特許第6591569号(P6591569)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6591569
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】ガスケット
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/12 20060101AFI20191007BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
   F16J15/12 F
   F16J15/10 N
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-565608(P2017-565608)
(86)(22)【出願日】2017年2月2日
(86)【国際出願番号】JP2017003685
(87)【国際公開番号】WO2017135337
(87)【国際公開日】20170810
【審査請求日】2018年6月12日
(31)【優先権主張番号】特願2016-18756(P2016-18756)
(32)【優先日】2016年2月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(72)【発明者】
【氏名】柳 得徳
(72)【発明者】
【氏名】内山 正芸
(72)【発明者】
【氏名】天野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】中川 侑己
(72)【発明者】
【氏名】萩原 直樹
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/137491(WO,A1)
【文献】 実開平06−032834(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/12
F16J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向内方または径方向外方へ向けて開口するとともに底面および軸方向一対の側面を備えるガスケット装着溝に装着されて圧力をシールするガスケットであって、
筒状部の一端に径方向外方へ向けてフランジ部を一体に設けた補強環を軸方向の一方に偏らせて埋設したガスケット本体と、
前記ガスケット本体の前記軸方向一方の端部に設けられ装着時に前記ガスケット装着溝の一方の側面に密接する第1シールリップと、
前記第1シールリップよりも剛性が高く設定されて前記ガスケット本体の軸方向他方の端部に設けられ装着時に前記ガスケット装着溝の他方の側面に密接する第2シールリップと、
前記ガスケット本体に設けられ、装着時に前記ガスケット装着溝の底面に密接するシールビードと、
装着時に前記第2シールリップ前記シールビード前記ガスケット装着溝の底面と前記他方の側面によって囲まれる空間部と、
を備えることを特徴とするガスケット。
【請求項2】
請求項1記載のガスケットにおいて、
前記第2シールリップのガスケット装着溝底面側の立ち上がり面および前記シールビードの軸方向他方の立ち上がり面が、断面直線状のテーパー面によって連続的に形成されていることを特徴とするガスケット。
【請求項3】
請求項1または2記載のガスケットにおいて、
前記補強環は、その軸方向一方の端面が前記ガスケット本体の軸方向一方の端面に表面露出した状態で前記ガスケット本体に埋設され、
前記ガスケット本体が前記ガスケット装着溝内で軸方向一方へ変位したときに前記補強環が前記ガスケット装着溝の一方の側面に当接することを特徴とするガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール技術に係る密封装置の一種であるガスケットに関する。本発明のガスケットは例えば、自動車関連分野で用いられ、または一般産業機械の分野などで用いられる。
【背景技術】
【0002】
油圧経路に用いられ前記油圧経路の圧力を受けてこの圧力(圧力流体)をシールするガスケット11は一般的に図4に示すように、補強環14を埋設したガスケット本体12の軸方向両端にそれぞれシールリップ15,16を有し、当該ガスケット11が装着溝23に装着されて軸方向に圧縮されたときに両シールリップ15,16がそれぞれ内側(径方向内方、図では右方)へ倒れ込む構造(圧力を受けてセルフシールする構造)となっている。両シールリップ15,16はそれぞれ圧力を受けて軸方向の反力をガスケット本体12に加えるが、圧力が高い場合、両シールリップ15,16の微小な剛性差によって、ガスケット本体12の軸方向セット位置が軸方向いずれか一方へずれる挙動を示すことがある。その場合、締め代を失う側のシールリップは圧力に負けてオイルが吹き抜けたり、隙間が拡大してゴムの変形領域が増加することでゴムの歪みが大きくなってゴムの耐久割れを生じたりする問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−32834号公報
【特許文献2】特開平1−261564公報
【特許文献3】特開2012−67790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記問題を解消するため、本願出願人は先に、図5に示す先行技術に係るガスケットを提案している(特許文献3参照)。
【0005】
すなわちこの図5に示す先行技術に係るガスケット11は、圧力経路を備えるハウジング21の内部に設けたガスケット装着溝23に装着されて圧力(圧力流体)Pをシールするガスケット11であって、補強環14を埋設したガスケット本体12と、ガスケット本体12の軸方向一方(図では上方)の端部に設けられるとともに装着時に装着溝23の一方の側面23aに密接する第1シールリップ15と、ガスケット本体12の軸方向他方(図では下方)の端部に設けられるとともに装着時に装着溝23の他方の側面23bに密接する第2シールリップ16とを有し、第2シールリップ16の剛性が第1シールリップ15の剛性よりも高く設定されていることまたは補強環14がガスケット本体12内で軸方向一方へ片寄って配置されていることにより圧力が当該ガスケット11に作用したときにガスケット本体12が装着溝23内で軸方向一方へ変位する構造を有し、さらにガスケット本体12の軸方向一方への変位に伴う第2シールリップ16の締め代低下によるシール性低下を補うべく第2シールリップ16と並んで第3シールリップ20が設けられている。
【0006】
上記構成のガスケット11においては、第2シールリップ16の剛性が第1シールリップ15の剛性よりも高く設定されていることまたは補強環14がガスケット本体12内で軸方向一方へ片寄って配置されていることにより圧力が当該ガスケット11に作用したときにガスケット本体12が装着溝23内で軸方向一方へ変位する構造が設けられているため、ガスケット本体12が内周側から圧力を受けたときに変位する方向が予め軸方向一方に特定されており、そのうえで、ガスケット本体12の軸方向一方への変位に伴う第2シールリップ16の締め代低下によるシール性低下を補うべく第2シールリップ16と並んで第3シールリップ20が設けられているため、締め代が低下する側(軸方向他方の側)のシール性を第3シールリップ20によって補うことが可能とされている。
【0007】
本発明は、上記図5の先行技術に係るガスケットの性能を一層向上させることを目的とし、すなわち補強環を埋設したガスケット本体の軸方向両端にシールリップを設けたガスケットにおいて、圧力が作用したときにガスケット本体が装着溝内で軸方向一方へ変位しても、締め代が低下する側のシール性を維持することができ、しかもそのうえで、装着溝の溝幅に係る寸法公差が大きくてもシール性を維持することができるガスケットを提供することを目的とする。
【0008】
発明のガスケットは、径方向内方または径方向外方へ向けて開口するとともに底面および軸方向一対の側面を備えるガスケット装着溝に装着されて圧力をシールするガスケットであって、筒状部の一端に径方向外方へ向けてフランジ部を一体に設けた補強環を軸方向の一方に偏らせて埋設したガスケット本体と、前記ガスケット本体の前記軸方向一方の端部に設けられ装着時に前記ガスケット装着溝の一方の側面に密接する第1シールリップと、前記第1シールリップよりも剛性が高く設定されて前記ガスケット本体の軸方向他方の端部に設けられ装着時に前記ガスケット装着溝の他方の側面に密接する第2シールリップと、前記ガスケット本体に設けられ、装着時に前記ガスケット装着溝の底面に密接するシールビードと、装着時に前記第2シールリップ前記シールビード前記ガスケット装着溝の底面と前記他方の側面によって囲まれる空間部と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば以上説明したように、補強環を埋設したガスケット本体の軸方向両端にシールリップを設けたガスケットにおいて、圧力が作用したときにガスケット本体が装着溝内で軸方向一方へ変位しても、締め代が低下する側のシール性を維持することができ、しかもそのうえで、装着溝の溝幅に係る寸法公差が大きく溝幅が広い場合であってもシール性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例に係るガスケットの半裁断面図
図2】本発明の他の実施例に係るガスケットの半裁断面図
図3】本発明の他の実施例に係るガスケットの半裁断面図
図4】従来例に係るガスケットの半裁断面図
図5】従来例(先行技術)に係るガスケットの半裁断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明には、以下の実施形態が含まれる。
(1)ガスケットの低反力化及び締め代追随性確保のため、ガスケットをリップタイプとする。リップ部のボリューム(剛性)を第2リップで第1リップより大とし、また第2リップは芯金からの距離を大きく取って径方向変形に対する芯金剛性の影響を受けづらくする。加圧時の挙動として、第2リップは装着溝隅部に押し付けられる形となり、面圧が増大し、かつ隅部に押し付けられた第2リップのゴムボリュームにより第1リップ側が持ち上げられ、第1リップの締め代が増大することでセルフシールが機能し、従来のリップタイプ対比小断面でのシールが可能となる。
(2)また、加圧時のガスケットの位置を安定して第1リップ側に持って来ることができるため、第1リップ側の相手部品(ハウジング)が樹脂材という場合、樹脂クリープによる締め代減少に追随することができる。
(3)また、加圧時に第2リップが外周側に押し付けられることによりガスケット全体としての軸方向長さが拡大するため、第2リップ側の相手部品(ハウジング)が樹脂材であっても樹脂クリープによる締め代減少に追随することができる。したがって第1リップ側および第2リップ側双方共に相手部品(ハウジング)が樹脂材であって樹脂クリープにより経時的に溝幅が拡大しても締め代減少に追随することができる。
【0016】
(4)第1リップ付け根のゴム厚を薄くすることで、高圧環境下でも、第1リップの外径側への変形が抑えられ、第1リップの破損、シール漏れを抑制できる。金具上面のゴム回りをなくし、金具を露出させ、更に金具の内径角部をアールから面取りにすることで、金具が外壁となり、耐圧性向上に寄与する。
(5)また、金具下端の曲げ形状を廃止し、面取りへ変更することで、更なる径方向の省スペース化が可能になる。
(6)本発明のガスケットは、内周シールに限らず、内外周を反転すれば、外周シールにも適用可能である。
【実施例】
【0017】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施例に係るガスケット11の半裁断面を示している。当該実施例に係るガスケット11は、自動車等車両におけるオートマチックトランスミッション(AT)内の継ぎ手シールなど、圧力(油圧)の経路を備えるハウジング21の内部に設けたガスケット装着溝23に装着されて圧力(圧力流体)Pをシールするものであって、以下のように構成されている。
【0019】
すなわち、所定のゴム状弾性体よりなる環状体(ゴム環状体)13の内部に金属等剛材製の補強環14が埋設されることにより当該ガスケット11におけるガスケット本体12が設けられており、このガスケット本体12の軸方向一方(図では上方)の端部に、装着時に装着溝23の一方の側面23aに密接する第1シールリップ15が一体成形されるとともに、ガスケット本体12の軸方向他方(図では下方)の端部に、装着時に装着溝23の他方の側面23bに密接する第2シールリップ16が一体成形されている。
【0020】
装着溝23は矩形断面の環状溝であって、径方向内方へ向けて開口し、ガスケット11の中心軸線0に対し直交する一対の平面状の側面23a,23bと、中心軸線0に対し平行な円筒面状の底面23cとを有している。ハウジング21は、軸方向に並設された複数のハウジング部材21A,21Bの組み合わせよりなり、複数のハウジング部材21A,21Bの対向部22における内周部に装着溝23が二つ割り形式で設けられている。したがって装着溝23の一方の側面23aは複数のハウジング部材21A,21Bのうちの一方のハウジング部材21Aによって形成され、装着溝23の他方の側面23bおよび底面23cは複数のハウジング部材21A,21Bのうちの他方のハウジング部材21Bによって形成されている。複数のハウジング部材21A,21Bの対向部22にスキマが存在すると、ハウジング21内部の圧力経路の圧力Pがこのスキマから漏れるので、これをシールすべくガスケット11が装着されている。
【0021】
第1および第2シールリップ15,16はそれぞれ、装着時、装着溝23の側面23a,23bに密接したとき、締め代によって径方向内方へ倒れ込むように構成されている。
【0022】
このため、第1シールリップ15は、全体としてガスケット本体12から径方向斜め内方へ向けて突出するように形成され、これによりガスケット本体12の内径面よりも径方向内方へ突出する内径突出部15aと、ガスケット本体12の一方の端面よりも軸方向一方へ突出する端面突出部15bとを一体に備えている。
【0023】
一方、第2シールリップ16は、これも全体としてガスケット本体12から径方向斜め内方へ向けて突出するように形成され、これによりガスケット本体12の内径面よりも径方向内方へ突出する内径突出部16aと、ガスケット本体12の他方の端面よりも軸方向他方へ突出する端面突出部16bとを備えている。
【0024】
第1および第2シールリップ15,16は、軸方向(図では上下方向)に非対称な断面形状とされ、第1シールリップ15よりも第2シールリップ16のほうが剛性が高く(ゴムボリュームが大きく)軸方向に潰れにくい形状とされている。また、補強環14は図示するようにガスケット本体12内で軸方向一方に片寄って配置されている。したがってガスケット11に対しその径方向内方から高圧の圧力が作用すると、ガスケット本体12が装着溝23内で軸方向一方へ変位しやすく、このようにガスケット本体12が装着溝23内で軸方向一方へ変位すると、装着溝23の他方の側面23bに対する第2シールリップ16の締め代が低下し、これにより第2シールリップ16によるシール性が低下することがある。
【0025】
そこで、これを防止すべく当該ガスケット11では、ガスケット本体12の外周面であって軸方向他方の端部位置近傍に、装着時に装着溝23の底面23cに密接する環状のシールビード17が設けられ、このシールビード17が装着溝23の底面23cに密接することにより、第2シールリップ16によるシール性の低下分ないし不足分を補うように構成されている。
【0026】
また、ガスケット本体12の軸方向他方の端部に第2シールリップ16が設けられるとともにガスケット本体12の外周面であって軸方向他方の端部位置近傍にシールビード17が設けられているため、ガスケット11を装着溝23に装着すると、第2シールリップ16の外周側に、第2シールリップ16およびシールビード17ならびに装着溝23の底面23cおよび他方の側面23bによって囲まれる環状の空間部18が設けられる。
【0027】
また、第2シールリップ16の外周面16cおよびシールビード17の軸方向他方の立ち上がり面17cは、断面直線状のテーパー面19によって連続的に形成されている。
【0028】
上記構成を備えるガスケット11においては、第2シールリップ16の剛性が第1シールリップ15の剛性よりも高く設定されていること、および補強環14がガスケット本体12内で軸方向一方へ片寄って配置されていることにより、圧力が当該ガスケット11に作用したときにガスケット本体12が装着溝23内で軸方向一方へ変位する構造が設けられているため、ガスケット本体12が内周側から圧力を受けたときに変位する方向が予め軸方向一方に特定されており、しかもそのうえで、ガスケット本体12の外周面に、装着時に装着溝23の底面23cに密接するシールビード17が設けられているため、ガスケット本体12の軸方向一方への変位に伴う第2シールリップ16の締め代低下によるシール性低下をシールビード17によるシールによって補うことが可能とされている。
【0029】
また、第2シールリップ16の外周側に、装着時に第2シールリップ16およびシールビード17ならびに装着溝23の底面23cおよび他方の側面23bによって囲まれる空間部18が設けられるため、第2シールリップ16はこの空間部18の容積を狭める方向へ弾性変形することが可能とされている。したがって第2シールリップ16に内周側から圧力が作用したときに第2シールリップ16が空間部18の容積を狭める方向へ弾性変形することにより(矢印A)、ガスケット中心軸線0に対する第2シールリップ16のリップ傾斜角度θが小さくなってこの分リップ軸方向長さLが長くなるため、このとき発生する反力によって、第2シールリップ16がガスケット本体12を軸方向一方へ向けて押圧し移動させ、さらにガスケット本体12を介して軸方向反対側の第1シールリップ15を軸方向一方へ向けて押圧し移動させる(矢印B)。したがって装着溝23の溝幅wに係る寸法公差が大きくて溝幅wが広い場合であっても第1シールリップ15が装着溝23の一方の側面23aから離れることなく接触し続けるため、第1シールリップ15によるシール性を維持することが可能とされている。
【0030】
したがって以上により、本発明所期の目的どおり、補強環14を埋設したガスケット本体12の軸方向両端にシールリップ15,16を設けたガスケット11において、圧力が当該ガスケット11に作用したときにガスケット本体12が装着溝23内で軸方向一方へ変位しても、締め代が低下する側のシール性を維持することができ、しかもそのうえで、装着溝23の溝幅wに係る寸法公差が大きくてもシール性を維持することができるガスケットを提供することができる。
【0031】
また、近年、一部のハウジング(例えば一方のハウジング部材23A)を軽量化すべくこのハウジングを樹脂化することが行なわれているが、樹脂には雰囲気状況によりクリープが発生することがあるので、ガスケット11には、クリープの発生によるハウジングの変形に追随可能なことが求められる。この点、上記ガスケット11によれば、樹脂製ハウジングにクリープが発生して装着溝23の溝幅wが拡大することがあっても第1シールリップ15が装着溝23の一方の側面23aから離れずに接触し続けるため、第1シールリップ15によるシール性を維持することができる。また、装着溝23の底面23cにクリープが発生してもシール性を維持することができる。
【0032】
なお、上記実施例では、補強環14の形状が断面略L字形とされ、すなわち筒状部14aの一端に径方向外方へ向けてフランジ部14bを一体に設けたものとされているが、補強環14の形状はとくに限定されず、例えばフランジ部14bが省略されて筒状部14aのみよりなるものであっても良い。
また、上記実施例では、補強環14におけるフランジ部14bの軸方向他方の端面(図1における下面)がゴム状弾性体よりなるガスケット本内12の厚み内に埋設されているが、図2に示すように、このフランジ部14bの軸方向他方の端面14hはこの端面14hの一部もしくは全部(図2では略全部)が直接、表面露出する状態とされても良い。
また、上記実施例では、補強環14におけるフランジ部14bの軸方向一方の端面(図1における上面)がゴム状弾性体よりなるガスケット本内12の厚み内に埋設されているが、図2に示すように、このフランジ部14bの軸方向一方の端面14iはこの端面14iの一部もしくは全部(図2では外径側の半分ほど)が直接、表面露出する状態とされても良い。
【0033】
また、この補強環14について、以下の構成を採用することにより、第1シールリップ15の耐圧性を一層向上させることができる。
【0034】
すなわち上記実施例では図1に示したように、補強環14の全体がゴム状弾性体よりなるガスケット本内12の厚み内に埋設されているが、これに代えて図3に示すように、補強環14の軸方向一方の端面14cがガスケット本体12の軸方向一方の端面12cに表面露出した状態で補強環14をガスケット本体12に埋設する。
【0035】
この構成によると、装着時、圧力がガスケット11に作用してガスケット本体12が装着溝23内で軸方向一方へ変位したときに補強環14の軸方向一方の端面14cがハウジング21Aの端面であって装着溝23の一方の側面23aに直接接触する。したがって補強環14が外壁となって第1シールリップ15の外径側への変形を抑制するため、第1シールリップ15が変形しにくくなる。したがって第1シールリップ15の耐圧性を向上させることが可能とされる。
【0036】
また、上記実施例では図1に示したように、補強環14における筒状部14aの内周面とフランジ部14bの軸方向一方の端面が交差する角部(内周角部)が断面円弧形のアール形状とされているが、これに代えて図3に示すように、この補強環14における筒状部14aの内周面とフランジ部14bの軸方向一方の端面が交差する角部(内周角部)14dを断面直線状のテーパー形状とする。
【0037】
この構成によると、上記埋設の構造と同様に、第1シールリップ15が外径側へ変形しにくくなるため、第1シールリップ15の耐圧性を向上させることが可能とされる。
【0038】
また、補強環14について、以下の構成を採用することにより、ガスケット11の径方向厚み寸法を縮小し、径方向の省スペース化を実現することができる。
【0039】
すなわち上記実施例では図1に示したように、補強環14における筒状部14aの軸方向他方の端部が内径側へ曲げられた曲げ形状とされているが、これに代えて図3に示すように、この補強環14における筒状部14aの軸方向他方の端部14eを軸方向に直線状のストレート形状とする。
【0040】
この構成によると、補強環14の内径寸法が拡大されることにより補強環14の径方向厚み寸法が縮小されるため、ガスケット11の径方向厚み寸法を縮小し、径方向の省スペース化を実現することができる。
【0041】
なお、ストレート形状による直角の先端角部がゴム状弾性体よりなるガスケット本体12を傷付けるおそれがある場合には、端部14eの先端角部にそれぞれ面取り部14f,14gを設けても良い。
【0042】
上記実施例では、ガスケット11がその内周側に存する圧力Pをシールするもの(内周シール)とされ、ガスケット11を装着する装着溝23が径方向内方へ向けて開口するものとされているが、その径方向の向きについては反対であっても良い。すなわち本発明は、ガスケット11がその外周側に存する圧力Pをシールするもの(外周シール)とされ、ガスケット11を装着する装着溝23が径方向外方へ向けて開口するものとされる場合にも適用される。
【符号の説明】
【0043】
11 ガスケット
12 ガスケット本体
12c,14c,14i 軸方向一方の端面
13 環状体
14 補強環
14a 筒状部
14b フランジ部
14d 角部
14e 軸方向他方の端部
14f,14g 面取り部
14h 軸方向他方の端面
15 第1シールリップ
15a,16a 内径突出部
15b,16b 端面突出部
16 第2シールリップ
16c 外周面
17 シールビード
17c 立ち上がり面
18 空間部
19 テーパー面
21 ハウジング
21A,21B ハウジング部材
22 対向部
23 装着溝
23a 一方の側面
23b 他方の側面
23c 底面
図1
図2
図3
図4
図5