【実施例】
【0033】
そこで、本発明の実施形態では、内燃機関の環境状態の変化等に対応して、内燃機関が停止されて再始動される時の推定排気管温度を正確に推定し、この推定された推定排気管温度を初期値として推定排気管温度を求め、これに基づいてセンサヒータの動作を制御する排気管温度推定装置及びこれを使用した排気センサのセンサヒータ制御装置を提案するものである。
【0034】
次に、本実施形態の詳細について
図6〜
図12を用いて説明する。本実施形態においては、制御装置ECUが、内燃機関の再始動時におけるセンサ素子40の表面領域40Sの凝縮水付着状態を、再始動時の推定排気管温度を元にして判断し、表面領域40Sに凝縮水が付着している可能性があるときは、再始動直後においてセンサヒータ47の温度(加熱量)を従来のように急速に上げないで比較的低い温度に抑えて、センサ素子40のセンサヒータ47近傍の内部領域40INと表面領域40Sとの温度差が所定値を越えないように、センサヒータ47の温度を低く抑えるウォームアップ制御を実行する。
【0035】
ウォームアップ制御は、センサ素子40の表面領域40Sの凝縮水がほぼ蒸発したと見做されるまで継続される。この凝縮水が蒸発するまでの期間は、再始動時の再始動時推定気管温度を出発点(初期値)として、内燃機関の運転によって上昇する推定排気管温度によって決まるものである。つまり、推定排気管温度によって凝縮水付着量が推定されているので、凝縮水付着がないと見做される推定排気管温度に達すると、センサ素子40の表面領域40Sの凝縮水がほぼ蒸発したと判断している。したがって、出発点となる再始動時の再始動時推定排気管温度の初期値(Tp*)を正確に推定することが重要である。
【0036】
そして、推定排気管温度が所定値に達して凝縮水がほぼ蒸発したと推定された時点より以降は、センサヒータ47への電力を増加させてセンサ素子40の温度を活性化温度(約600°C以上)まで上昇させるセンサ活性促進制御を実行する。
【0037】
更に、センサ素子40が活性化温度に達した以降は、温度フィードバック制御により最適温度(例えば750〜760°C程度)で動作するようにセンサ素子40の温度を維持する。尚、温度フィードバック制御には、センサ素子40の実際温度が必要であるが、センサ素子40の実際温度は、センサ素子40の温度が400°C〜500°Cに達すると、センサ素子40から得られる電流信号に基づいて求めることができる。
【0038】
内燃機関の再始動時におけるセンサ素子40の表面領域40Sの凝縮水付着量の推定は、再始動時における排気管27の推定排気管温度に応じて異なるので、本実施形態においては、内燃機関の環境状態の変化等に対応して再始動時の再始動時推定排気管温度を正確に推定するようにしている。この推定方法は以下で詳細に説明する。ここで、環境状態の変化の代表的な例としては、内燃機関が停止された時の排気管温度による時間的な温度特性、排気管の周囲空間の温度特性、排気管付近を流れる外気の特性(風速や大気温度)等の変化である。
【0039】
次に、推定排気管温度に基づいて凝縮水付着量(凝縮水量)を求める方法を説明する。
制御装置ECUは、凝縮水量推定機能部によって排気管27内で生じる凝縮水量Mconを推定している。以下、排気管27内で生じる凝縮水量Mconの推定方法について説明する。尚、以下に説明する吸入空気量、回転数、冷却水温度等々は内燃機関の動作状態量として良く知られてり、これ以外の情報も内燃機関の動作状態量として取り扱うことができる。
【0040】
今、内燃機関に供給される単位時間当りの吸入空気量Mair[g/s]と、単位時間当りの燃料噴射量Mfuel[g/s]とに基づいて、燃料と吸入空気の燃焼反応により発生する単位時間当りの水蒸気量Mwgs[g/s]を算出する。また、吸入空気量、内燃機関の回転速度等に基づいて推定排気ガス温度Tg(例えば、排気ポート近傍における排気ガス温度)を推定する。尚、排気ガス温度Tgを温度センサで検出するようにしても良い。更に、後述する方法で推定排気管温度Tp(例えば、排気センサ近傍における排気管温度)を推定する。
【0041】
そして、推定排気ガス温度Tgと推定排気管温度Tpとをパラメータとする、予め求めた凝縮割合Cの二次元マップを参照して、現在の推定排気ガス温度Tgと推定排気管温度Tpとに対応した凝縮割合Cを算出する。この凝縮割合Cは、燃料と吸入空気の燃焼反応により発生する水蒸気(排気ガス中の水蒸気)のうち、排気管27内で凝縮するであろう割合である。
【0042】
凝縮割合Cの二次元マップは、予め、実験データや設計データ等に基づいて求めた、推定排気ガス温度Tgと推定排気管温度Tpと凝縮割合Cとの関係を用いて作成され、制御装置ECUのROMに記憶されている。
【0043】
この後、以下の(1)式にある通り、水蒸気量Mwgsに凝縮割合Cと演算周期Δtとを乗算して、演算周期Δt当りの凝縮水増加量ΔMcon[g]を算出する。
ΔMcon=Mwgs×C×Δt ……(1)この後、以下の(2)式にある通り、前回の演算で求めた凝縮水量推定値Mconに今回の凝縮水増加量ΔMconを加算して、今回の凝縮水量推定値Mcon[g]を求める。
Mcon=Mcon+ΔMcon ……(2)このように、凝縮水量推定値Mconを正確に求めるには、排気管27の再始動時の推定排気管温度Tpの初期値を正確に求めることが必要である。
【0044】
この凝縮水量推定値Mconは、制御装置ECUのバックアップRAM(記憶手段)に記憶され、演算周期Δt毎に順次更新されていくものである。制御装置ECUのバックアップRAMの記憶データは、図示しないイグニッションスイッチがオフされた内燃機関が停止中も保持される。
【0045】
内燃機関の再始動時に凝縮水量Mconを推定する際には、前回の内燃機関の停止直前に記憶した凝縮水量推定値Mcon(つまり、内燃機関の停止中に排気管27内に残留する凝縮水量の推定値)を初期値とする。
【0046】
ところで、内燃機関が運転されている過程で、アクセル踏み込み等により吸入空気量が増加して、排気管27内を流れる排気ガス量が増加すると、排気管27内に蓄積された凝縮水が排気ガスの流動エネルギによって吹き飛ばされて排気管27の外へ排出される。
【0047】
そこで、本実施例では、吸入空気量Mairが所定値Mthを越えたときに、凝縮水量推定値Mconを「0」にリセットする。或は、吸入空気量Mairに応じて凝縮水量推定値Mconを減少させるようにしても良い。これにより、吸入空気量Mairが増加して排気管27内を流れる排気ガス量が増加したときに、排気管27内に蓄積された凝縮水が排気ガスによって吹き飛ばされて排気管27の外へ排出されるのに対応して、凝縮水量推定値Mconを「0」にリセット又は減少させることができる。
【0048】
次に、上述した凝縮水量推定値Mconを求めるための推定排気管温度Tpの推定方法について説明する。
【0049】
制御装置ECUは、内燃機関の運転中(内燃機関の始動からイグニッションスイッチのオフまでの期間)は、
図6に示す「排気温度推定機能部」に基づいて推定排気管温度Tpを推定している。
【0050】
図6に示すように、内燃機関の運転中に推定排気管温度Tpを推定する場合には、まず、排気ガスから排気管27へ伝達される受熱量を求めるための受熱側熱伝達係数Kinと、排気管27から外気へ放熱される放熱量を求めるための放熱側熱伝達係数Koutを算出する。
【0051】
受熱側熱伝達係数Kinを算出する際には、受熱側熱伝達係数算出部51で内燃機関の回転速度(排気流速の代用情報)と負荷(排気圧の代用情報)とをパラメータとする補正係数αのマップを参照して、現在の内燃機関の回転速度と負荷とに応じた補正係数αを算出する。この補正係数αは、受熱側熱伝達係数基本値Kin0を補正するための係数である。
【0052】
補正係数αのマップは、予め、実験データや設計データ等に基づいて求めた回転速度と負荷と排気管27の受熱量との関係を用いて作成され、制御装置ECUのROMに記憶されている。一般に、回転速度が高くなって排気流速が速くなるほど排気管27の受熱量が少なくなり、負荷が大きくなって排気圧が高くなるほど排気管27の受熱量が多くなる。
このため、補正係数αのマップは、回転速度が高くなるほど補正係数αが小さくなって受熱側熱伝達係数Kinが小さくなり、負荷が大きくなるほど補正係数αが大きくなって受熱側熱伝達係数Kinが大きくなるように設定されている。
【0053】
そして、補正係数αが求まると、次の(3)式で受熱側熱伝達係数基本値Kin0に補正係数αを乗算して受熱側熱伝達係数Kinを求める。
Kin=Kin0×α ……(3)これにより、内燃機関の回転速度(排気流速の代用情報)や負荷(排気圧の代用情報)に応じて受熱側熱伝達係数基本値Kin0を補正して受熱側熱伝達係数Kinを求めることができる。
【0054】
このようにして、受熱側熱伝達係数Kinを算出した後、受熱側温度差算出部53によって推定排気ガス温度Tgと推定排気管温度Tpとの差(Tg−Tp)を求め、受熱量算出部54で受熱側熱伝達係数Kinを乗算して排気管27の受熱量{Kin×(Tg−Tp)}を求める。ここで、排気ガス温度Tgと排気管温度Tpは所定の演算周期で推定して求められており、前回に推定された推定排気ガス温度Tgと推定排気管温度Tpを使用している。
【0055】
一方、放熱側熱伝達係数Koutを算出する際には、放熱側熱伝達係数算出部52でラジエターファン回転速度と車速とをパラメータとする補正係数βのマップを参照して、現在のラジエターファン回転速度と車速とに応じた補正係数βを算出する。この補正係数βは、放熱側熱伝達係数基本値Kout0を補正するための係数である。
【0056】
補正係数βのマップは、予め、実験データや設計データ等に基づいて求めたラジエターファン回転速度と車速と排気管27の放熱量との関係を用いて作成され、制御装置ECUのROMに記憶されている。一般に、ラジエターファン回転速度や車速が速くなるほど排気管27の放熱量が多くなるため、補正係数βのマップは、ラジエターファン回転速度や車速が速くなるほど補正係数βが大きくなって放熱側熱伝達係数Koutが大きくなるように設定されている。
【0057】
尚、大気圧(排気管27の外側の圧力)が高くなるほど排気管27の放熱量が多くなるため、大気圧が高くなるほど補正係数βが大きくなって放熱側熱伝達係数Koutが大きくなるようにしても良い。
【0058】
この後、補正係数βが求まると、次の(4)式で放熱側熱伝達係数基本値Kout0に補正係数βを乗算して放熱側熱伝達係数Koutを求める。
Kout=Kout0×β ……(4)これにより、ラジエターファン回転速度や車速に応じて放熱側熱伝達係数基本値Kout0を補正して放熱側熱伝達係数Koutを求めることができる。
【0059】
このようにして、放熱側熱伝達係数Koutを算出した後、放熱側温度差算出部55によって推定排気管温度Tpと外気温Taとの差(Tp−Ta)を求め、放熱量算出部56で放熱側熱伝達係数Koutを乗算して排気管27の放熱量{Kout×(Tp−Ta)}を求める。ここでも、推定排気管温度Tpは所定の演算周期で推定して求められており、前回に推定された排気管温度Tpを使用している。
【0060】
次に、「熱量差算出部」57で、排気管27の受熱量{Kin×(Tg−Tp)}と、排気管27の放熱量{Kout×(Tp−Ta)}との熱量差を求め、また、「熱容量算出部」58で排気管27の熱容量Cpを求め、「排気管温度変化量算出部」59で、演算周期Δtを用いて次の(5)式により演算周期Δt当りの排気管温度変化量ΔTpを算出する。
ΔTp={Kin×(Tg−Tp)−Kout×(Tp−Ta)}/Cp×Δt……(5)
この後、次の(6)式により前回の推定排気管温度推定値Tpに今回の排気管温度変化量ΔTpを加算して今回の推定排気管温度推定値Tpを求める。
Tp=Tp+ΔTp ……(6)この推定排気管温度推定値Tpは、制御装置ECUのバックアップRAMに記憶され、次の再始動時に用いられる。
【0061】
しかしながら、内燃機関の停止中においては、制御装置ECUが停止してしまうことから、上述したような熱収支の演算ができないものである。このため、内燃機関が停止された時から再始動される時までに実際の排気管温度は変化しており、内燃機関が再始動される時の初期値である再始動時推定排気管温度Tp*は不正確なものとなる。
【0062】
このため、従来では、内燃機関が停止している時の冷却水温度の変化量に基づいて、内燃機関が停止された時の推定排気温度を補正して次回の再始動時の推定排気管温度を推定し、推定排気管温度が所定値より高いと凝縮水が蒸発したとしてセンサヒータの動作を開始している。
【0063】
しかしながら、この方法は、停止中の内燃機関に関係する環境状態の変化等に対応しておらず、推定精度が低いものであった。そこで、本実施形態では、内燃機関が停止した後から再始動させるときに排気管27の内部温度を正確に推定する方法を提案するものである。
【0064】
本実施形態では、停止時の排気管温度と経過時間の変化に基づく第1補正情報と、内燃機関の停止時の内燃機関温度の変化に基づく第2補正情報と、停止から再始動に至る停止中の外気による冷却度の変化に基づく第3補正情報を求め、これらの補正情報の少なくとも1つ以上の補正情報を用いて、停止時の停止時推定排気管温度を補正して再始動時の再始動時推定排気管温度(初期値)Tp*を求めるようにしている。以下、第1補正情報〜第3補正情報について説明する。
【0065】
≪第1補正情報≫先ず、停止時の排気管温度と経過時間の変化に基づく第1補正情報について説明する。尚、本実施形態では、第1補正情報として補正係数を設定するようにしている。
【0066】
図7に示すように、内燃機関の停止時(ほぼ停止直後)の排気管温度によって経過時間に対する温度低下量が異なることが判明した。同じ時間間隔内の排気管温度200℃の場合の温度変化量に比べて、排気管温度400℃の場合の温度変化量は大きく、同様に排気管温度500℃の場合の温度変化量は更に大きく変化するようになる。したがって、内燃機関の停止から再始動までの時間を同じとすると、停止時の停止時推定排気管温度Tpendが高いほど温度の低下量が大きくなる。
【0067】
したがって、予め定めた停止時の推定排気管温度毎に第1補正情報を設定し、この停止時の停止時推定排気管温度Tpendに対応した第1補正情報から、再始動時の再始動時推定排気管温度Tp*を補正して求めてやることが必要である。
【0068】
このため、内燃機関の停止時の予め定めた推定排気管温度毎に停止後からの経過時間に対応して排気管温度低下係数Tx(「1.00」〜「0.00」)を設定し、内燃機関の停止時の停止時推定排気管温度Tpendに排気管温度低下係数Txを反映させることで、再始動時の再始動時推定排気管温度Tp*を補正することができる。排気管温度低下係数Txは、予め、実験データや設計データ等に基づいて求めた排気管温度と経過時間との関係を用いて作成された「排気管温度推定基準マップ」として、制御装置ECUのROMに記憶されている。
【0069】
ここで、排気管温度低下係数Txは、停止時から再始動時までの経過時間が長いほど内燃機関を再始動させたときに排気センサ28のセンサヒータ47の加熱動作を開始するための条件成立が比較的遅くなるように設定されている。つまり、経過時間が長いほど排気管温度低下係数Txは小さくなるものであり、再始動時の再始動時推定排気管温度Tp*が低くなるように設定されている。ここで、この排気管温度低下係数Txの有効桁数は任意である。
【0070】
尚、本実施形態では再始動時の基本推定排気管温度Tpbaseとして、停止時の停止時推定排気管温度Tpendに排気管温度低下係数Txを乗算することによって求められている。この基本推定排気管温度Tpbaseに以下に示す第2補正情報、第3補正情報が反映される。
【0071】
≪第2補正情報≫次に、内燃機関の停止時(ほぼ停止直後)の内燃機関温度の変化に基づく第2補正情報について説明する。尚、本実施形態では、第2補正情報として補正係数を設定するようにしている。
【0072】
内燃機関自身の温度変化として暖機が完了しているか、或いは暖機がまだ完了していないかによって、排気管温度の変化の推移が影響を受けることが判明した。例えば、内燃機関の停止時の冷却水温度が80度以上である状態を完全暖機状態とすれば、内燃機関の停止時の冷却水温度が80度以下である状態は不完全暖機状態となる。
図8の破線丸印Sに示すように、内燃機関の停止直後に不完全暖機状態であった場合には、完全暖機状態である場合に比べて、内燃機関の停止時の排気管温度Tpendが同じであっても、停止直後の所定時間内の排気管温度の低下量が著しく大きいことが判明した。
【0073】
そこで、本実施形態は、この内燃機関の停止後における内燃機関自身の温度状態を考慮したうえで、その後の内燃機関の再始動時の排気管温度Tp*を補正して推定するようにしたものである。尚、本実施形態では内燃機関の温度状態を表す指標として冷却水温度を利用している。
【0074】
このように、内燃機関自身の温度状態を考慮するのは、内燃機関の停止中の排気管温度の推移は、排気管27の周辺空間の温度に大きく影響されるからである。つまり、排気管27の周辺空間の温度は、自動車のエンジンルーム内の温度に代表され、そして、そのエンジンルーム内の温度に大きく影響する熱源は、内燃機関自身の温度である。
【0075】
したがって、内燃機関を停止した時(停止直後)においては、不完全暖機状態の場合は内燃機関自身の温度が低いので、排気管27の周辺空間の温度も低くなり、内燃機関の停止中の放熱量が多くなって排気管温度の低下が比較的早くなる。一方、完全暖機状態の場合は内燃機関自身の温度が高いので、排気管27の周辺空間の温度も高くなり、内燃機関の停止中の放熱量が少ないので排気管温度の低下が比較的遅くなる。
【0076】
このため、内燃機関の停止時の冷却水温度から完全暖機状態と不完全暖機状態を判断し、更に冷却水温度毎に対応して暖機放熱係数Ty(「1.00」〜「0.00」)を設定し、内燃機関の停止時の停止時推定排気管温度Tpendに暖機放熱係数Tyを反映させることで、再始動時の再始動時推定排気管温度Tp*を補正することができる。暖機放熱係数Tyは、予め、実験データや設計データ等に基づいて求めた冷却水温度との関係を用いて作成された「暖機放熱補正テーブル」として、制御装置ECUのROMに記憶されている。
【0077】
ここで、本実施形態では上述した、再始動時の基本推定排気管温度Tpbaseに暖機放熱係数Tyを乗算することによって基本推定排気管温度Tpbaseが補正されている。尚、暖機放熱係数Tyを経過時間に対応して変更するようにしても良いものである。この場合は、暖機放熱係数Tyは、予め、実験データや設計データ等に基づいて求めた冷却水温度と経過時間との関係を用いて作成されたマップとして、制御装置ECUのROMに記憶されれば良いものである。
【0078】
ここで、暖機放熱係数Tyは、冷却水温度が低いほど内燃機関を再始動させたときに排気センサ28のセンサヒータ47の加熱動作を開始するための条件成立が比較的遅くなるように設定されている。つまり、冷却水温度が低いほど暖機放熱係数Tyは小さくなるものであり、再始動時の再始動時推定排気管温度Tp*が低くなるようになっている。この暖機放熱係数Tyの有効桁数は任意である。
【0079】
尚、本実施例ではエンジンルーム内温度を内燃機関の冷却水温度で代用した例を示しているが、潤滑オイルのオイル温度を用いることもでき、更にはエンジンルーム内温度センサを備えている場合は、エンジンルーム内温度センサを使用して暖機放熱係数Tyを求めることができる。
【0080】
≪第3補正情報≫次に、停止から再始動に至る停止中の外気による冷却度の変化に基づく第3補正情報について説明する。尚、本実施形態では、第3補正情報として補正係数を設定するようにしている。
【0081】
内燃機関の停止中の排気管温度の推移は上述した変化因子の他に、外気の状態に影響されることも判明した。内燃機関の停止中に風が吹いている場合、風速が小さい場合に比べて風速が大きい場合は、排気管27から持ち去られる熱量が多くなり、
図9に示すように排気管温度が早く低下する。したがって、風速の大きさによって再始動時の排気管温度も変動することになる。このため、風速の大きさに対応して再始動時の再始動時推定排気温度Tp*も補正してやることが必要である。
【0082】
しかしながら、風速を測定することは困難であるので、停止時の冷却水温度と再始動時の冷却水温度の温度差が所定の設定時間内に、どれだけ変動したかを判断することによってどの程度の風速かを推定することができる。本実施形態では、内燃機関の停止時の冷却水温度と再始動時の冷却水温度を比較し、その温度差が設定時間内で発生した場合は、風による冷却効果が影響していると判断している。
【0083】
このため、内燃機関の温度変化量と停止時間によって設定される冷却係数Tzを設定し、内燃機関の停止時の停止時推定排気管温度Tpendに冷却係数Tz(「1.00」〜「0.00」)を反映させることで、再始動時の再始動時推定排気管温度Tp*を補正することができる。冷却係数Tzは、予め、実験データや設計データ等に基づいて求めた冷却水温度の変化量と経過時間の関係を用いて作成された「風による冷却補正マップ」として、制御装置ECUのROMに記憶されている。尚、外気の温度を反映させることも可能である。この場合は外気温度が低いほど冷却係数Tzの値を小さくすれば良いものである。
【0084】
ここで、冷却係数Tzは、所定の経過時間においての温度変化量が大きいほど内燃機関を再始動させたときに排気センサ28のセンサヒータ47の加熱動作を開始するための条件成立が比較的遅くなるように設定されている。つまり、ある経過時間において温度変化量が大きいほど冷却係数Tzは小さくなるものであり、再始動時の再始動時推定排気管温度Tp*が低くなるようになっている。本実施形態では、時間帯毎に複数の温度変化量を設定し、これに冷却係数Tzを割り付けている。時間帯は複数設定されており、経過時間に対応して時間帯が選択されるものである。この冷却係数Tzの有効桁数は任意である。
【0085】
そして、本実施形態では基本推定排気管温度Tpbaseに冷却係数Tzを乗算することによって再始動時の再始動時推定排気管温度Tp*が補正されている。
【0086】
以上のようにして求めた各補正情報は、
図10に示すようなロジックによって組み合されて再始動時の再始動時推定排気管温度Tp*が求められている。
図10において、内燃機関の停止状態から再始動する時に再始動時推定排気管温度Tp*を推定する場合には、上述した補正情報である、排気管温度低下係数Tx、暖機放熱係数Ty、及び冷却係数Tzを求める。
【0087】
排気管温度低下係数Txは、
図6によって求められた停止時の停止時推定排気管温度Tpendと停止後の経過時間によって、排気管温度推定基準マップ60から読み出され、次の(7)式のように停止時の停止時推定排気管温度Tpendに排気管温度低下係数Txが乗算されて、再始動時の基本推定排気管温度Tpbaseが求められている。
Tpbase=Tpend×Tx ……(7)
次に、暖機放熱係数Tyは、停止時(望ましくは停止直後)の冷却水温度によって、暖機放熱補正テーブル61から読み出される。同様に冷却係数Tzは、停止時の冷却水温度と再始動時の冷却水温度の温度差と経過時間によって、冷却補正マップ62から読み出される。
【0088】
そして、再始動時推定排気管温度算出部63で、次の(8)式のように再始動時の基本推定排気管温度Tpbaseに、暖機放熱係数Tyと冷却係数Tzが乗算されて、再始動時の再始動時推定排気管温度Tp*が求められる。
Tp*=Tpbase×Ty×Tz ……(8)
以上の演算によって、内燃機関の再始動時の再始動時推定排気管温度Tp*を正確に推定できるようになる。この再始動時の再始動時推定排気管温度Tp*は、これより以降の内燃機関の運転状態の進行に合わせて、
図6に示す推定方法により運転中の推定排気管温度Tpが演算されていくことになる。このように、再始動時の再始動時推定排気管温度Tp*が正確に推定されるので、凝縮水量の誤推定を回避して排気センサの加熱動作の開始時期が最適化されるようになる。
【0089】
次に、上述した再始動時の再始動時推定排気管温度Tp*を求める基本的な構成要件について説明する。
図11は基本的な機能ブロックを示している。
【0090】
図11において、参照番号70は、排気管内を流れる排気ガス温度を推定する排気ガス温度検出手段であり、これは上述したように、吸入空気量と回転速度等に基づいて排気ガス温度を求めるものである。尚、温度センサを用いて排気ガス温度を求めることも可能である。
【0091】
また参照番号71は、内燃機関が停止してからの経過時間を検出する時間検出手段であり、制御装置ECUが内蔵しているタイマー機能を用いて検出することができる。また参照番号72は、内燃機関自身の温度状態を検出する温度状態検出手段であり、冷却水の温度を検出する水温センサを利用することができる。
【0092】
参照番号73は、排気管温度推定/補正手段であり、排気ガス温度検出手段によって検出された排気ガス温度から排気管への熱伝達を計算して排気管温度を推定する機能を備えている。排気管温度推定/補正手段73には、時間検出手段71からの経過時間が入力され、排気管温度低下係数Txが求められる。尚、
図10では排気管温度推定/補正手段73によって再始動時の基本推定排気管温度Tpbaseが求められているが、
図11では以下に説明する再始動時排気管温度推定手段77で求めるようにしている。
【0093】
参照番号74は、暖機補正手段であり、内燃機関の停止時(望ましくは停止直後)に内燃機関の温度状態検出手段72によって検出された冷却水温度から内燃機関の暖機状態を判断して暖機放熱係数Tyをもとめる機能を備えている。
【0094】
また参照番号75、は温度差検出手段であり、温度状態検出手段72によって検出された、内燃機関の停止時の冷却水温度と再始動時の冷却水温度の温度差を検出するものである。これは風速の違いによる冷却係数Tzを求める1つのパラメータとなる。
【0095】
更に参照番号76は、冷却度検出手段であり、時間検出手段によって検出された経過時間と温度差算出手段によって検出された温度差から風による冷却効果を求めるもので、冷却係数Tzを求める機能を備えている。
【0096】
参照番号77は、再始動時排気管温度推定手段であり、この再始動時排気管温度推定手段77の上述した排気管温度低下係数Tx、暖機放熱係数Ty、及び冷却係数Tzが入力されている。再始動時排気管温度推定手段77は、Tp*=Tpend×Tx×Ty×Tzの演算を実行して、内燃機関の再始動時の再始動時推定排気管温度Tp*を推定するものである。
【0097】
参照番号78は排気管温度推定手段であり、再始動時の再始動時推定排気管温度Tp*が入力され、排気管温度再始動時推定排気管温度Tp*を初期値として
図6に示す排気温度推定制御機能部によって、現時点の推定排気管温度Tpを推定する。したがって、排気管温度推定手段78は、排気管温度推定/補正手段73の一部と同じ機能を有しているので、排気管温度推定手段78と排気管温度推定/補正手段73を共用することも可能である。
【0098】
参照番号79は、加熱制御手段であり、現時点の推定排気管温度Tpが加熱制御手段78に入力されている。この加熱制御手段79は、推定排気管温度Tp、または排気ガス温度Tgと推定排気管温度Tpの差に基づいて推定される凝縮水量が、所定値以下と判断された場合にセンサヒータの加熱動作を許可するように制御している。
【0099】
尚、本実施形態では加熱制御手段79で凝縮水推定を実施しているが、凝縮水推定を行わず、推定排気管温度Tpのみでセンサヒータの開始動作を制御することも可能である。
【0100】
このように、本実施形態では、内燃機関の停止時の排気管温度と経過時間の変化に基づく第1補正情報(Tx)と、停止時の内燃機関温度の変化に基づく第2補正情報(Ty)と、停止から再始動に至る停止中の外気による冷却度の変化に基づく第3補正情報(Tz)を求め、内燃機関の再始動時に、少なくとも1つ以上の補正情報を用いて停止時の停止時推定排気管温度を補正して再始動時の再始動時推定排気管温度Tp*を推定し、この再始動時推定排気管温度Tp*を初期値としてその後の内燃機関の運転中の推定排気管温度Tpを求め、更に推定排気管温度Tpが所定値以上になるとセンサヒータの加熱動作を開始するものである。これによって、排気センサのセンサ素子の破損を抑制しながら、適切に排気センサを加熱して排気センサの早期活性化を図ることができる。
【0101】
ここで、
図11に示す機能ブロックは、実際には制御装置ECUのマイクロコンピュータの制御プログラムで実行されているものであり、以下その制御フローについて
図12を用いて説明する。
【0102】
尚、
図12の制御フローは再始動時の再始動時推定排気管温度Tp*を求めるまでのフローを示しており、これ以降のセンサヒータの加熱開始動作は種々の方法を実施できるので省略している。例えば、加熱開始動作は、凝縮水推定や推定排気管温度Tpでセンサヒータの開始動作を制御することができる。
【0103】
図12の制御フローは所定時間毎に起動されるものであり、例えば、本実施形態では10ms毎に起動されている。この起動タイミングは内部タイマーによるコンペアマッチ割り込みを利用することができる。
【0104】
ステップS10においては、内燃機関が停止されたかどうかを判断している。停止されていなければ再びステップS10を繰り返すものである。一方、ステップS10で内燃機関が停止されたと判断すると、ステップS11に移行して停止時の情報を記憶する。この場合、少なくとも、停止時の停止時推定排気管温度Tpendと冷却水温度Twendが記憶される。これらの情報は制御装置ECUのRAM領域に記憶されるものである。また、この停止判断に同期して内部タイマーが停止からの経過時間の計測を開始している。この制御ステップが終了すると次のステップS12に移行する。
【0105】
ステップS12では内燃機関が再始動されたかどうかを判断している。再始動されていなければ再びステップS12を繰り返すものである。一方、ステップS12で内燃機関が再始動されたと判断すると、ステップS13に移行して再始動時の情報を記憶する。この場合、少なくとも、停止時から内部タイマーで計測している経過時間Timeと再始動時の冷却水温度Twstが記憶される。尚、この停止中の推定排気管温度Tpは内燃機関が停止されているため推定できず、更新、記憶されていないものである。この制御ステップが終了すると次のステップS14に移行する。
【0106】
ステップS14からステップS21までは、上述した第1補正情報である排気管温度低下係数Txを求める制御ステップである。ステップS14、S16、S18、S20は予め定めた所定の停止時間帯に対して経過時間Timeがどの停止時間帯にあるかどうかを判断している。
【0107】
ステップS14では経過時間Timeが[0〜a]の時間帯にあるか判断し、ステップS16では経過時間Timeが[a〜b]の時間帯にあるか判断し、ステップS18では経過時間Timeが[b〜c]の時間帯にあるか判断し、ステップS20では経過時間Timeが[c〜]の時間帯にあるか判断している。ここで、停止時間帯は、[0〜a]<[a〜b]<[b〜c]<[c〜]の関係を有している。
【0108】
そして、経過時間Timeが[0〜a]の時間帯にあればステップS15で排気管温度低下係数TxをAに設定し、経過時間Timeが[a〜b]の時間帯にあればステップS17で排気管温度低下係数TxをBに設定し、経過時間Timeが[b〜c]の時間帯にあればステップS19で排気管温度低下係数TxをCに設定し、経過時間Timeが[c〜]の時間帯にあればステップS21で排気管温度低下係数TxをDに設定する。
【0109】
ここで、排気管温度低下係数Txは、A>B>C>Dの関係を有しており、停止時間が短いほど「1.00」に近い値に設定されている。したがって、停止時間が短いほど再始動時の再始動時推定排気管温度Tp*は停止時の停止時推定排気管温度Tpendに近い値となる。排気管温度低下係数Txを求める制御ステップが終了するとステップS22に移行する。
【0110】
ステップS22からステップS28までは、上述した第2補正情報である暖機放熱係数Tyを求める制御ステップである。ステップS22、S24、S26、S28は停止直後の冷却水温度Twendによってどの程度の暖機状態かを判断している。つまり、予め定めた所定の温度帯に対して、停止時の冷却水温度Twendがどの温度帯にあるかどうかを判断している。
【0111】
ステップS22では冷却水温度Twendが[d〜]の温度帯にあるか判断し、ステップS24では冷却水温度Twendが[e〜d]の温度帯にあるか判断し、ステップS26では冷却水温度Twendが[f〜e]の温度帯にあるか判断し、ステップS28では冷却水温度Twendが[g〜f]の温度帯にあるか判断している。ここで、温度帯は、[d〜]>[e〜d]>[f〜e]>[g〜f]の関係を有している。
【0112】
そして、冷却水温度Twendが[d〜]の温度帯にあればステップS23で暖機放熱係数TyをEに設定し、冷却水温度Twendが[e〜d]の温度帯にあればステップS25で暖機放熱係数TyをFに設定し、冷却水温度Twendが[f〜e]の温度帯にあればステップS27で暖機放熱係数TyをGに設定し、冷却水温度Twendが[g〜f]の温度帯にあればステップS29で暖機放熱係数TyをHに設定する。
【0113】
ここで、暖機放熱係数Tyは、E>F>G>Hの関係を有しており、冷却水温度が高いほど「1.00」に近い値に設定されている。したがって、冷却水温度が高いほど再始動時の再始動時推定排気管温度Tp*は停止時の停止時推定排気管温度Tpendに近い値となる。暖機放熱係数Tyを求める制御ステップが終了するとステップS30に移行する。
【0114】
ステップS30からステップS36までは、上述した第3補正情報である冷却係数Tzを求める制御ステップである。ステップS30、S32、S34、S36は経過時間Timeが予め定めた所定の経過時間帯にあり、しかもこの経過時間帯に対して停止時の冷却水温度と再始動時の冷却水温度の温度差がどの温度差帯にあるかどうかを判断している。
つまり、経過時間帯と温度差帯の交点を判断しているものである。
【0115】
ステップS30では経過時間Timeが[0〜h]の経過時間帯にあり、しかも温度差が温度差帯[0〜k]にあると判断し、ステップS32では経過時間Timeが[h〜i]の経過時間帯にあり、しかも温度差が温度差帯[k〜l]にあると判断し、ステップS34では経過時間Timeが[i〜j]の経過時間帯にあり、しかも温度差が温度差帯[l〜m]にあると判断し、ステップS36では経過時間Timeが[j〜]の経過時間帯にあり、しかも温度差が温度差帯[m〜]にあると判断している。
【0116】
このように、ステップS30、S32、S34、S36は、経過時間Timeが存在する経過時間帯に変化した冷却水温度の温度差が、複数の温度差帯のどの温度帯にあるかどうかを判断している。ここで、経過時間帯は、[0〜h]<[h〜i]<[i〜j]<[j〜]の関係を有している。また、温度差帯は[0〜k]<[k〜l]<[l〜m]<[m〜]の関係を有している。したがって、例えば、経過時間帯[0〜h]に対して、温度差帯は[0〜k]、[k〜l]、[l〜m]、[m〜]だけ準備されており、これらの複数の温度帯から1つの温度帯が選択される。尚、他の経過時間帯も同様である。
【0117】
そして、ステップS30では経過時間Timeが[0〜h]の経過時間帯にあり、しかも温度差が温度差帯[0〜k]にあると判断されると、ステップS31で冷却係数TzをIに設定し、ステップS32では経過時間Timeが[h〜i]の経過時間帯にあり、しかも温度差が温度差帯[k〜l]にあると判断されると、ステップS33で冷却係数TzをJに設定し、ステップS34では経過時間Timeが[i〜j]の経過時間帯にあり、しかも温度差が温度差帯[l〜m]にあるかと判断されると、ステップS35で冷却係数TzをKに設定し、ステップS36では経過時間Timeが[j〜]の経過時間帯にあり、しかも温度差が温度差帯[m〜]にあると判断されると、ステップS37で冷却係数TzをLに設定する。
【0118】
ここで、冷却係数Tzは、I>J>K>Lの関係を有しており、経過時間が同じであれば、温度差が小さいほど「1.00」に近い値に設定されている。したがって、温度差が小さいほど再始動時の再始動時推定排気管温度Tp*は停止時の停止時推定排気管温度Tpendに近い値となる。冷却係数Tzを求める制御ステップが終了するとステップS38に移行する。
【0119】
ステップS38では、停止時に求めた停止時推定排気管温度Tpendに排気管温度低下係数Tx、暖機放熱係数Ty、及び冷却係数Tzを反映させるべく、Tp*=Tpend×Tx×Ty×Tzの演算を実行して、内燃機関の再始動時の再始動時推定排気管温度Tp*を推定するものである。
【0120】
このように、本実施形態では、停止時の排気管温度と経過時間の変化に基づく第1補正情報と、内燃機関の停止時の内燃機関温度の変化に基づく第2補正情報と、停止から再始動に至る停止中の外気による冷却度の変化に基づく第3補正情報を求め、内燃機関の再始動時に、少なくとも1つ以上の補正情報を用いて停止時の停止時推定排気管温度を補正して再始動時の再始動時推定排気管温度を推定し、この再始動時推定排気管温度を初期値として、その後の内燃機関の運転中の推定排気管温度を求め、更に推定排気管温度が所定値以上になるとセンサヒータの加熱動作を開始するものである。これによって、排気センサのセンサ素子の破損を抑制しながら、適切に排気センサを加熱して排気センサの早期活性化を図ることができる。
【0121】
上述した説明は、排気センサのセンサ素子破損防止及び、排気ガス有害成分の排出量を低減するものとして説明した。ところで、上述の排気管温度の推定は、排気ガス浄化触媒の活性判断のための触媒温度推定制御にも適用できるものである。
【0122】
排気ガス浄化触媒の活性前は排気ガスの浄化ができず排気ガス有害成分の排出量が増加する。このため、内燃機関の始動直後は点火時期を遅角させ吸入空気量を増加させることでサーマルリアクタ効果が発生し、排気ガス浄化触媒を早期活性させることは良く知られた技術である。
【0123】
しかしながら、点火時期の遅角や吸入空気量の増加は、内燃機関の燃焼悪化やガス有害成分の排出量が増加するため、排気ガス浄化触媒の活性タイミングを正確に見極め、触媒活性後は直ちに通常の点火時期及び吸入空気量に戻すことが要請されている。
【0124】
そこで、様々な方法で触媒温度推定や触媒活性判定を行っている。アイドルストップ制御のように内燃機関を短時間だけ停止し、その後再始動する場合は、排気管や触媒の余熱が残り、冷態始動よりも短い時間で触媒を活性化することができる。しかしながら、この場合、余熱を正確に推定できず、内燃機関を短時間だけ停止した後の再始動後は、必要以上に点火時期遅角や吸入空気量増加を行い、排気ガスガス有害成分の排出量が増加している。
【0125】
そこで、上述した本発明の実施形態によれば、内燃機関の停止中の排気管温度を精度よく推定することができるので、これを基に触媒温度の低下を予測することができる。したがって、再始動後の触媒活性タイミングを正確に把握し、点火時期遅角及び吸入空気量増加を最小限に抑えて排気ガス有害成分の排出量を抑えることができるようになる。
【0126】
以上の通り本発明によれば、停止時の排気管温度と経過時間の変化に基づく第1補正情報と、内燃機関の停止時の内燃機関温度の変化に基づく第2補正情報と、停止から再始動に至る停止中の外気による冷却度の変化に基づく第3補正情報を求め、内燃機関の再始動時に、少なくとも1つ以上の補正情報を用いて停止時の停止時推定排気管温度を補正して再始動時の再始動時推定排気管温度を推定し、この再始動時推定排気管温度を初期値として、その後の内燃機関の運転中の推定排気管温度を求め、更に推定排気管温度が所定値以上になるとセンサヒータの加熱動作を開始する構成とした。
【0127】
これによれば、再始動時推定排気管温度が正確に推定できるので、排気センサのセンサ素子の破損を抑制しながら、適切に排気センサを加熱して排気センサの早期活性化を図ることができる。この結果、空燃比フィードバックの開始を早めることができ、排気ガス有害成分の低減を促進することができるようになる。
【0128】
尚、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。