特許第6591718号(P6591718)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6591718
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】解析支援システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/359 20140101AFI20191007BHJP
   G01N 21/33 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
   G01N21/359
   G01N21/33
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-122905(P2019-122905)
(22)【出願日】2019年7月1日
(62)【分割の表示】特願2017-53905(P2017-53905)の分割
【原出願日】2017年3月21日
(65)【公開番号】特開2019-179043(P2019-179043A)
(43)【公開日】2019年10月17日
【審査請求日】2019年7月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500403365
【氏名又は名称】株式会社日産アーク
(74)【代理人】
【識別番号】110002549
【氏名又は名称】特許業務法人綾田事務所
(72)【発明者】
【氏名】粟谷 正
(72)【発明者】
【氏名】バリアン アンクール
【審査官】 中澤 真吾
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−533969(JP,A)
【文献】 特開2001−185591(JP,A)
【文献】 特開2002−073154(JP,A)
【文献】 特開2004−265009(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/049771(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0112101(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/01
21/17−21/61
21/84−21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オンサイトで、所定の特性に対する適格性が求められる不特定多数の被測定対象物に対し所定の入力を与えたときの応答であるオンサイトデータを測定するオンサイト測定部と、
前記オンサイトデータの応答の一部に基づいて被測定対象物の状態をコンピュータにより解析するオンサイト解析部と、
複数の前記オンサイトデータを蓄積するデータベースと、
前記データベースに蓄積されたオンサイトデータを他の解析装置と共有することを許可する共有許可部と、
を有するオンサイト解析装置と、
オフサイトで、前記共有許可部により共有を許可された前記オンサイトデータに基づいて被測定対象物の状態を解析するオフサイト解析部を有するオフサイト解析装置と、
を備えたことを特徴とする解析支援システム。
【請求項2】
オンサイトで、所定の特性に対する適格性が求められる不特定多数の被測定対象物に対し所定の入力を与えたときの応答であるオンサイトデータを測定するオンサイト測定部と、
前記オンサイトデータの応答の一部に基づいて被測定対象物の状態をコンピュータにより解析するオンサイト解析部と、
を有するオンサイト解析装置と、
複数の前記オンサイトデータを蓄積するデータベースと、
オフサイトで、前記オンサイトデータに基づいて被測定対象物の状態を解析するオフサイト解析部を有するオフサイト解析装置と、
を備え、
前記オンサイト解析装置は、前記データベースに蓄積されたオンサイトデータを他の解析装置と共有することを許可する共有許可部を有し、
前記オフサイト解析部は、前記共有許可部により共有を許可された前記オンサイトデータに基づいて解析することを特徴とする解析支援システム。
【請求項3】
オンサイトで、所定の特性に対する適格性が求められる不特定多数の被測定対象物に対し所定の入力を与えたときの応答であるオンサイトデータを測定するオンサイト測定部と、
前記オンサイトデータの応答の一部に基づいて被測定対象物の状態をコンピュータにより解析するオンサイト解析部と、
複数の前記オンサイトデータに固有情報を付加したデータユニットを蓄積するデータベースと、
前記データベースに蓄積された前記データユニットのうち他の解析装置と共有する前記データユニットの範囲を設定する共有部と、
を有するオンサイト解析装置と、
オフサイトで、前記共有部において設定された範囲内の前記データユニットに基づいて被測定対象物の状態を解析するオフサイト解析部を有するオフサイト解析装置と、
を備えたことを特徴とする解析支援システム。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか一つに記載の解析支援システムにおいて、
前記オンサイトは、前記被測定対象物を製造する製造ラインであることを特徴とする解析支援システム。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか一つに記載の解析支援システムにおいて、
前記オフサイト解析部は、前記被測定対象物の状態を解析した解析結果に基づいて、前記オンサイトの製造条件の改善策を提案することを特徴とする解析支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ等で取得したデータを解析する解析支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製造工場や整備工場といった、いわゆる現場(以下、オンサイトと記載する。)で測定した情報を解析する技術として特許文献1が知られている。この公報には、オンサイトで特性を測定し、良否判断を行うと共に、特性および合否のデータを蓄積する。そして、専門的にデータ解析を行う研究所や分析会社等(以下、オフサイトと記載する。)にデータを伝送し、統計処理等の解析を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−98210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のように、オンサイトで測定するデータとして、例えば物の長さの場合、得られる情報が一つだけであるため、生産ラインで製品の長さを測定し、その良否判定を実行する限りにおいて特に複雑な解析を要求されることはなく、一つのデータを処理するのみであるからオフサイトでの処理も単に一つのデータを統計処理すればよい。しかしながら、例えば、光照射により非接触でスペクトルデータを測定するような場合、単なる長さ情報とは異なり、広範な波長域のデータが取得できる。このデータの全てについてオンサイトで解析を行う場合、オンサイトでの生産ラインのタクトタイムに適合させると、解析が追い付かない場合がある。また、オンサイトの環境によっては高価な解析装置の設置が困難であり、オンサイトのニーズに合っていると言えない面がある。
【0005】
本発明の目的は、オンサイトで広範な情報を有するデータが測定される場合であっても、オンサイトで要求されるニーズを満たしつつ、オンサイトにおける負担を軽減して十分な解析を支援可能な解析支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
オンサイトで、所定の特性に対する適格性が求められる不特定多数の被測定対象物に対し所定の入力を与えたときの応答であるオンサイトデータを測定するオンサイト測定部と、
前記オンサイトデータの応答の一部に基づいて被測定対象物の状態をコンピュータにより解析するオンサイト解析部と、
複数の前記オンサイトデータを蓄積するデータベースと、
前記データベースに蓄積されたオンサイトデータを他の解析装置と共有することを許可する共有許可部と、
を有するオンサイト解析装置と、
オフサイトで、前記共有許可部により共有を許可された前記オンサイトデータに基づいて被測定対象物の状態を解析するオフサイト解析部を有するオフサイト解析装置と、
を備えた。
【発明の効果】
【0007】
よって、オンサイトにあっては、オンサイトで得られたデータの一部に基づいて解析するため、オンサイトのニーズに合った素早い解析を実現できる。また、得られたオンサイトデータを一部以外も含めて蓄積し、この蓄積したデータをオフサイトで共有することで、オフサイトにおいて、オンサイトで行った一部を含む他の応答に基づいて十分な解析を行うことができ、オンサイトでの解析を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の解析支援システムを表すシステム図である。
図2】実施例1のオンサイト解析プログラム設計方法を表す概略図である。
図3】実施例1の検量線を表す図である。
図4】実施例1のオンサイト解析プログラムで表示される画面の一部を表す概略図である。
図5】実施例1のオフサイト解析装置の運用を表す概略図である。
図6】実施例1のオフサイト解析プログラムにより実行されるスペクトルデータ解析処理を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、実施例1の解析支援システムを表すシステム図である。実施例1では、具体的な事例として、樹脂ペレットから樹脂製の部品を製造する製造ラインをオンサイトとして示す。また、種々の高機能分析装置を備え、オンサイトで使用するオンサイト解析装置を提供する研究所や分析会社をオフサイトとして示す。オンサイトとオフサイトとは、ネットワーク6を介して接続されている例を示すが、必ずしもネットワーク6で接続される必要はなく、記憶媒体の送付等によりデータの送受信を行ってもよい。
【0010】
オンサイトでは、製造ライン3に原料となる樹脂ペレット2が搬送される。製造ライン3には、測定波長範囲が900nm~1700nmの近赤外分光装置1(以下、小型NIR1と記載する。)を有する。小型NIR1は、樹脂ペレット2に光を照射し、その反射からスペクトルデータを取得してコンピュータ4に送信する。コンピュータ4は、大きな処理能力を必要としないため、ノート型パソコン等であってもよい。コンピュータ4内には、樹脂ペレット2の状態を簡易解析するオンサイト解析プログラムを有する。オンサイト解析プログラムは、スペクトルデータのうち、樹脂ペレット2の水分含有状態と関連する一部の波長領域のデータを抽出し、この抽出された一部のデータに基づいて、材料としての適格性を判定する。適格な材料の場合は、コンピュータ4に接続されたモニタ4aにOKが表示され、不適格な材料の場合は、NGが表示される。
【0011】
樹脂ペレット2は、金型に射出成形して製品を製造する。製造された製品は、検品工程において目視や強度試験が実施され、検品結果をコンピュータ4に送信する。以上の工程において得られたスペクトルデータ、オンサイト解析プログラムでの解析結果、検品結果、製造条件、製造環境の温度,湿度,雰囲気,日時,天候などの環境情報、工程責任者といった種々のデータは、樹脂ペレット2の固有情報(製造メーカ、ロット番号、納入時期、保管状態等)と紐づけされ(以下、データユニットと記載する。)、ネットワーク6を介してコンピュータ4と接続されたデータベース5に蓄積される。このデータベース5に蓄積された全てのデータユニットをバルクデータと記載する。尚、小型NIR1とオンサイト解析プログラムとデータベース5とでオンサイト解析装置を構成する。
【0012】
オフサイトでは、バルクデータを解析可能な大型コンピュータ10を有する。大型コンピュータ10は、データベース5に蓄積されたバルクデータを解析するオフサイト解析プログラムを有する。オフサイト解析プログラムは、蓄積されたスペクトルデータの全ての波長領域のデータを読み込み、各波長におけるスペクトルデータの変化量や変化傾向を解析する。そして、スペクトルデータに変化が生じた波長域の特定、及びその変化量や変化傾向の抽出、変化量や変化傾向とデータユニット内の他のデータとの因果関係を総合的に解析し、解析結果をモニタ10aに表示する。
【0013】
そして、バルクデータの解析結果から原因が特定され、特に詳細なサンプル分析は不要であると判断した場合には、オンサイト解析プログラムの訂正や、現場環境の改善等のレポートを作成する。一方、バルクデータの解析結果から複数の原因に絞り込めたものの、詳細なサンプル分析に基づいて原因を特定する必要があると判断した場合には、必要な高機能分析装置を選択する。尚、詳細なサンプル分析が必要な場合は、オンサイトに対し、サンプル(OK,NGの樹脂ペレット2、製品等)の提供を要求する。
【0014】
オフサイトは、高機能分析装置として、フーリエ変換型近赤外分光分析装置11(FTNIR)、フーリエ変換型赤外分光分析装置12(FTIR)、紫外励起可視光分光分析装置13、ラマン散乱分光分析装置14(Raman)、光学顕微鏡装置15(OM)、電子顕微鏡装置16(SEM)、カールフィッシャー水分分析装置17、ガスクロマトグラフィー質量分析装置18(GC-MS)、核磁気共鳴分析装置19(NMR)を有する。尚、樹脂ペレット2及び樹脂製品の観点から上記8種類の分析装置を記載したが、必要に応じて熱分析、粘弾性分析、元素分析、化学分析、X線回折分析装置、小角X線散乱分析装置、X線光電子分光分析装置の分析装置も使用できる。例えば、FTNIR11は、オンサイトで測定する小型NIR1に比べて測定可能波長範囲が広く、かつ、高分解能、かつ、高感度に測定可能である。オフサイト解析プログラムの解析によって必要な高機能分析装置が絞り込まれると、上記分析装置から必要最小限の分析装置を選択する。尚、高機能分析装置と、オフサイト解析プログラムとでオフサイト解析装置を構成する。
【0015】
(オンサイト解析装置の提供)
オフサイトでは、オンサイトでのニーズを把握し、簡易型のオンサイト解析プログラムを設計する。図2は、実施例1のオンサイト解析プログラム設計方法を表す概略図である。オンサイトでは、樹脂ペレット2に含まれる水分量を安定させることが求められている。例えば、樹脂ペレット2がオンサイトに納入されてから製造ライン3に向かうまでの経過時間が長いと、樹脂ペレット2が水分を吸着しているおそれがある。樹脂ペレット2に含まれる水分量が多い状態で射出成形すると、樹脂内の水分が気化することで製品にボイドが発生し、強度不足や外観の不具合を招く恐れがあるからである。図2の上段は、複数の樹脂ペレット2のサンプルを測定したスペクトルデータである。ナイロン製の樹脂ペレット2は、水分の吸収に伴いO-H基の影響から1450nm付近で光の吸収が生じる。すなわち、図2の下段に示す拡大図のように、O-H基が少ない場合、1450nm付近のスペクトルデータは、上に凸の傾向を有する。しかし、水分が吸着すると、上に凸の傾向から漸減する傾向へと変化する。この1450nmにおける変化傾向を活用し、水分量を非接触・非破壊で測定できる。
【0016】
図3は、実施例1の検量線を表す図である。横軸は、カールフィッシャー水分測定装置17で測定した実際の水分量、縦軸は、小型NIR1で測定した予測水分量である。実際に測定した水分量と予測水分量とが対応する線を検量線として設定する。この検量線から大きく外れることなく測定された結果(例えば2.0wt%以下、図3内に示す測定点A,B,C)は、小型NIR1で精度よく水分量を予測できていると言えるため、検量線を含む所定領域をOK領域とする。一方、樹脂ペレット2に余剰な水分量(例えば2.0wt%以上、図3内に示す測定点D,E)が含まれると、ボイドの発生につながるため、2.0wt%以上の領域はNG領域として設定する。また、日常管理領域より大きく離れた過剰の水分量(例えば2.8wt以上,図3内に示す測定点F)を含む樹脂ペレット2についてもNG領域とする。このような条件が設定された合否判定ファイルを作成し、オンサイト解析プログラムに組み込むことで、小型NIR1で測定したスペクトルデータの一部である1450nm付近のデータのみを使用し、材料としての適格性を判定できる。
【0017】
ここで、小型NIR1により樹脂ペレット2を測定した場合、900nm〜1700nmのスペクトルデータが得られるため、全範囲のデータを用いて解析することも考えられる。しかしながら、全てのデータを解析すると、演算負荷や演算時間が必要となり、オンサイトでの生産ラインのタクトタイムに適合できない場合がある。また、オンサイトで日常的に管理できるものは水分量であり、他の劣化等に起因するデータ解析を日常的に測定して管理することは困難である。そこで、オンサイトにおいて最も重要と考えられる一部のデータに着目することで、装置の大型化やプログラムの複雑化を招くことなく、タクトタイムに合わせた品質管理を実現可能なプログラムを提供することとした。
【0018】
(オンサイト解析装置の運用)
図4は、実施例1のオンサイト解析プログラムで表示される画面の一部を表す概略図である。オンサイト解析プログラムによる解析の結果、OK領域であると判断された場合は、モニタ4aにOKが表示され、問題なく次の測定結果へと移行する。このとき、オンサイト解析プログラムの結果はOKであっても、検品工程においてNGとなる場合、モニタ4aにNGが表示されるため、オンサイト解析プログラムでは判定できない原因の究明が必要となる。また、オンサイト解析プログラムの結果がNG領域であると判断された場合は、モニタ4aにNGが表示される。このとき、少ない頻度でNGが表示される場合は、単にその樹脂ペレット2を製造ラインから除外すればよいが、NGの頻度が高くなる場合には、やはり原因の究明が必要となる。
【0019】
オンサイト解析プログラムは、図4(i)に示すように、モニタ4aにNGが表示されるときに「詳細分析希望ボタン」が表示される。オンサイトの管理者等が詳細分析希望ボタンを押すと、次に図4(ii)に示すように、「データベース共有許可ボタン」が表示される。ここで、データベース5に蓄積されたバルクデータのうち、共有を許可するデータ範囲を設定する。このデータ範囲は、データユニット内から適宜選択してもよいし、全てを選択してもよい。また、データの蓄積された期間を設定してもよい。この状態でデータベース共有許可ボタンを押すと、オフサイトに詳細分析依頼通知と共に、データベース5へのアクセスを許可する信号が送信される。次の画面では、図4(iii)に示すように「データベース共有」、「詳細分析依頼済」のステータスが表示されると共に、「アクセス許可開始ボタン」が表示される。
【0020】
(オフサイト解析装置の運用)
図5は、実施例1のオフサイト解析装置の運用を表す概略図である。オフサイトにおいて、詳細分析依頼通知およびデータベース5へのアクセス許可信号を受信すると、アクセス許可が得られた範囲でデータベース5にアクセスし、許可されたデータを受信する。オフサイトでは、バルクデータから大量のスペクトルデータを読み込む。また、材料情報から化学構造を特定し、化学構造に基づくスペクトルピークの選定を行う。また、スペクトル解析結果や製造条件からスペクトルピークを選定すると共に、環境情報から環境湿度、環境温度、雰囲気を読み込み、バルクデータと選定されたスペクトルピークからスペクトル解析を行う。例えば、スペクトルピークの変化量や変化傾向を抽出する。尚、スペクトルピークの変化量や変化傾向の抽出方法としては、パラメトリック分析、ノンパラメトリック分析、単変量分析、多変量分析、線形分析、非線形分析、および当業者に公知の他の統計学的方法が挙げられる。多変量分析は、見かけ上は無秩序なデータにおいてパターンを決定する分析であり、この分析としては、主成分解析(「PCA」)、判別分析(「DA」)、PCA−DA、正準相関(「CC」)、クラスター分析、部分最小二乗法(「PLS」)、予測的線形判別分析(「PLDA」)、ニューラルネットワーク、およびパターン認識技術が挙げられるが、特に限定しない。
【0021】
図6は、実施例1のオフサイト解析プログラムにより実行されるスペクトルデータ解析処理を表す概略図である。樹脂ペレット2は、ナイロン−6を原料としており、その化学式は、図6の下方の鎖状構造で表される。ナイロン―6が水分を吸収すると、O-H基の影響で1450nm付近のスペクトルピーク値が低下する。また、ナイロン―6が劣化すると、N-H基の影響で1050nm付近の下に凸のスペクトルピーク値が緩やかに変化し、また、C-H基の影響で1340nm付近のスペクトルピーク値が低下する。ここで、オンサイトでは、一部のスペクトルデータを用いていたのに対し、オフサイトでは、スペクトルデータの波長範囲を拡張することで、水分量以外の分子構造の変化傾向を把握することができる。また、大量のバルクデータを処理するため、オンサイトでは把握できない情報を抽出できる。具体的には、抽出された変化量や変化傾向と、製造条件や環境情報を関連付けて解析することができる。よって、NGとなった樹脂ペレット2や製品と環境条件との因果関係や、製造条件との因果関係を把握することが可能となり、オンサイトに対し、適切な改善策を提案できる。
【0022】
次に、上述のデータ解析によりオンサイトで生じたNG(図3内に示した測定点F)の原因が究明されたと判断できる場合には、特に高機能分析装置を用いた分析を行わない。一方、NGの原因が十分に究明されたと判断できない場合には、抽出された情報に基づいてオンサイトにサンプルの提供を要求する。既にバルクデータを用いた分析が行われた後であるため、必要と思われる高機能分析装置は絞り込まれた状態である。よって、オフサイトに対し、必要なサンプルを具体的に要求できる。オンサイトからサンプルが提供されると、選択された高機能分析装置によりサンプルの主成分解析(定性解析や定量解析)を実施する。そして、特定された原因に基づいて、レポートを作成してオンサイトに報告する。また、場合によっては、合否判定ファイルの検量線の再設定や、NG領域の再設定を行い、オンサイトの合否判定ファイルを更新することで、オンサイト解析装置の解析精度を向上できる。
【0023】
以上説明したように、実施例1にあっては、下記に列挙する作用効果を奏する。
(1)オンサイトで、樹脂ペレット2(被測定対象物)に対し光を照射した(所定の入力を与えた)ときの応答であるスペクトルデータ(オンサイトデータ)を測定する小型NIR1(オンサイト測定部)と、
スペクトルデータの応答の一部である1450nmにおけるスペクトルピーク値に基づいて樹脂ペレット2の状態をコンピュータ4により解析するオンサイト解析プログラム(オンサイト解析部)と、
複数のスペクトルデータを蓄積するデータベース5と、
データベース5に蓄積されたスペクトルデータをオフサイト解析装置(他の解析装置)と共有する詳細分析希望ボタン,データベース共有許可ボタン(共有部)と、
を有するオンサイト解析装置と、
オフサイトで、データベース共有許可ボタンにより共有されたスペクトルデータの応答の一部を含む他の応答である1050nm及び1340nmのスペクトルピーク形状を、複数のスペクトルデータ間で比較することで樹脂ペレット2の状態を解析するオフサイト解析プログラム(オフサイト解析部)を有するオフサイト解析装置と、
を備えた。
よって、オンサイトにあっては、オンサイトで得られたデータの一部に基づいて解析するため、オンサイトのニーズに合った素早い解析を実現できる。また、得られたオンサイトデータを一部以外も含めて蓄積し、この蓄積したデータをオフサイトで共有することで、オフサイトにおいて、オンサイトで行った一部を含む他の応答に基づいて十分な解析を行うことができ、オンサイトでの解析を支援することができる。
【0024】
(2)オンサイトデータは、光を照射したときの応答を表すスペクトルデータである。スペクトルデータは、光を照射したときに対象とする波長以外にも同時に取得することができる。よって、オンサイトでは、一部の応答を用い、オフサイトでは一部の応答を含む他の応答を有効に活用することで、より適切な解析支援を実施できる。
(3)共有部として、モニタ4a(コンピュータの画面)に表示されるデータベース共有許可ボタンであるため、オンサイト側の判断によってデータベース5の共有を選択できる。よって、情報管理をオンサイト側で適切に実施できるため、データベースの共有先を自由に設定できる。
(4)オンサイト解析プログラムは、スペクトルデータの1450nmにおけるスペクトルピーク値(応答の一部)が所定条件(例えば2.0wt%以下)を満たしているか否かを解析する合否判定ファイル(解析部)を有し、
オフサイト解析プログラムは、解析結果に基づいて、オンサイト解析プログラムの合否判定ファイルを更新する。
よって、オンサイトに対して適切な改善策を提案できる。
【0025】
(5)データベース5は、ネットワーク6上に配置され、
共有部は、データベース5に蓄積された複数のスペクトルデータのうち、オンサイト解析装置で設定された所定範囲に対し、オフサイト解析装置からのアクセスを許可する信号をオフサイト解析装置に送信する手段である。
よって、データベースのうち、共有するデータを設定できるため、オンサイトでは、データベースに秘匿情報を含むあらゆる情報を蓄積できる。
(6)オフサイト解析装置は、小型NIR1よりも分解能の高いFTNIR11(オフサイト測定部)を有する。
よって、必要に応じて更に詳細な分析を実施できる。
(7)高機能分析装置(オフサイト測定部)は、樹脂ペレット2に対し、小型NIR1で測定されるスペクトルデータと異なるデータを測定する複数の高機能分析装置を有し、
オフサイト解析プログラムは、解析結果に基づいて複数の高機能分析装置から最適な高機能分析装置を選択する。
よって、分析期間や分析コストを抑制することができる。
(8)高機能分析装置は、光学顕微鏡、走査型若しくは透過型電子顕微鏡による画像解析、透過型電子顕微鏡に関係する構造解析、赤外分光分析、核磁気共鳴分析、近赤外分光分析、紫外励起可視光分光分析、ラマン分光分析、オージェ電子分光分析、元素分析、熱分析、粘弾性分析、化学分析、走査型プローブ顕微鏡に関係する分析、ナノインデンテーション分析、機械強度試験、X線散乱分析及びX線光電子分光分析、X線回折分析、X線小角散乱分析、中性子線回折分析、中性子小角散乱分析、及びX線吸収微細構造分析からなる群より選択される2つ以上の手段を含む。
よって、あらゆる側面から被測定対象物を測定することができ、原因を的確に究明できる。
【0026】
(他の実施例)
以上、実施例1に基づいて本発明を説明したが、本発明の範囲を逸脱しない範囲で他の実施例にも適用できる。実施例1では、樹脂ペレットの水分吸収に関して本発明を適用したが、例えば金属表面上の油分付着の有無をオンサイトで測定してもよいし、接着剤の硬化判別をオンサイトで測定してもよいし、粉末原料を未開封の状態で原材料の種類を識別してもよいし、成形された樹脂製品の材料配合比や添加剤の量をオンサイトで測定してもよいし、光触媒コーティング等のコーティングの膜厚をオンサイトで測定してもよいし、エンジンオイル等のオイルの劣化判定をオンサイトで測定してもよい。
【0027】
また、実施例1ではスペクトルデータを用いたが、スペクトルデータに限らず、一度の測定で所望のデータ以外の他のデータが同時に取得できるような場合に適用してもよい。具体的には、製品の画像撮影を行い、オンサイトでは、製品の長さのみを画像から判定するが、他の情報(表面状態や形状など)をオフサイトで活用してもよい。また、オンサイトに持ち込めるコンピュータのスペックが限られる場合にも、オンサイトで解析する内容を限定することは有効である。
【0028】
また、実施例1では、オンサイトとオフサイトをネットワークで接続した例を示したが、ネットワークに接続されていない場合であっても、記憶媒体の送付等によりデータの送受信を行ってもよい。同様に、データベースもネットワーク上にある必要はなく、オフサイト上や、クラウド上や、オンサイトのコンピュータ内に内蔵されていてもよい。
【0029】
また、実施例1では、オンサイトの小型NIR1とオフサイトのFTNIR11とで異なる分解能を備えた例を示したが、オンサイトとオフサイトの分解能が同じであってもよいし、オフサイトの分解能が高くても構わない。
【符号の説明】
【0030】
1 近赤外分光分析装置
2 樹脂ペレット
3 製造ライン
4 コンピュータ
4a モニタ
5 データベース
6 ネットワーク
10 大型コンピュータ
11 フーリエ変換型近赤外分光分析装置
12 フーリエ変換型赤外分光分析装置
13 紫外励起可視光分光分析装置
14 ラマン散乱分光分析装置
15 光学顕微鏡装置
16 電子顕微鏡装置
17 カールフィッシャー水分分析装置
18 ガスクロマトグラフィー質量分析装置
19 核磁気共鳴分析装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6