(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照しながら、実施形態の一例について詳細に説明する。
実施形態では、パウチ容器に収容される物品として物品30(
図4参照)を例示する。物品30は、略円柱形状の胴部31を有し、胴部31内に内容物が充填された容器である。但し、物品はこれに限定されず、パウチ容器には円柱形状以外の形状(例えば、角柱形状、楕円形状等)を有する容器を収容してもよく、また容器以外の物品を収容してもよい。なお、本明細書において「略**」との記載は略円柱形状を例に挙げて説明すると、完全な円柱形状はもとより、実質的に円柱形状と認められるものを含む意図である。
【0010】
実施形態では、底ガゼットシートを備えたスタンディングパウチを例示するが、自立性を有さない平パウチなど、他のパウチ形態に本発明の構成を適用してもよい。本明細書では、パウチ容器を平坦な面上に起立させたときに、その鉛直方向(
図1における長手方向)を「上下方向」として鉛直下方側を「下」、鉛直上方側を「上」とし、パウチ容器の幅方向(
図1における左右方向)を「横方向」とし、パウチ容器の前後方向を「表裏方向」として説明する。図面では、上下方向をX、横方向をY、表裏方向をZとしてそれぞれ示す。
【0011】
図1は、実施形態の一例であるパウチ容器10の正面図である。
図1に示すように、パウチ容器10は、表面シート11(第1壁面シート)と、表面シート11に対向配置された裏面シート12(第2壁面シート)と、各壁面シート(表面シート11及び裏面シート12)の内面に横方向Yに沿って設けられた中間ガゼットシート20とを備える。各壁面シートは、容器の表面部及び裏面部をそれぞれ形成するシート材である。中間ガゼットシート20は、表面シート11に対向する第1面シート22Aと、裏面シート12に対向する第2面シート22Bとを有する。中間ガゼットシート20は、第1面シート22Aの下端と第2面シート22Bの下端が連接した下向きガゼットシートであって、第1面シート22Aと第2面シート22Bの境界部に横方向Yに沿って形成された折り目線21を有することが好適である。詳しくは後述するが、中間ガゼットシート20は、容器内における物品30の移動や回転を抑制して物品30を保持する機能を有する。
【0012】
パウチ容器10は、中間ガゼットシート20より下方側において各壁面シートの内面に展開可能に接合され、物品30が載せられる底面部13bを形成する底ガゼットシート13を備える。パウチ容器10は、物品30を収容したときに底ガゼットシート13が展開して自立可能となるスタンディングパウチである。パウチ容器10は、少なくとも2枚のガゼットシートを備え、一方が物品30を保持する保持部として機能し、他方が容器底面部を形成する底ガゼット部として機能する。底ガゼットシート13は、表面シート11に対向する第1面シート13Aと、裏面シート12に対向する第2面シート13Bとを有する。底ガゼットシート13は、中間ガゼットシート20とは逆に、第1面シート13Aの上端と第2面シート13Bの上端が連接した上向きガゼットシートであって、第1面シート13Aと第2面シート13Bの境界部に横方向Yに沿って形成された折り目線13aを有する。パウチ容器10は、物品30が収容されていない状態において各壁面シートが互いに略接触した扁平形状を有し、各ガゼットシートは折り畳まれた状態である。
【0013】
パウチ容器10は、互いに対向配置された各壁面シートの横方向両端縁に上下方向Xに沿って形成されたサイドシール部14を有する。底ガゼットシート13及び中間ガゼットシート20の横方向両端縁は、各壁面シートの横方向両端縁に至っていることが好適であり、サイドシール部14は、各壁面シートの間に底ガゼットシート13及び中間ガゼットシート20を挿入した状態で形成される。サイドシール部14は、壁面シート同士を接合すると共に、各壁面シートと2つのガゼットシートを接合する。また、パウチ容器10の下部には、底ガゼットシート13と各壁面シートとの接合部である底シール部16が形成される。底ガゼットシート13には、横方向両端部に切欠き17が形成されており、切欠き17を介して各壁面シートが直接接合される。
【0014】
本実施形態では、パウチ容器10の上端が開口しており、当該上端開口部から容器内に物品30を収容した後、各壁面シートの上端部に沿って上シール部15(
図4参照)が形成され容器内部が密閉される。上シール部15には、例えばパウチ容器10の横方向中央αに各壁面シートを貫通して吊り下げ孔19が形成される。なお、ジッパー部材等を設けて開封後に再封可能な構成としてもよい。
【0015】
各壁面シートは、例えば上下方向Xに長い略矩形形状を有する。底ガゼットシート13は、横方向Yに長い略矩形形状を有し、上述の通りパウチ容器10の横方向全長(全幅)に亘って設けられることが好適である。中間ガゼットシート20も、底ガゼットシート13と同様に、横方向Yに長く延びた形状を有し、上述の通りパウチ容器10の全幅に亘って設けられている。パウチ容器10は、例えば各壁面シートのサイドシール部14をカットして形成された開封用のノッチ18を有する。
図1に示す例では、パウチ容器10の上部に横方向Yに並んで2つのノッチ18が形成されている。
【0016】
底ガゼットシート13は、底シール部16によって各壁面シートの内面に展開可能に接合され、物品30が載せられる底面部13bを形成する。底面部13bは、底シール部16に囲まれた壁面シートに接合されていない非接合部であって、物品30の収容時に各壁面シートが表裏方向Zに離間することで展開する部分である。底シール部16は、下端内縁部16aと、その両側に設けられた斜辺内縁部16bとを有し、底面部13bが正面視略台形形状を呈するように形成されることが好適である。
【0017】
底シール部16の内縁の一部である下端内縁部16aは、例えば横方向Yに真っ直ぐ延びたパウチ容器10の下端と略平行に形成される。
図1に示す例では、下端内縁部16aがパウチ容器10の横方向中央αから各サイドシール部14との中間位置付近まで直線状に形成されている。下端内縁部16aが直線状に形成されることで、底ガゼットシート13が展開したときに底面部13bの物品30が載せられる部分が略平坦になり、物品30をより安定に支持することが可能となる。そして、下端内縁部16aの両端から底ガゼットシート13の上端と各サイドシール部14との交点に亘って斜辺内縁部16bが直線状に形成されている。下端内縁部16aの横方向長さL
16aは、物品30の横方向直径D
30の1.05倍〜1.50倍であることが好ましく、1.10倍〜1.30倍であることが特に好ましい。詳しくは後述するが、横方向直径D
30に対する横方向長さL
16aを当該範囲内に設定することで、例えば物品30の収容時に底面部13bの略平坦に展開する部分の横方向長さが横方向直径D
30と略同じとなり、物品30の下部の保持性が向上する。
【0018】
中間ガゼットシート20は、底ガゼットシート13と接触した状態で設けられていてもよいが、物品30の保持性向上等の観点から、好ましくは底ガゼットシート13から離れた位置に配置される。
図1に示す例では、パウチ容器10の上下方向中央部βと底ガゼットシート13との間に中間ガゼットシート20が配置されている。中間ガゼットシート20は、物品30の胴部31を保持可能な範囲であれば更に上下方向中央部β側に配置されてもよく、上下方向中央部βより上方に配置されてもよい。中間ガゼットシート20は、例えば容器に収容される物品の形状、寸法等に応じて配置変更されるが、物品に当接する部分が上下方向中央部βよりも下方に位置するように設けられることが好ましい。
【0019】
パウチ容器10を構成する各シート材は、通常、樹脂フィルムから構成される。シート材を構成する樹脂フィルムには、耐衝撃性、耐磨耗性、及び耐熱性など、包装体としての基本的な性能を備えることが要求される。シート材の厚みは、例えば10μm〜300μmであり、好ましくは20μm〜200μmである。また、各シール部はヒートシールにより形成されることが好ましいため、シート材にはヒートシール性も要求される。シート材としては、ベースフィルム層と、ヒートシール性を付与するシーラント層とを有する複層シートが好ましく、高いガスバリア性が要求される場合には、ベースフィルム層とシーラント層との間にガスバリア層を設けることが好適である。これら各層の積層は、慣用のラミネート法、例えば共押出法、接着剤を用いたドライラミネーション法、熱接着性層を挟んで熱により接着させる熱ラミネーション法等により行うことができる。
【0020】
なお、ヒートシールにより形成されるシール部は、各シート材のシーラント層を対向させた状態で当該シート材を熱圧着して形成される。中間ガゼットシート20は、パウチ容器10の密閉性向上等の観点から、サイドシール部14において第1面シート22Aと第2面シート22Bが接合していることが好適である。従い、中間ガゼットシート20にはシートの両面にシーラント層を有する両面ヒートシール性の複層シートを用いることが好ましい。
【0021】
ベースフィルム層を構成するフィルムとしては、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレ−ト(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)など)、ポリオレフィン(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)など)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66など)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエーテルスルフォン(PES)及びエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等から構成される一層又は二層以上の延伸又は未延伸フィルムが例示できる。ベースフィルム層の厚みは、例えば10μm〜200μmであり、好ましくは10μm〜100μmである。
【0022】
シーラント層を構成するフィルムとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン−プロピレン共重合体(EP)、未延伸ポリプロピレン(CPP)、二軸延伸ナイロン(ON)、エチレン−オレフィン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)及びエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等から構成される一層又は二層以上の延伸又は未延伸フィルムが例示できる。シーラント層の厚みは、例えば20μm〜200μmであり、好ましくは30μm〜180μmである。
【0023】
ガスバリア層としては、アルミニウム等の金属薄膜、又は塩化ビニリデン(PVDC)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)などの樹脂フィルム、或いは任意の合成樹脂フィルム(例えば、ベースフィルム層であってもよい)に、アルミニウム、酸化アルミニウムやシリカ等の無機酸化物などを蒸着(又はスパッタリング)したフィルムが例示できる。ガスバリア層の厚みは、例えば0.1μm〜20μmであり、好ましくは0.2μm〜10μmである。
【0024】
壁面シートには、商品名やデザイン(絵柄)、メーカー名、原材料・使用上の注意事項等の商品説明、背景色などを表示するための表示部であるデザイン印刷層(図示せず)を設けることが好適である。各ガゼットシートにもデザイン印刷層等の印刷層を設けてもよい。デザイン印刷層は、例えばグラビア印刷等の公知の方法によりベースフィルム層の内面に形成できる。デザイン印刷層は各壁面シートの一部又は全部に形成される。本実施形態では、デザイン印刷層が各壁面シートの一部に設けられた構成を示している。具体的には、表面シート11の一部に透明部11aが設けられており、外部から透明部11aを介して容器内に収容された物品30の表示部33(
図4参照)が視認可能に構成されており、例えば胴部31の広範囲に設けられた表示部33のうち商品名等が描かれた特定の部分が外側から見えるように透明部11aが形成される。各図面では、説明の便宜上、壁面シートの全体を透明に図示しているが、実際には、例えば透明部11a以外の部分から容器内部は見えない。
【0025】
透明部11aは、例えば表面シート11の一部にデザイン印刷層を設けないことにより形成される。なお、透明部11aには物品30の表示部33の視認性を損なわない範囲でデザイン印刷層が設けられていてもよい。
図1に示す例では、表面シート11において底ガゼットシート13とノッチ18との間に、上下方向Xに長い略楕円形状の透明部11aが形成されている。透明部11aの配置、形状、寸法等は特に限定されず、例えばパウチ容器10に収容される物品の表示部の配置等に応じて適宜変更できる。また、透明部は裏面シート12に形成されていてもよく、表面シート11及び裏面シート12の両方に形成されていてもよい。
【0026】
以下、
図2〜
図6を更に参照し、特に中間ガゼットシート20について詳説する。
図2は、パウチ容器10の平面図であって、中間ガゼットシート20を展開した状態を示す。
図3は、中間ガゼットシート20を抜き出して完全に展開した状態を示す図であり、貫通孔24と物品30の胴部31との寸法比較のため、胴部31を一点鎖線で示す。
図4〜
図6は、パウチ容器10に物品30が収容されたパウチ容器包装体50を示す。
【0027】
図1及び
図2に示すように、中間ガゼットシート20は、物品30を挿通できる貫通孔24と、貫通孔24に挿通される物品30を付勢する付勢部とを有する。中間ガゼットシート20は、互いに対向配置される第1面シート22Aと第2面シート22Bの下端同士が連接した下向きガゼットシートであって、第1面シート22Aと第2面シート22Bは略同一形状、略同一寸法であることが好ましい。中間ガゼットシート20には上向きガゼットシートを適用してもよいが、下向きガゼットシートを用いた方が、物品30の収容時に第1面シート22A及び第2面シート22Bによって挿入方向が規制され、胴部31が貫通孔24に挿通され易いため好ましい。
【0028】
中間ガゼットシート20は、横方向両端部がサイドシール部14のみで各壁面シートに接合されていてもよいが、好ましくはサイドシール部14とは別に各壁面シートとの接合部23が形成される。接合部23は、中間ガゼットシート20の横方向Yに沿って一方のサイドシール部14から他方のサイドシール部14に亘って形成されることが好適である。中間ガゼットシート20は、接合部23によって、第1面シート22Aの上部と表面シート11の内面が接合され、第2面シート22Bの上部と裏面シート12の内面が接合される。接合部23は、ヒートシールにより形成されることが好ましい。
【0029】
中間ガゼットシート20の上下方向長さ(換言すると襠幅)は、通常、物品30の胴部31の表裏方向半径(本実施形態では、横方向直径D
30の1/2)の1.1倍〜2.0倍の長さ、好ましくは1.2倍〜1.8倍の長さ、より好ましくは1.3倍〜1.6倍の長さである。後述するように、本実施形態においては第1面シート22A及び第2面シート22Bのそれぞれの一部が付勢部として機能することから、この範囲であれば、物品30を貫通孔24に挿通した際に、中間ガゼットシート20の表裏方向Zへの展開が大きくなりすぎず、物品30と第1面シート22A及び第2面シート22Bとを密接させることができる。
【0030】
貫通孔24は、第1面シート22Aと第2面シート22Bに跨って中間ガゼットシート20の下部に形成されることが好適である。第1面シート22Aと第2面シート22Bにおける開口面積は略同一であることが好ましい。貫通孔24は、例えば中間ガゼットシート20を折り畳んだ状態で、当該シートの下端(折り目線21が形成された部分)から当該シートを所望の形状に切り抜いて形成される。
【0031】
貫通孔24は、中間ガゼットシート20が展開したときに大きく広がり(
図2参照)、物品30の胴部31が挿通可能な寸法で形成される。なお、中間ガゼットシート20は、底ガゼットシート13と同様に、物品30の収容時に各壁面シートが表裏方向Zに離間することで展開する。本実施形態では、貫通孔24が、中間ガゼットシート20の横方向中央に1つ形成されている。貫通孔24は、パウチ容器10の横方向中央αに対し、正面視において左右対称に形成されている。また、下端内縁部16aもパウチ容器10の横方向中央αに対し、正面視において左右対称に形成されている。貫通孔24は、下端内縁部16aと正面視において上下方向Xに重なる位置に形成されることが好適である。底面部13bは下端内縁部16aに対応する範囲が略平坦に展開するため、下端内縁部16aと上下方向Xに重なる位置に貫通孔24を形成することで、底面部13bの略平坦に展開する部分に物品30を載せることができる。本実施形態では、貫通孔24の横方向長さD
24(
図1参照、横方向Yに沿った最大長さ)が、下端内縁部16aの横方向長さL
16aよりも長くなっている。
【0032】
付勢部は、貫通孔24に挿通される物品30を付勢し、物品30の移動や回転を抑制する機能を有する。本実施形態では、第1面シート22A及び第2面シート22Bの上部、具体的には貫通孔24の上方に位置する部分であるシート上部27が物品30を表裏方向両側から押える付勢部となる(以下、第1付勢部ということもある)。なお、中間ガゼットシート20は物品30の収容により展開するため、第1面シート22Aと第2面シート22Bには物品30を付勢する力が働き、各シートは物品30の表面に強く密着する。
【0033】
中間ガゼットシート20は、貫通孔24の縁部に舌片25を有することが好適である。舌片25は、貫通孔24の内側に張り出した突起部である。貫通孔24に挿通された物品30の胴部31には、第1付勢部(シート上部27)が当接するが、さらに舌片25が胴部31の表面に強く当接して付勢部となる(以下、第2付勢部ということもある)。即ち、本実施形態においては、付勢部として第1付勢部と第2付勢部とを有する。なお、舌片のみが物品に当接するように舌片が形成されてもよい。この場合、舌片のみが付勢部となる。
【0034】
舌片25は、複数形成されることが好適である。舌片25は、貫通孔24の縁部のいずれに形成されてもよいが、好ましくは貫通孔24の横方向両端側にそれぞれ形成される。貫通孔24の横方向両端側に形成された各舌片25は、例えばそれぞれ貫通孔24の横方向端縁から横方向長さD
24の40%以下、好ましくは30%以下の範囲内に位置する。また、舌片25は第1面シート22Aと第2面シート22Bのそれぞれに形成されることが好ましい。
【0035】
本実施形態においては、舌片25は、例えば第1面シート22A及び第2面シート22Bのそれぞれに2つずつ、合計4つ形成される。第1面シート22Aに形成される舌片25A、及び第2面シート22Bに形成される舌片25Bは、表裏方向Zに対向配置されており、互いに略同一形状を有することが好ましい。舌片25の形状は特に限定されず、本実施形態では略三角形状を呈している。舌片25の突出長さ(根元から先端までの最大長さ)は、例えば貫通孔24の横方向長さD
24の40%以下であり、好ましくは横方向長さD
24の10〜30%である。本実施形態では、全ての舌片25の形状、寸法が略同一であるが、各舌片25の形状等は互いに異なっていてもよい。
【0036】
舌片25A,25Bは、互いに連接(この場合、舌片25Aと舌片25Bの間に折り目線21が形成される)していてもよいが、互いに分離して設けることが好ましい。分離してそれぞれ個々に設けることにより、舌片25A,25Bのそれぞれの先端が別個に表裏方向Zに向くことが可能となるため、舌片25の表面が胴部31の表面に面当接して胴部31を強く押え付け、物品30の移動や回転をより強く抑制することができる(
図6参照)。分離して設けるには、連接された舌片25A,25Bの折り目線21の延長線上に切込み26を形成すればよい。
図1に示す例では、第1面シート22A及び第2面シート22Bの下部を正面視略L字形状にそれぞれカットして切込み26が形成されている。即ち、切込み26によって2つの舌片25A,25Bが分離されている。
【0037】
切込み26は、折り目線21上にカット線(スリット)を入れて形成されてもよいが、好ましくは中間ガゼットシート20を折り畳んだ状態で折り目線21が形成された部分を含む第1面シート22A及び第2面シート22Bの一部を切除して形成される。切込み26は、中間ガゼットシート20を上から見たときに(
図2参照)、切込み26により形成される舌片25A,25Bの縁部、及び舌片25A,25Bの間に位置する貫通孔24の縁部(横方向端縁及びその近傍)が、略U字形状又は略台形形状を呈するように第1面シート22A及び第2面シート22Bを切除して形成されることが好適である。これにより、例えば貫通孔24が大きく広げられたときに折り目線21に沿った中間ガゼットシート20の破断が防止される。
【0038】
図3に示すように、貫通孔24の横方向長さD
24は、物品30の挿通性と保持性の両立等の観点から、貫通孔24に挿通される物品30の胴部31の横方向直径D
30よりも長い。横方向長さD
24は、例えば横方向直径D
30の1.2倍〜1.8倍であり、好ましくは1.3倍〜1.6倍である。貫通孔24の横方向両側に形成される舌片25同士の間隔L
25は、胴部31の横方向直径D
30よりも短いことが好ましい。間隔L
25<横方向直径D
30とすることで、舌片25が胴部31の表面に強く当接し易くなる。間隔L
25は、例えば横方向直径D
30の0.60倍〜0.95倍であり、好ましくは0.75倍〜0.90倍である。
【0039】
ここで、横方向直径D
30とは、パウチ容器10内に物品30が収容されたときに物品30の底面部13bに接する部分の横方向Yに沿った最大直径を意味する。本実施形態では、胴部31が略真円形状であるから、胴部31の直径と略同義である(以下、単に直径D
30とする)。また、間隔L
25とは、舌片25A同士、舌片25B同士の間隔であって、各舌片のうち最も距離が近い部分(先端)同士の間隔を意味する。
【0040】
貫通孔24の表裏方向長さL
24(表裏方向Zに沿った最大長さ)は、貫通孔24に挿通される物品30の胴部31の直径D
30よりも短いことが好適である。中間ガゼットシート20は物品30の収容により表裏方向Zに湾曲するため(後述の
図5参照)、表裏方向長さL
24<直径D
30としても、貫通孔24に物品31を挿通可能である。表裏方向長さL
24は、例えば直径D
30の0.4倍〜0.9倍であり、好ましくは0.5倍〜0.8倍である。表裏方向長さL
24が当該範囲内であれば、貫通孔24に対する物品30の挿通性を損なうことなく、物品30の良好な保持性が得られる。
【0041】
図4に示すように、パウチ容器10と物品30とで構成されるパウチ容器包装体50では、中間ガゼットシート20の貫通孔24に物品30の胴部31が挿通され、底ガゼットシート13の底面部13bに胴部31が載せられた状態で物品30が収容される。パウチ容器10に収容される物品30は、略円柱形状の胴部31と、胴部31の開口部を塞ぐ蓋部32とを備える。胴部31は、径方向よりも胴部31と蓋部32が並ぶ方向(上下方向)に長く、その上下方向長さはパウチ容器10の上下方向長さの1/2以上である。蓋部32は、胴部31よりも直径が小さく上下方向長さも短い。物品30は、胴部31を下にして、その上下方向がパウチ容器10の上下方向に沿うように容器内に収容されている。
【0042】
物品30には、商品名やデザイン、メーカー名、商品説明などが描かれた表示部33が設けられている。パウチ容器10は、上述のように表面シート11aに形成された透明部11aを介して容器内に収容された物品30の表示部33が視認可能である。
図4に示す例では、正面視略矩形形状の表示部33が胴部31に設けられており、表示部33の全体を透明部11aを介してパウチ容器10の外側から見せているが、パウチ容器10は表示部33のうち特定の部分のみを外側から視認可能とした構成であってもよい。
【0043】
図4及び
図5に示すように、物品30の収容時における貫通孔24の横方向長さd
24は、胴部31の横方向直径D
30よりもやや長い。物品30の収容により中間ガゼットシート20が展開すると、中間ガゼットシート20が表裏方向Zに湾曲するため、貫通孔24の横方向長さは小さくなる(即ち、D
24>d
24)。貫通孔24は、底面部13bのうち略平坦に展開する部分(以下、「平坦部f」(
図5(b)参照)という)と上下方向Xに重なる位置に形成されることが好適である。上述の通り、底面部13bは直線状に形成された下端内縁部16aに対応する範囲が略平坦に展開するため、貫通孔24は下端内縁部16aと正面視において上下方向Xに重なる位置に形成されることが好ましい。
【0044】
物品30の収容時における下端内縁部16aの横方向長さP
16aは、胴部31の直径D
30の1.0倍(略同じ)〜1.3倍であることが好ましく、直径D
30と略同じであることが特に好ましい。即ち、底面部13bの平坦部fの横方向長さは胴部31の直径D
30と略同じであることが好ましい。底面部13bのうち胴部31の横方向両側に位置する部分は底ガゼットシート13の展開により斜辺内縁部16bに対応して上方に傾斜するが、横方向長さP
16a≒直径D
30とすることで、底面部13bの当該傾斜部によって胴部31が挟まれ、横方向両側から押えられて胴部31の下部が保持される。また、斜辺内縁部16bを直線状に形成することで、底面部13bの傾斜部が胴部31の下部に当接し易くなり、保持性が更に向上する。
【0045】
パウチ容器10は、物品30を収容したときに、中間ガゼットシート20が設けられた部分の各壁面シートが胴部31の表面に沿って緩やかに湾曲し、各壁面シートは中間ガゼットシート20を介して胴部31の表面に密着する。一方、パウチ容器10の下部は、物品30を収容したときに、各壁面シートが胴部31の表面に密着するが、下端内縁部16aが形成された範囲に対応する部分は横方向に沿って略直線状に形成される。そして、下端内縁部16aと斜辺内縁部16bの境界部近傍で各壁面シートが湾曲する。下端内縁部16aの横方向長さは、例えば物品30の収容によりやや小さくなる。平坦部fの表裏方向長さL
13b(表裏方向Zに沿った最大長さ)は、各壁面シートを胴部31に密着させるべく、胴部31の直径D
30と略同じに設定することが好適である。
【0046】
図4〜
図6に示すように、上述の構成を備えたパウチ容器10では、中間ガゼットシート20の付勢部が当該シートの貫通孔24に挿通された物品30の胴部31の表面に当接し、容器内における物品30の移動や回転を抑制する。特に、舌片25(第2付勢部)が胴部31の表面に強く当接して胴部31を押え付け、物品30の移動や回転を抑制する。更に、底面部13bが胴部31の下部を横方向両側から押えて、物品30の横方向の動きを拘束する。即ち、底ガゼットシート13と中間ガゼットシート20により、物品30が容器内で安定に保持される。また、中間ガゼットシート20のシート上部27(第1付勢部)及び各壁面シートが、胴部31の表面に密着して表裏方向両側から胴部31を押えることで、物品30の表裏方向Zの動きが拘束される。
【0047】
貫通孔24の横方向両端側に形成された舌片25A,25Bは、切込み26によって分離されているため、舌片25A,25Bが連接する場合と比べて胴部31の表面に沿うように折れ曲がり易く、胴部31との接触面積が拡大する。上述の通り、舌片25A,25Bのそれぞれの先端が別個に表裏方向Zに向き、舌片25の表面が胴部31の表面に面当接して胴部31を強く押え付け、各舌片25と胴部31の表面との間に大きな摩擦力が作用する。これにより、容器内における物品30の動きが拘束され、物品30の回転等が十分に抑制される。中間ガゼットシート20は物品30の収容により展開して物品30を除くと折り畳まれるため、第1面シート22Aと第2面シート22Bには物品30を付勢する力が働き、各シートは物品30の表面に強く密着する。
【0048】
以上のように、上述の構成を備えたパウチ容器10によれば、中間ガゼットシート20が物品30の保持部として機能し、容器内における物品30の移動や回転が抑制される。従い、容器内の所定位置に物品30を保持できる。また、容器内で回転し易い略円筒形状の物品30を収容した場合においても、物品30が回転して表示部33の目的とする部分(例えば、商品名等)が見えなくなることを防止することが可能である。
【0049】
ここで、
図7を参照しながら、パウチ容器10の製造方法の一例について説明する。
図7は、パウチ容器10の製造工程のうち各シート材の長尺体を積層して各シール部を形成する工程を示す。長尺体の長手方向を「MD方向」、幅方向を「TD方向」とする。
【0050】
図7に示すように、まず、表面シート11、裏面シート12、底ガゼットシート13、及び中間ガゼットシート20の長尺体(以下、長尺体11z,12z,13z,20zとする)をそれぞれ準備して互いに積層する。長尺体13zには切欠き17となる貫通孔17zが、長尺体20zには貫通孔24がそれぞれMD方向に略等間隔で形成されている。各長尺体の積層工程では、長尺体11zと長尺体12zを重ね合わせ、長尺体11z及び長尺体12zの下部に長尺体13zを挿入し、例えば長尺体13zと長尺体11z,12zのTD方向中央部との間に長尺体20zを挿入する。
【0051】
互いに積層された各長尺体には、ヒートシール工程でサイドシール部14、底シール部16、及び接合部23が形成され、長尺体13z,20zが長尺体11z,12zの内面に展開可能に接合される。なお、接合部23を形成する際には遮蔽版を中間ガゼットシート20の間に位置させ、表裏方向Zに中間ガゼットシート20の内面同士が接合しないようにしてヒートシールする。次に、例えばダイカットロール等を用いて、サイドシール部14の仮想線Xに沿って各長尺体をカットし、個々の容器サイズに分割する。このとき、サイドシール部14にノッチ18が形成される。こうして、
図1に示すパウチ容器10が得られる。パウチ容器10の上端開口部から物品30を容器内に収容した後、上シール部15及び吊り下げ孔19を形成することで、
図4に示すパウチ容器包装体50が得られる。なお、長尺体の状態で物品30を収容し、上シール部15を形成してから個々の容器サイズに分割してもよい。
【0052】
上述の通り、各シート材の長尺体を用いた簡便で生産性の高いプロセスによって、物品30の移動・回転止め機能を持つ保持部(中間ガゼットシート20)を備えたパウチ容器10を製造することができる。
【0053】
上述の実施形態は本発明の目的を損なわない範囲で適宜設計変更できる。
図8A,B及び
図9A,Bに設計変更の一例を示す。
【0054】
図8A,Bに例示する形態では、上下方向Xに並んで配置された2つの中間ガゼットシート20を備える点で上述の実施形態と異なる。パウチ容器10xでは、3枚のガゼットシートが設けられ、そのうち2枚が物品30を保持する保持部として機能し、残り1枚が底ガゼット部として機能する。
図8A,Bに示す例では、各中間ガゼットシート20が略同一形状、同一寸法を有し、互いに上下方向Xに間隔をあけて、一方がパウチ容器10の上下方向中央部βよりも上方で壁面シートに接合され、他方が上下方向中央部βと底ガゼットシート13との間で壁面シートに接合されている。各中間ガゼットシート20には4つの舌片25が設けられており、パウチ容器10xには合計8つの舌片25が存在する。パウチ容器10x(パウチ容器包装体50x)では、8つの舌片25が胴部31の表面に強く当接して物品30の移動や回転を抑制する。なお、
図8A,Bに例示する形態では、表面シート11に正面視略矩形形状の透明部11xが形成されている。
【0055】
図9A,Bに例示する形態では、1つの中間ガゼットシート20yに2つの貫通孔24が形成されている点で上述の実施形態と異なる。パウチ容器10yは、パウチ容器10と比べて横方向に長く、2つの物品30を横方向に並べた状態で収容することができる。
図9A,Bに示す例では、各貫通孔24が略同一形状、同一寸法を有し、各貫通孔24の縁部にはそれぞれ4つの舌片25が形成されている。パウチ容器10y(パウチ容器包装体50y)では、2つの物品30が各貫通孔24に別々に挿通され、それぞれ4つの舌片25が各胴部31の表面に強く当接して各物品30の移動や回転を抑制する。
図9A,Bに例示する形態では、表面シート11に正面視略楕円形状の透明部11aが各物品30の表示部33に対応して2つ形成されている。
【0056】
底ガゼットシート13yは、中間ガゼットシート20yに対応して横方向に長く延びている。底ガゼットシート13yと各壁面シート(表面シート11y、裏面シート12y)との接合部である底シール部16yの下端内縁部16ayは、パウチ容器10の場合と同様に、横方向に沿って直線状に形成されている。また、2つの貫通孔24は下端内縁部16ayと正面視において上下方向Xに重なる位置に形成されている。一方、
図9A,Bに例示する形態では、下端内縁部16ayの横方向長さL
16aが胴部31の直径D
30よりも長く、直径D
30の2倍よりも長い点で上述の実施形態と異なる。
【0057】
パウチ容器10xには、互いに略同一形状、同一寸法を有する中間ガゼットシート20が2つ設けられているが、各中間ガゼットシートの形状等は互いに異なっていてもよく、例えば一方が蓋部32を保持するものであってもよい。また、パウチ容器10yは同じ物品30を2つ収容しているが、2つの物品は互いに異なるものであってもよく、3つ以上の物品を収容する構成としてもよい。