(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6591839
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】果汁を含有するアルコール炭酸飲料
(51)【国際特許分類】
C12G 3/04 20190101AFI20191007BHJP
【FI】
C12G3/04
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-185267(P2015-185267)
(22)【出願日】2015年9月18日
(65)【公開番号】特開2016-63809(P2016-63809A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2018年4月3日
(31)【優先権主張番号】特願2014-192003(P2014-192003)
(32)【優先日】2014年9月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】井谷 航
【審査官】
松本 淳
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−192473(JP,A)
【文献】
ヘンリーズスペシャル,100%カクテル[online],2005年,検索日2019.2.21,URL,https://web.archive.org/web/20051026030948/http://www.misichan.com/cocktail/d/cocktail2325.html
【文献】
香りの本,金ケ崎 忠 日本香料協会,2004年,No. 224,pp. 140-142, 175-178
【文献】
マキシムズ・ア・ロンドル,カクテルタイプ[online],2013年,検索日2019.2.21,URL,https://web.archive.org/web/20130708132702/http://www.cocktailtype.com/recipe/recipe_0493.html
【文献】
バレンシアのカクテルレシピ−人気カクテルの作り方,酒ログ[online],2014年 6月,検索日2019.2.21,URL,https://web.archive.org/web/20140628000841/http://www.sakelog.com/cocktails/details/valencia
【文献】
わずか2%!低アルコールのイタリアワインが好調,日経トレンドネット[online],2012年,検索日2019.2.21,URL,https://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20120313/1040042/
【文献】
グラスの種類,カクテルタイプ[online],2014年 8月 2日,検索日2019.2.21,URL,https://web.archive.org/web/20140802143374/http://www.cocktailtype.com/data/data_glass.html
【文献】
岩波 理化学辞典,2003年,第5版,pp. 446-447
【文献】
Journal of Photochemistry and Photobiology A: Chemistry,2003年,Vol. 158,pp. 21-26
【文献】
料理食材大事典,1998年,pp. 129
【文献】
Analytica Chimica Acta,2009年,Vol. 635,pp. 214-221
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12G 1/00−3/12
FSTA/WPIDS/CAplus(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール度数が1〜10v/v%であり、果汁、果実酒、及び果実酒を蒸留して得られる蒸留酒を含有するアルコール炭酸飲料であって、
前記アルコール炭酸飲料は、
高級アルコールを合計量で50〜200ppm又はカルボニル化合物を合計量で0.01〜300ppm含有し、ここで、前記高級アルコールは、プロパノール、1−ブタノール、ヘキサノール、及び2−フェニルエタノールからなる群から選ばれる少なくとも1つを含有し、そして前記カルボニル化合物は、アセトアルデヒド及びフルフラールからなる群から選ばれる少なくとも1つを含有する、そして
前記果汁をストレート果汁換算で5〜50w/w%含有する、
前記アルコール炭酸飲料。
【請求項2】
前記高級アルコールを合計量で50〜150ppm及び前記カルボニル化合物を合計量で0.1〜300ppm含有する、請求項1に記載のアルコール炭酸飲料。
【請求項3】
Brixが5〜20、総酸が0.05〜0.5、pHが2.5〜4.0である、請求項1又は2に記載のアルコール炭酸飲料。
【請求項4】
前記果汁の量がストレート果汁換算で5〜50w/w%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルコール炭酸飲料。
【請求項5】
前記果汁、果実酒、及び果実酒を蒸留して得られる蒸留酒が同種の果実及び/又は果汁を原料とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアルコール炭酸飲料。
【請求項6】
容器詰めされた、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアルコール炭酸飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果汁を含有するアルコール炭酸飲料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコール飲料に対する消費者のニーズは多様化しており、様々な商品が開発され、市販されている。例えば、ワイン等の果実酒を蒸留することにより得られる、概ねアルコール度数が40度以上の蒸留酒をアルコール飲料に利用する試みがなされている。しかし、蒸留酒は、その蒸留工程において各種香気成分が変性・消失するため、蒸留工程を経ない果実酒に比べて、原料果実由来のフルーティな香りが非常に弱い。この問題に対処するために、蒸留酒の製造条件を工夫すること(特許文献1)が行われている。また一方で、蒸留酒と果汁を合わせ、およそ1年以上、樽内にて熟成をさせて概ねアルコール度数が18度前後のアルコール飲料を得ることが従来から行われている。別の例として、チューハイ等と呼ばれる果汁入りアルコール炭酸飲料に関して、果汁等の風味を生かしつつ、炭酸ガスの刺激による清涼感と爽快感を出す等の種々の工夫がされた商品が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−101723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、蒸留酒の製造方法の改良に向けられたものであるが、蒸留酒とそれ以外の酒類等を組み合わせたアルコール飲料にすら向けられておらず、アルコール飲料についての示唆は存在しない。そして、従来から行われている、蒸留酒と果汁を合わせて樽熟成したアルコール飲料についても、アルコール飲料に向けられたものではなく、ましてやアルコール炭酸飲料に向けられたものでもない。更に、熟成工程を経ることによりフレッシュ感が失われ、フレッシュ感やアルコール飲料を求める消費者の要求にこたえることができていない。
【0005】
一方、チューハイ等と呼ばれる果汁入りアルコール炭酸飲料は、果汁感、清涼感、及び爽快感を有するアルコール飲料であるが、お酒感(熟成香、醗酵香気、複雑味)が弱い。お酒感を出すために果汁入りの炭酸水あるいはアルコール炭酸水に醸造酒や蒸留酒を混ぜることにより、お酒感を強くすることはできるが、果汁入りアルコール炭酸飲料の特徴である果実感が弱なってしまうため、フレッシュ感を求める消費者を満足させるには程遠いものになってしまう。即ち、アルコール炭酸飲料において、お酒感と果汁感(フレッシュ感)を両立することは、従来技術によっては困難であった。
【0006】
本発明は、お酒感(熟成香、醗酵香気、複雑味)と果汁感(フレッシュ感)を両立したアルコール炭酸飲料、及び当該アルコール炭酸飲料を得るための指標を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の発明者は、アルコール炭酸飲料に関し、様々なアルコール及び非アルコール飲料と蒸留酒との組み合わせについて広範な検討を実施した。鋭意検討の結果、果実酒を蒸留して得られる蒸留酒に果汁を添加すると、果汁感が出る一方で後味が悪くなること、並びに、果実酒が後味の悪さを改善できることを突き止めた。当該事項に基づいて、果実酒を蒸留して得られる蒸留酒、果汁、及び果実酒という特定の組み合わせのみにおいて、アルコール炭酸飲料に関し、お酒感と果汁感を両立させることに成功した。当該知見に基づいて、本発明を完成させた。本発明は、限定されないが、以下を提供する。
【0008】
(1)アルコール度数が1〜10v/v%であり、果汁、果実酒、及び果実酒を蒸留して得られる蒸留酒を含有するアルコール炭酸飲料であって、
前記アルコール炭酸飲料は、
高級アルコールを合計量で50〜200ppm又はカルボニル化合物を合計量で0.01〜300ppm含有し、ここで、前記高級アルコールは、プロパノール、1−ブタノール、ヘキサノール、及び2−フェニルエタノールからなる群から選ばれる少なくとも1つを含有し、そして前記カルボニル化合物は、アセトアルデヒド及びフルフラールからなる群から選ばれる少なくとも1つを含有する、そして
前記果汁をストレート果汁換算で5〜50w/w%含有する、
前記アルコール炭酸飲料。
【0009】
(2)前記高級アルコールを合計量で50〜150ppm及び前記カルボニル化合物を合計量で0.1〜300ppm含有する、(1)のアルコール炭酸飲料。
【0010】
(3)Brixが5〜20、総酸が0.05〜0.5、pHが2.5〜4.0である、(1)又は(2)のアルコール炭酸飲料。
【0011】
(4)前記果汁の量がストレート果汁換算で5〜50w/w%である、(1)〜(3)のいずれかのアルコール炭酸飲料。
【0012】
(5)前記果汁、果実酒、及び果実酒を蒸留して得られる蒸留酒が同種の果実及び/又は果汁を原料とする、(1)〜(4)のいずれかのアルコール炭酸飲料。
【0013】
(6)容器詰めされた、(1)〜(5)のいずれかのアルコール炭酸飲料。
【0014】
(7)果汁、果実酒、及び果実酒を蒸留して得られる蒸留酒を混合することを含む、アルコール炭酸飲料の製造方法。
【0015】
(8)前記果汁、果実酒、及び果実酒を蒸留して得られる蒸留酒が同種の果実及び/又は果汁を原料とする、(7)のアルコール炭酸飲料の製造方法。
【0016】
(9)(1)〜(6)のいずれかのアルコール炭酸飲料を製造するための、(7)又は(8)の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、果実酒を蒸留して得られる蒸留酒、果汁、及び果実酒という特定の組み合わせにより得られるアルコール炭酸飲料に関するものであるが、当該組み合わせは、先行術には見当たらない。当該組み合わせにより、従来技術によっては達成が困難であったお酒感と果汁感をアルコール炭酸飲料で両立することができる。そして、果実酒を蒸留して得られる蒸留酒と果汁の組み合わせによって、後味が悪くなるが、これを果実酒が改善するという効果が奏されることも明らかとなった。これらの事項は、先行技術として知られていないし、そのことについての示唆も全く見当たらない。本発明の効果は先行技術から予測することは困難である。
【0018】
また、上記のような知見は、アルコール炭酸飲料に関する果実感等の呈味を評価するための客観的な指標を提供するものでもある。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<アルコール炭酸飲料>
本発明は、果汁、果実酒、及び果実酒を蒸留して得られる蒸留酒を含有するアルコール炭酸飲料を提供する。果汁、果実酒、及び果実酒を蒸留して得られる蒸留酒の3つを組み合わせたアルコール炭酸飲料は、従来技術には知られておらず、かつそのような組合せに到達することは容易なことではない。
【0020】
本発明において、果汁は、果実を搾汁等することによって得られるものであればよく、1種類の果実を用いてもよく、2種類以上の果実を用いてもよい。また、柑橘類の果実から得られる果汁を、本発明の果汁から除外してもよい。限定されないが、ブドウ、リンゴ、ナシ、及びモモから果汁を得ることができ、これらを単独又は組み合わせて本発明に用いることができる。一態様として、ブドウを搾汁することによってブドウ果汁を得、本発明のアルコール炭酸飲料の原料として用いることができる。別の態様として、リンゴを搾汁することによってリンゴ果汁を得、本発明のアルコール炭酸飲料の原料として用いることができる。本発明において、果汁は、アルコール炭酸飲料にボリューム感やフレッシュ感を付与することができる。本発明のアルコール炭酸飲料における、果汁の量は、発明の効果が発揮される限り限定されないが、例えば、果汁の量は、ストレート果汁換算で5〜50w/w%、5〜35w/w%、10〜30w/w%とすることができる。
【0021】
本明細書では、アルコール飲料中の「ストレート果汁換算」での果汁含有量を計算するに当たり、アルコール飲料中のアルコール濃度に影響されないように、100mLのアルコール飲料中に配合される果汁配合量(g)を用いて下記換算式によって計算することとする。また濃縮倍率を算出する際はJAS規格に準ずるものとし、果汁に加えられた糖類、はちみつ等の糖用屈折計示度を除くものとする。
【0022】
ストレート果汁換算の果汁含有量(w/w%)=<果汁配合量(g/100mL)>×<濃縮倍率>/(100mL×比重)×100
ここでいう比重とは、アルコール飲料の比重を意味する。
【0023】
アルコール飲料中の果汁含有量の計算方法を、以下に例を挙げてさらに具体的に示す。
【0024】
まず、アルコール飲料中に含有させる果汁の濃縮倍率を求める。ここでいう「濃縮倍率」とは、果実を搾汁して得られるそのままの果汁(以下「ストレート果汁」という)を100%としたときの果汁の相対的濃縮倍率のことをいう。ストレート果汁の糖用屈折計示度あるいは酸度の値は、JAS規格(果実飲料の日本農林規格)によって、各果実に固有の基準値が定められている。従って、試料果汁の糖用屈折計示度を測定し、その果実に固有の糖用屈折計示度の基準値で割れば、果汁の濃縮倍率を求めることができる。
【0025】
本明細書において、果実酒とは、果実及び/又は果汁を原料とするアルコール飲料をいう。果実酒の原料として、限定されないが、ブドウ、リンゴ、ナシ、モモ、及びこれらの組合わせが挙げられる。また、果実酒は、果実及び/又は果汁を原料とし、アルコール醗酵を行うことにより得られるアルコール飲料であってもよい。さらに、果実酒は果実及び/又は果汁を原料とし、アルコール浸漬を行うことにより得られるアルコール飲料であってもよい(浸漬の後に蒸留して香気を含むアルコール分を回収する工程を含んでもよい)。果実酒として、限定されないが、ワイン、シードル、ペリー、浸漬酒、果汁含有アルコール飲料等が挙げられる。本発明においては、市場より入手可能な果実酒を用いてもよく、原料から製造してもよい。例えば、市場より入手可能なワインを本発明に用いてもよく、或いはブドウを搾汁することにより果汁を得、酵母を添加してアルコール醗酵を行うことにより得られるワインを本発明に用いてもよい。別の例として、市場より入手可能なシードルを本発明に用いてもよく、或いはリンゴを搾汁してリンゴ果汁を得、酵母を添加してアルコール醗酵を行うことにより得られるシードルを本発明に用いてもよい。本発明のアルコール炭酸飲料において、果実酒は、華やかな香り、味の伸び、及び味のメリハリに貢献する。ここで、味の伸びとは、トップからミドル、そしてミドルからラストの香りの繋がりを滑らかなことをいう。本発明においては、味の伸びにより、従来のアルコール飲料にはない(複雑で奥行きのある)味わいが得られる。本発明のアルコール炭酸飲料は、限定されないが、果実酒を含有アルコール量換算で0.1〜10%、0.1〜5%含有することができる。
【0026】
本明細書において、「含有アルコール量換算」とは、アルコール含有液中に含まれるアルコールの容量に基づいて計算することを意味する。例えば、アルコール度数が1度の果実酒(A)を1mlと、アルコール度数が3度の蒸留酒(B)を1mlと混合した場合に、Aに含まれるアルコール容量は、1ml×1/100=0.01mlであり、Bに含まれるアルコール容量は、1ml×3/100=0.03mlである。これらから、含有アルコール容量に換算したA/(A+B)×100は、0.01/(0.01+0.03)×100=25%となる。
【0027】
本明細書において、蒸留酒とは、穀類、果実及び/又は果汁などの原料をアルコール発酵させた醪を蒸留して得られるアルコール類のことをいい、蒸留工程を経て製造されるすべての蒸留酒を含む。そして、果実及び/又は果汁を原料として製造される蒸留酒を特に、果実酒を蒸留して得られる蒸留酒という。蒸留酒の例としては、焼酎(泡盛)、ウイスキー、ブランデー、原料用アルコール、スピリッツ(ジン、ウォッカ、ラムなど)、アクアビット、アラック、アルヒ、スピリタス、オコレハオ、カシャッサ、コルン、シュナップス、ソジュ、パイチュウ、マオタイ酒、コニャック、アルマニャック、アップルブランデー、カルバドス、グラッパ、シンガニ、ピスコ、メスカル、テキーラ、ラクなどが挙げられるがこれらに限定されない。前記の例のうち、ブランデー、アクアビット、アラック、コニャック、アルマニャック、アップルブランデー、カルバドス、グラッパ、シンガニ、ピスコ、及びラクは果実酒を蒸留して得られる蒸留酒に包含される。なお、酒税法においては、酒類は、発泡性酒類、醸造酒類、蒸留酒類及び混成酒類の4種類に分類され、蒸留酒類としては、連続式蒸留アルコール含有液(旧甲類焼酎)、単式蒸留アルコール含有液(旧乙類焼酎)、ウイスキー、ブランデー、原料用アルコール、スピリッツが含まれるが、本発明の蒸留酒は酒税法上の分類等に必ずしも制限されない。本発明においては、市場より入手可能な蒸留酒を用いてもよく、原料から製造してもよい。例えば、市場より入手可能なブランデーを本発明に用いてもよく、或いは原料からブランデーを製造し、これを本発明に用いてもよい。別の例として、市場より入手可能なアップルブラデー又はカルバドスを本発明に用いてもよく、或いは原料からアップルブランデー又はカルバドスを製造し、これを本発明に用いてもよい。本発明のアルコール炭酸飲料は、限定されないが、蒸留酒を含有アルコール量換算で0.1〜70%、5〜30%、5〜20%含有することができる。一態様として、本発明のアルコール炭酸飲料は、ブランデーを含有アルコール量換算で0.1〜70%、5〜30%、5〜20%含有することができる。別の態様として、本発明のアルコール炭酸飲料は、カルバドスを含有アルコール量換算で0.1〜70%、5〜30%、5〜20%含有することができる。
【0028】
本発明のアルコール炭酸飲料に関し、果汁、果実酒、及び蒸留酒は、同種の果実を原料とするものを選択し、組み合わせることができる。例えば、同種の果実がブドウの場合、ブドウを原料とする果汁、ブドウを原料とする果実酒、及びブドウを原料とする果実酒を蒸留して得られる蒸留酒を選択し、組み合わせることができる。同種の果実がブドウの場合の一態様として、果汁としてブドウ果汁、果実酒としてワイン、及び果実酒を蒸留して得られる蒸留酒としてブランデーを選択し、組み合わせることができる。別の例として、果実がリンゴの場合、リンゴを原料とする果汁、リンゴを原料とする果実酒、及びリンゴを原料とする果実酒を蒸留して得られる蒸留酒を選択し、組み合わせることができる。同種の果実がリンゴの場合の一態様として、果汁としてリンゴ果汁、果実酒としてシードル、及び果実酒を蒸留して得られる蒸留酒としてカルバドスを選択し、組み合わせることができる。果汁由来の糖酸と、果実酒由来の風味、及び果実酒を蒸留して得られる蒸留酒由来の風味が、同種の果実に由来するものの組み合わせにすると、発明の効果を高めることができる。
【0029】
本発明のアルコール炭酸飲料は、香り成分として、高級アルコール及び/又はカルボニル化合物を含有する。高級アルコールには、プロパノール(1−プロパノール、2−プロパノール)、1−ブタノール、ヘキサノール(1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール)、及び2−フェニルエタノールからなる群から選ばれる少なくとも1つが含まれる。さらに、前記以外の高級アルコールが含まれていても良い。
【0030】
カルボニル化合物には、アセトアルデヒド及びフルフラールからなる群から選ばれる少なくとも1つが含まれる。さらに、前記以外のカルボニル化合物が含まれていても良い。
【0031】
本発明においては、前記の高級アルコール及びカルボニル化合物が、特定の濃度範囲でアルコール炭酸飲料に含有されるものとする。これによって、熟成香や醗酵香気等のお酒感、及び華やかな香り、更に味にメリハリが本発明のアルコール炭酸飲料に付与される。例えば、アルコール炭酸飲料は、高級アルコール及び/又はカルボニル化合物を含有し、前記の高級アルコールの合計量が50〜200ppm、70〜180ppm、90〜160ppmであってもよい。別の例として、アルコール炭酸飲料は、高級アルコール及びカルボニル化合物を含有し、前記カルボニル化合物の合計量が0.01〜300ppm、0.1〜300ppm、10〜250ppm、50〜200ppmであってもよい。更に別の例として、アルコール炭酸飲料は、高級アルコール及びカルボニル化合物を含有し、前記高級アルコールの合計量及び前記カルボニル化合物の合計量が上記した濃度であってもよい。
【0032】
高級アルコール及びカルボニル化合物の測定は、当業者に知られたいずれの方法を用いても測定することができるが、例えば、ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC/MS)により測定することができる。本明細書においては、特段の記載がない限り、当該方法によって、高級アルコール及びカルボニル化合物の測定を行う。
【0033】
本明細書において、アルコールとは、アルコール度数が1〜10v/v%程度であることをいう。アルコール度数はいずれの方法を用いて測定してもよいが、本明細書において示されるアルコール度数は、振動式密度計を用いて測定された値である。より詳細には、測定対象のアルコール飲料を濾過又は超音波処理することによって炭酸ガスを抜いた試料を調製し、そして、その試料を直火蒸留し、得られた留液の15℃における密度を測定し、国税庁所定分析法(平19国税庁訓令第6号、平成19年6月22日改訂)の付表である「第2表 アルコール分と密度(15℃)及び比重(15/15℃)換算表」を用いて換算することによりアルコール度数を求める。また、1.0(v/v)%未満のアルコール度数は、国税庁所定分析法3−4(アルコール分)に記載の「B)ガスクロマトグラフ分析法」を用いることによって測定する。
【0034】
本明細書のアルコール炭酸飲料は、炭酸ガスを測定時の液温が20℃の際の飲料のスニフト後のガス圧が、0.7〜3.0kgf/cm
2、1.0〜2.5kgf/cm
2、1.2〜2.2kgf/cm
2で含有する。炭酸ガス圧の測定は、当業者に知られたいずれの方法によっても行うことができる。例えば、京都電子工業製ガスボリューム測定装置GVA−500Aを用いて測定することができる。より詳細には、試料温度を20℃とし、前記ガスボリューム測定装置において容器内空気中のガス抜き(スニフト)、振とうした後、炭酸ガス圧を測定する。本明細書においては、特段の記載がない限り、当該方法によって炭酸ガス圧を測定する。
【0035】
本発明のアルコール炭酸飲料は、Brixを5〜20、5〜15に設定することができる。飲料のBrixは、当業者に知られたいずれの方法を用いて測定してもよいが、本願においては、市販のBrix計により測定するものとする。
【0036】
本発明のアルコール炭酸飲料は、総酸を0.05〜0.5、0.1〜0.4に設定することができる。飲料の総酸は、当業者に知られたいずれの方法を用いて測定してもよいが、本願においては、次の方法により測定することができる。試料20mlをホールピペットで100mlのビーカーにとり、蒸留水を加えて総量約50mlとしpHメーターの電極を液中に挿入する。そして、液を撹拌しながら1/10N水酸化ナトリウム溶液をビュレットから滴下し、pHメーターの目盛りが7.0を示すところを終点とする。なお、滴定には自動滴定装置を用いても良い。
【0037】
本発明のアルコール炭酸飲料は、pHを2.5〜4.0、3.0〜4.0に設定することができる。本発明において、pHの測定は、市販のpHメーターを用いて行う。
【0038】
<アルコール炭酸飲料の製造方法>
本発明の別の観点では、アルコール炭酸飲料の製造方法が提供される。当該製造方法は、果汁、果実酒、及び果実酒を蒸留して得られる蒸留酒を混合することを含む。ここで、混合する順序や態様は特に限定されない。例えば、果実酒と果実酒を蒸留して得られる蒸留酒を連続して又は同時に果汁に添加してもよく、果汁と果実酒を蒸留して得られる蒸留酒を連続して又は同時に果実酒に添加してもよく、果汁と果実酒を連続して又は同時に果実酒を蒸留して得られる蒸留酒に添加してもよい。これにより得られる混合液は、貯蔵工程を経てもよいし経なくてもよい。ここで、貯蔵工程を経る場合は、最終製品のアルコール炭酸飲料のフレッシュ感が失われない程度に貯蔵期間を設定することができるが、例えば1月未満にすることができる。
【0039】
そして、糖類、香料、酸味料、pH調整剤、色素等の成分は、必要に応じてアルコール炭酸飲料の製造に用いることができる。これらの成分は、製造工程におけるいずれの段階において用いてもよいが、例えば、果汁、果実酒、及び果実酒を蒸留して得られる蒸留酒を混合する工程の前の工程、後の工程、及び/又は同じ工程において用いることができる。
【0040】
更に、本発明の製造方法は、果汁、果実酒、果実酒を蒸留して得られる蒸留酒、及びその他の必要な成分(糖類、香料、酸味料、pH調整剤、色素等)を含有する混合液に炭酸ガスを追加する工程を有してもよい。炭酸ガスの混合液への追加は、炭酸ガスを混合液に圧入することによって行うことができるし、或いは、炭酸水と混合液を合わせることによって行うこともできるが、これに限定されるものではない。
【0041】
また、本発明の製造方法は、アルコール炭酸飲料を容器に充填する工程を有してもよい。使用する容器は、商品の流通に十分に耐え得る程度の密閉性と強度を有していればよく、例えば、スチール缶やアルミ缶等の金属製の容器、瓶、ペットボトル等を用いることができる。
【0042】
なお、本発明の製造方法においては、アルコール飲料の製造において一般的に用いられる製造タンク、移送ライン、冷却装置、濾過装置、殺菌装置、容器充填装置、巻締装置等を利用することができる。
【0043】
<その他の成分>
本発明においては、本発明が効果を発揮する限りにおいて、いずれの成分を用いることができる。用いる成分は、食品添加物として認可されたものか、古くから食経験があり安全性が認知されているものが好ましい。
【実施例】
【0044】
以下により本発明をより詳細に説明する。ここでの説明は、本発明の理解をより容易にすることのみを目的とするものであって、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0045】
[試験例1]
本発明のアルコール炭酸飲料における、お酒感(熟成香、醗酵香気、複雑味)及び果汁感(フレッシュ感)と高級アルコール及びカルボニル化合物の2成分の濃度との関係を検討した。
【0046】
表1の原材料を混合し、ベース原料を作った。ベース原料は、1000mlにメスアップして中味液を得る。中味液を濾過した後、殺菌した液を冷却し、炭酸ガスを1.7kgf/cm
2になるように圧入(カーボネーション)し、容器に充填し、容器詰めアルコール炭酸飲料を製造した。また、当該飲料のアルコール度数は4.5v/v%とし、そして果汁の含量はストレート果汁換算で5〜50w/w%とした。
【0047】
【表1】
【0048】
表3の通り、2成分をそれぞれ調整して、アルコール炭酸飲料の風味の変化を、熟練した専門のパネラーが以下の基準に従って、7段階で評価(5点以上を合格とした)し、表2に従ってさらに4段階に纏め表3に示した。
【0049】
7点:お酒感と果汁感ともに、非常に良く感じる
6点:お酒感と果汁感ともに、良く感じる
5点:お酒感と果汁感ともに、感じる
4点:お酒感と果汁感ともに、少ししか感じない
3点:お酒感と果汁感ともに、あまり感じない
2点:お酒感と果汁感ともに、ほとんど感じない
1点:お酒感と果汁感ともに、感じない
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
高級アルコール類の合計含量を調整したアルコール炭酸飲料については、50〜200ppmでお酒感と果汁感が両立された。カルボニル化合物の合計含量を調整したアルコール炭酸飲料については、0.1〜300ppmでお酒感と果汁感が両立された。
【0053】
[試験例2]
試験例1と同様に、本発明のアルコール炭酸飲料における、お酒感(熟成香、醗酵香気、複雑味)及び果汁感(フレッシュ感)と高級アルコール及びカルボニル化合物の2成分の濃度との関係を検討した。
【0054】
表4の原材料を混合し、ベース原料を作った。ベース原料は、上記の原材料を混合し、1000mlにメスアップして中味液を得る。中味液を濾過した後、殺菌した液を冷却し、炭酸ガスを1.7kgf/cm
2になるように圧入(カーボネーション)し、容器に充填し、容器詰めアルコール炭酸飲料を製造した。また、当該飲料のアルコール度数は4.5v/v%とし、そして果汁の含量はストレート果汁換算で5〜50w/w%とした。
【0055】
【表4】
【0056】
表5の通り、2成分をそれぞれ調整して、アルコール炭酸飲料の風味の変化を、試験例1に示した方法に従って評価した。
【0057】
【表5】
【0058】
高級アルコール類の合計含量を調整したアルコール炭酸飲料については、50〜200ppmでお酒感と果汁感が両立された。カルボニル化合物の合計含量を調整したアルコール炭酸飲料については、0.1〜300ppmでお酒感と果汁感が両立された。