(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記情報収集部は、前記製造プロセスに基づく製造過程において検出される時系列のセンサ値群を、前記データモデルに格納される前記製造実績データと関連付けて前記記憶部に記憶することを特徴とする請求項2に記載の情報管理システム。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、実施形態につき、図面を参照して説明する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る情報管理システムの概念図である。本実施形態の情報管理システムは、製品の企画、設計、生産(製造)、運転、利用、保守の製品ライフサイクル全体を統合し、製造現場から製造オーダーの製造マネジメントをリアルタイムで統合する。つまり、製品ライフサイクルを横軸とし、製造マネジメントを縦軸として製造現場を中心に交差する「ものづくり」情報プラットフォームを実現する。
【0009】
「ものづくり」情報プラットフォームを実現するにあたり、本実施形態の情報管理システムは、製品ライフサイクル全体を、製造計画エリア、製造実績エリア、及びフィールド・製品利用エリア(製品の利用状態(使われ方)を示す情報やその環境情報等を含む)の3つに区分けし、各エリアでデータソースから各種情報を収集する(情報蓄積)。
【0010】
なお、製造計画エリアは、データ種別としては、「ビジネスデータ」である。「ビジネスデータ」とは、製品の製造を行う前の製造計画や製造パラメータ等の計画・基準情報である。また、製造実績エリアとフィールド・製品利用エリアは、データ種別として「ファクトデータ」である。「ファクトデータ」は、製造プロセスの事実・実績情報やフィールド・製品利用プロセスの事実・実績情報である。なお、フィールド・製品利用プロセスとは、製造販売された製品の運用保守サービス(フィールドサービス)と、製品の利用状態や製品が利用される環境情報などを収集して監視する監視サービスと、を含む。
【0011】
図2は、本実施形態に係る情報管理システムのシステム概要図である。
図2に示すように、本実施形態の情報管理システムは、製造計画エリア、製造実績エリア、及びフィールド・製品利用エリアの3つのエリア毎に、各データソースから収集される各種情報の蓄積場所として、複数のデータモデルを設定する。データモデルとは、情報の蓄積領域である。
【0012】
製造計画エリアでは、例えば、設計P/N、設計BOM、生産計画、生産ライン/ピット、生産工場、装置/機器、製造BOM、製造P/Nなどの各種モデルが設定される。ここで、説明の簡略化のために、製造計画エリアでは、製造計画モデルが設定されていることを一例に説明する。
【0013】
また、製造実績エリアでは、例えば、製造・稼働モデル、製造レシピモデル、製造品質検査モデル、設備管理モデル、調達実績モデルが設定されている。また、製造実績エリアでは、製造現場の設備機器やセンサ機器のセンサ値を蓄積するセンサ値管理領域も確保されている。製造実績エリア内のデータモデルは、製造計画に基づいて関連付けされている。フィールド・製品利用エリアでは、例えば、製造販売された製品の運用保守や製品の利用状態や製品が利用される環境情報などの製品利用状態に対応して、保守管理モデルと製品利用モデルとが設定されている。このようにデータの性質に応じて複数のモデルが構築される。
【0014】
そして、各エリアにおいてデータソースから収集される各種情報の中から各データモデルに該当する情報を抽出し、蓄積する。ここで、データモデルに該当する情報を抽出する際、本実施形態では、製品ライフサイクル全体で複数のデータソースから収集される情報を「主体物(Who)」、「対象物(Whome)」、「事象(What)」、「時間(When)」、「場所(Where)」、「状況(How)」(5W1H)から構成されるデータ構造定義を用いて抽出(選別)し、各データモデルに構造化して蓄積する。尚、本実施形態では、製品や設備に不具合が生じた場合の情報を蓄積する「原因(Why)」もデータ構造定義に含む構成(6W1H)として説明する。
【0015】
例えば、
図3は、データソースから収集された事実・実績データを、データ構造定義に関連付けをして整理し、製造・稼働モデルとして蓄積した例を示している。データ構造定義は、データソースの主体を「主体物」として、「主体物」がどの対象物に対して何をしたのか(「事象」)を整理し、蓄積するためのテンプレートである。情報管理システムは、例えば、MES(Manufacturing Execution System)介してデータソースである設備1から情報を収集する。設備1は、製造計画に基づく製造プロセスで稼働しており、稼働実績がリアルタイムで情報管理システムに収集される。このとき、設備2における製造プロセスで行われた事実とそのときの状態、状況が、データ構造定義テンプレートを使用して整理され、
図3に示すように、設備2が(主体物)、ある製造品番の製品を対象に(対象物)、PC全体組立(事象)を行った実績が生成される。
【0016】
そして、データ構造定義に基づいて生成される実績レコードは、時系列にデータモデルに蓄積される。すなわち、本実施形態では、製造プロセスの実績情報を、データ構造定義を用いて整理された実績レコード(6W1H)の時間変動として記録する。このような構造化により、各データモデルにおいて、事実とそのときの状態、状況を写像的に(例えば、製品の製造状況をあるがままに写して描き出すように)把握することが可能となる。フィールド・製品利用プロセスにおいても同様に、データ構造定義テンプレートを使用して整理され、例えば、製品Aにおけるフィールド・製品利用プロセスで行われた事実とそのときの状態、状況が蓄積される。製造プロセスの各実績情報、フィールド・製品利用プロセスの各実績情報は、実績値(データ)に限らず、画像や動画でもよいが、本実施形態では、実績情報が実績値(データ)である場合を一例に説明する。
【0017】
なお、データ構造定義として、6W1Hの項目を規定しているが、生成される実績レコードが、これらすべての項目を含まなくてもよい。例えば、
図3の製造・稼働モデルでは、「原因(Why)」、「状況(How)」項目自体を含まない実績レコードとして生成することができる。また、すべての項目を含むように実績レコードを生成しておき、データソースから収集された情報をその都度該当する項目に埋めていき、ブランクの項目を含む実績レコードを生成するように構成してもよい。
【0018】
本実施形態の情報管理システムは、ものづくり情報プラットフォームに情報の蓄積場所であるデータモデルを用意し、製造の事実とそのときの状態、状況を現時点から過去にさかのぼって写像的に生成するためのデータ構造定義に基づいて、データソースから収集される情報を整理し、各データモデルに蓄積する。
【0019】
このため、複数のデータソースから収集される情報を無条件に蓄積して、後から検索して意味のあるレコードに編集するのではなく、初めから情報の蓄積と同時に「事実とそのときの状態、状況」を把握することができる。
【0020】
さらに、各データモデルの実績レコードは、製品(構成品)を一意に識別するための固体識別情報と時間情報を少なくとも含んでおり、固体識別情報及び時間情報をキーに複数のデータモデル間が紐付いているので、例えば、製造ライフサイクル全体、すなわち、異なる製品でも同じ製造プロセスを経たり、異なる製品でも同じ構成品を含む製品を、トレース(追跡)することができる。この点において、従来は、データソースから収集される情報を、1つの製品に紐付けて、製造プロセスやイベント毎に1つの製品に付加情報として連結(リンク)させているに過ぎなかった。このため、従来は、その製品に対する事実とそのときの状態、状況を写像的に把握することできず、例えば、異なる製品間をトレースすることが難しかった。本実施形態では、製造プロセスの「状態、状況」の視点を用いて、製造現場の写像的な観点から製造ライフサイクル全体を把握・分析することができる。
【0021】
図4は、第1実施形態に係る情報管理システムのネットワーク構成及び機能ブロックを示す図である。
【0022】
本実施形態の情報管理装置100は、製品(製品を構成する部品を含む)の製造設備機器及び製造現場のセンサ機器とネットワークを介して接続されている。なお、製造設備機器は、製造プロセスで必要な情報を収集するための各種のセンサ機器を備えている。これらの機器は、
図1のデータソースに該当する。また、情報管理装置100は、所定のフィールドサービスシステムや監視システムとネットワークを介して接続される。製造現場や製品の運用・運転場所は、国内限らず海外を含む国内外であってもよい。
【0023】
情報管理装置100は、通信装置110、制御装置120及び記憶装置130を含んで構成されている。情報管理装置100は、1つ又は複数のコンピュータ装置で構成することができ、分散型のシステム構成であってもよい。記憶装置130には、上述したデータモデルを蓄積する場所(記憶領域)として、製造・稼働モデルDB131、製造シリアルBOMのDB132、製造レシピモデルDB133、製造品質検査モデル134、調達実績モデルDB135、設備管理モデルDB136、保守管理モデルDB137、製品利用モデル138、及びセンサ値DB139が設けられている。なお、各データモデルは、製造計画やフィールド・製品利用プロセス(フィールドサービスや監視システムから取得される製品の使われ方)に応じて動的に生成してもよく、また、予め生成しておいてもよい。
【0024】
制御装置120は、情報管理システム全体の制御を司り、製造管理部121、情報収集部122、分析制御部123及びトレーサビリティ制御部124を含んで構成されている。
【0025】
製品は、
図1に示すように、製品の企画及び設計を経て、製造計画が立案される。製造計画では、主に、製品を製造する各製造プロセス、製品を構成する構成品、各製造プロセスで使用する設備機器、設備機器での製造パラメータ(製造レシピ)が決定される。
【0026】
製造管理部121は、製品の企画及び設計、製造計画の各情報を管理すると共に、製造現場が保有している製造設備(製造ライン)などの資源情報を管理している。製造現場の各資源は、場所及び設備(又は製造ライン)毎に割り当てられる設備シリアルIDを含むマスタ情報を用いて管理することができる。
【0027】
製造計画は、製品が作られるまでの仕様書であり、製造計画に対して製造設備などの資源情報を割り当てることで、「どこのどの設備で」、「何を対象に」、「どのように何をするのか」を決定することができる。そして、受注オーダーに基づいて、「いつから」各製造プロセスを開始するのかが最適化されて、製造現場での製造プロセスが開始される。
【0028】
図5は、PC全体の組立工程に関する製造計画及び製造シリアルBOMの一例を示している。
図5の例において、ノートPCの組立工程は、主に、本体組立工程とディスプレイ組立工程とを含み、本体組立工程は、さらに基板組立工程を含んでいる。各工程には、構成品(部品)が階層構造で紐付けられている。
【0029】
このような製造計画に対して、実際の製造実績や設備機器の稼働実績が蓄積される。
図6は、製造実績モデルに蓄積される実績レコードの一例を示す図である。
図6の上段は、製造・稼働実績データの一例を示している。
【0030】
ここで、計画と実績との関係について説明する。製造・稼働実績データにおいて、設備機器から収集及び蓄積される情報は、「対象物」及び「時間」であり、それ以外の「主体物」、「事象」、「場所」は、製造計画において予め生成された情報である。つまり、設備1における製造プロセスとして、設備1(主体物)がマザーボードの基板組立(事象)を、第1ラインの第3ステーション(場所)で「2016年9月2日10:30」(時間)に開始する製造・稼働に関する製造計画が予め生成され、この計画に対して実績値である「対象物」及び「時間」が、実績レコードとして蓄積されることになる。また、設備2における製造プロセスとして、設備2(主体物)がノードPCの全体組立(事象)を、第1ラインの第1ステーション(場所)で「2016年9月2日12:30」(時間)に開始する製造・稼働に関する製造計画が予め生成される。
【0031】
すなわち、製造品番(A―001)、シリアルID(12345)のノートPCの製造に関して、
図6の製造・稼働実績データに示す「対象物」が、設備1によって(主体物)、計画通りに2016年9月2日10:30に構成品品番(D−001)、シリアルID(31235)のマザーボードを製造し、構成品品番(E―001)、シリアルID(41234)のCPU実装と、構成品品番(F−001)、シリアルID(41235)のメモリ実装と、が完了した情報が保存される。さらに、設備2によって(主体物)、計画通りに2016年9月2日12:30に製造品番(A―001)、シリアルID(12345)のノートPCを製造し、構成品品番(B−001)、シリアルID(21234)の本体ケースと、構成品品番(I−001)、シリアルID(21235)のディスプレイとの組立が完了した情報が保存される。このように、製造計画の際に立案された情報を活用して、「6W1H」に基づくデータ構造定義によるデータ整理及び蓄積を行うことができる。なお、上述のように、製造プロセスの実績情報を、データ構造定義を用いて整理された実績レコード(6W1H)の時間変動として記録できればよく、データ整理及び蓄積の手法は任意である。
【0032】
実績値である「対象物」には、製造品番とシリアルID(固体識別情報)とを含む識別情報が蓄積される。製造品番とは、
図5の例で説明すると、「ノートPC」であり、デスクトップPCであれば、他の製造品番が割り当てられる。シリアルIDは、複数のノートPCを固有に識別するための固体識別情報であり、ノートPC毎に異なる番号が割り当てられる。同様に、構成品品番は、構成品に共通の品番であり、構成品のシリアルIDは、構成品毎に異なる固有のIDである。
【0033】
製造品番とシリアルID(固体識別情報)とをセットにすることで、製品及び各構成品を一意に特定することができる。また、シリアルIDは、実績値として各実績データに蓄積されるときに読み取られたり、付与されたりするものである。例えば、CPUをマザーボードに実装する際に、CPU毎に予め割り当てられた固有のシリアルIDを設備1がバーコードで読み取り、読み取ったシリアルIDを製造品番と関連付けて実績データに蓄積することができる。
【0034】
製造・稼働実績データの対象物それぞれの詳細な実績は、
図6に示す製造レシピ実績データに格納されている。製造レシピ実績データにおいて、設備機器から収集及び蓄積される情報は、「対象物」、「時間」、及び「状況(製造パラメータ)」の実測値であり、それ以外の「主体物」、「事象」、「場所」は、予め生成された製造計画に準じている。つまり、製造計画として、設備1は、基板組立ラインであり、「マザーボードへのCPU実装」、「マザーボードへのメモリ実装」の各製造プロセスを、第3ステーションで所定の時刻に開始し、各実装や組み付けに必要な手法でそれぞれ行うことが規定されている。この製造計画に対して実績値である「対象物」、「時間」、「状況」がデータ構造定義に従って整理・蓄積されることで、製造レシピ実績データとなる。
【0035】
具体的には、
図6の製造レシピ実績データに示すように、製造・稼働実績データの対象物である構成品品番(E−001)、シリアルID(41234)のCPUは、2016年9月2日10:30(時間)に流量△△で半田が塗布されてマザーボードに半田付けされて(状況)、構成品品番(D−001)、シリアルID(31235)のマザーボードに対して実装された実績が格納される。
【0036】
製造レシピ実績データにおいて、「状況」には、リアルタイムに検出されるセンサ値が蓄積される。センサ値は、設備1に設けられたセンサ機器から出力されるセンサ情報や設備1とは個別に設けられた設備1の状況を把握するためのセンサ機器から出力されるセンサ情報である。
【0037】
センサ情報は、所定の時間間隔で時系列に検出されたセンサ値群を含んで構成される。製造レシピ実績データの「状況」には、時系列に連続したセンサ値群の平均値や中央値、又は所定のタイミングで検出された代表値などが用いられ、
図7に示すように、センサ値群の各データは、「CPU実装」、「メモリ実装」の各製造プロセスと対応付けてセンサ値DB139に記憶されている。なお、センサ値DB139に蓄積されるセンサ情報は、各製造プロセスで設備機器から出力されるセンサ値や製造や検査で必要なセンサ値を含んでおり、時系列の要素を含んでいる。
【0038】
図6に戻り、このような製造・稼働実績データの蓄積により、
図3に示した製造計画に対して製品毎の製造シリアルBOM(Bill of materials)が生成される。製造シリアルBOMは、製品毎に構成品の詳細なシリアルIDが階層構造で一意に関連付けられており、製造シリアルBOMで製品を構成する複数の構成品の家系図が把握できる。
【0039】
また、製造・稼働実績データは、検査設備1による検査プロセスも含んでいる。すなわち、
図6の製造・稼働実績データの対象物である製造品番(D―001)、シリアルID(31235)のマザーボードのCPU及びメモリの実装検査である検査設備1における検査プロセスとして、検査設備1がCPU及びメモリ実装検査を、第1ラインの検査ステーションで「2016年9月2日11:00」に開始する製造・稼働に関する製造計画が予め生成され、この計画に対して実績値である「対象物」及び「時間」と、検査結果である「状況」が蓄積されることで、製造・稼働実績データとなる。
【0040】
製造品質検査データにおいて、設備機器から収集及び蓄積される情報は、「対象物」、「時間」、「状況(検査結果)」の実績値であり、それ以外の「主体物」、「事象」、「場所」は、予め生成された製造計画に準じている。つまり、検査設備1は、検査ラインであり、「CPU実装検査」、「メモリ実装検査」の各検査プロセスを、検査ステーションで所定の時刻に開始することが規定されている。この計画に対して実績値である「対象物」、「時間」、「状況」が蓄積されることで、製造品質検査データとなる。
【0041】
具体的には、
図6の製造品質検査データに示すように、製造・稼働実績データの対象物である製造品番(D−001)、シリアルID(31235)に対して実装される構成品品番(E−001)、シリアルID(41234)のCPUのマザーボードへの実装検査が2016年9月2日11:00に実施され、その結果、実装確認に問題無しの実績(状況)に格納される。同様にメモリ取り付けについても実績が格納される。
【0042】
また、本実施形態では、製造プロセスで使用される製品の構成品の購入品実績データとして、
図6に示すように調達実績データが格納される。このような調達実績をデータモデルとして蓄積しておくことで、製品を構成する各構成品の製造履歴を把握することができる。
図6の例では、製造・稼働実績データの対象物である構成品品番(D−001)、シリアルID(31235〜)のマザーボードを(対象物)、2016年8月25日10:00に、調達担当者A(担当者シリアルID5555)が、A社から購入した実績が格納される。ここで、A社から購入した構成品が、A社のB工場で製造されたものであることも格納することができる。メモリの調達実績データについても同様である。
【0043】
図8は、設備管理実績データの一例を示す図であり、設備管理実績データは、設備アラート履歴と設備メンテナンス履歴とを含んで構成されている。設備アラート履歴は、どの設備機器が、いつ異常が発生し、その異常はなんなのか、異常が発生した結果としてどのような措置が取られたかを規定している。設備メンテナンス履歴は、どの作業者が、どの設備機器に対して、どのようなメンテナンス(部品交換や修理など)をいつ行ったのか、そのメンテナンスで交換した部品の履歴(シリアルID)を規定したものである。これらも「6W1H」に基づくデータ構造定義を用いて整理され、実績レコードとして蓄積される。
【0044】
図9は、保守管理実績データ及び製品利用実績データの一例を示す図である。
【0045】
図9に示すように、保守管理実績データは、運転状況履歴とメンテナンス履歴とを含んで構成されている。
図1に示すフィールド・製品利用エリアに属しており、製品出荷後の利用者側の製品保守管理で使用されるデータモデルである。
【0046】
運転状況履歴は、製品のモニタリング情報であり、例えば、CPU温度センサが、製品のCPU温度をいつから監視し、その時の温度はいくつであったかを示すモニタリング結果である。また、CPU温度センサが出力する時系列に連続したセンサ値群は、別途収集されており、例えば、フィールドサービスシステム側の記憶領域に記憶することができる。この場合、運転状況履歴は、フィールドサービスシステムと連携し、センサ値群の情報が紐付くように管理される。また、所定のタイミングでフィールドサービスシステムから情報管理装置100に、センサ値群のデータを送信するように構成したり、情報管理装置100からフィールドサービスシステムに接続して参照できるように構成したりしてもよい。
【0047】
メンテナンス履歴は、利用者の製品のメンテナンス履歴である。
図8の設備メンテナンス履歴と同様に、どの作業者が、どの製品に対して、どのようなメンテナンス(部品交換や修理など)をいつ行ったのか、そのメンテナンスで交換した部品の履歴(シリアルID)を規定したものである。また、なぜメンテナンスを行ったのか、すなわち、故障原因も蓄積されるように構成されている。これらの保守管理実績データも「6W1H」に基づくデータ構造定義を用いて整理され、実績レコードとして蓄積される。
【0048】
製品利用実績データは、イベント・アラート履歴を含んで構成されている。
図1に示すフィールド・製品利用エリアに属しており、製品の利用状態や製品が利用される環境情報などの製品利用状態の管理に使用されるデータモデルである。
【0049】
イベント・アラート履歴は、製品の利用状態のモニタリング情報であり、例えば、製品の動作イベントやサービス機能の状態遷移(イベントログ、サービスログ)と、製品の稼働状況に対するアラート履歴(温度超過などのセンサ値)とを含む監視結果である。このような監視結果は、製品とネットワークを介して接続される監視システムが収集して管理することができる。
図9の例において、「主体物」である製造品番「A−001」でシリアルIDが「12345」の製品が、バッテリモードに移行⇒HDD冷却ファン作動⇒スリープモードへ移行⇒ノーマルモードへ移行⇒HDD冷却ファン作動⇒HDD冷却ファン停止の各状態(事象)に時系列に遷移した監視結果を示している。このとき、監視対象である製品の環境情報(温度、湿度などのセンサ検出値)も、時系列に連続したセンサ値群として収集することができる。
【0050】
なお、メンテナンス履歴、イベント・アラート履歴の各情報(データ)は、フィールドサービスや監視システムで管理される各システムから情報管理装置100に送信される場合のみならず、メンテナンス対象、監視対象の製品から直接ネットワークを介して情報管理装置100に送信されてもよい。
【0051】
図10は、本実施形態の情報管理システムの製造計画から製品の製造管理、及び出荷後の市場での製品のフィールド・製品利用の管理までの情報管理フローを示す図である。
【0052】
情報管理装置100は、
図5に示すような製品の製造計画が入力され(S1)、製造・稼働モデル、製造レシピモデル、製造品質検査モデル、設備管理モデル、調達実績モデルの各データモデルを生成する(S2)。そして、製造開始に伴い、データモデル毎に製造計画に基づく各実績及びセンサ値を蓄積する(S4〜S8)。このとき、設備機器及びセンサ機器からの情報収集は、情報収集部122が行い、製造管理部121が収集された情報を、「6W1H」に基づくデータ構造定義を用いて整理し、事実とそのときの状態、状況を示す実績レコードの時間変動を記録する。同様に、設備管理モデルにも、設備機器やセンサ機器に対する事実とそのときの状態、状況を示す実績レコードの時間変動が記録される(S9)。また、ステップS3において、製造開始前に、製品の構成品の調達実績が入力され調達実績モデルに蓄積される。各データモデルへの情報蓄積は、必要に応じて手入力であってもよい。
【0053】
製造・稼働実績データは、1つの製品が計画されて製造されるまでの全体プロセスが蓄積され、各製品及び製品を構成する構成品のシリアルIDが蓄積されている。製造管理部121は、1つの製品それぞれに対して
図5に示した製造計画に対応する製造シリアルBOMを生成し、記憶装置130に記憶する(S10)。例えば、製造・稼働実績データにおいて、ノートPCの製造シリアルIDをキーに各製造プロセスでの構成品のシリアルIDを抽出し、製造計画で階層化された構成品の紐付けに対応させて、抽出した各構成品のシリアルIDをノートPCの製造シリアルIDに紐付けて、製造シリアルBOMを生成することができる。
【0054】
また、
図1に示す製造プロセスを経て製造された製品の管理は、利用者側のフィールド・製品利用管理に移行する。保守管理モデル及び製品利用モデルでは、フィールドサービスシステムや監視システムで監視及び収集された各製品のモニタリング情報や稼働状況、アラート履歴、メンテナンス履歴、イベント・アラート履歴などを取得し、製造管理部121が、製品のフィールド・製造利用管理に対する事実とそのときの状態、状況を示す実績レコードの時間変動を記録する(S11,S12)。なお、製品の利用者側の保守管理モデル及び製品利用モデルは、ステップS2において、所定のフィールドサービスや監視システムに対する「使われ方」モデルとして、予め製造プロセスにおける各データモデルの生成処理と一緒に生成したり、製造プロセスとは別に、製品が販売された後の任意のタイミング(例えば、保守管理や製品利用状態の把握を開始するタイミング)で、生成したりすることができる。
【0055】
次に、本実施形態の情報管理システムのトレース機能について説明する。トレース機能は、トレーサビリティ制御部124によって遂行される。本実施形態では、分析制御部123によって、各種分析機能を提供することができる。例えば、ある条件を満たす製品群(母集団)を抽出したり、ある条件を満たす各製品を抽出したりするなどの機能を遂行することができる。ここでは、分析制御部123によって実現されるトレーサビリティ機能について説明する。
【0056】
図11は、本実施形態の「使われ方」に対する「作られ方」のトレース機能を説明するための図である。本実施形態では、各製造プロセスが、「事実とそのときの状態、状況」を示す実績レコードに整理されて、「作られ方」のデータモデルに蓄積されている。製造レシピ実績データを一例に説明すると、
図7の例において、設備1でCPUの実装の際に、流量△△の半田塗布が行われていることを把握できる。そして、実測値から得られる流量△△に関するセンサ値群は、センサ値DB139に記憶されている。一方で、「使われ方」のデータモデルとして、運転状況履歴及びメンテナンス履歴が保守管理データモデルに蓄積されている。
【0057】
「使われ方」の観点で、CPUに不具合が発生したと仮定する。このとき、製造シリアルID「12345」をキーに製造実績モデルを検索すれば(S21)、各製造プロセスでの「作られ方」を把握することができる。このとき、製造シリアルBOMを参照することで、同じ構成品品番のCPUを使用している同じ製品を検索することができるが、「事実とそのときの状態、状況」で同じような不具合が発生しそうな予備軍を抽出することはできない。つまり、
図11に示すように、従来は、製造シリアルID「F2345」のデスクトップPCでもCPUに不具合が発生していても、同じ製品を検索することができるが(S22)、製造シリアルID「12345」との関連性を把握することが難しい。
【0058】
そこで、トレーサビリティ制御部124は、同じ不具合が発生した製造シリアルID「12345」と製造シリアルID「F2345」の基板組立工程におけるCPU実装時の半田流量のセンサ値分布を参照し、両者が同じセンサ値分布であれば、同じ不具合に対して共通因子「CPU実装半田流量」を把握することができる。
【0059】
そして、不具合に対する共通因子「CPU実装半田流量」のセンサ値分布を用いて、他のタブレットPCの製造レシピ実績データを参照し、センサ値DB139の時系列に連続したセンサ値群とパターンマッチングを行い、同じ「作られ方」の製品の予備軍(不具合は発生していないものの、不具合が発生する可能性がある製品、製造シリアルID「G2345」)を抽出する(S23)。
【0060】
このように本実施形態のトレース機能は、各製造プロセスが、「事実とそのときの状態、状況」を示す実績レコードに整理されて、「作られ方」のデータモデルに蓄積されているので、「作られ方」の類似性に基づいて、異種の製品に跨って同じ「作られ方」の製品を不具合の予備軍として抽出することができる。
【0061】
図12は、本実施形態の「使われ方」と「作られ方」を組み合わせたトレース機能を説明するための図である。
図11の例では、「使われ方」の視点として、不具合の発生を事実としてトレースしたが、
図12の例では、「使われ方」の類似性と、「作られ方」の類似性とを用いて、不具合が発生していないものの、不具合が発生する可能性がある製品を抽出する態様を示している。
【0062】
図9に示すように、保守管理モデルには、製品の運転状況履歴が蓄積されているとともに、運転状況を監視するセンサ情報も時系列に蓄積されている。そこで、トレーサビリティ制御部124は、不具合が発生した製造シリアルID「12345」と製造シリアルID「S1234」の「使われ方」に関する情報の温度センサ値分布を参照し、両者が同じセンサ値分布であれば、同じ不具合に対して共通因子「温度変化が大きい」を把握することができる(S31)。このときも、不具合に対する共通因子「温度変化が大きい」のセンサ値分布を用いて、他のサーバの「使われ方」を参照し、紐付くセンサ値群とパターンマッチングを行い、製造シリアルID「S1234」の製品を特定することができる。
【0063】
さらに、不具合が発生した製造シリアルID「12345」の基板組立工程におけるCPU実装時の半田流量のセンサ値分布を参照し(S32)、製造シリアルID「S1234」のセンサ値群とパターンマッチングを行い(S33)、両者が同じセンサ値分布であれば、同じ不具合に対して共通因子「CPU実装半田流量」を把握することができる。
【0064】
「作られ方」に対する共通因子と共に、「使われ方」の共通因子を発見した場合(S34)、トレーサビリティ制御部124は、不具合は発生していないものの、不具合が発生する可能性がある製品として、製造シリアルID「S1234」の製品を抽出することができる(S35)。
【0065】
このように本実施形態のトレース機能は、データモデルに蓄積されている「事実とそのときの状態、状況」を示す実績レコードとセンサ値群に基づいて、「作られ方」の類似性及び/又は「使われ方」をキーに、異種の製品に跨って不具合が発生しそうな予備軍を抽出することができる。
【0066】
図13は、本実施形態の「使われ方」に関する分析機能を説明するための図である。
図11及び
図12の例では、保守管理モデルに蓄積された「使われ方」に基づくトレーサビリティ機能であるが、
図13の例は、製品利用モデルに蓄積された「使われ方」に基づくトレーサビリティ機能である。
【0067】
上述のように、製品利用モデルは、所定のフィールドサービス又は監視システムから取得される製品の使われ方に関連する、
図9に示すような製品利用実績データが蓄積される。製品利用実績データは、保守管理データとは異なり、主に、時系列に検出された製品の動作イベントやアラート履歴やセンサ値である。
【0068】
本実施形態のトレーサビリティ制御部124は、製品利用実績データを用いて、アラート履歴に対するイベント履歴の時系列パターンを事象パターンとして抽出し、事象パターンに基づいて他の製造シリアルIDの製品利用実績データとパターンマッチングを行い、所定の類似性を有する他の製造シリアルIDを有する製品を抽出する。
【0069】
具体的には、
図13に示すように、製品のイベント履歴やアラート履歴に基づく「使われ方」の観点で、「温度超過」に対するHDDの警告が発生したと仮定する。このとき、トレーサビリティ制御部124は、アラート「HDD警告・温度超過」に対してその前後のイベント履歴を参照し、アラート「HDD警告・温度超過」に関連する事象パターンを推定(特定)することができる。
図13の例では、HDD冷却ファン作動⇒スリープモードへ移行⇒ノーマルモードへ移行のイベント履歴の時系列パターンを、アラート「HDD警告・温度超過」に関連する事象パターンとして抽出している(S41)。なお、事象パターンの抽出は、例えば、同じアラート「HDD警告・温度超過」が発生した複数の製品を対象に、最適な事象パターンを抽出することができ、既知の手法を適宜適用することができる。
【0070】
トレーサビリティ制御部124は、ステップS41で抽出した事象パターンを用いて、アラート「HDD警告・温度超過」が発生していない他の製造シリアルIDのイベント履歴(製品利用実績データ)を参照して、パターンマッチングを行う(S42)。パターンマッチングの結果、同じ事象パターンが含まれている場合(S43)、すなわち、同じ「使われ方」の共通因子を発見した場合、トレーサビリティ制御部124は、不具合は発生していないものの、不具合が発生する可能性がある製品として、製造シリアルID「S1234」の製品を抽出することができる(S44)。
【0071】
このように本実施形態では、保守管理モデルに蓄積される故障履歴や交換履歴などのスポット情報だけでなく、日々の製品の利用状態の観点で、同じ製品又は異種の製品に跨って同じ「使われ方」の製品を不具合の予備軍として抽出することができる。なお、
図13の例に示したトレーサビリティ機能は、
図12に示した「作られ方」と連動させた態様にも適用することができる。例えば、アラート「HDD警告・温度超過」に対して「作られ方」の共通因子を抽出し、「作られ方」と「使われ方」の双方に共通因子を発見した場合(不具合は発生していないものの、不具合が発生する可能性がある製品として、他の製造シリアルIDの製品を抽出することもできる。
【0072】
以上、実施形態の情報管理システムについて説明したが、上述した情報管理システムは、製品ライフサイクル全体に対し、製品プロセスを中心として、下流側のフィールド・製品利用プロセスとの連携している。一方で、
図13に示したように、フィールド・製造利用エリアに対し、「使われ方」の事実とそのときの状態、状況を現時点から過去にさかのぼって写像的に生成するためのデータ構造定義に基づいて、データソースから収集される情報を整理し、各データモデルに蓄積するシステムとして構成することもできる。
【0073】
このため、上述した情報管理システムは、市場における製品のフィールド・製品利用プロセスで発生する製品の使われ方を管理する情報管理システムとして構成することができる。つまり、所定のフィールドサービスシステム又は/及び製品の監視システムなどの所定のシステムや製品自体から取得される製品の使われ方に関する情報に基づいて生成され、フィールド・製品利用プロセスの実績データ(保守管理データ、製品利用実績データ)を蓄積する領域であるデータモデル(保守管理モデル、製品利用モデル)を記憶する記憶部と、フィールド・製品利用プロセスに関連するデータソースから実績データを構成する各種データを収集する情報収集部と、実績データを該当するデータモデルに格納するフィールド・製品利用管理部と、を含むように構成することができる。フィールド・製品利用管理部は、製造管理部121に相当する。そして、フィールド・製品利用管理部は、フィールド・製品利用プロセスにおける実績の事実とそのときの状態に対応付けて各種データを整理するためのデータ構造定義テンプレートに従い、各種データを用いて実績データを生成するとともに、データ構造定義テンプレートを用いて整理された実績データの時間変動を記録するように該当するデータモデルに前記実績データを格納するように構成することができる。
【0074】
このように、市場における製品のフィールド・製品利用プロセスで発生する製品の使われ方を管理する情報管理システムとして実現し、フィールド・製造利用エリアの「使われ方」の観点に着目した、情報の蓄積と同時に「事実とそのときの状態、状況」を把握することができる。
【0075】
また、本実施形態の情報管理システムは、複数の情報管理装置100が相互に接続し、各情報管理装置100で個別に管理される実績モデルをリンクさせるように構成することもできる。
図14は、複数の情報管理装置100で個別に管理される実績モデルをリンクさせたシステム構成例を説明するための図である。
【0076】
図14の例において、
図1の製造プロセスに属する製造メーカーと部品メーカーとがリンクし、かつフィールド・製品利用プロセスに属する修理工場及び製品販売会社とがリンクし、さらに、製造プロセス側とフィールド・製品利用プロセス側とでリンクしている。
【0077】
図15は、
図14に示した部品メーカーの実績データ管理(構成品の製造・稼働実績データ、製造レシピ実績データ及び製造品質検査データ)の一例を示す図である。つまり、上述したように、製造メーカーが製品を製造する際の構成品は、部品メーカーから調達することもできる。この場合、構成品の製造管理は、部品メーカー側で行われ、部品メーカー側においても本実施形態の情報管理装置100(100B)を導入することで、データモデルによる情報の蓄積と、「事実とそのときの状態、状況」を把握することが可能となる。なお、部品メーカー側は、製造メーカー側の情報管理システム100(100A)とは独立しているが、調達実績データや製造シリアルBOMによって相互にリンクすることができる。
【0078】
部品メーカーは、製造メーカーと同様に、構成品の製造計画を立案し、実際の製造実績や設備機器の稼働実績が蓄積される。
図15に示した実績データ(データモデル)以外にも、設備管理モデルや構成品を構成する部品の調達実績モデルに関する実績データも蓄積することができる。
【0079】
図15の例では、構成品の製造・稼働実績データに示す「対象物」が、設備Aによって(主体物)、計画通りに2016年8月20日10:00に製造品番(D―001)、シリアルID(31235)のマザーボードを製造し、構成品品番(D1−001)、シリアルID(331234)のコンデンサチップと、構成品品番(D2―001)、シリアルID(331235)のCPUソケットと、構成品品番(D3―001)、シリアルID(331236)のメモリソケットの各部品実装が完了した情報が保存される。この場合においても、上述した「6W1H」に基づくデータ構造定義によるデータ整理及び蓄積が行われる。
【0080】
また、構成品の製造・稼働実績データの対象物それぞれの詳細な実績は、製造レシピ実績データに格納され、上述した製造メーカー側と同様に、製造・稼働実績データの対象物である構成品品番(D1−001)、シリアルID(331234)のコンデンサチップは、2016年8月20日10:00(時間)に温度〇〇でリフローされて(状況)、製造品番(D―001)、シリアルID(31235)のマザーボードに対して実装された実績が格納される。この場合においても同様に、製造レシピ実績データの「状況」には、リアルタイムに検出されるセンサ値が蓄積される。
【0081】
また、構成品の製造・稼働実績データは、検査設備Aによる検査プロセスも含んでおり、
図15の製造品質検査データにおいて、製造・稼働実績データの対象物である製造品番(D−001)、シリアルID(31235)に対して実装された構成品品番(D1−001)、シリアルID(331234)のコンデンサチップのマザーボードへの実装検査が2016年8月20日15:00に実施され、その結果、実装確認に問題無しの実績(状況)に格納される。同様にCPUソケット、メモリソケットの各取り付けについても実績が格納される。
【0082】
そして、このような製造・稼働実績データの蓄積により、部品メーカーの情報管理装置100Bは、
図5に示したような構成品毎の製造シリアルBOM(Bill of materials)を生成することができる。構成品のシリアルBOMの階層最上位のマザーボードのシリアルIDは、このマザーボードを組み込んで製造されるノートPCの構成品の製造シリアルBOMとリンクすることができる。
【0083】
このように、ものづくり情報プラットフォーム上に位置する製造メーカーや部品メーカー毎に個別の情報管理装置100A,100Bによる独立したデータモデル管理を行いつつ、相互に実績データをリンクさせて、製品のみならず、製品を構成する構成品の製造の事実とそのときの状態、状況を現時点から過去にさかのぼって写像的に把握することが可能となる。
【0084】
また、
図14の例において、フィールド・製品利用プロセスに属する修理工場及び製品販売会社にも、それぞれ情報管理装置100C、100Dを設置することができ、情報管理装置100Cは、例えば、
図9に示したメンテナンス履歴のような修理履歴を蓄積するデータモデルが用意され、修理予定(修理依頼に対する計画)や修理実績が、データ構造定義テンプレートに基づいて整理されて、時系列に各データモデルに蓄積される。
【0085】
また、情報管理装置100Dは、例えば、製品の販売実績や
図10に示した運転状況履歴のようなアフターケアを蓄積するデータモデルが用意され、製品の販売計画や販売実績、修理依頼の計画やその実績が、上述したデータ構造定義テンプレートに基づいて整理されて、時系列に各データモデルに蓄積される。
【0086】
なお、
図15の例では、情報管理装置100C、100Dは、販売された製品とその修理に関する実績データを管理しており、製品販売会社に依頼があった製品を修理工場が修理する関係にあるので、製品のシリアルIDで相互にリンクすることができる。
【0087】
また、情報管理装置100C、100Dは、製品のシリアルIDによってさらに、製造メーカー側の情報管理装置100Aとリンクすることができる。つまり、部品メーカーを除く各情報管理装置100A,100C,100Dの分散型のリンク態様は、上述した1つの情報管理装置100が提供する製造プロセス及びフィールド・製品利用プロセスでの各データモデルを用いた情報管理に相当する。
【0088】
なお、本実施形態では、製品として「ノートPC」などのコンピュータ装置を一例に、ものづくり情報プラットフォームについて説明したが、例えば、自動車などの製造プロセス及びフィールド・製品利用プロセスを管理する情報管理システムとして適用することも可能である。この場合においても、製品である自動車に対し、自動車を構成する部品のサプライヤー、ディーラー、修理工場などを1つの情報管理装置100又は複数の情報管理装置100を用いて相互にリンクさせて、情報管理を行うことができる。
【0089】
(変形例)
上記実施形態では、データソースから収集される各種情報の蓄積領域である3つのデータモデルに蓄積する情報を、「主体物(Who)」、「対象物(Whome)」、「事象(What)」、「時間(When)」、「場所(Where)」、「状況(How)」(5W1H)から構成されるデータ構造定義を用いて抽出(選別)し、各データモデルに構造化して蓄積する仕組みについて説明したが、これら蓄積された情報を、所定の品質管理ルール、例えば、「4M」、「5M」、「5M1E」、「6M」と呼ばれる製造工程の工程特性要因の観点と紐付けることができる。5W1Hから構成される計画データとそれに対する実績値を用いて、製造工程の工程特性要因の観点、例えば設備から見た製造工程の状況分析、製造工程における人(Man)の関わり方など、製造工程における品質の観点からの分析が可能となる。
【0090】
続いて、製造工程の工程特性要因について説明する。
管理対象により異なるが、「4M」は機械加工の現場においては、人(Man)、機械(Machine)、材料(Material)、方法(Method)、また事故や災害の原因分析や対策検討においては、人(Man)、機械(Machine)、媒体・環境(Media)、管理(Management)の4要素を有する。「5M」は、工場の品質管理分類に用いられ、作業者(Man)、機械・設備(Machine)、原料・材料(Material)、作業方法(Method)、測定(Measurement)の5要素を有する。更に環境によって製造工程が安定しない場合があり、「5M」に環境(Environment)が加わった「5M1E」、や「5M」に、全体プロセスをコントロールするためのマネジメント(Management)が加わった「6M」により品質管理がなされる。
【0091】
作業者(Man)は、例えば、作業者の能力によって不良品の発生率が異なる場合があり、作業者の作業履歴や、変更履歴(担当者Aから担当者Bに交代した履歴)をもとに品質管理することが可能である。本実施形態では、
図6に示す調達実績データが工程特性要因の人(Man)と紐付けられる。すなわち、製造・稼働実績データの対象物である構成品品番(D−001)、シリアルID(31234〜)のマザーボードを(対象物)、2016年8月25日10:00に、調達担当者A(担当者シリアルID5555)が、A社から購入した実績が格納されており、調達担当者Aによる作業により、A社から購入した構成品が、A社のB工場で製造されたものであることを把握することができる。
【0092】
また、
図8に示す設備メンテナンス履歴が工程特性要因の人(Man)と紐付けられる。すなわち、
図8に示すように、どの作業者(Aさん)が、どの設備機器(設備1)に対して、どのようなメンテナンス(部品交換や修理など)をいつ行ったのか、そのメンテナンスで交換した部品の履歴(シリアルID)が格納されており、作業者Aによる設備メンテナンス内容を把握することができる。
【0093】
機械・設備(Machine)は、例えば、機械・設備によって製品の品質特性が違う場合があったり、機械・設備の入れ替えや調整などのメンテナンスを行うことで品質特定が違う場合があったりする。そのため、機械・設備を使用した製造工程の実績や、変更履歴(メンテナンス履歴)をもとに品質管理することが可能である。本実施形態では、
図6に示す製造・稼働実績データ、製造レシピ実績データ、製造品質検査データ、
図8に示す設備アラート履歴、設備メンテナンス履歴の各データが工程特性要因の機械・設備(Machine)と紐付けられる。すなわち、
図6に示す製造・稼働実績データは、2016年9月2日10:30に、基盤組立工程の基板組立第一ライン第三ステーションに設置されている設備1で、構成品品番(D−001)シリアルID(31235)のマザーボードを製造し、、構成品品番(E−001)シリアルID(41234)のCPU実装と、構成品品番(F−001)シリアルID(41235)のメモリ実装による基盤組立実績が格納されており、設備1における製造・稼働実績を把握することができる。製造レシピ実績データ、製造品質検査データ、
図8に示す設備アラート履歴、設備メンテナンス履歴についても同様、工程特性要因の機械・設備(Machine)と紐付けられることにより、いつどの設備で何が行われたかについて把握することができる。
【0094】
原料・材料(Material)は、例えば、同じ原材料でも購入先や銘柄によって製品収率が異なる場合がある。そのため、原料・材料の変更履歴(調達先の変更や原材料の変化などの履歴)を基に品質管理することが可能である。本実施形態では、
図6に示す調達実績データが工程特性要因の原料・材料(Material)と紐付けられる。すなわち、製造・稼働実績データの対象物(原料・材料)である構成品品番(D−001)、シリアルID(31234〜)のマザーボードを、2016年8月25日10:00に、調達担当者A(担当者シリアルID5555)が、A社から購入した実績が格納されており、調達担当者Aにより、A社から購入した構成品(原料・材料)が、A社のB工場で製造されたものであることを把握することができる。
【0095】
作業方法(Method)は、例えば、作業方法が変わると作業効率が違ったり、複数の作業方法の手順が変わると作業効率が違ったりする。そのため、作業方法の変更履歴(手順や作業内容の変化)をもとに品質管理することが可能である。本実施形態では、
図6に示す製造レシピ実績データが工程特性要因の作業方法((Method)と紐付けられる。すなわち、製造レシピ実績データは、製造・稼働実績データの対象物である構成品品番(ED−001)、シリアルID(41234)のCPUが、2016年9月2日10:30(時間)に流量△△で半田が塗布されてマザーボードに半田付けされて(状況)、構成品品番(D−001)、シリアルID(31235)のマザーボードに対して実装された実績が格納されており、どのような作業方法(条件)で製造されたのかを把握することができる。
【0096】
測定(Measurement)は、例えば、測定者、測定機器、測定方法などによって測定値が異なったり、安定しなかったりする場合がある。そのため、測定の変更履歴(測定者、測定機器、測定方法の変更)をもとに品質管理することが可能である。本実施形態では、
図6に示す製造品質検査データが工程特性要因の測定(Measurement)と紐付けられる。すなわち、製造品質検査データは、製造・稼働実績データの対象物である製造品番(D−001)、シリアルID(31235)に対して実装される構成品品番(E−001)、シリアルID(41234)のCPUのマザーボードへの実装検査が2016年9月2日11:00に実施され、その結果、実装確認(電源確認)に問題無しの実績(状況)が格納されており、何に対してどのような確認(測定方法)を行ったかを把握することができる。
【0097】
環境(Environment)は、例えば、温度、湿度、季節、時間、振動、音、光などが変化すると、製造の工程(検査工程を含む)が安定しなかったりする場合がある。そのため、環境の変更履歴(製造の各工程の環境変化)をもとに品質管理することが可能である。本実施形態では、
図7に示すセンサ値DBに蓄積された湿度センサ値などが工程特性要因の環境(Environment)と紐付けられる。
【0098】
このように、データソースから収集される各種情報の蓄積領域である3つのデータモデルに蓄積された5W1Hの観点で構造化された情報を、分析の視点と紐付けることにより、様々な観点からの分析をすることができる。上記では分析の視点を製造工程の工程特性要因として説明したがこれに限らず、他の視点での分析も可能である。
【0099】
上述の通り、「5W1H」などから構成されるデータ構造定義を用いて抽出(選別)し、各データモデルに構造化して蓄積された情報に対して、所定の品質管理ルール(「4M」、「5M」、「5M1E」、「6M」と呼ばれる製造工程の工程特性要因)の観点により対応付けた紐付き情報に基づいて、品質管理ルール(工程特性要因(5M1Eなど))に対応するデータ構造定義を作成することもできる。その場合、品質管理ルールで構成されるデータ構造定義は、分析用のデータ構造定義(テンプレートしても良い)として利用することができる。
【0100】
また、上述の情報管理装置100を構成する各機能は、プログラムによって実現可能であり、各機能を実現するために予め用意されたコンピュータプログラムが補助記憶装置に格納され、CPU等の制御部が補助記憶装置に格納されたプログラムを主記憶装置に読み出し、主記憶装置に読み出された該プログラムを制御部が実行することで、各部の機能を動作させることができる。
【0101】
また、上記プログラムは、コンピュータ読取可能な記録媒体に記録された状態で、コンピュータに提供することも可能である。コンピュータ読取可能な記録媒体としては、CD−ROM等の光ディスク、DVD−ROM等の相変化型光ディスク、MO(Magnet Optical)やMD(Mini Disk)などの光磁気ディスク、フロッピー(登録商標)ディスクやリムーバブルハードディスクなどの磁気ディスク、コンパクトフラッシュ(登録商標)、スマートメディア、SDメモリカード、メモリスティック等のメモリカードが挙げられる。また、本発明の目的のために特別に設計されて構成された集積回路(ICチップ等)等のハードウェア装置も記録媒体として含まれる。
【0102】
なお、本発明の実施形態を説明したが、当該実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。