(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6591774
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】射出成形金型におけるバルブピンの駆動装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/28 20060101AFI20191007BHJP
B29C 45/30 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
B29C45/28
B29C45/30
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-79818(P2015-79818)
(22)【出願日】2015年4月9日
(65)【公開番号】特開2016-198925(P2016-198925A)
(43)【公開日】2016年12月1日
【審査請求日】2018年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000147888
【氏名又は名称】エスバンス 株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】木下 高利
【審査官】
山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−008782(JP,A)
【文献】
特開2009−029084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形金型における固定側金型の型板上に配設した樹脂通路を有するホットランナーブロックを貫通して上記型板に設けたゲートブッシュに進退自在に挿入され、上記樹脂通路に連通した上記ゲートブッシュ内の樹脂通路の下端に設けているゲートを開閉するバルブピンの駆動装置であって、ホットランナーブロックの側方における上記型板上に電動モータと内部にボールネジを設けているガイド筒部材とを、ガイド筒部材を上記ホットランナーブロック側に向けて並設していると共に、上記電動モータの回転軸を減速機構を介して上記ボールネジのネジ軸の下端部に連結して電動モータの作動によるネジ軸の回転によってボールネジのボールナットを上記ガイド筒部材の内周面に沿って上下動させるように構成してあり、さらに、上記ガイド筒部材の上面に固定板をその一部がガイド筒部材から上記ホットランナーブロック側に向かって突出した状態に固着してその突出端部にレバーにおける長さ方向の中間部を回動自在に枢着していると共にこのレバーの一端部と他端部とを上記バルブピンの上端頭部とボールナットの上端とにそれぞれ回動自在に連結してボールナットの上下動をレバーを介してバルブピンの上下方向の進退動として伝達するように構成したことを特徴とする射出成形金型におけるバルブピンの駆動装置。
【請求項2】
減速機構は噛合歯車列からなることを特徴とする請求項1に記載の射出成形金型におけるバルブピンの駆動装置。
【請求項3】
レバーの支点とバルブピンの上端頭部に連結しているレバーの端部との間の距離よりもレバーの支点とボールナットの上端に連結しているレバーの端部との間の距離を長くしていることを特徴とする請求項1に記載の射出成形金型におけるバルブピンの駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は射出成形機の金型の固定側金型に設けているバルブピンを作動させてキャビティに通じる樹脂通路のゲートを開閉させるためのバルブピンの駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金型における固定側金型の型板上に装着しているホットランナーブロック内の樹脂通路にノズルから溶融樹脂を供給し、この溶融樹脂を上記固定側金型の型板に設けているゲートブッシュ内の樹脂通路を通じて該ゲートブッシュのゲートからキャビティ内に充填する際に、ゲートブッシュに挿入しているバルブピンを後退させることによってゲートを開放し、充填後に該バルブピンを前進させることによってゲートを閉止している。
【0003】
このようなバルブピンの駆動装置としては、従来から固定側金型の型板上に装着している上記ホットランナーブロック上に油圧シリンダ又はエアシリンダを設置し、このシリンダのピストンロッドをホットランナーブロックから突出した上記バルブピンの突出端に一体に連結し、該シリンダの作動によりバルブピンを進退させてゲートを開閉させるように構成している装置が広く知られている。
【0004】
しかしながら、油圧シリンダ又はエアシリンダの作動では、バルブピンを開閉のみの動作しか行わせることができず、ゲートブッシュ内の樹脂通路を通じて溶融樹脂を該ゲートブッシュのゲートからキャビティ内に充填する際のゲートの開度制御やバルブピンの速度制御が困難であるため、例えば、バンパー等の自動車関連の製品を製造する大型金型のように、キャビティに充填するゲートを複数箇所に設けている場合には、それぞれのゲートの開度をキャビティ内の形状に応じて精密に制御することができず、品質の良い製品を製造することが困難であるといった問題点がある。
【0005】
このため、特許文献1に記載されているように、射出成形金型における固定側金型の型板上に配設した樹脂通路を有するホットランナーブロックを貫通して上記固定側金型の型板に設けたゲートブッシュに進退自在に挿入され、上記樹脂通路に連通した上記ゲートブッシュ内の樹脂通路の先端に設けているゲートを開閉するバルブピンの駆動装置において、上記ホットランナーブロックの上方に冷却ブロックを配設し、この冷却ブロックを貫通して上記バルブピンの上部を上方に突出させると共に、冷却ブロック上に、電源の供給によって回転する管状のローラを備えたリニアモータを設置して、そのロータの内周面に設けている螺旋部に上記バルブピンの上部を螺合させ、ロータの正逆回転によってバルブピンを上下方向に直線移動を行わせゲートを開閉させるように構成した装置が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−170029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記バルブピンの駆動装置によれば、パルス信号によるリニアモータのロータの回転量に応じてバルブピンの移動量を制御できるので、ゲートの開閉量の調整が可能となって品質のよい成形品を製造することができるといった利点を有する。しかしながら、リニアモータのロータにバルブピンを直結させているため、ロータの回転によるバルブピンの推力が従来の油圧又はエアシリンダによる推力に比して極めて小さくなり、大きな推力を必要とする大型金型用のバルブピン駆動装置として採用することが困難であるといった問題点がある。
【0008】
また、リニアモータはホットランナーブロックの上方に設置されるために金型全体の厚みが厚くなり、特に、深絞りの成形品を得るための大型金型においては、その固定側金型と移動側金型をそれぞれ固定ダイプレートと移動ダイプレートに装着して成形品を製造する際に金型の厚みが増加するとそれに対応した型締めストロークの調整が困難となる。
【0009】
さらに、リニアモータがホットランナーブロックからの発熱による影響を受けないようにするために、ホットランナーブロックとリニアモータとの間に冷却ブロックを介在させなければならず、金型構造が複雑化するばかりでなく、この冷却ブロックの存在によって金型全体の厚みがさらに増加し、それに対応した型締めストロークの調整が困難となって深絞り等の大型成形品を製造することができなくなるといった問題点がある。
【0010】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、バルブピンの駆動に電動モータを採用しているにもかかわらず、バルブピンにエアシリンダによる推力と同等な大きな推力を付与することができ、その上、金型全体の厚みを薄くし、且つ、電動モータを冷却する冷却ブロック等を不要にすることができ、大型金型用として適した射出成形金型におけるバルブピンの駆動装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の射出成形金型におけるバルブピンの駆動装置は、請求項1に記載したように、射出成形金型における固定側金型の型板上に配設した樹脂通路を有するホットランナーブロックを貫通して上記型板に設けたゲートブッシュに進退自在に挿入され、上記樹脂通路に連通した上記ゲートブッシュ内の樹脂通路の下端に設けているゲートを開閉するバルブピンの駆動装置であって、ホットランナーブロックの側方における上記型板上に電動モータを設置し、この電動モータの回転軸を減速機構を介してボールネジのネジ軸の下端部に連結して電動モータの作動によるネジ軸の回転によってボールネジのボールナットを上下動させるように構成していると共に、上記バルブピンの上端頭部とボールナットの上端とを、長さ方向の中間部を支点として上下方向に回動するレバーの一端部と他端部とにそれぞれ回動自在に連結してボールナットの上下動をレバーを介してバルブピンの上下方向の進退動として伝達するように構成している。
【0012】
このように構成した射出成形金型におけるバルブピンの駆動装置において、請求項2に係る発明は、電動モータの回転をバルブピンに伝達するための減速機構は噛合歯車列からなることを特徴とする。
【0013】
また、請求項3に係る発明は、上記レバーの支点とバルブピンの上端頭部に連結しているレバーの端部との間の距離よりもレバーの支点とボールナットの上端に連結しているレバーの端部との間の距離を長くしていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、バルブピンを駆動する電動モータを、固定側金型の型板上に配設しているホットランナーブロック上ではなく、このホットランナーブロックよりも高さの低い上記型板上に設置しているので、固定側金型全体の高さを低く設定することができ、従って、深絞りの成形品を得るための深いキャビティを形成した大型の金型であっても、型締めストロークの調整が容易に行えるように射出成形機のダイプレートに取りつけることができる。さらに、ホットランナーブロックに対して側方の、ホットランナーブロックからの発熱による影響を受け難い固定側金型の型板上に電動モータを設置しているので、冷却ブロック等の冷却手段を不要にすることができる。
【0015】
また、上記固定側金型の型板上に設置した電動モータの回転軸を減速機構を介してボールネジのネジ軸の下端部に連結して電動モータの作動によるネジ軸の回転によってボールネジのボールナットを上下動させるように構成していると共に、バルブピンの上端頭部とボールナットの上端とを長さ方向の中間部を支点として上下方向に回動するレバーの一端部と他端部とにそれぞれ回動自在に連結しているので、電動モータの回転軸の回転をバルブピンの上下方向の直線運動に円滑に変換してバルブピンを正確に作動させることができると共に減速機構によってバルブピンに油圧シリンダやエアシリンダによる推力と同等の大きな推力を生じさせることができ、従って、自動車関連の成形品を得るための大型金型用として適した射出成形金型におけるバルブピンの駆動装置を提供することができる。
【0016】
さらに、電動モータの回転を減速機構とボールネジ及びレバーとによってバルブピンに微小単位の位置設定が可能な上下移動として変換することができ、キャビティに溶融樹脂を充填するゲートの開度を精度良く調整することができて、溶融樹脂の充填量を極めて正確に設定することができ、従って、大型金型のように複数のゲートからキャビティに溶融樹脂を充填する際に、各ゲートからの溶融樹脂の充填量をキャビティ内の形状等に応じて正確に調整して均一で高品質の成形品を製造することができる。
【0017】
請求項2に係る発明によれば、上記電動モータの回転をバルブピンに伝達するための減速機構は噛合歯車列からなるので、この噛合歯車列によって電動モータからボールネジ側に伝達する回転トルクを高トルクに変換することができ、長さ方向の中間部を支点としてその両端部をバルブピンの上端頭部とボールナットの上端とにそれぞれ回動自在に連結しているレバーを介してバルブピンの推力を増大させることができる。
【0018】
さらに、請求項3に係る発明によれば、上記レバーの支点とバルブピンの上端頭部に連結しているレバーの端部との間の距離よりもレバーの支点とボールナットの上端に連結しているレバーの端部との間の距離を長くしているので、上記噛合歯車列と共にこのレバーによってバルブピンの推力を一層増大させることができると共にゲートを開閉するバルブピンの位置をさらに微小単位に設定することができ、大型金型に最適なバルブピンの駆動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図4】バルブピンを閉止している状態の簡略縦断正面図。
【
図5】バルブピンを開放している状態の簡略縦断正面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、
図1において、金型における固定側金型1はその型板1aの上面に、内部に樹脂通路4を設けている一定高さ(厚み)を有するホットランナーブロック3を配設して型板1a上に配設、固定している。
【0021】
このホットランナーブロック3の上面中央部には、内部の樹脂通路4に溶融熱可塑性樹脂(以下、溶融樹脂とする)を注入するノズル5を突設してあり、樹脂通路4はこのノズル5の開口下端から水平方向に分岐して固定側金型の上記型板1aの複数箇所に設けられているゲートブッシュ6内の樹脂通路7の上端に連通している。
【0022】
各ゲートブッシュ6は上記固定側金型1の型板1aを上下方向に垂直に貫通するようにこの型板1a内に装着されてあり、その上端面をホットランナーブロック3の下面に密着させて樹脂通路7の上端を上記ホットランナーブロック3の樹脂通路4に連通させていると共に、下端部を固定側金型1の型板1aと可動側金型2の型板2aとの型締めにより形成されるキャビティ8内に連通するゲート9に形成している。このゲート9の樹脂注入口はゲートブッシュ6内の樹脂通路7の孔径よりも小径に形成されている。
【0023】
さらに、ゲートブッシュ6の上記樹脂通路7内に、該樹脂通路7よりも小径のバルブピン10を上下方向に進退自在に挿入してあり、このバルブピン10の上部を上記ホットランナーブロック3に上下方向に摺動自在に貫通させてその上端部をホットランナーブロック3の上面から上方に突出させていると共に、この突出した上端部をバルブピン10の駆動装置によって上下方向(軸芯方向)に進退させてバルブピン10の下端部で上記ゲート9を開閉させるように構成している。
【0024】
バルブピン10の駆動装置Aは、
図3に示すように、ホットランナーブロック3の側方における型板1aの上面にギヤボックス11を設置して固定し、このギヤボックス11の上面に電動モータ12とガイド筒部材13とを、ガイド筒部材13をホットランナーブロック3側に向けて並設状態に固定してあり、電動モータ12の回転軸12a に設けている小径歯車12b をギヤボックス11内に配設している噛合歯車列14における入力歯車14a に噛合させている。
【0025】
さらに、上記ガイド筒部材13内にボールネジ15を配設してあり、上下方向に向けているこのボールネジ15のネジ軸15a の下端部を上記噛合歯車列14における出力歯車14c を固着している出力軸18c の中心部に挿着して出力軸18c と一体に回転させるように構成してあり、このネジ軸15a の回転によって該ネジ軸15a に螺合しているボールナット15b を上記ガイド筒部材13の内周面に沿って回転させることなく上下動させるように構成している。なお、ボールネジ15は、公知のように、ネジ軸15a とボールナット15b との対向面に設けている断面円弧状の螺旋溝によって形成された螺旋状通路16に多数の鋼製ボール15c を転動自在に内装していると共にボールナット15b の上下端部の螺旋溝にボール循環通路17の両端部を臨ませてあり、ネジ軸15a の回転によって螺旋状通路16内のボール14c をボール循環通路17を通じて循環させながらボールナット15b を上下移動させるように構成している。
【0026】
上記噛合歯車列14は、電動モータ12の回転軸12a の回転を減速する減速機構の機能を有しているものであり、電動モータ12の回転軸12a の小径歯車12b と噛合する上記入力歯車14a はこの小径歯車12b よりも大径に形成されていてギヤボックス11に回転自在に支持された入力軸18a の上部に固着されてあり、さらに、入力軸18a の下部には第1中間歯車14b1が固着されていてこの第1中間歯車14b1をギヤボックス11内に回転自在に支持されている中間軸18b の下部に固着した第2中間歯車14b2に噛合させていると共に中間軸18b の上部に固着している第3中間歯車14b3をこれらの中間歯車よりも大径に形成されている上記出力歯車14c に噛合させてなる構造を有する。
【0027】
この噛合歯車列14からの回転駆動力によって回転するボールネジ15のネジ軸15a に螺合した上記ボールナット15b の上面には、中心部にネジ軸15a の上部を進退可能に挿入させている中空部19a を有する筒状の連結部材19が一体に固着されていてボールネジ15と一体的にガイド筒部材13の内周面に沿って上下移動させるように構成している。この連結部材19の上面中央部には一定厚みを有する横長の板材からなるレバー20の一端部を介在させて軸21によりレバー20の一端部に連結している前後一対の支持突片22、22を突設している。この支持突片22、22は常時ガイド筒部材13から上方に突出している。
【0028】
ガイド筒部材13の上面には上記支持突片22、22を挟むようにして前後一対の固定板23、23を互いに平行にして固着してあり、これらの固定板23、23の対向面間の空間部を通じて支持突片22、22を上下方向に移動可能に構成していると共に固定板23,23の対向面間の空間部にレバー20の一半部を上下移動可能に介在させている。さらに、固定板23、23の一部はホットランナーブロック3側に向かってガイド筒部材13から突出してあり、この突出端部間に上記レバー20の長さ方向の中間部を回動自在に枢着した支軸24を固着し、この支軸24を支点としてレバー20を上下方向に回動自在に構成している。
【0029】
レバー20の一端部と上記ボールネジ15におけるボールナット15b と一体の連結部材19との具体的な連結構造は、この連結部材19に突設している上記前後一対の支持突片22、22 間に上記軸21を固着すると共に、レバー20の一端部に短径寸法がこの軸21の径に略等しい横長の長孔25を設けてこの長孔25に上記軸21を摺動自在に挿通、支持させた構造を有している。
【0030】
一方、レバー20の他端部とホットランナーブロック3の上面から突出しているバルブピン10の上端部との連結構造は、レバー20の他端部を上下に二股状に分岐したコ字状の上下挟持片20a 、20b に形成し、これらの上下挟持片20a 、20b の対向面を山形状に傾斜したカム面26、27にそれぞれ形成していると共に下側挟持片20b の中央部にバルブピン10の上端軸部を挿通させた挿通孔28を設け、バルブピン10の上端の大径の頭部10a を上下挟持片20a 、20b の上記カム面26、27におけるレバー20の幅方向に向けている先端稜角部によって回動自在に挟持させてなる構造を有している。
【0031】
さらに、レバー20の長さ方向の中間部を回動自在に支持しているレバー20の支点である上記支軸24とボールネジ15のボールナット15b の上端に連結部材19を介してこの連結部材19に突設している支持突片22、22に軸支された一端部との間の距離(軸21と支軸24間の距離)を、レバー20の上記支点である支軸24とバルブピン10の上端頭部10a を支持しているレバー20の他端部との間の距離(バルブピン10の頭部10a と支軸24間の距離)よりも長く、例えば、1.5倍程度の長さに設定している。
【0032】
このように構成した射出成形金型によって成形品を射出成形するには、まず、バルブピン10の駆動装置Aにおける電動モータ12を駆動してこの電動モータ12の回転軸12a の回転を噛合歯車列14によって減速させながら、且つ、回転トルクを増大させながら噛合歯車列14の出力軸18c に立設しているボールネジ15のネジ軸15a を回転させ、その回転によってボールナット15b を上方に移動させてボールナット15b と一体の連結部材19に突設している支持片22、22に軸支されたレバー20をその支軸24を支点として上方に回動させ、この回動によってレバー20の他端部を下方に回動させてこの他端部にその頭部10a を連結しているバルブピン10を押し下げることにより、その先端部でキャビティ8に連通するゲート9を閉鎖させ、この状態で金型を型締めする。
【0033】
型締め後、ノズル5から溶融樹脂をホットランナーブロック3内の樹脂通路4に供給すると共に、上記電動モータ12を作動させてその回転軸12a を上記と反対方向に回転させ、噛合歯車列14を介して伝達されるボールネジ15のネジ軸15a の回転によりボールナット15b を下方に移動させ、その移動によりレバー20の他端部を支軸24を支点としてバルブピン10を引き上げ方向に移動させてゲート9を開放させると、溶融樹脂はホットランナーブロック3内の樹脂通路4から各ゲートブッシュ6内の樹脂通路7に流入し、この樹脂通路7の先端ゲート9からキャビティ8内に充填される。
【0034】
この際、電動モータ12の回転軸12a の正逆方向の回転を噛合歯車列14によって減速しながらボールネジ15のボールナット15b を緩回転させてボールナット15b を低速度で上下動させ、さらに、レバー20の上記レバー比によってバルブピン10を上記ボールナット15b の上下動よりもさらに低速度でもって上下動させることができるので、例えば、バルブピン10を10mmストロークさせる間に、0.1mm 単位でもってゲート9を開閉するバルブピン10の下端の位置を設定することができ、従って、バルブピンの位置制御や速度制御を微小単位でもって精度よく調整することができる。そのため、キャビティ8に溶融樹脂を充填するゲート9の開度を精度良く調整することができて、大型金型のように複数のゲート9からキャビティ8に溶融樹脂を充填する際には、各ゲート9からの溶融樹脂の充填量をキャビティ8内の形状等に応じてそれぞれ正確に調整して均一で高品質の成形品を製造することができる。
【0035】
さらに、電動モータ12の回転軸12a の回転トルクを噛合歯車列14によって増大しながらボールネジ15のネジ軸15a に伝達してボールナット15b を比較的大きな推力でもって上下動させることができ、その上、上記レバー20のレバー比によってバルブピン10をさらに大きな推力でもって上下動させることができるので、自動車関連の成形品を得るための大型金型用として最適なバルブピンの駆動装置を提供することができる。
【0036】
キャビティ8内への溶融樹脂の充填後、駆動装置Aにおける電動モータ12を駆動して上述したように、噛合歯車列14、ボールネジ15を介して上記レバー20の一端部を支軸24を支点として上方に回動させ、この回動によってレバー20の他端部を下方に回動させてこの他端部にその頭部10a を連結しているバルブピン10を押し下げることにより、ゲート9を閉鎖させる。この状態にしてキャビティ8内に充填された合成樹脂を冷却させ、冷却後に型開きしてキャビティ8内から成形品を取り出す。
【符号の説明】
【0037】
1 固定側金型
1a 型板
2 移動側金型
3 ホットランナーブロック
4 樹脂通路
5 ノズル
6 ゲートブッシュ
7 樹脂通路
8 キャビティ
9 ゲート
10 バルブピン
12 電動モータ
13 ガイド筒部材
14 噛合歯車列
15 ボールネジ
15a ネジ軸
15b ボールナット15b
20 レバー