(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
自動車(20)の夜間時運転支援装置であって、前記自動車(20)には、規定に従って前記自動車(20)の前方にある道路シーン(S)を照明するためのビームを放射する少なくとも1つの照明装置(22)が取り付けられ、
−前記照明装置(22)によって放射される照明(E)は、最大値(EMAX)と最小値(Emin)との間で可変であり、
−少なくとも1つの可変透過スクリーン(26、F、28)を含む前記支援装置は、前記道路シーン(S)と前記自動車(20)の運転者(24)との間に配置され、
−前記可変透過スクリーン(26、F、28)の透過係数(CT)は、最大値(CTMAX)と最小値(CTmin)との間で可変であり、
−前記照明装置(22)の少なくとも1つの光源のオンへの切り換えおよび前記可変透過スクリーンの前記透過係数(CT)は、同じ制御ユニット(30)によって同期させて制御され、
−前記照明(E)は、実質的に、前記可変透過スクリーン(26、F、28)の前記透過係数(CT)が前記最大値(CTMAX)に達するときに前記最大値(EMAX)に達し、
前記制御ユニット(30)は、前記照明装置(22)の前記光源への電力供給を調整する回路(32)と、受信機(40)に向けられるリモート制御波(OT)の送信機(38)とを制御するものであり、
前記可変透過スクリーン(26、F、28)の前記透過係数(CT)は、前記自動車(20)の室内灯(50)と同期させて制御され、前記室内灯(50)は、前記可変透過スクリーンの前記透過係数(CT)が前記最小値(CTmin)にあるときのみオンにされることを特徴とする装置。
前記可変透過スクリーンの前記透過係数(CT)は、前記リモート制御波(OT)の前記送信機(38)によって送信される前記リモート制御波を受信する受信機(40)によって制御されることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
前記制御ユニット(30)は、前記照明装置(22)によって放射される前記照明(E)の変動および前記可変透過スクリーン(26、F、28)の前記透過係数(CT)の変動が同期され、前記最大値(EMAX、CTMAX)に同時に達するように、 前記照明装置(22)の前記光源への電力供給を調整する前記回路(32)と、
前記受信機(40)に向けられるリモート制御波(OT)の前記送信機(38)と、
を制御する、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
前記照明装置(22)によって放射される前記照明(E)および前記可変透過スクリーン(26、F、28)の前記透過係数(CT)は、パルス幅変調(PWM)モードに従って可変であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
リモート制御波(OT)の前記送信機(38)および前記リモート制御波(OT)の前記受信機(40)は、電波、赤外線波または超音波によって通信することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
リモート制御波(OT)の前記送信機(38)および前記リモート制御波(OT)の前記受信機(40)は、無線通信プロトコルに従って通信することを特徴とする、請求項9に記載の装置。
前記可変透過スクリーン(26、F、28)は、マイクロエレクトロメカニカルシステムによって形成されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の装置。
前記可変透過スクリーン(26、F、28)の前記透過係数(CT)は、前記自動車のダッシュボードに与えられ、前記自動車の動作または環境に関する発光視覚ディスプレイ(44、46、48)と同期させて制御されることを特徴とする、請求項6又は12に記載の装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
対向車のロービームヘッドライトがオンにされ、ロービームを放射するヘッドライトの調節の精度が低く、またはわずかに調節ずれが生じている場合、対向車のロービームが、規定によって禁止された光線であって、カットオフレベルと呼ばれる規制上限より高い光線を含むため、眩惑を生じさせる事態を招きうる。
【0004】
さらに、対向車の照明装置が正確に調節されている場合であっても、光線が通過するこれらの照明装置の外側レンズが汚れていれば、放射ビームが眩惑を生じさせることもありうる。これは、外側レンズに汚れがあると、全方向に光を放射する光拡散中心が形成され、すなわち、第2の光源が形成されるためである。外側レンズが汚れているほど、照明装置が眩惑ビームを放射する傾向が強くなる。
【0005】
また、対向車のロービームヘッドライトは、これらの対向車のリヤトランクに比較的重量のある荷物が載っている別の状況において、眩惑を生じさせうる。この場合、車両の前方が上昇した状態になり、車両の姿勢が変化して水平方向ではなくなる。通常、規定に準拠した状態にするために、光ビームを下方に向けるための手動操作または自動操作式の補正部が設けられる。補正部が操作されず、または故障していれば、ロービームは規制上限より高い位置にある光線を含み、この光線は、眩惑を生じさせるとともに、規定で禁止されている。
【0006】
車両が重量物運搬車であれば、このような車両のヘッドライトの位置は、一般に、軽量車両のものより高い位置に取り付けられているため、反対方向の対向車による眩惑のこれらの危険性は高まる。
【0007】
本発明は、このような事情を鑑みたものであり、特に、上述した状況の1つにおいて、ロービームが眩惑を生じる状態にある対向車によって、車両の運転者が眩惑されることがないようにする方法および装置を提案する。
【0008】
(先行技術)
この状況を軽減するためにさまざまな解決策が提案されてきた。
【0009】
例えば、仏国特許出願公開第2846756号明細書には、運転者の視野において、光源の近傍にある第1の偏光フィルタと、第1の偏光フィルタの偏光方向に垂直な偏光方向を有する第2の偏光フィルタとを含む、運転者の夜間視野を改善する方法が開示されている。
【0010】
この解決策は理論的には十分なものであるが、効果的であるためには、路上を走行するすべての自動車の照明装置の保護用外側レンズに偏光フィルタを取り付ける必要があるとともに、運転者にも偏光ガラスを供給する必要がある。
【0011】
さらに、欧州特許出願公開0498143(A1)号明細書には、所定の測定角度内の周囲輝度値にて比例信号を出力する光学センサを含む眩惑防止装置が開示されている。光学センサは、測定用および所定のしきい値との比較用の回路にこの信号を送信する。測定値が所定値を超えていれば、比較回路は、信号がない場合の完全透明状態から部分透明状態または信号送信時のカラー状態に変化し、信号が途絶えると透明状態に戻るように構成された電気感応性スクリーンをオンにするための信号を送る。
【0012】
この装置の欠点は、道路シーン全体の認知に影響を及ぼす点である。周囲輝度が認証しきい値を超えれば、1つの要素のみが道路シーンに単一点を形成することによって過度の輝度が生じうるが、道路シーン全体がぼやけてしまう。この場合、この眩惑防止装置が与えられた運転者は、差し迫った危険を警告する交通標識などの道路シーンにある重要な要素や、運転者の車両のヘッドライトビームによって照明される路面を見ることができない可能性もある。
【0013】
例えば、国際公開第96/20846号に開示されているものであって、車両のヘッドライトによる光パルスの放射と、車両のヘッドライトによって放射される光パルスと同期して運転者の目前に配置されたフィルタの透明度の制御とを含み、フィルタの透明度は、光パルスのものを超える持続時間最大値にある、対向車のヘッドライトからの光を減衰するための既知の方法および装置がある。このようにして、接近するヘッドライトの輝度が低減される。
【0014】
また、米国特許5486938号明細書は、光パルスの放射中に液晶スクリーンの透過が最大であるように、運転者の目前に配置された、フラッシュランプおよび液晶スクリーンが取り付けられたヘッドライトを同期させて制御する発生器を備える、運転者用眩惑防止システムを開示している。
【0015】
上記特許文献の最後の2つには、取り扱いや使い勝手が悪く、比較的長い応答時間で動作が比較的遅く、使用するフィルタやスクリーンの透明度が常に50%未満であるシステムが記載されており、すなわち、液晶を使用するこれらのシステムは、液晶の透過が最大であっても、知覚する光度の強度の低下を生じる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、このような事情を鑑みたものであり、自動車の運転者に以下のもの、すなわち、 −この自動車の照明装置によって照明されるさいの道路シーンの包括的視野、
−道路シーンに存在し、運転者によって制御された車両に属さず、道路シーンの運転者の知覚と干渉する可能性のある光源の減衰視野、
−これにより、運転者の動きを妨げたり、運転者の視野を制限したりすることがないこと、
を与えることによって、自動車の夜間時運転支援を提供するという目的を有する。
【0017】
この目的を達成するために、本発明は、規定に従って自動車の前方の道路シーンを照明するためのビームを放射する少なくとも1つの照明装置が取り付けられた自動車の夜間時運転支援装置であって、
−照明装置によって放射される照明は、最大値と最小値との間で可変であり、
−装置は、道路シーンと自動車の運転者との間に位置する少なくとも1つの可変透過スクリーンを含み、
−スクリーンの透過係数は、最大値と最小値との間で可変であり、
−照明装置の少なくとも1つの光源をオンにすることと、可変透過スクリーンの透過係数は、同じ制御ユニットによって同期させて制御され、
−照明は、スクリーンの透過係数が最大値に達するときに実質的に最大値に達する、
自動車の夜間時運転支援装置を提案する。
【0018】
本発明によれば、制御ユニットは、照明装置の光源への電源を調整するための回路と、受信機に向けられたリモート制御波の送信機とを制御する。
【0019】
別々にまたは組み合わせて考慮される本発明の他の特性によれば、
−可変透過スクリーンの透過係数は、リモート制御波の送信機によって送信されたリモート制御波を受信する受信機によって制御され、
−可変透過スクリーンは、
−自動車のフロントガラス、
−自動車のフロントガラスと自動車の運転者との間に配置されたスクリーン、または、 −自動車の運転者がかける眼鏡、
よって形成され、
−制御ユニットは、
−照明装置の光源への電源を調整するための回路と、
−受信機に向けられたリモート制御波の送信機と、
を装置によって放射される照明の変動および可変透過スクリーンの透過係数の変動が同期され、同時に最大値に達するように制御し、
−制御ユニットは、
−照明装置の光源への電源を調整する回路と、
−受信機に向けられたリモート制御波の送信機と、
を透過係数が最大値を有する持続時間が、照明が最大値を有する持続時間より長くなるように動作させ、
−照明装置によって放射される照明および可変透過スクリーンの透過係数は、パルス幅変調モードに従って変動し、
−照明の最小値はゼロであり、
−可変透過スクリーンの透過係数の最小値は、実質的にゼロであり、
−リモート制御波の送信機およびこれらのリモート制御波の受信機は、電波、赤外線波または超音波によって通信し、
−リモート制御波の送信機およびこれらのリモート制御波の受信機は、無線通信プロトコルに従って通信し、
−照明装置の光源は、発光ダイオードまたはレーザダイオードであり、光源は、調整回路によって電力が供給され、最大値と最小値との間を周期的に変動する電力を受け、
−電力は、パルス幅変調モードに従って変動し、
−可変透過スクリーンは、液晶スクリーンによって形成され、
−可変透過スクリーンは、マイクロエレクトロメカニカルシステムによって形成され、 −可変透過スクリーンは、独立型の電源に関連付けられ、
−可変透過スクリーンの透過係数は、自動車のダッシュボードに設けられ、自動車の操作または環境に関係する発光視覚ディスプレイと同期させて制御され、
−視覚ディスプレイの輝度は、可変透過スクリーンの透過係数が最大値に設定されると、パルス幅変調モードのデューティーサイクルの逆数に等しい因子だけ増大され、
−可変透過スクリーンの透過係数は、自動車の車内照明と同期させて制御され、車内照明は、可変透過スクリーンの透過係数が最小値にあるときのみオンにされる。
【0020】
本発明はまた、自動車の運転者と自動車の前方の道路シーンとの間に配置されるように適応された可変透過スクリーンを提案する。
【0021】
本発明によれば、スクリーンの透過係数は、最大値と最小値との間のパルス幅変調モードに従って変動し、可変透過スクリーンの透過係数は、制御ユニットの送信機によって送信され、受信機によって受信されるリモート制御波によって、無線通信プロトコルに従って制御ユニットによって制御される。
【0022】
本発明の他の目的、特性および利点は、以下の添付の図面を参照しながら非限定的に与えられる例示的な実施形態の以下の記載から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0024】
まず、
図3を参照すると、通常の運転状況において運転者によって知覚されうる場合の道路シーンSRの概略図が示されている。
図4A、
図4Bおよび
図5は、ロービームヘッドライトがオンにされた後の、夜間時運転中におけるこの道路シーンの図を示す。
【0025】
道路シーンSRは、典型的に、道路10の他に、構造物などの路傍要素や、図示した例では、路肩や木、交通標識および先行車や対向車などの他の車両を含む。
【0026】
このように、車両のロービームヘッドライトによって照明された道路シーンにおいて視認される要素は、いくつかのカテゴリに分類されうる。
【0027】
−例えば、道路10、路肩および木12、隣接構造体などの風景の要素など、すなわち、自動車のヘッドライトによって放射される光を受けて全方向に均等に拡散し、または、照明が強いほど、明るさが増すという点で、誘起された輝度のみを有する要素などの受動要素または受動源。
【0028】
−交通標識14、路上の蛍光標識線16、先行する(同じ方向に走行する)他の車両19の反射器など、すなわち、車両のヘッドライトによって放射される光を受けて、好ましい方向に、一般には、ほぼ光がきた方向にこの光の顕著な部分を反射する要素であって、言い換えれば、誘起された輝度のみを有するが、この輝度は受動要素の輝度よりも高い要素などの半能動要素または半能動源。
【0029】
−他の対向車(反対方向に移動する車両)の照明装置18、三色交通信号灯、街灯など、すなわち、光源そのものであり、受光する照明とは関係なく単独で光を放射する要素であって、言い換えれば、受光する照明にかかわらず、固有の輝度を有する要素などの能動要素または能動源。
【0030】
このように、道路シーンのすべての要素は、以下の輝度、すなわち、
−受動要素および半能動要素の場合、ゼロである固有輝度、および
−能動要素の場合は無視できる誘起輝度、
の和である輝度で運転者によって知覚される。
【0031】
このように、
図3の道路シーンにおいて、以下のもの、すなわち、
−道路10、路肩および木12などの受動源、
−交通標識14、路上の標識線16および反射器19などの半能動源、および
−反対方向の対向車のヘッドライト18などの能動源、
が見られる。
【0032】
一般に、受動または半能動は、許容できない眩惑の問題を生じない。なぜなら、この種の不都合を生じうる大きな表面積を有する交通標識は、一般に、道路のすぐ近くから離れた位置にあるためである。
【0033】
したがって、眩惑の問題は、上記の導入部で説明したさまざまな理由のために、反対方向を走行する車両のヘッドライト18などの能動要素からのみ生じる。
【0034】
本発明は、安全面で重要でありうる受動要素または半能動要素の輝度を変更することなく、眩惑発生源の可能性がある能動要素の輝度を低減することによって、この問題の解決策を提案する。この目的のために、本発明は、運転者と道路シーンとの間に介在させた選択的スクリーンを提案し、このスクリーンは、能動源からの光線を減衰するようにフィルタリングし、受動源または半能動源からの光線に対して透過性である。
【0035】
図1は、従来の方法でヘッドライト22が取り付けられ、象徴的に運転者の目24で示された運転者によって制御される、全体として参照番号20で示した車両の部分概略図を示す。
【0036】
運転者24は、
図3に概略的に示されているように、フロントガラス26を通して車両の前方の道路シーンSを見る。
【0037】
本発明によれば、可変透過スクリーンは、以下の目的、すなわち、
−一方では、能動源からの眩惑発生の可能性のある光線を、減衰させるようにフィルタリングする目的、および
−他方では、受動源または半能動源からのすべての光線を通過させ、受動源または半能動源が保持する安全情報が隠れることがないようにする目的のために、道路シーンSRとの間にある運転者の視野に配置される。
【0038】
本発明の実施形態によれば、可変透過スクリーンは、以下のもの、すなわち、
−運転者24とフロントガラス26との間に配置され、サンバイザのような折り畳み可能な、適切には、いわゆる、スクリーンF、
−フロントガラス26自体、または
−
図1には眼鏡の一方のレンズしか示されていないが、サングラスや補正用眼鏡のような運転者がかける眼鏡28によって形成されてもよい。
【0039】
これらの3つの実施形態は、記載を容易にするために
図1に同時に示されている。しかしながら、これらの実施形態は、それぞれが同じ結果をもたらす傾向にある変形実施形態にすぎない。
【0040】
以下の記載において、「可変透過スクリーン」という用語は、以下の任意のもの、すなわち、
−固定タイプのものか、または折り畳み可能なサンバイザタイプのものかにかかわらないスクリーンF、
−フロントガラス26、または
−眼鏡28、
を示すために使用される。
【0041】
本発明によれば、実施形態にかかわらず、可変透過スクリーンの透過係数は、車両のヘッドライト22の動作と同期して制御される。
【0042】
本発明によれば、ヘッドライト22は、可変強度の光ビームを放射し、ヘッドライト22によって放射されたロービームの強度の変動は、可変透過スクリーンの透過係数の変動と同期している。
【0043】
言い換えれば、ヘッドライト22によって放射される発光強度の最大レベルは、可変透過スクリーンの透過係数の最大レベルと一致し、ヘッドライト22によって放射される光強度の最小レベルは、可変透過スクリーンの透過係数の最小レベルと一致する。
【0044】
このように、道路シーンが最大光強度で照明されるとき、可変透過スクリーンを通した道路シーンの運転者の知覚が最適なものとなる。
【0045】
この目的を達成するために、本発明により、以下のもの、すなわち、
−ヘッドライト22の光源に電力供給するための調整回路または駆動部32と、
−可変透過スクリーンの透過係数を制御するための回路34と、
を動作させる制御ユニット30が提供される。
【0046】
制御ユニット30によって実行される動作は、以下のもの、すなわち、
−ヘッドライト22が、最大値と最小値との間で周期可変強度を有する光ビームを放射するように、調整回路32がヘッドライト22の光源に電力が供給されるようにし、および
−回路34が、可変透過スクリーンが最大透過度から最小透過度へ周期的に変化するように、可変透過スクリーンの可変係数を制御するようにし、
−回路32および34は、同期させて制御され、ヘッドライト22によって放射された強度は、可変透過スクリーンの透明度が最大のときに最大であり、逆に、ヘッドライト22によって放射される強度は、可変透過スクリーンの透明度が最小のときに最小である。
【0047】
ヘッドライト22によって与えられる照明が可変であるため、これらのヘッドライトに取り付けられた光源は、過度の慣性を有するものであってはならず、言い換えれば、放射された発光パワーは、ヘッドライトが受ける電力の一次関数でなければならない。本発明の問題を解決するためには適切でない応答時間を有する白熱灯や放電灯は、この条件を満たさないため、本発明は、ヘッドライト22の光源にダイオードを使用する。
【0048】
これらのダイオードは、最新の車両のヘッドライトに取り付けられたもののような白色光を放射するLEDとも呼ばれる発光ダイオードの形態のものであってもよい。また、これらのダイオードは、光線が蛍光体層に当たり、蛍光体層が白色光を放射するレーザダイオードの形態のものであってもよい。
【0049】
使用するダイオードのタイプまたはヘッドライト22のデザインに応じて、ヘッドライト22の光源は、これらのダイオードの1つ以上によって形成されてもよい。
【0050】
発光の面で、電力供給の変化に対するこれらのダイオードの反応は、ほぼ瞬時のものであるため、車両前方の道路シーンの照明を正確に制御することができ、したがって、この照明は、比較的高い頻度で周期的に可変のものにされうる。
【0051】
同様に、可変透過スクリーンは、非常に短い応答時間を有し、透過係数の高速変化が可能なように構成されてもよい。
【0052】
このため、可変透過スクリーンは、このような高速反応時間を与える液晶スクリーンによって形成されてもよい。また、可変透過スクリーンは、米国特許第7684105号明細書に記載されているタイプのものなどのマイクロエレクトロメカニカルシステムの形態のものであってもよい。
【0053】
可変透過スクリーンFは、フロントガラス26の場合のように固定されたものであれば、電力供給を与えるために車両の配線用ハーネスに直接接続されてもよく、透過係数を制御するために回路34に直接接続されてもよい。電力および制御信号のこのような二重供給は、二重リンク36によって
図1に示されている。
【0054】
可変透過スクリーンFが、サンバイザタイプまたは眼鏡28のスクリーンFの場合のように可動のものであれば、独自の電力供給源を有してもよい。実際、液晶スクリーンやマイクロエレクトロメカニカルシステムの透明度の状態または透過係数の制御は、最小の電力しか要求しないため、特に、眼鏡28の場合、長期間、液晶スクリーンまたはマイクロエレクトロメカニカルシステムを正確に動作させるためには、ボタン電池などのバッテリで十分である。本明細書において、「マイクロエレクトロメカニカル」という用語は、MEMS(「マイクロエレクトロメカニカルシステム」を表す)英語の頭文字から知られている概念を記述するために使用される。
【0055】
さらに、可動の可変透過スクリーンの場合、無線方法によって、例えば、無線通信プロトコル、例えば、Bluetooth(登録商標)またはWi−Fi(登録商標)規格に従った電波、赤外線波または超音波によって、回路34による透過係数の制御が行われるようにされうる。以下の記載において、これらの波を「リモート制御波」と呼ぶ。この場合、回路34は、リモート制御波の送信機38を含み、可変透過スクリーンFまたは眼鏡28には、これらのリモート制御波の受信機40が設けられる。
【0056】
上述したシステムの動作は、以下の説明から容易に推測されうる。
【0057】
周囲輝度が低下すると、光ロービーム、すなわち、上方から見た図である
図2に示すビーム42を放射するために、運転者によって手動で、または周囲輝度センサによって自動でヘッドライト22の光源がオンにされれば、制御ユニット30は、
図6のグラフに従って、ヘッドライト22の光源が周期的に供給されるように調整回路32を制御する。
【0058】
したがって、ヘッドライト22の光源は、
図6Aのグラフに従って所定の周波数および所定のデューティーサイクルで、例えば、PWM(「Pulse Width Modulation(パルス幅変調)」の英語表現を表す)モードにおいて、
図6Aの最大値P
MAXおよび最小値P
minとの間で周期的に可変の電力Pを受ける。
【0059】
ダイオード、LEDまたはレーザダイオードの形態の光源は、
図6Bのグラフに示すように、同じ周波数および同じ所定のデューティーサイクルαで、最大照明E
MAXおよび最小照明E
minとの間で周期的に変動する照明Eを同様に放射する。同図において、光源の応答時間は無視できるものとし、考慮に入れていない。
【0060】
光源の応答時間が
図6Bに示されるものであることが望ましければ、一方の状態から他方の状態への照明Eの「切り換え」が、
図6Aに示すこれらの光源に供給された電力Pに対する遅延を示すことを意味する。
【0061】
なお、デューティーサイクルαは、電力が最大の持続時間t
1と、その時間期間の持続時間Tとの比率によって決定され、したがって、0〜100%で変動する。
【数1】
【0062】
LEDまたはレーザタイプのダイオードは、ダイオードに供給される電力の変動に対してほぼ瞬時に反応する。結果的に、ヘッドライト22の光源によって放射される照明は、同じデューティーサイクルαとともに変動する。
【0063】
光源に供給される電力の最小値P
minがゼロであれば、最小照明E
minもゼロに等しい。これらの条件において、デューティーサイクルαを有するPWMモードにおける光源によって放射される平均照明
【数2】
は、以下のとおりである。
【数3】
【0064】
したがって、道路シーンの照明が規定に準拠するようにするためには、PWMモードで供給される光源によって与えられる平均照明が、照明E
REGに等しければよく、規定に従ったこの照明を与えるように継続的な状態で放射する必要がある。すなわち、
【数4】
【0065】
使用するLEDまたはレーザダイオードの特性から判断して、これらから、周波数1/Tで時間t
1の間に所望の照明E
MAXを与えるようにダイオードへの供給が要求される電力P
REGを推測することは容易である。
【0066】
この周波数1/Tは、車両20の運転者および対向車または先行車の他の車両の運転者のいずれに対しても、閃光現象を防止できる高さになるように選択される。周波数1/Tは、残像現象の恩恵を十分に受けるために、例えば、100Hzより大きいものである。
【0067】
このように、ヘッドライト22による道路シーンの照明は、従来の継続的な照明のように、車両20の運転者によって、および他の運転者によって知覚される。
【0068】
しかしながら、本発明によれば、車両20の運転者は、
図6Cのグラフに示すように、透過係数が、ヘッドライト22の動作のものと同じ周波数および同じデューティーサイクルで可変であるフロントガラス26、スクリーンFまたは眼鏡28であってもよい可変透過係数を有するスクリーンを通してこの道路シーンを観察する。
【0069】
このように、フロントガラス26、可変透過スクリーンFまたは眼鏡28は、
図6Cに示すように、以下の値、すなわち、
−時間t
1中に透過度が最大である最大値CT
MAXと、
−時間t
2中に透過度が最小である最小値CT
minと、
の間で変動する透過係数CTを有する。
【0070】
好ましくは、
図7に示すように、透過係数が最大値CT
MAXを有する持続時間t’
1は、照明が最大値E
MAXを有する持続時間t
1より長いため、持続時間t’
1は、t
1より瞬間Δt前に始まり、t
1の瞬間Δ’t後に終わる。この変形実施形態により、以下のことが可能になる。
【0071】
−光源22が最大照明状態E
MAXに切り換わるとき、透過係数CTは、最大値CT
MAXをすでに有し、
−透過係数CTが最小値CT
minに切り換わるとき、光源22は最小照明状態E
minにすでに切り換わっている。
【0072】
しかしながら、照明Eと透過係数CTとの間のオフセットΔtが他の方向にあるように、すなわち、
−透過係数CTが最大値CT
MAXに切り換わるとき、光源22は、すでに最大照明状態E
MAXの状態にあり、
−光源22が最小照明状態E
minに切り換わるとき、透過係数CTは、すでに最小値CT
minに切り換えられているようにすることが可能である。
【0073】
オフセット値ΔtまたはΔ’tは、t
1またはt
2の開始前に位置するかどうか、またはt
1またはt
2の終了前に位置するかどうかにかかわらず、持続時間t
1またはt
2より短い。したがって、考慮されるすべての実施例において、実質的に、スクリーン(26、F、28)の透過係数(CT)が最大値(CT
MAX)に到達するとき、照明(E)が最大値(E
MAX)に達すると言えうる。
【0074】
言い換えれば、上述した第1の変形例(光源22がすでにE
MAXに達しているときに、CTがCT
MAXに等しくなり、CTがすでにCT
minに等しいとき、光源22がE
minに切り換わる)により、光源が最大照明状態E
MAXにある全持続時間、透過係数が最大値CT
MAXを有するようにすることが可能であるため、運転者は、光源22によって照明される道路シーンの最適視野を有することになる。
【0075】
最大値CT
MAXは、可変透過係数を有するスクリーンまたは眼鏡のレンズ28の最大透過度の値である。ほとんどの場合、液晶スクリーンおよびマイクロエレクトロメカニカルシステムは、電気励起がない場合の状態、言い換えれば、休止状態にあり、電界の影響下でのみ不透明である。これらの場合、最大値CT
MAXは、可変透過係数を有するスクリーンを形成する液晶またはマイクロエレクトロメカニカルシステム、または眼鏡レンズ28の最小励起に相当する。
【0076】
いくつかの場合において、可変透過係数を有するスクリーンの休止状態は、最大の不透明度を有する状態にあってもよく、電界の影響下でのみ透明になる。この事態において、最大値CT
MAXは、眼鏡レンズ28を形成する可変透過係数を有するスクリーンの最大励起に相当する。
【0077】
上記説明は、眼鏡レンズ28の透過係数の値CT
minに準用されうる。
【0078】
このように、
図6Cのグラフは、これらの眼鏡レンズの励起信号の変動ではなく、眼鏡レンズ28の透過係数CTの変動を示している。
【0079】
好ましくは、透過係数CTの最小値CT
minは、時間t
2の間、実質的にゼロであり、または、言い換えれば、可変透過スクリーンは、時間t
2の間、実質的に不透明である。
【0080】
これらの条件において、眼鏡28が、使用される可変透過スクリーンを形成すると仮定した場合、
−時間t
2の間、すなわち、ヘッドライト22の光源がオフの間、眼鏡28は不透明であり、
−時間t
1の間、すなわち、ヘッドライト22の光源が最大強度で道路シーンSRを照明している間、眼鏡28の透明度は最大である。
【0081】
したがって、運転者24は、継続的な照明を与える従来のヘッドライトによって照明されているかのように道路シーンSRを見るという印象を有する。
【0082】
しかしながら、本発明により、
図2に示すように、運転者24は、眼鏡28が最大透明度を有する時間t
1の間、以下のものを見る。
【0083】
−道路10および路肩12などの道路シーンにあるロービーム42によって照明されるすべての受動要素。
【0084】
−交通標識14や先行車両の反射器19など、ヘッドライト22から光を受け、車両20および運転者24へ光を後方反射する、このビーム42内のすべての半能動要素。
【0085】
−接近車両のヘッドライト18などの全能動要素。
【0086】
時間t
2の間、眼鏡は不透明であり、したがって、運転者24は、道路シーンが実質的に見えない。
【0087】
時間t
1およびt
2が約100Hzの周波数1/tで互いに続くため、運転者の目24は観察の統合化を行い、以下の結果を生じる。
【0088】
受動要素は、時間t
1の間、
−周波数1/T、
−デューティーサイクルα、
−照明
【数5】
で周期的に照明される。
【0089】
したがって、受動要素の連続的な観察は、一定の照明E
REGでなされる観察と等しいということである。したがって、運転者24は、従来の照明によって与えられるものとまったく異なることがない受動要素の視野を有する。
【0090】
半能動要素は、受動要素と同じ条件で照明され、ほぼ光が来た方向に受光した光のかなりの部分を反射する。例えば、デューティーサイクルαが50%に等しければ、半能動要素は、半分の長さの時間で規定Q
REGに従う光量の2倍の光量Q
2を受ける。したがって、半能動要素は、規定Q
REGに従った光量で継続的に照明された場合と同じ量の光を反射する。
【0091】
したがって、半能動要素の連続的な観察は、一定の照明E
REGでなされる観察と等しいということである。したがって、運転者24は、従来の照明によって与えられるものとまったく異なることがない半能動要素の視野を有する。
【0092】
能動要素は、能動要素によって放射される光量に比して完全に無視できる量の光を受ける。しかしながら、能動要素は、可変透過スクリーンが最大透過を与える時間t
1の間のみ運転者24によって観察される。
【0093】
したがって、能動要素は、デューティーサイクルαに等しい時間の一部の間のみ視認可能である。可変透過スクリーンを通した能動要素の見かけの輝度は、実際の輝度より因子αだけ低減される。
【0094】
したがって、所望の結果が達成される。例えば、
図2を参照すると、ロービーム42に位置するすべての受動要素および半能動要素は、従来の照明の場合と同じ条件で視認可能である。しかしながら、対向車のヘッドライト18などのすべての能動要素は、因子αだけ低減された輝度で観察される。
【0095】
これは、実際、
図4Aおよび
図4Bに示された、観察された現象である。
【0096】
図4Aは、道路10、道路の外側にある要素12、交通標識14および対向車18のヘッドライトが確認される従来の道路シーンを示す。
【0097】
図4Bは、本発明の可変透過スクリーンを通して観察される同じ道路シーンを示す。この道路シーンのすべての要素は、交通標識などの受動要素または半能動要素であるかにかかわらず、輝度が低減された対向車のヘッドライト18などの能動要素を除き、
図4Aと同じ条件で視認可能であることは明らかである。
【0098】
本発明により、デューティーサイクルαを変動させることによって、受動要素および半能動要素の一定の視認性を維持するとともに、道路シーンに存在する能動要素の輝度の所望の低減を与えることが可能である。対向車のヘッドライトが眩惑を生じさせるものであっても、本発明により、道路シーンの他の細部の知覚を修正することなく、眩惑の程度が下がるまで輝度を低減させることができる。
【0099】
本発明は、運転者がかける眼鏡28の形態の実施形態において、さらなる多数の利点を有する。これは、
図5に示すように、運転者の視野は、フロントガラス26を通して前方に広がる道路シーンの他にも、運転者にとって有用なさまざまな視覚ディスプレイを示す車両のダッシュボードを含む。
【0100】
これらの視覚ディスプレイは、速度計や回転速度計の文字盤44、またはある車両機器の動作を示す表示灯46であってもよい。文字盤44および表示灯46は、ヘッドライト22がオンにされるときにオンになり、照明された視覚ディスプレイを与える。
【0101】
他の照明された視覚ディスプレイ48は、フロントガラス26を用いて仮想画像を形成する「ヘッドアップディスプレイ」(HUD:head up display)として英語で知られているビューイングシステムによって、例えば、
図5に示すように、ダッシュボードの外側の位置に運転者に与えられてもよい。
【0102】
運転者の注意喚起のために設けられるこれらのさまざまな照明される視覚ディスプレイは、本質的に安全上重要であるため、運転者がこれらの視覚ディスプレイをはっきりと見えるようにする必要がある。また、本発明により、可変透過スクリーン、この場合、眼鏡28の透過係数の変動と同期されるようにこれらの視覚ディスプレイをオンにすることによって、この結果が得られる。
【0103】
本発明によれば、視覚ディスプレイ44、46および/または48の輝度は、時間t
1の間、デューティーサイクルαの逆数に等しい因子だけ増大される。このように、可変透過スクリーンは、
−独自のヘッドライトによって照明される道路シーン、
−視覚ディスプレイ、ダッシュボードまたはヘッドアップディスプレイシステム
以外に、運転者の視野に位置するすべての物体の輝度を弱める効果を有する。
【0104】
運転者に不都合な可能性のある別の発生源は、例えば、1人以上の同乗者が読書するために車両の室内照明システムを使用したい場合などの室内照明システムである。
図1に記号で示すように、天井灯50を使用すると、運転者の視野にある細部が照らされて注意をそらしてしまう可能性があり、運転者の妨げとなりうる。
【0105】
また、本発明により、この問題も解消することができる。これは、本発明が時間t
2の間のみ、すなわち、可変透過スクリーン、この場合、眼鏡28が不透明である間のみ、室内灯50がオンにされてもよいためである。室内灯がオンにされている状況は運転者によって知覚されず、同乗者は所望するとおりに照明を使用しうる。
【0106】
このように、事実上、自動車の夜間時運転を支援する方法および装置であって、車両の運転者が、視野にある以下の要素、すなわち、
−運転者にとって通常のものである発光強度に等しい発光強度をもつようにされた、車両のヘッドライトによって放射されるロービームが道路シーンにおいて照らすすべての受動要素および半能動要素と、
−ヘッドライトおよび可変透過スクリーンの共通デューティーサイクルを変更することによって低減が固定または可変される低減された発光強度をもつようにされたすべての能動要素と、
−運転者にとって通常のものである発光強度に等しい発光強度をもつようにされた、車両の夜間時運転に関するすべての視覚ディスプレイと、
を有することができる方法および装置が考案された。
【0107】
本発明は、記載した実施形態に限定されるものではないことは明らかであり、実際、当業者であれば、本発明にさまざまな修正を加えうるものであり、これらの修正は本発明の範囲内のものである。したがって、運転者の視野の特定の領域に異なる減衰量を与えるように、例えば、フロントガラス26およびサンバイザタイプの可動スクリーンFなどの2つの連続した可変透過スクリーンが設けられてもよい。