特許第6591635号(P6591635)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オメガ・エス アーの特許一覧

<>
  • 特許6591635-時計用プッシュボタン装置 図000002
  • 特許6591635-時計用プッシュボタン装置 図000003
  • 特許6591635-時計用プッシュボタン装置 図000004
  • 特許6591635-時計用プッシュボタン装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6591635
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】時計用プッシュボタン装置
(51)【国際特許分類】
   G04B 37/12 20060101AFI20191007BHJP
【FI】
   G04B37/12 A
【請求項の数】13
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-153444(P2018-153444)
(22)【出願日】2018年8月17日
(65)【公開番号】特開2019-45483(P2019-45483A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2018年8月17日
(31)【優先権主張番号】17189110.4
(32)【優先日】2017年9月1日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507276380
【氏名又は名称】オメガ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・レッチェル
【審査官】 平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】 スイス国特許出願公開第708126(CH,A3)
【文献】 特表2015−531875(JP,A)
【文献】 スイス国特許出願公開第707158(CH,A3)
【文献】 欧州特許出願公開第1701225(EP,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第1727005(EP,A1)
【文献】 特開2004−138613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 3/04,27/00
G04B 37/08,37/10,37/12
G04C 3/00
G04G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計用のプッシュボタン装置であって、
時計ケースに組み付けられるための、略円筒状の筒と、
前記筒内に係合するとともに軸方向にスライド可能に設置されたプッシュボタンであって、その近位端に、ユーザによるプッシュボタンの操作を可能とするためのヘッドを装備し、前記ヘッドは、前記時計の内部と外部との接続を遠位端において確保するための中心シャフトと一体であり、前記ヘッドの前面にロゴまたは商標を含む、プッシュボタンと、
前記シャフトを取り囲む戻しバネであって、軸方向の力を発生させるために、前記筒の内側ショルダと前記プッシュボタンヘッドとの間に介挿された戻しバネと、
前記中心シャフトと前記筒の内壁との間のシールを確保するために、前記中心シャフトを取り囲む少なくとも1つのシールガスケットと、
前記戻しバネの押圧力に抗して前記プッシュボタンを前記筒内に保持するための止め部材と、を備える、装置において、
当該装置は、前記時計ケースに対する前記ヘッドの角度方位を調整するための装置をさらに備え、
前記角度方位調整装置は、前記筒の内部で前記中心シャフトの周りに同心状に配置された摩擦リングを含むことと、
前記摩擦リングは、前記中心シャフトと一体に回転し、前記中心シャフトに対して並進は自由であることと、
前記摩擦リングは、前記筒の内壁と摩擦接触する外側摩擦面を有することと、
前記中心シャフトは、前記中心シャフトを回転操作するための手段を含み、これにより、前記ヘッドの角度方位の調整のために、前記摩擦リングによって生じる摩擦力に抗して前記プッシュボタンを回転させることを可能としていること、を特徴とするプッシュボタン装置。
【請求項2】
前記操作手段は、前記中心シャフトの遠位部に配設されたスロットを含むことを特徴とする、請求項1に記載のプッシュボタン装置。
【請求項3】
前記操作手段は、前記中心シャフトの遠位端に螺着されたナットであり、前記ナットは前記止め部材をも形成している、ことを特徴とする、請求項1に記載のプッシュボタン装置。
【請求項4】
前記筒内で前記摩擦リングによって生じる摩擦トルクは、前記シャフト上の前記ナットのネジトルクよりも大きいことを特徴とする、請求項3に記載のプッシュボタン装置。
【請求項5】
前記中心シャフトと前記リングを回転一体とするために、前記摩擦リングは、多角形の開口を有し、前記中心シャフトは、前記開口に相補的な多角形断面を有する、ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のプッシュボタン装置。
【請求項6】
前記筒は、第1の収容部を規定する第1の内径を有し、さらに、前記第1の直径よりも小さい第2の直径によって延長されて、前記第2の直径により、ショルダおよび第2の収容部を規定している、ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のプッシュボタン装置。
【請求項7】
前記ヘッドは、前記第1の収容部の内部に配置されており、前記摩擦リングは、前記第2の収容部の内部に配置されており、前記中心シャフトは、前記第1の収容部と前記第2の収容部の中に延出して、前記遠位端によって前記第2の収容部から突き出ている、ことを特徴とする、請求項6に記載のプッシュボタン装置。
【請求項8】
前記ショルダは、その中央部において、前記中心シャフトを取り囲むワッシャを受容しており、前記戻しバネは、前記ヘッドと前記ショルダとの間に延在しており、前記少なくとも1つのシールガスケットは、前記ワッシャと前記摩擦リングとの間に延在している、ことを特徴とする、請求項6または7に記載のプッシュボタン装置。
【請求項9】
当該装置は、前記中心シャフトを取り囲む2つのシールガスケットを備え、それらの間にスペーサを形成するリングが介挿されている、ことを特徴とする、請求項8に記載のプッシュボタン装置。
【請求項10】
前記止め部材は、前記第2の収容部から突き出た前記中心シャフトの前記遠位端に配設されていることを特徴とする、請求項7〜9のいずれかに記載のプッシュボタン装置。
【請求項11】
前記止め部材は、前記中心シャフトの前記遠位端の環状溝に配設された弾性リングで形成されていることを特徴とする、請求項10に記載のプッシュボタン装置。
【請求項12】
前記操作手段は、前記中心シャフトの遠位部に配設されていることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載のプッシュボタン装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載のプッシュボタン装置を含む、時計ケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計用のプッシュボタン装置に関し、より具体的には、プッシュボタンヘッドがその端面にモチーフまたはロゴを含むとともに、そのモチーフを所望の方位に向けることが可能な、この種の装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
時計用のプッシュボタン装置は、典型的には円筒を有し、その内部に貫通してプッシュボタンが長手方向に配置されており、プッシュボタンは、指圧が加えられたときに筒内に形成された第1のショルダに当接する下面を有するヘッドと、典型的にはネジである止め部材において一端が終端しているシャフトと、を備え、この止め部材によって、筒内でのシャフトの軸方向隙間を制限している。一般的に、シールガスケットで、シャフトを取り囲むとともに、プッシュボタンを規定位置に戻すための戻しコイルバネを、シャフトの周りに巻回している。
【0003】
上記の説明に従って構成されたプッシュボタンは、現状技術において周知である。それらは、例えば日付修正用に、例えばクロノグラフまたは腕時計に装備されている。それらは、ミドルケースから突き出ている場合には「プッシュボタン」と呼ばれ、それらを指で押圧すると、機能の修正が可能である。押圧をやめると、プッシュボタンは元の位置に戻る。それらは、ミドルケースに埋め込まれている場合には、通常「コレクタ」と呼ばれる。
【0004】
このようなプッシュボタンは、時計ケースに螺嵌または圧嵌されるものの製造および組み付けが、よく知られている。ところが、そのようなプッシュボタン装置を組み付ける方法は、プッシュボタンのヘッド端面に、例えばロゴ、商標、もしくは類似の標識などの、刻印またはモチーフが付いている場合、これらのプッシュボタンには適さない。実際に、周知の組み付け方法は、概して、プッシュボタン装置を、その筒を時計ケースに螺嵌または圧嵌することにより組み付けるときに、プッシュボタンヘッドをケースに対して規定の正確な角度方位に向けることを可能とするものではない。従って、この方法では、プッシュボタンヘッドの端面に刻印が付いている場合に、時計の美的外観を損なう。この状況は、それらのプッシュボタン装置が高品質かつ高級な製品に装着される場合には、明らかに容認できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、プッシュボタンヘッドがその端面にロゴまたは商標のようなモチーフを有する場合に、そのヘッド端面に付いているロゴまたは商標の位置を規定の正確な角度位置または角度方位に調整することが容易に可能な、単純かつ経済的な設計のプッシュボタン装置を提供することにより、上記の従来技術の欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のため、本発明は、時計用のプッシュボタン装置に関し、このプッシュボタン装置は、
− 時計ケースに組み付けられるための、略円筒状の筒と、
− その筒内に係合するとともに軸方向にスライド可能に設置されたプッシュボタンであって、その近位端に、ユーザによるプッシュボタンの操作を可能とするためのヘッドを装備し、このヘッドは、時計の内部と外部との接続を遠位端において確保するための中心シャフトと一体であり、ヘッドの前面にロゴまたは商標を含む、プッシュボタンと、
− そのシャフトを取り囲む戻しバネであって、軸方向の力を発生させるために、筒の内側ショルダとプッシュボタンヘッドとの間に介挿された戻しバネと、
− 中心シャフトと筒の内壁との間のシールを確保するために、中心シャフトを取り囲む少なくとも1つのシールガスケットと、
− 戻しバネの押圧力に抗してプッシュボタンを筒内に保持するための止め部材と、を備える、装置において、
− この装置は、時計ケースに対するヘッドの角度方位を調整するための装置をさらに備え、
− その角度方位調整装置は、筒の内部で中心シャフトの周りに同心状に配置された摩擦リングを含むことと、
− 摩擦リングは、中心シャフトと一体に回転し、中心シャフトに対して並進は自由であることと、
− 摩擦リングは、筒の内壁と摩擦接触する外側摩擦面を有することと、
− 中心シャフトは、中心シャフトを回転操作するための手段を含み、これにより、ヘッドの角度方位の調整のために、摩擦リングによって生じる摩擦力に抗してプッシュボタンを回転させることを可能としていること、を特徴とする。
【0007】
本発明の他の効果的な態様によれば、
・ 操作手段は、中心シャフトの遠位端に配設されたスロットを含む。
・ 操作手段は、中心シャフトの遠位端に螺着されたナットであってよく、そのナットは止め部材をも形成し、この場合、筒内で摩擦リングによって生じる摩擦トルクは、中心シャフト上のナットのネジトルクよりも大きいことが好ましい。
・ 中心シャフトとリングを回転一体とするために、摩擦リングは、多角形の開口を有し、中心シャフトは、その開口に相補的な多角形断面を有する。
・ 筒は、第1の収容部を規定する第1の内径を有し、さらに、第1の直径よりも小さい第2の直径によって延長されて、この第2の直径により、ショルダおよび第2の収容部を規定している。
・ ヘッドは、第1の収容部の内部に配置されており、摩擦リングは、第2の収容部の内部に配置されており、中心シャフトは、第1の収容部と第2の収容部の中に延出して、その遠位端によって第2の収容部から突き出ており、好ましくは、ショルダは、その中央部において、中心シャフトを取り囲むワッシャを受容しており、戻しバネは、ヘッドとショルダとの間に延在しており、少なくとも1つのシールガスケットは、ワッシャと摩擦リングとの間に延在しており、効果的には、この装置は、中心シャフトを取り囲む2つのシールガスケットを備え、それらの間にスペーサを形成するリングが介挿される。
・ 止め部材は、第2の収容部から突き出た中心シャフトの遠位端に配設されており、好ましくは、止め部材は、中心シャフトの遠位端の環状溝に配設された弾性リングで形成される。
・ 操作手段は、中心シャフトの遠位部に配設される。
【0008】
本発明は、さらに、上記のようなプッシュボタン装置を含む時計ケースに関する。
【0009】
本発明の他の特徴および効果は、非限定的な例として、添付の図面を参照して提示される好ましい実施形態についての以下の詳細な説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、方位性があるプッシュボタンヘッドを有するプッシュボタン装置の上面図を示しており、本発明によるプッシュボタンヘッドの外面に、ロゴが設けられている。
図2図2は、図1のII−II線に沿った、本発明による方位性があるプッシュボタンヘッドを有するプッシュボタン装置の断面図を示している。
図3図3は、図2のIII−III線に沿った、本発明による方位性があるプッシュボタンヘッドを有するプッシュボタン装置の断面を示している。
図4図4は、図2のIV−IV線に沿った、本発明による方位性があるプッシュボタンヘッドを有するプッシュボタン装置の断面を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1および2は、方位性があるプッシュボタンヘッド2aを有するプッシュボタン装置1を示しており、これは、時計のミドルケース(図示せず)の側壁に圧嵌または螺嵌によって取り付けられるためのものである。
【0012】
プッシュボタン装置1の上面図である図1には、プッシュボタン2のヘッド2bの外面2aに配置された「LOGO」という刻印を示している。プッシュボタン装置1は、図2〜4を参照して後述する方位調整手段を備える。美的理由で、「LOGO」という刻印Lは、好ましくはプッシュボタン装置1が取り付けられる時計のミドル部の平面に対応した、完全な水平姿勢に調整される。
【0013】
プッシュボタン装置1は、プッシュボタン2を備え、これの近位端には、ユーザによるプッシュボタンの操作を可能とするためのプッシュボタンヘッド2bが設けられている。プッシュボタンヘッド2bは、時計ケースの内部と外部との接続を遠位端において確保している中心シャフト3と一体である。プッシュボタンヘッド2は、中心シャフト3の近位部を取り囲む滑らかな環状凹部2cを有する。
【0014】
プッシュボタン装置1は、時計ケースに組み付けられるための略円筒状の筒4をさらに備える。図示の例では、筒4は、その下部4aによって、時計のミドルケースの開口に圧嵌されるためのものである。筒4は、下部4aよりも大きい直径の上部4bを有する。筒4は、その上部の下側領域に環状溝5を有し、その溝の中に、この筒をミドルケースに対してシールするOリングジョイント6を収容している。
【0015】
本発明の実施形態によれば、筒4は、ミドルケースから突き出た上部で終端しているか、またはミドルケースに埋め込まれているか、いずれかとすることができる。
【0016】
筒4は、第1の収容部7aを規定する第1の内径を有し、さらに、第1の直径よりも小さい第2の内径によって延長されて、この第2の内径により、第2の収容部7bおよび内側ショルダ7cを規定している。プッシュボタンのレスト位置において、プッシュボタンヘッド2bは、収容部7a内に部分的に係合しており、ユーザの指でプッシュボタンが操作されると、さらにショルダ7cに当接するまで係合することができる。
【0017】
中心シャフト3は、筒4の内部で、その長手軸Aに沿ってスライド可能、かつ自由に回転可能に、筒4の内部に配置されている。
【0018】
また、プッシュボタン装置1は、戻しコイルバネ10をさらに備えることも示しており、これは、シャフト3の近位部を取り囲むとともに、凹部2c内および収容部7a内に部分的に収容されている。バネ10は、プッシュボタンヘッド2bに対するユーザの指による軸方向の押圧力に抵抗するためのものである。バネ10は、凹部2cの底と筒4の内側ショルダ7cとの間で圧縮されて設置されている。図示の例では、内側ショルダ7cは、中心シャフト3を取り囲むワッシャ12を受容する中央環状凹部11を有する。また、このワッシャ12は、ワッシャ14が間に介挿された一対のシールガスケット13の上にも掛かっている。
【0019】
図示の例では、中心シャフト3は、収容部7bから突き出たその遠位端に環状溝15を有し、この溝内に、筒4の遠位端に当接するまで動く弾性リング16が配設されている。このように、弾性リング16は、筒4内のプッシュボタン2のための止め部材を形成している。なお、注目されるのは、筒4の遠位端は、第2の直径よりも小さい第3の直径で終端しており、この第3の直径により、一方で中心シャフト3の遠位端のための通路を規定し、他方で第2の内側ショルダ4cを規定しているということである。
【0020】
プッシュボタン装置は、時計ケースに対するプッシュボタンヘッド2bの角度方位を調整するための装置をさらに備える。この調整装置は、中心シャフト3の周りに同心状に配置された摩擦リング17を含む。
【0021】
摩擦リングは、ワッシャ14と第2のショルダ4cとの間に配設されており、図示の例では、摩擦リング17は、より具体的には、下側環状ガスケット13とショルダ4cとの間に配置されている。なお、変形例において、摩擦リング17を上側環状ガスケット13とワッシャ14との間に配置することができることは明らかである。摩擦リング17は、筒4の収容部7bの内壁に対して締まり嵌めとなる直径の円筒外面17aを有し、従って、その壁に摩擦接触する。
【0022】
図3に示すように、開口17b内でシャフトの自由な並進を可能としつつ、シャフト3とリング17を回転一体とするために、摩擦リング17は、この場合は六角形である多角形の中央開口17bを有し、中心シャフト3は、開口17bに相補的な多角形断面を有する。
【0023】
なお、注目されるのは、中心シャフト3は、その遠位面3aに、工具の先端と協働するためのスロット18を有するということであり、これにより、リングによって生じる摩擦力に抗して中心シャフト3を回転操作することで、プッシュボタンヘッド2bの角度方位を調整する。このように、スロット18は、プッシュボタン2を回転操作する手段としてとして機能し、これにより、プッシュボタンを回転させることで、そのヘッド2bの角度方位を規定の角度位置に調整することが可能となる。これに関連して、注目されるのは、適切な摩擦トルクの調整のために、内壁の表面および/またはリングの円筒外面17aをテクスチャ加工することができるということである。
【0024】
なお、図示していない変形実施形態において、本発明の範囲から逸脱することなく、例えば、筒4から突き出た中心シャフト3の遠位部に螺着されて止め部材として機能するナットを、そのネジ端面にプッシュボタン操作手段として直接配設されるスロットと共に、設けることを想定することができる。この場合、収容部7bの内壁に対する摩擦リング17の摩擦嵌合は、筒4内で摩擦リングによって生じる摩擦トルクが、中心シャフト3上のナットのネジトルクよりも大きいように選択される。この変形例では、ナットは、二重の機能を有することになり、すなわち、プッシュボタンのための止め部材と、プッシュボタンを回転させて角度方位を設定するための操作手段と、その両方を形成している。
【0025】
プッシュボタン装置を組み付けるための、さらにプッシュボタンを方位設定するための方法は、以下の通りである。筒4の遠位端に当接する弾性リング16を有して、組み立てが完了したプッシュボタン装置1を、時計のミドルケースの開口内に圧嵌または螺嵌させる。圧嵌または螺嵌させることで、筒4をミドルケース内で不動としたら、ミドルケースの内側からスロット18に差し込んだ工具によって、中心シャフト3を回転操作することができ、プッシュボタンヘッドを回転駆動することができる。これにより、プッシュボタンヘッドは、次に、開口17bと中心シャフト3の断面との多角形連結によって、摩擦リング17を所望の角度方位に動かす。リング17は、この摩擦リング17の外面17aと筒4の下側収容部7bの内壁との間に生じる拘束摩擦トルクに抗して、筒4内で回転する。
【符号の説明】
【0026】
1 プッシュボタン装置
2 プッシュボタン
2a プッシュボタンヘッドの外面
2b プッシュボタンヘッド
2c 環状凹部
3 中心シャフト
3a (中心シャフトの)遠位面
4 筒
4a (筒の)下部
4b (筒の)上部
4c 第2の内側ショルダ
5 環状溝
6 Oリングジョイント
7a 第1の収容部
7b 第2の収容部
7c 内側ショルダ
10 戻しバネ
11 (内側ショルダの)中央環状凹部
12 ワッシャ
13 ガスケット
14 ワッシャ(リング)
15 環状溝
16 弾性リング
17 摩擦リング(角度方位調整装置)
17a (摩擦リングの)円筒外面
17b (摩擦リングの)開口
18 スロット(操作手段)
L 刻印
II 断面線
III 断面線
IV 断面線
図1
図2
図3
図4