特許第6591799号(P6591799)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6591799
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】建物の外壁構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/56 20060101AFI20191007BHJP
   E04B 7/02 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
   E04B2/56 631J
   E04B7/02 501D
   E04B2/56 603F
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-124580(P2015-124580)
(22)【出願日】2015年6月22日
(65)【公開番号】特開2017-8571(P2017-8571A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年5月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(72)【発明者】
【氏名】西村 元吾
(72)【発明者】
【氏名】春田 裕行
【審査官】 星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−115579(JP,A)
【文献】 特開2009−203739(JP,A)
【文献】 特公平08−033038(JP,B2)
【文献】 特公平06−070336(JP,B2)
【文献】 特開2009−270299(JP,A)
【文献】 特公昭59−012819(JP,B2)
【文献】 実開平06−049612(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/56
E04B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁が、下階の外壁パネルの上端と上階の外壁パネルの下端間の境界高さが階間の梁の下フランジの高さと同じかまたは低い建物の外壁構造であって、
前記外壁の一部には、前記上階の外壁パネルの下方に、前記下階の外壁パネルに代えて垂れ壁が配置され、この垂れ壁が前記梁に固定金物を介して固定され、
前記固定金物は、前記梁の下フランジの下面に接合される水平板部と、この水平板部の一端から下方に前記垂れ壁の下部まで延び前記垂れ壁に接合される垂直板部とを有し、
前記梁はウェブが上下方向に沿うH形鋼であって、
前記固定金物の前記水平板部は前記梁の前記下フランジの下面における幅方向の全面に接し、
前記固定金物の前記水平板部は前記梁の前記ウェブの両側でボルトにより前記梁の前記下フランジに接合された
ことを特徴とする建物の外壁構造。
【請求項2】
建物の外壁が、下階の外壁パネルの上端と上階の外壁パネルの下端間の境界高さが階間の梁の下フランジの高さと同じかまたは低い建物の外壁構造であって、
前記外壁の一部には、前記上階の外壁パネルの下方に、前記下階の外壁パネルに代えて垂れ壁が配置され、この垂れ壁が前記梁に固定金物を介して固定され、
前記固定金物は、前記梁の下フランジの下面に接合される水平板部と、この水平板部の一端から下方に前記垂れ壁の下部まで延び前記垂れ壁に接合される垂直板部とを有し、
前記建物の出隅部を形成する平面視で互いに角度を成す2本の前記梁に2つの前記垂れ壁をそれぞれ固定するのに前記固定金物が用いられ、前記2つの梁にそれぞれ接合される2つの前記水平板部と、前記2つの垂れ壁にそれぞれ接合される2つの前記垂直板部とを有し、これら2つの垂直板部が一体化されている建物の外壁構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の建物の外壁構造において、前記固定金物は、前記水平板部と前記垂直板部とを繋ぐリブを有する建物の外壁構造。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の建物の外壁構造において、前記垂れ壁に庇が取り付けられる建物の外壁構造。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の建物の外壁構造において、前記垂れ壁は、外壁よりも建物の奥に入り込んだ玄関ポーチの上方に配置される建物の外壁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、入り玄関等の外壁の入り込み部の上方に設けられる垂れ壁を支持する建物の外壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下階の外壁が上階の外壁よりも屋内側に入り込んだ入り玄関に庇を設ける場合、庇は玄関ポーチの上方に位置する垂れ壁に取り付けられる。下階の外壁パネルの上端と上階の外壁パネルの下端間の境界高さが階間の梁の上フランジの高さとほぼ同じである建物では、図7のように、前記垂れ壁5の上端が、前記梁3の上フランジ3aとほぼ同じ高さとなる。このような建物では、垂れ壁5の上下2箇所を、固定金物50を介して梁3の上フランジ3aおよび下フランジ3bにそれぞれ固定する。
【0003】
また、庇の出隅部については、図8のように、互いに角度を成す2つの垂れ壁5A,5Bの各上下2箇所を、それぞれ別々の固定金物50を介して梁3A,3Bに固定する。つまり出隅部では、計4個の固定金物50を用いて、垂れ壁5A,5Bが梁3A,3Bに固定される。
【0004】
垂れ壁5がALC板や押出成形セメント板の場合は、垂れ壁5の下部に受け材を配置して固定される。
【0005】
下階の外壁が上階の外壁よりも屋内側に入り込んだ入り玄関における庇の取付けに関して、例えば特許文献1,2に記載がある。但し、これらの特許文献には、この発明が対象とする、下階の外壁パネルの上端と上階の外壁パネルの下端間の境界高さが階間の梁の下フランジの高さとほぼ同じである建物における庇を取り付けるための構造は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−36607号公報
【特許文献2】特許第3650610号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
外壁パネルと階間の梁との納まりの都合等から、下階の外壁パネルの上端および上階の外壁パネルの下端の高さが階間の梁の上フランジの高さとほぼ同じである従来の構成に代えて、図9のように、下階の外壁パネル1の上端と上階の外壁パネル(図示せず)の下端間の境界高さが階間の梁3の下フランジ3bの高さとほぼ同じである外壁を考えた。この外壁の場合、従来の固定金物50(図7図8)を使用して梁3に垂れ壁5を固定しようとすると、図9に鎖線で示すように、垂れ壁5の上部だけが梁3に固定されることとなり、固定強度の低下が懸念される。
【0008】
この発明の目的は、下階の外壁パネルの上端と上階の外壁パネルの下端間の境界高さが階間の梁の下フランジの高さと同じかまたは低い外壁において、少ない部品点数で梁に垂れ壁を強固に固定することができる建物の外壁構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の建物の外壁構造は、建物の外壁が、下階の外壁パネルの上端と上階の外壁パネルの下端間の境界高さが階間の梁の下フランジの高さと同じかまたは低く、前記外壁の一部には、前記上階の外壁パネルの下方に、前記下階の外壁パネルに代えて垂れ壁が配置され、この垂れ壁が前記梁に固定金物を介して固定され、前記固定金物は、前記梁の下フランジの下面に接合される水平板部と、この水平板部の一端から下方に前記垂れ壁の下部まで延び前記垂れ壁に接合される垂直板部とを有する。
この建物の外壁構造において、
前記梁はウェブが上下方向に沿うH形鋼であって、
前記固定金物の前記水平板部は前記梁の前記下フランジの下面における幅方向の全面に接し、
前記固定金物の前記水平板部は前記梁の前記ウェブの両側でボルトにより前記梁の前記下フランジに接合されてもよい。
【0010】
この構造によると、梁の下フランジの下面に固定金物の水平板部を接合し、かつ垂れ壁の側面に固定金物の垂直板部を接合することで、梁と垂れ壁とが固定金物を介して互いに固定される。固定金物の垂直板部の下端が垂れ壁の下部まで延びているため、垂れ壁の上下に広い範囲が固定金物に接合される。このため、梁に垂れ壁を強固に固定することができる。また、梁と垂れ壁との1つの固定箇所につき1つの固定金物だけを使用するため、使用する固定金物の数が少なくて済み、施工が容易である。
【0011】
この発明において、前記建物の出隅部を形成する平面視で互いに角度を成す2本の前記梁に2つの前記垂れ壁をそれぞれ固定するのに前記固定金物を用いる場合、前記固定金物は、前記2つの梁にそれぞれ接合される2つの前記水平板部と、前記2つの垂れ壁にそれぞれ接合される2つの前記垂直板部とを有し、これら2つの垂直板部が一体化されていると良い。
この構成であると、1つの固定金物で、建物の出隅部を形成する2本の梁に2つの垂れ壁をそれぞれ固定することができる。2つの垂直板部が一体化されていると、部品点数が削減されると共に面外方向の剛性が向上する。なお、「2つの垂直板部が一体化されている」とは、2つの垂直板部が1つの材料から折り曲げ加工等により成形されている場合、および元は別体である2つの垂直板部を溶接等により結合した場合の両方を含む。
【0012】
この発明において、前記固定金物は、前記水平板部と前記垂直板部とを繋ぐリブを有すると良い。リブを有すると、固定金物の剛性が向上する。
【0013】
この発明において、前記垂れ壁に庇が取り付けられていても良い。
垂れ壁が固定金物を介して梁に強固に固定されているため、垂れ壁に庇を取り付けることが可能である。
【0014】
この発明の建物の外壁構造は、前記垂れ壁が外壁よりも建物の奥に入り込んだ玄関ポーチの上方に配置されている場合にも適用できる。
【発明の効果】
【0015】
この発明の建物の外壁構造は、建物の外壁が、下階の外壁パネルの上端と上階の外壁パネルの下端間の境界高さが階間の梁の下フランジの高さと同じかまたは低く、前記外壁の一部には、前記上階の外壁パネルの下方に、前記下階の外壁パネルに代えて垂れ壁が配置され、この垂れ壁が前記梁に固定金物を介して固定され、前記固定金物は、前記梁の下フランジの下面に接合される水平板部と、この水平板部の一端から下方に前記垂れ壁の下部まで延び前記垂れ壁に接合される垂直板部とを有するため、少ない部品点数で梁に垂れ壁を強固に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明の一実施形態にかかる外壁構造が適用された建物の玄関周辺の正面図である。
図2】同玄関周辺の梁、垂れ壁、および庇を示す水平断面図である。
図3図2のIII−III断面図である。
図4】同外壁構造に用いられる直線部用の固定金物の(A)正面図、(B)側面図、(C)平面図である。
図5】同外壁構造に用いられる出隅部用の固定金物の(A)正面図、(B)側面図、(C)平面図である。
図6】出隅部での梁と垂れ壁との固定に出隅部用の固定金物を用いる場合、および2つの直線部用の固定金物を用いる場合における、庇にかかる荷重と庇の変位量との関係を示すグラフである。
図7】従来の外壁構造の破断側面図である。
図8】従来の外壁構造の平面図である。
図9】仮想の外壁の破断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の一実施形態を図1図5と共に説明する。
図1はこの発明の一実施形態にかかる外壁構造が適用された建物の玄関周辺の正面図である。同図に示すように、この建物は2階建てで、各階の外壁が外壁パネル1,2で構成されている。玄関4は1階の隅部に設けられている。玄関4の上側部分には、1階の外壁パネル1に代えて垂れ壁5が設けられる。そして、この垂れ壁5に、玄関ポーチ6に被さる庇7が取り付けられる。図の例の建物の場合、1階が請求項で言う「下階」であり、2階が請求項で言う「上階」である。
【0018】
1階の外壁パネル1の上端と2階の外壁パネル2の下端間の境界高さは、階間の梁3の下端の高さとほぼ同じである。詳しくは、1階の外壁パネル1の上端および2階の外壁パネル2の下端の高さは、梁3の下端の高さよりも少し低い。
【0019】
図2は同玄関周辺の梁、垂れ壁、および庇を示す水平断面図である。この建物の玄関4は、外壁よりも建物の奥に入り込んだ入り玄関である。玄関4上側の出隅部では、階間の梁3として前後梁3Aおよび左右梁3Bを有し、これら前後梁3Aおよび左右梁3Bが梁接合金物3Cを介して互いに直角となるように接合されている。また、前記垂れ壁5として前後垂れ壁5Aおよび左右垂れ壁5Bを有し、これら前後垂れ壁5Aおよび左右垂れ壁5B間にコーナー垂れ壁5Cが介在している。なお、以下の説明では、前後梁3A、左右梁3Bを単に「梁3」を呼称する場合があると共に、前後垂れ壁5A、左右垂れ壁5Bを単に「垂れ壁5」を呼称する場合がある。
【0020】
図3は庇取付部の破断側面図、具体的には図2のIII−III断面図である。梁3はH形鋼からなり、ウェブ3cが上下を向くように設置されている。2階の外壁パネル2は、外壁フレーム10と、断熱材11と、外装下地材12と、外装材13とからなる。外壁フレーム10は、例えば溝形鋼からなる縦材および横材を四角形の枠状に組んだものであり、枠内に前記断熱材11が充填される。図3には1階の外壁パネル1は図示されていないが、1階の外壁パネル1も2階の外壁パネル2と同じ構造である。
【0021】
2階の外壁パネル2の下側には、前記垂れ壁5が配置されている。垂れ壁5は、垂れ壁フレーム15と庇用下地材16とからなる。垂れ壁フレーム15は、外壁フレーム10と同様に溝形鋼からなる縦材および横材を四角形の枠状に組んだものである。垂れ壁フレーム15の枠内に断熱材は充填されない。
【0022】
2階の外壁パネル2と垂れ壁5との間には、水切り用隙間17が形成されている。この水切り用隙間17は、2階の外壁パネル2の外装材13の下方に開口している。水切り用隙間17の開口には、雨水が内部に入るのを防ぐ水切りカバー18が取り付けられている。
【0023】
庇7は、垂れ壁5の庇用下地材16に木ねじ等の固定具20で固定された庇骨組21と、この庇骨組21の上に設置された屋根材22と、庇骨組21の端縁に取り付けられた鼻隠し23とを有する。屋根材22にはドレン24が設けられ、このドレン24に排水管25が接続されている。庇骨組21の下側には水平状に軒天面材26が設けられ、この軒天面材26が垂れ壁5の下方を通って玄関4の上方まで延びている。軒天面材26は、庇骨組21および垂れ壁5の垂れ壁フレーム15にそれぞれ設置された軒天下地材27,28に、木ねじ等の固定具29で固定される。
【0024】
前記垂れ壁5は、後述の固定金物30,40を介して梁3に固定される。固定金物30,40には、図4に示す直線部用のものと、図5に示す出隅部用のものとがある。
図4に示すように、直線部用の固定金物30は、梁3の下フランジ3bの下面に接合される水平板部31と、この水平板部31の一端から下方に延び垂れ壁5の垂れ壁フレーム15に接合される垂直板部32と、これら水平板部31と垂直板部32とを繋ぐリブ33とで構成される。
【0025】
水平板部31には、梁3の下フランジ3bに接合するためのボルト挿通孔34が、リブ33を挟んで両側に2個ずつ設けられている。図4(C)における左列のボルト挿通孔34には、下フランジ3bのウェブ3cよりも左側の部分に接合するためのボルトが挿通され、右列のボルト挿通孔34には、下フランジ3bのウェブ3cよりも右側の部分に接合するためのボルトが挿通される。
【0026】
垂直板部32には、垂れ壁5の垂れ壁フレーム15に接合するためのボルト挿通孔35が、リブ33を挟んで両側に2個ずつ設けられている。上列のボルト挿通孔35には、垂れ壁フレーム15の上の横材である溝形鋼のフランジに接合するためのボルトが挿通され、右列のボルト挿通孔35には、下の横材である溝形鋼のフランジに接合するためのボルトが挿通される。
【0027】
この実施形態の場合、水平板部31と垂直板部32は同じ幅であり、1枚の鋼板を折り曲げて両部31,32が成形されている。水平板部31および垂直板部32は、2枚の鋼板を溶接等により接合して成形してもよい。リブ33は三角形状で、溶接により水平板部31および垂直板部32に接合されている。このようにリブ33を設けることで、固定金物30の剛性が向上する。
【0028】
図5に示すように、出隅部用の固定金物40は、出隅部を形成する前後梁3Aおよび左右梁3Bにそれぞれ接合される2つの水平板部41A,41Bと、前後垂れ壁5Aおよび左右垂れ壁5Bにそれぞれ接合される2つの垂直板部42A,42Bとを有する。水平板部41Aと垂直板部42Aとの間、および水平板部41Bと垂直板部42Bとの間には、それぞれリブ43A,43Bが設けられている。
【0029】
2つの垂直板部42A,42Bは、1枚の鋼板を平面視で直角に折り曲げて成形されている。水平板部41A,41Bは、垂直板部42A,42Bの上端縁における折り曲げ位置Pからそれぞれ所定距離だけ離れた箇所に位置している。前記所定距離は、前記梁接合金物3Cの一辺の長さと同じか、または少しだけ長い値である。固定金物40の使用状態において、図5(C)に示すように、2つの垂直板部42A,42Bにおける水平板部41A,41Bの存在しない部分と、2つの水平板部41A,41Bとで囲まれた空間Sに、梁接合金物3Cが配置されるようになっている。
【0030】
水平板部41A,41Bは、固定金物40の使用状態において梁接合金物3Cとの干渉を避けるために、折り曲げ位置Pに近い側の角部がそれぞれ平面視で三角形に切り欠かれている。水平板部41A,41Bには、縦梁3Aおよび横梁3Bの各下フランジ3b,3bに接合するためのボルト挿通孔44が、折り曲げ位置Pから見てリブ43A,43Bの外側に2つ、内側に1つ設けられている。
【0031】
垂直板部42A,42Bには、前後垂れ壁5Aおよび左右垂れ壁5Bの各垂れ壁フレーム15に接合するためのボルト挿通孔45が、折り曲げ位置Pから見てリブ43A,43Bの内側に2つ設けられている。上のボルト挿通孔45には、垂れ壁フレーム15の上の横材である溝形鋼のフランジに接合するためのボルトが挿通され、右のボルト挿通孔45には、下の横材である溝形鋼のフランジに接合するためのボルトが挿通される。
【0032】
この出隅部用の固定金物40は、2つの垂直板部42A,42Bが平面視でL字状を成す一体型としたため、部品点数を削減することができると共に、面外方向の剛性が強化されている。この実施形態の場合、水平板部41A,41Bおよび垂直板部42A,42Bが1枚の鋼板を折り曲げて成形されているが、水平板部41A,41Bをそれぞれ別体で形成しておき、垂直板部42A,42Bに前記別体の水平板部41A,41Bを溶接等で接合してもよい。リブ43A,43Bは、溶接により水平板部41A,41Bおよび垂直板部42A,42Bに接合されている。このようにリブ43A,43Bを設けることで、固定金物40の剛性が向上する。
【0033】
図3図2のIII−III断面図であり、直線部用の固定金物30を介して梁3に垂れ壁5が固定された状態を示している。具体的には、梁3の下フランジ3bの下面に固定金物30の水平板部31がボルト・ナット51で接合され、かつ垂れ壁5の垂れ壁フレーム15の上下の横材である溝形鋼の各フランジに固定金物30の垂直板部32がボルト・ナット52で接合されている。つまり、固定金物30の垂直板部31の下端が垂れ壁5の下端付近まで延びているため、垂れ壁5の上下に広い範囲が垂直板部31に接合される。これにより、梁3に垂れ壁5を強固に固定することができる。また、梁3と垂れ壁5との1つの固定箇所につき1つの固定金物30だけを使用するため、使用する固定金物30の数が少なくて済み、施工が容易である。
【0034】
また、図2に示すように、出隅部では、出隅部用の固定金物40を介して、前後梁3Aおよび左右梁3Bに前後垂れ壁5Aおよび左右垂れ壁5Bがそれぞれ固定される。出隅部用の固定金物40は、前後梁3Aおよび左右梁3Bにそれぞれ接合される2つの水平板部41A,41B(図5)と、前後垂れ壁5Aおよび左右垂れ壁5Bにそれぞれ接合される2つの垂直板部42A,42B(図5)とを有するため、1つの固定金物40で、出隅部を形成する2本の梁3A,3Bに2つの垂れ壁5A,5Bをそれぞれ固定することができる。梁3A,3Bと水平板部41A,41Bとの接合構造、および垂れ壁5A,5Bと垂直板部42A,42Bとの接合構造は、前記直線部用の固定金物30の場合と同様である。
【0035】
このように、直線部用および出隅部用の固定金物30,40を用いることで、少ない固定金物30,40で梁3に垂れ壁5を強固に固定することができる。特に、出隅部用の固定金物40を2つの垂直板部42A,42Bが平面視でL字状を成す一体型としたため、面外方向の剛性が向上している。このため、庇7に積雪、風圧等の荷重が作用した場合でも、その荷重に垂れ壁5が耐えることができ、庇7の撓みが抑制される。
【0036】
出隅部用の固定金物40を使用することの効果を確かめるために、試験を行った。試験は、庇7に荷重をかけ固定金物40の下端の変位量を測定した。この試験を、出隅部用の固定金物40を使用した場合(金物L型)、および2つの直線部用の固定金物30を使用した場合(金物分割)につき行った。図6が、その試験結果である。両者を比較すると、積雪設計荷重である荷重470kgで、金物L型の方が金物分割よりも変位量で約5mmの低減効果があることが分かる。
【0037】
また、直線部用および出隅部用の固定金物30,40を用いると、使用する固定金物30,40の数が少なくて済む。例えば、従来、出隅部では4個の固定金物50(図6図7)で梁3に垂れ壁5を固定したのに対し、1個の出隅部用の固定金物40で梁3に垂れ壁5を固定することができる。このため、施工工数が削減され、施工が容易となる。
【0038】
さらに、この実施形態の外壁構造では、垂れ壁5がALC板や押出成形セメント板ではなく、溝形鋼を四角形に組んだ垂れ壁フレーム15が採用されているため、垂れ壁5の下部に受け材を配置して固定する必要がなく、さらなる部品点数の削減が図られている。
【符号の説明】
【0039】
1…1階の外壁パネル
2…2階の外壁パネル
3…梁
3A…前後梁
3B…左右梁
3b…下フランジ
5…垂れ壁
5A…前後垂れ壁
5B…左右垂れ壁
6…玄関ポーチ
7…庇
30,40…固定金物
31,41A,41B…水平板部
32,42A,42B…垂直板部
33,43…リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9