(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、洗濯機に係る一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に例示する洗濯機100は、回転槽の回転中心軸が水平、若しくは若干傾斜したいわゆる横軸型のドラム式の洗濯機であり、その外郭を構成する外箱101は、樹脂製の基台102と、基台102に結合された箱本体103とから構成されている。
図1では左側となる箱本体103の前面部には、そのほぼ中央部に洗濯物出入口104が設けられている。また、箱本体103の前面部には、洗濯物出入口104を開閉する扉105が設けられている。箱本体103の前面部の上部には、操作パネル106が設けられている。操作パネル106の裏側には、洗濯機100の動作全般を制御する制御装置107が設けられている。
【0009】
外箱101内には、底部である背面部側が閉塞された有底円筒状の水槽108が設けられている。水槽108は、例えばポリプロピレンなどからなる樹脂製であり、その中心軸が、
図1では右方となる後方に向かって下降する若干傾斜した軸線上に位置するようにしてサスペンション109によって弾性的に支持されている。水槽108の前面部には、例えばポリプロピレンなどからなる樹脂製の水槽カバー108aが取り付けられている。水槽カバー108aの中心部は開口しており、水槽108の開口部121を構成している。なお、水槽108および水槽カバー108aを構成する樹脂材料には、ガラス繊維を含ませるようにしてもよい。
【0010】
水槽108の背面部の外側には、モータ110が設けられている。このモータ110は、例えば直流のブラシレスモータで構成されており、アウターロータ型であり、ステータ111およびロータ112を備えている。ステータ111は、水槽108の背面部の外側に固定されている。ロータ112の中心部には回転軸113が設けられている。回転軸113は、軸受ブラケット114に軸受115を介して支承されて、水槽108の内部に挿通されている。水槽108の内部には、底部である背面部側が閉塞された有底円筒状のドラム116が設けられている。
【0011】
ドラム116は、例えばステンレスなどからなる金属製である。ドラム116は、その背面部の中心部がモータ110の回転軸113の先端部に固定され、水槽108の軸線、つまり、後方に向かって下降傾斜した軸線を中心に回転可能に設けられている。この場合、モータ110は、ドラム116を回転させる駆動装置として機能する。ドラム116の底部、換言すれば背面部の外面には、当該ドラム116の背面部を補強するための補強部材117が設けられている。この補強部材117は、例えばアルミニウムのダイキャストなどからなる金属製である。ドラム116の胴部を構成する周壁部には、多数の孔118が全域にわたって形成されている。これら孔118は、貫通しており、通水および通気が可能である。また、ドラム116の内周部には、洗濯物掻き上げ用の複数のバッフル119が設けられている。バッフル119は、例えばポリプロピレンなどからなる樹脂製である。なお、水槽108は、その中心軸が傾斜しない水平な軸線上に位置するように設けてもよく、この場合、ドラム116は、水平な軸線を中心に回転可能に設けられる。
【0012】
ドラム116は、その前面側が開口しており、開口部120となっている。ドラム116の開口部120の周囲には、例えば塩水などの液体が封入されたバランスリング122が設けられている。バランスリング122は、例えばポリプロピレンなどからなる樹脂製である。バランスリング122は、例えばステンレスなどからなる金属製の図示しないねじによってドラム116の外面側から固定されている。水槽108の開口部121は、例えばゴムなどの弾性材料からなる環状のベローズ123を介して洗濯物出入口104に連結されている。これにより、洗濯物出入口104は、ベローズ123、水槽108の開口部121、および、ドラム116の開口部120を介して、ドラム116の内部に連なっている。
【0013】
水槽108の背面側の底部には排水口124が設けられている。この排水口124には、機内排水ホース125の一端部が接続されている。機内排水ホース125の他端部は、外箱101の基台102の前部に設けられたフィルタケース126に接続されている。フィルタケース126の前端部にはキャップ127が着脱可能に装着されている。フィルタケース126の内部には、キャップ127に一体的に設けられた図示しないリントフィルタが収納されている。また、フィルタケース126の下部には排水弁128が接続されている。この排水弁128の出口部には排水パイプ129が接続されている。
【0014】
排水パイプ129の先端部は、外箱101の基台102から機外に導出され、例えば、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、ポリエチレン、EVAとポリエチレンの混合材料などで構成される樹脂製の機外排水ホース140に接続される。洗濯機100は、機内排水ホース125、フィルタケース126、排水弁128、排水パイプ129、機外排水ホース140により、水槽108内の水を排出する排水経路150を構成している。
【0015】
フィルタケース126の上部には、エアトラップ130が設けられている。このエアトラップ130と外箱101内の上部に配設された水位センサ131とは、エアチューブ132によって接続されている。水位センサ131は、水槽108内の水位を、機内排水ホース125、フィルタケース126、エアトラップ130およびエアチューブ132を介して検出して制御装置107に出力する。
【0016】
外箱101内の上部には、給水弁133および給水ケース134が設けられている。給水弁133の入口部には、図示しない水道の蛇口から延びる機外給水ホースが接続される。また、給水弁133の出口部には、接続パイプ135の一端部が接続されている。接続パイプ135の他端部は、給水ケース134に接続されている。給水ケース134の内部には、図示しない洗剤類貯留部が設けられている。給水ケース134には、機内給水ホース136の一端部が接続されている。機内給水ホース136の他端部は、水槽108の上部に接続されている。水道から給水弁133を介して供給される水は、接続パイプ135、給水ケース134および機内給水ホース136を介して水槽108内に供給される。
【0017】
図2に例示する洗濯機200は、回転槽の回転中心軸が垂直方向に延びるいわゆる縦軸型の洗濯機であり、その外郭を構成する外箱201の内部には、上面が開放した有底円筒状の水槽202が弾性吊持機構203によって弾性的に支持されている。水槽202は、例えばポリプロピレンなどからなる樹脂製である。水槽202の上部には、例えばポリプロピレンなどからなる樹脂製の水槽カバー202aが取り付けられている。水槽カバー202aの中心部は開口しており、水槽202の開口部202bを構成している。この開口部202bには、図示しない槽カバーが開閉可能に取り付けられている。なお、水槽202および水槽カバー202aを構成する樹脂材料には、ガラス繊維を含ませるようにしてもよい。水槽202の内部には、上面が開放した有底円筒状の回転槽204が回転可能に設けられている。
【0018】
回転槽204は、例えばステンレスなどからなる金属製の胴部材204aにより胴部が構成され、例えばポリプロピレンなどからなる樹脂製の底部材204bにより底部が構成されている。回転槽204の底部を構成する底部材204bの外側には、当該底部材204b、換言すれば回転槽204の底部を補強するための補強部材204cが設けられている。この補強部材204cは、例えばステンレス板などからなる金属製である。この回転槽204は、垂直な軸線を中心に回転するように構成されており、洗濯物を洗う洗い行程および洗濯物をすすぐすすぎ行程における洗濯槽、および、洗濯物を脱水する脱水行程における脱水槽として兼用される。
【0019】
回転槽204は、その周壁部に多数の孔205を有している。これら孔205は、貫通しており、通水および通気が可能である。なお、図面では、これら孔205の一部のみを示している。回転槽204の上部には、例えば塩水などの液体が封入されたバランスリング206が取り付けられている。バランスリング206は、例えばポリプロピレンなどからなる樹脂製である。バランスリング206は、例えばステンレスなどからなる金属製のねじ206aによって回転槽204の外面側から固定されている。回転槽204内の底部には、例えばポリプロピレンなどからなる樹脂製のパルセータ207が回転可能に設けられている。
【0020】
水槽202の下部には、当該水槽202内の水を排出するための排水経路208が設けられている。この排水経路208には排水弁209が設けられている。そして、排水弁209の出口部には、例えば、EVA、ポリエチレン、EVAとポリエチレンの混合材料などで構成される樹脂製の排水パイプ208aが接続されている。この排水弁209が開放されることにより、水槽202内の水が機外に排出される。また、水槽202の底部には、水位検知用のエアトラップ210が設けられている。このエアトラップ210には、エアチューブ211を介して図示しない水位センサが接続されている。この水位センサは、この場合、圧力センサからなり、エアトラップ210内の圧力に基づいて水槽202内の水位を検知する。
【0021】
水槽202の下部の中央部には駆動機構部213が設けられている。この駆動機構部213は、可変速駆動が可能なモータ、クラッチ機構、減速装置、ブレーキ装置などを備えている。洗い行程時またはすすぎ行程時においては、駆動機構部213は、モータの回転力を、減速装置によって減速するとともにクラッチ機構によってパルセータ207に伝達する。脱水行程時においては、駆動機構部213は、モータの回転力を、減速装置によって減速することなくクラッチ機構によって回転槽204およびパルセータ207に高速で伝達する。
【0022】
外箱201の上部には、トップカバー214が設けられている。このトップカバー214には、洗濯物出入口を開閉する例えば二つ折り式の蓋215が開閉可能に設けられている。トップカバー214の前部には、操作パネル217が設けられている。操作パネル217の裏側には、洗濯機200の動作全般を制御する図示しない制御装置が設けられている。トップカバー214内の後部には、水道からの水を水槽202内に供給する図示しない給水機構部が設けられている。
【0023】
本実施形態に係る洗濯機100,200は、「親水性による防汚機能」と「撥水性による防汚機能」とを兼ね備えた構成となっている。次に、これら「親水性による防汚機能」および「撥水性による防汚機能」について、それぞれ詳細に説明する。
【0024】
(親水性による防汚機能について)
図1に例示すように、洗濯機100は、少なくともドラム116の側部の外面に、親水性コーティング300が施された構成となっている。この場合、親水性コーティング300は、ドラム116側部の外面全体に形成されている。また、
図2に例示すように、洗濯機200は、少なくとも回転槽204の側部を構成する胴部材204aの外面に、親水性コーティング300が施された構成となっている。この場合、親水性コーティング300は、回転槽204側部の外面全体に形成されている。
【0025】
親水性コーティング300は、例えばシリカ系の無機塗料など親水性能を有する塗料をドラム116側部の外面あるいは回転槽204側部の外面に吹き付けてコーティングしたものである。以下、親水性能を有する塗料を「親水性材料」と称する。
【0026】
この場合、ドラム116および回転槽204は何れも金属製であるから、これらドラム116の外面あるいは回転槽204の外面に親水性材料を吹き付け、これを焼き付けることにより親水性コーティング300を形成することができ、親水性コーティング300を強固にすることができる。なお、親水性材料の焼き付け温度は、一般的に有機物が分解する温度であると考えられている250℃よりも高い温度で設定することが好ましく、例えば300℃、500℃といった温度で設定するとよい。このような高温で親水性材料を焼き付けることにより、当該親水性材料に含まれる有機物を殆どあるいは完全に分解することができ、殆どあるいは完全に無機化された親水性コーティング300を形成することができる。
【0027】
また、この種の材料をコーティングする際には、基材に材料を吹き付ける前に当該基材の表面を脱脂する脱脂処理を行うことが一般的である。本実施形態では、基材であるドラム116および回転槽204は何れもステンレス製であるから、親水性材料の吹き付け前に行う脱脂処理において、例えばPH14の強アルカリ性の脱脂剤を用いて脱脂を行うことができる。よって、基材であるドラム116の表面あるいは回転槽204の表面から殆どあるいは確実に油脂成分を除去した上で親水性材料を吹き付けることができ、ドラム116の表面あるいは回転槽204の表面に対して親水性材料が馴染みやすくなる。
【0028】
また、本実施形態では、少なくとも以下の性能を有する親水性コーティング300を形成する親水性材料が適用される。即ち、本実施形態の親水性コーティング300は、水の接触角が、ガラスに対する水の接触角の下限値未満となる親水性能を有する。一般的に、ガラスに対する水の接触角の下限値は20度と考えられている。従って、本実施形態では、水の接触角が20度未満である例えば13度となる親水性コーティング300を形成する親水性材料が適用されている。なお、より水の接触角が小さくなる親水性材料を適用することも可能である。
【0029】
また、本実施形態では、親水性コーティング300を形成する親水性材料としてケイ素酸化物を含む材料が適用されており、この親水性材料により形成される親水性コーティング300は、少なくとも鉛筆硬度が5H以上となる硬度特性を有する。即ち、本実施形態の親水性コーティング300には、いわゆるシロキサン骨格とアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属とからなる強固な構造が形成されており、これにより、親水性コーティング300は、鉛筆硬度が5H以上という強固な構造を有している。
【0030】
また、本実施形態の親水性コーティング300はシラノール基を有しており、その親水性能が極めて高いものとなっている。具体的には、親水性コーティング300は、当該親水性コーティング300に付着した一般的な油性インクを、水を接触させるだけで取り除くことが可能なほどの親水性能を有する。よって、親水性コーティング300に一般的な油性ペンのインクを付着させたとしても、その部分に水を接触させることにより、当該インクが水によって浮き上がるようにして剥離し、除去される。
【0031】
また、本実施形態の親水性コーティング300は、10μm以下の厚さであり、その膜厚が極めて薄いものとなっている。即ち、一般的に親水性能を高めたい場合には、親水性材料のコーティングを繰り返す必要があり、従って、得られる親水性能部の膜厚が厚くなってしまう傾向がある。本実施形態では、1回の親水性材料のコーティングおよび焼き付けにより、極めて高い親水性能を有する親水性コーティング300が形成される親水性材料が適用されている。従って、親水性材料のコーティングを繰り返さなくとも、極めて高い親水性能を有する親水性コーティング300を形成することができ、これにより、親水性コーティング300の膜厚を10μm以下という薄さに抑えることができる。なお、図面では、便宜上、親水性コーティング300の膜厚を実際よりも厚くして示している。
【0032】
また、本実施形態の親水性コーティング300は、いわゆる表面粗さが2μm以内である。本実施形態では、このように極めて平滑な表面を有する親水性コーティング300が形成される親水性材料が適用されている。また、本実施形態で適用される親水性材料は、吹き付け前の状態では乳白色であるが、吹き付けた後には乳白色が殆ど認識できないほど透明となり、焼き付けた後には殆どあるいは完全に透明となる。
【0033】
このように構成された親水性コーティング300の表面は、当初から、つまり、水が接触する前から極めて高い親水性を示す。よって、
図3に例示するように、この親水性コーティング300に水Wが接触すると、その水Wが親水性コーティング300の表面と当該親水性コーティング300の表面に付着した汚れDとの間に「楔」のように浸入する。これにより、親水性コーティング300の表面から汚れDが浮き上がり、剥がされるようにして除去される。
【0034】
(撥水性による防汚機能について)
本実施形態では、洗濯機100が備える水槽108および洗濯機200が備える水槽202は、何れも撥水性材料が練り込まれた樹脂材料により構成されている。従って、水槽108,202は、その表面が撥水性を示すようになっている。本実施形態では、樹脂材料に練り込む撥水性材料として、フッ素系の撥水性材料を採用している。フッ素系の撥水性材料としては、例えば、パーフルオロアルキル基を含有する材料や、パーフルオロアルキル基を含有するアクリルポリマーなどが考えられる。また、水槽108あるいは水槽202を構成する樹脂材料に対する撥水性材料の添加量は、0.5〜5.0重量パーセントとすることが好ましい。撥水性材料の添加量が過少であると十分な撥水性を示すことができず、また、添加量が過剰であると強度が低下するからである。
【0035】
以上は、洗濯機100,200が備える「親水性による防汚機能」および「撥水性による防汚機能」について、それぞれ別個に説明した。次に、このように親水性および撥水性という2つの異なる性質に基づく防汚機能を備える洗濯機100,200において実現される相乗的な効果について、
図4を参照しながら説明する。
【0036】
即ち、親水性を示す親水性コーティング300の表面においては、水が存在しない状態では、撥水性を示す要素に比べ汚れが付着しやすい傾向がある。しかし、親水性コーティング300の表面に汚れが付着したとしても、上述したように、水が接触することにより、付着している汚れを容易に除去することができる。一方、撥水性を示す水槽108,202の表面においては、その撥水性により、そもそも汚れが付着しにくい。仮に汚れが付着したとしても、その付着力は非常に弱く、従って、容易に除去することができる。
【0037】
このように、親水性を示す親水性コーティング300の表面と、撥水性を示す水槽108,202の表面は、メカニズムは相違するものの、何れも、優れた防汚機能を発揮する。従って、親水性を示す親水性コーティング300の表面と撥水性を示す水槽108,202の表面とが対向する本実施形態の洗濯機100,200の構成によれば、回転槽116,204の表面および水槽108,202の何れにおいても、汚れが除去されやすい状態が実現される。従って、汚れは、親水性コーティング300の表面に残存したままとなることなく、且つ、水槽108,202の表面にも付着することなく、例えば排水とともに水槽108,202の外部に排出される。
【0038】
洗濯機100,200によれば、水槽108,202の表面が撥水性を示す構造となっている。従って、水槽108,202の表面に汚れが付着してしまうことを回避することができる。また、洗濯機100,200によれば、このように撥水性を示す水槽108,202の表面が、親水性を示す回転槽116,204の表面、換言すれば親水性コーティング300の表面に対向している。従って、親水性コーティング300から剥離した汚れが水槽108,202の表面に付着してしまうことを回避することができる。特に、回転槽116,204の回転時においては、親水性コーティング300の表面から剥離した汚れが遠心力の作用を受けて水槽108,202に飛び散る。しかし、水槽108,202の表面は撥水性を示すことから、飛び散った汚れが水槽108,202の表面に付着してしまうことを回避できる。
【0039】
要するに、洗濯機100,200によれば、撥水性と親水性の相乗効果により、水槽108,202の内面および回転槽116,204の外面の双方を衛生的に維持することができる。水槽108,202の内面および回転槽116,204の外面は、何れも、ユーザの手が届かず清掃などのメンテナンスを容易に行うことができない部位である。よって、本実施形態に係る構成によれば、洗濯機100,200において不衛生になりがちな部位を清潔に維持することができる。
【0040】
また、洗濯機100,200によれば、水槽108,202は、別体に設けられた皮膜により撥水性を示すのではなく、撥水性材料が練り込まれた樹脂材料により構成されることで撥水性を示す。即ち、水槽108,202そのものが撥水性を示す。よって、皮膜の剥がれ落ちに伴い防汚機能が低下あるいは消失するという課題が生じ得ず、従って、水槽108,202に備えられた撥水性による防汚機能を、低下あるいは消失させることなく維持することができる。
【0041】
また、洗濯機100,200によれば、親水性コーティング300は焼き付けにより強固に設けられている。そのため、親水性コーティング300は剥がれ落ちにくく、従って、回転槽116,204に備えられた親水性による防汚機能も、低下あるいは消失させることなく維持することができる。このように、樹脂製であるために防汚材料の焼き付けができない水槽108,202と、金属性であるために防汚材料の練り込みができない回転槽116,204とが対向する部位の何れにおいても、防汚機能を最適な組み合わせにて強固に発揮させることができ、洗濯機100,200の清潔性を長期にわたって維持することができる。
【0042】
また、洗濯機100,200によれば、水槽108,202に練り込む撥水性材料として、フッ素系材料を採用している。フッ素系の撥水性材料は、他の撥水性材料に比べ、表面張力が低い。従って、より汚れを付着しにくくすることができる。また、フッ素系の撥水性材料は、他の撥水性材料に比べ、化学的に安定している。従って、撥水性による防汚機能をより安定して維持することができる。また、フッ素系の撥水性材料は、他の撥水性材料に比べ、撥水性能が高い。そのため、より少量の混入量で大きな撥水性能を得ることができる。また、樹脂材料に対する撥水性材料の混入量を少なくできるから、樹脂材料により構成する構成要素の強度低下を抑えることができる。
【0043】
また、洗濯機100においては、排水経路150を構成する樹脂製部品の一例である機外排水ホース140も、撥水性材料を含む樹脂材料により構成するとよい。また、洗濯機200においては、排水経路208を構成する樹脂製部品の一例である排水パイプ208aも、撥水性材料を含む樹脂材料により構成するとよい。この構成によれば、水槽108,202から排出された汚れが排水経路中に付着し残存してしまうことを回避することができ、洗濯機100,200を、より衛生的に維持することができる。なお、機外排水ホース140および排水パイプ129を構成する樹脂材料に対する撥水性材料の添加量は、0.5〜5.0重量パーセントとすることが好ましい。撥水性材料の添加量が過少であると十分な撥水性を示すことができず、また、添加量が過剰であると強度が低下するからである。
【0044】
また、洗濯機100においては、水槽カバー108aおよびバランスリング122も、撥水性材料を含む樹脂材料により構成するとよい。また、洗濯機200においては、水槽カバー202aおよびバランスリング206も、撥水性材料を含む樹脂材料により構成するとよい。この構成によれば、水槽108,202内の汚れが水槽カバー108a,202aやバランスリング122,206に付着してしまうことを回避することができ、洗濯機100,200を、より衛生的に維持することができる。
【0045】
なお、水槽カバー108a,202aは、少なくともバランスリング122,206に対向する部分が撥水性材料を含む樹脂材料により構成されていればよい。また、バランスリング122,206は、少なくとも水槽カバー108a,202aに対向する部分が撥水性材料を含む樹脂材料により構成されていればよい。バランスリング122,206を構成する樹脂材料に対する撥水性材料の添加量は、0.5〜2.0重量パーセントとすることが好ましい。即ち、バランスリング122,206は、一般的に、本体部にカバー部をスピン溶接による摩擦熱により溶着させることで構成されるが、撥水性材料の添加量が過剰であると、溶着性の強度が低下するからである。また、撥水性材料の添加量が過少であると十分な撥水性を示すことがでないからである。
【0046】
また、洗濯機200においては、底部材204bおよびパルセータ207も、撥水性材料を含む樹脂材料により構成するとよい。この構成によれば、水槽108,202内の汚れが底部材204bやパルセータ207に付着してしまうことを回避することができ、洗濯機100,200を、より衛生的に維持することができる。なお、底部材204bは、少なくともパルセータ207に対向する部分が撥水性材料を含む樹脂材料により構成されていればよい。また、パルセータ207は、少なくとも底部材204bに対向する部分が撥水性材料を含む樹脂材料により構成されていればよい。また、底部材204bあるいはパルセータ207を構成する樹脂材料に対する撥水性材料の添加量は、0.5〜5.0重量パーセントとすることが好ましい。撥水性材料の添加量が過少であると十分な撥水性を示すことができず、また、添加量が過剰であると強度が低下するからである。
【0047】
なお、本実施形態は、上述した実施形態に限られるものではなく、例えば以下のように拡張または変形することができる。
洗濯機100は、例えばバッフル119を、撥水性材料を含む樹脂材料により構成してもよい。また、洗濯機100,200は、特に水が接触する部品を樹脂で構成する場合には、その部品を、撥水性材料を含む樹脂材料により構成することができる。また、洗濯機100,200は、回転槽116,204の外面の全体に親水性コーティング300を設ける構成としてもよいし、外面の一部に親水性コーティング300を設ける構成としてもよい。また、樹脂材料に含める撥水性材料は、要求される強度や撥水性のレベルに応じて適宜変更して実施することができる。また、親水性コーティング300を構成する親水性材料は、適宜変更して実施することができる。
【0048】
本実施形態に係る洗濯機は、水槽と回転槽を備える。回転槽は、水槽内に回転可能に設けられ、その外面には親水性コーティングが施されている。水槽は、撥水性材料を含む樹脂材料により構成されている。この構成によれば、水槽に防汚機能を備えた洗濯機に関し、その防汚機能を低下や消失させることなく維持することができる。
【0049】
なお、上述の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。本実施形態およびその変形は、発明の範囲および要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。