特許第6591725号(P6591725)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6591725ポリオレフィン樹脂発泡体、ポリオレフィン樹脂発泡体の製造方法、及び成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6591725
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】ポリオレフィン樹脂発泡体、ポリオレフィン樹脂発泡体の製造方法、及び成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/06 20060101AFI20191007BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20191007BHJP
   B29C 44/34 20060101ALI20191007BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20191007BHJP
   B29K 23/00 20060101ALN20191007BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20191007BHJP
   B29L 31/58 20060101ALN20191007BHJP
【FI】
   C08J9/06CES
   B29C44/00 F
   B29C44/34
   B60R13/02 Z
   B29K23:00
   B29L9:00
   B29L31:58
【請求項の数】16
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-522349(P2019-522349)
(86)(22)【出願日】2019年3月29日
(86)【国際出願番号】JP2019014205
【審査請求日】2019年7月30日
(31)【優先権主張番号】特願2018-70169(P2018-70169)
(32)【優先日】2018年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2018-180757(P2018-180757)
(32)【優先日】2018年9月26日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】金澤 太
(72)【発明者】
【氏名】宇野 拓明
(72)【発明者】
【氏名】高杉 基
(72)【発明者】
【氏名】杉江 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】三上 洋輝
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−215329(JP,A)
【文献】 特開昭59−062643(JP,A)
【文献】 特開平05−214143(JP,A)
【文献】 特開2000−159950(JP,A)
【文献】 特開平10−310668(JP,A)
【文献】 特開2015−187232(JP,A)
【文献】 特開2004−149665(JP,A)
【文献】 特開平08−245820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00− 9/42
B29C 44/00−44/60;67/20
C08J 7/00−7/02;7/12−7/18
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
B60R 13/01−13/04,13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数6〜11のアルデヒド化合物の含有量が0.1ppm以下であり、
100mm×100mm×3.1±0.2mmの寸法の前記ポリオレフィン樹脂発泡体を2枚入れた10Lのサンプリングバックに5Lの窒素ガスを充填した後、前記サンプリングバックを80℃の加熱温度で2時間加熱することによって得られたアルデヒド化合物含有窒素ガス中のn−ノニルアルデヒドの濃度が0.07体積ppm以下である、ポリオレフィン樹脂発泡体。
【請求項2】
前記アルデヒド化合物含有窒素ガス中のn−オクチルアルデヒドの濃度が0.03体積ppm以下である、請求項1に記載のポリオレフィン樹脂発泡体。
【請求項3】
前記アルデヒド化合物含有窒素ガス中のn−ヘプチルアルデヒドの濃度が0.03体積ppm以下である、請求項1又は2に記載のポリオレフィン樹脂発泡体。
【請求項4】
前記アルデヒド化合物含有窒素ガス中のn−デシルアルデヒドの含有量が0.03体積ppm以下である、請求項1〜3のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂発泡体。
【請求項5】
ポリオレフィン樹脂を含む発泡性組成物を発泡してなる、請求項1〜4のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂発泡体。
【請求項6】
前記発泡性組成物が、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して酸化防止剤を1.0〜5.0質量部含む、請求項5に記載のポリオレフィン樹脂発泡体。
【請求項7】
前記発泡性組成物が、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して架橋助剤を2.0〜5.0質量部含む、請求項5又6に記載のポリオレフィン樹脂発泡体。
【請求項8】
前記発泡性組成物が、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して重金属不活性化剤を0.6〜10.0質量部含む、請求項5〜7のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂発泡体。
【請求項9】
炭素数6〜11のアルデヒド化合物の含有量が0.1ppm以下であり、
ポリオレフィン樹脂を含む発泡性組成物を発泡してなり、
前記発泡性組成物が、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して重金属不活性化剤を0.6〜10.0質量部含む、ポリオレフィン樹脂発泡体。
【請求項10】
前記発泡性組成物が、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して酸化防止剤を1.0〜5.0質量部含む、請求項9に記載のポリオレフィン樹脂発泡体。
【請求項11】
前記発泡性組成物が、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して架橋助剤を2.0〜5.0質量部含む、請求項9又10に記載のポリオレフィン樹脂発泡体。
【請求項12】
下記工程1〜工程3を含む、請求項1〜11のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂発泡体の製造方法。
(工程1)ポリオレフィン樹脂を含有する発泡性組成物をシート状に加工し、発泡性シートを製造する工程
(工程2)該発泡性シートに対して電離性放射線を照射し架橋発泡性シートを製造する工程
(工程3)架橋発泡性シートを発泡させて、ポリオレフィン樹脂発泡体を製造する工程
【請求項13】
前記工程3において、架橋発泡性シートを発泡させる際の温度が140〜280℃である、請求項12に記載のポリオレフィン樹脂発泡体の製造方法。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂発泡体を成形してなる成形体。
【請求項15】
ポリオレフィン樹脂発泡体に表皮材が積層された、請求項14に記載の成形体。
【請求項16】
自動車内装材である、請求項14又は15に記載の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン樹脂発泡体、ポリオレフィン樹脂発泡体の製造方法、及び成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン樹脂発泡体は、優れた耐熱性及び断熱性を有しているので、従来から、断熱材、クッション材等として広範な分野で使用されている。特に、自動車用途では、天井、ドア、インストルメントパネル、クーラーカバー等の断熱材及び内装材として使用されている。
ポリオレフィン樹脂発泡体は、ポリオレフィン樹脂及び発泡剤を含有する組成物を加熱して発泡させる方法により製造されることが多いが、ポリオレフィン樹脂の分解物に起因すると考えられる臭気が問題になることがある。例えば、ポリオレフィン樹脂発泡体の成形体を自動車内装材として組み込んだ自動車内において、臭気が発生し、ユーザーが不快に感じることが多い。
ポリオレフィン樹脂発泡体の臭気を抑制する技術として、例えば、活性炭素などの脱臭剤を用いる方法(特許文献1)、カーボンブラックなどを臭気抑制剤として用いる方法(特許文献2)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−60774
【特許文献2】特開平11−263863
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、ポリオレフィン樹脂発泡体の成形体からなる自動車内装材を備えた自動車内等において、特に夏場の暑い時期には、従来技術を用いても臭気を十分に抑制することができないという問題がある。
そこで、本発明は、臭気の発生を低減できるポリオレフィン樹脂発泡体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ポリオレフィン樹脂発泡体から発生する臭気、特に夏場の暑い時期に発生する臭気は、炭素数が6〜11のアルデヒド化合物に起因することを突き止めた。このような知見のもと、本発明者らは、ポリオレフィン樹脂発泡体中の炭素数が6〜11のアルデヒド化合物の含有量を一定以下にすることにより、臭気の発生を低減できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記[1]〜[14]に関する。
[1]炭素数6〜11のアルデヒド化合物の含有量が0.1ppm以下である、ポリオレフィン樹脂発泡体。
[2]100mm×100mm×3.1±0.2mmの寸法の前記ポリオレフィン樹脂発泡体を2枚入れた10Lのサンプリングバックに5Lの窒素ガスを充填した後、前記サンプリングバックを80℃の加熱温度で2時間加熱することによって得られたアルデヒド化合物含有窒素ガス中のn−ノニルアルデヒドの濃度が0.07体積ppm以下である、上記[1]に記載のポリオレフィン樹脂発泡体。
[3]前記アルデヒド化合物含有窒素ガス中のn−オクチルアルデヒドの濃度が0.03体積ppm以下である、上記[2]に記載のポリオレフィン樹脂発泡体。
[4]前記アルデヒド化合物含有窒素ガス中のn−ヘプチルアルデヒドの濃度が0.03体積ppm以下である、上記[2]又は[3]に記載のポリオレフィン樹脂発泡体。
[5]前記アルデヒド化合物含有窒素ガス中のn−デシルアルデヒドの含有量が0.03体積ppm以下である、上記[2]〜[4]のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂発泡体。
[6]ポリオレフィン樹脂を含む発泡性組成物を発泡してなる、上記[1]〜[5]のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂発泡体。
[7]前記発泡性組成物が、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して酸化防止剤を1.0〜5.0質量部含む、上記[6]に記載のポリオレフィン樹脂発泡体。
[8]前記発泡性組成物が、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して架橋助剤を2.0〜5.0質量部含む、上記[6]又[7]に記載のポリオレフィン樹脂発泡体。
[9]前記発泡性組成物が、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して重金属不活性化剤を0.6〜10.0質量部含む、上記[6]〜[8]のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂発泡体。
[10] 下記工程1〜工程3を含む、上記[1]〜[9]のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂発泡体の製造方法。
(工程1)ポリオレフィン樹脂を含有する発泡性組成物をシート状に加工し、発泡性シートを製造する工程
(工程2)該発泡性シートに対して電離性放射線を照射し架橋発泡性シートを製造する工程
(工程3)架橋発泡性シートを発泡させて、ポリオレフィン樹脂発泡体を製造する工程
[11]前記工程3において、架橋発泡性シートを発泡させる際の温度が140〜280℃である、上記[9]に記載のポリオレフィン樹脂発泡体の製造方法。
[12]上記[1]〜[9]のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂発泡体を成形してなる成形体。
[13]ポリオレフィン樹脂発泡体に表皮材が積層された、上記[12]に記載の成形体。
[14]自動車内装材である、上記[12]又は[13]に記載の成形体。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、臭気の発生を低減できるポリオレフィン樹脂発泡体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[ポリオレフィン樹脂発泡体]
<アルデヒド化合物の含有量>
本発明のポリオレフィン樹脂発泡体は、炭素数6〜11のアルデヒド化合物の含有量が0.1ppm以下である。該アルデヒド化合物の含有量は、体積基準の量(vol ppm)である。また、炭素数6〜11のアルデヒド化合物の含有量は、炭素数6〜11のそれぞれの炭素数のアルデヒド化合物の総量を意味する。
炭素数6〜11のアルデヒド化合物の含有量が0.1ppmを超えると、ポリオレフィン樹脂発泡体から臭気を生じやすくなる。炭素数6〜11のアルデヒド化合物の含有量は、0.08ppm以下であることが好ましく、0.05ppm以下であることがより好ましい。炭素数6〜11のアルデヒド化合物の含有量をこのような範囲とすることにより、ポリオレフィン樹脂発泡体から生じる臭気をより低減することができる。
【0008】
炭素数6〜11のアルデヒド化合物としては、例えば、n−ヘキシルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、n−ウンデシルアルデヒド等が挙げられる。
【0009】
ポリオレフィン樹脂発泡体中の炭素数6〜11のアルデヒド化合物の含有量を0.1ppm以下とする方法は、特に限定されるものではないが、発泡体を製造するための発泡性組成物中の酸化防止剤及び架橋助剤の量、発泡体製造時の電離放射線の照射条件及び発泡条件などを適切に制御する方法が挙げられる。
【0010】
<n−ノニルアルデヒド>
本発明のポリオレフィン樹脂発泡体は、アルデヒド化合物含有窒素ガス中のn−ノニルアルデヒドの濃度が0.07体積ppm以下であることが好ましい。なお、アルデヒド化合物含有窒素ガスとは、100mm×100mm×3.1±0.2mmの寸法のポリオレフィン樹脂発泡体を2枚入れた10Lのサンプリングバックに5Lの窒素ガスを充填した後、サンプリングバックを80℃の加熱温度で2時間加熱することによって得られたガスである。より具体的には、後述の実施例の方法により得られたアルデヒド化合物含有窒素ガスである。上記アルデヒド化合物含有窒素ガス中のn−ノニルアルデヒドの濃度が0.07体積ppm以下であると、ポリオレフィン樹脂発泡体から発生する臭気が弱くなる。上記アルデヒド化合物含有窒素ガス中のn−ノニルアルデヒドの濃度は、0.05体積ppm以下であることがより好ましく、0.03体積ppm以下であることがさらに好ましい。上記アルデヒド化合物含有窒素ガス中のn−ノニルアルデヒドの濃度をこのような範囲とすることにより、ポリオレフィン樹脂発泡体の臭気の発生をより低減することができる。
【0011】
<n−オクチルアルデヒド>
本発明のポリオレフィン樹脂発泡体は、上記アルデヒド化合物含有窒素ガス中のn−オクチルアルデヒドの濃度が0.03体積ppm以下であるポリオレフィン樹脂発泡体であることが好ましい。
上記アルデヒド化合物含有窒素ガス中のn−オクチルアルデヒドの濃度が0.03体積ppm以下であると、ポリオレフィン樹脂発泡体の臭気の発生をより低減できる。上記アルデヒド化合物含有窒素ガス中のn−オクチルアルデヒドの濃度は、0.02体積ppm以下であることがより好ましく、0.015体積ppm以下であることが更に好ましい。上記アルデヒド化合物含有窒素ガス中のn−オクチルアルデヒドの濃度をこのような範囲とすることにより、ポリオレフィン樹脂発泡体の臭気の発生を更に低減することができる。
【0012】
<n−ヘプチルアルデヒド>
本発明のポリオレフィン樹脂発泡体は、上記アルデヒド化合物含有窒素ガス中のn−ヘプチルアルデヒドの濃度が0.03体積ppm以下であることが好ましい。
上記アルデヒド化合物含有窒素ガス中のn−ヘプチルアルデヒドの濃度が0.03体積ppm以下であると、ポリオレフィン樹脂発泡体の臭気発生をより低減できる。上記アルデヒド化合物含有窒素ガス中のn−ヘプチルアルデヒドの濃度は、0.02体積ppm以下であることがより好ましく、0.015体積ppm以下であることが更に好ましい。上記アルデヒド化合物含有窒素ガス中のn−ヘプチルアルデヒドの濃度をこのような範囲とすることにより、ポリオレフィン樹脂発泡体の臭気の発生を更に低減することができる。
【0013】
<n−デシルアルデヒド>
本発明のポリオレフィン樹脂発泡体は、上記アルデヒド化合物含有窒素ガス中のn−デシルアルデヒドの濃度が0.03体積ppm以下であることが好ましい。
上記アルデヒド化合物含有窒素ガス中のn−デシルアルデヒドの濃度が0.03体積ppm以下であると、ポリオレフィン樹脂発泡体の臭気の発生をより低減することができる。上記アルデヒド化合物含有窒素ガス中のn−デシルアルデヒドの濃度は、0.02体積ppm以下であることがより好ましく、0.015体積ppm以下であることが更に好ましい。上記アルデヒド化合物含有窒素ガス中のn−デシルアルデヒドの濃度をこのような範囲とすることにより、ポリオレフィン樹脂発泡体の臭気の発生を更に低減することができる。
【0014】
上記アルデヒド化合物含有窒素ガス中のn−ノニルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ヘプチルアルデヒド及びn−デシルアルデヒドのそれぞれの濃度を上記含有量の範囲内とする方法は、特に限定されるものではない。そのような方法には、例えば、発泡体を製造するために使用する発泡性組成物中の酸化防止剤、重金属不活性化剤、架橋助剤等の添加剤の配合量、発泡性組成物の架橋時の電離放射線の照射条件、発泡性組成物の発泡時の温度等を適切に制御する方法等が挙げられる。
【0015】
<発泡倍率>
本発明のポリオレフィン樹脂発泡体の発泡倍率は、特に限定されないが、好ましくは5〜25cc/gであり、より好ましくは10〜22cc/gであり、更に好ましくは12〜20cc/gである。発泡倍率が5cc/g以上であると、発泡体の柔軟性が確保しやすくなり、25cc/g以下であると、発泡体の機械的強度を良好にすることができる。
【0016】
(見掛け密度)
本発明のポリオレフィン樹脂発泡体の見掛け密度は、特に限定されないが、好ましくは20〜300kg/mであり、より好ましくは25〜250kg/mである。見掛け密度が20kg/m以上であると、発泡体の機械的強度を良好にすることができ、見掛け密度が300kg/m以下であると、発泡体の柔軟性が確保しやすくなる。架橋ポリオレフィン樹脂発泡体の見掛け密度は後述の実施例に記載の方法で測定される。
【0017】
<厚み>
ポリオフィン樹脂発泡体の厚みは、特に制限されないが、1.1〜10mmが好ましく、1.5〜8mmがより好ましく、2〜5mmがさらに好ましい。
【0018】
<酸化防止剤>
本発明のポリオレフィン樹脂発泡体は、ポリオレフィン樹脂を含む発泡性組成物を発泡してなる発泡体であることが好ましい。
該発泡性組成物は、酸化防止剤を含有することが好ましい。酸化防止剤を含有することで、ポリオレフィン樹脂の酸化劣化を抑制することができる。ポリオレフィン樹脂100質量部に対して酸化防止剤を1.0〜5.0質量部含有することが好ましく、1.5〜4.5質量部含有することがより好ましい。
ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、酸化防止剤を1.0質量部以上とすることで、ポリオレフィン樹脂の酸化劣化が抑制され、炭素数6〜11のアルデヒド化合物の濃度を低減することができる。また、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、酸化防止剤を5.0質量部以下とすることで、過剰な酸化防止剤が臭気物質になることを抑制することにより、炭素数6〜11のアルデヒド化合物の濃度を低減することができる。
また、発泡性組成物中の酸化防止剤を上記の範囲とすることにより、ポリオレフィン樹脂発泡体からの炭素数7〜10の直鎖アルデヒド化合物、特にn−ノニルアルデヒドの放出をより低減できる。
酸化防止剤の種類は特に限定されないが、例えば、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が挙げられる。これらの中では、炭素数6〜11のアルデヒド化合物の濃度の低減の観点、中でも炭素数7〜10の直鎖アルデヒド化合物、特にn−ノニルアルデヒドの放出量の低減の観点から、フェノール系酸化防止剤が好ましい。
フェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。これらの中でも、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンが好ましい。
酸化防止剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
【0019】
<架橋助剤>
発泡性組成物には、架橋助剤を含有することが好ましい。発泡性組成物中の架橋助剤の含有量は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して2.0〜5.0質量部であることが好ましく、2.5〜4.7質量部であることがより好ましい
架橋助剤をポリオレフィン樹脂100質量部に対して2.0質量部以上とすることにより、発泡体中の炭素数6〜11のアルデヒド化合物の濃度を低減することができる。これは、ポリオレフィン樹脂の架橋がある程度進行することにより、熱等により劣化が抑制され、その結果アルデヒド化合物の生成を抑制するためと考えられる。架橋助剤をポリオレフィン樹脂100質量部に対して5.0質量部以下とすることにより、発泡不良を防止しやすくなる。
また、発泡性組成物中の架橋助剤の量をこのような範囲としつつ、酸化防止剤の量を上記範囲とすることで、より効果的に炭素数6〜11のアルデヒド化合物の濃度を低減でき、中でも炭素数7〜10の直鎖アルデヒド化合物、特にn−ノニルアルデヒドの放出量を低減することができる。
【0020】
架橋助剤としては、例えば、3官能(メタ)アクリレート系化合物、2官能(メタ)アクリレート系化合物などの多官能(メタ)アクリレート系化合物、1分子中に3個の官能基を持つ化合物などが挙げられる。これら以外の架橋助剤としては、ジビニルベンゼン等の1分子中に2個の官能基を持つ化合物、フタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、エチルビニルベンゼン、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等が挙げられる。
3官能(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等が挙げられる。
2官能(メタ)アクリレート系化合物としては、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート等が挙げられる。
1分子中に3個の官能基を持つ化合物としては、トリメリット酸トリアリルエステル、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリアリルエステル、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
架橋助剤は、単独で又は2以上を組み合わせて使用することができる。
これらの中でも、炭素数6〜11のアルデヒド化合物の濃度を低減する観点から、多官能(メタ)アクリレート系化合物が好ましく、2官能(メタ)アクリレート系化合物がより好ましく、1,9−ノナンジオールジメタクリレートが更に好ましい。
【0021】
<ポリオレフィン樹脂>
発泡性組成物に含有されるポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。ポリオレフィン樹脂としては、得られるポリオレフィン樹脂発泡体の耐熱性、及び成形加工性を向上させる観点から、ポリプロピレン系樹脂を含むことが好ましく、ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂との双方を含むことがより好ましい。
【0022】
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、ホモポリプロピレン、プロピレンを主成分とするエチレン−プロピレンランダム共重合体、プロピレンを主成分とするエチレン−プロピレンブロック共重合体等が挙げられ、これらは単独で使用しても2種以上併用してもよい。中でも、プロピレンを主成分とするエチレン−プロピレンランダム共重合体を用いることが好ましい。
上記ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(以下、「MFR」と記す)は、70g/10分以下が好ましく、より好ましくは50g/10分以下であり、さらに好ましくは25g/10分以下である。また、MFRの下限は、通常0.1g/10分である。
上記MFRは、JIS K 7210に準拠して、温度230℃、荷重21.2Nの条件下で測定した値である。
【0023】
ポリエチレン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレンを主成分とするエチレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられ、これらは単独で使用しても2種以上併用してもよい。上記したポリエチレン系樹脂の中では、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、0.910〜0.925g/cmであることが好ましく、0.912〜0.922g/cmであることがより好ましい。
上記ポリエチレン系樹脂のMFRは、0.5〜70g/10分が好ましく、より好ましくは1.5〜50g/10分であり、さらに好ましくは2〜30g/10分である。
上記MFRは、JIS K 7210に準拠して、温度190℃、荷重21.2Nの条件下で測定した値である。
【0024】
ポリオレフィン樹脂がポリプロピレン系樹脂を含有する場合は、耐熱性を向上させる観点から、ポリオレフィン樹脂中において、ポリプロピレン系樹脂を好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上含有することが好ましい。
ポリオレフィン樹脂が、ポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂とを含有する場合は、ポリプロピレン系樹脂の量の方が多いことが好ましく、ポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂との全量基準において、ポリプロピレン系樹脂が好ましくは55質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上である。このような配合量にすることにより、ポリオレフィン樹脂発泡体の耐熱性と柔軟性が良好になる。
また、発泡性組成物は、ポリオレフィン樹脂以外のその他の樹脂を含んでもよいが、ポリオレフィン樹脂発泡体中のポリオレフィン樹脂の含有量は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上である。
なお、ポリオレフィン樹脂がポリプロピレン系樹脂を含有する場合、発泡性組成物を高温で発泡する必要がある。このため、ポリオレフィン樹脂がポリプロピレン系樹脂を含有する場合、臭気の原因物質である炭素数7〜10の直鎖アルデヒド化合物が生成しやすくなる。しかし、このような場合でも、酸化防止剤、重金属不活性化剤や各種製造方法を調整することで、炭素数7〜10の直鎖アルデヒド化合物の生成を抑え、臭気の発生を低減することができる。
【0025】
<発泡剤>
発泡性組成物を発泡させる方法としては、化学的発泡法、物理的発泡法がある。化学的発泡法は、発泡性組成物に添加した化合物の熱分解により生じたガスにより気泡を形成させる方法であり、物理的発泡法は、低沸点液体(発泡剤)を発泡性組成物に含浸させた後、発泡剤を揮発させてセルを形成させる方法である。発泡法は特に限定されないが、化学的発泡法が好ましい。
発泡剤としては、熱分解型発泡剤が好適に使用され、例えば分解温度が140〜270℃程度の有機系又は無機系の化学発泡剤を用いることができる。
有機系発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸金属塩(アゾジカルボン酸バリウム等)、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、ヒドラゾジカルボンアミド、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、トルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジン誘導体、トルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド化合物等が挙げられる。
【0026】
無機系発泡剤としては、酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、無水クエン酸モノソーダ等が挙げられる。
これらの中では、微細な気泡を得る観点、及び経済性、安全面の観点から、アゾ化合物、ニトロソ化合物が好ましく、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミンがより好ましく、アゾジカルボンアミドが特に好ましい。
発泡剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
発泡剤の発泡性組成物への添加量は、発泡体の発泡倍率を上記範囲にしやすい観点から、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して1〜20質量部が好ましく、2〜15質量部がより好ましく、3〜12質量部が更に好ましい。
【0027】
<重金属不活性化剤>
本発明のポリオレフィン樹脂発泡体に用いる発泡性組成物は、重金属不活性化剤を含有することが好ましい。重金属不活性化剤を含有することで、重金属イオンに起因するポリオレフィン樹脂の酸化劣化を抑制することができるともに、ポリオレフィン樹脂発泡体からの炭素数7〜10の直鎖アルデヒド化合物、特にn−ノニルアルデヒドの放出をより低減できる。金属不活性化剤の含有量は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.6〜10.0質量部であることが好ましく、1.0〜4.0質量部であることがより好ましい。
重金属不活性化剤の含有量をポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.6質量部以上とすることで、ポリオレフィン樹脂の重金属イオンによる酸化劣化がより抑制され、架橋ポリオレフィン樹脂発泡体からの炭素数7〜10の直鎖アルデヒド化合物、特にn−ノニルアルデヒドの放出をより低減することができる。また、重金属不活性化剤の含有量をポリオレフィン樹脂100質量部に対して5.0質量部以下とすることで、過剰な重金属不活性化剤が臭気物質になることを抑制することができる。
【0028】
重金属不活性化剤の種類は特に限定されないが、例えば、シュウ酸誘導体、サリチル酸誘導体、ヒドラジド誘導体等が挙げられる。これらの中では、ポリオレフィン樹脂発泡体からの炭素数7〜10の直鎖アルデヒド化合物、特にn−ノニルアルデヒドの放出を効果的に低減できるという観点から、ヒドラジド誘導体が好ましい。
ヒドラジド誘導体としては、N,N’−ビス{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル}ヒドラジン、イソフタル酸ビス(2−フェノキシプロピオニルヒドラジド)等が挙げられる。これらの中で、架橋ポリオレフィン樹脂発泡体からの炭素数7〜10の直鎖アルデヒド化合物、特にn−ノニルアルデヒドの放出量をより低減できるという観点から、N,N’−ビス{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル}ヒドラジンが好ましい。
重金属不活性化剤は、1種類が単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
【0029】
<その他添加剤>
発泡性組成物には、必要に応じて、熱安定剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、充填材、防錆剤、分解温度調整剤等の発泡体に一般的に使用する添加剤を配合されてもよい。
【0030】
[ポリオレフィン樹脂発泡体の製造方法]
本発明のポリオレフィン樹脂発泡体の製造方法は、特に制限されないが、下記の工程1〜工程3の工程を含むことが好ましい。
(工程1)ポリオレフィン樹脂を含有する発泡性組成物をシート状に加工し、発泡性シートを製造する工程
(工程2)該発泡性シートに対して電離性放射線を照射し架橋発泡性シートを製造する工程
(工程3)架橋発泡性シートを発泡させて、ポリオレフィン樹脂発泡体を製造する工程
【0031】
(工程1)
工程1は、ポリオレフィン樹脂を含有する発泡性組成物をシート状に加工し、発泡性シートを製造する工程である。発泡性組成物を、バンバリーミキサーや加圧ニーダ等の混練り機を用いて混練した後、押出機、カレンダ、コンベアベルトキャスティング等により連続的に押し出すことによりポリオレフィン樹脂発泡性シートを製造することができる。発泡性組成物には、上記したように、酸化防止剤、架橋助剤、発泡剤などが含まれることが好ましく、酸化防止剤、重金属不活性化剤、架橋助剤、発泡剤などが含まれることがより好ましい。
【0032】
(工程2)
工程2は、発泡性シートに対して電離性放射線を照射し架橋発泡性シートを製造する工程である。
電離性放射線を照射する際の照射線量は、炭素数6〜11のアルデヒド化合物の含有量を低減する観点、中でも炭素数7〜10の直鎖アルデヒド化合物、特にn−ノニルアルデヒドの放出を低減するという観点から、好ましくは1.2〜2.5Mradであり、より好ましくは1.3〜2.3Mradであり、更に好ましくは1.4〜2.1Mradである。
炭素数6〜11のアルデヒド化合物の含有量をより低減する観点、中でも炭素数7〜10の直鎖アルデヒド化合物、特にn−ノニルアルデヒドの放出を低減するという観点から、発泡性組成物中の架橋助剤の量を上記範囲に調整すると共に、電離性放射線の照射条件を上記範囲とすることが好ましい。
電離性放射性の照射は、発泡性シートの一方の面に対して行ってもよいし、両方の面に対して行ってもよいが、炭素数6〜11のアルデヒド化合物の含有量を低減する観点、中でも炭素数7〜10の直鎖アルデヒド化合物、特にn−ノニルアルデヒドの放出を低減するという観点から、両方の面に対して行うことが好ましい。
電離性放射線としては、例えば、電子線、α線、β線、γ線、X線等が挙げられる。これらの中では、生産性及び照射を均一に行う観点から、電子線が好ましい。
【0033】
(工程3)
工程3は、架橋発泡性シートを発泡させて、シート状のポリオレフィン樹脂発泡体を製造する工程である。架橋発泡性シートを発泡させる方法としては、オーブンのようなバッチ方式や、架橋発泡性シートを、連続的に加熱炉内を通す連続発泡方式を挙げることができる。
架橋発泡性シートを発泡させる際の温度は、140〜280℃であることが好ましく、160〜280℃であることがより好ましい。140℃以上にすることにより、発泡を進行しやすくすることができ、280℃以下とすることにより、炭素数6〜11のアルデヒド化合物の含有量を低減することができ、中でも炭素数7〜10の直鎖アルデヒド化合物、特にn−ノニルアルデヒドの生成を抑制することができる。架橋発泡性シートを発泡させる際の温度は、180〜270℃であることがより好ましく、200〜260℃であることが更に好ましく、210〜240℃であることが更に好ましい。
上記温度に調整するための方法としては、特に制限されないが、熱風を用いてもよいし、赤外線を用いてもよい。
また、架橋発泡性シートは、発泡後、又は発泡されつつMD方向又はCD方向の何れか一方又は双方に延伸されてもよい。
【0034】
[成形体]
本発明のポリオレフィン樹脂発泡体を成形してなる成形体は、本発明のポリオレフィン樹脂発泡体を公知の方法で成形して得られるものである。成形体を製造するに際し、基材、表皮材等の他の素材をポリオレフィン樹脂発泡体に積層し貼合わせて製造することができる。本発明の成形体は、好ましくはポリオレフィン樹脂発泡体に表皮材が積層されたものである。
【0035】
表皮材としては、ポリ塩化ビニルシート、ポリ塩化ビニルとABS樹脂との混合樹脂からなるシート、熱可塑性エラストマーシート、天然繊維や人造繊維を用いた織物、編物、不織布、人工皮革や合成皮革等のレザー、金属等が挙げられる。また、本革や、石や木等から転写した凹凸を付したシリコーンスタンパ等を用いて、表面に皮目や木目模様等の意匠が施された成形体としてもよい。
表皮材をポリオレフィン樹脂発泡体に貼合わせて成形することで、ポリオレフィン樹脂発泡体に表皮材が積層された成形体を得ることができる。
表皮材を貼り合わせる方法としては、例えば、押出ラミネート法、接着剤を塗布した後張り合わせる接着ラミネート法、熱ラミネート法(熱融着法)、ホットメルト法、高周波ウェルダー法、金属等では無電解メッキ法、電解メッキ法及び蒸着法等が挙げられるが、如何なる方法でも両者が接着されればよい。
【0036】
基材は成形体の骨格となるものであり、通常、熱可塑性樹脂が用いられる。基材用の熱可塑性樹脂としては、上述したポリオレフィン樹脂、エチレンとα−オレフィン、酢酸ビニル、アクリル酸エステル等との共重合体、ABS樹脂、及びポリスチレン樹脂等を適用することができる。
【0037】
本発明の成形体の成形方法としては、スタンピング成形法、真空成形法、圧縮成形法、射出成形法等が挙げられる。これらの中ではスタンピング成形法、真空成形法が好ましい。真空成形法としては、雄引き真空成形法、雌引き真空成形法のいずれも採用しうるが、雄引き真空成形法がより好ましい。
本発明のポリオレフィン樹脂発泡体を成形してなる成形体は、断熱材、クッション材等として使用することができる。本発明のポリオレフィン樹脂発泡体を成形してなる成形体は、夏場の暑い時期においても、臭気が発生しにくいため、特に自動車分野において、天井材、ドア、インスツルメントパネル等の自動車内装材として好適に使用できる。
【実施例】
【0038】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0039】
(実施例1)
ポリプロピレン系樹脂60質量部、直鎖状低密度ポリエチレン40質量部、発泡剤7質量部、架橋助剤3質量部、及びフェノール系酸化防止剤2.5質量部を混合して得た発泡性組成物を、単軸押出機により、温度180℃で溶融混練して、発泡性シートとした。該発泡性シートの両面をそれぞれ加速電圧1000keVにて電離性放射線(電子線)を2.0Mradで照射し、架橋発泡性シートを得た。その後、該架橋発泡性シートを、コロナ処理装置を備えた炉内温度230℃の縦型熱風式発泡炉に供給し、延伸しつつ45W・min/mの放電量で該架橋発泡性シートの両面をコロナ処理をしながら加熱発泡させ、目的とするポリオレフィン樹脂発泡体を得た。
該ポリオレフィン樹脂発泡体について、厚さ、発泡倍率、アルデヒド濃度、臭気評価Iを下記のとおり行った。結果を表1に示した。
【0040】
なお、実施例1〜5、及び比較例1〜6で用いた各原料の詳細は以下のとおりである。
・ポリプロピレン系樹脂(PP):エチレン−プロピレンランダム共重合体、住友化学社製、商品名「AD571」、密度0.90g/cm、MFR0.5g/10分(230℃)
・直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE):東ソー社製、商品名「ZF231」、MFR2g/10分(190℃)、密度0.917g/cm
・発泡剤:アゾジカルボンアミド、永和化成工業(株)製商品名「ビニホールAC−K3−TA」、分解温度:210℃
・架橋助剤:1,9−ノナンジオールジメタクリレート、共栄社化学社製商品名「ライトエステル1,9ND」
・フェノール系酸化防止剤:BASFジャパン株式会社製、商品名「イルガノックス1010」
【0041】
(実施例2〜5、比較例1〜6)
発泡性組成物の組成、架橋条件及び発泡条件を表1及び2のとおり変更した以外は、実施例1と同様にしてポリオレフィン樹脂発泡体を得た。
実施例3及び比較例2は、発泡させる際に、熱風の代わりに赤外線を使用しており、具体的には、発泡炉内に設けられた近赤外線ヒータを用いた。
比較例6は架橋助剤の量が多いため、発泡させることができなかった。
【0042】
(実施例6)
ポリプロピレン系樹脂60質量部、直鎖状低密度ポリエチレン40質量部、フェノール系酸化防止剤2質量部、重金属不活性化剤1質量部、架橋助剤3質量部、及び発泡剤8質量部を混合して得た発泡性組成物を、単軸押出機により、温度180℃で溶融混練して、発泡性シートとした。該発泡性シートの両面をそれぞれ加速電圧1000keVにて電離性放射線(電子線)を2.0Mradで照射し、架橋発泡性シートを得た。その後、該架橋発泡性シートを、コロナ処理装置を備えた炉内温度250℃の縦型熱風式発泡炉に供給し、延伸しつつ45W・min/mの放電量で該架橋発泡性シートの両面をコロナ処理をしながら加熱発泡させ、目的とするポリオレフィン樹脂発泡体を得た。
該ポリオレフィン樹脂発泡体について、厚さ、見掛け密度、アルデヒド濃度、アルデヒド化合物の分析、臭気評価IIを下記とおり行った。結果を表3に示した。
【0043】
なお、実施例6〜10、比較例7〜8で用いた各原料の詳細は以下のとおりである。
・ポリプロピレン系樹脂(PP):エチレン−プロピレンランダム共重合体、住友化学株式会社製、商品名「AD571」、密度0.90g/cm、MFR0.5g/10分(230℃)
・直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE):株式会社プライムポリマー製、商品名「ウルトラゼックス1020L」、密度0.909g/cm、MFR2g/10分(190℃)
・発泡剤:アゾジカルボンアミド、永和化成工業株式会社製、商品名「ビニホールAC−K3−TA」、分解温度:210℃
・架橋助剤:1,9−ノナンジオールジメタクリレート、共栄社化学株式会社製、商品名「ライトエステル1,9ND」、粘度8mPa・s/25℃
・重金属不活性化剤:N,N’−ビス{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル}ヒドラジン、株式会社ADEKA製、商品名「アデカスタブCDA−10」、
・フェノール系酸化防止剤:BASFジャパン株式会社製、商品名「イルガノックス1010」
【0044】
(実施例7〜10、比較例7、8)
発泡性組成物の組成を表3のとおり変更した以外は、実施例6と同様にして実施例7〜10及び比較例7、8のポリオレフィン樹脂発泡体を得た。
発泡体の厚さ、見掛け密度、アルデヒド濃度、アルデヒド化合物の分析、臭気評価IIの結果を表3に示した。
【0045】
(発泡体の厚さ)
実施例及び比較例の発泡体の厚さを、JIS K6767に準拠して測定した。
【0046】
(発泡倍率)
実施例及び比較例で得られた発泡体の密度を、JIS K7222に準拠して測定し、その逆数を発泡倍率とした。
【0047】
(アルデヒド濃度)
実施例及び比較例で得られた発泡体中の炭素数6〜11のアルデヒド化合物の含有量は、DNPH誘導体化/HPLC法により測定した。
2,4−ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)10mgに、溶媒としてアセトニトリル・水=75:25溶液100mLを加え攪拌した後、発泡体10ccを添加し、60℃で2時間攪拌させた。その後、200メッシュでろ過して、得られた溶液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により定量分析することにより、発泡体中の炭素数6〜11のアルデヒド化合物の含有量を算出した。HPLCの測定条件は以下のとおりである。
カラム:ZORBAX Bonus RP 4.6mm×150mm、粒子径3.5μm
カラム温度:40℃
移動相:アセトニトリル:水=75:25
流速:1.0mL/min
試料:20μL
波長:360nm
【0048】
(アルデヒド化合物の分析)
実施例及び比較例で得られた発泡体における、アルデヒド化合物含有窒素ガス中のn−ヘプチルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒドの濃度は以下のとおり測定した。
発泡体からの放散ガスをサンプリングするために、10Lのサンプリングバック(ジーエルサイエンス株式会社製、商品名「スカイピアバックAAK−10」)に100×100mmにカットした発泡体を2枚入れた。そして、ヒートシーラーを使用してサンプリングバックの開口部を閉じ、窒素ガスを5L充填した。このサンプリングバックを80℃の温度の恒温槽に2時間入れた。これにより、アルデヒド化合物含有窒素ガスが得られた。そして、サンプリングポンプ(ジーエルサイエンス株式会社製、商品名「SP208−000DualII」)を使用して、サンプリングバック内のアルデヒド化合物含有窒素ガスを捕集管(ジーエルサイエンス株式会社製、商品名「Tenax TA 150mg」)に1L捕集した。サンプリングの条件は以下のとおりであった。
ガス充填量:N、5L
加熱温度:80℃
捕集時間:1時間
捕集量:1〜2L
捕集流量:400mL/min
【0049】
アルデヒド化合物含有窒素ガスをサンプリングした後、加熱脱着装置(ジーエルサイエンス株式会社製、商品名「HandyTD TD265」)を使用して加熱脱着した。そして、ガスクロマトグラフ(ジーエルサイエンス株式会社製、商品名「GC−4000Plus(Aタイプ)」)を使用したにおい嗅ぎシステム(ジーエルサイエンス株式会社製、商品名「OPV277」)へ導入してアルデヒド化合物の分析を行った。加熱脱着およびガスクロマトグラフの条件は以下のとおりであった。
<加熱脱着条件>
システム圧力:190kPa
プレパージ時間:0min
加熱脱着温度:270℃
加熱脱着時間:5min
昇温速度:45℃/sec
<ガスクロマトグラフ条件>
カラム:InertCap Pure−WAX(ジーエルサイエンス株式会社製)、内径0.25mm、長さ60m、膜厚0.25μm
温度条件:40℃(6min hold)−10℃/min−240℃(14min hold)
キャリアガス:He、160kPa
注入方式:Split 10:1
注入口温度:270℃
検出器:FID
検出器温度:280℃
流量:35mL/min
メイクアップ流量:N 30mL/min
Air流量:250mL/min
【0050】
なお、n−ヘプチルアルデヒドのガスクロマトグラフの検出ピークは17.8分の保持時間で検出される。n−オクチルアルデヒドのガスクロマトグラフの検出ピークは20.1分の保持時間で検出される。n−ノニルアルデヒドのガスクロマトグラフの検出ピークは22.3分の保持時間で検出される。n−デシルアルデヒドのガスクロマトグラフの検出ピークは24.3分の保持時間で検出される。
【0051】
ガスクロマトグラフの測定結果からアルデヒド化合物含有窒素ガス中のアルデヒド化合物の濃度を算出するための検量線は以下のようにして作成した。
n−ヘプチルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド及びn−デシルアルデヒドをそれぞれ電子天秤で約100mg採取し、20mLメスフラスコに投入した。そして、メタノールで希釈してアルデヒド混合標準溶液(濃度:5000μg/L)を作製した。このアルデヒド混合標準溶液をシリンジで0.2μL採取した。そして、捕集管(ジーエルサイエンス株式会社製、商品名「Tenax TA 150mg」)もしくはサンプリングバック(ジーエルサイエンス株式会社製、商品名「スカイピアバックAAK−10」)に採取したアルデヒド混合標準溶液を添加した。捕集管の場合は、におい嗅ぎシステム(ジーエルサイエンス株式会社製、商品名「OPV277」)の検量線作成ツールにセットし、ドライパージ(50mL/min、2min)した。サンプリングバックの場合は、添加後に1Lの窒素を充填し、恒温槽を用いて80℃の温度で2時間加熱し、サンプリングバック内のガスを捕集管に全量捕集した。それぞれの捕集管を加熱脱着装置(ジーエルサイエンス株式会社製、商品名「HandyTD TD265」)を使用して加熱脱着し、ガスクロマトグラフへ導入した。そして、ガスクロマトグラフの測定結果を使用して検量線を作成した。
【0052】
(臭気評価I)
実施例及び比較例で得られた各発泡体を80℃で2時間養生した後の臭いを、下記の0〜5の基準に基づき評価した。
1:無臭
2:やっと感知できる臭い(検知閾値)
3:何の臭いであるか分かる弱い臭い(認知閾値)
4:楽に感知できる臭い
5:強い臭い
6:強烈な臭い
【0053】
(臭気評価II)
実施例及び比較例で得られた発泡体について、臭気評価試験を行った。臭気評価試験の条件は以下のとおりであった。
サンプリング日数:発泡体作製直後
サンプリングサイズ:100cm
臭気瓶:100cmガラス容器
試験温度:80℃×2hr→60℃に冷却
嗅ぎ温度:60℃
試験人数:5名
臭いの嗅ぎ方:臭気瓶の蓋を開け、水平面に対して45°臭気瓶を傾けた。そして、鼻孔を臭気瓶の口部中央に置き、鼻孔を臭気瓶の口部から1cm離した状態で、5sec以上10sec以内、臭気瓶からの放散ガスの臭いを嗅いだ。
【0054】
臭気の評価は、以下のように行った。臭気強度の標準溶液として、下記のn−ブタノール濃度を有するn−ブタノール水溶液を使用した。これらの溶液をそれぞれ、1Lのガラス瓶に150mL計り取り、それらを基準臭とした。そして、これらの基準臭の臭気強度に基づいて発泡体からの臭気を評価した。
強度等級1:n−ブタノール濃度0ml/L
強度等級1.5:n−ブタノール濃度1.4ml/L
強度等級2:n−ブタノール濃度2.0ml/L
強度等級2.5:n−ブタノール濃度3.6ml/L
強度等級3:n−ブタノール濃度6.0ml/L
強度等級3.5:n−ブタノール濃度9.0ml/L
強度等級4:n−ブタノール濃度18.0ml/L
強度等級4.5:n−ブタノール濃度22.7ml/L
強度等級5:n−ブタノール濃度30.0ml/L
強度等級5.5:n−ブタノール濃度57.0ml/L
強度等級6:n−ブタノールのみ
【0055】
なお、臭気評価Iにおける評価基準の数値と、臭気評価IIにおける強度等級の数値が同一であれば同等の臭気強度である。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
上記実施例の結果より、炭素数6〜11のアルデヒド化合物の含有量を一定値以下にした本発明のポリオレフィン樹脂発泡体は、臭気評価において良好な結果が得られた。一方、比較例の結果により、炭素数6〜11のアルデヒドの含有量が多い場合は、臭気評価において良好な結果を得ることができなかった。
【要約】
本発明は、炭素数が6〜11のアルデヒド化合物の含有量が0.1ppm以下であるポリオレフィン樹脂発泡体である。本発明によれば、臭気の発生を低減できるポリオレフィン樹脂発泡体を提供することができる。