【文献】
K. Sathananthan et al.,Analysis of OFDM in the presence of frequency offset and a method to reduce performance degradation,IEEE Global Telecommunications Conference, 2000. GLOBECOM'00,米国,IEEE,2000年12月 1日,vol.1,pp.72-76,Section III
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書では、無線信号は一般的な複素平面として捉える。また、デジタル信号は一般 的な直交検波後のI相、Q相の信号をI+jQとして複素信号として扱う。従って、複素 数を扱う場合は、複素加算器、複素乗算器、複素FIRフィルタを用いる。
【0011】
実施形態では、送信機で無信号(ヌルキャリアとしたサブキャリアまたは無送信区間の 信号)を、受信機では干渉波抑圧用パイロット信号として用い、二つの受信信号が同一振 幅および逆位相となるような複素係数を求め、一方の受信信号に複素係数を乗算し、他方 の受信信号と加算することによって、干渉波を抑圧する。また、離散的な複数の干渉波抑 圧用パイロット信号を用いて、複素係数をOFDMシンボルおよびサブキャリア毎に算出 し、干渉波の周波数選択性フェージングや時間変動がある干渉波を抑圧する。
【0012】
実施形態によれば、周波数選択性フェージングへの耐性が強いOFDM変調方式を用い る無線通信システムにおいて、アンテナ数が2で長遅延マルチパスおよび周波数選択性フ ェージングを伴う環境で干渉波を効果的に抑圧することができる。
【0013】
以下、実施形態および実施例について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明に おいて、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。
【0014】
<第一実施形態>
第一実施形態に係る送信機では、送信信号にゼロの信号成分(ヌルサブキャリア)を適 切に挿入して直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency-Division Multiple xing)変調して送信する。
図2に第1の実施形態に係る送信信号のサブキャリア配置の例 を示す。データサブキャリアは直交振幅変調(QAM)されたデータ情報であることが一 般的である。データ復調用パイロットサブキャリアは送信側および受信側で既知の情報で 同期検波するために用いられる。ヌルサブキャリアは干渉波抑圧のために用いられる。
【0015】
第一実施形態に係る受信機では、二つのアンテナで受信する。第一アンテナの受信信号 はR1、第二アンテナの受信信号はR2である。
図3にOFDM復調後のサブキャリアベ クトルおよび干渉抑圧後のサブキャリアベクトルを示す。第一アンテナの第i番目のデー タサブキャリアおよびデータ復調用パイロットサブキャリアは希望波(D1i)に干渉波 (U1i)がベクトル加算された受信ベクトル(R1i)となる。第二アンテナの第i番 目のデータサブキャリアおよびデータ復調用パイロットサブキャリアは希望波(D2i) に干渉波(U2i)がベクトル加算された受信ベクトル(R2i)となる。第一アンテナ の第k番目の送信側でヌルとしたサブキャリアは干渉波(U1k)が受信ベクトル(R1 k)となる。第二アンテナの第k番目の送信側でヌルとしたサブキャリアは干渉波(U2 k)が受信ベクトル(R2k)となる。第一アンテナと第二アンテナの信号が異なる理由 は、アンテナの位置と到来方向との関係によって生じる伝搬路差やマルチパスの経路差な どの伝搬環境に差異があるためである。
【0016】
受信信号をOFDM復調して送信側でヌルとしたサブキャリア(R
1k、R
2k)を干 渉波抑圧用パイロット信号とする。R
1kをR
2kと同一振幅および逆位相となるような 複素係数(A
k)を求める。R
1kの振幅成分をa
1k、位相成分をθ
1kとおき、R
2
kの振幅成分をa
2k、位相成分をθ
2kと置くと、A
kは下記の式(1)で計算できる 。 R
1k=a
1k・exp{-jθ
1k} R
2k=a
2k・exp{-jθ
2k} A
k=−(a
2k/a
1k)・exp{−j(θ
2k−θ
1k)} (1)
R
1kにA
kを乗算したR
1’kはR
2kと同一振幅および逆位相になる。このA
kを R
1iに乗算してR
1’iとする。R
1’iとR
2iを加算すると、干渉波成分であるU
1’iとU
2iが相殺されて、D
1’iとD
2iが加算された希望信号成分(D
i)を抽 出される、すなわち、干渉波を抑圧することができる。
【0017】
第一実施形態に係る無線通信システムは、送信信号にヌルサブキャリアを挿入してOF DM変調した送信信号を送信する送信機と、第一アンテナおよび第二アンテナで受信する 受信機と、を備える。
【0018】
受信機は、(a)第一アンテナで受信した信号をフーリエ変換し、ヌルサブキャリアの 第一受信ベクトル(R
1k)に複素係数(A
k)を乗算した結果が、第二アンテナで受信 した信号をフーリエ変換し、ヌルサブキャリアの第二受信ベクトル(R
2k)と同一振幅 かつ逆位相となる、複素係数(A
k)を算出し、(b)第一アンテナで受信してフーリエ 変換したサブキャリアの第三受信ベクトル(R
1i)に複素係数(A
k)を乗算して第四 受信ベクトル(R
1’i)を算出し、(c)第四受信ベクトル(R
1’i)と第二アンテ ナで受信してフーリエ変換したサブキャリアの第五受信ベクトル(R
2i)を加算して第 六受信ベクトル(D
i)を算出する。また、すべてのサブキャリアについて第四受信ベク トル(R
1’i)を算出し、第六受信ベクトル(D
i)を算出して希望信号を抽出する。
【0019】
ここで、受信機は第一アンテナで受信する第一受信機と第二アンテナで受信する第二受 信機で構成してもよい。
【0020】
次に、全てのサブキャリアの複素係数の算出方法について三つ説明する。
一つ目は、離散的に複数のヌルサブキャリアを挿入したサブキャリアの複素係数から、 全てのサブキャリアに対して補間したサブキャリア毎の複素係数を用いる例である。
【0021】
N+1本のサブキャリアあたりに1本の干渉波抑圧用SC(Sub-Carrier:サブキャリ ア)を挿入する。他のN本のサブキャリアはデータSC、または、データ復調用パイロッ トSCである。干渉波抑圧用パイロットSCを用いて、N本のサブキャリアに対する干渉 抑圧用複素係数(A
i)を補間する。補間方法は、直近の干渉波抑圧用パイロットSCを そのまま用いる0次外挿補間や、補間対象サブキャリアを挟む2本の干渉波抑圧用パイロ ットSCの一次内挿補間、最小二乗法をはじめとする、さまざまな公知の補間方法を用い ればよい。
図3は0次外挿補間の例である。また、N=0、すなわち、あるOFDMシン ボルを干渉波抑圧用パイロットSC専用に用いてもよい。その際、雑音や誤差の影響を小 さくするためにローパスフィルタなどを使用してスムージングしても良い。周波数選択性 フェージングや、狭帯域の干渉波が複数ある場合など、干渉波に周波数依存性がある場合 は特に効果がある。Nを小さくするほど周波数依存性の影響を小さくすることができる。
【0022】
二つ目は、離散的に複数のヌルサブキャリアを挿入したOFDMシンボルの複素係数か ら、全てのOFDMシンボルに対して補間したシンボル毎の複素係数を用いる例である。
【0023】
M+1シンボルのOFDMシンボルあたりに1本の干渉波抑圧用SCを挿入する。他の MシンボルのサブキャリアはデータSC、または、データ復調用パイロットSCである。 干渉波抑圧用パイロットSCを用いて、Mシンボルのサブキャリアに対する干渉波抑圧用 複素係数(Ai(t))を補間する。補間方法は、直前の干渉波抑圧用パイロットSCをそ のまま用いる0次外挿補間や、補間対象OFDMシンボルを挟む2本の干渉波抑圧用パイ ロットSCの一次内挿補間、最小二乗法をはじめとする、さまざまな公知の補間方法を用 いればよい。また、M=0、すなわち、あるサブキャリアを干渉波抑圧用パイロットSC 専用に用いてもよい。その際、雑音や誤差の影響を小さくするために、当該シンボルの前 または後の時間の同一サブキャリアの値に重みづけして平均化しても良い。本実施形態は フェージングやシャドウイングなどの、干渉波に時間変動がある場合は特に効果がある。 Mを小さくするほど高速な時間変動の影響を小さくすることができる。
【0024】
三つ目は、周波数領域と時間領域の両方を補間する例である。補間の順序はどちらから でもよい。
図4、5に周波数領域と時間領域の両方を補間する場合の例を示す。横軸はO FDMシンボル単位の時間軸であり、縦軸はサブキャリア単位の周波数軸である。
【0025】
同一システムのマルチユーザ干渉については、一般的に時間および周波数のリソース割 り当てが行われるため本実施形態の効果は低い。しかしながら、セル間干渉については一 定の効果がある。このとき、
図5に示した例を用いて、隣接セルでのヌルサブキャリアの 配置を、周波数方向でシフトする方法や時間方向でシフトして、干渉波抑圧用パイロット SCが重ならないように、言い換えると、あるセルの干渉波抑圧用パイロットSCの周波 数に隣接セルの信号が存在するように割り当てる。
【0026】
また、干渉波抑圧用パイロットSCは規則正しく配置される必要はない。伝送路状況に 応じて干渉波抑圧用パイロットSCを増やしたり減らしたりしても良い。送信側と受信側 で干渉波抑圧用パイロットSCの配置がお互いに分かっていればよい。
【0027】
<第二実施形態>
図6にTDDの無線フレームおよびOFDMのサブキャリア配置の例を示す。TDDシ ステムは下りリンク(Downlink)と上りリンク(Uplink)を時間で分割する時間分割複信 (TDD:Time Division Duplex)であり、DownlinkとUplinkの間にガードタイムを設 けることが一般的である。無送信区間の信号を第一実施形態のヌルサブキャリアとすると 、送信信号にヌルサブキャリアが挿入されており、第一実施形態と同様に干渉波を抑圧す ることができる。受信側では、無送信区間としてこのガードタイムに仮想のOFDMシン ボルを見立て、OFDM復調して干渉波抑圧用パイロットSCとして用いる。Downlinkと Uplink共に受信フレームの直前の値を用いて0次外挿してもよいし、受信フレームの直前 と直後の値を用いて内挿補間してもよい。また、無送信区間として、OFDM方式で通常 用いられるガードタイムを用いても良いし、干渉パイロット専用のOFDMシンボルを設 けても良い。
【0028】
第二実施形態に係る無線通信システムは、送信信号を送信する送信機と、第一アンテナ および第二アンテナで受信する受信機と、を備える。
受信機は、(a)無送信区間の信号を、第一アンテナの受信信号をOFDM復調した第 一受信ベクトル(R
1k)に複素係数(A
k)を乗算した結果が、第二アンテナの受信信 号をOFDM復調した第二受信ベクトル(R
2k)の同一振幅かつ逆位相となる、複素係 数(A
k)をサブキャリア毎に算出し、(b)サブキャリア毎に算出した複素係数(A
k
)を全てのOFDMシンボルに対して補間し、(c)全てのOFDMシンボルの全てのサ ブキャリアの第三受信ベクトル(R
1i)に補間した複素係数(A
k)を乗算して第四受 信ベクトル(R
1’i)を算出し、(d)第四受信ベクトル(R
1’i)と第五受信ベク トル(R
2i)を加算して第六受信ベクトル(D
i)を算出する。
【0029】
ここで、受信機は第一アンテナで受信する第一受信機と第二アンテナで受信する第二受 信機で構成してもよい。
【0030】
次に、第一実施形態または第二実施形態に用いる干渉抑圧回路および復調回路について 説明する。
【実施例1】
【0031】
図7に第一実施例に係る干渉抑圧回路および復調回路のブロック図を示す。第一アンテ ナ11および第二アンテナ12で受信された受信信号はそれぞれ、サンプリングレート変 換部(DFIL)101でOFDMを復調するためにダウンサンプリングされる。サンプ リングレート変換部101の入力信号は、無線周波数からベースバンド信号に周波数変換 され、OFDMを復調するためのサンプリングレートよりもオーバーサンプリングされて いる信号である。サンプリングレート変換部101はデシメーションフィルタなどで構成 される。
【0032】
サンプリングレート変換部101の出力信号は、ガードインターバル除去部(GI除去 部)102で送信信号に付加されたガードインターバルが適切に除去され、フーリエ変換 部(FFT)103で周波数領域の信号に変換される。ガードインターバル除去部102 およびフーリエ変換部103は一般的なOFDM復調器などで用いられるものであり、フ ーリエ変換部103には高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)などが用 いられる。
【0033】
フーリエ変換部103の出力信号はアンテナウェイト制御部104へ入力される。干渉 パイロット抽出部105では、
図4〜6の例のように干渉抑圧用のヌルSCのデータを抽 出する。アンテナウェイト計算部106では、抽出したヌルSCのデータから、例えば式 (1)によってアンテナウェイト(複素係数)を計算する。
図4〜6の例のように、ヌル SCは時間領域あるいは周波数領域またはその両方に対して離散的に配置されているため 、アンテナウェイト補間部107は時間領域および周波数領域に対して補間を行い、シン ボル毎(時間領域)およびサブキャリア毎(周波数領域)のアンテナウェイトを計算する 。補間方法は、直近の干渉波抑圧用パイロットSCをそのまま用いる0次外挿補間や、補 間対象サブキャリアを挟む2本の干渉波抑圧用パイロットSCの一次内挿補間、最小二乗 法をはじめとする、さまざまな公知の補間方法を用いればよい。
【0034】
干渉抑圧部108では計算したアンテナウェイトを用いて干渉信号を抑圧する。アンテ ナウェイト補間部107で計算したアンテナウェイトはフーリエ変換部103の出力信号 に対してサブキャリア毎に複素乗算器109で乗算される。複素乗算器109の出力信号 は第二アンテナ12の周波数信号に対して、干渉成分が同一振幅および逆位相となるため 、加算器110で加算した信号は干渉が抑圧された信号となる。干渉抑圧された信号は希 望波成分が多い信号、すなわち、SIR(Signal to Interference Ratio)が高い信号と なって、一般的なOFDM復調処理が行われる。
【0035】
チャネル推定部(Channel estimation)111ではOFDM所望波の伝送路の推定を行 い、復調部(Demod.)112で検波などのOFDM復調が行われる。差動変調−遅延検波 などの場合はチャネル推定部111の省略が可能である。
【0036】
また、
図7ではアンテナウェイトを第一アンテナ11の信号のみに適用する例を示した が下記の式(2)のように計算し、第一アンテナ11および第二アンテナ12にウェイト を適用してもよい。 R
1k=a
1k・exp{-jθ
1k} R
2k=a
2k・exp{-jθ
2k} A
1=−a
2k・exp{-j(θ
2k)} A
2=a
1k・exp{-j(θ
1k)} (2)
この場合、複素乗算器109は第二アンテナ12の信号に対しても必要となる。すなわ ち、
図7は式(2)を用いて第二アンテナ12の信号のアンテナウェイトを1.0とした 例である。
【0037】
第一実施例に係る受信機は、OFDM信号を復調するためにガードインターバル区間の 信号を取り除くガードインターバル除去部102と、ガードインターバルを除去した受信 信号を周波数領域の信号に変換するフーリエ変換部103と、フーリエ変換した信号から 複素係数を制御するアンテナウェイト制御部104と、フーリエ変換した受信信号に複素 係数を適用して受信信号に含む干渉波信号成分を抑圧する干渉抑圧部108と、OFDM 復調部112と、を備える。
アンテナウェイト制御部104は、フーリエ変換した受信信号から干渉抑圧用のパイロ ット信号を抽出する干渉パイロット抽出部105と、抽出した干渉パイロットから複素係 数を計算するアンテナウェイト計算部106と、計算した複素係数から全てのサブキャリ アの複素係数を計算するアンテナウェイト補間部107とを備える。
干渉抑圧部108は、フーリエ変換した受信信号にアンテナウェイト制御部104で計 算した複素係数を乗算する複素乗算器109と、複素係数を乗算された二つの受信信号を 加算する加算器110と、を備える。
【実施例2】
【0038】
図8に第二実施例に係る干渉抑圧回路および復調回路のブロック図を示す。実施例1と 同様の構成要素には同じ符号を付している。第一アンテナ11および第二アンテナ12の サンプリングレート変換部101の出力信号は、フーリエ変換部103で周波数領域の信 号に変換され、アンテナウェイト制御部104へ入力され、サブキャリア毎(周波数領域 )のアンテナウェイトが計算される。サブキャリア毎(周波数領域)のアンテナウェイト は逆フーリエ変換部114で逆フーリエ変換され、時間領域での畳み込み係数となる。畳 み込み係数は干渉抑圧部108のFIR(Finite Impulse Response)フィルタ(トラン スバーサルフィルタ)113の係数として設定される。
【0039】
サンプリングレート変換部101の出力信号は、干渉抑圧部108に入力され、計算し たアンテナウェイトを用いて干渉信号を抑圧する。FIRフィルタ113でアンテナウェ イトを畳み込み演算された第一アンテナ11と第二アンテナ12の信号は、干渉成分が同 一振幅および逆位相の関係になるため、加算器110で加算した信号は干渉が抑圧された 信号となる。
【0040】
干渉抑圧された信号は希望波成分が多い信号、すなわち、SIRが高い信号となって、 一般的なOFDM復調処理が行われる。ガードインターバル除去部102で送信信号に付 加されたガードインターバルが適切に除去され、チャネル推定部111ではOFDM所望 波の伝送路の推定を行い、復調部112で検波などのOFDM復調が行われる。差動変調 −遅延検波などの場合はチャネル推定部111の省略が可能である。
【0041】
また、
図8ではアンテナウェイトを第一アンテナ11および第二アンテナ12の信号に 適用する式(2)でアンテナウェイトを計算する例を示したが、式(1)のように計算し 、第一アンテナ11のみにウェイトを適用してもよい。この場合、いずれか一方のFIR フィルタ113は不要となる。
【0042】
第二実施例に係る受信機は、受信信号を周波数領域の信号に変換するフーリエ変換部1 03と、所望波が無送信区間のフーリエ変換した信号から複素係数を制御するアンテナウ ェイト制御部104と、周波数領域の複素係数を時間領域の畳み込み複素係数に変換する 逆フーリエ変換部114と、受信信号に時間領域の畳み込み複素係数を適用して受信信号 に含む干渉波信号成分を抑圧する干渉抑圧部108と、OFDM信号を復調するためにガ ードインターバル区間の信号を取り除くガードインターバル除去部102と、ガードイン ターバルを除去した受信信号を周波数領域の信号に変換するフーリエ変換部103と、O FDM復調部112を備える。
干渉抑圧部108は、受信信号と時間領域の畳み込み複素係数を畳み込むFIRフィル タ113と、複素係数を畳み込まれた二つの受信信号を加算する加算器110と、を備え る。
【実施例3】
【0043】
図9に第三実施例に係る干渉抑圧回路および復調回路のブロック図を示す。実施例1、 2と同様の構成要素には同じ符号を付している。
図6(第二実施形態)のようなガードタ イムの信号を用いる場合に適用できる。アンテナウェイト制御部104は干渉波のみ存在 し、所望信号がない時間の第一アンテナ11および第二アンテナ12の受信信号を、同一 時刻に、それぞれFIRのタップ数分サンプリングし、加工せずにFIRのフィルタ係数 として用いる。このとき、第一アンテナ11の受信信号を第二アンテナ12のFIRフィ ルタ113の係数にし、第二アンテナ12の受信信号を第一アンテナ11のFIRフィル タ113の係数にし、いずれかのフィルタ係数の符号を反転する、すなわち−1を乗じる 。これは位相を180°回転することを意味する。FIRフィルタ113でアンテナウェ イトを畳み込み演算された第一アンテナ11と第二アンテナ12の信号は、干渉成分が同 一振幅および逆位相の関係になるため、加算器110で加算した信号は干渉が抑圧された 信号となる。以降のOFDM信号の復調は干渉抑圧回路および復調回路の第二実施例と同 様である。全帯域の干渉波のみ存在する信号を使用すれば、干渉パイロット抽出部105 とアンテナウェイト補間部107が不要となり、式(2)の計算によれば符号を反転させ るだけでよい。その結果、フーリエ変換部103および逆フーリエ変換部114が不要と なり、簡単な回路構成にすることができる。
【0044】
第三実施例に係る受信機は、所望波が無送信区間の第一アンテナ11および第二アンテ ナ12の受信信号をサンプリングし、所望波が無送信区間の第二アンテナ12のサンプリ ングした信号を第一アンテナ11の時間領域の畳み込み複素係数とし、所望波が無送信区 間の第一アンテナ11のサンプリングした信号を第二アンテナ12の時間領域の畳み込み 複素係数とするアンテナウェイト制御部104と、受信信号と時間領域の畳み込み複素係 数を畳み込むFIRフィルタ113と、複素係数を畳み込まれた二つの受信信号を加算す る加算器110と、OFDM信号を復調するためにガードインターバル区間の信号を取り 除くガードインターバル除去部102と、ガードインターバルを除去した受信信号を周波 数領域の信号に変換するフーリエ変換部103と、OFDM復調部112と、を備える。
【実施例4】
【0045】
次に、干渉抑圧回路および復調回路にデータ選択回路を用いた例について説明する。
図10に第四実施例に係る干渉抑圧回路および復調回路のブロック図を示す。第一アン テナ11および第二アンテナ12の受信信号はサンプリングレート変換部101に入力さ れる。入力信号はOFDMを復調するためのサンプリングレートよりもオーバーサンプリ ングされているベースバンド信号である。サンプリングレート変換部101はデシメーシ ョンフィルタなどで構成される。
【0046】
サンプリングレート変換部101の出力信号は、復調部201に入力される。復調部2 01は4種類の方法の復調機能部を有する。干渉抑圧復調回路202、最大比合成復調回 路203、第一アンテナ11の信号を用いる第一選択合成復調回路204、第二アンテナ 12の信号を用いる第二選択合成復調回路205である。それぞれの復調機能部が同時に 並列処理してOFDM復調を行う。干渉抑圧復調回路202は第一実施例、第二実施例ま たは第三実施例の干渉抑圧回路および復調回路などである。最大比合成復調回路203は 複数のアンテナを備えるシステムのアンテナダイバーシティで用いる公知の技術である最 大比合成を行いOFDM復調する。第一選択合成復調回路204、第二選択合成復調回路 205はそれぞれ一つの受信信号を用いてOFDM復調を行う。
【0047】
第一アンテナ11および第二アンテナ12の受信信号は、また、干渉検出部206に入 力される。干渉検出部206では受信信号のフーリエ変換を行い、帯域ごとのSIRを測 定する機能を持つ。データ選択部207では
図11に示すように、測定したSIRに基づ いて、復調部201の干渉抑圧復調回路202、最大比合成復調回路203、第一選択合 成復調回路204、第二選択合成復調回路205の復調データのいずれかを選択する。す なわち、第一アンテナ11および第二アンテナ12のSINR(Signal to Interference and Noise Ratio)が大きい場合は最大比合成復調回路203の復調データを選択する。 第一アンテナ11と第二アンテナ12のいずれか一方のSINRが大、かつ、他方のSI NRが小の場合は、SINRが大の方の選択合成(第一選択合成復調回路204または第 二選択合成復調回路205の復調データを選択する。第一アンテナ11および第二アンテ ナ12のSINRが小さい場合は干渉抑圧復調回路202の復調データを選択する。SI NRの大小の判定には閾値を設ける。閾値は、例えば、直交振幅変調を復調する際の所要 SINRとして決定する、または実験的に求めるなどの他の方法でも良い。
【0048】
ここで、干渉検出部206について述べる。好ましい形態としては、
図12に示すよう に、OFDMのサブキャリアをいくつかのセグメント(Seg1、Seg2、Seg3、Seg4、Seg5) に分割し、それぞれのSINRを測定して、データ選択部207はセグメント毎に復調デ ータを選択する。
【0049】
図13は第一例の干渉検出部を説明する図であり、
図4、5のヌルサブキャリアを用い る場合の例である。第一アンテナ(ANTENNA_1)11および第二アンテナ(AN TENNA_2)12のそれぞれが受信した信号電力および干渉電力を測定する。信号電 力はP
S1〜P
S5のように各セグメントのデータおよび復調用パイロットサブキャリア の平均電力を測定する。干渉電力はヌルサブキャリアを割り当てたサブキャリアの電力P
I1〜P
I6を測定する。本例での干渉電力は各セグメントの両端の干渉電力のうち大き い方を用いてSINRを計算する。セグメント3(Seg3)のような部分的に干渉波がある 場合にSINR大としないためである。データ選択部207は、セグメント1〜3(Seg1 、Seg2、Seg3)については干渉抑圧復調回路202の復調データを選択し、セグメント4 〜5(Seg4、Seg5)については第一選択合成復調回路204の復調データを選択する。
【0050】
図14は第二例の干渉検出部を説明する図であり、
図6のようなガードタイムの信号を 用いる場合の例である。第一アンテナ(ANTENNA_1)11および第二アンテナ( ANTENNA_2)12のそれぞれが受信した信号電力および干渉電力を測定する。ま ず、干渉波のみ存在する時間に各サブキャリアの電力を測定し、セグメント毎の最大値を 干渉電力P
I1〜P
I6とする(部分的に干渉波がある場合にSINR大としないため) 。次に、信号電力は、所望波も存在する時間に、P
S1〜P
S5のように各セグメントの データおよび復調用パイロットサブキャリアの平均電力を測定する。データ選択部207 は、セグメント1〜2(Seg1、Seg2)については干渉抑圧復調回路202の復調データを 選択し、セグメント3(Seg3)については最大比合成復調回路203の復調データを選択 し、セグメント4〜5(Seg4、Seg5)については第二選択合成復調回路205の復調デー タを選択する。
【0051】
第四実施例に係る受信機は、それぞれのアンテナの受信信号毎、および、周波数領域で 分割したセグメント毎に、OFDM信号復調に必要な信号対干渉電力比を満たさない干渉 波を検出する干渉検出部206と、干渉抑圧復調回路202と最大比合成復調回路203 と第一選択合成復調回路204と第二選択合成復調回路205とを備える復調部201と 、干渉検出結果に応じて、周波数セグメント毎に複数の復調回路の出力から復調データを 選択するデータ選択部207と、を備える。
【0052】
干渉抑圧復調回路202は第一実施例、第二実施例および第三実施例のいずれかを用い る。
【0053】
図15に第四実施例の干渉抑圧およびデータ選択の効果を説明する図を示す。SIRを 指標としたBER(Bit Error Rate)特性をシミュレーションにより取得している。所望 波と干渉波は異なる伝搬路となるため、独立したマルチパスレイリーフェージング環境と している。SNR(Signal to Noise Ratio)は40dBとしている。OFDM信号は図 4を用いた。
図15の「A」は第一アンテナ11の受信信号のみを用い、「B」は第一ア ンテナ11および第二アンテナ12の最大比合成を行っている。「C」は常に干渉抑圧を 行う。「D」は
図10(第四実施例)のデータ選択回路の閾値を15dBとしてデータ選 択を行っている。干渉抑圧を用いるとSIRが小さい場合は改善効果が大きく、例えばB ER=10
−2ではSIRを約20dB改善していることが分かる。「C」ではSIRが 10dB以上になると所望信号電力が大きいにも関わらずBERが劣化していることが分 かる。
【0054】
図16に干渉波が存在しない場合のBER特性を示す。所望波の伝搬路はフェージング なしとし、AWGN(Additive White Gaussian Noise)のみの条件としている。横軸は SNRである。
図16の「E」はAWGNのみの干渉抑圧あり、「F」は
図15の「A」 に対応し、「G」は
図16の「B」に対応する。「F」や「G」と異なり、「E」はSN Rが−10dB以上で劣化していることが分かる。その理由は第一アンテナ11と第二ア ンテナ12で干渉波は相関があるので抑圧できるのに対し、熱雑音(Noise)は無相関で あり抑圧できないにも関わらず抑圧処理を行って、OFDM復調時のSNRを劣化させて しまうためである。この問題を回避するために、第四実施例のデータ選択部207は環境 に応じて復調データを選択するため、BER特性が最も良好であることが分かる。また、 OFDM信号の帯域に部分的に干渉する場合においても効果がある。
【0055】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態および実施例に基づき具体的に説明し たが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではなく、種々変更可能で あることはいうまでもない。