(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
入浴時の低温やけど防止について、今まで提案がなかった。特許文献1に開示されている一般的な風呂装置は、設定温度の上限を48℃にするだけで、低温やけどを防止するための特別の機能はなく、入浴者の自己管理に委ねられている。
【0009】
しかし、糖尿病患者は、皮膚の神経が傷んでおり、湯温を低く感じる傾向がある。そのため、浴槽湯温が上昇しているにも拘わらず、当人は、浴槽湯温が設定温度より低いと勘違いして設定温度に戻すべく追焚スイッチを繰り返しオンする傾向がある。その結果、浴槽湯温が段階的に上昇し想定以上の温度になってしまうこともあり、低温やけどの可能性生じる。
また、子供の場合、興味本位に追焚スイッチのオン操作を繰り返しこともあるので、同様に浴槽湯温の上昇を招くことがある。
【0010】
非特許文献1の研究は、入浴時の低温やけどを防止することを意図したものではないし、低温やけどの対象は、人間よりはるかに皮膚の厚い豚の皮膚に関するものである。また、皮膚の狭い領域(直径1インチ=直径約25mm)に熱源を当てた時のデータであり、皮膚の広い領域が湯に接する入浴に適用することはできない。
また、大阪ガスの「性能評価技術基準」は、給湯の際の低温やけどに適用しようとするものであり、入浴時の低温やけどを防止することを意図したものではない。しかも、この基準は、豚の皮膚に関する非特許文献1の研究データを念頭におき、これより高温温熱熱傷方向については安全サイドに設定しているものの、皮膚の広い領域が湯に接する入浴時の低温温熱熱傷である低温やけどに適用することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、浴槽に接続される追焚循環回路と、この追焚循環回路に設けられたポンプ、加熱部および浴槽湯温を検出する湯温センサと、追焚スイッチと、演算制御部とを備えた風呂装置において、
上記演算制御部は、上記追焚スイッチのオンに応答して、低温やけどを防止するために設定された追焚許可条件を満たすか否かを判断し、
a.上記追焚許可条件を満たす場合には、ポンプを駆動させ上記浴槽の湯を上記追焚循環回路を介して循環させるとともに、上記加熱部からの熱を供給することにより、浴槽湯温が目標湯温上昇分だけ上昇するように追焚を実行し、
b.上記追焚許可条件を満たさない場合には、上記追焚スイッチのオンにも拘わらず上記追焚を実行しないことを特徴とする。
【0012】
好ましくは、上記演算制御部は、タイマからの経過時間情報に基づいて上記追焚許可条件を満たすか否かを判断する。
その一態様は、上記追焚許可条件として、所定時間間隔毎の追焚可能回数が設定されており、上記演算制御部は、上記所定時間毎に追焚の履歴をクリアし、追焚スイッチオン時に、この追焚スイッチオンに応答した追焚が上記追焚可能回数以下の場合には、上記追焚許可条件を満たすと判断して追焚を実行し、上記追焚可能回数を超えている場合には、上記追焚許可条件を満たさないと判断して追焚を実行しない。
他の態様は、上記追焚許可条件として、前回の追焚終了時点からの経過時間の下限時間が設定されており、上記演算制御部は、前回の追焚終了時点から追焚スイッチオンまでの経過時間が上記下限時間以上である場合には、上記追焚許可条件を満たすと判断して追焚を実行し、上記下限時間未満の場合には、上記追焚許可条件を満たさないと判断して追焚を実行しない。
【0013】
好ましくは、さらに、自動運転スイッチを備え、上記演算制御部は、上記自動運転スイッチのオンに応答して自動運転モードを実行し、この自動運転モードでは、一定時間間隔毎に追焚タイミングを設定し、この追焚タイミングで、上記ポンプを駆動させて浴槽の湯を上記追焚循環回路を介して循環させるとともに上記加熱部からの熱を供給することにより、上記浴槽湯温が設定温度になるように追焚を実行し、上記追焚許可条件は、上記設定温度が高いほど厳しくなるように設定されている。
【0014】
好ましくは、さらに、自動運転スイッチを備え、上記演算制御部は、上記自動運転スイッチのオンに応答して自動運転モードを実行し、この自動運転モードでは、一定時間間隔毎に追焚タイミングを設定し、この追焚タイミングで、上記ポンプを駆動させて浴槽の湯を上記追焚循環回路を介して循環させるとともに上記加熱部からの熱を供給することにより、上記浴槽湯温が設定温度になるように追焚を実行し、上記追焚許可条件には、上記設定温度の上限が設定されており、上記演算制御部は、上記設定温度が上限を超えている場合には、上記追焚許可条件を満たさないと判断して追焚を実行しない。
【0015】
好ましくは、上記追焚許可条件は、追焚終了時点の浴槽湯温が高いほど厳しくなるように設定されており、上記演算制御部は、上記追焚終了時点に上記湯温センサで検出される浴槽湯温に応じて、上記追焚許可条件を満足するか否かを判断する。
【0016】
好ましくは、上記追焚許可条件には、追焚終了時点の浴槽湯温の上限が設定されており、上記演算制御部は、上記追焚終了時点に上記湯温センサで検出される浴槽湯温に応じて、上記追焚許可条件を満足するか否かを判断する。
【0017】
好ましくは、さらに環境温度センサを備え、上記追焚許可条件は環境温度が高くなるほど厳しくなるように設定されており、上記演算制御部は、上記環境温度センサで検出される環境温度に応じて、上記追焚許可条件を満足するか否かを判断する。
【0018】
好ましくは、上記追焚循環回路には浴槽水位を検出する水位センサが設けられ、上記追焚許可条件は、入浴者の体積が小さいほど厳しくなるように設定されており、上記演算制御部は、入浴する際の上記水位センサによる検出水位の上昇値に基づいて入浴者の湯に漬かっている体積を演算し、この演算された体積に応じて上記追焚許可条件を満足するか否かを判断する。
【0019】
好ましくは、上記追焚循環回路には浴槽水位を検出する水位センサが設けられ、上記追焚許可条件は、浴槽水位の変動が大きいほど厳しくなるように設定されており、上記演算制御部は、上記水位センサの水位に基づいて浴槽水位の変動の大きさを演算し、この水位変動の大きさに応じて、上記追焚許可条件を満足するか否かを判断する。
【0020】
好ましくは、さらに、ジャグジー部またはマイクロバルブ発生部を備え、上記追焚許可条件は、上記ジャグジー部またはマイクロバルブ発生部が運転されている時には厳しくなるように設定されており、上記演算制御部は、上記ジャグジー部またはマイクロバルブ発生部の運転情報に応じて上記追焚許可条件を満足するか否かを判断する。
【0021】
好ましくは、さらに、追焚循環回路に設けられた導電度センサを備え、上記追焚許可条件は、浴槽湯の導電度が大になるほど厳しくなるように設定されており、上記演算制御部は、上記導電度センサからの導電度情報に応じて上記追焚許可条件を満足するか否かを判断する。
【0022】
好ましくは、さらに報知手段を備え、上記演算制御部は、上記追焚スイッチオンにも拘わらず追焚を実行しない時には、報知手段による報知を実行する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、追焚スイッチオンによる追焚の繰り返しを制限し、ひいては浴槽湯温の上昇を制限することにより、低温やけどが生じるのを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態について図面参照しながら説明する。
図1に示すように風呂・給湯装置は、構成の一部を共有する風呂装置Aと給湯装置Bを備えている。詳述すると、缶体(図示せず)の下部には給湯,追焚兼用のガスバーナ1が配置され、缶体の上部には給湯,追焚兼用の熱交換部2(加熱部)が配置され、缶体の底部にはガスバーナ1に燃焼空気を供給するためのファン(図示せず)が配置されている。
上記ガスバーナ1にガスを供給する手段は、ガス管3と、このガス管3に設けられた電磁開閉弁4および電磁比例弁5とを有している。熱交換部2には、給湯装置Bの給湯回路10と風呂装置Aの追焚循環回路20が通っている。
【0026】
上記給湯回路10は、上記熱交換部2を通る受熱管11と、この受熱管11の入口端に接続された給水管12と、出口端に接続された給湯管13とを有している。給湯管13の末端には給湯栓14が設けられている。実際には、給湯管13は、浴室と台所等に複数に分岐され、これら分岐路の末端に給湯栓やシャワーが設けられているが、図を簡略化するため分岐路を省略し、複数の給湯栓やシャワーを1つの給湯栓14で示している。給水管12には給水温度センサ15と、フローセンサ16が設けられ、給湯管13には出湯温度センサ17と流量制御弁18が設けられている。給水管12と給湯管13との間には、バイパス管19が受熱管11と並列に接続されている。
【0027】
上記追焚循環回路20は、熱交換部2を貫通する受熱管21と、その入口端と浴槽6の循環金具6aとの間に接続された復路管22と、受熱管21の出口端と循環金具6aとの間に接続された往路管23とを備えている。復路管22には、ポンプ24、水流スイッチ25,湯温センサ26が設けられている。
【0028】
上記給湯回路10の給湯管13と追焚循環回路20の復路管22との間には、浴槽6への注湯のための注湯管31が設けられている。注湯管31には、電磁開閉弁からなる注湯弁32が設けられている。
上記注湯弁32の下流側には圧力センサからなる水位センサ33が設けられている。この水位センサ33は、後述するように、入浴、出浴の検出のみならず、入浴者の湯につかる体積の演算等にも用いられる。
【0029】
上記風呂・給湯装置は、さらに、制御ユニット50と、浴室に設けられたリモートコントローラ60(以下、浴室リモコンと称す)と、台所に設けられたリモートコントローラ70(以下、台所リモコンと称す)とを備えている。
【0030】
上記浴室リモコン60は、従来のものと同様に、リモコン運転スイッチ60a,自動運転モードを実行するための自動運転スイッチ61、追焚を実行するための追焚スイッチ62,給湯温度設定部63,浴槽湯温設定部64,浴槽水位設定部65、音声報知部66(報知手段),表示部67を有している。
上記台所リモコン70は、従来のものと同様に、リモコン運転スイッチ70a,給湯温度設定部73、音声報知部76(報知手段),表示部77を有している。
【0031】
上記制御ユニット50は、CPUを含む演算制御部51と、メモリ52,タイマ53,駆動回路,インターフェイス等を内蔵している。演算制御部51は、上述した種々の検出手段、すなわち温度センサ15,17,26,フローセンサ16,水流スイッチ25、水位センサ33と、リモコン60,70等からの情報、メモリ52、タイマ53からの情報に基づいて、点火機構,ファン,開閉弁4,比例弁5,流量制御弁GM,ポンプ24,注湯弁32,リモコン60,70の音声報知部65,75,表示部66,76を制御する。 上記演算制御部51は、後述の制御説明から明らかなように、入浴判断手段、自動モード実行手段、追焚実行手段、低温やけど防止のための追焚制限手段、体積演算手段等を、実質的に含んでいる。
【0032】
上記構成をなす装置における給湯制御について簡単に説明する。ユーザーが給湯栓14を開くと、フローセンサ16が所定量以上の水流を検出する。演算制御部51はこの水流検出に応答して、点火機構およびファンを作動させる。これと同時期に、開閉弁4を開き、ガスをガスバーナ1に供給して燃焼を開始する。給水管12からの水は受熱管11を通る過程で燃焼熱を受けて湯となり、給湯管13を経て給湯栓14から吐出される。この際、演算制御部51は、給湯温度が給湯温度設定部63または73で設定された温度になるように、比例弁5や流量制御弁18を制御する。
【0033】
ユーザーにより自動運転スイッチ61がオンされた時には、演算制御部51は自動運転モードを実行する。この自動運転モードでは、最初に注湯(湯張り)を行う。すなわち、給湯時と同様にガスバーナ1を燃焼させるとともに、注湯弁32を開いて、給湯回路10からの湯を注湯管31、追焚循環回路20を経て浴槽6に供給する。この際、浴室リモコン60のふろ温度設定部64で設定した温度となるように、出湯温度センサ17の検出温度のフィードバック信号に基づいて比例弁5を制御する。上記メモリ52に記憶された注湯流量と浴槽水位の関係が記憶されており、フローセンサ16の積算流量がリモコンで設定された設定水位に対応する注湯流量になったら、注湯を終了する。その結果、浴槽6には、浴室リモコン60で設定されたふろ設定温度の湯が設定水位まで満たされることになる。
【0034】
上記湯張り後に、自動注湯,自動保温を行う。以下、詳述する。
水位センサ33で検出される浴槽水位が設定水位より下がったら、上記注湯と同様にして浴槽6に湯を注ぎ込み、設定水位にする( 自動注湯)。
【0035】
図2において実線Qで示すように、一定時間(例えば30分)間隔で追焚タイミング(
図2において符号t
xで示す)が設定されている。この追焚タイミングt
xでポンプ24を駆動し、浴槽6内の湯を追焚循環回路20経由で循環させ、ポンプ24の駆動開始から所定時間(例えば約30秒)経過時点で湯温センサ26により浴槽湯温を検出する。検出湯温が設定湯温より低い場合(例えば0.5℃以上低い場合)には、ガスバーナ1を燃焼させて追焚を行い、この浴槽湯温をふろ設定温度まで上昇させる( 自動保温) 。追焚終了時点を符号t
x’で示す。なお、検出湯温と設定温度の差が0.5℃未満の場合には、追焚を行わずにポンプ24を停止する。
【0036】
演算制御部51は、自動保温モードであっても、ユーザーにより追焚スイッチ62がオンされた時(手動による追焚指示があった時)には、このオン時を追焚タイミングとする(
図2において全て同符号t
yで示す)。この追焚タイミングt
yでは、ポンプ24を駆動させるとほぼ同時に(すなわち湯温検出のためのポンプ駆動時間を待たずに)、ガスバーナ1を燃焼させ、浴槽湯温を追焚前の温度から目標温度上昇分例えば1℃上昇させる。具体的には、ポンプ24の駆動と同時に演算制御部51は湯温センサ26からの検出温度を監視する。初期には追焚循環回路20の配管内の水の温度が検出されるが、約30秒後には、追焚による温度上昇が反映される前の浴槽湯温(すなわち追焚前の浴槽湯温)が検出される。さらに数十秒経過すると、追焚による温度上昇を伴った浴槽湯温が検出される。演算制御部51は、この浴槽湯温が追焚前の浴槽湯温から1℃上昇した時点で追焚を終了する。追焚終了時点を
図2において符号t
y’で示す。
【0037】
なお、追焚スイッチ62のオン時に、ポンプ24による湯の循環を待たずにオンに応答して即座に追焚を行うのは次の理由による。入浴者は浴槽湯温が低いと感じて追焚スイッチ62をオンするのであり、追焚をせずにポンプ24を駆動して湯を循環させたのでは、湯温をさらに低下させてしまい(追焚循環回路20の水が入り込むため)、入浴者を不快にさせるからである。
【0038】
上記手動操作に基づく追焚では、上記のように検出湯温のフィードバック情報を用いず、所定時間、所定燃焼熱量の追焚を実行してもよい。この燃焼熱量は満水時の浴槽の湯を約1℃上昇させるように設定する。この場合でも、追焚終了時点t
y’で湯温センサ26により浴槽湯温を検出するのが好ましい。
【0039】
その後、浴槽湯温が放熱により設定温度まで下がり切らないうちに短時間間隔で追焚スイッチ62をオンし、追焚を実行すると、
図2の破線Sで示すように浴槽湯温は段階的に上昇する。
参考までに、1回目の追焚スイッチ62オンに応答して浴槽湯温を1℃上昇させた後に放置した場合には、
図2の一点鎖線Rで示すように浴槽湯温は放熱により徐々に低下する。
【0040】
前述したように、糖尿病患者は、皮膚の神経が傷んでいるため浴槽湯温を低く感じ(皮膚にあり、外気温、湯温等の変化を感受する温点、冷点等の温度受容器自体が傷み、又は、温点、冷点の情報伝達がうまくできず)、追焚スイッチ62を繰り返しオンする傾向がある。その結果、
図2の破線Sで示すように、浴槽湯温が段階的に上昇して想定以上の温度に達し、低温やけどのリスクが高まる。子供の場合には、興味本位に追焚スイッチ62のオン操作を繰り返しこともあるので、同様に浴槽湯温の上昇を招くことがある。
【0041】
入浴は皮膚の広い領域が湯に接する。この結果、人が浴槽6に入った時(入浴時)には、浴槽6の湯と人との間で熱交換が生じ、多量の熱が人体に入る。そして体温(血液温度、深部温)が上昇し、この温度上昇は、視床下部血管壁(他に中脳・延髄・脊髄・腹腔壁・腹部内臓・大血管等)にある温度受容器(核心温度センサ)で感知し、視床下部体温調節中枢で熱さを感じる。具体的には「ほてり」や「のぼせ」を感じる。この「ほてり」や「のぼせ」は、時間経過とともに強く感じ、温度が高くなるほど強く感じる。やがて、気分が悪くなったり呼吸が荒くなり、入浴継続が不可能になる(強く出浴したいと感じる)。
【0042】
健康人であれば、上記のような強い「ほてり」や「のぼせ」が生じる前に、皮膚の温度受容器の感覚により低温やけどのリスクを感じて出浴できるが、糖尿病患者等は皮膚の温度受容器が傷んでいるので低温やけどのリスクを感じることができず、上記のような強い「ほてり」や「のぼせ」が生じるまで入浴を継続してしまう。
図3に示すように、温度が高いと(具体的には46℃より高いと)、低温やけどが生じる時間(線A参照)は、強い「ほてり」や「のぼせ」を感じる時間(線B参照)より短い。そのため、糖尿病患者の入浴には低温やけどのリスクが生じる場合がある。上記のように追焚スイッチ62のオン操作の繰り返しによる浴槽湯温の上昇を伴えば、低温やけどのリスクが高まる。
【0043】
そこで、本実施形態では、予めメモリ52に追焚許可条件を設定しておき、演算制御部51では追焚許可条件を満たす場合にのみ、追焚スイッチ62のオンに応答して上記追焚を実行し、追焚許可条件を満たさない場合には、追焚スイッチ62がオンされていても追焚を実行しない(具体的には、オン信号の受取を拒否する、またはオン信号を受け取っても追焚実行を禁じる)。このことによって、皮膚の温度受容器で湯温温度を正確に感じ取れない糖尿病患者であっても、追焚許可条件を設けることで、追焚の繰り返しによる浴槽湯温上昇に伴う低温やけどを防止する。
【0044】
以下、種々の追焚許可条件による追焚制限の実施形態について詳述する。なお、以下に示す追焚制限は、入浴中の場合だけ実行してもよいし、入浴の有無とは無関係に実行してもよい。入浴中だけ実行する場合には、予め、水位センサ33による浴槽6の水位を読み込み、所定量を越えた水位の上昇があったか否か、すなわち人が浴槽6に入ったかどうかを判断し、肯定判断した場合に追焚制限を実行する。
【0045】
追焚制限の第1実施形態(所定時間間隔毎の追焚回数の制限)
本実施形態の追焚許可条件では、所定時間(例えば10分)間隔毎の追焚可能回数が所定回数(例えば2回)に設定されている。
演算制御部51は、タイマ53で計測される経過時間を監視し、10分経過した時点で追焚の履歴をクリアする。このようにして10分間の時間間隔で追焚スイッチ62からのオン信号を待つ。10分間の間に1回目または2回目のオン信号を受けた時には、追焚許可条件を満足すると判断し、追焚を実行する。10分間の間に3回目のオン信号を受けた時には、追焚許可条件を満足しないと判断し、追焚を実行しない。
すなわち、糖尿病患者は病院で、低温火傷について十分な説明を受けている。従って低温火傷に対して十分マージンを見込んだ温度の湯温に入浴するが、皮膚の温度受容器で湯温温度を感じることが出来ないので、つい思わず追焚を行う。視床下部血管壁等にある温度受容器で湯温を感受するまでの間の追焚回数を制限することで、低温火傷が防止できる。
【0046】
追焚制限の第2実施形態(前回の追焚終了時点からの経過時間による制限)
本実施形態の追焚許可条件では、前回の追焚終了時点からの経過時間の下限時間(例えば8分)が設定されている。
演算制御部51は、前回の追焚終了時点からタイマ53で計測される経過時間を監視し、追焚スイッチ62からのオン信号を待つ。8分以上経過してからオン信号を受けた時には、追焚許可条件を満足すると判断し、追焚を実行する。8分未満でオン信号を受けた時には、追焚許可条件を満足しないと判断し、追焚を実行しない。
【0047】
追焚制限の第3実施形態(設定温度に応じた追焚許可条件の設定)
本実施形態の追焚許可条件は、設定温度が高いほど厳しくなるように設定される。設定温度が高いほど浴槽温度が高くなるため低温やけどのリスクが高まることを考慮したものである。以下、追焚許可条件の基本態様に分けて説明する。
(1)第1実施形態と同様に、追焚許可条件として所定時間(例えば10分)間隔毎の追焚可能回数を設定している場合には、設定温度が高いほど追焚可能回数が少なくなるように設定する。具体的には下記の通りである。
42℃設定ならば2回
43℃設定ならば2回
44℃設定ならば1回
45℃設定ならば1回
46℃設定ならば0回(すなわち、追焚を実行しない)
上記のようにして、浴槽湯温が所定時間の10分以内に追焚スイッチオンにより追焚しても浴槽湯温が46℃を超えないようにしている。すなわち、
図3における低温やけどユーザー回避行動不可領域を回避する。これにより、深部温感受に伴うほてりやのぼせによって出浴を促される前に低温やけどが生じるのを防止することができる。
46℃未満であれば深部温感受によりほてりやのぼせを感じるまでの時間は低温やけどが生じる時間より短いので、このほてりやのぼせにより出浴を促されるため、低温やけどを回避できる。
なお、外気温や浴室温度が低かったり浴槽に水を足す等により浴槽温度が想定以上に低下することもある。そのため、所定時間(10分)毎に追焚回数をクリアにして追焚スイッチオンによる追焚を許容するのである。なお、上記ほてりやのぼせに伴う出浴により低温やけどの回避が見込まれるので、この所定時間は、46℃で低温やけどが生じる入浴時間より長くしてもよい。
(2)第1実施形態と同様に、追焚許可条件として所定時間(例えば10分)間隔毎の追焚可能回数を設定している場合において、設定温度の上限だけを設定してもよい。この場合、設定温度が上限以下の場合には追焚可能回数を一定回数とし、上限温度を超える場合には追焚可能回数を0回にする。
(3)第2実施形態と同様に、追焚許可条件として前回の追焚終了時点からの経過時間の下限を設定している場合には、設定温度が高いほど下限の時間が短くなるように設定する。
【0048】
追焚制限の第4実施形態(追焚終了時点の浴槽温度に応じた追焚許可条件の設定)
本実施形態では、第3実施形態における設定温度の代わりに追焚終了時点の浴槽湯温を用いる。追焚許可条件は、この追焚終了時点の浴槽湯温が高いほど厳しくなるように設定される。
浴槽湯温は、ポンプ24の駆動により浴槽6の湯が循環回路20を循環し、湯温センサ26に達しなければ正確に検出できないため、追焚終了時点の浴槽湯温は、実際の浴槽湯温を正確に表していないが実際の浴槽湯温に近い。そこで、この追焚終了時点の浴槽湯温に応じて追焚許可条件を設定するのである。
【0049】
以下、追焚許可条件の基本態様に分けて説明する。
(1)第1実施形態と同様に、追焚許可条件として所定時間(例えば10分)間隔毎の追焚可能回数を設定している場合には、追焚終了時点の浴槽湯温が高いほど追焚可能回数が少なくなるように設定する。具体的には下記の通りである。
42℃ならば2回
43℃ならば2回
44℃ならば1回
45℃ならば1回
46℃ならば0回
(2)第1実施形態と同様に、追焚許可条件として所定時間(例えば10分)間隔毎の追焚可能回数を設定している場合において、追焚終了時点の浴槽湯温の上限だけを設定してもよい。この場合、追焚終了時点の浴槽湯温が上限以下の場合には追焚可能回数を一定回数とし、上限温度を超える場合には追焚可能回数を0回にする。
(3)第2実施形態と同様に、追焚許可条件として前回の追焚終了時点からの経過時間の下限を設定している場合には、追焚終了時点の浴槽湯温が高いほど上記下限の時間が短くなるように設定する。
【0050】
本実施形態では、演算制御部51は、追焚終了時点での湯温センサ26による検出湯温に応じて上記追焚許可条件を満足するか否かを判断するが、この追焚終了時点の検出湯温として、追焚スイッチ62のオンに応答した追焚の終了時点(
図2において符号t
y’で示す)のみならず、自動運転モードでの追焚終了時点(
図2において符号t
x’示す)、沸き上がり時点t
0での湯温センサ26による検出湯温をも用いるのが好ましい。
【0051】
追焚制限の第5実施形態(入浴体積に応じた追焚許可条件の設定)
人が浴槽6に入った時(入浴時)には、浴槽6の湯と人との間で熱交換が生じる。また、入浴者は肺呼吸により湯から受け取った熱の一部を放熱する。その結果、浴槽湯温は徐々に低下する。
大人は体積が大きいため、上記熱交換量、放熱量が大きく、子供の場合、大人より体温が高く体積が小さいので、上記熱交換量、放熱量が小さく、上記浴槽湯温は大人の場合ほど低下しない。
例えば、体重35Kg入浴体積32リットル以下の場合(子供の場合)には、低温やけどのリスクが高まる時間も大人の糖尿病患者に対して約7割と短いが、核心温度の上昇から入浴継続が不可能であると感じる時間もまた約7割と短い。
最近、浴槽6の中間高さに段差があり、満水状態でもこの段差に腰かけて半身浴ができる浴槽が開発されている。このような浴槽で半身浴をする場合、または足湯をする場合には、上記熱交換量、放熱量が小さく、浴槽湯温の低下が比較的小さい。
【0052】
上記の観点から、本実施形態では、追焚許可条件は入浴体積が小さいほど厳しくなるように設定されている。以下、追焚許可条件の基本態様に分けて説明する。
(1)第1実施形態と同様に、追焚許可条件として所定時間(例えば10分)間隔毎の追焚可能回数を設定している場合には、入浴体積が小さいほど追焚可能回数が少なくなるように設定する。
設定温度または追焚終了時点の浴槽湯温に応じて追焚回数を設定する場合には、体積32リットル以上で第3,4実施形態と同様に設定し、32リットル未満では下記のように設定する。
設定温度または追焚終了時点の浴槽湯温が42℃ならば1回
43℃ならば1回
44℃以上ならば0回
(2)第2実施形態と同様に、追焚許可条件として前回の追焚終了時点からの経過時間の下限を設定している場合には、入浴体積が小さいほど上記下限の時間が短くなるように設定する。例えば、体積32リットル以上の場合には下限時間を10分にし、体積32リットル未満(子供や半身浴、足湯)の場合には7分に設定する。
【0053】
演算制御部51は、上記のように入浴有りと判断した時に、水位の変化量から体積を演算する。具体的には、対象となる浴槽6の水位と貯水量との関係を予めメモリに記憶しておき、このデータと水位の変化量から、入浴者の体積(正確に述べると、湯につかっている部分の体積、すなわち入浴体積)を演算する。さらに演算制御部51は、上記演算した入浴体積に応じて追焚許可条件を満足するか否かを判断する。
【0054】
追焚制限の第6実施形態(外気温に応じた追焚許可条件の設定)
夏に入浴する場合と冬に入浴する場合とでは、入浴者の体温(核心温度は同じだが皮膚温)が大きく異なる結果、浴槽湯温の下がり具合が異なる。また、入浴者は肺呼吸により湯から受け取った熱の一部を放熱する。夏場の浴室温度は高く、冬場の浴室温度は低い場合が多い。従って肺に入る温度が低いほど(浴槽湯温との温度差が大きいほど)肺での外気との熱交換によって冷却効果が大きい。従って真皮到達蓄熱量は、肺で行われる熱交換量を勘案しなければならない。そこで、外気温(環境温度)が高いほど追焚許可条件を厳しくする。以下、追焚許可条件の基本態様に分けて説明する。
(1)第1実施形態と同様に、追焚許可条件として所定時間(例えば10分)間隔毎の追焚可能回数を設定している場合には、外気温が高いほど追焚可能回数が少なくなるように設定する。
(2)第2実施形態と同様に、追焚許可条件として前回の追焚終了時点からの経過時間の下限を設定している場合には、外気温が高いほど下限時間が短くなるように設定する。
【0055】
演算制御部51は、外気温センサ(環境温度センサ)で検出される外気温に応じて、追焚許可条件を満足するか否かを判断する。なお、外気温センサとしては、給湯装置(風呂装置)が設置してある場所に設けた凍結防止用の外気温サーミスタを用いてもよい。
【0056】
追焚制限の第7実施形態(入浴状況に応じた追焚許可条件の設定・その1)
入浴時にじっとしている場合には、体表面から湯にかけて温度勾配が生じる。すなわち、浴槽湯温より低い温度の湯が体表面に接する。これに対して入浴中に体を激しく動かすと温度勾配は生じず常に新しい湯が体表面に接する。そのため、前者に比べて後者の場合の方が真皮到達熱量が多くなる。
そこで、浴槽水位の変動が大きいほど追焚許可条件を厳しくする。以下、追焚許可条件の基本態様に分けて説明する。
(1)第1実施形態と同様に、追焚許可条件として所定時間(例えば10分)間隔毎の追焚可能回数を設定している場合には、浴槽水位の変動が大きいほど追焚可能回数が少なくなるように設定する。
(2)第2実施形態と同様に、追焚許可条件として前回の追焚終了時点からの経過時間の下限を設定している場合には、浴槽水位の変動が大きいほど下限の時間が短くなるように設定する。
【0057】
演算制御部51は、水位センサ33の検出水位を監視し、浴槽水位の変動量に応じて、追焚許可条件を満足するか否かを判断する。
【0058】
追焚制限の第8実施形態(入浴状況に応じた追焚許可条件の設定・その2)
浴槽6にジャグジー部や白濁(マイクロバルブ)を発生させるマイクロバルブ発生部(いずれも周知であるので図示せず)を設置した風呂装置の場合には、ジャグジー運転や白濁運転がある場合には、真皮到達熱量が多くなる。そこで、追焚許可条件はジャグジー運転や白濁運転がある場合には、運転無しの場合より厳しくする。以下、追焚許可条件の基本態様に分けて説明する。
(1)第1実施形態と同様に、追焚許可条件として所定時間(例えば10分)間隔毎の追焚可能回数を設定している場合には、上記運転有りの時には、運転無しの時より追焚可能回数が少なくなるように設定する。
(2)第2実施形態と同様に、追焚許可条件として前回の追焚終了時点からの経過時間の下限を設定している場合には、上記運転有りの時には運転無しの時より下限の時間が短くなるように設定する。
【0059】
演算制御部51は、浴室リモコン60からのこれらジャグジー運転や白濁運転の信号を受けて、追焚許可条件を満足するか否かを判断する。
【0060】
追焚制限の第9実施形態(入浴状況に応じた追焚許可条件の設定・その3)
さら湯に入浴すると発汗量が多いことは知られている。発汗すると、真皮に到達した熱量を放出することができる。これに対して、入浴剤を入れたり、2番目以降の入浴または前日の残り湯を用いる場合には、イオン量、炭酸等が多くなり、入浴時の発汗量が減少し、熱量の放出量が減少する。
そこで、本実施形態の追焚許可条件は、導電度が大きいほど(電気抵抗が小さいほど)厳しくなるように設定する。以下、追焚許可条件の基本態様に分けて説明する。
(1)第1実施形態と同様に、追焚許可条件として所定時間(例えば10分)間隔毎の追焚可能回数を設定している場合には、導電度が大きいほど追焚可能回数が少なくなるように設定する。
(2)第2実施形態と同様に、追焚許可条件として前回の追焚終了時点からの経過時間の下限を設定している場合には、導電度が大きいほど下限の時間が短くなるように設定する。
【0061】
演算制御部51は、追焚循環回路20に設けられた導電度センサからの導電度情報に応じて、追焚許可条件を満足するか否かを判断する。
【0062】
追焚制限の第10実施形態(追焚制限に伴う報知)
上述した全ての実施形態において、追焚スイッチ62のオンにも拘わらず追焚を実行しなかった時には、リモコン60,70の音声報知部66,67を作動させる等により、報知を行なう。この音声報知は、現在の浴槽湯温(具体的には前回の追焚終了時点の浴槽湯温)の報知、低温やけどのリスクがある旨の報知を含む。さらに報知の態様として、管理人室やナースセンター等へのコール信号送信を含む。
【0063】
本発明は上記実施形態に制約されず、さらに種々の態様が可能である。記述した多くの実施形態は、特に支障がなければ適宜組み合わせることもできる。
上記実施形態では風呂装置と給湯装置がガスバーナと熱交換器を共有しているが、これら構成をそれぞれ別個に装備してもよい。
給湯回路を備えず追焚循環回路だけを備えた風呂装置にも適用できる。
自動運転モードを実行しない風呂装置にも適用できる。
水位センサを備えていない風呂装置にも適用できる。
追焚は、貯湯槽に蓄えられた高温の湯中から熱をもらうことで行うものであっても良い。
【0064】
第6実施形態では外気温に応じて追焚許可条件を設定したが、これと同様に、浴室温度(環境温度)が高いほど厳しくなるように追焚許可条件を設定にしても良い。入浴時において、皮膚内部に到達し蓄積された熱量の肺呼吸による放出効果は、浴室温度(吸い込む空気温度)が低いほど大きく、浴室温度が高いほど小さいからである。演算制御部に浴室温度情報を送る浴室温度センサ(環境温度センサ)として、浴室暖房乾燥機に設置されているサーミスタでもよいし、浴室リモコンに付けられたサーミスタでもよい。また、浴室に持って入ったスマホから浴室温度情報を送ってもよい。
【0065】
上記実施形態は主に糖尿病患者を念頭においた制御であるが、糖尿病患者は正常者に比べて、皮膚が薄いため熱が真皮層に到達しやすく、また、血行が悪く冷えを感じやすく、真皮層に蓄積されつつある熱を血流によって他の部位に移送する機能も低い。このことは、高齢者、抹消血管障害者、閉塞性血栓血管炎(ビュルガー病、バージャー病)患者、感覚神経障害者(ギラン・バレー症候群等)にも適用される。