(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照して、本発明に係る認知症予防システムの実施形態を説明する。
【0013】
以下に説明する認知症予防システムは、認知症の予防、認知症の進行の遅延、改善のためのトレーニング(以下「認知症予防プログラム」ともいう)に使用される装置である。認知症予防システムは被験者に対して、所定の問題(質問)群を順次提示(表示)する。被験者は、提示された問題に対して順次解答することでトレーニングを実施する。このトレーニングを定期的に(例えば、1日1回かつ週2回以上)繰り返すことによって、認知症の予防、認知症の進行の遅延、改善を図ることが期待できる。
【0015】
図1は、本発明に係る認知症予防システムの一例である認知症予防装置の構成を示した図である。認知症予防装置1はタブレット型コンピュータで構成されるが、タブレット型コンピュータに限らず、パーソナルコンピュータ(ノート型、デスクトップ型)、スマートフォンのような他の形態の情報処理装置で構成されもよい。
【0016】
認知症予防装置1は、その全体動作を制御する制御部11と、文字や画像等の情報を表示する表示部17と、ユーザが操作を行う操作部19と、データやプログラムを記憶するデータ記憶部30と、外部機器やネットワークを通信するためのインターフェース部25とを備える。
【0017】
表示部17は例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイで構成される。操作部19はタッチパネルやボタンを含む。操作部19はさらにキーボードやマウス等を含んでもよい。
【0018】
インターフェース部25は、プリンタ等の外部機器やネットワークに接続するための手段である。インターフェース部25にプリンタを接続した場合、そのプリンタに印刷させることが可能となる。また、インターフェース部25を介してネットワークに接続し、ネットワークを経由して外部機器との間でデータのやりとりを行うことも可能である。インターフェース部25は、USB、HDMI(登録商標)、IEEE1394、IEEE802.11、WiFi等の所定の規格に準拠してデータ通信を行う手段である。また、インターフェース部25は、3GやLTE等の通信規格に準拠して通信を行う手段であってもよい。
【0019】
制御部11は、後述する機能を実現するため、認知症予防装置1の全体動作を制御する。制御部11はCPUやMPUで構成され、データ記憶部30に記憶された所定の制御プログラム(OS,アプリケーションプログラム)を実行することで種々の機能を実現する。制御部11で実行される制御プログラムは通信回線を通じてネットワークから提供されてもよいし、またはCD−ROM等の記録媒体を介して提供されてもよい。なお、制御部11の機能はハードウェアとソフトウェアの協働により実現してもよいし、専用のハードウェアのみで実現してもよい。
【0020】
データ記憶部30はデータやプログラムを記憶する手段であり、制御部11で実行される制御プログラム、種々のデータベース、データを格納する。データ記憶部30は例えばハードディスク(HDD)や半導体記憶装置(SSD)で構成される。本実施形態では、データ記憶部30は、制御プログラム31、被験者データベース32、問題データベース33、解答結果データベース34、及び問題データファイル35を格納している。各種データベース32〜34および問題データファイル35については後述する。
【0021】
1.1 認知症の程度に基づくグループ分け
本実施形態では、被験者を認知症の進行レベルに基づきグループ分けしている。そして、認知症予防装置1は、被験者に問題を提示する際には、被験者のグループに関連づけられた問題群の中から選択した問題をその被験者に対して提示する。以下、本実施形態における、被験者のグループ分けの考え方について
図2、
図3を参照して説明する。
【0022】
被験者のグループ分けは所定の条件に基づいて行う。具体的には、
図2に示すように、認知症の進行レベルに加えて、被験者の性別と年齢をも考慮してグループ分けを行っている。
【0023】
すなわち、被験者が男性であるか女性であるか、年齢が65歳未満、65歳以上〜74歳以下、75歳以上であるか、及び認知症の進行レベル(TDASの結果)に基づいて複数のグループに分類されている。
【0024】
認知症の進行レベルは、例えばTDASの結果 、すなわち、TDASの総得点および/または解答に要した経過時間(30分以上か否か)の値に基づき判断される。例えば、TDASの得点が0〜6点のとき「正常」に、7〜13点のとき「予備軍」に、14点以上または経過時間が30分以上のときは「認知症」にそれぞれ分類される。
【0025】
性別、年齢、認知症の進行レベルに基づきグループ分けすることで、
図3に示すように、被験者を18のグループに分類している。そして、本実施形態では、被験者のグループ毎に問題群を関連づけている。すなわち、被験者のグループのそれぞれに、そのグループに属する被験者の進行レベル等に応じて選択(決定)された複数の問題が割り当てられている。
【0026】
例えば、認知症進行レベルが「正常」(TDAS得点が6点以下)である被験者のグループ(グループ01、04、07、10、13、16)は、中級の問題(初級の問題よりも高度な問題)を含んでいる。これは、認知症の進行レベルが「正常」である場合、認知症は確認できないか又はきわめて低いことから、将来の発症を予防するための脳を刺激する問題を提示すればよいからである。
【0027】
また、認知症進行レベルが「予備軍」(TDAS得点が7〜13点)である被験者のグループ(グループ02、05、08、・・・)には、初級の問題が割り当てられる。この初級の問題のレベルは中級よりも易しいレベルに設定される。
【0028】
また、認知症進行レベルが「認知証」(TDAS得点が14点以上または解答時間30分以上)である被験者のグループ(グループ03、06、09、・・・)には、認知症進行レベルが「予備軍」の被験者のグループの問題のレベルよりも易しいレベルの問題が割り当てられる。認知症の進行が「予備軍」の場合よりもさらに進行していることから、「予備軍」の場合よりも易しいレベルの問題を提示することで、被験者の問題への取り組み意欲を低下させないようにするためである。なお、認知症進行レベルが「認知症」である被験者のグループの問題群の中に、「予備軍」の被験者に提示される問題のレベルと同じレベルの問題を含めても良い。
【0029】
性別、年齢、認知症の進行程度、障害された認知機能の種類の4つの条件に基づきグループ分けしたことにより、被験者の認知症進行レベルや障害された機能は同じであっても、被験者の性別や年齢に応じて異なる問題を提示でき、よりきめ細かい条件に基づいて問題を提示することが可能になる。
【0030】
以上のように、認知症予防装置1は、被験者のグループ毎に出題する問題を対応づけており、被験者の状態(性別、年齢、認知症の程度)に応じた問題を提示できるようになっている。例えば、性別が男性、年齢が65歳未満、および認知症進行レベルが正常(TDAS得点が6点以下)である被験者の場合、グループ01に属すると特定され、グループ01に関連づけられた問題が選択されて被験者に提示される。これにより、被験者に対して、性別、年齢および認知症の進行レベルを考慮し、より効果が期待できると考えられる問題を提供することが可能となる。
【0031】
1.2 データベース
以下、本実施形態の認知症予防装置1で管理するデータベース(DB)32〜34について説明する。
【0032】
(1)被験者データベース
図4に被験者データベース32のフォーマットを示す。被験者データベース32は、被験者の個人的な情報を管理するデータベースである。被験者データベース32は、被験者ID、被験者の氏名、生年月日、性別、年齢、学歴(教育歴)、習慣、居住地域、グループ、認知症進行レベル等の認知症に関連すると考えられる因子を含む。
【0033】
「被験者ID」は、被験者を個々に識別するための識別情報(ID)である。「習慣」は、被験者のアルコール摂取やタバコの喫煙についての習慣の有無や頻度を示す情報である。「居住地域」は、被験者の居住地域の種類を示す情報であり、例えば「都会」、「山間部」、「海辺」等を示す情報である。「グループ」は、所定の条件にもとづき、認知症の程度に関して被験者をグループ分けした場合の、被験者が属するグループを示す情報である。このグループについては後述する。
【0034】
「認知症進行レベル」は、被験者の認知症の進行レベルを示す情報であり、本例では、TDASによる結果(TDASの得点、解答時間、どのような問題が間違えられているか等)を用いる。TDASでは、図形認識、概念理解、名称記憶、見当識、お金の計算、道具の理解、時計の理解等を確認するための問題が提示され、それらの問題に対する被験者の解答が得られる。認知症予防装置1は、被験者毎に、それらの問題に対する解答結果(解答の内容、正誤、経過時間等)を「認知症進行レベル」として管理する。なお、TDASの結果については、認知症予防装置1内部ではなく、外部サーバで管理してもよい。その場合、認知症予防装置1が必要に応じて外部サーバにアクセスし、それらの情報を取得するようにすればよい。
【0035】
また、被験者データベース32は、各被験者に対して、図形認識、概念理解及び/またはお金の計算において障害があるか否かの情報を格納している。なお、被験者データベース32は、上記の項目の他に、被験者の体型(やせ型、普通、肥満等)、運動の有無、自動車運転の頻度等の生活背景情報、血圧、病歴等の身体関連情報を含んでも良い。
【0036】
(2)問題データベース
前述のように、本実施形態では、被験者の条件(性別、年齢、認知症進行レベル、障害された機能)に応じて被験者をグループ分けし、被験者のグループに応じて問題を設定している。問題データベース33は、各グループと、そのグループに割り当てられる問題群とを関連づけるデータベースである。
図5は、問題データベース33の構成を説明した図である。例えば、
図5の例では、性別が男性で年齢が65歳以下で、認知症進行レベルが6点以下の被験者に対するグループ01には、問題1、問題2、問題3、・・・が割り当てられる。また、性別が男性で年齢が65歳以上75歳未満で、認知症進行レベルが6点以下の被験者に対するグループ04には、問題1、問題3、問題5、・・・が割り当てられる。
【0037】
このように、問題データベース33により、各グループと、そのグループに対応する問題とを関連づけていることから、問題データベース33を更新することで各グループに割り当てられる問題(すなわち、被験者に提示する問題)を適宜変更することができる。
【0038】
各問題の内容については、問題データファイル35として管理している。問題データファイル35は個々の問題に関する情報を含む。具体的には、問題データファイル35は、個々の問題について、問題を表示するための画像データに加えて、問題の種別や、解答時間の閾値、解答の選択肢、正答を示すデータ、等を含む。なお、問題データファイル35は、個々の問題を識別情報(問題ID)により区別して管理している。「問題の種別」は、認知症で障害される図形認識、計算、記憶、実行機能、見当識等を刺激する問題、もしくは認知症に対して効果的であることが分かっている回想療法、音楽療法、RO(Reality Orientation:現実見当識訓練)療法等の認知機能を刺激する療法に関連する問題の種類を示す情報である。
【0039】
(3)解答結果データベース
解答結果データベース34は、被験者による問題に対する解答結果を管理するデータベースである。解答結果データベース34は、各被験者について問題毎に解答した結果を管理する。
図6に、解答結果データベース34のフォーマットを示す。解答結果データベース34は、問題ID、被験者ID、グループID、問題の実施日時、問題に対してなされた解答、正誤の結果、解答までに要した経過時間に関する情報を含む。
【0040】
「問題ID」は、管理する問題を特定するIDである。「被験者」は、その問題に解答した被験者の被験者IDを含む。「グループ」は被験者の属するグループのIDである。「実施日時」は、問題が実施された日時の情報である。「解答」は、問題に対してなされた解答の内容(選択肢)を示す情報である。「正誤」は、その問題に対する解答が正解であったか誤答であったかを示す情報である。「経過時間」は、問題提示から解答までに要した時間である。
【0041】
2.動作
本実施形態の認知症予防装置1の動作を説明する。特に以下では、被験者に対して、認知症の進行の予防や改善を目的としたトレーニング用の問題を提示する機能に関して、
図7のフローチャートを参照して動作説明を行う。
【0042】
認知症予防装置1が起動されると、制御部11は、
図8に示すようなメニュー画面を表示部17に表示する。このメニュー画面上で被験者により「ものトレ」(認知症予防トレーニング用のアイコン)のアイコンが選択されると、制御部11は表示部17に被験者のIDとパスワードの入力画面を表示する(S11)。
【0043】
被験者によりIDとパスワードが入力されると、制御部11は、それらに基づき認証を行い、それらの情報が正当であると判断されると、被験者IDに基づき被験者データベース32を参照して、被験者の属するグループを特定する(S12)。
【0044】
制御部11は、問題データベース33を参照して、特定した被験者のグループに対応する問題群の中から適宜所定数の問題を選択する(S13)。ここで、所定数は、被験者の負担とならないような数に設定される。例えば、トレーニング時間が10分以内となるような問題数に設定される。
【0045】
ここで、被験者の認知症進行レベルが「予備軍」である場合、さらに、被験者の認知症の内容に応じて問題を区別している。すなわち、
図2に示すように、被験者の認知症進行レベルが「予備軍」である場合、被験者が、図形認識、概念理解及び/またはお金の計算において障害があるか否かによって選択する問題をさらに限定している。つまり、被験者が、図形認識、概念理解及び/またはお金の計算において障害がある場合は、計算以外の問題を選択するようにする。一方、これらについて障害がない場合、同じグループの問題群の中から、認知刺激、回想療法、音楽&RO療法に関する問題を選択するようにする。問題データファイル35では、個々の問題について「問題の種別」を管理していることから、この情報を参照することで、制御部11は、その問題が計算の問題なのか、認知刺激、回想療法、音楽&RO療法に関するものかを判断することができる。また、被験者データベース32は、各被験者に対して、図形認識、概念理解及び/またはお金の計算において障害があるか否かの情報を格納している。よって、この被験者データベース32の情報と、問題データファイル35の「問題種別」とを参照することで、制御部11は、被験者のグループに対応する問題群の中から、被験者の認知症の内容に応じた問題を選択することができる。
【0046】
制御部11は、選択した複数の問題を表示部17に1つずつ表示し、被験者の解答を受ける(S14)。なお、問題を提示する際に、画像表示にともない音声によるガイダンスを出力してもよい。
【0047】
図9A〜9Mに、本実施形態の認知症予防装置1により被験者に対して提示される、認知症予防トレーニング用の問題の画像の例を示す。
【0048】
図9A〜
図9Bは、左右の写真の違うところを選ぶ問題である。被験者は、タッチやマウス等により、違うと思う箇所を指示することで解答する。
図9Cは、正解した場合であり、「○」が表示されている。
図9D、9Eは、写真の中で、ある特徴を探す問題である。被験者は、タッチやマウス等により、ある特徴があると思う箇所を指示することで解答する。
図9F、9Gは、図形認識をトレーニングするための問題である。本例では、丸、三角、四角の形状認識についてトレーニングする。
図9Hは、誤答した場合であり、「おしい」の文字が表示されている。
図9Iは、数字の大小をトレーニングするための問題である。
図9Jは、お金の計算をトレーニングするための問題である。
図9K、9Lは、計算に関する問題である。
図9Mは、名称記憶に関する問題である。
【0049】
図7に戻り、被験者からの解答(選択肢の選択)があると、制御部11は、正誤を判定し、判定結果を表示部17に表示する(S15)。例えば、正解の場合、
図9Cに示すように「○」を表示し、不正解の場合、
図9Hに示すように「おしい」または「×」を表示する。
【0050】
選択された全ての問題が提示されるまで上記の処理を繰り返す(S14〜S16)。
【0051】
全ての問題が提示され、解答されると、制御部11は、
図10に示すように、解答結果(問題毎の正解率や解答時間等)を表示部17に表示する(S17)。
【0052】
最後に、制御部11は、被験者のトレーニングの実施結果すなわち各問題に対する解答結果を解答結果データベース34に記録(更新)する(S18)。すなわち、制御部11は、問題毎に、経過時間、正誤、被験者の選択した解答(選択肢)等の情報を、解答結果データベース34に記録(更新)する。
【0053】
以上のように、本実施形態の認知症予防装置1によれば、被験者を所定の条件に基づきグループ分けし、グループに応じた問題を提供する。これにより、被験者の状態に応じて、より効果が期待できると考えられる問題を提示することが可能となる。
【0054】
さらに、本実施形態の認知症予防装置1によれば、問題に対する解答結果を解答結果データベース34に蓄積していく。そのため、解答結果データベース34に蓄積されたデータ及び別途行ったTDASの結果を参照することで、各問題について各被験者のグループにおいて効果の有無を検証することができる。そして、その検証結果を基に問題データベース33を更新することで、被験者の状態に応じたより適切な問題を被験者に提示することが可能となる。
【0055】
なお、上記の例では、被験者のグループ分けは、性別、年齢、認知症進行レベルおよび障害される機能に基づき行った。しかし、被験者のグループ分けの仕方はこれに限定されない。例えば、認知症進行レベルのみに基づき被験者のグループ分けを行っても良い。または、認知症進行レベルと、性別または年齢とに基づき被験者のグループ分けを行っても良い。または、認知症進行レベルと、他の被験者の条件(習慣、学歴、体格等)とに基づき被験者のグループ分けを行っても良い。
【0056】
また、上記の例では、各種データベース33〜34やデータファイル35を、認知症予防装置1内に保持した例を説明した。しかし、これらのデータベース33〜34やデータファイル35は、外部のサーバに保持しておいてもよい。その場合、認知症予防装置1は、必要に応じて外部のサーバからそれらのデータをダウンロードすればよい。
【0057】
3.効果の確認
上記の認知症予防装置1を用いて実際に認知症と判断されている二人の被験者に対してトレーニング(認知症予防プログラム)を行ってもらい、その結果を検証した。トレーニングにおいては各被験者の属性(性別、年齢、認知症進行レベル(TDAS得点))に基づきグループ分けを行い、グループに対応した問題を各被験者に提示した。以下に、その検証結果を示す。
(1)被験者A
・性別:男性
・年齢:75歳
・認知症進行レベル:認知症
・TDAS得点:35点
・要介護度:要介護1
・暴言暴力あり、不安感あり、感情表現が乏しい
上記の属性を持つ被験者Aに対して、週3回のトレーニングをしてもらった。トレーニングを開始して35日後には、不機嫌になることが少なく、笑顔がでるようになった。また、40日後には、積極的に洗濯物干しを希望したり、43日後には、隣の人に一緒にパズルをしようと話しかけたりする等、積極性が見られるようになった。45日後に、再度TDASを実施したところ、26点であり、改善が見られた。トレーニングにおいて、正解することが自信に繋がったように思われる。家族より、約一月半のトレーニングの結果、以前より笑顔と意欲の向上が見られるようになったとの意見を得た。
【0058】
(2)被験者B
・性別:女性
・年齢:83歳
・認知症進行レベル:認知症
・TDAS得点:29点
・要介護度:要介護1
・もの忘れ、顔が憶えられない
上記の属性を持つ被験者Bに対して、週3回のトレーニングをしてもらった。トレーニングを開始して28日後には、笑顔が出るようになった。また、トレ-ニングが楽しみになってきた。43日後に再度TDASを実施したところ、17点であり、改善が見られた。以前は何もしなかったのに対して、51日後には、被験者B自ら食器を洗っているところが確認され、積極性が見られた。また、以前は顔が覚えられなかったのに対して、64日後には、隣人の方がデイサービスに通っておられるので一緒に行きたい旨の発言があり、顔を覚えていることがわかる発言が見られた。また、近所の人と一緒のデイサービスを楽しみにするようになった。家族より、約二ヶ月のトレーニングの結果、以前よりも活気が出て会話が増え、より積極的になったとの意見を得た。
【0059】
以上のように、被験者A、Bに対して行った本認知症予防装置1を用いたトレーニングにより、TDAS得点(認知症進行レベル)の改善が見られるとともに、不機嫌になることが少なくなったり、活気が出て会話が増加したり等、QOL(Quality Of Life)においても改善が確認できた。
【0060】
(実施の形態2)
実施の形態1で説明した認知症予防装置1が提供したトレーニング機能(認知症予防プログラム)を、ネットワークを通じて提供するようにしてもよい。例えば以下のようにシステムを構成してもよい。
【0061】
図11に、本実施形態の認知症予防システムの構成を示す。認知症予防システムは、認知症予防プログラム提供サーバ110と情報端末50とを含む。認知症予防プログラム提供サーバ110と情報端末50はネットワーク100に接続され、ネットワーク100を介して互いに通信が可能になっている。
【0062】
認知症予防プログラム提供サーバ110は、実施の形態1で示した認知症予防装置1と同様の機能を提供するサーバであり、認知症予防装置1と同様の構成を有する。情報端末50は、タブレット端末、パーソナルコンピュータ、スマートフォンのような端末である。認知症予防プログラム提供サーバ110は、インターフェース部(25)を介して、ネットワーク100上で情報端末50と通信する。なお、認知症予防プログラム提供サーバ110、認知症データサーバ120及び情報端末50には、以下に説明する機能を実行するための専用のソフトウェア(アプリケーションプログラム)が実装されている。
【0063】
情報端末50は、特定のURLに基づき提供サーバ110に接続する。認知症予防プログラム提供サーバ110は、情報端末50に対して被験者IDとパスワードの入力を要求する。被験者により、情報端末50から被験者IDとパスワードが入力されると、認知症予防プログラム提供サーバ110は、入力された被験者IDとパスワードにしたがい認証を行う。
【0064】
認証がOKであれば、認知症予防プログラム提供サーバ110は、被験者IDから被験者を特定し、その被験者に応じたトレーニング問題を選択し、選択した問題のデータを情報端末50に送信する。
【0065】
情報端末50は、受信したデータに基づき、トレーニング問題を表示部に表示し、被験者の入力に応じて問題の提示を進行させていく(このときの処理は実施の形態1で示したとおりである)。
【0066】
全ての問題の提示/解答が終了すると、情報端末50はその結果をネットワークを介して認知症予防プログラム提供サーバ110に送信する。認知症予防プログラム提供サーバ110は、受信した結果に基づき解答結果データベース34を更新する。
【0067】
以上のような構成によれば、制御プログラム31や各種データベース32〜34等を情報端末50に格納しておく必要がなく、また、ネットワークに接続できる環境にあれば、いつでも認知症予防プログラムを利用できることから、被験者の利便性を向上できる。
【0068】
なお、解答結果データベース34に蓄積されたデータ及びTDASの結果を匿名化した上で、ネットワーク上のサーバ(認知症データサーバ)120に集約し、ネットワーク上で所定のユーザにまとめて提供できるようにしてもよい。これにより、多くの研究者等が認知症に関するデータを共有し、活用できるようになるため、認知症分野の研究が促進されることが期待される。
【0069】
(まとめ)
上記の実施形態は以下の認知症予防システムの思想を開示している。
【0070】
認知症予防システムは、認知症を予防するためのトレーニングに用いる問題を提示する認知症予防システムである。認知症予防システムは、認知症の進行に関して被験者をグループ分けし、当該グループ毎に問題に関する情報を管理する問題データベース(33)を格納するデータ記憶手段(30)と、被験者に提示する問題を決定する制御手段(11)と、を備える。制御手段(11)は、問題データベース(33)を参照して、被験者が属するグループに基づいて前記被験者に提示する問題を決定し、被験者に提示する。この構成により、被験者個々の状況に応じた、より適切な問題を被験者に提示することができる。
【0071】
グループは、被験者の性別、年齢及び認知症の進行レベルに基づいて分類されてもよい。により、被験者の性別や年齢を考慮した被験者個々の状況に応じた、より適切な問題を被験者に提示することができる。
【0072】
認知症予防システムは、問題毎に、被験者の問題に対する解答結果及び解答までの経過時間を管理する結果データベース(34)をさらに備えてもよい。制御手段(11)は、被験者毎に及び問題毎に、問題に対する被験者の解答結果及び解答までの経過時間を結果データベース(34)に記録してもよい。この構成により、結果データベースに、各問題に対する解答結果等を蓄積できるため、この蓄積されたデータを参照して、各問題の効果を判断することができる。そして、その判断結果に基づいて、被験者に対してより効果が期待できる問題が提示できるように問題データベースを更新することができる。
【0073】
認知症予防システムは、表示手段(17)をさらに備えてもよい。制御手段(11)は、決定した問題を表示手段(17)に表示させてもよい。
【0074】
または、認知症予防システムは、外部情報端末(50)と通信するためのインターフェース部(25)をさらに備えてもよい。制御手段(11)は、インターフェース部を介して、決定した問題を外部情報端末(50)に送信してもよい。