(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6591617
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】振動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H02K 33/16 20060101AFI20191007BHJP
B06B 1/04 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
H02K33/16 A
B06B1/04 Z
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-111618(P2018-111618)
(22)【出願日】2018年6月12日
(62)【分割の表示】特願2018-95789(P2018-95789)の分割
【原出願日】2013年8月29日
(65)【公開番号】特開2018-137995(P2018-137995A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2018年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】片田 好紀
(72)【発明者】
【氏名】山脇 隆太
【審査官】
池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2012/0313459(US,A1)
【文献】
特開2002−200460(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第101902115(CN,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0327673(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 33/16
B06B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に固定されたコイルと、前記コイルに対面して配置されたマグネットとの協働により、前記マグネットが振動中心軸線に沿ってリニアに振動する振動アクチュエータにおいて、
振動方向で延在する偏平な前記コイルと、
振動方向で延在する偏平な前記マグネットと、
前記マグネットの外側に配置されて、前記マグネットと一緒に振動する分銅と、
幅方向が前記分銅の肉厚方向に一致すると共に、前記筐体内に配置され前記振動中心軸線の延在方向で前記分銅を中央として対向して配置される一対の板バネと、を備え、
前記分銅は凹部を有し、
前記板バネは前記分銅と全面が接触する分銅着座面と、前記分銅着座面には前記凹部と固定される固定部を有し、
前記板バネは前記筐体に固定される一端部を有し、前記一端部には第1の凸部または第1の貫通孔が設けられ、前記筐体の側壁には前記第1の凸部が嵌合する第2の貫通孔または前記第1の貫通孔が嵌合する第2の凸部が設けられていることを特徴とする振動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話などの携帯無線装置の着信を利用者に知らせる振動発生源や、タッチパネルの操作感触や遊技機の臨場感を指や手に伝えるための振動発生源などに利用される小型の振動アクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特開2011−97747号公報がある。この公報に記載された振動アクチュエータは、振動方向で延在する偏平なコイルと、振動方向で延在する偏平なマグネットとを備えているので、筐体を偏平すなわち薄型化することができる。また、錘部(分銅)が左右一対のシャフトによって支持されているので、落下衝撃時でも、錘部をシャフトに沿って動かすことができ、これによって、錘部が筐体内で自由に暴れることがない。また、バネ受け部と錘部との間にコイルバネを配置させているので、筐体内で無駄なスペースを作り出すことなく、省スペース化を達成させ、振動アクチュエータのコンパクト化すなわち小型化を達成させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−97747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の振動アクチュエータでは、シャフトに沿って錘部を振動させているので、錘部がシャフトを摺動する際の滑り音(摩擦音)が発生すると共に、構造が複雑化し、しかも、薄型化や軽量化が難しいといった問題点がある。
【0005】
本発明は、摩擦音の発生を抑制し、簡易な構造をもって、薄型化や軽量化を容易に達成するようにした振動アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による振動アクチュエータは、明細書に記載された幾つかの発明のうち以下の構成を具備するものである。
筐体に固定されたコイルと、コイルに対面して配置されたマグネットとの協働により、マグネットが振動中心軸線に沿ってリニアに振動する振動アクチュエータにおいて、振動方向で延在する偏平なコイルと、振動方向で延在する偏平なマグネットと、マグネットの外側に配置されて、マグネットと一緒に振動する分銅と、幅方向が分銅の肉厚方向に一致すると共に、筐体内に配置され振動中心軸線の延在方向で分銅を中央として対向して配置される一対の板バネと、を備え、
前記分銅は凹部を有し、前記板バネは前記分銅と全面が接触する分銅着座面と、前記分銅着座面には前記凹部と固定される固定部を有し、板バネは筐体に固定される一端部を有し、一端部には第1の凸部または第1の貫通孔が設けられ、筐体の側壁には第1の凸部が嵌合する第2の貫通孔または第1の貫通孔が嵌合する第2の凸部が設けられていることを特徴とする振動アクチュエータ。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、摩擦音の発生を抑制し、簡易な構造をもって、薄型化や軽量化を容易に達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る振動アクチュエータの一実施形態を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る振動アクチュエータの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0010】
図1及び
図2に示されるように、小型の振動アクチュエータ1は、ベース板2と蓋部3からなる偏平な筐体4を有している。ステンレス鋼からなる筐体4内には、ベース板2に接着剤で固定されると共に、振動方向に延在する環状で偏平なコイル6と、コイル6に対面して配置されると共に、振動方向に延在する板状の偏平なマグネット7と、が収容されている。コイル6の給電端子(不図示)は、コイル6に結線された状態でベース板2の底面から露出している。また、扁平な直方体形状をなすマグネット7は、一方の平面側がN極、他方の平面側がS極になっている2枚のマグネット部7a,7bにより形成されている。
【0011】
このマグネット7は、一方のマグネット部7aのN極と他方のマグネット部7bのS極とを同一平面上で対向させ、マグネット部7aの周側面とマグネット部7bの周側面とを接着剤によって貼り合わせることで構成されている。なお、一枚の磁性板に着磁させてマグネット7を形成してもよい。そして、コイル6に給電端子から矩形方形波又は正弦波の電流を印加すると、マグネット7は、平面方向でリニアに振動する。
【0012】
このマグネット7は、タングステンからなる分銅8に固定され、マグネット7の外側周囲には分銅8が配置されている。略直方体形状をなす分銅8の中央には、マグネット7を固定するための開口部8aが設けられ、この開口部8a内にマグネット7が挿入された状態でマグネット7は分銅8に接着剤により固定され、マグネット7と分銅8は一緒に振動する。また、分銅8の底部には、振動中心軸線L方向における両端において、振動中心軸線Lに対して直交して延在する突起部8bが設けられ、この突起部8bによって分銅8の両端の肉厚が厚くなっている。突起部8bの突出量は、後述する板バネ10の幅に対応させている。
【0013】
図2〜
図4に示されるように、筐体4内には、同一形状をなす一対の板バネ10が配置され、各板バネ10によって分銅8及びマグネット7を筐体4内に浮かせた状態で振動させることができる。一対の板バネ10は、振動中心軸線Lの延在方向で分銅8を中央として対向して配置され、振動中心軸線Lに対して直交する平面を境にして鏡面対称関係になっている。そして、各板バネ10を分銅8に取り付けた状態で、各板バネ10の幅方向は分銅8の肉厚方向に一致させられている。
【0014】
各板バネ10は、振動中心軸線Lを通る対称面を境にして鏡面対称形をなす第1のバネ部Aと第2のバネ部Bと有する。S字状をなす第1のバネ部Aは、蓋部3の側壁3aに固定される第1の着座片11Aと、分銅8の周側面8cに当接する第2の着座片12Aと、第1の着座片11Aと第2の着座片12Aとの間で延在するバネ片13Aと、で構成されている。
【0015】
バネ片13Aでは、振動中心軸線Lに近づいて位置するU字状の内側折り返し部S1と、振動中心軸線Lから遠ざかって位置するU字状の外側折り返し部S2と、が振動方向で交互に出現するように折り曲げられている。そして、内側折り返し部S1は、第1の着座片11Aの端部に接合され、外側折り返し部S2は、第2の着座片12Aの端部に接合されている。
【0016】
同様に、逆S字状をなす第2のバネ部Bは、蓋部3の側壁3aに固定される第1の着座片11Bと、分銅8の周側面8cに当接すると共に、第2の着座片12Bと、第1の着座片11Bと第2の着座片12Bとの間で延在するバネ片13Bと、で構成されている。
【0017】
バネ片13Bは、振動中心軸線Lに近づいて位置するU字状の内側折り返し部S1と、振動中心軸線Lから遠ざかって位置するU字状の外側折り返し部S2と、が振動方向で交互に出現するように折り曲げられている。そして、内側折り返し部S1は、第1の着座片11Bの端部に接合され、外側折り返し部S2は、第2の着座片12Bの端部に接合されている。そして、第1のバネ部A側の第2の着座片12Aと第2のバネ部B側の第2の着座片12Bとは同一直線上で整列し、その結果、板バネ10には、一直線状の分銅着座面Pが形成される。
【0018】
各板バネ10には、分銅8の縁部の一辺を厚み方向で挟み込む一対の爪片20が設けられ、分銅8には、矩形をなす爪片20を嵌合させるために、爪片20と略同一外形寸法を有する矩形の凹部21(
図5参照)が形成されている。各爪片20は、同一直線上で整列している第1のバネ部A側の第2の着座片12Aと第2のバネ部B側の第2の着座片12Bとの境界位置に配置されている。そして、分銅8に板バネ10を固定するにあたって、レーザ溶接や接着剤を爪片20に施した場合、爪片20が板バネ10のセンターに位置することで、分銅8に板バネ10を安定して着座させることができ、このような構成によっても、耐落下衝撃性能を高めることができる。
【0019】
しかも、各爪片20を分銅8の各凹部21内にそれぞれ嵌合させるだけで、分銅8に対する板バネ10の位置決めを可能にし、ワンタッチで爪片20を分銅8に装着させることができる。また、爪片20が嵌合する部分だけ分銅8に凹部21が形成されているので、分銅8の質量低下を可能な限り小さくすることができる。しかも、爪片20が凹部21内に入り込むので、分銅8の肉厚方向において爪片20の突出を適切に抑えることができ、これによって、筐体4の薄型化を可能にしている。
【0020】
また、第1のバネ部A側の第2の着座片12Aと第2のバネ部B側の第2の着座片12Bにおいて、板バネ10には、両側に位置する外側折り返し部S2間を延在して分銅8の周側面8cに当接する分銅着座面Pが設けられている。このような構成を採用すると、分銅着座面Pを左右に大きく広げることができるので、板バネ10と分銅8との接触面積を大きく確保することができ、分銅着座面Pが分銅8の周側面8cに当接させられた状態で板バネ10は分銅8に接着剤やレーザ溶接によって固定されているので、大きな接触面積を確保している分銅着座面Pで力の分散が高められ、その結果、落下衝撃時であっても分銅8から板バネ10が外れ難くなる。
【0021】
第1のバネ部Aの第1の着座片11Aと第2のバネ部Bの第1の着座片11Bには、凸部22がそれぞれ形成され、蓋部3の側壁3aには、凸部22が嵌合する貫通孔23が形成されている。蓋部3の内側から側壁3aの貫通孔23内に板バネ10の凸部22が挿入され、第1の着座片11A,11Bは、側壁3aを貫通するレーザ溶接により、側壁3aに固定される。このような構成により、板バネ10の容易な位置決めや仮止めが可能であり、レーザ溶接を容易且つ確実に行うことができる。なお、図示しないが、第1の着座片11A,11B側に貫通孔を設け、蓋部3の側壁3a側に凸部を設けてもよい。
【0022】
本発明は、前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、下記のような種々の変形が可能である。
【0023】
例えば、各板バネ10の爪片は、第1のバネ部A側の第2の着座片12Aと第2のバネ部B側の第2の着座片12Bとの境界に上下一対設ける場合に限られず、第2の着座片12A,12Bのそれぞれに、上下で対をなす爪片を1個又は複数個設けてもよい。
【0024】
第1のバネ部Aと第2のバネ部Bとでは、内側折り返し部S1と外側折り返し部S2とが交互に繰り返されればよく、内側折り返し部S1と外側折り返し部S2は、それぞれ1個又は複数個であってもよい。つまり、第1の着座片11A,11B側から順に、内側折り返し部S1→外側折り返し部S2であっても、外側折り返し部S2→内側折り返し部S1であっても良い。なお、第2の着座片12A,12Bを長くするには、第2の着座片12A,12Bの外側端部に外側折り返し部S2を出現させることが好ましい。
【0025】
内側折り返し部S1と外側折り返し部S2は、U字状でなくても、V字状であってもよい。
【符号の説明】
【0026】
1…振動アクチュエータ、4…筐体、6…コイル、7…マグネット、8…分銅、8a…周側面、10…板バネ、20…爪片、21…凹部、A…第1のバネ部、B…第2のバネ部、S1…内側折り返し部、S2…外側折り返し部、P…分銅着座面、L…振動中心線。