(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6591806
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】内部カム計量ポンプ
(51)【国際特許分類】
A61M 5/145 20060101AFI20191007BHJP
【FI】
A61M5/145 500
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-133035(P2015-133035)
(22)【出願日】2015年7月1日
(65)【公開番号】特開2016-26558(P2016-26558A)
(43)【公開日】2016年2月18日
【審査請求日】2018年4月16日
(31)【優先権主張番号】14/322,432
(32)【優先日】2014年7月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケネス フォクト
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ ゴードン
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティン フィスク
(72)【発明者】
【氏名】マシュー ジェイ.ペリー
【審査官】
村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2013/0017099(US,A1)
【文献】
米国特許第05494420(US,A)
【文献】
特表2007−509647(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0021993(US,A1)
【文献】
特表2010−501280(JP,A)
【文献】
特表2009−521969(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0051716(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/145
A61M 5/142
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入によって薬剤を送達するためのマイクロポンプであって、
ポンプハウジングと、
前記ポンプハウジング内に配置され、長手方向のピストン軸を有するピストンと、
前記ピストンを前記ピストン軸周りで回転させるように適合されたモータとを備え、
前記ポンプハウジングは、前記ピストンを収容する軸方向の開口と、前記ピストン軸に対して半径方向に配置され、カニューレと流体連通する第1の口部と、前記ピストン軸に対して半径方向に配置され、リザーバと流体連通する第2の口部と、前記第1の口部および前記第2の口部に設置される二つの弁アクチュエータとを有し、
前記ピストンは、その一端に偏心カム表面を有し、前記偏心カム表面は、前記ピストンのそれぞれの回転位置で前記第1の口部および前記第2の口部を順次開閉するように適合され、
前記偏心カム表面は、前記ピストンが回転したとき、前記各弁アクチュエータを順次偏位し、流体流がそれぞれ前記第1の口部および前記第2の口部を通ることを可能にし、
前記ポンプハウジング内での前記ピストンの軸方向の位置がポンプ容積空間を決定することを特徴とするマイクロポンプ。
【請求項2】
前記ポンプハウジングは静止しており、
前記ピストンは、前記モータと前記偏心カム表面の間に設置される軸方向の位置のカム表面を備え、
前記軸方向の位置のカム表面、前記ポンプハウジング上の静止部材と係合し、前記ピストンが回転するとき前記ピストンを前記ポンプハウジング内で軸方向に平行移動するように適合されたことを特徴とする請求項1に記載のマイクロポンプ。
【請求項3】
前記ポンプハウジング上の前記静止部材は、前記ポンプハウジング内において口部内に収容されるカムピンであることを特徴とする請求項2に記載のマイクロポンプ。
【請求項4】
前記ピストンは、自由に回転するが、固定された軸方向の位置を有し、前記ポンプハウジングは、自由に軸方向で平行移動するが、固定された回転位置を有することを特徴とする請求項1に記載のマイクロポンプ。
【請求項5】
前記モータと前記ピストンの間のコネクタをさらに備え、前記コネクタは、前記モータと前記ピストンの間でトルクを伝達し、前記コネクタに対する前記ピストンの軸方向の移動を可能にし、前記コネクタに対する前記ピストンの回転移動を妨げるように前記ピストンと係合することを特徴とする請求項1に記載のマイクロポンプ。
【請求項6】
前記ポンプピストン上の軸方向に細長いスロットが前記コネクタ上のタブと係合し、前記コネクタに対する前記ピストンの軸方向の移動を可能にし、前記コネクタに対する前記ピストンの回転移動を妨げることを特徴とする請求項5に記載のマイクロポンプ。
【請求項7】
前記第1の口部および前記第2の口部は、それぞれがOリングシールを含み、前記弁アクチュエータは、ばね荷重弁アクチュエータであり、各弁アクチュエータは先端を有し、両弁アクチュエータの前記先端は、常時閉位置で前記偏心カム表面とクリアランスがあり、前記Oリングシールに対するばね力は、前記弁アクチュエータが前記マイクロポンプの動作圧力下で開かないことを確実にするのに十分に高いものであり、前記偏心カム表面は、前記ピストンが回転したとき前記各弁アクチュエータを順次偏位し、前記Oリングシールに対する圧力を解放し、流体流がそれぞれ前記第1の口部および前記第2の口部を通ることを可能にすることを特徴とする請求項1に記載のマイクロポンプ。
【請求項8】
マイクロプロセッサと、移動センサとをさらに備え、
前記移動センサは、前記マイクロプロセッサと通信する接触スイッチであり、完全なサイクルを通じて前記ピストンの回転によってトリガされることを特徴とする請求項1に記載のマイクロポンプ。
【請求項9】
前記リザーバは、少なくとも1つの可撓性の壁を有することを特徴とする請求項1に記載のマイクロポンプ。
【請求項10】
ユーザによって着用可能であり、前記マイクロポンプと、電源とを含む外側ハウジングをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のマイクロポンプ。
【請求項11】
前記カニューレの展開は、前記モータの回転によってトリガされることを特徴とする請求項1に記載のマイクロポンプ。
【請求項12】
ユーザ操作可能なコントロールと、前記外側ハウジング上のディスプレイとをさらに備えることを特徴とする請求項10に記載のマイクロポンプ。
【請求項13】
前記リザーバへのアクセスを有する充填ポートを有する、前記外側ハウジング上の口部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のマイクロポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病の治療のためにインスリンを送達する際に使用され得るものなど、注入によって液体薬剤を連続的に送達するように適合されたマイクロポンプに向けられている。
【背景技術】
【0002】
薬物の皮下送達のためのマイクロポンプが、たとえば特許文献1および特許文献2から知られている。この従来技術は、様々な実施形態において、ステータまたはハウジング内に取り付けられたロータを有するポンプについて記載している。ロータ上の軸方向延長部上で斜めに位置する封止リングが、ロータとステータの間に形成されたチャネルと協働し、ロータハウジングを通じて液体を正確な量で移動する。しかし、これらの実施形態は、比較的複雑であり、コスト効果的でない。ユーザは、注入パッチが交換されるとき、数週間の間、ポンプを保つ。当技術が完全に使い捨てのポンプに向かって進化するとき、コンパクトかつ経済的なマイクロポンプ設計を求めるニーズが、依然として強い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7726955号明細書
【特許文献2】米国特許第8282366号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術で知られている別の注入ポンプは、親ねじが前進するときカニューレを通じて薬剤を分注するように親ねじがリザーバ内で係合された剛性のリザーバを備える。この構成では、薬剤を送達するためのアクチュエータが、親ねじに直接接続され、したがって非常に正確である。さらに、このデバイスは、較正された用量を提供するために剛性のリザーバを必要とする。したがって、可撓性のリザーバを使用することが不可能であり、ポンプのための可能なレイアウトの数が制限される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、本発明は、注入によって薬剤を送達するためのマイクロポンプであり、ポンプハウジングと、ポンプハウジング内に配置され、長手方向のピストン軸を有するピストンと、ピストンをピストン軸周りで回転させるように適合されたモータとを備える。ポンプハウジングは、ピストンを収容する軸方向の開口と、ピストン軸に対して半径方向に配置され、リザーバと流体連通する第1の口部と、ピストン軸に対して半径方向に配置され、カニューレと流体連通する第2の口部とを有する。ピストンは、その一端に偏心カム表面を有し、前記カム表面は、ピストンのそれぞれの回転位置で第1の口部および第2の口部を開閉するように適合される。ポンプハウジング内でのピストンの軸方向の位置がポンプ容積空間を決定する。
【0006】
実施形態では、ポンプハウジングは静止しており、ピストンは、モータと偏心カム表面の間に、ポンプ上の静止部材と係合し、ピストンが回転するときピストンをポンプハウジング内で平行移動するように適合された軸方向の位置のカム表面を備える。
【0007】
他の態様では、本発明は、上述のポンプで注入によって薬剤を送達するための方法であり、カニューレを展開し、ピストンを回転させるようにマイクロプロセッサに命令を提供するステップと、薬剤の体積をリザーバからポンプ容積空間内に引き込むステップと、患者に注入するためにカニューレを通じて薬剤の体積を吐出するステップとを含む。実施形態では、薬剤はインスリンであり、注入用量は、1日から5日にわたる注入を含み、方法は、注入用量の送達後、ポンプを処分するステップをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明による流体計量および送達システムの概略図である。
【
図2】組み立てられた流体計量および送達システムの図である。
【
図4A】流体計量システムのポンプピストン要素の上面図である。
【
図4B】流体計量システムのポンプピストン要素の端面図である。
【
図7】ポンプサイクルの開始位置でのポンプハウジングの断面図である。
【
図7A】
図7に示されている段階における流体送達システムの、異なる角度からの対応する部分切断図である。
【
図7B】
図7に示されている段階における流体送達システムの、異なる角度からの対応する部分切断図である。
【
図8】吸込みストロークの開始前の、ポンプサイクルの初期段階におけるポンプハウジングの断面図である。
【
図9】吸込みストローク中のポンプハウジングの断面図である。
【
図9A】異なる角度からの対応する部分切断図である。
【
図9B】異なる角度からの対応する部分切断図である。
【
図10】吸込みストローク後のポンプハウジングの断面図である。
【
図10A】異なる角度からの対応する部分切断図である。
【
図10B】異なる角度からの対応する部分切断図である。
【
図11】排出ストロークの開始前のポンプハウジングの断面図である。
【
図11A】異なる角度からの対応する部分切断図である。
【
図11B】異なる角度からの対応する部分切断図である。
【
図12】排出ストローク中のポンプハウジングの断面図である。
【
図12A】排出ストローク中の異なる角度からの流体送達システムの対応する部分切断図である。
【
図12B】排出ストローク中の異なる角度からの流体送達システムの対応する部分切断図である。
【
図13】ポンプサイクルの終了時でのピストンの回転位置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、正確な量の流体をリザーバから引き込むために計量サブシステム200と流体連通するリザーバ120を備える流体送達システム100の概略図である。計量サブシステム200からユーザ101に薬剤を送達するために、カニューレ機構122が提供されている。流体送達システムは、計量サブシステム200を含めて、軽量かつ着用可能であり、
図2に示されているようにコンパクトな形態で組み立てられ、その結果、諸要素が単一のハウジング内に含まれ得ることが好ましい。カニューレ機構122は、配管およびパッチを備える注入セットによって注入部位に接続されてもよく、あるいは、カニューレ挿入機構が計量サブシステム200と共にハウジング内に組み込まれてもよい。
【0010】
実施形態では、ポンプは、1日から5日にわたる連続的な注入を提供するように適合される。たとえば、インスリン注入の場合、ポンプは、着用され84時間後に処分されてもよく、リザーバは、基礎セグメントおよび大量投与セグメントにおける用量管理を、時変の連続する固定された体積パルスとして提供するようにサイズ設定される。注入プロファイルは、基礎セグメントと大量投与セグメントの間で分割される。たとえば、基礎セグメントは、0.17から1.2時間/パルスに及ぶ時間差を有する5μlの準連続的な流れであってよく、一方、大量投与セグメントは、概して食事時間周りで、最大ポンプ流量(最小ポンプサイクル時間)で送達される典型的には10から500μlの離散的な量からなる。インスリン注入の場合、リザーバ120は、1mlから5ml、好ましくは約3mlの薬剤を保持するように適合されてもよい。しかし、この値は重要でない。本発明は、任意の特定のリザーバ実施形態に限定されないが、リザーバ120は可撓性であることが好ましく、多数の従来技術のインスリンポンプの場合のようにプランジャおよび送りねじと係合されない。可撓性のリザーバは、流体を送達するための内部アクチュエータ機構を有しておらず、これは、ポンプ全体が、より小さい設置面積、およびよりコンパクトな設計を有することを可能にする。好適な可撓性のリザーバは、医療グレードの可撓性のポリ塩化ビニル(PVC)などでできたパウチを含んでもよい。あるいは、医療グレードプラスチックの単一の剛性の壁が可撓性の壁に接着され、リザーバを形成してもよい。リザーバ120は、たとえば充填ポート123を介してシリンジによって充填されてもよく、事前に充填されたリザーバまたはカートリッジが使用されてもよい。計量サブシステム200は、充填ポート123と流体連通して構成されてもよく、その結果、計量サブシステム200を使用し、充填ポート123を介して薬剤の外部源からリザーバ120を充填することができる。
【0011】
マイクロコントローラ30は、プリント回路板(PCB)などに設けられ、センサおよび回路11、12、13、14、15、17と、またアクチュエータ16、18とインターフェースし、ポンプおよびカニューレを制御する。電力は、ハウジング内の1または複数のバッテリ19によって提供される。従来技術で知られているように用量の基礎セグメントおよび大量投与セグメントを設定および開始するために、ディスプレイおよびユーザ操作可能なコントロール(図示せず)が、PCBに動作可能に接続されたユニット上に、または遠隔プログラミングユニット上に設けられてもよい。
【0012】
図に示されている本発明による計量システムの実施形態は、一体化された流量制御弁と、機械アクチュエータおよび駆動システムとを有する容積式ポンプを備える。
図2に示されている実施形態では、アクチュエータは、バッテリ19によって給電されるDC歯車モータ24であるが、ソレノイド、ニチノール(ニッケル−チタン合金)ワイヤモータ、ボイスコイルアクチュエータモータ、圧電モータ、またはワックスモータを含めて、他のモータシステムが本発明と共に使用するために適合されてもよい。これらの要素は、患者の体に着用されることになるハウジング(図示せず)内で受け取られるサポート21上に配置される。
【0013】
図3の分解図に示されているように、モータ24は、静止型のモータケーシング23内に収容される。コネクタ25は、モータ24のモータシャフト22を受け入れ、モータからのトルクをポンプピストン27に伝達する。本明細書では、「軸」方向は、モータシャフトの軸に沿うものであり、「半径」方向は、直交方向である。別段文脈によって明確に必要とされない限り、「時計回り」方向は、モータシャフトの軸をモータに向かって見下ろす時計回りを意味する。ピストン27上のスロット39は、コネクタ25上のタブ26を受け取り、その結果、ピストン27は、モータシャフトと調和して回転するが、軸方向には依然として自由に移動する。あるいは、ピストンは、回転自由度を、しかし軸方向に固定された位置を有してもよく、ポンプハウジングは、回転には固定され、しかし軸方向に移動するのは可能にピストンに接続されもてよい。どちらの場合も、ポンプ容積は、ポンプハウジング内のピストンの軸方向の位置によって決定される。
【0014】
図の実施形態では、ポンプピストン27は、静止型のポンプハウジング29内の軸方向の開口内に収容され、エラストマーシール37の奥でポンプハウジング内のポンプ容積空間47を画形する。
図4Aに示されているように、ピストン27は、軸方向の位置のカム表面32と共に構成される。下記で述べるように、軸方向のカム表面32は、静止型のポンプハウジング29上の部材と係合し、モータシャフト22が回転するとき、ピストン27をハウジング29内で軸方向に平行移動させる。たとえば、図の実施形態では、カム表面と係合する部材は、ポンプハウジングを通じて挿入されたピン31である。
【0015】
計量サブシステム200は、流体の正確な体積を可撓性のリザーバ120からポンプ容積47内に引き、次いでその流体を少量の離散的な投与でカニューレ122を通じて注入部位に吐出するように適合される。好適なポンプ容積空間47は、1μlから10μl、好ましくは約5μlの容積を有してもよく、その結果、ポンプピストン27の2回転がインスリンの1単位(U)を送達する。重要なことには、ポンプハウジング29内のポンプピストン27の位置がストロークを決定し、ポンプハウジングの内径が公称サイズおよび投与の精度を決定する。したがって、用量精度は、薬剤の対応する量を送達するためのモータシャフトの特定の回転位置によって決定されず、回転ポンプサイクルのための開始/停止点は、正確である必要がない。ポンプ容積47は、ピストン27および/またはポンプハウジング29の直径を変更することによって変えられてもよい。実施形態では、カニューレの展開は、モータ24の回転によって、1ステップの展開および注入操作でトリガされる。
【0016】
吸込みストローク中に流体をポンプ容積47内に引き、排出ストローク中に流体を吐出するために、ピストン27は、
図4Bに示されているように偏心カム表面33を備え、リザーバ流体ポート42およびカニューレ流体ポート41をポンプストロークの各終了時に順次開閉するように弁を作動し、流体流がリザーバから患者にかけて一方向性であること、および患者からリザーバに流れる可能性がないことを確実にする。
図5の断面図に示されているように、ポンプハウジングは、ポンプピストン軸に対して半径方向に配置された第1の口部43および第2の口部44を備える。口部44は、ポンプ容積47とリザーバポート42の間で流体連通を提供し、一方、口部43は、ポンプ容積47とカニューレポート41の間で流体連通を提供する。この実施形態では、口部43、44は、ポンプハウジング29の両側に、ピストン27に対して180度離れて配置される。ポンプサイクルの各セグメントのための角度割振りは、ポンプの性能を最適化するための必要に応じて、偏心カム表面33のサイズおよび傾斜を変え、ポンプサイクルの特定の位置のための角度割振りを増大もしくは減少させることによって、または口部43、44の半径位置を変更することによって調整されてもよい。
【0017】
図の実施形態では、第1の口部43および第2の口部44は、それぞれが弁構造物を収容する。各弁構造物は、口部を囲むOリングシール34、34’と、カム表面33がアクチュエータ28、28’を押し付けていないときそれぞれのOリングシール34、34’をそれぞれのばね35、35’の力の下で圧縮し、それぞれの口部43、44を閉じるそれぞれの弁アクチュエータ28、28’とを含む。カム表面33が適所に回転され、弁アクチュエータ28または弁アクチュエータ28’を押圧するとき、カニューレポート41またはリザーバポート42への流体ラインが開かれる。ばね35、35’は、それぞれの弁キャップ36、36’によって弁座内で偏位された状態で維持され、デバイスの使用中に遭遇される背圧での逆流を防止するために十分なばね力を確保しなければならない。この実施形態ではOリングが示されているが、V字形の座内のエラストマーボール、オーバーモールドされたV字形ポペット、または口部43、44を通じて流体の進入を提供するように偏位させることができるオーバーモールドされた膜など、当技術分野で知られている他の封止システムをこの目的のために適合させることができる。一般に、計量サブシステムの構成要素は、ポンプ構成要素のすべてについてアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)など剛性の医療グレードプラスチック製であり、一方、20と50の間のショアA硬度を有する液体シリコーンゴム(LSR)がシールに使用される。望むなら、LSRシールは、硬質プラスチック基材上に直接モールドされてもよく、その場合、基材部分は、ポリエーテルイミド(PEI)またはポリスルホン(PS)など、より高い軟化温度を有するプラスチック材料製であるべきである。
【0018】
図の実施形態では、ポンプハウジング29は静止しており、ピストン27は、ポンプハウジング29内で平行移動される。この目的のために、ピストン27は、溝32の形態にある軸方向の位置のカム表面を備える。
図4Aでわかるように、溝32は、モータ24に向かって位置する近位の押縁32bと、モータ24からピストン27の対向する端部で偏心カム表面33に向かって位置する遠位の押縁32aとを含む。ピン31など静止部材が、ポンプハウジング内の開口を通って収容され、モータシャフト22が回転するとき溝32の軸方向の平行移動部分に沿って案内されてピストンが近位の押縁32bの位置と遠位の押縁32aとの間で軸方向に前後に移動するのを抑える。当業者なら、ポンプハウジング29と係合するピストン27上の軸方向のカム表面は、ピストン27の軸方向の移動を提供するために様々な方法で具体化され得ることを理解するであろう。たとえば、溝は、ピストンの代わりにポンプハウジング上に位置してもよい。
【0019】
完全なポンプサイクルは、1方向で360度の回転を必要とする。モータシャフト22を逆方向で回転させることにより、流体は反対方向に流れることになる。実施形態では、モータシャフトを逆方向で回転させることによってバイアルなど外部源からリザーバを充填するために、ポンプは充填ポート123と流体連通して置かれてもよい。
【0020】
ポンプサイクルについて、(ピストンをモータに向かって見下ろして)完全な時計回り回転を参照して述べる。この実施形態ではピストン27の往復運動アクションによって達成されるピストン軸周りでの偏心カム表面33の回転は、
図7から
図13に記載のポンプサイクルの以下の順次のステップ、すなわち(1)リザーバ弁開状態、(2)ポンプ吸込みストローク、(3)リザーバ弁閉状態、(4)カニューレ弁開状態、(5)ポンプ排出ストローク、および(6)カニューレ弁閉状態を参照することによって理解される。
【0021】
図7は、ピストンをモータに向かって見下ろしてポンプハウジングの端部からの断面図であり、計量システムをその開始位置で示す。ポンプピストン27は完全に延ばされている。
図7Aおよび
図7Bに示されているように、ピン31は、この位置では近位の押縁32bで止まり、ピストンは軸方向に平行移動しない。カム表面33は、弁アクチュエータ28にも弁アクチュエータ28’にも係合せず、わずかなクリアランスが、ポンプハウジングの半径方向両側でカム表面33とアクチュエータ28、28’の間に設けられる。カム表面33は、この状態で、アクチュエータ先端と「クリアランスがある」と言われる。この状態では、これらの弁は、弁アクチュエータ28、28’を通じてOリングシール34、34’に作用するばねの力によって閉じられる。この初期状態では、弁アクチュエータ28、28’は、弁キャップ36、36’に対してばね荷重され、その結果、それらは、デバイスの動作背圧での漏れを防止するのに十分な永続的な偏位を有する。弁アクチュエータは、口部43、44周りでポンプハウジング内のショルダで止まり得る。このようにして、Oリングシール34またはOリングシール34’の圧縮は、ばね力だけではなく、口部43、44周りでポンプハウジングの表面と協働する弁アクチュエータの幾何形状によって決定される。
【0022】
図8は、吸込みストロークの開始前のリザーバ弁開状態(1)を示す。モータ24は、時計回り方向で回転して示されており、その結果、ピストン27上のカム表面33は、弁アクチュエータ28と接触するように回転し、ばね35を偏位し、リザーバポート42との流体連通を開く。この位置では、ピン31は、まだ溝32の傾斜された軸方向の平行移動部分に入っていない。
【0023】
図9、
図9A、および
図9Bに示されているポンプ吸込みストローク(2)中、アクチュエータ28は、完全に押圧される。流体は、リザーバポート42および口部44を通じてポンプ容積空間47内に流れ、一方、口部43は、閉じられたままである。
図9Aおよび
図9Bに示されているように、ピン31は、軸方向のカム表面32の斜めの部分と係合し、ピストン27を矢印99によって示された方向でモータ24に向かって平行移動させる。流体は、矢印98によって示されているようにポンプ容積空間47内に引き込まれる。吸込みストロークは、ピン31が遠位の押縁32aで止まるとき完了し、ピストン27の軸方向の移動を停止する。アクチュエータ28は、完全に押圧されたままであり、アクチュエータ28’は、カム表面33とクリアランスがあるままである。
【0024】
図10、
図10A、および
図10Bは、リザーバポート42が閉じるところを示す。ピストン27の回転が、カム表面33にアクチュエータ28を解放させ、ばね35の偏位によりシール34を再圧縮し、口部44を通じた流体流を停止する。ポンプサイクルのこの部分の間、ピン31は遠位の押縁32aで止まり、ピストン27の軸方向の平行移動を防止する。
【0025】
図11は、カニューレ弁開状態(4)を示す。ピストン27の回転は、カム表面33をアクチュエータ28’と係合させ、Oリングシール34’に対する圧縮を解放し、口部43を通じてポンプ容積47とカニューレポート41の間で流体連通を開く。
図11Aおよび
図11Bは、ポンプサイクルのこの部分の間に遠位の押縁32aで止まり、ピストン27の軸方向の平行移動を防止するピン31を示す。
【0026】
図12、
図12A、および
図12Bに示されているポンプ排出ストローク(5)中、偏心カム33は、カニューレポート41との流体連通を開いたまま保持し、一方、リザーバポート42は、閉じられたままである。
図12Aは、矢印によって示されているように遠位方向で軸方向に移動されたピストン27を示す。ピン31は、
図12Bに示されているようにカム表面32の斜めの軸方向の平行移動部分と係合し、矢印によって示されているように、ピストン27をモータ24から離れるように平行移動させ、流体をカニューレポート41を通じてポンプ容積空間47から排出させる。
【0027】
図13に示されているように、ピストンが360度の回転を完了した後で、センサ38が係合され、ポンプサイクルが完了していることを示す。ポンプがカニューレ弁閉状態(6)に戻った状態で、リザーバポート42およびカニューレポート41は遮断され、ピン31は、近位の押縁32bで止まる。図の実施形態では、センサ38は、ポンプが完全なサイクルを完了したことを検出するオン/オフスイッチである。しかし、エンコーダホイールおよび光センサなど他のセンサシステムを使用し、中間状態を認識し、その情報をマイクロプロセッサ30に通信してもよい。より高い分解能のセンサの使用は、排出ストロークが増分されることを可能にする。本明細書に記載の実施形態では、排出ストロークは、ピストン27の完全な回転を含み、ポンプ容積47の内容物を空にするが、本発明の範囲から逸脱することなしに、注入用量のより細かい分解能が実装され得る。
【0028】
好ましい実施形態の前述の説明は、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明を限定するものと考えるべきでない。当業者は、前述の開示に依拠して、特許請求されている本発明の範囲から逸脱することなしに、記載の実施形態の変形形態を実施し得る。たとえば、糖尿病の治療のためにインスリンを連続的に送達することに関連して記載されているが、他の薬剤を送達するように注入ポンプを適合させることができることは、当業者には明らかになろう。1つの実施形態または独立請求項に関連して記載されている特徴または従属請求項の限定は、本発明の範囲から逸脱することなしに、別の実施形態または独立請求項と共に使用するように適合され得る。