特許第6591803号(P6591803)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社タカキタの特許一覧

<>
  • 特許6591803-ロールベーラ 図000002
  • 特許6591803-ロールベーラ 図000003
  • 特許6591803-ロールベーラ 図000004
  • 特許6591803-ロールベーラ 図000005
  • 特許6591803-ロールベーラ 図000006
  • 特許6591803-ロールベーラ 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6591803
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】ロールベーラ
(51)【国際特許分類】
   A01F 15/10 20060101AFI20191007BHJP
【FI】
   A01F15/10 R
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-132056(P2015-132056)
(22)【出願日】2015年6月30日
(65)【公開番号】特開2017-12079(P2017-12079A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2018年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000132909
【氏名又は名称】株式会社タカキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100111349
【弁理士】
【氏名又は名称】久留 徹
(72)【発明者】
【氏名】中山 有二
【審査官】 小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0304612(US,A1)
【文献】 特開平06−181625(JP,A)
【文献】 実開平06−012519(JP,U)
【文献】 特開2001−190148(JP,A)
【文献】 特開2003−009647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D34/00 −34/01
A01D34/412−34/90
A01D41/00 −51/00
A01D67/00 −69/12
A01D76/00 −90/16
A01F 1/00 − 1/06
A01F12/00
A01F13/00 −17/04
A01F25/00 −25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タインカバーの間に形成されたスリットからタインを突出させ、当該タインを回転させることによって圃場の作物をピックアップするピックアップ部と、
前記ピックアップ部でピックアップされた作物を前記タインから取り除く方向に回転部材を回転させて作物を掻き上げる掻上部と、を備え、
当該掻上部で掻き上げられた作物によってロールベールを成形するようにしたロールベーラにおいて、
前記タインの回転領域の頂部よりも前方の位置を、前記回転部材の回転領域に入れるようにそれぞれの回転領域をオーバーラップさせ、当該回転部材によって、上向きとなっているタイン上の作物を当該タインの傾斜方向に沿って掻き上げるようにしたことを特徴とするロールベーラ。
【請求項2】
前記回転部材の回転領域を、タインカバーの上面の上方に設けるようにした請求項1に記載のロールベーラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場の作物をピックアップしてロールベールを成形するロールベーラに関するものであり、より詳しくは、ピックアップ部に作物が絡みつかないようにしたロールベーラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ロールベーラは、圃場で収穫された作物を切断し、その切断された作物から円柱状のロールベールを成形するように構成される(特許文献1など)。
【0003】
ところで、このようなロールベーラのうち、刈り取られて圃場に放置された作物をピックアップし切断し、その切断された作物からロールベールを成形するロールベーラについて図5を用いて説明する。
【0004】
図5において、符号5はピックアップ部であり、複数本のタイン51を周回させることによって圃場に放置された作物をピックアップするようにしたものである。このタイン51は、図6に示すように、タインカバー52に設けられたスリット53内で周回するようになっており、機体の前方部分でそのスリット53から突出させて圃場の作物をピックアップし、また、後方部分でそのスリット53の内側に入り込ませるようになっている。また、図5において、符号6は切断部であり、ピックアップされた作物を一定の長さにカットするようにしたものであり、符号7はロール成形部であって、切断部6で切断された作物から円柱状のロールベールを成形するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−123850号公報(図4参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このようなピックアップ部で作物をピックアップする場合、次のような問題を有する。
【0007】
すなわち、圃場に放置された作物をピックアップする際、タイン51で作物を掻き上げるようにしているが、その掻き上げられた作物は、タイン51に載せられた状態で後方に移動する。しかるに、このようにタイン51に載せられた状態で移動すると、図6に示すように、下向きに傾斜したタイン51がスリット53に入り込む際、タイン51とともにスリット53の内部に作物が引きずり込まれてしまう。
【0008】
そこで、本発明は上記課題に着目してなされたもので、ピックアップ部で作物をピックアップする際、作物をタインカバーのスリット内に引きずり込ませないようにしたロールベーラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、タインカバーの間に形成されたスリットからタインを突出させ、当該タインを回転させることによって圃場の作物をピックアップするピックアップ部と、前記ピックアップ部でピックアップされた作物を前記タインから取り除く方向に回転部材を回転させて作物を掻き上げる掻上部と、を備え、当該掻上部で掻き上げられた作物によってロールベールを成形するようにしたロールベーラにおいて、前記タインの回転領域の頂部よりも前方の位置を、前記回転部材の回転領域に入れるようにそれぞれの回転領域をオーバーラップさせ、当該回転部材によって、上向きとなっているタイン上の作物を当該タインの傾斜方向に沿って掻き上げるようにしたものである。
【0010】
また、このような発明において、前記回転部材の回転領域を、タインカバーの上面の上方に設けるようにする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、タインカバーの間に形成されたスリットからタインを突出させ、当該タインを回転させることによって圃場の作物をピックアップするピックアップ部と、前記ピックアップ部でピックアップされた作物を前記タインから取り除く方向に回転部材を回転させて作物を掻き上げる掻上部と、を備え、当該掻上部で掻き上げられた作物によってロールベールを成形するようにしたロールベーラにおいて、前記タインの回転領域の頂部よりも前方の位置を、前記回転部材の回転領域に入れるようにそれぞれの回転領域をオーバーラップさせ、当該回転部材によって、上向きとなっているタイン上の作物を当該タインの傾斜方向に沿って掻き上げるようにしたので、ピックアップされた作物を確実にタインから取り除くことができ、タインがスリット内に入り込む際に作物をスリット内に引きずり込ませないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施の形態におけるロールベーラの概略図
図2】同形態におけるピックアップ部と掻上部の拡大図
図3】同形態におけるオーバーラップ量を示す図
図4】同形態における掻上部でタインの作物を取り除く状態図
図5】従来例におけるロールベーラを示す図
図6】従来例における作物がスリットに引きずり込まれた状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
この実施の形態におけるロールベーラ1は、図1に示すように、タイン22を周回させることで圃場の作物をピックアップするピックアップ部2と、そのタイン22によってピックアップされた作物をタイン22上から取り除くように掻き上げる掻上部3とを備えるようにしたものである。そして、特徴的に、その掻上部3を構成する回転部材31をタインの回転領域2Aとオーバーラップさせるように配置し、これを上向き(タイン22の回転方向と同一方向)に回転させることによってタイン22上から作物を取り除けるようにしたものである。以下、本実施の形態におけるロールベーラ1の構造について詳細に説明する。
【0015】
まず、このロールベーラ1の前方側に設けられるピックアップ部2は、刈り取られて圃場に放置された作物をピックアップするようにしたものであって、図2に示すように、圃場から作物を掻き上げるタイン22と、回転軸方向に隣接する各タイン22の間を覆うタインカバー23とを備えて構成されている。このタイン22は、図2においては、回転ドラム21の外周部分に自由端側が若干回転方向から遅れるように傾斜させた状態で取り付けられており、その回転ドラム21を回転させることによって圃場の作物を掻き上げるようになっている。このような回転ドラム21を回転させた場合、タイン22は後方部分で自由端側が下方に向いた状態で回転するようになる。一方、タインカバー23は、隣接するタイン22とタイン22の間に作物を入り込ませないようにしたものであって、前方部分では周回するタイン22をスリット24から突出させ、また、後方部分ではタイン22をスリット24の内側に入り込ませるようにしている。なお、ここでタイン22を周回させる場合、回転ドラム21を回転させることでタイン22を周回させるようにしているが、カムを設けることによってタイン22を起立させたままスリット24の内側に入り込ませるような構造を用いるようにしてもよい。
【0016】
一方、掻上部3は、このタイン22によってピックアップされた作物をタイン22上から取り除けるように構成されている。この掻上部3は、僅かな隙間を隔てて対向する一対の三角形状のブレードで構成された回転部材31を備えてなり、その上方に設けられた固定刃32との間に作物を挟み込んで切断できるようにしている。また、この回転部材31と回転部材31の間には、図1に示すように、回転部材31の回転軸に接するようなスクレッパー33が設けられており、そのスクレッパー33によって作物をロール成形部4に排出させるようにしている。
【0017】
ロール成形部4は、このように切断された作物から円柱状のロールベールを成形する。このロール成形部4としては種々の構成を採用することができるが、図1では、ベルト41を円周状に周回させることで、ベルト41上に載せられた作物によって円柱状のロールベールを成形するようにしている。なお、これ以外の方法としては、例えば、タイトバーを取り付けたチェーンを周回させてロールベールを成形する方法や、円周状に配置された複数のドラムをそれぞれ自転させることで、そのドラムの回転によってロールベールを成形する方法なども採用することができる。そして、これらのベルト41やタイトバー、ドラムなどを回転させることで作物を自転させ、次々に排出されてくる作物を外側に巻き付けながらロールベールを大きくしていく。そして、所定の大きさになった場合、必要に応じてネット繰出部43からネットを繰り出して外周部分に巻き付け、そのネットを切断した後、後部チャンバー42からロールベールを排出する。
【0018】
このような構成において、ピックアップ部2と掻上部3をオーバーラップさせた状態にについて説明する。
【0019】
図3においては、ピックアップ部2のタイン22の回転領域2Aと掻上部3の回転領域3Aとをオーバーラップさせた状態を示している。このピックアップ部2のタイン22は、各スリット24から突出するように設けられており、一方、掻上部3の回転部材31は、そのタイン22とタイン22の間(図2参照)であって回転領域2A、3Aがオーバーラップする位置に設けられている。これにより、それぞれのタイン22や回転部材31を回転させても、それぞれを干渉させないようにしている。このオーバーラップ量としては、タイン22がスリット24から突出している部分の長さに対して、先端側から30%〜100%の範囲内で回転領域2A、3Aをオーバーラップさせるようにしておくのが好ましい。すなわち、タイン22の先端側だけをオーバーラップさせていると、タイン22の付け根部分に存在する作物がスリット24の内側に引きずり込まれてしまい、回転ドラム21に巻き付いてしまう可能性がある。このため、先端側から30%〜100%の範囲内でオーバーラップさせるようにする。
【0020】
また、このようにタイン22から作物を取り除く場合、タイン22の自由端側が下向きになっている状態で作物を取り除こうとすると、タイン22の傾斜角度に対して回転部材31を垂直な方向に当ててしまい、タイン22や回転ドラム21に大きな負荷を与えてしまう。そのため、図4に示すように、タイン22の自由端側が上向きとなっている状態で上向きに回転部材31を当て、これによって、タイン22で運ばれてきた作物を斜め上方向(図中の矩形矢印方向)に取り除けるようにしておく。
【0021】
次に、このように構成されたピックアップ部2や掻上部3における作用について説明する。
【0022】
まず、ロールベーラ1を走行させると、ピックアップ部2によって圃場の作物がピックアップされる。このとき、上向きに回転するタイン22によって作物が圃場から掻き上げられ、その作物は、タイン22に載せられた状態でタインカバー23の表面に沿って移動する。一方、そのタイン22は、タインカバー23の後方側でスリット24の内側に入り込んで、再び圃場の作物をピックアップできるようにする。
【0023】
一方、このタイン22によってピックアップされた作物は、タイン22がスリット24の内側に入り込む直前で三角形状をなす回転部材31に接触する。そして、そこで上向きに回転する回転部材31によって斜め上方向に作物を掻き上げられ、その上方に設けられた固定刃32との間に作物を挟み込んで切断する。
【0024】
そして、このように切断された作物を、スクレッパー33の上面に沿ってロール成形部4まで排出する。
【0025】
ロール成形部4側では、このように切断された作物によってロールベールを成形する。このロールベールを成形する場合、円周状に周回するベルト41やタイトバー、あるいはドラムなどの上に載せ、そこで作物を自転させながら順次排出されてくる作物を外側に巻き付けて大きくしていく。そして、ロール径が所定の大きさになった場合、ネット繰出部43からネットを繰り出してロールベールとベルト41の隙間に入り込ませ、ネットを巻き付けて切断した後、後部チャンバー42を開放させてロールベールを放出する。
【0026】
このように上記実施の形態によれば、タインカバー23の間に形成されたスリット24からタイン22を突出させ、当該タイン22を回転させることによって圃場の作物をピックアップするピックアップ部2と、前記ピックアップ部2でピックアップされた作物を前記タイン22から取り除く方向に回転部材31を回転させて作物を掻き上げる掻上部3と、を備え、当該掻上部3で掻き上げられた作物によってロールベールを成形するようにしたロールベーラ1において、前記タイン22の回転領域の頂部よりも前方の位置を、前記回転部材31の回転領域に入れるようにそれぞれの回転領域をオーバーラップさせ、当該回転部材31によって、上向きとなっているタイン22上の作物を当該タイン22の傾斜方向に沿って掻き上げるようにしたので、ピックアップされた作物を確実にタイン22から取り除くことができ、作物をスリット24内に入り込ませることを防止することができる。
【0027】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく種々の態様で実施することができる。
【0028】
例えば、上記実施の形態では、掻上部3に切断部の機能も持たせるようにしたが、このような切断部の機能を有さない構成としてもよい。この場合、例えば、ブラシや金属線などのような線状部材を上向きに回転させて別途設けられた切断部に作物を供給させるようにしてもよい。
【0029】
また、上記実施の形態では、回転部材31を上向きに回転させて固定刃32で切断するようにしたが、その回転部材31自体に刃を設けて作物を切断できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1・・・ロールベーラ
2・・・ピックアップ部
21・・・回転ドラム
22・・・タイン
23・・・タインカバー
24・・・スリット
3・・・掻上部
31・・・回転部材
32・・・固定刃
33・・・スクレッパー
4・・・ロール成形部
41・・・ベルト
42・・・後部チャンバー
43・・・ネット繰出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6