特許第6591544号(P6591544)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6591544
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】移動式ロボット
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20060101AFI20191007BHJP
   A47L 9/28 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
   G05D1/02 K
   A47L9/28 E
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-530440(P2017-530440)
(86)(22)【出願日】2015年8月11日
(65)【公表番号】特表2017-531272(P2017-531272A)
(43)【公表日】2017年10月19日
(86)【国際出願番号】GB2015052323
(87)【国際公開番号】WO2016034843
(87)【国際公開日】20160310
【審査請求日】2017年3月1日
(31)【優先権主張番号】1415606.1
(32)【優先日】2014年9月3日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】500024469
【氏名又は名称】ダイソン・テクノロジー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ゼ・ジ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・スミス
【審査官】 牧 初
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−061220(JP,A)
【文献】 特開2013−172961(JP,A)
【文献】 特開2008−009928(JP,A)
【文献】 特開2003−280739(JP,A)
【文献】 特開2009−123045(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3187472(JP,U)
【文献】 特開2005−216022(JP,A)
【文献】 特開2013−252431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00−1/12
A47L 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動式ロボットであって、
カメラ、及び、前記移動式ロボットを囲んでいる領域に所定の照明レベルを提供するように配置されている少なくとも1つの光源を備えている視覚システムを備えている前記移動式ロボットにおいて、
少なくとも1つの前記光源が、前記移動式ロボットの前進方向に対して直角とされる前記移動式ロボットの側部に対する領域を照明する光錐を放射するように、前記移動式ロボットに配置されており、
前記カメラが、前記移動式ロボットの前進方向に対して直角とされ且つ前記光源によって照明される、少なくとも1つの領域を表わす画像をキャプチャーすることを特徴とする移動式ロボット。
【請求項2】
前記移動式ロボットが、少なくとも2つの光源を備えており、
一方の光源が、前記移動式ロボットの左舷側に対する領域を照明するように配置されており、
他方の光源が、前記移動式ロボットの右舷側に対する領域を照明するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の移動式ロボット。
【請求項3】
前記光源によって放射された前記光錐が、90°〜160°の範囲内とされる円錐角を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の移動式ロボット。
【請求項4】
前記光源によって放射された前記光錐が、120°の円錐角を有していることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の移動式ロボット。
【請求項5】
前記光源によって放射された前記光錐が、円錐又は楕円錐とされることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の移動式ロボット。
【請求項6】
前記光錐が楕円錐である場合に、前記光錐が、垂直方向寸法より大きい水平方向寸法を有していることを特徴とする請求項に記載の移動式ロボット。
【請求項7】
前記光源が、発光ダイオード(LED)とされることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の移動式ロボット。
【請求項8】
前記光源が、可視赤外線(IR)光を放射することを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の移動式ロボット。
【請求項9】
前記移動式ロボットが、前記移動式ロボットの側部に位置決めされている少なくとも1つのハンドルを備えており、
少なくとも1つの前記光源が、前記ハンドルの内側に配置されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の移動式ロボット。
【請求項10】
前記カメラが、前記移動式ロボットの周囲の360°ビューの画像をキャプチャーする全方向性のカメラとされることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の移動式ロボット。
【請求項11】
前記カメラが、パノラマ環状レンズ(PAL)カメラとされることを特徴とする請求項10に記載の移動式ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式ロボットに、特に自身の周囲に照明することができる移動式ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
移動式ロボットは、徐々に一般的になってきており、例えば探査、芝刈りや床清掃のような様々な分野で利用されている。近年、ロボット式床清掃装置、特に真空清掃機の分野では急速な発展を遂げており、その主要な目的は、床を清掃しつつ、自立的に且つ邪魔にならないで利用者の家を巡回することである。
【0003】
このような役割を実行するために、ロボット式清掃機は、ロボット式清掃機が清掃することを要求される領域を巡回しなければならない。幾つかのロボットは、当該ロボットが利用するための、“ランダムバウンス(random bounce)”手法とも呼称される原始的な巡回システムを備えている。ランダムバウンス手法を利用することによって、ロボットは任意の方向に移動し、障害物に遭遇して初めて、当該ロボットが回頭し、別の障害物に遭遇するまで任意の他の方向に移動する。長きに亘り、ロボットが、清掃する必要がある床面積の大部分を可能な限りカバーすることが望まれている。残念ながら、ランダムバウンス巡回計画には欠点が存在することが分かり、清掃すべき床の大きな領域が完全に見落とされる場合がある。
【0004】
従って、より良好な巡回方法が研究され、移動式ロボットに適用されている。例えば同時位置決め地図作成(SLAM)手法が、現在、幾つかのロボットに適用開始されている。このSLAM手法を利用して、当該ロボットの周囲の領域を見て理解し認識することによって、一層システマティックな巡回パターンをロボットに適用可能となる。SLAM手法を利用することによって、一層システマティックな巡回パターンが実現可能とされ、その結果として、ロボット真空掃除機の場合には、ロボット式真空掃除機は、必要とされる領域を一層効率的に清掃することができるだろう。
【0005】
SLAM手法を利用するロボットは、周囲領域の静止画像又は動画をキャプチャーすることができる視覚システムを必要とする。従って、例えばテーブルのコーナーや額縁の縁部のような、画像内のコントラストが高い特徴部(ランドマークとなる特徴部と呼称される場合もある)が、ロボットが当該領域のマップを作成し、三角測量を利用することによって当該マップ内における自身の位置を決定することを補助するために、SLAMシステムによって利用される。さらに、ロボットは、当該ロボットの速度及び運動を解析するために当該ロボットが画像の内部から検出した特徴部同士の相対運動を利用する。
【0006】
SLAM手法は、極めて強力であり、巡回システムを大きく改善することができる。しかしながら、SLAMシステムは、視覚システムによってキャプチャーされた画像から特徴部を十分に検出することができた場合に正確に機能するにすぎない。ロボットの中には、低照度状態の部屋又は視覚システムによってキャプチャーされた画像のコントラストが低い部屋において巡回を成功させるために悪戦苦闘するものが見受けられる。従って、幾つかのロボット巡回は、十分な周囲光が利用可能とされる日中に制限されている。ロボット式床清掃機の場合には、このことは望ましくない。利用者は、自身が就寝している夜間に清掃するようにロボット式床清掃機に予定させるからである。このような問題を克服するために、幾つかのロボットは、カメラによってキャプチャーされる画像を改善するために、且つ、当該ロボットの進行方向におけるロボットの視覚を補助するために、必要に応じてオン・オフ可能なヘッドライトとして機能する光源を備えている。このことの一例は、特許文献1に開示されている。
【0007】
しかしながら、ヘッドライトをロボットに利用することに関連した問題が存在する。自律ロボットが、例えば家具のような障害物を含む領域の周りを自在に巡回することができるように、当該自律ロボットは、一般にバッテリの形態をした内蔵電源を備えている。ヘッドライトを利用することによって、ロボットのバッテリ寿命が短くなるが、これは、より短時間でロボットが充電ステーションに戻らざるを得ないことを意味する。従って、このことは、ロボットが充電時期から次の充電時期までの間に清掃可能な領域が、巡回するためにヘッドライトを利用する必要が無かった場合と比較して小さいことを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/0056032号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、カメラ、及び、移動式ロボットを囲んでいる領域に所定の照明レベルを提供するように配置されている少なくとも1つの光源を備えている視覚システムを備えている移動式ロボットであって、少なくとも1つの光源が、移動式ロボットの前進方向に対して直角とされる側部に対する領域を照明する光錐を放射するように、移動式ロボットに配置されている、移動式ロボットに関する。
【0010】
その結果として、移動式ロボットは、照度が低い条件やコントラストが乏しい条件であっても、環境内部における自身の速度及び軌跡をさらに容易に計算することができる。移動方向に対して90°で位置決めされている画像内から特徴部を検出することができることによって、速度を一層正確に計算することができ、その後の画像から当該特徴部の移動を追跡することによって、移動式ロボットの軌跡が一層正確に決定される。従って、移動式ロボットは、照度が低い条件や画像のコントラストが低い条件においても機能することができる、改善された巡回システムを有している。
【0011】
移動式ロボットが、少なくとも2つの光源を備えており、一方の光源が、移動式ロボットの左舷側に対する領域を照明するように配置されており、他方の光源が、移動式ロボットの右舷側に対する領域を照明するように配置されている。従って、移動式ロボットの両側部に位置する特徴部は、巡回を補助するために利用可能とされるので、速度及び機能を一層正確に決定することができる。さらに、互いから離隔している特徴部を利用する三角測量法は、特徴部が共に密集している場合より、さらに正確である。従って、移動式ロボットは、低照度の環境において自身の位置を三角測量することができる。
【0012】
カメラが、移動式ロボットの前進方向に対して直角とされ且つ光源によって照明される、少なくとも1つの領域を表わす画像をキャプチャーする。従って、視覚システムは、移動式ロボットの移動方向に対して直角とされる移動式ロボットの周囲領域において特徴部を捕捉することができる。このことは、環境の周囲において一層正確に巡回するために、移動式ロボットによって利用される。
【0013】
光源によって放射された光錐が、90°〜160°の範囲内とされる円錐角を有しているが、120°であっても良い。このことは、カメラによって画像にキャプチャーされた移動式ロボットを囲む十分に大きい領域を照明し、移動式ロボットは、巡航するために利用可能とされる特徴部をカメラから選択することができる。
【0014】
光源によって放射された光錐が、円錐又は楕円錐とされる。光錐が楕円錐である場合に、光錐が、垂直方向寸法より大きい水平方向寸法を有している。一般的な部屋の大きさは、壁が部屋の高さにより長くなっており、光の楕円錐の幅がその高さにより長いので、光の楕円錐は一層効果的に部屋を照明することができる。
【0015】
光源が、発光ダイオード(LED)とされる。LEDは、特にエネルギ効率に優れており、例えば白熱電球のような他の光源と比較してほとんど電力を消費しないので、移動式ロボットのバッテリ寿命が伸びる。
【0016】
光源が、可視赤外線(IR)光を放射する。その結果として、光源は、移動式ロボットのカメラが検出可能とされる良好な照明を提供することができるが、可視光の照射のように利用者を潜在的に困惑させる原因とはならない。
【0017】
ロボットが、移動式ロボットの側部に位置決めされている少なくとも1つのハンドルを備えており、少なくとも1つの光源が、ハンドルの内側に配置されている。これにより、ハンドルによって、光源が移動式ロボットが環境の周囲を巡回している際における障害物との衝突から保護される。さらに、光源は、光源が障害物に捕捉又は引っ掛からないように、移動式ロボットの外部に位置決めされる必要が無い。
【0018】
カメラが、移動式ロボットの周囲の完全な360°ビューを提供する画像をキャプチャーする全方向性のカメラとされ、パノラマ環状レンズ(PAL)カメラとされる場合がある。これにより、移動式ロボットは、移動式ロボットの周囲環境の完全な360°ビューを提供する画像をキャプチャーすることができるので、これにより、近傍の障害物によって容易に視界を奪わることがない一層改善された巡回システムとすることができる。
【0019】
本発明を一層容易に理解するために、本発明の実施例について添付図面を参照しつつ例示的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】移動式ロボットの構成部品を概略的に表わす。
図2】照明レベルを制御するためのプロセスを表わすフロー図である。
図3】移動式ロボットを表わす。
図4】移動式ロボットを表わす。
図5】移動式ロボットを表わす。
図6】部屋環境に配置されている移動式ロボットを表わす。
図7A図6に表わす移動式ロボットのカメラによってキャプチャーされた画像の一例である。
図7B図7Aに表わすキャプチャーされた画像で利用される対応するLED強度を表わすグラフである。
図8A図6に表わす移動式ロボットのカメラによってキャプチャーされた画像の一例である。
図8B図8Aに表わすキャプチャーされた画像で利用される対応するLED強度を表わすグラフである。
図9】移動式ロボットのさらなる実施例を表わす。
図10】移動式ロボットのさらなる実施例を表わす。
図11】移動式ロボットのさらなる実施例を表わす。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、移動式ロボット1の構成部品の概略図である。移動式ロボット1は、3つのシステム、すなわち視覚システム2、制御システム8、及び駆動システム14を備えている。これら3つのシステムを組み合わせることによって、移動式ロボット1は、移動式ロボット1が配置されている環境を視認及び解釈し、当該環境の周囲を巡回することができる。視覚システム2は、カメラ3と光源4とを備えている。カメラ3は、移動式ロボット1を囲んでいる周囲の領域の画像をキャプチャーすることができる。カメラ3としては、例えば、天井の画像をキャプチャーするために上方に方向付けられているカメラ、移動式ロボット1の前進方向の画像をキャプチャーするために前方に面しているカメラ、及び、移動式ロボット1を囲んでいる領域の360°ビューをキャプチャーするパノラマ環状レンズ(PAL)カメラが挙げられる。光源4は、移動式ロボット1が低照度状態の環境に配置されている場合に、すなわちカメラ3によってキャプチャーされる画像のコントラストが乏しい場合に、カメラ3によってキャプチャーされる画像の品質を改善させることができる。光源4は、任意の光源であって良いが、例えば発光ダイオード(LED)とされる。光源4は、移動式ロボット1を囲んでいる領域を所定の程度で照明する。光源4は、カメラ3によってキャプチャーされる画像の品質を改善するために、カメラ3のセンサが検出可能とされる帯域幅の光を放射する。例えば、光源4によって放射される光は、電磁スペクトルの可視近赤外線(NIR)部分又は可視赤外線(IR)部分の範囲内とされる。
【0022】
移動式ロボット1の視覚システム2は、移動式ロボット1の周囲環境に関する情報を移動式ロボット1に提供する多数の他のタイプのセンサを含んでいる場合がある。図1は、2つの例、すなわち、光位置センサ5(position sensitive device:PSD)及び物理的接触センサ6を表わす。PSD5は、例えばIRセンサやソナーセンサのような近接センサとされ、移動式ロボット1の近傍に位置する任意の障害物についての情報を提供することができる。これにより、移動式ロボット1は、障害物と接触することなく当該障害物を回避することができる。物理的接触センサ6によって、移動式ロボット1は、障害物と接触した場合に、その接触を知ることができる。物理的接触センサ6からの信号に応答して、移動式ロボット1は、例えば停止し、並びに/又は移動式ロボット1の位置及び軌道を調整することができる。これにより、特に障害物がPSD5によって検出されない場合であっても、移動式ロボット1自体又は移動式ロボット1が接触している障害物の損傷が防止することができる。
【0023】
視覚システム2によって収集されたすべての情報及びデータが制御システム8に送信される。制御システム8は、特徴部検出ユニット9を備えている。特徴部検出ユニット9は、視覚システム2によってキャプチャーされた画像を受信し、当該画像を分析することによって、当該画像に表示された移動式ロボット1を囲んでいる領域内にランドマークとなる特徴部を発見する。ランドマークとなる特徴部は、例えばテーブルの縁部や絵画用額縁の角部のような、画像内において容易に検出される高コントラストに特徴部とされる。特徴部検出ユニット9によって検出されるランドマークとなる特徴部は、局所的環境内における移動式ロボット1の位置を三角測量し決定するために、巡回ユニット11及びマッピングユニット10によって利用可能とされる。また、マッピングユニット10は、移動式ロボット1が当該環境を解釈及び巡回するために利用する環境マップを生成するために、視覚システム2の他のセンサからキャプチャーされた画像及びデータから得られた情報を利用することができる。特徴部検出ユニット9とマッピングユニット10と巡回ユニット11とは、同時位置決め地図作成(SLAM)ユニットを移動式ロボット1に含む単体の一部分を形成しており、図1に表わす独立したエンティティである必要はない。
【0024】
指令は、制御システム8から、移動式ロボット1を移動させるための駆動システム14に送信される。図1は、左舷側(LHS)トラクションユニット15及び右舷側(RHS)トラクションユニット16を備えている駆動システム14を表わす。LHSトラクションユニット15及びRHSトラクションユニット16それぞれが、移動式ロボット1を操縦可能なように独立して制御可能とされる。例えばRHSトラクションユニット16がLHSトラクションユニット15より高速で前方方向に駆動された場合には、移動式ロボット1が前方に移動するに従って、移動式ロボット1は左に方向転換する。また、さらなる例として、LHSトラクションユニット15及びRHSトラクションユニット16それぞれが同一の速度ではあるが反対方向に駆動された場合には、移動式ロボット1は直ちに回転するだろう。また、駆動システム14は、制御システム8にデータを送り返す場合がある。例えば、駆動システム14から制御システム8に送り返されたデータは、トラクションユニットによる(例えばホイールの回転数を利用することによって得られた)移動距離を示している。
【0025】
また、制御システム8は照明制御ユニット12を備えている。照明制御ユニット12は、例えば制御信号のような指令を視覚システム2に送信し、光源4によって提供される照明レベルを調整する。移動式ロボット1が周囲環境の巡回を成功させることができるように、特徴部検出ユニット9が検出可能でなければならない最小数量のランドマークとなる特徴部が存在する。従って、移動式ロボット1が低照度の状態で巡回を試みるが、特徴部検出ユニット9が最小数量の特徴部を検出することができない場合には、照明制御ユニット12は、視覚システム2に指令を送信し、光源4の強度を高める。
【0026】
光源が必要とされない場合に(例えば周囲光が最小数量の特徴部を検出するために十分なレベルである場合に)光源が利用されると、光源4は、バッテリからの電力を不必要に利用し、移動式ロボット1のバッテリ寿命を低減させるだろう。従って、特徴部検出ユニット9によって検出されるランドマークとなる特徴部の数量が、巡回を成功させるために必要とされる最小数量より多い場合には、照明制御ユニット12は、視覚システム2に指令を送信し、光源4の強度を低減させる。
【0027】
照明レベルの増減は、様々な方法によって実施可能とされる。例えば、必要とされる最適な照明レベルを決定するためにアルゴリズムを利用することができる。照明制御ユニット12が、照明レベルを変更するための指令を送信した場合には、照明制御ユニット12は、都度小刻みに照明レベルを変更し、そのプロセスが、許容可能な照明レベルに到達するまで繰り返される。照明レベルは、光源4に供給される電力を増減させることによって調整される。これにより、光源4が放射する光の強度が変更される。従って、光源4によって提供される照明レベルを調整することに言及する場合には、このことは、光源4に供給される電力を調整することと同等であることに留意すべきである。より低い照明レベルが必要とされる場合には、光源4に供給される電力を低減させることによって、移動式ロボット1のエネルギ効率及びバッテリ寿命を高めることができる。
【0028】
特徴部検出ユニット9によって検出された特徴部の数量が継続的に監視されるので、照明レベルも継続的に制御される。微調整量が所定の量とされる。代替的には、調整量が、検出された特徴部の数量と巡回を成功させるために必要とされる特徴部の最小数量との差分に比例するように、動作中に計算可能とされる。計算された調整量は、照明レベルを変更するための指令と共に、視覚システム2に送信される。
【0029】
図2は、光源4からの照明レベルを制御するためのプロセスを表わす流れ図である。開始した後に、移動式ロボット1は、検出された特徴部の数量(NDETECT)が閾数量(NTHRESH)より小さいか否かを決定する。NTHRESHは、移動式ロボット1が周囲環境を巡回するためにSLAM手法をうまく利用するために必要とされる、ランドマークとなる特徴部の最低数量に相当する予め決定された閾数量とされる。NDETECTがNTHRESHより小さい(NDETECT < NTHRESH)場合には、照明レベルが一定量大きくなり、その後にプロセスが繰り返される。NDETECTがNTHRESH以上である場合には、移動式ロボット1は、NDETECTがNTHRESHと等しいか否か(NDETECT = NTHRESH)を決定する。NDETECT = NTHRESHの場合には、照明レベルが変化しないで維持され、移動式ロボット1は巡回を継続する。代替的には、NDETECT ≠ NTHRESHの場合には、NDETECTがNTHRESHより大きい(NDETECT > NTHRESH)と推論される。その後に、移動式ロボット1は、照明レベルが既に零であるか否かについて確認する。照明レベルが零でない場合には、照明レベルが一定量小さくなり、その後にプロセスが繰り返される。しかしながら、照明レベルが既に零である場合には、移動式ロボット1は巡回を継続する。
【0030】
図2に表わすプロセスは、照明レベルを所定量単位で増減させるが、既に上述したように、照明レベルの調整量は、変更可能とされ、例えばNDETECTとNTHRESHとの差分に比例する場合がある。
【0031】
図3は、本体20及び分離器21を具備するロボット式真空掃除機1を表わす。本体20は、戦車の無限軌道の形態をしたトラクションユニット22と、ブラシバーを収容する掃除機ヘッド23とを備えており、汚染空気は、ブラシバーを介してロボット式真空掃除機1の内部に引き込まれ、分離器21の内部に至る。分離器内において汚染空気から塵埃が除去されると、空気は分離器21から流出し、空気流を発生させるためのモータ及びファンを収容している本体20を通過する。その後に、空気は、装置の後部に形成されている排出口27を通じて、ロボット式真空掃除機1から排出される。排出口27は取り外し可能とされるので、フィルタを清浄するために当該フィルタにアクセスすることができ、また、バッテリーパックとされるロボット式真空掃除機1のための電源にアクセスすることができる。また、本体20は、移動式ロボット1の周囲領域の画像をキャプチャーするために移動式ロボット1が利用するカメラ24を備えている。カメラ24は、パノラマ環状レンズ(PAL)カメラであって、移動式ロボット1の周囲領域の360°画像をキャプチャー可能とされる全方向性のカメラである。移動式ロボット1の制御システムは、移動式ロボット1の内部に収容されているソフトウェア及び電子部品の内部に具体化されており、カメラ24によってキャプチャーされた画像を処理するために、同時位置決め地図作成(SLAM)手法を利用することができ、これにより、移動式ロボット1は、局所的環境を理解、解釈、及び自立巡回することができる。
【0032】
センサカバー28は、本体20に装着されている他のセンサ、例えばPSDセンサを覆っている。様々な方向に方向づけられているセンサアレイが、移動式ロボット1の前方及び側方において障害物を検出可能とされるように、センサカバー28の下方に配置されている。側方PSDセンサは、ロボットの周囲に位置する障害物を捕捉することができ、壁伝いモード(wall-following mode)における移動式ロボット1の巡回に貢献するために利用される。壁伝いモードでは、移動式ロボット1は、可能な限り部屋の壁に近接して且つ当該壁に対して平行に移動する。また、床に向かって下方に向いているPSDセンサが設けられており、当該PSDセンサは、クリフセンサ(cliff sensor)として機能し、移動式ロボット1が例えば階段のような落差のある地点に接近している場合に、そのことを検出する。落差のある地点が検出された場合には、移動式ロボット1は、移動式ロボット1が落差ある地点に到達する前に停止し、及び/又は、危険を回避するために移動式ロボット1の軌道を調整する。ロボットが物理的接触センサとして可動式バンパー部分を利用する場合もあるが、移動式ロボット1は、障害物との物理的接触を検知するために、別体のシャーシと本体20のボディ部分との間における相対運動を検出する。
【0033】
移動式ロボット1の本体20は、本体20の側部にハンドル25を備えている。同様のハンドルが、図示しないが、本体20の反対側の側部にも設けられている。これにより、利用者は、2つのハンドル25を利用することによって、移動式ロボット1を把持し持ち上げることができる。ハンドル25は、本体20の側壁の内方に突出している部分を備えている。これにより、利用者は、移動式ロボット1を確実に且つ容易に把持することができるので、局所的環境内の家具又は他の障害物に捕捉又は妨害される外部ハンドルを本体20に設ける必要が無くなる。ハンドル25の内面26は、外方に向かって面しており、透明な材料から形成されており、窓として機能する。図4は、内面26を取り外したことを除いて、同一の移動式ロボット1を表わす。光源4が、移動式ロボット1の本体20の内側に且つ内面26の後方に配置されている。図4に表わす光源4は、発光ダイオード(LED)であるが、発光することを条件として任意の光源で良い。光源としては、例えば白熱電球や電界発光材料が挙げられる。光源4によって放射された光は、カメラ24によって検出可能とされる任意の波長を有している。光は、ヒトにとって可視であっても不可視であっても良く、例えばIR光やNIR光とされる。
【0034】
LEDの形態をした光源4は、光源4が移動式ロボット1を囲んでいる別々の領域を照明するように、移動式ロボット1に配置されている。当該領域は、カメラ24によってキャプチャーされる画像の様々な区画に対応する。ハンドル25それぞれが、移動式ロボット1の側部に配置されているので、これにより、光源4が、移動式ロボット1の前進方向に対して直角とされる方向において光を移動式ロボット1から外方に方向づけるように位置決めされる。本明細書では、直角とは、装置の左側及び/又は右側且つ外方を意味し、天井又は床に向かって上方又は下方に垂直であることを意味する訳ではない。このことは、移動式ロボット1の平面図である図5に明確に表わされている。矢印Aは、移動式ロボット1の前進方向を示しており、破線BLHS及びBRHSは、左舷側(LHS)光源4及び右舷側(RHS)光源4が射している方向を表わす。図示の如く、破線BLHS及びBRHSは、移動式ロボット1の側部それぞれにおいて、矢印Aに対して90°の角度を成す(直角とされる)方向を示している。従って、移動式ロボット1の前進方向に対して直角とされる移動式ロボット1の側部それぞれに対する領域が照明可能とされる。
【0035】
カメラ24は、全方向性のPALカメラであるので、光源4は、移動式ロボット1の側部それぞれに対応するカメラによってキャプチャーされた画像の部分を照明するが、移動式ロボット1の前方を照明する必要は必ずしもない。これにより、移動式ロボット1の巡回が一層容易になる。移動式ロボット1が前方に移動し、両側に位置する特徴部を通過する場合に、環境内における移動式ロボット1の運動を識別するために、当該画像の当該部分の内部における特徴部の移動を容易に追跡可能とされるからである。巡回のためにカメラ24がカメラ24の前方に位置する特徴部を利用可能にすぎない場合には、カメラ24は、運動を識別するために物体の相対的な大きさの変化を利用する必要がある。このことは、はるかに困難であり、精度を著しく低下させる。その上、三角測量は、三角測量に利用される特徴部が密集するのではなく離隔配置されている場合に一層容易に実施可能とされる。移動式ロボット1の視覚システム2が、移動式ロボット1の視覚システム2が前方から接近する障害物を検出可能であることはあまり重要ではない。移動式ロボット1は、障害物を照明する必要なく移動式ロボット1の前方に位置する障害物をセンサカバー28の後方で検出可能とされるセンサアレイを備えているからである。さらに、移動式ロボット1が実際に障害物と接触した場合に検出可能とされる物理的接触センサが設けられている。
【0036】
光源4は、角度αに亘る光錐31,32を放射する。角度αは、移動式ロボット1の視覚システム2の要件に適合することを条件として、任意の角度とされる。2つの光源が図5に表わすように移動式ロボット1に設けられている場合には、円錐角αは約90°〜約160°の範囲内とされ、これにより、視覚システム2にとって良好な照明領域を発見することができる。図5に表わす移動式ロボット1では、約120°の角度とされる。
【0037】
光源4によって放射される光錐は、円錐とされる。代替的には、光錐は楕円錐であっても良い。典型的な部屋では、壁の長さが壁の高さより長いので、高さより幅が広い(すなわち、楕円錐光の水平方向寸法が楕円錐光の垂直方向寸法より大きい)楕円錐光は、部屋を効率的に照明することができる。
【0038】
上述のように、光源は、移動式ロボット1を囲んでいる領域に視覚システム2が検出可能とされる特徴部の数量に比例する照明レベルを提供するために、巡回の際に動的に制御される。しかしながら、移動式ロボット1の電力効率及びバッテリ寿命をさらに改善するために、光源それぞれによって提供される照明レベルが独立して調整可能とされるように、光源4は互いから独立して制御可能とされる。このことは、移動式ロボット1の(前進方向Aに対して)右側の領域が暗いが、移動式ロボット1の左側の領域が明るい場合に、方向BRHSに射している光源4に対する電力が、光錐32が方向BLHSに射している光錐31の照明レベルより高い照明レベルを提供するように独立して高められることを意味する。このことは、移動式ロボット1の一方の側部のみが照明を必要とする場合に、不必要に移動式ロボット1の他方の側部を照明することによって、電力及びバッテリ寿命が浪費されないことを意味する。
【0039】
図6は、部屋40に配置されている移動式ロボット1を表わす。部屋40には、移動式ロボット1の視覚システム2が利用可能とされるランドマークとなる特徴部を提供する、多数の物品が存在する。色彩が明るいテーブル41が、移動式ロボット1の(移動式ロボット1の前進方向Aに対して)左側に位置しており、色彩が暗いテーブル42が、移動式ロボット1の右側に位置している。また、窓43は、テーブル42の上方に且つ移動式ロボット1の右側に配置されており、額縁44が、移動式ロボット1の後方の壁に位置している。移動式ロボット1は、図5に表わすロボットと同一であるので、移動式ロボット1の側部それぞれにおいて光錐31,32を独立して制御可能とされる2つの光源を有している。図7Aは、図6に表わす環境にある場合における、移動式ロボット1に設けられた全方向性のPALカメラによってキャプチャーされた360°画像50を表わす。図7Bは、図7Aに表わす画像が撮影された場合における移動式ロボット1の側部の光源それぞれのために利用された、相対的なLED強度レベルを表わすグラフである。LHS(左舷側)LEDは、方向BLHSに射している光源を表わし、RHS(右舷側)LEDは、方向BRHSに射している光源を表わす。LHS(左舷側)LED及びRHS(右舷側)LEDの両方に供給される電力は微小であるので、LHS(左舷側)LED及びRHS(右舷側)LEDそれぞれのLED強度は非常に低い。このことは、移動式ロボット1を囲んでいる領域を照らしているための照明レベルが非常に低いことを意味する。360°画像50は、窓43からの光が部屋の反対側を照明するのに十分であることを表わしており、テーブル41及び額縁44の両方が明瞭に表わされている。しかしながら、窓43から入射する光量に起因して、窓43の周りのコントラストが乏しいので、図7Aに表わす360°画像50では、テーブル42を見ることはできない。
【0040】
図7Aに表わす360°画像50が、移動式ロボット1の巡回を成功させるために十分な数量の検出可能な特徴部を提供することは明白である。しかしながら、制御システム8が、コントラストが乏しいことに起因して、移動式ロボット1の右舷側において利用可能とされる検出可能な特徴部の数量が十分でないと決定した場合には、制御システム8は、視覚システム2に指令を送信し、移動式ロボット1の右舷側において照明レベルを高める。図8A及び図8Bは、その後の状況を表わす。グラフ8Bに表わすように、LHS(左舷側)LEDのLED強度は変化しないが、RHS(右舷側)LEDのLED強度が高められる。その結果として、移動式ロボット1を囲んでいる移動式ロボット1の右側の領域は、光錐32によって照明されており、図8Aに表わす360°画像50において、テーブル42が視認可能とされる。制御システム8は、移動式ロボット1をその周囲環境において巡回させるために、ランドマークとなる特徴部として視認可能なテーブル42の一部分を利用することができる。
【0041】
これまで、移動式ロボット1について、2つの光源4を備えているものとして図示及び説明した。光源4それぞれが、装置の左舷側及び右舷側において移動式ロボット1を囲んでいる領域に所定の照明レベルを提供する。しかしながら、図9に例示するように、移動式ロボット1が3つ以上の光源を備えている場合もある。図9では、移動式ロボット1は、4つの光源4を備えており、光源4それぞれが、円錐角βを有している光錐を放射する。4つの光源4すべてが、移動式ロボット1の左側及び右側それぞれを照明するように、常に外方に方向づけられている。より多くの光源が設けられている場合には、円錐角βが、上述の円錐角αより小さくなる。4つの光源4によって照明される移動式ロボット1の周囲領域は、上述の実施例において2つの照明によって照明された領域と略同一であるが、全方向性のPALカメラによってキャプチャーされた画像内の、別々に照明可能とされる領域の数量は二倍である。従って、より多くの光源が設けれている場合であっても、照明される画像の区画についての制御が良好になるので、エネルギ消費が一層小さくなり、バッテリ寿命が一層長くなる。このようなモデルは、必要に応じてより多くの光源を具備するように拡張することができる。
【0042】
図10及び図11は、移動式ロボット1の周囲の異なる四分円(Q1〜Q4及びQ5〜Q8)を効率的に照明する多数の光源(図示しない)を収容している移動式ロボット1を表わす。制御システムは、移動式ロボット1を囲んでいる四分円それぞれに提供する照明レベルを独立して制御するための指令を視覚システムに送信する。図10では、四分円は、移動式ロボット1の前進方向(矢印A)が2つの四分円Q1,Q2の境界と一致している。図11は、ロボットの前進方向(矢印A)が四分円Q7の中央を通過する代替的な実施例を表わす。他の実施例では、光源は、4つの四分円より多い又は少ない区画を独立して照明するように配置されている。
【0043】
従って、特定の実施例について説明したが、特許請求の範囲に規定される本発明の技術的範囲から逸脱することなく、様々な変更をすることができることに留意すべきである。
【符号の説明】
【0044】
1 移動式ロボット(ロボット式真空掃除機)
2 視覚システム
3 カメラ
4 光源
5 PSD(光位置センサ)
6 物理的接触センサ
8 制御システム
9 特徴部検出ユニット
10 巡回ユニット
11 マッピングユニット
12 照明制御ユニット
14 駆動システム
15 左舷側(LHS)トラクションユニット
16 右舷側(RHS)トラクションユニット
20 本体
21 分離器
22 トラクションユニット
23 掃除機ヘッド
24 カメラ
25 ハンドル
27 排出口
28 センサカバー
31 光錐
32 光錐
40 部屋
41 テーブル
42 テーブル
43 窓
44 額縁
50 360°画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11