特許第6591821号(P6591821)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6591821
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】食品用消泡剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 29/10 20160101AFI20191007BHJP
   B01D 19/04 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
   A23L29/10
   B01D19/04 B
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-153951(P2015-153951)
(22)【出願日】2015年8月4日
(65)【公開番号】特開2016-36339(P2016-36339A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2018年2月14日
(31)【優先権主張番号】特願2014-162711(P2014-162711)
(32)【優先日】2014年8月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】阿部 剛大
(72)【発明者】
【氏名】安部 孝紀
【審査官】 小田 浩代
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−068799(JP,A)
【文献】 特開2008−079559(JP,A)
【文献】 特開2007−203214(JP,A)
【文献】 特開2010−193740(JP,A)
【文献】 特開平03−052605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00− 2/84
A23L 5/00− 5/49
A29L 29/00−29/30
CAplus/FSTA/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)脂肪酸が炭素数8〜12の飽和脂肪酸及び/又は炭素数16〜22の不飽和脂肪酸を含む、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選択された少なくとも一種と、(B)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとを前者/後者(重量比)=99.99/0.01〜20/80の割合で含有する食品用消泡剤。
【請求項2】
B)において、脂肪酸が、炭素数8〜24直鎖の飽和脂肪酸及び/又は不飽和脂肪酸を含む請求項1記載の食品用消泡剤。
【請求項3】
食品に又は食品の製造において、(A)脂肪酸が炭素数8〜12の飽和脂肪酸及び/又は炭素数16〜22の不飽和脂肪酸を含む、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選択された少なくとも一種と、(B)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとを、前者/後者(重量比)=99.99/0.01〜20/80の割合で添加する消泡方法及び/又は泡立ち抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品用消泡剤に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の製造においては、泡の発生により生産効率の低下や最終製品の品質不良をもたらす場合がある。また、製造された食品の運搬時や販売時等においても、泡の発生により容器からの溢れ出しや吹き出し等の弊害を生じる場合がある。例えば、ハム・ソーセージ類の製造では、ピックル液(塩漬剤の溶液)を用いる処理工程においてタンパク素材に起因する泡が発生すると、最終製品であるハム・ソーセージ類の品質不良につながる。また、ビート糖の製造では、原料ビートから糖分を抽出する滲出工程や抽出した糖液(ロージュース)に生石灰及び炭酸ガスを加えて不純物を取り除く清浄工程、糖蜜に生石灰を加えて糖分を回収するステフェン工程等において泡立ちによるライントラブルが発生すると、生産効率が低下する。他にも、コーヒーや紅茶等の飲料製品においては、缶やペットボトル等の密封容器への充填時やカップ式飲料自動販売機の飲料供給時に、発生した気泡が充填を阻害したり、容器から溢れ出す場合がある。さらに、流通時の振動や消費者による振盪により密封容器内で気泡が生じると、開栓時に内容液が噴き出す原因となり得る。
【0003】
このような問題に対し、従来シリコーン樹脂系消泡剤や食品用乳化剤を利用した消泡剤が用いられている。しかし、シリコーン樹脂系消泡剤は、食品に使用するには安全性に対するイメージが悪いという問題がある。また、シリコーン樹脂系消泡剤は、食品添加物としての使用量に制限があり、その制限内の使用では十分な効果を得難いという問題もある。このため、近時このような問題の少ない食品用乳化剤を利用した消泡剤が好まれる傾向にある。
【0004】
一方で、使用量の制限が緩やかであるからと言って、食品用乳化剤を大量に添加して効果を高めようとするとコスト面で問題が生じる。そこで、より少ない使用量で十分な効果を得るべく、食品用乳化剤を利用した消泡剤の消泡性能を向上させる方法がいくつか検討されてきた。
【0005】
食品用乳化剤を利用した消泡剤の消泡性能を向上させる方法としては、例えば、ポリグリセリン不飽和脂肪酸エステル12〜15重量%、グリセリン不飽和脂肪酸エステル8〜12重量%、グリセリン飽和脂肪酸エステル4〜8重量%、及び糖類65〜76重量%を含有することを特徴とする食品用消泡剤(特許文献1)、プロピレングリコールモノカプリル酸モノオレイン酸エステルを少なくとも35質量%含むプロピレングリコール脂肪酸エステルを含有する消泡剤(特許文献2)、(A)カプリル酸残基とオレイン酸残基との合計の割合が脂肪酸残基全体の50モル%以上であるグリセリン脂肪酸エステル:100質量部、及び(B)カプリル酸残基とオレイン酸残基との合計の割合が脂肪酸残基全体の60モル%以上であるプロピレングリコール脂肪酸エステル:10〜900質量部を含んでなる消泡剤組成物(特許文献3)等が提案されている。
【0006】
しかしながら、上記各方法によっても未だ消泡性能は十分とは言えず、実用上満足し得る効果を得るには相当量の添加が必要である。従って、消泡性能のより高い食品用消泡剤が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−193740号公報
【特許文献2】特開2008−79559号公報
【特許文献3】特開2007−203214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、特定の食品用乳化剤を有効成分とし、かつ消泡性能に優れた食品用消泡剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、消泡性を有する特定の成分とポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとを併用することにより、優れた消泡効果を奏することを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0010】
すなわち、本発明の食品用消泡剤は、(A)プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選択された少なくとも一種と、(B)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとを含有する。
【0011】
(A)及び(B)において、脂肪酸は、炭素数8〜12の飽和脂肪酸及び/又は炭素数16〜22の不飽和脂肪酸を含んでいてもよい。
【0012】
本発明の食品用消泡剤は、食品又は食品の製造時(製造過程)における消泡(又は泡立ちの抑制又は防止)に有用である。そのため、本発明には、食品に又は食品の製造において、前記食品用消泡剤(すなわち、(A)プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選択された少なくとも一種と、(B)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルと)を添加{詳細には、食品又は食品の製造に用いる被添加成分(例えば、食品、食品の原料、食品製造過程における中間原料等)に対して添加}する消泡方法及び/又は泡立ち抑制方法(又は防止方法)を含む。
このような方法は、例えば、ビート糖の製造、飲料の製造、ハムやソーセージの製造、乳製品(チーズ等)の製造等に適用してもよい。
尚、前記方法は、泡を発生させる成分(又は泡を発生させやすい成分)を含む被添加成分に適用すると、非常に有効である。そのため、前記方法は、泡を発生させる成分(例えば、多糖類及び/又はタンパク質若しくはタンパク質加水分解物)を含む被添加成分(食品、食品の原料等)に添加する、消泡方法及び/又は泡立ち抑制方法であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の食品用消泡剤は、優れた消泡効果を奏し、食品又は食品の製造において発生する泡の消去及び/又は泡立ちの抑制に寄与する。
また、本発明の食品用消泡剤は、少ない使用量でも十分な消泡効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<食品用消泡剤>
本発明の消泡剤は、(A)成分としてプロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選択された少なくとも一種と、(B)成分としてポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとを組み合わせた点に特徴を有する。
【0015】
[(A)成分]
本発明の食品用消泡剤の(A)成分は、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルからなる群より選ばれた少なくとも一種である。これらの中でも、プロピレングリコール脂肪酸エステルが好ましい。
以下、これらの(A)成分について、詳述する。
【0016】
(プロピレングリコール脂肪酸エステル)
本発明で用いられるプロピレングリコール脂肪酸エステルは、プロピレングリコールと脂肪酸とのエステルであり、エステル化反応、エステル交換反応等自体公知の方法で製造される。該エステルはモノエステル体であってもジエステル体であってもよいし、あるいはそれらの混合物であってもよい。ジエステル体であるとき、2つの脂肪酸を組み合わせた混酸エステルであってもよい。
【0017】
プロピレングリコール脂肪酸エステルの原料として用いられる脂肪酸は、食用可能な動植物油脂を基原とする脂肪酸であれば特に制限はないが、通常、中鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸等が挙げられる。具体的な脂肪酸としては、炭素数8〜24の直鎖の飽和脂肪酸(例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等)又は不飽和脂肪酸(例えば、パルミトオレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、γ−リノレン酸、α−リノレン酸、アラキドン酸、リシノール酸、縮合リシノール酸等)が挙げられ、これらの中でも、好ましくは炭素数8〜12の直鎖の飽和脂肪酸(例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸等)又は炭素数16〜22の不飽和脂肪酸(例えば、パルミトオレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、γ−リノレン酸、α−リノレン酸、アラキドン酸、リシノール酸、縮合リシノール酸等)であり、より好ましくはオレイン酸又はラウリン酸である。
【0018】
プロピレングリコール脂肪酸エステルとしては、例えば、プロピレングリコールオレイン酸エステル(商品名:リケマールPO−100V;理研ビタミン社製)、プロピレングリコールラウリン酸エステル(商品名:リケマールPL−100;理研ビタミン社製)等が商業的に製造・販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0019】
(グリセリン脂肪酸エステル)
本発明で用いられるグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンと脂肪酸とのエステルであり、エステル化反応、エステル交換反応等自体公知の方法で製造されたものを使用できる他、天然由来のものを使用することもできる。該エステルはモノエステル体(モノグリセリド)、ジエステル体(ジグリセリド)、トリエステル体(トリグリセリド)のいずれであってもよく、あるいはそれらの混合物であってもよい。ジエステル体又はトリエステル体であるとき、2又は3の脂肪酸を組み合わせた混酸エステルであってもよい。
【0020】
グリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、食用可能な動植物油脂を基原とする脂肪酸であれば特に制限はないが、通常、中鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸等が挙げられる。具体的な脂肪酸としては、例えば炭素数8〜24の直鎖の飽和脂肪酸(例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等)又は不飽和脂肪酸(例えば、パルミトオレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、γ−リノレン酸、α−リノレン酸、アラキドン酸、リシノール酸、縮合リシノール酸等)が挙げられ、これらの中でも、好ましくは炭素数8〜12の直鎖の飽和脂肪酸(例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸等)又は炭素数16〜22の不飽和脂肪酸(例えば、パルミトオレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、γ−リノレン酸、α−リノレン酸、アラキドン酸、リシノール酸、縮合リシノール酸等)である。
【0021】
グリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、グリセリンオレイン酸エステル(商品名:ポエムOL−200V;モノ・ジグリセリド混合物;理研ビタミン社製)等が商業的に製造・販売されており、本発明ではこれを用いることができる。
【0022】
尚、グリセリン脂肪酸エステルがトリグリセリドである場合は、上記脂肪酸の中でも炭素数8〜12の直鎖の飽和脂肪酸(例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸等)が好ましい。このような脂肪酸を構成脂肪酸とするトリグリセリドは一般に中鎖脂肪酸トリグリセリドと呼称される。中鎖脂肪酸トリグリセリドとしては、例えば、アクターM−1(商品名;構成脂肪酸:カプリル酸、カプリン酸;理研ビタミン社製)等が商業的に製造・販売されており、本発明ではこれを用いることができる。
【0023】
(ポリグリセリン脂肪酸エステル)
本発明で用いられるポリグリセリン脂肪酸エステルは、ポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化生成物であり、エステル化反応等自体公知の方法で製造される。
【0024】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの原料として用いられるポリグリセリンは、通常グリセリンに少量の酸又はアルカリを触媒として添加し、窒素又は二酸化炭素等の任意の不活性ガス雰囲気下で、例えば180℃以上の温度で加熱し、重縮合反応させた組成物を所望により中和後、分子蒸留やイオン交換樹脂処理等で精製することで得られる。また、グリシドール又はエピクロルヒドリン等を原料として得られるものであっても良い。反応終了後、必要であれば中和、脱塩又は脱色等の処理を行って良い。
【0025】
ポリグリセリンの平均重合度に特に制限はないが、例えば、平均重合度が2〜10のもの、具体的にはジグリセリン(平均重合度2)、トリグリセリン(平均重合度3)、テトラグリセリン(平均重合度4)、ヘキサグリセリン(平均重合度6)、オクタグリセリン(平均重合度8)又はデカグリセリン(平均重合度10)等が挙げられる。これらの中でも、平均重合度が2〜6のポリグリセリンが好ましい。
【0026】
ポリグリセリン脂肪酸エステルの原料として用いられる脂肪酸は、食用可能な動植物油脂を基原とする脂肪酸であれば特に制限はないが、通常、中鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸等が挙げられる。具体的な脂肪酸としては、例えば炭素数8〜24の直鎖の飽和脂肪酸(例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等)又は不飽和脂肪酸(例えば、パルミトオレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、γ−リノレン酸、α−リノレン酸、アラキドン酸、リシノール酸、縮合リシノール酸等)が挙げられ、これらの中でも、好ましくは炭素数8〜12の直鎖の飽和脂肪酸(例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸等)又は炭素数16〜22の不飽和脂肪酸(例えば、パルミトオレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、γ−リノレン酸、α−リノレン酸、アラキドン酸、リシノール酸、縮合リシノール酸等)である。尚、ポリグリセリン脂肪酸エステルは、単独脂肪酸のエステルであってもよく、混酸エステルであってもよい。
【0027】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリグリセリンカプリル酸エステル(商品名:ポエムFB−28;ポリグリセリンの平均重合度:2;理研ビタミン社製)等が商業的に製造・販売されており、本発明ではこれを用いることができる。
【0028】
また、本発明の食品用消泡剤は、前記の通り、(B)成分としてポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有する。
【0029】
[(B)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル]
本発明で用いられるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、ソルビトール又はソルビタンと脂肪酸とのエステルであるソルビタン脂肪酸エステルに、エチレンオキシドを付加重合させることにより製造される非イオン性界面活性剤である。
【0030】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの原料として用いられる脂肪酸は、食用可能な動植物油脂を基原とする脂肪酸であれば特に制限はないが、通常、中鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸等が挙げられる。具体的な脂肪酸としては、例えば炭素数8〜24の直鎖の飽和脂肪酸(例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等)又は不飽和脂肪酸(例えば、パルミトオレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、γ−リノレン酸、α−リノレン酸、アラキドン酸、リシノール酸、縮合リシノール酸等)が挙げられ、これらの中でも、好ましくは炭素数8〜12の直鎖の飽和脂肪酸(例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸等)又は炭素数16〜22の不飽和脂肪酸(例えば、パルミトオレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、γ−リノレン酸、α−リノレン酸、アラキドン酸、リシノール酸、縮合リシノール酸等)である。
脂肪酸は、単独で又は2種以上組み合わせて、ソルビトール又はソルビタンとエステルを形成していてもよい。
【0031】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンオレイン酸エステル(商品名:ウィルサーフTF−80;日油社製)、ポリオキシエチレンソルビタンステアリン酸エステル(商品名:ウィルサーフTF−60;日油社製)等が商業的に製造・販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0032】
[(A)成分と(B)成分との割合]
本発明の食品用消泡剤において、(A)成分と(B)成分との割合は、例えば、前者/後者(重量比)=99.99/0.01〜1/99の範囲から選択でき、例えば、99/1〜20/80、好ましくは99/1〜50/50、さらに好ましくは99/1〜80/20程度であってもよい。
【0033】
[他の成分]
また、本発明の消泡剤は、本発明の目的・効果を阻害しない範囲で、従来食品用消泡剤等に使用されている他の任意の成分((C)成分)を含んでもよい。例えば、(A)成分及び(B)成分以外の乳化剤(食品用乳化剤等)、シリコーン樹脂、酸化防止剤、賦形剤等を配合することができる。(A)成分及び(B)成分以外の乳化剤(他の乳化剤)としては、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸ナトリウム、ステアロイル乳酸カルシウム、レシチン等が挙げられる。ここで、グリセリン有機酸脂肪酸エステルとしては、例えば、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル等が挙げられる。また、レシチンには分別レシチン、酵素分解レシチン又は酵素処理レシチン等が含まれる。
特に、優れた消泡性能が得られる観点から、他の成分として、(A)成分及び(B)成分とグリセリン有機酸脂肪酸エステルとを好適に組み合わせてもよい。
【0034】
尚、他の成分を使用する場合、(A)成分及び(B)成分の総量100重量部に対する他の成分(例えば、グリセリン有機酸脂肪酸エステル等の他の乳化剤)の割合は、例えば、0.1〜100重量部、好ましくは1〜80重量部、さらに好ましくは5〜60重量部(例えば、10〜50重量部)程度であってもよい。
【0035】
尚、本発明の消泡剤はシリコーン樹脂を含有することを排除するものではないが、特に、食品用乳化剤を有効成分とする食品用消泡剤の提供を課題とする場合には、シリコーン樹脂を実質的に含有しないことが好ましい。「シリコーン樹脂を実質的に含有しない」とは、食品用消泡剤の消泡性能の向上に寄与しない程度の微量のシリコーン樹脂を含有又は混入していることを含むものとする。より具体的には、消泡剤(食品用消泡剤等)100質量%中、シリコーン樹脂の含有量が通常0.1質量%以下、好ましくは0.05質量%以下であることを意味する。
【0036】
[食品用消泡剤の製造方法]
本発明の食品用消泡剤は、上記(A)成分と(B)成分と(さらに必要に応じて他の成分と)を含有するものである。本発明の食品用消泡剤の製造方法は特に限定されず、(A)成分と(B)成分と(必要に応じて他の成分)とを、慣用又は公知の方法で混合(例えば、加熱下で混合)することにより製造できる。例えば、(A)成分と(B)成分と(さらに必要に応じて他の成分と)を混合し、撹拌しながら加温(例えば、50〜90℃程度の加温)下で加熱溶解した後、冷却(例えば、室温まで冷却)することにより製造することができる。尚、該食品用消泡剤の性状は配合等により異なるが、常温で液状を呈するのが好ましい。
【0037】
尚、後述のように、(A)成分と(B)成分と(必要に応じて他の成分と)を別々に被添加成分に添加する場合には、上記のように、これらの成分を混合する必要はない。
【0038】
[食品用消泡剤の用途]
本発明の食品用消泡剤は、食品の製造過程(製造から製品化(包装等)までの種々の工程)や食品(製造又は製品化された食品)における泡の発生を抑制(又は防止)するのに有効である。例えば、食品用消泡剤は、食品の製造において発生する泡の消去及び/又は泡立ちの抑制、製造された食品の運搬時や販売時等における泡立ちの抑制に使用することができる。尚、ここで言う食品とは、ヒトが摂取する食品や飲料及びそれらの製造のための食品素材のみならず、家畜用飼料及びペットフード並びにその製造のための飼料用素材や、ヒト、家畜又はペット用の医薬及びサプリメント並びにその製造のための原料をも包含する。
【0039】
前記食品又は食品の製造において泡を発生させる成分(又は泡を発生させやすい成分)としては、食品やその原料に応じて種々の成分が挙げられ、特に限定されないが、例えば、多糖類(サポニン、ペクチン等)、タンパク質若しくはタンパク質加水分解物(カゼインナトリウム加水分解物等)等が挙げられる。本発明の食品用消泡剤は、このような成分を含む被添加成分(食品、食品の原料等)に対して添加することにより、効果的に食品又は食品の製造において発生する泡を消去及び/又は泡立ちを抑制することができる。
【0040】
本発明の食品用消泡剤を使用し得る食品の製造工程の具体的な例としては、例えば、豆腐、油揚げ、凍豆腐、豆乳飲料等の製造における大豆磨砕物である「呉」を蒸煮して豆乳を得る工程、乳製品等の発酵食品、抗生物質、酵母等の微生物の生産における発酵工程又は培養工程、ハム・ソーセージ製造におけるピックル液調製工程及びピックル液処理工程、ビート糖製造における各種工程(滲出工程、清浄工程又はステフェン工程等)、容器入り飲料又は食品の製造における容器充填工程等が挙げられる。特に、(A)成分がプロピレングリコール脂肪酸エステルである場合には、ビート糖製造において好ましく使用できる。
【0041】
例えば、本発明の食品用消泡剤をビート糖の製造における清浄工程で使用する場合、具体的な使用方法としては、例えば、送液ポンプ等を用いて、生石灰の添加と同時又は生石灰の添加直後(例えば、生石灰の添加後10分以内)のいずれか一方又は両方において被処理液(ロージュース)に対して本発明の食品用消泡剤を連続的に製造ラインに供給する方法を例示できる。これにより、清浄工程における泡立ちによるライントラブル等により生産効率が低下することを防止することができる。
【0042】
また、本発明の食品用消泡剤を飲料に対して使用する場合、飲料の製造工程における任意の時点で飲料の原料に対して添加してもよく、製造された飲料に対して添加してもよいが、被添加成分(例えば、飲料又はその原料)に添加した後、これを撹拌しながら加温(例えば、50〜80℃に加温)して混合することが好ましい。このようにすることで、被添加成分に対して本発明の食品用消泡剤が均一に分散し、本発明の効果を十分に発揮することができる。これにより、缶やペットボトル等の密封容器への充填時やカップ式飲料自動販売機による飲料供給時に発生した気泡が充填を阻害することや容器から溢れ出すこと、あるいは流通時の振動や消費者による振盪により密封容器内で気泡が生じ、開栓時に内容液が噴き出すことを防止することができる。
尚、飲料としては、特に限定されないが、例えば、ジュース、果汁飲料、茶、コーヒー、コーヒー飲料、ココア、清涼飲料水、アルコール飲料、乳飲料等が挙げられる。
【0043】
本発明の食品用消泡剤を食品の製造において使用する際の添加量に特に制限はないが、例えば、被添加成分(例えば、食品若しくはその原料又はそれらの製造過程における中間原料)に対し、例えば、重量割合で、0.01〜5000ppm、好ましくは5〜1000ppm添加することができ、特に、100ppm以下[例えば、80ppm以下(例えば、0.1〜60ppm)、好ましくは50ppm以下(例えば、0.3〜45ppm)、さらに好ましくは40ppm以下(例えば、0.5〜35ppm)、特に30ppm以下(例えば、1〜20ppm)]程度の添加量とすることもできる。
【0044】
尚、(A)成分及び(B)成分(さらには他の成分)を予め混合して製剤化せず、食品の製造において各成分を別個に添加することにより、泡を消去及び/又は泡立ちを抑制する方法も本発明の一つの態様である。この場合、(A)成分及び(B)成分を添加する方法や順序、添加量等に特に制限はないが、例えば、(A)成分と(B)成分との割合が前記範囲(例えば、(A)成分/(B)成分(重量比)=99/1〜20/80程度)の比率になるように量りとり、食品の製造において任意の工程で同時に添加する方法等が挙げられる。
【0045】
以下に本発明を実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0046】
≪模擬ビート液による試験≫
[食品用消泡剤の調製]
(1)原材料
(A)成分
プロピレングリコールオレイン酸エステル(商品名:リケマールPO−100V;理研ビタミン社製)
プロピレングリコールラウリン酸エステル(商品名:リケマールPL−100;理研ビタミン社製)
グリセリンオレイン酸エステル(商品名:ポエムOL−200V;モノ・ジグリセリド混合物;理研ビタミン社製)
中鎖脂肪酸トリグリセリド(商品名:アクターM−1;理研ビタミン社製)
ポリグリセリンカプリル酸エステル(商品名:ポエムFB−28;理研ビタミン社製)
(B)成分
ポリオキシエチレンソルビタンオレイン酸エステル(商品名:ウィルサーフTF−80;日油社製)
(C)成分(他の成分)
ショ糖オレイン酸エステル(商品名:リョートーシュガーエステルO−170;三菱化学フーズ社製)
グリセリン有機酸脂肪酸エステル(商品名:ポエムG−002;使用有機酸:酢酸;理研ビタミン社製)
【0047】
(2)食品用消泡剤の配合割合
上記原材料を用いて調製した食品用消泡剤の配合割合を表に示す。
【0048】
(3)食品用消泡剤の調製方法
表1に示した配合割合に基づき、合計が100gとなる分量で原材料を200ml容量のビーカーに仕込み、ガラス棒で撹拌しながら80℃まで加温して溶解させた。得られた溶解物を室温まで冷却し、液状の食品用消泡剤を得た。尚、比較例1〜5及び10は、表1に示した原材料をそのまま食品用消泡剤として用いたため、上記の処理は行っていない。
【0049】
[消泡性能の評価試験]
上記食品用消泡剤について、下記試験方法により消泡性能の評価試験を実施した。また、対照としてシリコーン樹脂系消泡剤(商品名:KM−72FS;信越化学工業社製)を使用した試験区(比較例11)、消泡剤・乳化剤不使用の試験区(比較例12)についても同様に試験を実施した。結果を表1に示す。尚、試験は、以下のようにして行った。
【0050】
<試験方法>
サポニン(キシダ化学社製)0.4g、カゼインナトリウム加水分解物(商品名:ハイポリペプトン;日本製薬社製)2.0g及びグラニュー糖60gを500ml容量のジョッキに仕込み、ここに水道水を加えて全体で400gとした。これをガラス棒で撹拌しながら65℃まで加温し、各成分を完全に溶解させ、これを試験液(模擬ビート液)とした。
尚、サポニンは、ビートに含まれ、泡の原因となる成分である。また、カゼインナトリウム加水分解物も、発泡成分として知られている。
試験液が60℃未満まで降温したところで、該試験液300gを1000mL容量のジュースミキサー(型式:TM−836;テスコム社製)に入れ、食品用消泡剤0.003g(10ppm)を添加した。この時点での試験液の温度は55℃であった。
ジュースミキサーに蓋をして密封し、試験液を10000rpmにて30秒間撹拌した。撹拌を終了してから90秒が経過した時点で、試験液に生じた泡沫の高さ(泡沫と試験液の界面から、泡沫の最上部までの高さ)を測定した。
【0051】

【表1】
【0052】
表1の結果から明らかなように、実施例では、比較例と比較し、泡立ちの抑制効果に優れていた。また、実施例では、シリコーン樹脂系消泡剤(比較例11)と比較しても十分に優れた効果を奏した。ここで、実施例1と比較例1,5,6及び7とを対比すると、実施例1には、(A)成分のプロピレングリコールオレイン酸エステルと(B)成分のポリオキシエチレンソルビタンオレイン酸エステルの併用による相乗効果が認められる。特に、(B)成分を、消泡剤成分全体に対して3重量%添加するだけでも、泡沫の高さを著しく小さくできたことは、(A)成分と(B)成分との組み合わせが、特異的に消泡効果が得られることを示している。また、実施例2〜11についても同様に、(A)成分と(B)成分の併用による相乗効果が認められる。一方、本発明の(A)成分に含まれないショ糖オレイン酸エステルは、(B)成分と併用した場合(比較例9)であっても、単独で使用した場合(比較例10)と同程度の効果しか得ることができず、(B)成分の併用による相乗効果は認められなかった。
【0053】
≪ぶどうジュースによる試験≫
[食品用消泡剤の調製]
(1)原材料
(A)成分
プロピレングリコールオレイン酸エステル(商品名:リケマールPO−100V;理研ビタミン社製)
プロピレングリコールラウリン酸エステル(商品名:リケマールPL−100;理研ビタミン社製)
(B)成分
ポリオキシエチレンソルビタンオレイン酸エステル(商品名:ウィルサーフTF−80;日油社製)
ポリオキシエチレンソルビタンステアリン酸エステル(商品名:ウィルサーフTF−60;日油社製)
(C)成分(他の成分)
ショ糖オレイン酸エステル(商品名:リョートーシュガーエステルO−170;三菱化学フーズ社製)
【0054】
(2)食品用消泡剤の配合割合
上記原材料を用いて調製した食品用消泡剤の配合割合を表2に示す。
【0055】
(3)食品用消泡剤の調製方法
表2に示した配合割合に基づき、合計が100gとなる分量で原材料を200ml容量のビーカーに仕込み、ガラス棒で撹拌しながら80℃まで加温して溶解させた。得られた溶解物を室温まで冷却し、液状の食品用消泡剤を得た。尚、比較例13〜15は、表2に示した原材料をそのまま食品用消泡剤として用いたため、上記の処理は行っていない。
【0056】
[消泡性能の評価試験]
上記食品用消泡剤について、下記試験方法により消泡性能の評価試験を実施した。また、対照としてシリコーン樹脂系消泡剤(商品名:KM−72FS;信越化学工業社製)を使用した試験区(比較例17)、消泡剤・乳化剤不使用の試験区(比較例18)についても同様に試験を実施した。結果を表2に示す。尚、試験は、以下のようにして行った。
【0057】
<試験方法>
市販のぶどうジュース(商品名:Welch’sグレープ100;カルピス社製)を試験管(直径30mm×長さ200mm)に40g入れ、ここに食品用消泡剤0.002g(50ppm)を添加し、撹拌しながら70℃になるまで湯煎した。
尚、ぶどうジュースには、泡を発生させる原因となる成分であるペクチンが含まれている。
湯煎後、試験管をシリコーン栓で密封し、5℃に設定した恒温器(型式:DKM−400;ヤマト科学社製)で12時間保存した。保存後、試験管を恒温器から取り出し、上下に激しく50回振盪した。振盪を停止してから10秒が経過した時点で、ぶどうジュースに生じた泡沫の高さ(泡沫とぶどうジュースの界面から、泡沫の最上部までの高さ)を測定した。
【0058】
【表2】
【0059】
表2の結果から明らかなように、実施例では、比較例と比較し、泡立ちの抑制効果に優れていた。また、実施例では、シリコーン樹脂系消泡剤(比較例17)と比較しても十分に優れた効果を奏した。ここで、実施例12と比較例13及び15とを対比すると、実施例12には、(A)成分のプロピレングリコールオレイン酸エステルと(B)成分のポリオキシエチレンソルビタンオレイン酸エステルの併用による相乗効果が認められる。また、実施例13及び14についても同様に、(A)成分と(B)成分の併用による相乗効果が認められる。一方、本発明の(A)成分に含まれないショ糖オレイン酸エステルは、(B)成分と併用した場合(比較例16)であっても、単独で使用した場合(比較例15)に比べてむしろ泡立ちの抑制効果が劣っており、(B)成分の併用による相乗効果は認められなかった。
【0060】
≪コーヒーによる試験≫
[食品用消泡剤の調製]
(1)原材料
(A)成分
プロピレングリコールオレイン酸エステル(商品名:リケマールPO−100V;理研ビタミン社製)
プロピレングリコールラウリン酸エステル(商品名:リケマールPL−100;理研ビタミン社製)
グリセリンオレイン酸エステル(商品名:ポエムOL−200V;モノ・ジグリセリド混合物;理研ビタミン社製)
ポリグリセリンカプリル酸エステル(商品名:ポエムFB−28;理研ビタミン社製)
(B)成分
ポリオキシエチレンソルビタンオレイン酸エステル(商品名:ウィルサーフTF−80;日油社製)
ポリオキシエチレンソルビタンステアリン酸エステル(商品名:ウィルサーフTF−60;日油社製)
(C)成分(他の成分)
ショ糖オレイン酸エステル(商品名:リョートーシュガーエステルO−170;三菱化学フーズ社製)
【0061】
(2)食品用消泡剤の配合割合
上記原材料を用いて調製した食品用消泡剤の配合割合を表3に示す。
【0062】
(3)食品用消泡剤の調製方法
表3に示した配合割合に基づき、合計が100gとなる分量で原材料を200ml容量のビーカーに仕込み、ガラス棒で撹拌しながら80℃まで加温して溶解させた。得られた溶解物を室温まで冷却し、液状の食品用消泡剤を得た。尚、比較例19〜22は、表3に示した原材料をそのまま食品用消泡剤として用いたため、上記の処理は行っていない。
【0063】
[消泡性能の評価試験]
上記食品用消泡剤について、下記試験方法により消泡性能の評価試験を実施した。また、対照としてシリコーン樹脂系消泡剤(商品名:KM−72FS;信越化学工業社製)を使用した試験区(比較例27)、消泡剤・乳化剤不使用の試験区(比較例28)についても同様に試験を実施した。結果を表3に示す。尚、試験は、以下のようにして行った。
【0064】
<試験方法>
市販のコーヒー(商品名:アイスコーヒー ブラック無糖;ポッカサッポロフード&ビバレッジ社製)を試験管(直径30mm×長さ200mm)に40g入れ、ここに食品用消泡剤0.002g(50ppm)を添加し、撹拌しながら70℃になるまで湯煎した。
尚、コーヒーには各種の多糖類やタンパク質が含まれており、これらの成分が泡を発生させる原因になっていると考えられる。
湯煎後、試験管をシリコーン栓で密封し、5℃に設定した恒温器(型式:DKM−400;ヤマト科学社製)で12時間保存した。保存後、試験管を恒温器から取り出し、上下に激しく50回振盪した。振盪を停止してから10秒が経過した時点で、コーヒーに生じた泡沫の高さ(泡沫とコーヒーの界面から、泡沫の最上部までの高さ)を測定した。
【0065】
【表3】
【0066】
表3の結果から明らかなように、実施例では、比較例と比較し、泡立ちの抑制効果に優れていた。また、実施例では、シリコーン樹脂系消泡剤(比較例27)と比較しても十分に優れた効果を奏した。ここで、実施例17と比較例20及び22とを対比すると、実施例17には、(A)成分のグリセリンオレイン酸エステルと(B)成分のポリオキシエチレンソルビタンオレイン酸エステルの併用による相乗効果が認められる。また、実施例15〜16及び18についても同様に、(A)成分と(B)成分の併用による相乗効果が認められる。一方、(B)成分を含有せず、(A)成分のみを2種併用した場合(比較例23〜25)では、相乗効果は認められなかった。また、本発明の(A)成分に含まれないショ糖オレイン酸エステルは、(B)成分と併用した場合(比較例26)であっても、(B)成分を単独で使用した場合(比較例22)やシリコーン樹脂系消泡剤を使用した場合(比較例27)より泡立ちの抑制効果が劣っていた。