【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一目的は、キャビティ壁をできる限り精確に被覆できる、キャビティ壁を被覆するための被覆システムおよび方法を提供することにあると考えることができる。
【0010】
この目的は、
各独立請求項の主題によって、達成される。
【0011】
本発明による方法および本発明による被覆システムの有利な変形例は、従属請求項の主題であり、以下の説明に更に示されている。
【0012】
上記種類の方法においては、本発明によると、第1のキャビティの複数の異なる高さにおいて第1のキャビティの少なくともいくつかの直径値が測定デバイスによって測定される。その後、求められた直径値に応じた可変厚の被覆が第1または第2のキャビティの壁に被覆ランスによって施される。
【0013】
したがって、上記の被覆システムには、本発明によると、電子制御手段が設けられる。この電子制御手段は、
−第1のキャビティの複数の異なる高さにおいて第1のキャビティの少なくともいくつかの直径値を測定デバイスによって記録すべく、および
−求められた各直径値に応じた厚さである可変厚の被覆を第1または第2のキャビティの壁に被覆ランスによって施すべく、
適合化される。
【0014】
本発明の中心概念は、キャビティの直径測定が以降の被覆に影響を及ぼして以降の被覆を所望の結果により近づけるために使用されるという事実にあると見做し得る。これに対し、公知の被覆システムにおいては、被覆後のキャビティ壁の測定値は、通常、以降の被覆プロセスの改善のためというより、品質評価のためにのみ使用されている。
【0015】
基本的に、被覆付き中空体の製作においては、2種類の誤差が発生する。これら誤差の一方または両方は、本発明によって好都合に低減可能である。一方では、被覆前のキャビティ直径が所望の直径からずれていることがある。特に、キャビティ直径は、キャビティの全高にわたって不所望に変動していることがある。この望ましくないずれは、施された被覆がその厚さに如何なる誤差も示さず、キャビティの全高にわたって精確に一定の厚さを有する場合でも、そのまま残る。
【0016】
また、被覆付き中空体の製作において発生する第2の誤差は、施された被覆の厚さが所望の厚さからのずれを全体的に示すことである。特に、被覆厚の望ましくない変動がキャビティの全高にわたって生じることがある。これは、特に、被覆を施している際の空気の渦に起因し得る。このような空気の渦は、例えば、被覆プロセス中の排気によって引き起こされ得る。
【0017】
好都合なことに、上記誤差の両方または少なくとも一方は、本発明によって低減可能である。例えば、高さ依存のキャビティ直径を被覆前に検出でき、所望のキャビティ直径からのずれを算出できる。その後に施される被覆は、このずれが少なくとも部分的に、好ましくは完全に、補正されるように、形成される。
【0018】
代わりに、または加えて、被覆が施された後にも、高さ依存の直径の測定を行うことができる。これにより、施された被覆の所望の被覆からのずれを求めることができる。その後、次のキャビティ壁の被覆においては、上記ずれが少なくとも部分的に、好ましくは完全に、補正されるように、施される被覆を形成できる。
【0019】
したがって、本発明による被覆プロセスの制御は、調整ともなり得る。この調整において、被覆が施された後のキャビティ直径は調整変数、すなわち修正変更対象の変数、である。このキャビティ直径は測定され、所望値との差が算出される。次に、この差に基づき、修正変数が算出される。この場合の修正変数は、(以降のキャビティ壁に)施される被覆の高さに依存する厚さである。
【0020】
被覆が施される前にのみ第1のキャビティの直径値が複数の異なる高さで測定される場合は、これら直径値は、同じ(第1の)キャビティの壁に施される可変厚の被覆に影響を及ぼすために使用される。ただし、被覆が施された後、または施される前および施された後の両方に、複数の直径値が測定される場合は、これら直径値は、以降の(第2の)キャビティの壁に施される可変厚の被覆に影響を及ぼすために使用され得る。
【0021】
被覆ランスとは、この場合、被覆対象のキャビティ内に移動させることができ、その後に被覆粒子をキャビティ壁の方向に放出できる任意の手段と理解され得る。被覆ランスは、特に、被覆ランスの長手方向に対して横方向に、特に垂直方向に、向いた吐出口を有する細長い形状を有し得る。射出される被覆粒子は、特に、プラズマジェットで移送される金属粒子を含む。被覆中、被覆ランスが回転し、高さが調整されるようにすることができる。
【0022】
測定デバイスは、原則として、キャビティ直径を求めるための任意の種類のセンサを1つまたはいくつか有し得る。測定デバイスは、高さに応じて、すなわち、キャビティの長手方向軸線に沿って複数の異なる高さにおいて、キャビティ直径を測定可能であることが必須である。基本的には、キャビティ壁までの距離を測定する単一の距離測定センサで十分であり得る。その後、この距離から直径を算出できる。ただし、このアプローチは、測定デバイスがキャビティ内の中心に移動されず、中心軸線から逸れた場合は、相対的に不正確である。このような場合でも直径を精確に求められるようにするために、少なくとも3つの距離測定センサが設けられることが好ましい。特に、これら距離測定センサは、例えば三角測量の原理に従って、距離を光学的に測定できる。これらセンサは、それぞれの測定方向が測定デバイスの長手方向軸線に対して横または垂直方向に、且つ長手方向軸線周りにそれぞれ異なる角度で、延びるように、測定デバイス上に配置させることができる。これらセンサは、キャビティ壁までの距離をそれぞれの測定方向に測定する。測定デバイスがキャビティの中心軸線から逸れている場合、これらセンサのうちの1つは他より短い距離を測定し、これらセンサのうちの別のセンサは他より長い距離を測定する。これにより、ずれを算出でき、キャビティ直径を精確に求めることができる。
【0023】
可変厚の被覆とは、この場合、被覆が施されるキャビティの壁の特に全高にわたって、被覆の厚さが一定ではなく、変化することと理解され得る。
【0024】
本発明の意味の範囲内においては、キャビティの直径がこれら測定値からずれ得る場合でも、これら測定値はキャビティの直径に相当すると見做されるものとする。これら測定値は、検査された高さにおけるキャビティの、特に、半径、円周、または断面を含む。高さは、常態で円筒形状または少なくとも規則正しい形状を有するキャビティの長手方向軸線に沿っていると理解されるものとする。記載のように、円筒形状には望ましくないずれが存在し得る。その結果、例えば、円錐状シリンダ、または一定の円形断面を有するが、その直径が全高にわたって変化する、特に不規則性を有する、シリンダ、になり得る。
【0025】
好適な一方法変形例においては、第1のキャビティの壁に被覆が施される前に、第1のキャビティのいくつかの直径値が測定される。その後、同じ第1のキャビティ、すなわち、いくつかの直径値が測定されたキャビティ、に可変厚の被覆が施される。
【0026】
代わりに、または加えて、第1のキャビティの壁に被覆が施された後で、第1のキャビティのいくつかの直径値が測定されるようにすることもできる。第1のキャビティの壁の被覆後に被覆される第2のキャビティの壁に可変厚の被覆を施すことができる。この場合、原則として、第1のキャビティの壁の被覆を一定厚で行うこともできるが、上記のように、被覆前のキャビティの直径に応じた厚さで行えることが好ましい。
【0027】
特定の高さにおいて予め測定された直径値が大きいほど、その高さにおける可変厚の被覆の厚さとしてより大きい値が選択されると好都合であり得る。したがって、被覆が他より厚くなる部分は、被覆前のキャビティの、または(後でより詳細に説明する)既に被覆された別のキャビティの、直径、すなわち内径、が他より大きい部分である。好都合なことに、これにより、被覆後、キャビティの全高にわたってできる限り一定の直径の実現が保証される。
【0028】
この可変厚の被覆は、その可変の厚さが直径値の差を少なくとも部分的に、好ましくは完全に、補正するように、施されることが好ましい。部分的な補正とは、被覆後のキャビティの全高にわたる直径差が、同じキャビティに一定厚の被覆が施された場合に比べ、小さくなることと理解されるものとする。完全な補正とは、被覆前のキャビティの直径値とこの高さにおける被覆厚との合計が全ての高さにおいて同じ値になることと理解され得る。換言すると、この場合、被覆後のキャビティはその全高にわたって同じ直径を有する。すなわち、被覆後のキャビティがほぼ一定のキャビティ直径を有するように、可変厚の被覆がキャビティ壁に施される。連続して被覆された複数のキャビティは、被覆前のそれぞれ異なる直径が補正され、被覆後のこれら複数のキャビティがほぼ等しいキャビティ直径を有するように、それぞれの被覆厚が異なり得る。
【0029】
測定された複数の直径値への可変厚の被覆の依存性とは、測定された複数の直径値から導出された複数の値への依存性と見做すこともできる。特に、これら値は、第1のキャビティにおける高さ依存の複数の被覆厚とすることができる。これら高さ依存の被覆厚は、同じキャビティにおいて被覆を施す前および施した後に複数の直径値を測定し、被覆を施す前および施した後の直径値間の差を求めることによって、求めることができる。
【0030】
これらの特徴を実現するために、
−被覆が施される前および施された後の第1のキャビティの複数の異なる高さにおいて第1のキャビティのいくつかの直径値が測定デバイスによって記録され、
−被覆が施される前および施された後のこれら直径値から、高さ依存の被覆厚が求められ、
−この求められた高さ依存の被覆厚に応じた厚さである可変厚の被覆が第2のキャビティの壁に被覆ランスによって施されるように、被覆ランスが作動される、
ようにすることができる。
【0031】
この実施形態では、実際の被覆厚が意図された、または所望の、被覆厚から通常はずれるという問題に対応する。このずれを確認して考慮に入れることができる。例えば、特定の高さにおける実際の被覆厚がその高さにおける意図された被覆厚より小さいことを測定値が示す場合は、以降の(特に第2の)キャビティのためにより大きな被覆厚が選択される。この手順を繰り返すことができる。すなわち、この高さにおける被覆厚が依然として十分な厚さでない場合は、次のキャビティのためにこの高さにおける被覆厚が再び増加されることになる。
【0032】
本発明の好適な一変形例においては、上記実施形態のいくつかが組み合わされる。特に、被覆前のキャビティの複数の直径値に応じて、更には直前に検査された被覆済みキャビティの複数の直径値に応じて、高さ依存の被覆を選択することも考えられる。好適な一変形例は、以下のステップを含む。
【0033】
初めに、被覆が施される前の第1のキャビティにおいていくつかの直径値が測定される。その後、この同じ第1のキャビティに可変厚の被覆が施される。その際、その高さ依存の厚さは、被覆が施される前の第1のキャビティの複数の直径値に応じて選択される。次に、上記被覆がその壁に施された後の第1のキャビティにおいていくつかの直径値が測定される。被覆が施される前および施された後の複数の直径値から、高さ依存の被覆厚が求められる。求められた高さ依存の被覆厚と所望される高さ依存の被覆厚との差が算出される。この差は、以降のキャビティ壁に被覆を施す際に考慮される。特に、以降のキャビティ壁における被覆の厚さは、これら方法ステップが繰り返し実施されるたびに上記の差が減るように、選択される。
【0034】
原則として、可変厚の被覆は、任意に選択された方法で形成され得る。周知の被覆ランスを本発明のために簡単に使用できるようにするために、被覆ランスの移動速度または粒子射出能力を変化させることが好ましい。
【0035】
追加の装置特徴として記載されている本発明の特徴は、本発明による方法の変形例として見做される。また、この逆も成り立つ。より具体的には、本発明による被覆システムの複数の好適な実施形態において、電子制御手段は、上記ステップのうちの1つまたはいくつかを実施するべく、すなわち、特に、被覆ランスおよび測定デバイスを相応に作動させるべく、適合化される。
【0036】
本明細書の範囲内において、「キャビティ壁」および「キャビティの壁」などの用語は同意語と見做されるものとする。同じことは、「キャビティ直径」および「キャビティの直径」などの用語対にも当てはまる。
【0037】
以下においては、添付の図面を参照して、本発明の更なる利点および特徴を説明する。