特許第6591543号(P6591543)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6591543VHSVワクチン及びアジュバントを含有するワクチン組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6591543
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】VHSVワクチン及びアジュバントを含有するワクチン組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/205 20060101AFI20191007BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20191007BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20191007BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
   A61K39/205ZNA
   A61K39/39
   A61P43/00 121
   A61P31/14
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-530199(P2017-530199)
(86)(22)【出願日】2017年5月19日
(65)【公表番号】特表2019-512456(P2019-512456A)
(43)【公表日】2019年5月16日
(86)【国際出願番号】KR2017005216
(87)【国際公開番号】WO2018186522
(87)【国際公開日】20181011
【審査請求日】2017年9月1日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0042942
(32)【優先日】2017年4月3日
(33)【優先権主張国】KR
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2016年12月11日 フィッシュ アンド シェルフィッシュ イミュノロジー,第60巻,2017年,第420〜425頁,エルゼビア に発表
(73)【特許権者】
【識別番号】515260704
【氏名又は名称】大韓民国(国立水産科学院)
【氏名又は名称原語表記】REPUBLIC OF KOREA(National Institute of Fisheries Science)
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】ファン ジヨン
(72)【発明者】
【氏名】ソ ジョンス
(72)【発明者】
【氏名】クォン ムンギョン
(72)【発明者】
【氏名】チョン スンヒ
(72)【発明者】
【氏名】ファン ソンドン
(72)【発明者】
【氏名】ソン メンヒョン
【審査官】 高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−521170(JP,A)
【文献】 Fish & Shelfish Immunology,2014年,Vol.37,p.60-65
【文献】 Fish & Shelfish Immunology,2016年,Vol.48,p.206-211
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/205
A61K 39/39
A61P 31/14
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活化VHSVワクチン及び2〜10g/L濃度のモンタナイドIMS1312VGアジュバントを含有するヒラメのウイルス性出血性敗血症予防のための浸漬用ワクチン組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のワクチン組成物を含有する水槽で魚類を浸漬することを特徴とする魚類のウイルス性出血性敗血症予防方法。
【請求項3】
前記浸漬は、2〜8週間行うことを特徴とする請求項に記載の魚類のウイルス性出血性敗血症予防方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浸漬用ウイルス性出血性敗血症予防ワクチン組成物に関し、さらに詳しくはVHSVワクチン及びモンタナイド(Montanide)IMS1312VGアジュバント(adjuvant)を含有する魚類のウイルス性出血性敗血症予防のための浸漬用ワクチン組成物及びこれを利用した魚類のウイルス性出血性敗血症予防方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルス性出血性敗血症(VHS)は、韓国と日本でヒラメ魚の養殖産業とヨーロッパの魚の養殖でサケ科の魚類に非常に致命的なウイルス性病気の一つである(Kim,WS et al.,Aquaculture 296:165,2009;Skall,HF et al.,J.Fish.Dis.28:509,2005;Takano,R et al.,Bull.Eur.Assoc.Fish.Pathol.20:186,2000)。VHSウイルス(VHSV)は、3’−N−P−M−G−NV−L−5’の順で6個の遺伝子を暗号化する〜11Kdを有するRhabdoviridae系統のマイナス鎖RNAウイルスである。VHSVは、GとN遺伝子の遺伝子配列に基づいて、4種類の主要な遺伝子型(I、II、III及びIV)に分けられ、各遺伝子型の毒性は感染する魚種により異なる(Emmenegger,EJ et al.,Dis.Aquat.Organ,107:99,2013)。VHSV遺伝子型IVは、太平洋沿岸北西部地域で発見される海魚の種類や韓国と日本でヒラメから分離されて、冬/春期間の間水温が9〜15℃の間である時に主に現れ、感染魚の体重が増加するにつれVHSV病原性が減少する(Isshik,T.,Dis.Aquat.Organ 47,87:2001;Kim,SM.et al.,J.Ocean.Sci.Tech.1:95,2004)。
【0003】
VHSVに対する魚類ワクチンの開発のためには、ウイルス性糖タンパク質を注入するDNAまたは組み換えワクチンを利用する伝統的な方法が試みられている(Byon,JY.et al.,Fish.Shellfish Immunol.18,135,2005)。しかし、該当ワクチンはまだ商業的使用に許可を受けられていない。
【0004】
魚の予防接種で、腹腔内注射は、先天性と後天性免疫反応を引き起こすのに高い効率のためにワクチン伝達の最も一般的な方法であるが、浸漬ワクチン(immersion vacttine)は、腹腔内にワクチンを注射することができない小魚に適する。しかし、浸漬ワクチンは多量のワクチンが求められ、注射ワクチンより免疫率及び免疫期間が低い短所がある。
【0005】
現在、多くの魚ワクチンはアジュバント、すなわち言い換えると免疫反応を引き起こす物質を必要とする。サケとニジマスのためのワクチンの場合、多くのアジュバントが商業的に利用可能である。しかし、ヒラメの場合、ホルマリン処理で非活性化させたVHSVで作られたり実験的予防接種に使用されるPoly(I:C)アジュバント、スクアレン、水酸化アルミニウムなど少数の種類だけが報告されている(Vinay,TN et al.,Vaccine 31:4603,2013;Kim,HJ et al.,Fish.Shellfish Immunol.48:206,2016)。
【0006】
そこで、本発明者等は、VHSVを浸漬型ワクチンで魚類に使用する場合、ワクチンの効率を上げることができる効率的なアジュバントを開発しようと鋭意努力した結果、モンタナイドIMS1312VG(SEPPIC,France)をアジュバントで使用して、VHSVワクチンと共にヒラメ水槽に浸漬する場合、VHSVウイルスに対する感染抑制効果が向上されることを確認して本発明の完成に至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、魚類のウイルス性出血性敗血症予防のための浸漬用ワクチン組成物を提供するところにある。
本発明の他の目的は、前記ワクチン組成物を含有する水槽で魚類を浸漬することを特徴とする魚類のウイルス性出血性敗血症予防方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、VHSVワクチン及びモンタナイドIMS1312VGアジュバントを含有する魚類のウイルス性出血性敗血症予防のための浸漬用ワクチン組成物を提供する。
【0009】
本発明はまた、前記ワクチン組成物を含有する水槽で魚類を浸漬することを特徴とする魚類のウイルス性出血性敗血症予防方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る浸漬用ウイルス性出血性敗血症ワクチンを使用すると、注射接種が難しい魚類に対して、効果的にウイルス性出血性敗血症を予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ワクチン処理後ヒラメに対する写真で、各々対照区(A)、VHSワクチン注射区(106TCID50/匹)(B)、VHSVワクチン浸漬区(C)、アジュバント濃度別添加VHSVワクチン浸漬区(D、E、F区)を示したものである。
図2】本発明に係る浸漬ワクチン処理後の免疫関連遺伝子の発現パターン変化をqPCRで確認した結果を示したものである。
図3】本発明に係る浸漬ワクチン処理後、VHSVを感染させたヒラメ群の累積斃死率を示したもので、Aはワクチン処理後4週目感染させた群で、Bはワクチン処理後8週目感染させた群を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
魚類の感染病予防のための方法中、ワクチンを含有する水槽で魚を浸漬する浸漬ワクチン法は、魚の集団予防接種に適するが、予防効率が低いためさほど開発されていない。本発明では、ヒラメにモンタナイドIMS1312VGアジュバントとVHSVワクチンを含むウイルス性出血敗血症に対する浸漬ワクチンの効果と安定性を確認した。感染履歴がないヒラメを熱−非活性化VHSSウイルスとモンタナイドIMS1312VGアジュバントと結合して、浸漬方法によって予防接種を行った。その結果、モンタナイドIMS1312VGアジュバントが含まれた浸漬ワクチンは、血液学的及び組織病理学的分析で毒性が現れず、浸漬ワクチン適用後、人為的にVHSVを感染させたヒラメの相対的生存率(RPS)は、アジュバントを含む予防接種を行った魚でアジュバントを含まず予防接種をした魚よりはるかに高いことを確認した。このような結果から、モンタナイドIMS1312VGを含むVHSV浸漬ワクチンが、VHSに対してヒラメに防御免疫を誘発することが分かる。
【0013】
従って、一観点において、本発明は、VHSVワクチン及びモンタナイドIMS1312VGアジュバントを含有する魚類のウイルス性出血性敗血症予防のための浸漬用ワクチン組成物に関する。
【0014】
本発明のワクチン組成物で、前記モンタナイドIMS1312VGアジュバントは、0.1g/L〜100g/Lで含有されることを使用することができ、好ましくは、2g/L〜20g/Lで含有されることを使用することができ、さらに好ましくは5g/L〜15g/Lを使用することができする。
【0015】
本発明で使用されるVHSVワクチンの濃度は、10〜10TCID50/5Lを使用することができ、好ましくは、10〜10TCID50/5Lを使用することができる。
【0016】
本発明に係るアジュバントを含む浸漬ワクチンは、免疫関連遺伝子、すなわち、インターロイキン(IL)−1β、IL−6、IL−8、およびトール様受容体(TLR)3を符号化する遺伝子の発現を増加させて、VHSV感染による魚類の生存率を増加させる。
【0017】
他の観点において、本発明は、前記魚類のウイルス性出血性敗血症予防のための浸漬用ワクチン組成物を含有する水槽で魚類を浸漬することを特徴とする魚類のウイルス性出血性敗血症予防方法に関する。
【0018】
本発明の浸漬ワクチンは、特に注射時に扱うのに非実用的な小魚類、稚魚などに使用するのに適する。
【0019】
本発明の一態様では、ヒラメのVHSに対するモンタナイドIMS1312VGアジュバントのVHSV浸漬ワクチンの安全性と効果を確認した。VHSV浸漬ワクチンがVHSV感染から魚類を保護して、10g/5LのモンタナイドIMS1312VGが50g/5LのモンタナイドIMS1312VG服用量よりさらに優れた感染防禦能を有することを確認した。
【0020】
本発明の他の様態では、浸漬ワクチン接種を行ってから2週後に、魚類の免疫反応に潜在的に関連がある11個の遺伝子発現を評価した。ここで、IL−1βがVHSV浸漬ワクチン(3.6倍)と10gのモンタナイドIMS1312VGを入れたVHSV浸漬ワクチン(>38倍)処理後にワクチン接種されなかった対照標準と比較して最も強く増加した。IL−1β炎症反応に直接的に関与するサイトカインで、免疫反応を調節するのに中心的な役割、例えば、免疫能、リンパ球活性化、白血球移動及び食菌作用に関連した遺伝子の調節を行う。
【0021】
IL−8の発現は、対照標準と比較した時、10gのモンタナイドIMS1312VGを含むVHSV浸漬ワクチン接種処理後15倍以上発現が増加したが、VHSV浸漬ワクチン群では0.48倍減少した。IL−8は、CXC chemokine familyの構成員であり、これの分泌は、内在免疫反応に関連したTLRsによって促進され得る。IL−8は、VHSVに感染したヒラメに対する炎症反応因子になり得る。本発明で、IL−8発現は、モンタナイドIMS1312VGを入れたVHSV浸漬ワクチン接種で誘導されたが、これはこのアジュバントが炎症反応を誘導することを示す。TLR3は、対照標準と比較した時、アジュバントなしにVHSV浸漬ワクチン接種処理後最も強く陽性フィードバックされる遺伝子である(9.67倍増加)。VHSV感染は、TLR3発現を相当増加させると知られている。従って、我々の結果は、浸漬ワクチンがTLR3を誘導したことを示すが、これはdsRNAとssRNAウイルスの両方に対する魚類の免疫反応に重要である。
【0022】
モンタナイドIMS1312VGを含まない浸漬ワクチンが、魚類でIL−1β、TNF、TLR3及びGCSFといった免疫関連遺伝子の発現数値を増加させても、これはVHSV感染から魚類を保護することができない。モンタナイドIMS1312VGを含まない浸漬ワクチンは、ワクチン接種を行ってから8週後にVHSVで免疫性検査を受ける時に死亡を促進させたりもした。このような遺伝子産物は、これらの発現数値が魚類をVHSV免疫性検査から保護するモンタナイドIMS1312VGを入れた浸漬ワクチン接種から誘導されるので、魚類VHSVの生長を持続させない。また、TLR3シグナリングは、抗ウイルス遺伝子プログラム(Doyle et al.,Immunity 17:251,2002)とGCSF、IL−1(Iida et al.,Vaccine 7:229,1989)、そしてTNF(Seo and Webster,J.Virol.76:1071,2002)のようなcytokineが抗ウイルス活動をさせる。
【0023】
モンタナイドIMS1312VGを含む浸漬ワクチン接種で誘導されたこのような遺伝子の数値が、VHSV感染から魚類を保護するのに充分であるが、モンタナイドIMS1312VGを含まない浸漬ワクチン接種で誘導された遺伝子はそうでないこともある。モンタナイドを含まないワクチンは、いくつかの免疫関連遺伝子は増加させる一方、NKEF、IFN type I、TLR7及びTLR9のような抗ウイルスポテンシャルを有するいくつかの他の免疫関連遺伝子の数値は減少させる:Megalocytivirus感染は、NKEFの数値を増加させて、NKEFの過発現はターボット(カレイの一種)でmegalocytivirusの生長を防ぐ(Zhang et al.,J.Proteomics 91:430,2013);type I IFNsとIFN receptorsの結合は、ウイルスの自己複製を防ぐことができる300個以上のIFN−stimulated genes(ISGs)を誘導する(Der et al.,1998);TLR7とTLR9は、ウイルス感染を認知して、信号伝達体系を活性化して、抗ウイルス性cytokinesとchemokinesの産生を誘導することができる(Xagorari and Chlichlia,Open Microbiol.J.2:49,2008)。
【0024】
モンタナイドIMS1312VGは、ワクチン前月を促進する伝達体であり水に分散した液体ナノ粒子で構成されていて、浸漬経路を介した集団ワクチン接種に適する。アジュバントは、早期免疫、作動因子反応の長い持続時間、例えば、抗体形成または細胞毒性T細胞活動を可能にして、免疫促進剤を不要とさせる。アジュバント水溶液は、魚類表面を介した抗原吸収を向上させることによって魚類の細胞性免疫反応、体液性免疫反応を共に強化させる。側線器官、エラ、胃、そして後小腸を含む皮膚は、不活性バクテリアと活性バクテリア共に主な吸収場所としての役割をする。本発明では、アジュバントが抗原粒子の吸収を向上させて予防接種の効果を向上させることを確認した。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例を挙げて詳述する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に制限されないことは当業者において通常の知識を有する者にとって自明である。
【0026】
下記実施例では、ヒラメに対する浸漬ワクチンの効果を確認したが、ウイルス性出血性敗血症が現れるヒラメ、ニジマス、大西洋サケ、ブラウントラウト、ギンザケ、マスノスケ、タラ、ターボット、イワシ、カタクチイワシなどの魚類にも制限なしに使用できることは当業者に自明である。
【0027】
実施例1:VHSワクチン製作及び実験群選択
1−1:VHSワクチン製作
VHSVウイルス菌株としては、発明者が以前分離したFP−VHS2010−1(NCBI accession no.KP334106.1)を不活性化させて使用した。
【0028】
製造方法は、VHSVに感染したヒラメの組織をMEMを添加して磨砕した後、培地で50倍、100倍希釈してウイルスを準備した。前記準備されたウイルス接種液の200ulを単層培養されたEPC細胞株に接種して室温で30分間吸着させた後、2%FBSと1%antibiotics(Gibco)を添加したMEM培地を入れて20℃で培養して細胞変性効果(EPC)を逆像顕微鏡を利用して観察した。CPEが確認されたウイルス培養液を集めて遠心分離で細胞を除去した後、上澄み液でTCID50を決めた。正常細胞は同量のPBSを接種して前記のような条件で観察した。
【0029】
このように準備されたウイルスで60℃で3日間置いて不活性化させてheat inactivated vaccineを準備した。準備されたワクチンは、細胞に再接種して一週間観察して不活性化を確認した。濃度別にモンタナイドIMS1312VG(Seppic社)と混合して5分間浸漬してワクチン処理に使用した。
【0030】
1−2:試験魚選択及び実験群選択
VHSVに感染した履歴がないヒラメ養殖場(浦項(ポハン)、韓国)を選択して、real−time PCR法を使用して、VHSVに感染していないことを確認した。
試験魚は、VHSVに対する抗体価が現れない健康なヒラメ(14.1±0.1cm、25.5±1.5g)を選定して試験区当たり70匹ずつ収容して実験に使用した。試験用水槽は、300L FRP水槽を使用し、実験終了時まで流水式で管理した。
【0031】
実施例1で製造したVHSワクチンとアジュバントモンタナイドIMS1312VG(Seppic社)と混合して5分間浸漬した後、表1に提示された群別にワクチン処理に使用した。
【0032】
【表1】
【0033】
実施例2:VHS浸漬ワクチンの安定性確認
VHS浸漬ワクチンの安定性を確認するために、浸漬処理したヒラメに対して、病理組織学的検査と血液生化学的性状を分析した(図1)。
【0034】
病理組織学的検査は、ワクチン処理第2週目及び4週目に各臓器に対する目視検査を実施して病理組織学的検査に必要な臓器を摘出した。
【0035】
その結果、ワクチン処理群と対照群で、副作用が見られずヒラメに安全であると判断されて、生検結果、アジュバントによる副作用はないことが確認された。
【0036】
ワクチン接種が試験の血液性状に及ぼす影響を調べるために、ワクチン処理されたヒラメの血液を採取して、Glucose、GOT,総タンパク質及び総コレステロール濃度を自動血液分析器を利用して測定した。
【0037】
その結果、グルコースの濃度は12.3±3.5〜31.0±19.3mg/dL、GOTは20.0±3.5〜39.7±6.4U/L、GPTは1.0±0.0〜8.4±42.3U/L、総タンパク質濃度は3.7±0.4〜4.6±0.2g/dLで示された(表2)。血清中のグルコース濃度、GOT(Glutamic oxaloacetic transaminase)、GPT(Glutamin pyruvic tranaminase)及び総タンパク質濃度は、すべてのワクチン接種区と対照区との間に有意な差が見られずアジュバントまたはワクチンによる副作用はないと判断された。
【0038】
【表2】
【0039】
実施例3:VHS浸漬ワクチン処理後、免疫関連遺伝子発現変化分析
VHSワクチン処理後、A〜F実験群の免疫関連遺伝子の発現パターン変化を確認するために、qPCRを実施した。
【0040】
実験区別RNeasy Plus Mini Kit(QIAGEN,Cat74136)を利用してTotal RNAを抽出してRNase−Free−DNase Set(QIAGEN,Cat79254)を処理した後、Total RNA qualityを確認してqPCRを実施した。Template cDNA 5ul(1/5 dilution)にPCR Premix AccuPower 2X GreenStar Master Mix(Cat.K−6253)、PCR Rxn.50ul/rxnで実施した。
【0041】
PCR条件は、下記の通りである。
Step 1:95℃ 分
Step 2:(95℃ 15秒、60℃ 1分)x45サイクル/scan
Step 3:65℃ 5分
Step 4:融解曲線分析 65℃〜95℃(1℃/秒)
PCR機械は、Exicycler TM 96 Real−Time Quantitative Thermal Block(Cat.K−2060)を使用して、データ分析は、2−ddCtMethodを利用して相対定量分析を実施した。
IL−1β、IL−8、TNF及びIFN type 1に対するプライマーは、Bioneer社から購入して、残りのプライマーは表3に示された配列で製作した。
【0042】
【表3】
【0043】
ワクチン処理後免疫遺伝子発現率を確認した。
その結果、図2及び表4に示された通り、アジュバント処理によって、IL−1βの発現が最も多く誘導されてTLR−7の発現率は変化がなかった。ワクチン処理後2週目、VHS immersion vaccine(アジュバント10g添加浸漬ワクチン群)の発現が誘導されて、8週目には注射ワクチンの発現誘導が最も活発であった(表4)。
【0044】
【表4】
【0045】
実施例4:VHS浸漬ワクチン処理によるヒラメのVHS感染予防効果確認
VHS浸漬ワクチンを処理したヒラメで、VHS感染に対して予防効果を有するか否かを確認するために、浸漬ワクチン処理後4週目及び8週目VHSVで感染させた後、生存率を調べた。腹腔注射法でヒラメを人為感染後、2週間累積斃死率を調べた。相対生存率は下記のように計算した。
相対生存率(%)=1−(試験区の累積斃死率/対照区の累積斃死率)×100
【0046】
その結果、図3のAに示された通り、ワクチン処理4週目にVHSVを感染させたヒラメの累積斃死率は、対照区は85%ですべての実験区中最も高く、ワクチン浸漬区は65%、ワクチン注射区は35%、100gアジュバント添加浸漬ワクチン区は45%、50gアジュバント添加浸漬ワクチン区は15%、10gアジュバント添加浸漬ワクチン区は10%を示して、アジュバント濃度により感染防御能に差を示した。
【0047】
相対生存率は、ワクチン浸漬群が24%、ワクチン注射群59%、10gアジュバント添加浸漬群88%、50gアジュバント添加浸漬群82%、100gアジュバント添加浸漬群が27%であった。
【0048】
ワクチン接種8週目VHSVで感染させた後、防御能では図3のBに示されたた通り、対照区の斃死率は65%である一方、注射ワクチンの斃死率は50%、100gアジュバント添加浸漬ワクチン区は40%、50gアジュバント添加浸漬ワクチン区は30%、10gアジュバント添加浸漬ワクチン区は20%、アジュバント非添加浸漬ワクチン区は80%で、アジュバントを添加しなかったワクチンの場合はワクチンの効果がないことを確認した。また、アジュバント濃度により感染防御能に差を示した。
【0049】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳述したが、当業界における通常の知識を持った者にとって、このような具体的な記述は単なる好適な実施態様に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されることはないという点は明らかである。よって、本発明の実質的な範囲は特許請求の範囲とこれらの等価物により定義されると言える。
図1
図2
図3
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]