【実施例】
【0039】
以下、実施例などを用いて本発明を更に詳細に説明するが、本実施形態はこれらの例によって何ら限定されるものではない。なお、実施例中の部数は特に断らない限り質量部である。
【0040】
また、以下の実施例及び比較例において、ポリカーボネートジオール及びポリウレタンフィルムの諸物性は、下記の試験方法に従って試験を実施した。
【0041】
<試験方法>
【0042】
[1.OH価]
無水酢酸12.5gをピリジン50mlでメスアップしアセチル化試薬を調整した。100mlナスフラスコに、サンプルを2.5〜5.0g精秤した。アセチル化試薬5mlとトルエン10mlをホールピペットで添加後、冷却管を取り付けて、100℃で1時間撹拌加熱した。蒸留水2.5mLをホールピペットで添加し、更に10分加熱撹拌した。2〜3分冷却後、エタノールを12.5mL添加し、指示薬としてフェノールフタレインを2〜3滴添加した後に、0.5mol/Lエタノール性水酸化カリウムで滴定した。アセチル化試薬5mL、トルエン10mL、及び蒸留水2.5mLを100mLナスフラスコに入れ、10分間加熱撹拌した後、同様に滴定を行った(空試験)。これらの結果をもとに、下記式(2)で表される式により、OH価を求めた。
【0043】
OH価(mg−KOH/g)={(b−a)×28.05×f}/e (2)
a:サンプルの滴定量(mL)
b:空試験の滴定量(mL)
e:サンプル質量(g)
f:滴定液のファクター
【0044】
[2.数平均分子量]
各実施例及び比較例で得られたポリカーボネートジオール組成物におけるポリカーボネートジオールの末端は、
13C−NMR(270MHz)の測定により、実質的に全てがヒドロキシル基であった。更に各ポリマー中の酸価をKOHによる滴定により測定したところ、酸化は、0.01以下であった。次に、下記式(3)で表される式により各ポリマーの数平均分子量を求めた。
数平均分子量=2/(OH価×10
−3/56.11) (3)
【0045】
[3.共重合モル比]
各実施例及び比較例で得られたポリカーボネートジオール組成物におけるポリカーボネートジオールの共重合モル比を以下のようにして求めた。100mlのナスフラスコに各実施例及び比較例で得られたポリカーボネートジオール(サンプル)1g、エタノール30g、水酸化カリウム4gを添加して、100℃で1時間反応した。室温まで冷却後、指示薬にフェノールフタレインを2〜3滴添加し、塩酸で中和した。冷蔵庫で1時間冷却後、沈殿した塩を濾過で除去し、ガスクロマトグラフィーにより分析を行った。この分析は、カラムとしてDB−WAX(J&W会社製品)をつけたガスクロマトグラフィーGC−14B(島津製作所株式会社製品)を用いて、ジエチレングリコールジエチルエステルを内標とし、検出器をFIDとして行った。なお、カラムの昇温プロファイルは、60℃で5分保持した後、10℃/minで250℃まで昇温した。得られた面積値から、1,3−プロパンジオール及び式(D):HO−R
1−OH(式中、R
1は、炭素数4〜20の二価の炭化水素基を表す。)で表されるジオール化合物(以下、「ジオール化合物(D)」ともいう。)の合計に対する1,3−プロパンジオールのモル比Aと、1,3−プロパンジオール及びジオール化合物(D)の合計に対するジオール化合物のモル比Bを求めた。モル比Aを、繰り返し単位(A)に対する繰り返し単位(B)の共重合モル比とし、モル比Bを、繰り返し単位(A)に対する下記式(E)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(E)」ともいう。)の共重合モル比とした。
【0046】
【化10】
(式(E)中、R
1は式(D)中のR
1と同じ。)
【0047】
[4.繰り返し単位(B)の含有量(割合)]
上記の方法により得られた繰り返し単位(B)の共重合モル比及び繰り返し単位(E)の共重合モル比を用いて、下記式(4)で表される式により、繰り返し単位(B)の含有量(割合)を求めた。
単位(B)の割合=X÷(X+Y)×100 (4)
X:繰り返し単位(B)の共重合モル比×繰り返し単位(B)の分子量
Y:繰り返し単位(E)の共重合モル比×繰り返し単位(E)の分子量の合計
【0048】
[5.1,3−ジオキサン−2−オンの含有量]
BrukerBiospin社製 Avance600(商品名)を用いて、
1H−NMRの測定により、繰り返し単位(A)に対する1,3−ジオキサン−2−オンの含有量(モル比)を求めた。具体的な測定条件は以下の通りである。
【0049】
(測定条件)
1H−NMR装置:AVANCE600(ブルカーバイオスピン社製)
観測核(周波数):
1H(600MHz)
濃度:3%CDCl
3
シフト基準:TMS(0ppm)
積算回数:512回
【0050】
なお、上記測定においては、以下のシグナルの積分値を、測定している水素の数で除し、その値から各モル比率を求めた。
1,3−ジオキサン−2−オン:4.45ppm付近の積分値÷4
【0051】
また、繰り返し単位(A)については、以下I〜IVの合計値とした。
【0052】
I:1,3−プロパンジオール由来の繰り返し単位(B)成分:2.05ppm付近(下記式G中のaのピーク)の積分値÷2
【化11】
II:2−メチル−1,3−プロパンジオール由来の繰り返し単位成分:2.22ppm付近(下記式H中のbのピーク)の積分値÷1
【化12】
III:その他のジオール由来の繰り返し単位成分:4.15ppm付近(下記式I中のcのピーク)の積分値÷4
【化13】
(I)
(式(I)中、R
2は、メチレン基、メチルメチレン基を除く炭素数2〜18の二価の炭化水素を表す)
IV:末端ジオール:3.60〜3.75ppm付近(OHに隣接するメチレン基のピーク)の積分値÷2
【0053】
[6.1級末端OH比率]
各実施例及び比較例で得られたポリカーボネートジオール組成物におけるポリカーボネートジオールの1級末端OH比率は、各実施例及び比較例で得られたポリカーボネートジオール(10g〜40g)を0.4kPa以下の圧力下、攪拌しながら160℃〜200℃の温度で加熱することにより、ポリカーボネートジオールの0.5〜2質量%に相当する量の留分を得て、これを10〜40gのアセトンを溶剤として用いて回収し、回収した溶液をガスクロマトグラフィー(GC)分析にかけて得られるクロマトグラムのピーク面積の値から、下記式(1)により計算した。
【0054】
1級末端OH比率(%)=B÷A×100 (1)
A:ジオールを含むアルコール類のピーク面積の総和
B:両末端が1級OH基であるジオールのピーク面積の総和
【0055】
[7.溶剤との相溶性]
20gのサンプル瓶に3gの各実施例及び比較例で得られたポリカーボネートジオールと7gの酢酸ブチルとを添加し、固形分30%の溶液とした際の外観を観察し、下記の評価基準に従い、相溶性の評価を行った。
【0056】
◎:すみやかに相溶し無色透明であった
○:加熱撹拌することで速やかに相溶した
×:相溶性が悪く溶液が白濁または分離した
【0057】
[8.耐日焼け止め性]
後述する方法により得られた0.04〜0.06mmの厚さを有するポリウレタンフィルムを形成し、このフィルムに日焼け止め(Neutrogena Ultra Sheer Dry−Touch Sunscreen Broad Spectrum SPF 30)を4平方センチメートルあたり2g乗せて80℃にて4時間加熱した。その後、中性石鹸で日焼け止めを洗い流した時の外観変化を観察し、下記の評価基準に従い、耐日焼け止め性の評価を行った。
【0058】
◎:塗膜外観がほとんど変化しなかった
○:塗膜外観に少し変化が見られた
△:塗膜外観が変化するが実用性に問題なかった
×:塗膜が破壊され実用性に堪えなかった
【0059】
[9.耐擦り傷性]
後述する方法により得られた0.04〜0.06mmの厚さを有するポリウレタンフィルムに、750gの荷重をかけたまま真鍮ブラシで200回こすった際の外観変化を観察し、下記評価基準に従い、耐擦り傷性を評価した。
【0060】
◎:塗膜外観がほとんど変化しなかった
○:塗膜に目を凝らせば擦り傷が見られた
△:塗膜外観が変化するが実用性に問題なかった
×:塗膜が傷つき実用性に堪えなかった
【0061】
[10.傷回復性]
ガラス板上に厚さ0.04〜0.06mmのポリウレタンフィルムを形成し光沢度を測定した。750gの荷重をかけたまま真鍮ブラシで500回こすった後、1週間23℃湿度50%で静置した後に光沢度を測定し、下記の評価基準に従い、傷回復性の評価を行った。
【0062】
◎:評価前の光沢度の90%以上まで回復
○:評価前の光沢度の80%以上まで回復
△:評価前の光沢度の70%以上まで回復
×:評価前の光沢度の70%に満たない
【0063】
(実施例1)
攪拌機、温度計、頭頂に還流ヘッドを有する真空ジャケット付きオルダーショウを備えた1Lセパラブルフラスコに、1,3−プロパンジオール371g、1,6−ヘキサンジオール1g、及びエチレンカーボネート430gを仕込み、触媒としてテトラブドキシチタンを0.08g入れた。190℃に設定したオイルバスで加熱し、フラスコの内温160〜170℃、真空度13〜5kPaで、還流ヘッドから留分の一部を抜きながら、12hr反応した。その後、180℃に設定したオイルバスで加熱し、フラスコの内温を155〜175℃とし、真空度を0.5kPaまで低くして、セパラブルフラスコ内に残留した1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、及びエチレンカーボネートを除去した。この反応により、常温で粘稠な液体の形態を有するポリカーボネートジオール組成物が得られた。
【0064】
(実施例2−12、14−17)
表1に記載の原料の種類及び仕込み量を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、常温で粘稠な液体の形態を有するポリカーボネートジオール組成物が得られた。
【0065】
(実施例13)
攪拌機と、温度計と、頭頂に還流ヘッドを有する真空ジャケット付きオルダーショウとを備えた1Lセパラブルフラスコ(フラスコ)に、1,3−プロパンジオール346g、1,6−ヘキサンジオール40g、及びジメチルカーボネート507gを仕込んだ。窒素雰囲気化において、フラスコの内温を180℃まで昇温してメタノールを流出させ、メタノールの流出がほぼなくなるまで反応させた。この後、徐々に100mmHgまで減圧し、攪拌下、メタノール及びジメチルカーボネートの混合物を留去しながら、200℃でエステル交換反応を行った。この反応により、常温で粘稠な液体の形態を有するポリカーボネートジオール組成物が得られた。
【0066】
(比較例1)
攪拌機と、温度計と、頭頂に還流ヘッドを有する真空ジャッケト付きオルダーショウとを備えた1Lセパラブルフラスコ(フラスコ)に、1,3−プロパンジオール371g、及びエチレンカーボネート430gを仕込み、触媒としてテトラブドキシチタンを0.08g仕込んだ。190℃に設定したオイルバスで加熱し、フラスコの内温160〜170℃、真空度13〜5kPaで、還流ヘッドから留分の一部を抜きながら、12時間反応した。その後、180℃に設定したオイルバスで加熱し、フラスコの内温を155〜175℃とし、真空度を0.5kPaまで低くして、セパラブルフラスコ内に残留した1,3−プロパンジオール及びエチレンカーボネートを除去した。この反応により、常温で粘稠な液体の形態を有するポリカーボネートジオール組成物が得られた。
【0067】
(比較例2)
攪拌機、分溜管、温度計、窒素吹込み管及びマンホールを備えた反応容器を窒素ガスで置換した後、植物由来の1,3−プロパンジオール425部、1,4−ブタンジオール25部、1,5−ペンタンジオール25部、1,6−ヘキサンジオール25部、ジメチルカーボネート569部、及びテトラブトキシチタン0.1部を仕込み、窒素雰囲気化において、180℃まで昇温してメタノールを流出させ、メタノールの流出がほぼなくなるまで反応させた。この後、発生したメタノール及び過剰のジメチルカーボネートを減圧して除去した。この反応により、常温で粘稠な液体の形態を有するポリカーボネートジオール組成物が得られた。
【0068】
(比較例3〜7)
表1に記載の原料の種類及び仕込み量を変更したこと以外は、比較例1と同様にして、常温で粘稠な液体の形態を有するポリカーボネートジオール組成物を得た。
【0069】
(比較例8)
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた2Lのガラス製フラスコに1,3−プロパンジオール(1,3−PDO)760.9g(10mol)、1,4−シクロヘキサンジオール10.5g(0.09mol)、ジメチルカーボネート1053.9g(11.7mol)を仕込み、70℃で撹拌溶解したあと、触媒としてチタンテトラブトキシド0.10gを仕込んだ。常圧下140〜150℃の温度で加熱・撹拌し、生成するメタノールとジメチルカーボネートの混合物を留去しながら、7時間反応させた。その後、反応温度を150℃〜190℃、圧力を10〜15kPaとして、生成するメタノールとジメチルカーボネートとの混合物を留去しながら3時間反応を行った。その後、0.5kPaまで徐々に減圧しながら、190℃で3時間反応させた。この反応により常温で粘調な液体の形態を有するポリカーボネートジオール組成物が得られた。
【0070】
[ポリイソシアネートの製造]
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、ヘキサメチレンジイソシアネート600gを仕込み、撹拌下反応器内温度を70℃に保持した。イソシアヌレート化触媒テトラメチルアンモニウムカプリエートを加え、収率が24質量%になった時点でリン酸を添加し反応を停止した。反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のヘキサメチレンジイソシアネートを除去して製造例のポリイソシアネートを得た。得られたポリイソシアネートの25℃における粘度は1,600mPa・s、イソシアネート基濃度は23.0質量%、数平均分子量は660、残留HDI濃度は0.2質量%であった。
【0071】
[ポリウレタンフィルムの調製]
ガラス製のサンプル瓶に、各実施例及び比較例で得たポリカーボネートジオール15g、上記の方法により製造したポリイソシアネート3g、酢酸ブチル18gを加えシェイカーにてよく振り混ぜた。溶液が均一になったのを確認し、1質量%のジブチルスズジラウレートを0.2g添加し良く振り混ぜた。得られた溶液をガラス板上またはABS板上に流延し、室温で5分間放置して溶剤をとばした後、80℃の乾燥機に1時間入れて乾燥させてポリウレタンフィルムを得た。得られたポリウレタンフィルムを気温23℃湿度50%の環境で一週間養生し評価に使用した。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
各実施例及び比較例のポリカーボネートのOH価、単位(B)の割合(質量%)、1,3−ジオキサン−2−オンの含有量、末端OH基純度、及び各種物性の評価結果を表1及び表2に示す。
【0075】
表1及び表2中、「1,3−PRL」は、1,3−プロパンジオールを表し、「2−MPD」は、2−メチル−1,3−プロパンジオールを表し、「1,4−BDL」は、1,4−ブタンジオールを表し、「1,5−PDL」は、1,5−ペンタンジオールを表し、「3−MPD」は、3−メチル−1,5−ペンタンジオールを表し、「1,6−HDL」は、1,6−ヘキサンジオールを表し、「1,10−DDL」は、1,10−デカンジオールを表し、「1,12−DDDL」は、1,12−ドデンカンジオールを表し、「1,20−IDL」は、1,20−イコサンジオールを表し、「1,4−CHDL」は、1,4−シクロヘキサンジオールを表し、「EC」は、エチレンカーボネートを表し、「DMC」は、ジメチルカーボネートを表す。
【0076】
本実施形態のポリカーボネートジオールは、溶剤との相溶性に優れており、本実施形態のポリカーボネートジオールを用いて製造されたポリウレタンは、優れた耐日焼け止め性、耐擦り傷性、及び傷回復性を有していることがわかった。
【0077】
本出願は、2017年4月14日出願の日本特許出願(特願2017−080791)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。