暗号化されることを確保する。
・患者のデータや医療データは一切HTTPサーバには常駐させない。
・パフォーマンスと高可用性を提供するため、HTTPサーバの負荷は分散させる。ウェブサーバの一つが何らかの理由で機能を停止した場合、ピーク負荷時のパフォーマンスに影響が出ることはあっても、システムの可用性は保たれ、ユーザのリクエストは処理できる。
【0137】
アプリケーションサーバ
・アプリケーションサーバは、高可用性を提供するためクラスター化したJBossアプリケーションサーバとすることができる。
・JBossのクラスター化によりセッション管理を扱う。
【0138】
通知コンポーネント用のアプリケーションサーバ
・JBossアプリケーションサーバが、Eメール又はSMS(ショートメッセージサービス)で送られる通知を扱うため等の通知コンポーネントをホストする。このサーバは、ユーザからリクエストを受け取ることがないので、クラスター化する必要はない。
【0139】
モバイルコンポーネント用のアプリケーションサーバ
・JBossアプリケーションサーバは高可用性を提供するためクラスター化することが好ましい。
【0140】
ローカルコンポーネントと装置からのデータロードサービス用のアプリケーション
サーバデータロードサービスJBossアプリケーションサーバは高可用性を提供するためクラスター化してもよい。
【0141】
データベース
・データベースは、例えば、高可用性を提供するためクラスター化されたオラクル(商標)エンタープライズ版データベースとすることができる。
・記憶データの暗号化のためオラクル・アドバンスセキュリティオプションを用いることができる。
【0142】
図3に、本発明によるコンピュータ化された患者ケアシステムの好ましい実施形態のプログラムアーキテクチャの機能図を示す。このプログラム機能は、提示プログラムコンポーネント21、ビジネスサービスプログラムコンポーネント22、統合プログラムコンポーネント23、及びデータアクセスプログラムコンポーネント24を含む。
【0143】
提示コンポーネントは、ユーザインターフェース装置のネットワークブラウザ等の、ユーザインターフェース装置からのリクエストとレスポンスの管理、及び各ユーザへの提示の実行を担う。提示コンポーネントはチャート21a、レポート21b、ビュー21c、装置情報21d、データエントリと検索21e、及び印刷21fを提示するように特化されている。
【0144】
ビジネスサービスコンポーネントは、HCP及び管理者ユーザが必要とする全ての機能を担う。ビジネスサービスコンポーネントは、データをユーザーとやり取りするビジネス論理を保持している。ビジネスサービスコンポーネントはユーザに提供する機能に基づきグループ化され、HCPサービス22a、患者サービス22b、訪問看護師サービス22c、レポート生成サービス22d、管理サービス22e、データロードサービス22f、リマインダーサービス22g、及び共有サービス22hを含む。共有サービスは、ロギング、エラーハンドリング、監査証跡、キャッシング、セキュリティ、通知等、他の全てのプログラムモジュールが使う機能を提供する。
【0145】
統合コンポーネントは、種々の外部インターフェース装置に対する、モバイルアプリケーション用ウェブサービス23a、EDSインターフェース23b、データアップロードサービス23c、EメールとSMSのインターフェース23dを含む、インターフェースの提供を担う。これらのプログラムコンポーネントは、以下を含むようにしてもよい。
・ローカルコンポーネントとWTTシステムからの装置データをアップロードするプログラム
・患者及び関連データをモバイルアプリケーション(例えばiPad(商標)アプリケーション)に提供するウェブサービス
・訪問看護師及び関連データをモバイルアプリケーション(例えばiPad(商標)アプリケーション)に提供するウェブサービス
・EDS(エンタープライズデータサービス)との統合
・Eメールゲートウェイ統合
・SMSゲートウェイ統合
【0146】
データアクセスコンポーネントは、データ記憶とデータベース検索の管理機能を提供し、HCP情報アクセスサービス24a、患者情報アクセスサービス24b、訪問看護師情報アクセスサービス24c、管理者情報アクセスサービス24dを含む。
【0147】
図4は、文脈レベルのユーザとサーバシステムの相互作用の好ましい実施形態を示す。この例では、患者15a、医療専門家15b、訪問看護師15c、並びに管理者及び重要アカウント管理者(KAM)15dを含む種々のユーザが、通信ネットワーク16を介して、具体的にはインターネット7等を介して、サーバシステム6上のソフトウェアプリケーションに遠隔アクセスする。典型的には、管理者とKAMと医療専門家は、例えばコンピュータの形態のユーザインターフェース装置(UID)18を介してシステムにアクセスする。一方、患者と訪問看護師は、典型的には、デスクトップのUIDに加え、スマートフォン又はタブレット型コンピュータの形態の携帯式UIDを介してシステムにアクセスする。
【0148】
携帯式UIDの場合、例えばGPRS(ジェネラル・パケット・ラジオ・サービス)、UMTS(ユニバーサル移動体通信システム)等の利用可能なセル式携帯電話システムを利用し、サーバシステム内のWTT遠隔サービスデータアップロードアプリケーション26を用い、無線通信ネットワーク3を介して、医療装置から直接サーバシステム6に医療装置データをアップロードすることができる。インターネット7を介してサーバシステムにアクセスするUIDの場合でも、医療装置データ、詳細には、医療装置に記憶される使用データを、サーバシステム上のローカルコンポーネントデータロードサービスアプリケーション28を介してアップロードできる。
【0149】
登録ユーザだけがサーバシステムにアクセスできる。ユーザは、全てのユーザが利用可能な共有サービスセクション30の一部を構成する認証・承認プログラムアプリケーション30aにより認証される。
【0150】
識別情報、種別、及びそれぞれの役割と権限を含むユーザ情報がサーバシステム内、例えばデータベース6c内に記憶され、これによりユーザはそれぞれの役割と権限に基づき承認される機能とデータへのアクセスを得る。例えば、機微な患者情報はHCPと患者だけが利用できるようにしてもよく、サーバシステム管理機能については、システム管理者だけが利用できるようにしてもよく、フォームコンフィギュレーションについては、重要アカウント管理者とシステム管理者だけが利用できるようにしてもよい。
【0151】
示した例において、データは下記の方法でサーバシステム6に入力することができる。
【0152】
・医療装置1は、医療装置接続ステーション2内のWTT(無線通信技術)送信器を組み込むか、又はこれに接続されて、データ、特に、例えば注射履歴データ等の医療装置使用データを、サーバシステム上のWTT遠隔サービスデータアップロードアプリケーション26を介して、患者情報管理プログラムアプリケーション32に直接アップロードする。WTTモジュールがデータを受信し、有効性確認後、オンラインデータベース6cに記憶する。
【0153】
・医療装置1はUID(ユーザインターフェース装置)18に、直接、又は医療装置接続ステーション22を介して接続することができ、UIDはサーバシステム6への情報転送用のローカルコンポーネントプログラム(クライアント側プログラム)34を備える。ローカルコンポーネントプログラム34は、例えば注射履歴データ等の医療装置使用データを受信し、そのデータを、要求に応じて、ローカルコンポーネントデータアップロードサービスアプリケーション28を介してサーバシステム6にアップロードする。ローカルコンポーネントデータアップロードサービスアプリケーション28はアップロードされたデータの有効性確認を行い、オンラインデータベース6cに記憶する。一例として、ローカルコンポーネントは、Spring(商標)frameworkのhttp invoker機能を使ってサーバシステム上のプログラムと通信することができ、医療装置通信ステーション2もまた、Spring(商標)HTTP(ハイパーテキスト転送プロトコル)invokerを使ってWTT遠隔データアップロードサービスアプリケーション26と通信することができる。
【0154】
・ユーザ入力:HCP、管理者、KAM(国別重要アカウント管理者)、患者、及び訪問看護師は、サーバシステムにログオンし、アプリケーション上で提供される種々のフォームを利用して、種々のデータフィールドをサーバシステムに入力する。例えば、患者情報、医療装置関連情報、及び臨床情報をユーザがアプリケーションに入力する。機微な患者情報は、暗号化されてデータベース6cに記憶され、権限のあるユーザだけがアクセスできる。アクセス権限を持つユーザにはHCPと訪問看護師を含むようにしてもよい。
【0155】
好ましい実施形態において、オンラインモードでは、UID18とサーバシステム6上の種々のウェブアクセス可能なサービスとの間の通信は、HTTPSプロトコルを用いセキュアにすることができる。オフラインモードでは、医療装置は、使用データをローカルで記憶するのに用いるデータベース(例えばSQLite)を備え、ユーザは、オフラインのときに医療装置使用データや他のデータを医療装置のデータベースに記憶できる。これには、例えば、ローカル記憶装置内のデータのためのJavaScript暗号化メカニズム(例えばAES128)を用いることができる。ページはオフラインモードでUID18で利用可能である。ユーザがオフラインモードでアプリケーションにログオンする際にパスワードとユーザIDが必要となるようにしてもよい。このパスワードをデータの暗号化/複号化の鍵として用いてもよい。
【0156】
図示した好ましい実施形態において、患者情報管理アプリケーション32は、サーバシステム6からの出力のため、例えばHTMLビューやデータ入力フォーム、及び患者用装置に関する情報を表示する種々のリストやフォームのビューを含む種々のフォーマットで情報を生成する。
【0157】
ビューとフォームはさらに以下のように分類できる。
患者、HCP、及び訪問看護師が利用するための、患者に関連する種々のリストとフォームのビュー表示情報で、以下を含むもの。
・プロファイル―編集
・リマインダー
遵守閾値設定
スケジュールリマインダー
・患者レポート
履歴概観チャート―HCPが、選択した患者の注射履歴データのグラフィック表示を閲覧できる。
注射履歴リスト―HCPが、選択した患者の注射データをリストとして閲覧できる。
注射履歴グラフ―HCPが、選択した患者の注射データのグラフィック表示を閲覧できる。
注射履歴カレンダービュー―HCPが、選択した患者の注射データのカレンダー表示を閲覧できる。
遵守データレポート
アウトカムレポート
上記の組み合わせによる複合レポート、最も有利には、これは治療計画の不遵守の影響を評価するため遵守状況とアウトカムの複合レポートを含む
・患者用装置
装置設定―現在の装置設定と装置設定履歴のビュー
装置登録
装置の割当/非割当
・カレンダー―患者と訪問看護師専用
日毎のリマインダー、面会予約、イベントのビュー
・訪問とコメント
訪問とコメントの追加
訪問とコメントの編集
【0158】
患者用装置に関する、ユーザ向けの種々のリストとフォームのビュー表示情報は以下を含む。
・装置管理―この機能により、ユーザは装置を患者に割り当てるか割り当てないかを指定することができる。
・アクティブな装置設定のビュー―このビューで、ユーザは特定の患者に割り当てられた装置の設定を見ることができる。
【0159】
サーバシステム出力は、さらに、閲覧可能なデータをユーザが印刷できる印刷機能、及び、下記のような制限データエクスポート機能を備えるようにしてもよい。
・HCPは、例えばカンマ区切りファイル(CSV)として、システムから患者の注射履歴データ及び装置設定ファイルをエクスポートすることが許される。
・訪問看護師は、患者訪問の際にオフラインで利用するために、患者と面会予約の情報を自分のUID18、例えばタブレット型コンピュータ18bにダウンロードすることが許される。このデータは暗号化してUID(18)上のオフラインデータベースに記憶する。
【0160】
図5を
図4と併せて参照すると、本発明による患者ケアシステムのソフトウェアコンポーネントは以下のカテゴリーに分類することができる。
【0161】
(i)疾病管理36
このカテゴリーは、疾病管理用のソフトウェアコンポーネントを含む。本発明の具体的実施形態において、疾病は神経変性疾患、具体的には多発性硬化症である。これは、医療装置の構成と使用36a、薬剤36b、治療36c、注射等の薬剤投与36dに関するソフトウェアコンポーネントである。
【0162】
(ii)患者情報管理32
このカテゴリーは、多発性硬化症患者に関する具体的実施形態において、患者情報の管理に用いるソフトウェアコンポーネントを含む。これは治療担当診察室関連情報32a、医療と治療のための訪問32b、患者の同意32e、患者データ32c、治療アウトカム32d、患者とHCPのレポート32f、及びカレンダー32gソフトウェアコンポーネントを含む。
【0163】
(iii)システムの構成と管理38
このカテゴリーは、患者ケアシステム全体で使用する機能の構成と管理のために使用するソフトウェアコンポーネントを含む。これにはユーザ管理38a、30a、患者への質問票32aを含む質問票38d、及び共有サービス監査証跡コンポーネント30cを含む監査証跡ソフトウェアコンポーネント38bを含む。
【0164】
(iv)通知サービス30b
このカテゴリーは、ユーザ15にイベントを通知するために使用するソフトウェアコンポーネントを含む。このコンポーネントはEメール及びSMSソフトウェアコンポーネント30bを含む。
【0165】
(v)患者治療サービス40
このカテゴリーは、患者への情報提供、とりわけ治療、疾病管理、及び患者レポートの改善支援のために使用するソフトウェアコンポーネントを含む。患者治療サービスソフトウェアコンポーネントは、視力検査や歩行検査等のオンライン検査40a、認知訓練や可動性訓練等のオンライン訓練40b、患者と患者支援団体のための疾病情報、及びオンラインでの患者の生理学的監視を含む。多発性硬化症患者のオンライン生理学的監視は、患者の上肢機能の定量検査である9穴ペグ検査のデジタル版を含むようにしてもよい。
【0166】
治療対象の疾患の種類に応じ、追加的な患者治療サービスとして、リハビリテーション、ストレス監視、認知行動療法、うつの評価及び/又は治療、疲労の監視と治療、活動追跡、及び歩行評価を含むようにしてもよい。ストレス監視は、例えば心拍数と血中酸素の測定値を含むようにしてもよい。本システム及び装置による、うつの評価及び/又は治療は、多発性硬化症等と関連する二次疾患として行っても、原疾患として行ってもよい。
【0167】
活動監視には、実施した身体運動(歩行距離、時間、及び/又は負荷)、消費カロリー、及び心拍等の情報を含むようにしてもよい。歩行評価は、歩行能力に影響する症状がある個体についての評価、計画、治療のためのコンピュータ化された方法として利用することができる。特に、歩行能力に影響する疾患を持つ患者(例えば多発性硬化症)の場合、歩行評価を、疾患の評価、計画、及び治療のために利用できる。歩行分析は、患者の体につけた標識の位置を記録するように構成した数台のカメラを含むようにしてもよい。コンピュータにより、各標識の軌道を三次元で計算し、体内の骨の動きのモデルを計算することができ、各関節の動きを細部まで完全に決定することができる。
【0168】
患者治療サービスは、アラーム40cをさらに含むようにしてもよい。アラームは、例えば薬剤投与のアラーム、及び、治療担当診察室、HCP、又は訪問看護師への訪問のためのアラームである。オンラインで取得した検査結果は、レポート32fコンポーネントに入力することができ、同様に訓練の結果も記録し、レポートコンポーネントで利用可能とし、又は、HCPと訪問看護師が利用可能な情報とすることができる。アラームは通知サービスコンポーネント30bが送信するようにしてもよい。検査は患者が自宅で自身のUID18、及び有線又は無線でUID18に接続した運動センサ等の検査装置を用いて行うようにしてもよい。検査は視力検査、歩行検査、認知検査、及び/又は可動性検査としてもよい。また、患者の生理学的監視は、患者の体温、血圧、脈拍、身長(成長ホルモン治療の場合)等の、患者から測った生理学データの生理学的測定値を含むようにしてもよい。生理学的測定値のいくつかは、センサが自動的に感知しサーバシステムに送信するようにしてもよい。これは、患者のUID18及び/又は医療装置1を介して行ってもよく、及び/又は、インターネット7又はWTTネットワーク3を介したデータ転送のための通信手段を備えた感知装置又は訓練装置であればその装置により行うようにしてもよい。ある種の生理学データは、患者15a、又はHCP15b、又は訪問看護師15cが手動で入力するようにしてもよい。
【0169】
好ましい実施形態において、
図4及び
図5に図示し、上記で提示したソフトウェアコンポーネントは以下の特徴を備えるようにしてもよい。
【0170】
治療法36c―このソフトウェアコンポーネントは、疾患(具体的な実施形態においては多発性硬化症)の治療に薬剤を用いる薬物治療に関連する機能を提供する。薬剤投与は治療法により規定されるので、治療法が薬剤投与と関連付けられる。
【0171】
薬剤36b―このソフトウェアコンポーネントは、患者に処方され、又は患者が服用する薬剤に関連する機能を提供する。患者に投与される薬剤は、治療法により規定されるので、薬剤コンポーネントは治療法と関連付けられる。
【0172】
装置36a―このソフトウェアコンポーネントは、医療装置1に関連する機能を提供する。具体的な実施形態においては、医療装置は、多発性硬化症治療薬Rebif(商標)注射用のRebismart(商標)である。装置コンポーネント36aは、注射データ等の医療装置使用データを記憶し、患者データ32bと関連付けられる。これは全ての患者は少なくとも一つの装置と関連付けられるためである。
【0173】
注射36d―このソフトウェアコンポーネントは、注射等の薬剤投与の日付と時刻、及び関連情報(例えば注射した量)を記憶する機能を提供する。具体的な実施形態においては、注射が多発性硬化症患者への薬剤投与法である。注射データは装置コンポーネント36aに送られる。
【0174】
患者データ32c―このソフトウェアコンポーネントは、装置コンポーネント36aとウェブアプリケーションを用いて集めた患者データのメンテナンスを行う。
【0175】
診察室32a―このソフトウェアコンポーネントは、治療担当診察室と患者15aとの関連付けを管理する。具体的な実施形態において、患者は多発性硬化症患者である。
【0176】
同意32e―このソフトウェアコンポーネントは、主治医、又は、患者が治療を受けている同じ診察室で患者の治療に関与する可能性のある他のHCP15bによる治療を受けることについての、患者15aの同意を管理する。
【0177】
患者アウトカム32d―このソフトウェアコンポーネントは、患者に提示した質問票のアウトカムを提供し、レポートコンポーネント32fを使って、患者15aの健康状態レポートを生成する。具体的な実施形態において、患者は多発性硬化症患者である。
【0178】
患者訪問32b―このソフトウェアコンポーネントは、HCP15cと訪問看護師15dが入力した患者情報を管理する。訪問は、患者の前回訪問以降のスコア、再発、入院期間の追跡に役立つ。
【0179】
レポート32f―このソフトウェアコンポーネントは、医療装置から受け取った、医療装置の使用を通じて得た遵守状況を示すデータ、患者報告アウトカムを提供し得る、患者が記入した質問票、治療計画情報を含む遵守設定、及び、HCPと訪問看護師が入力した訪問データから患者レポートを生成する。レポートは、有利には、共通のタイムスケールによる複数の報告を一目で見られるように提示する複合ダイアグラムを含み、これには、以下でさらに詳細に説明し、また
図6に示すように、共通のタイムスケールに沿った患者報告アウトカム(PRO)と遵守情報の提示が含まれる。前記複合ダイアグラムにより、HCPは、処方された治療計画を患者が遵守しないことによる影響をより容易かつ迅速に評価することができ、必要な場合には、是正策を提案することができる。是正策の例としては、患者に治療計画遵守の重要性を再確認させること、遵守状況の監視強化、訪問頻度の強化、治療計画の修正、及び追加的な治療又は療法上の処置がある。
【0180】
カレンダー32g―このソフトウェアコンポーネントは、HCPと患者のためにイベントと訪問予定の詳細を提供するカレンダーを管理する。カレンダーソフトウェアコンポーネント32gは、患者又はHCPにイベントのリマインダーを送るようにしてもよい。
【0181】
質問票38d―このソフトウェアコンポーネントは、患者に提示する質問票と患者の回答を全て管理する。この機能は、患者情報管理モジュール32から患者に提供された調査のアウトカムを提供することができる。質問票は患者に対して向けられた臨床的に有効な質問票であり、患者からの回答は、レポートコンポーネント32fによる患者報告アウトカム(PRO)レポートの作成に用いられる。質問票は、患者の全般的な健康状態、痛み、認知、疲労感、膀胱の状態、腸の状態、性的満足、又は他の健康状態の基準を含むようにしてもよい。
【0182】
ユーザ管理38a―このソフトウェアコンポーネントは、様々なユーザ(HCP、訪問看護師、患者、システム管理者、重要アカウント管理者、及び支払者)のアクセス権限の管理に関与する。
【0183】
監査証跡38b―このソフトウェアコンポーネントは、患者ケアシステムにおいてユーザが行う全てのトランザクションについて監査証跡管理を行う。
【0184】
構成38c―このソフトウェアコンポーネントは、システム構成、及び国別構成等のTimeZone構成の管理に用いる。
【0185】
Eメール及びSMS30b―これらのソフトウェアコンポーネントはEメール通知、又はSMS通知を患者ケアシステムのユーザに送る。
【0186】
本明細書に記載するソフトウェアコンポーネントのある種のものは、クライアントサーバアプリケーションの形態でもよく、クライアント側アプリケーションをユーザインターフェース装置(UID)にインストールすることにより、UIDがサーバシステム上のアプリケーションに接続して一定の機能をローカルで動作させるようにしてもよい。本明細書に記載するソフトウェアコンポーネントのある種のものは、ユーザのUID上のウェブブラウザーを介してアクセスし動作させるブラウザーアプリケーションの形態でもよい。また、ある種のソフトウェアコンポーネントは、ソフトウェアアプリケーションの種類と機能に応じて、医療装置、医療装置接続ステーション、及びユーザインターフェース装置を含む、システムを構成する種々の装置上で独立して動作するようにしてもよい。本明細書において、「ソフトウェアコンポーネント」という用語は、プログラムの一部、プログラム、複数のプログラムの部分、又は求められる機能を達成するために協働する複数のプログラムを意味し得る。
【0187】
本明細書に記載したように、上記ソフトウェアコンポーネントをサーバシステム6内に統合し、モバイル型及び有線のユーザインターフェース装置18にインストールしたクライアントアプリケーションと通信することにより、柔軟でグローバルな患者ケアシステムが提供され、患者、HCP、訪問看護師、及び、患者支援団体の他の構成員、さらには、製薬会社等の他の関係者が利用可能な情報の質が最適化され、患者の全般的なケアと健康が改善されると同時に医療費が削減される。さらに、時間の経過とともに、データベースに蓄積されるデータによって、HCPと薬剤提供者は、治療計画と治療法を改善するため疾患と治療効果についての理解を深めることができる。本発明による患者ケアシステムにより、医療専門家による遠隔の患者治療監視が可能となり、HCPの意思決定のための情報が提供され、患者への薬剤投与が容易になり、HCPと患者の間の医療に関するコミュニケーションがグローバルに容易になり、安全で効果的、経済的な患者ケアが提供される。
【0188】
本発明の一実施形態において、医療装置1は、水薬、詳細には、Rebif(登録商標)(インターフェロンベータ1a)又はSaizen(登録商標)(組み換え成長ホルモン)を注射する注射装置である。医療装置1は、例えば、国際公開第2005/077441号、国際公開第2006/085175号、国際公開第2006/085204号、又は国際公開第2007/088444号(その内容を参照により本明細書に援用される。)に開示され、RebiSmart及びEasypodの登録商標で市販される装置と同種のもの、又は、その一定の特徴を含むものとしてもよい。
【0189】
より詳細に、
図7a、7b、8aから8cを参照し、本発明の一実施形態による患者ケアシステムの一構成例、特に治療計画の遵守状況監視のための構成例を、多発性硬化症又は成長ホルモン分泌不全症患者用の治療計画の場合を例として説明する。
【0190】
本実施形態において、好ましくは、医療装置1は、内部メモリと、患者による医療装置の使用に関する第1データをこのメモリに記憶するようプログラムされたプロセッサとを含む。
【0191】
第1データは、投薬量と日付及び/又は投与時刻を含む医療装置使用データを含む。医療装置が注射装置である変形例においては、第1データは注射回数、注射時刻、注射量を含むようにしてもよい。内部メモリとプロセッサはさらに、医療装置1を一意に識別する識別コードを記憶する。
【0192】
医療装置が医療装置使用データを記憶するための内部メモリとマイクロプロセッサを含まない変形例においては、患者又は薬剤投与者は、ユーザインターフェース装置18に第1データを手動で入力してもよい。ユーザインターフェース装置18には、データのエントリのためと第1データをユーザインターフェース装置のメモリに記憶するためのフォームを生成するクライアントソフトウェアプログラムを組み込んでいる。
【0193】
一実施形態において、本システムは医療装置接続ステーション2をも備える。
図7aに示すように、医療装置接続ステーション2は、医療装置1を載置できる取付インターフェースを備えていてもよい。医療装置接続ステーションは、GSM(グローバル移動体通信システム)又はUMTS(ユニバーサル移動体通信システム)等の携帯電話ネットワーク3に接続するための無線通信転送電子工学技術とSIM(契約者識別モジュール)カードを含んでいてもよい。医療装置1は、医療装置接続ステーション2上に載置されると、赤外線、ラジオ周波数、又は電気的接続により医療装置接続ステーション2と通信する。医療装置1のグラフィカルユーザインターフェース4とボタン5を介し、患者は第1データと識別コードを医療装置1から医療装置接続ステーション2に送信することができる。次いで第1データと識別コードは携帯電話ネットワーク3を介して遠隔サーバシステム6に送信される。
【0194】
サーバシステム6は、第1データを取得し、記憶し、処理する。医療装置接続ステーション2とサーバシステム6との間のデータ送信は暗号化される。データはサーバシステム6内に秘匿して記憶され、インターネット7等の通信ネットワークを介して患者に対応する医療関係者が容易かつセキュアにアクセス可能となるように処理される。このように、典型的にはコンピュータ又はデジタルタブレットであるユーザインターフェース装置18を用い、暗号通信を介して、医師はサーバシステム6内に記憶された担当患者のデータにアクセスできる。
【0195】
前記第1データに加え、サーバシステム6は患者から患者の生理的状態に関する第2データを取得する。この第2データは、携帯電話ネットワーク3を介してスマート携帯電話18cから、インターネットネットワーク7を介してコンピュータ18aから、及び/又は患者の任意の他の端末から、サーバシステム6に送られる。第2データは、患者報告アウトカム(PRO)を含むようにしてもよい。PROは、事前に医師の要求によりサーバシステム6からスマート携帯電話18c及び/又はコンピュータ18aに送られた臨床的に有効な質問票に対する回答を含むようにしてもよい。患者は定期的に、UID18に促されたときに、又は随意に、質問票に回答し、回答はサーバシステム6に送られ、そこで記憶、処理される。質問票は、患者の全般的な健康状態、痛み、認知、疲労感、膀胱の状態、腸の状態、性的満足、又は他の健康状態の基準についてその程度を評価するための質問を含むようにしてもよい。第2データはさらに健康状態検査結果を含むようにしてもよい。検査は、患者が自宅でコンピュータ18a、及び、ラジオ周波数接続(例えばBluetooth(登録商標)又はWi−Fi)によりコンピュータ18aに接続したモーションセンサ等の検査用具を用いて行うことができる。健康状態検査は、視力検査、歩行検査、認知検査、及び/又は可動性検査としてもよい。
【0196】
第2データは、患者の体温、血圧、身長(成長ホルモン治療の場合)を含むようにしてもよい。第1データ同様、第2データも暗号化されてサーバシステム6内に秘匿して記憶される。
【0197】
医師は、自分の端末8をサーバシステム6に接続すると、そこに記憶されている患者の第1データと第2データにアクセスできる。本発明によれば、
図6に示すように、サーバシステム6に記憶した第1データと第2データからそれぞれ得られた2つのグラフィック表示11、12を用いて複合レポートを生成し、これにより第1データと第2データを同時に端末8のスクリーンに表示し、一緒に見ることができる。「同時に」という語は2つのグラフィック表示11、12が一緒に表示される少なくとも一つの期間が存在することを意味する。2つのグラフィック表示11、12は、隣に並べてもよく、重ね合わせてもよく、又は図示するように上下に並べてもよい。
【0198】
第1グラフィック表示11は治療の遵守状況、特に、患者が薬量、注射頻度等、医師の指示を守った程度を、時間の関数として表す。したがって、100%の遵守は、患者が医師の処方を完全に守ったことを示し、100%未満の遵守は、患者が所定の治療計画を完全には守らなかったこと、例えば、患者が処方された薬剤量を全部は注射しなかったことを示す。第1グラフィック表示11は、例えば図示したように棒グラフでもよく、また、患者の状態を示す曲線13と組み合わせてもよい。曲線13の例としては、多発性硬化症等の神経変性疾患の場合、医師からサーバシステム6に提供される、患者のEDSS(総合障害度)スコアがある。第2グラフィック表示12は、有利には、それぞれ上記の患者報告アウトカムを時間の関数として表す一又は複数の曲線14を含むようにしてもよい。医師はどの患者報告アウトカムを表示するかを選択できる。図示していないが、第2グラフィック表示12は、健康状態検査結果及び測定した生理学データを表す曲線又は他のグラフィックデータを含むようにしてもよい。
【0199】
グラフィック表示11、12は医師の端末18に同時に表示されるので、医師は容易にデータを分析でき、遵守状況が患者の健康状態に及ぼす影響を観察することができる。そうして医師は治療効果を評価し、処方を調節し、及び/又は、患者に処方をより厳格に守るよう励まし、及び/又は、付随的な治療上の処置を提案することができる。
【0200】
遵守状況は、サーバシステム6内のソフトウェアコンポーネントによって、医療装置1と医療装置接続ステーション2によって提供された第1データに基づいて計算することができる。第1と第2のグラフィック表示11、12もまた、サーバシステム6内のソフトウェアコンポーネントによって生成される。しかし、変形例においては、医師のコンピュータ端末18にインストールされたクライアントソフトウェアアプリケーションが遵守状況を計算し、サーバシステム6から提供される生データに基づいてグラフィック表示11、12を生成することもできる。別の変形例においては、遵守状況をサーバシステム6内のソフトウェアコンポーネントで生成し、グラフィック表示11、12をコンピュータ端末18にインストールしたクライアントソフトウェアアプリケーションにより生成することもできる。さらに別の変形例においては、遵守状況を医療装置1内のソフトウェアコンポーネントにより計算することができる。
【0201】
第1データは、医師の要求により、サーバシステム6により自動的に、患者の携帯電話18c、コンピュータ18a、及び/又は他の任意の端末に送られるようにして、患者が遵守状況を監視できるようにしてもよい。
【0202】
図8bと
図7bに示す本発明の一変形例において、医療装置1は、Rebidose(登録商標)等の完全に機械的な注射装置であるが、スマートラベル19が取り付けられている。スマートラベル19は、典型的にはNFC(近距離通信)チップとQR(クイックレスポンス)コードを含む。医療装置の識別コードはNFCチップに記憶され、QRコードによっても表されている。スマート携帯電話18cがNFC手段を備えている場合には、スマート携帯電話18cを医療装置1に軽く触れさせることにより識別コードのスマート携帯電話18cへの送信が開始される。別の方法として、QRコードの読み取りによって、スマート携帯電話18cが識別コードを取得するようにしてもよい。次いで患者が医療装置1を使って注射をし、注射の確認をスマート携帯電話18cに対して行うと、スマート携帯電話18cは注射データ(上述の「第1データ」)と識別コードをサーバシステム6に送信する。このようにこの変形例においては、携帯電話18cと送信器は一つの同じ装置である。
図1の実施形態において医療装置により行われていたデータ処理は、ここではスマート携帯電話18cにより行われる。
【0203】
本発明のさらに別の変形例を
図3に示す。ここでは、医療装置1は第1データ入力装置及び第2データ入力装置と統合されている。医療装置1は、第1データと第2データを取得し記憶する。医療装置は、無線の医療装置接続ステーション2に取り付けられ、赤外線で医療装置接続ステーションとデータをやりとりする。医療装置接続ステーション2は、モバイルネットワーク3を介してデータをサーバシステム6に送信する。患者のコンピュータ18aは、患者の生理的状態に関する第2データを取得しインターネット7を介してサーバシステム6に送信する。サーバシステム6は、第1データと第2データを記憶し、処理し、インターネット7を介して医療関係者のコンピュータ18に送信する。
【0204】
本発明は
図7a、
図7bに示したもの以外の医療装置、例えば電子式錠剤ディスペンサ又はスマートブリスターつき錠剤ディスペンサにも応用可能である。実際、患者は受けている治療に応じて異なる医療装置を使う必要がある場合がある。それぞれの医療装置には一意の識別コードが付してあるので、サーバシステム6は、取得した第1データがどの医療装置のものかを認識できる。
【0205】
サーバシステム6は必ずしも1か所に配置されず、通信ネットワークを介して相互に通信する離れた場所にある数個のサーバで構成されていてもよい。例えば、サーバシステム6はデータを記憶し処理する第1サーバと、インターネットを通じデータを医師が利用できるようにするウェブサーバとで構成してもよい。
【0206】
そして、当業者は医療装置接続ステーション2が必ずしも独立した装置ではなく医療装置1と統合され得ることを認識するであろう。
【0207】
本発明によるコンピュータ化された患者ケアシステムは、eヘルスメディカルプラットフォームと呼ぶことができる。有利なことに、このプラットフォームはセキュアでモジュール式である。このプラットフォームは、患者の病状、投薬計画の遵守状況、及び病気の進行を監視しそれに対応するために、医療関係者と患者の間で情報を共有するための一組のアプリケーションを提供する。
【0208】
本発明により、医療関係者又は患者が治療計画の遵守状況を監視し、治療計画の効果を監視することが可能になる。
【0209】
本発明による患者ケアシステムは以下の点を含む多くの利点を有する。
・遵守状況が悪い場合、及びコーチングエイドのアップロードの頻度が充分でない場合に患者に通知し、又は、患者報告アウトカム(PRO)が再発の兆候を示している場合に、患者に対し、認知訓練を受ける、休息する、もしくは冷たいシャワーを浴びる等の事前の警告を与え、遵守状況を改善し指導を行うことにより再発を防ぐ支援をすることができる。
・患者支援団体と訪問看護師が患者の遵守歴とPROへのアクセスを得ることで、個々の患者に適した指導を行うことができる。
・医師が患者の訪問に備えてより良く準備できる。
・遵守状況が悪い場合、医師は遵守状況の悪さと副作用を関連付けることができ、副作用の管理が改善される。
・多くの疾患、特に多発性硬化症について遵守状況とPROの関連付けは行われたことがなく、本システムは、この疾患についての我々の理解、例えば再発につながる状態とその回避方法などの理解を深めるのに役立つ。