(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0013】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0015】
(実施の形態1)
《ロジカルポート機能》
本実施の形態1の中継装置は、前提として、ロジカルポートと称する機能を備える。まずは、当該ロジカルポートの概念およびそれを実現するための基本構成について説明する。
図13(a)は、本発明の実施の形態1による中継装置において、ロジカルポートに関する主要部の概略構成例を示すブロック図であり、
図13(b)は、
図13(a)におけるロジカルポートテーブルの構造例を示す概略図であり、
図13(c)は、
図13(a)におけるFDBの構造例を示す概略図である。
図14(a)は、
図13(a)の比較例となる中継装置において、その主要部の概略構成例を示すブロック図であり、
図14(b)は、
図14(a)におけるFDBの構造例を示す概略図である。
【0016】
まず、
図14(a)に示す比較例の中継装置SW’は、複数の物理ポートPP1,PP2,…と、フレーム処理部15’とを備える。フレーム処理部15’は、FDB(Forwarding DataBase)と、当該FDBの学習および検索を行うFDB処理部18とを備える。
図14(a)の例では、物理ポートPP1に接続される通信回線10aの先に端末TM1,TM2が存在し、物理ポートPP2に接続される通信回線10bの先に端末TM3が存在している。端末TM1,TM2,TM3は、それぞれ、MACアドレスが“MA1”,“MA2”,“MA3”であり、VLAN識別子VIDとして“VID1”,“VID2”,“VID3”が割り当てられるものとする。
【0017】
この場合、
図14(b)に示されるように、FDBには、“MA1”と“VID1”とに対応付けてポート識別子{PP1}が学習される。ポート識別子{PP1}は、物理ポートPP1の識別子(ID)を表し、本明細書では、同様にして、例えば{AA}は、“AA”の識別子を表すものとする。また、
図14(b)のFDBには、“MA2”と“VID2”とに対応付けてポート識別子{PP1}が学習され、“MA3”と“VID3”とに対応付けてポート識別子{PP2}が学習される。
【0018】
図13(a)〜
図13(c)に示す中継装置SWは、ロジカルポート機能によって、当該
図14(a)の中継装置SW’と等価な構成を実現するものである。
図14(a)に示す中継装置SWは、特に限定はされないがOSI参照モデルのレイヤ2(L2)の処理を行うL2スイッチ等であり、物理ポートPPh1と、フレーム処理部15とを備える。フレーム処理部15は、ロジカルポートテーブル(以降、LPテーブルと略す)21と、当該LPテーブルに基づく処理を行うテーブル処理部16と、FDBと、当該FDBの学習および検索を行うFDB処理部18とを備える。
【0019】
ここで、
図13(a)の例では、
図14(a)の場合と異なり、物理ポートPPh1に接続される通信回線10の先に
図14(a)の場合と同様の端末TM1,TM2,TM3が存在している。この場合、LPテーブル21は、ユーザ設定に基づき、
図13(b)に示されるように、予め、1個の物理ポートPPh1と、単数または複数のVLAN識別子との組み合わせを1個のロジカルポートに対応付けて保持する。具体的には、LPテーブル21は、ポート識別子{PPh1}とVLAN識別子“VID1”および“VID2”との組み合わせをロジカルポートLP1(ポート識別子{LP1})に対応付けて保持し、ポート識別子{PPh1}とVLAN識別子“VID3”との組み合わせをロジカルポートLP2(ポート識別子{LP2})に対応付けて保持する。
【0020】
ロジカルポートLP1は、
図14(a)の物理ポートPP1と等価なポートであり、ロジカルポートLP2は、
図14(a)の物理ポートPP2と等価なポートである。このように、ロジカルポートは、1個の物理ポートPPh1に複数の物理ポートを仮想的に実装するための仕組みを提供するものである。
図14(a)において、仮に、物理ポートが10個有り、各物理ポートの帯域が10Gbps等の場合、当該構成を
図13(a)の構成に置き換えると、例えば、100Gbpsの帯域を持つ物理ポートPPh1を設け、当該物理ポートに10個のロジカルポートを設ければよい。
【0021】
テーブル処理部16は、物理ポートPPh1でフレームを受信した場合に、LPテーブル21に基づいてロジカルポートを取得する。FDB処理部18は、当該フレームに含まれる送信元MACアドレスを、テーブル処理部16で取得されたロジカルポートに対応付けてFDBに学習する。具体的には、テーブル処理部16は、物理ポートPPh1で、端末TM1からの送信元MACアドレス“MA1”およびVLAN識別子“VID1”を含むフレームを受信した場合、ロジカルポートテーブル21に基づいてポート識別子{LP1}を取得する。FDB処理部18は、
図13(c)に示されるように、当該送信元MACアドレス“MA1”をポート識別子{LP1}に対応付けてFDBに学習する。
【0022】
同様に、テーブル処理部16は、物理ポートPPh1で端末TM2からのフレームを受信した場合、ポート識別子{LP1}を取得する。FDB処理部18は、当該フレームの送信元MACアドレス“MA2”をポート識別子{LP1}に対応付けてFDBに学習する。さらに、テーブル処理部16は、物理ポートPPh1で端末TM3からのフレームを受信した場合、ポート識別子{LP2}を取得する。FDB処理部18は、当該フレームの送信元MACアドレス“MA3”をポート識別子{LP2}に対応付けてFDBに学習する。
【0023】
また、FDB処理部18は、例えば、図示しない物理ポートで、宛先MACアドレス“MA1”を含むフレームを受信した場合、“MA1”を検索キーとしてFDBを検索し、宛先となるポート識別子(宛先ポート識別子と呼ぶ){LP1}を取得する。テーブル処理部16は、宛先ポート識別子がロジカルポートのポート識別子である場合、ロジカルポートテーブル21に基づいて、当該宛先ポート識別子{LP1}を、物理ポートのポート識別子(ここでは{PPh1})に置き換える。フレーム処理部15は、当該受信したフレームを、宛先ポート識別子{PPh1}に対応する物理ポートPPh1に中継する。
【0024】
なお、ここでは、FDB処理部18は、例えば、端末TM1からのフレームに応じて、MACアドレス“MA1”をポート識別子{LP1}に対応付けてFDBに学習したが、これに加えてVLAN識別子“VID1”を学習してもよい。この場合、FDB処理部18は、前述した宛先検索に際し、“MA1”および“VID1”を検索キーとしてFDBを検索する。
【0025】
このようなロジカルポート機能を用いることで、例えば、コストの低減等が実現可能になる。すなわち、
図13(a)の構成を用いることで、
図14(a)の構成で必要とされた複数の物理ポートおよび複数の通信回線(例えば光ファイバ)を、1個の物理ポートおよび1本の通信回線に置き換えることができる。
【0026】
《中継システムの構成》
図1は、本発明の実施の形態1による中継システムにおいて、主要部の構成例を示す概略図である。
図1に示す中継システムは、通信回路を介して接続される複数の中継装置を備える。
図1において、中継装置SW1〜SW3,SW’1〜SW’3は、例えば、L2スイッチ等である。また、
図1に示す中継システムは、VLAN識別子に基づく中継を行うネットワークNWを備える。ここでは、VLAN識別子として、IEEE802.1ah(PBB(Provider Backbone Bridge)規格とも呼ばれる)に基づくバックボーンVLAN識別子BVIDが用いられる。ネットワークNWは、例えば、PBB−TE(Traffic Engineering)網等であり、中継装置や通信回線等によって適宜構成される。
【0027】
ネットワークNWは、中継装置SW1〜SW3間をフルメッシュ状に接続する構成となっている。中継装置SW1〜SW3のそれぞれは、物理ポートPPh1,PPh2を備える。中継装置SW1〜SW3の物理ポートPPh1は、それぞれ、通信回線10を介してネットワークNWに接続される。また、中継装置SW1〜SW3の物理ポートPPh2は、それぞれ、通信回線10を介して中継装置SW’1〜SW’3に接続される。
【0028】
また、ここでは、中継装置SW’1〜SW’3に、それぞれ、端末TM1〜TM3が接続される。端末TM1,TM2,TM3は、それぞれ、MACアドレスが“MA1”,“MA2”,“MA3”であり、VLAN識別子VIDとして、IEEE802.1adに基づくサービスVLAN識別子“SVID1”,“SVID2”,“SVID3”が割り当てられるものとする。
【0029】
中継装置SW1〜SW3のそれぞれは、特に限定はされないが、ここでは、PB(Provider Bridge)網と、PBB(Provider Backbone Bridge)網11との間のフレーム中継を担えるエッジスイッチとなっている。PB網は、サービスVLAN識別子SVIDが用いられる網であり、PBB網11は、IEEE802.1ahに基づくバックボーンVLAN識別子BVID(およびサービスインスタンス識別子ISID)が用いられる網である。例えば、端末TM1〜TM3は、同一の会社に所属する端末である。中継装置SW1〜SW3は、同一の会社におけるそれぞれ異なる拠点に設定され、この拠点間の通信が、中継装置SW1〜SW3をエッジスイッチとするPBB網11で行われる。
【0030】
ここで、中継装置SW1〜SW3の物理ポートPPh1,PPh2には、
図13(a)等で説明したロジカルポートが設定される。中継装置SW1の物理ポートPPh1には、バックボーンVLAN識別子“BVID1”,“BVID2”にそれぞれ対応付けてロジカルポートLP1_1,LP1_2が設定される。中継装置SW1の物理ポートPPh2には、サービスVLAN識別子“SVID1”に対応付けてロジカルポートLP2_1が設定される。
【0031】
同様に、中継装置SW2の物理ポートPPh1には、“BVID1”,“BVID3”にそれぞれ対応付けてロジカルポートLP1_1,LP1_2が設定され、物理ポートPPh2には、“SVID2”に対応付けてロジカルポートLP2_1が設定される。さらに、中継装置SW3の物理ポートPPh1には、“BVID3”,“BVID2”にそれぞれ対応付けてロジカルポートLP1_1,LP1_2が設定され、物理ポートPPh2には、“SVID3”に対応付けてロジカルポートLP2_1が設定される。
【0032】
ネットワークNWは、中継装置SW1から“BVID1”を含むフレームを受信した場合には、それを中継装置SW2に中継し、“BVID2”を含むフレームを受信した場合には、それを中継装置SW3に中継する。また、ネットワークNWは、中継装置SW2から“BVID1”を含むフレームを受信した場合には、それを中継装置SW1に中継し、“BVID3”を含むフレームを受信した場合には、それを中継装置SW3に中継する。さらに、ネットワークNWは、中継装置SW3から“BVID3”を含むフレームを受信した場合には、それを中継装置SW2に中継し、“BVID2”を含むフレームを受信した場合には、それを中継装置SW1に中継する。
【0033】
このようなVLAN構成により、
図1の中継システムは、中継装置SW1〜SW3がフルメッシュ状に接続される構成となり、中継装置SW1〜SW3の物理ポートPPh1(それに設定されるロジカルポート)は、フルメッシュ型ネットワークに接続されるポートとなる。すなわち、中継装置SW1,SW2間は、双方のロジカルポートLP1_1によって接続され、中継装置SW1,SW3間は、双方のロジカルポートLP1_2によって接続される。また、中継装置SW2,SW3間は、中継装置SW2のロジカルポートLP1_2と中継装置SW3のロジカルポートLP1_1とによって接続される。
【0034】
以上のように、ロジカルポートLP1_1,LP1_2を用いることで、例えば、中継装置SW1とネットワークNWとの間を複数(例えば2個)の物理ポートおよび複数(例えば2本)の通信回線ではなく、1個の物理ポートPPh1および1本の通信回線10で接続することが可能になる。これは、中継装置SW2,SW3に関しても同様である。その結果、フルメッシュ型ネットワークを低コストで構築することが可能になる。なお、この例では、フルメッシュ型ネットワークを3個の中継装置SW1〜SW3で構成したが、更に多くの中継装置で構成する場合、当該効果はより顕著なものとなる。
【0035】
《中継装置の構成》
図2は、
図1における中継装置の主要部の概略構成例を示すブロック図である。
図3(a)は、
図2におけるロジカルポートテーブルの構造例を示す概略図であり、
図3(b)は、
図2におけるVID変換テーブルの構造例を示す概略図であり、
図3(c)は、
図2におけるFDBの構造例を示す概略図であり、
図3(d)は、
図2におけるマルチキャストテーブルの構造例を示す概略図である。
【0036】
図2には、
図1における中継装置SW1〜SW3の概略構成例が示される。
図3(a)〜
図3(d)には、
図1の中継装置SW1が備える各テーブルの構造例が示される。
図2の中継装置SWは、2個の物理ポートPPh1,PPh2と、フレーム処理部15とを備える。フレーム処理部15は、
図13(a)に示したようなLPテーブル21、テーブル処理部16、FDBおよびFDB処理部18に加えて、VID変換部17と、マルチキャスト(以降、MCと略す)処理部19と、ループ防止部20とを備える。
【0037】
LPテーブル21は、
図3(a)に示されるように、ユーザ設定等に基づき、物理ポートとVLAN識別子VIDとの組み合わせをロジカルポートに対応付けて保持する。例えば、ポート識別子{LP1_1}は、ポート識別子{PPh1}と“BVID1”に対応付けて保持され、ポート識別子{LP1_2}は、ポート識別子{PPh1}と“BVID2”に対応付けて保持される。また、ポート識別子{LP2_1}は、ポート識別子{PPh2}と“SVID1”に対応付けて保持される。テーブル処理部16は、前述したように、物理ポートでフレームを受信した場合に、LPテーブル21に基づいてロジカルポートを取得する。
【0038】
VID変換部17は、VID変換テーブル22を備える。VID変換テーブル22は、
図3(b)に示されるように、予めユーザ設定に基づき、サービスVLAN識別子SVIDを内部VLAN識別子IVIDに対応付けて保持する。また、VID変換テーブル22は、バックボーンVLAN識別子BVIDおよびサービスインスタンス識別子ISIDを内部VLAN識別子IVIDに対応付けて保持する。
【0039】
例えば、
図3(b)の例では、
図1のPB網での“SVID1”と、PBB網11での“BVID1”および“ISID1”と、“BVID2”および“ISID1”とが共に“IVID1”に対応付けられる。すなわち、この例では、同一の会社に属する端末TM1〜TM3が“IVID1”によって同一のフラッディングドメインに設定され、各拠点が“BVID1”および“BVID2”によって区別されるような設定となっている。
【0040】
VID変換部17は、当該ユーザ設定によるVID変換テーブル22に基づき、受信したフレームに含まれる所定のVLAN識別子(SVID、または、BVIDおよびISID)を内部VLAN識別子IVIDに変換する。また、VID変換部17は、送信するフレームに含まれる内部VLAN識別子IVIDを所定のVLAN識別子に変換する。
【0041】
FDB処理部18は、
図13(c)で述べたように、FDBの学習に際し、受信したフレームに含まれる送信元MACアドレスを、テーブル処理部16で取得されたロジカルポートに対応付けてFDBに学習する。さらに、ここでは、FDB処理部18は、
図3(c)に示されるように、当該送信元MACアドレスを、ロジカルポートに加えて、VID変換部17で変換された内部VLAN識別子IVIDに対応付けてFDBに保持する。一方、FDB処理部18は、FDBの宛先検索に際し、受信したフレームに含まれる宛先MACアドレスと、内部VLAN識別子IVIDとを検索キーとしてFDBを検索し、宛先ポート識別子を取得する。
【0042】
例えば、
図1の中継装置SW1のFDB処理部18は、ロジカルポートLP2_1で端末TM1からのフレームを受信した場合に、“MA1”および“IVID1”をポート識別子{LP2_1}に対応付けてFDBに学習する。また、当該FDB処理部18は、ロジカルポートLP1_1で端末TM2からのフレームを受信した場合に、“MA2”および“IVID1”をポート識別子{LP1_1}に対応付けてFDBに学習する。さらに、当該FDB処理部18は、ロジカルポートLP1_2で端末TM3からのフレームを受信した場合に、“MA3”および“IVID1”をポート識別子{LP1_2}に対応付けてFDBに学習する。
【0043】
MC処理部19は、MCテーブル23を備える。MCテーブル23は、
図3(d)に示されるように、予めユーザ設定に基づき、内部VLAN識別子IVIDと単数または複数のロジカルポートとの対応関係を保持する。
図3(d)の例では、“IVID1”と、ポート識別子{LP1_1},{LP1_2},{LP2_1}との対応関係が保持される。MC処理部19は、受信したフレームがマルチキャストフレームである場合や、または、FDBの宛先検索結果がミスヒットである場合に、当該フレームの内部VLAN識別子IVIDを用いてMCテーブル23を参照することで、宛先となる単数または複数のロジカルポートを定める。
【0044】
ループ防止部20は、例えば、ユーザ設定等に基づき、物理ポート(例えばPPh1)に設定される複数のロジカルポート(例えばLP1_1,LP1_2)間のフレーム中継を禁止する。この際に、ユーザは、当該ロジカルポート間中継を禁止するか否か(すなわちループ防止部20を有効にするか否か)を、ロジカルポートの設定対象となる物理ポート(例えば、PPh1,PPh2)毎に定めることができる。
【0045】
図4は、
図2におけるループ防止部の処理内容の一例を示すフロー図である。
図4において、ループ防止部20は、送信するフレーム(すなわちイーグレス側のフレーム)を受信した場合(ステップS101)、ユーザによってロジカルポート間中継の禁止が設定されている物理ポートが有るか否かを判定する(ステップS102)。当該物理ポートが有る場合、ループ防止部20は、受信したフレームの中継が当該物理ポートに設定されるロジカルポート間のフレーム中継であるか否かを判別する(ステップS103)。
【0046】
例えば、物理ポートPPh1でロジカルポート間中継の禁止が設定されている場合、ループ防止部20は、例えば、ロジカルポートLP1_x(xは任意の整数)で受信され、ロジカルポートLP1_y(yはxを除く任意の整数)が宛先ポートとなるようなフレームを抽出する。そして、ループ防止部20は、当該抽出したフレームを破棄する(ステップS104)。なお、ロジカルポートLP1_xで受信され、ロジカルポートLP1_xが宛先ポートとなるようなフレームは、中継装置が一般的に備える折り返し禁止機能で破棄される。また、ループ防止部20は、ステップS101〜S103の各条件を満たさない場合、特に何も行わず、処理を終了する。
【0047】
《中継システムの動作》
図5は、
図1の中継システムの概略的な動作例を示す説明図である。
図6および
図7のそれぞれは、
図5の比較例となる動作例を示す説明図である。ここでは、端末TM1が端末TM2,TM3を含む会社内の全端末に向けてマルチキャストフレームMCFn1を送信する場合を想定する。
【0048】
まず、
図6には、
図1の中継システムと異なり、ネットワークNW’内に中継装置SW1と中継装置SW3との間の直接的な通信経路が設けられない場合の動作例が示される。これに伴い、中継装置SW1〜SW3は、ツリー型ネットワーク25を構成することになる。また、
図6では、各中継装置SW1〜SW3は、
図2に示したループ防止部20を備えないか、または、ループ防止部20を備えるが、ロジカルポート間中継の禁止が設定されていない場合を想定する。
【0049】
図6において、中継装置SW1は、端末TM1からのマルチキャストフレームMCFn1を物理ポートPPh2で受信する。当該マルチキャストフレームMCFn1は、送信元MACアドレス(SA)である“MA1”と、宛先MACアドレス(DA)である所定のマルチキャストアドレス(以降、MCAと呼ぶ)と、“SVID1”とを含んでいる。中継装置SW1は、この物理ポートPPh2と“SVID1”との組合せを用いて
図3(a)のLPテーブル21を参照することで、当該フレームをロジカルポートLP2_1で受信する。
【0050】
また、中継装置SW1は、宛先MACアドレスがMCAであるため、MCテーブル23に基づく中継を行う。
図6の構成の場合、MCテーブル23は、
図3(d)の場合と異なり、“IVID1”とポート識別子{LP1_1},{LP2_1}との対応関係を保持する。これに基づき、中継装置SW1は、受信したロジカルポートLP2_1を除くロジカルポートLP1_1に当該マルチキャストフレームMCFn1を中継する。この際に、中継装置SW1は、LPテーブル21に基づき、当該フレームに、VLAN識別子として“BVID1”を付加する。
【0051】
ネットワークNW’は、“BVID1”に基づき、当該マルチキャストフレームMCFn1を中継装置SW2に中継し、中継装置SW2は、当該フレームを物理ポートPPh1で受信する。中継装置SW2は、当該物理ポートPPh1と“BVID1”との組合せを用いて自装置のLPテーブル21を参照することで、当該フレームをロジカルポートLP1_1で受信する。
【0052】
また、中継装置SW2は、宛先MACアドレスがMCAであるため、自装置のMCテーブル23に基づく中継を行う。MCテーブル23には、
図3(d)と同様の情報が保持され、これに基づき、中継装置SW2は、受信したロジカルポートLP1_1を除くロジカルポートLP1_2,LP2_1に当該マルチキャストフレームMCFn1を中継する。この際に、中継装置SW2は、自装置のLPテーブル21に基づき、ロジカルポートLP2_1に中継するフレームに対しては“SVID2”を付加し、ロジカルポートLP1_2に中継するフレームに対しては“BVID3”を付加する。
【0053】
ロジカルポートLP2_1に中継されたフレームは、端末TM2で受信される。一方、ロジカルポートLP1_2に中継されたフレームは、ネットワークNW’を介して中継装置SW3に中継される。中継装置SW3は、当該フレームを物理ポートPPh1で受信する。中継装置SW3は、当該物理ポートPPh1と“BVID3”との組合せを用いて自装置のLPテーブル21を参照することで、当該フレームをロジカルポートLP1_1で受信する。
【0054】
また、中継装置SW3は、宛先MACアドレスがMCAであるため、自装置のMCテーブル23に基づく中継を行う。MCテーブル23は、中継装置SW1の場合と同様に、“IVID1”とポート識別子{LP1_1},{LP2_1}との対応関係を保持する。これに基づき、中継装置SW3は、受信したロジカルポートLP1_1を除くロジカルポートLP2_1に当該マルチキャストフレームMCFn1を中継する。この際に、中継装置SW3は、自装置のLPテーブル21に基づき、ロジカルポートLP2_1に中継するフレームに対して“SVID3”を付加する。ロジカルポートLP2_1に中継されたフレームは、端末TM3で受信される。
【0055】
このようにツリー型ネットワーク25の場合、各中継装置SW1〜SW3は、ループ防止部20を備えないか、または、ループ防止部20を備え、ロジカルポート間中継の禁止を設定しないことで、マルチキャストフレームMCFn1を各拠点に配信することが可能になる。しかし、
図7に示すように、フルメッシュ型ネットワーク11を用いる場合、ロジカルポート間中継の禁止が設定されないと、無限ループが生じ得る。
【0056】
図7には、
図2と同じフルメッシュ型ネットワーク11において、各中継装置SW1〜SW3がロジカルポート間中継を許可する場合の動作例が示される。
図7では、
図6の場合と異なり、例えば、中継装置(第1の中継装置)SW1の物理ポートPPh1は、少なくとも中継装置(第2の中継装置)SW2と中継装置(第3の中継装置)SW3とに接続される。さらに、中継装置SW2は、中継装置SW1を介さずに中継装置SW3に接続される。
【0057】
以降、
図6との違いに着目して説明を行う。
図7の場合、中継装置SW1は、ロジカルポートLP2_1で受信したマルチキャストフレームMCFn1を、
図3(d)のMCテーブル23に基づき、ロジカルポートLP1_1に加えて、ロジカルポートLP1_2に中継する。ロジカルポートLP1_2に中継されたフレームには、
図3(a)のLPテーブル21に基づき、“BVID2”が付加される。
【0058】
ネットワークNWは、“BVID2”に基づき、当該マルチキャストフレームMCFn1を中継装置SW3に中継し、中継装置SW3は、当該フレームを物理ポートPPh1で受信する。中継装置SW3は、当該物理ポートPPh1と“BVID2”との組合せを用いて自装置のLPテーブル21を参照することで、当該フレームをロジカルポートLP1_2で受信する。
【0059】
また、中継装置SW3は、宛先MACアドレスがMCAであるため、自装置のMCテーブル23に基づく中継を行う。MCテーブル23には、
図3(d)と同様の情報が保持され、これに基づき、中継装置SW3は、受信したロジカルポートLP1_2を除くロジカルポートLP1_1,LP2_1に当該マルチキャストフレームMCFn1を中継する。この際に、中継装置SW3は、自装置のLPテーブル21に基づき、ロジカルポートLP2_1に中継するフレームに対しては“SVID3”を付加し、ロジカルポートLP1_1に中継するフレームに対しては“BVID3”を付加する。
【0060】
ロジカルポートLP2_1に中継されたフレームは、端末TM3で受信される。一方、ロジカルポートLP1_1に中継されたフレームは、ネットワークNWを介して中継装置SW2に中継される。中継装置SW2は、当該フレームを物理ポートPPh1で受信する。中継装置SW2は、当該物理ポートPPh1と“BVID3”との組合せを用いて自装置のLPテーブル21を参照することで、当該フレームをロジカルポートLP1_2で受信する。
【0061】
ここで、中継装置SW2は、宛先MACアドレスがMCAであるため、自装置のMCテーブル23に基づき、当該マルチキャストフレームMCFn1を、ロジカルポートLP1_1,LP2_1に中継する。ロジカルポートLP1_1に中継されたフレームは、中継装置SW1のロジカルポートLP1_1で受信されたのち、中継装置SW1によって、ロジカルポートLP2_1に加えて、再び、ロジカルポートLP1_2に中継される。
【0062】
また、
図6で述べたように、中継装置SW3は、中継装置SW2からのマルチキャストフレームMCFn1をロジカルポートLP1_1で受信しており、
図7の構成では、当該フレームを、ロジカルポートLP1_2,LP2_1に中継する。ロジカルポートLP1_2に中継されたフレームは、中継装置SW1のロジカルポートLP1_2で受信されたのち、中継装置SW1によって、ロジカルポートLP2_1に加えて、再び、ロジカルポートLP1_1に中継される。このような動作により、無限ループが発生し得る。
【0063】
そこで、
図5では、各中継装置SW1〜SW3は、
図2に示したループ防止部20を備え、ループ防止部20は、物理ポートPPh1に対して、ロジカルポート間中継を禁止する。この場合、
図6の場合と同様に、中継装置SW2は、中継装置SW1のロジカルポートLP1_1から送信されたマルチキャストフレームMCFn1をロジカルポートLP1_1で受信する。中継装置SW2は、自装置のMCテーブル23に基づき、宛先ポートをロジカルポートLP1_2,LP2_1に定める。中継装置SW2のループ防止部20は、ロジカルポートLP1_2に中継されるフレームに関しては、物理ポートPPh1に設定されるロジカルポート間の中継であるため、当該フレームを破棄する。
【0064】
同様に、中継装置SW3は、中継装置SW1のロジカルポートLP1_2から送信されたマルチキャストフレームMCFn1をロジカルポートLP1_2で受信する。中継装置SW3は、自装置のMCテーブル23に基づき、宛先ポートをロジカルポートLP1_1,LP2_1に定める。中継装置SW3のループ防止部20は、ロジカルポートLP1_1に中継されるフレームに関しては、物理ポートPPh1に設定されるロジカルポート間の中継であるため、当該フレームを破棄する。
【0065】
これにより、フレームのループを防止しつつ、各端末TM1〜TM3にマルチキャストフレームを配信することが可能なフルメッシュ型ネットワーク11を構築することが可能になる。なお、
図5において、仮に1個の中継装置(例えばSW2)がロジカルポート間中継を禁止した場合であっても、ループを防止することは可能である。ただし、この場合、中継装置SW2は、中継装置SW1からのフレームと、中継装置SW3からのフレームを重複して受信することになる。したがって、
図5に示すように、全ての中継装置SW1〜SW3のループ防止部20が、物理ポートPPh1に対して、ロジカルポート間中継を禁止することが望ましい。
【0066】
すなわち、フルメッシュ型ネットワーク11では、中継装置SW1〜SW3間が1ホップで中継可能となっているため、2ホップ以上の中継に相当する当該ロジカルポート間中継を禁止することで、フレームのループと重複転送を防止することが可能になる。なお、ここでは、3個の中継装置SW1〜SW3でフルメッシュ型ネットワーク11を構築する場合を例としたが、4個以上の中継装置で構築する場合も同様である。また、
図5において、中継装置SW1〜SW3の物理ポートPPh2に関しては、物理ポートPPh2に接続されるネットワークの形態等に応じて、ロジカルポート間中継を禁止するか否かを適宜定めればよい。
【0067】
以上、本実施の形態1の中継装置および中継システムを用いることで、代表的には、フルメッシュ型ネットワークを低コストで構築することが可能になる。
【0068】
(実施の形態2)
《中継装置の詳細構成》
図8は、本発明の実施の形態2による中継装置において、主要部の構成例を示すブロック図である。
図8に示す中継装置SWは、ここでは、1個の筐体内に複数のカードを搭載したシャーシ型のL2スイッチとなっている。当該中継装置SWは、単数または複数(ここでは2枚)の高帯域用のラインカードLCh1,LCh2と、単数または複数(ここでは1枚)の低帯域用のラインカードLCl1と、ファブリック経路部30とを備える。ラインカードLCh1,LCh2,LCl1のそれぞれは、装置外部との間でフレームの通信(送信および受信)を行う。ファブリック経路部30は、各ラインカード間でフレームを中継する。
【0069】
高帯域用のラインカードLCh1,LCh2は、それぞれ、物理ポートPPh1,PPh2と、ファブリック用端子FPとを備える。物理ポートPPh1,PPh2のそれぞれは、実施の形態1等で述べたようなロジカルポートの設定対象となるポートである。物理ポートPPh1,PPh2のそれぞれは、例えば、100Gbps等の通信回線10に接続される。一方、低帯域用のラインカードLCl1は、n個の物理ポートPPl1〜PPlnと、ファブリック用端子FPとを備える。物理ポートPPl1〜PPlnは、ロジカルポートの設定非対象となるポートである。物理ポートPPl1〜PPlnのそれぞれは、例えば、10Gbps等の通信回線31に接続される。
【0070】
ファブリック用端子FPは、ファブリック経路部30に接続され、ファブリック経路部30を介して他のラインカードのファブリック用端子FPに接続される。ファブリック経路部30は、例えば、スイッチング機能を備えたファブリックカードで構成される場合や、フルメッシュ状の配線を備えた配線基板(バックプレーン)で構成される場合がある。前者の場合、ファブリック用端子FPは、ファブリックカードに接続され、ファブリックカードによるスイッチングを介して他のラインカードのファブリック用端子FPに接続される。後者の場合、ファブリック用端子FPは、複数の端子で構成され、この複数の端子が、それぞれ、バックプレーン上に設けられたフルメッシュ状の配線を介して、他のラインカードの対応する端子に接続される。以降では、後者の場合を想定して説明を行う。
【0071】
図9は、
図8の中継装置において、高帯域用のラインカードの構成例を示すブロック図である。
図10(a)は、
図9におけるLCテーブルの構造例を示す概略図であり、
図10(b)は、
図9におけるポートテーブルの構造例を示す概略図であり、
図10(c)は、
図9におけるFDBの構造例を示す概略図である。
図9において、外部インタフェース部35は、物理ポートPPhでフレームを受信した際に、受信したラインカードおよび物理ポートを示す受信ポート識別子を付加し、それを中継処理部37またはプロセッサ部CPUに送信する。また、外部インタフェース部35は、中継処理部37またはプロセッサ部CPUからのフレームを、宛先ポート識別子に基づく物理ポートPPhへ送信する。
【0072】
中継処理部37は、テーブル処理部16と、VID変換部17と、FDB処理部18と、ループ防止部20を備える。テーブル処理部16は、LPテーブル21として、イングレスLPテーブル21aとイーグレスLPテーブル21bとを備える。イングレス/イーグレスLPテーブル21a,21bのそれぞれは、
図3(a)に示したような構造を備える。
【0073】
テーブル処理部16は、自ラインカードの物理ポートPPhでフレームを受信した場合、イングレスLPテーブル21aに基づいて、受信ポート識別子{PPh}およびVLAN識別子からロジカルポートのポート識別子を取得する。一方、テーブル処理部16は、当該物理ポートからフレームを送信する場合、イーグレスLPテーブル21bに基づいて、宛先ポート識別子(ロジカルポートのポート識別子となる)から物理ポートのポート識別子およびVLAN識別子を取得する。テーブル処理部16は、このようにして取得した各識別子をフレームに付加する。
【0074】
VID変換部17は、VID変換テーブル22として、イングレスVID変換テーブル22aとイーグレスVID変換テーブル22bとを備える。イングレス/イーグレスVID変換テーブル22a,22bのそれぞれは、
図3(b)に示したような構造を備える。VID変換部17は、自ラインカードの物理ポートPPhがPB網に接続される場合で、当該物理ポートでフレームを受信した場合、イングレスVID変換テーブル22aに基づいて、サービスVLAN識別子SVIDを内部VLAN識別子IVIDに変換する。一方、VID変換部17は、当該物理ポートからフレームを送信する場合、イーグレスVID変換テーブル22bに基づいて、内部VLAN識別子IVIDをサービスVLAN識別子SVIDに変換する。
【0075】
また、VID変換部17は、自ラインカードの物理ポートPPhがPBB網に接続される場合で、当該物理ポートでフレームを受信した場合、イングレスVID変換テーブル22aに基づいて、バックボーンVLAN識別子BVIDおよびサービスインスタンス識別子ISIDを内部VLAN識別子IVIDに変換する。一方、VID変換部17は、当該物理ポートからフレームを送信する場合、イーグレスVID変換テーブル22bに基づいて、内部VLAN識別子IVIDをバックボーンVLAN識別子BVIDおよびサービスインスタンス識別子ISIDに変換する。VID変換部17は、このようにして変換した各識別子をフレームに付加する。
【0076】
FDB処理部18は、自ラインカードの物理ポートPPhでフレームを受信した際に、FDBの学習と、FDBに基づく当該フレームの宛先検索を行う。具体的には、FDBの学習に際し、FDB処理部18は、
図10(c)に示されるように、受信したフレームに含まれる送信元MACアドレスと、VID変換部17で変換された内部VLAN識別子IVIDとを、テーブル処理部16で取得されたロジカルポートのポート識別子に対応付けてFDBに学習する。
【0077】
この際に、より詳細には、受信したフレームがIEEE802.1ahに基づくカプセル化フレームの場合(すなわち自ラインカードの物理ポートPPhがPBB網に接続される場合)、FDB処理部18は、送信元MACアドレスとして、送信元カスタマ用MACアドレスCMACと、送信元カプセル化用MACアドレスBMACとを学習する。一方、受信したフレームがIEEE802.1adに基づく非カプセル化フレームの場合(すなわち自ラインカードの物理ポートPPhがPB網に接続される場合)、FDB処理部18は、送信元MACアドレスとして送信元カスタマ用MACアドレスCMACを学習する。
【0078】
また、FDBに基づく宛先検索に際し、FDB処理部18は、受信したフレームに含まれる宛先MACアドレスと、VID変換部17で変換された内部VLAN識別子IVIDとを検索キーとしてFDBを検索する。この際に、より詳細には、受信したフレームがカプセル化フレームであり、かつ、宛先カプセル化用MACアドレスBMACが自装置宛てである場合、FDB処理部18は、宛先カスタマ用MACアドレスCMACおよび内部VLAN識別子IVIDを検索キーとしてFDBを検索し、宛先ポート識別子を取得する。
【0079】
また、受信したフレームがカプセル化フレームであり、かつ、宛先カプセル化用MACアドレスBMACが他装置宛てである場合、FDB処理部18は、宛先カプセル化用MACアドレスBMACおよび内部VLAN識別子IVIDを検索キーとしてFDBを検索し、宛先ポート識別子を取得する。一方、受信したフレームが非カプセル化フレームである場合、FDB処理部18は、宛先カスタマ用MACアドレスCMACおよび内部VLAN識別子IVIDを検索キーとしてFDBを検索し、宛先ポート識別子または加えて宛先カプセル化用MACアドレスBMACを取得する。
【0080】
FDB処理部18は、このような検索結果によって得られる宛先ポート識別子(または加えて宛先カプセル化用MACアドレスBMAC)を、受信したフレームに付加して内部インタフェース部36へ送信する。この際に、FDB処理部18は、検索結果がミスヒットの場合(宛先MACアドレスがMCAの場合を含む)には、受信したフレームにMCフラグを付加する。ループ防止部20は、内部インタフェース部36からフレームを受信した場合に、自ラインカードの物理ポートPPhに設定される複数のロジカルポート間のフレーム中継であるか否かを判別し、当該フレーム中継に該当する場合にはそれを禁止する。
【0081】
内部インタフェース部36は、MC処理部19と、MCテーブル23としてのLCテーブル23aおよびポートテーブル23bとを備える。内部インタフェース部36は、中継処理部37から、MCフラグが付加されていないフレームを受信した場合、当該フレームをそのままファブリック用端子FPへ送信する。一方、内部インタフェース部36は、中継処理部37から、MCフラグが付加されたフレームを受信した場合、MC処理部19を用いてマルチキャスト中継を行う。
【0082】
LCテーブル23aは、
図10(a)に示されるように、内部VLAN識別子IVIDと、単数または複数のラインカード識別子との対応関係を保持する。ポートテーブル23bは、
図10(b)に示されるように、内部VLAN識別子IVIDと、単数または複数のロジカルポート識別子/物理ポート識別子との対応関係を保持する。単数または複数のロジカルポート識別子/物理ポート識別子は、自ラインカードが備えるポートの範囲内で定められる。例えば、
図9のラインカードLChは、ロジカルポートが設定される1個の物理ポートPPhしか備えないため、
図10(b)には、単数または複数のロジカルポート識別子のみが保持される。
【0083】
MC処理部19は、MCフラグが付加されたフレームを受信した場合、LCテーブル23aに基づき単数または複数の宛先のラインカードを定め、宛先の数だけフレームを複製すると共に、当該複製されたフレームにそれぞれ宛先のラインカード識別子を付加してファブリック用端子FPへ送信する。この際に、MC処理部19は、自ラインカードを宛先のラインカードとするフレームが生じた場合には、ポートテーブル23bに基づく処理を行う。
【0084】
また、MC処理部19は、MCフラグが付加されたフレームをファブリック用端子FPで受信した場合や、前述したように自ラインカードを宛先のラインカードとするフレームが生じた場合には、ポートテーブル23bに基づき単数または複数の宛先ポートを定める。そして、MC処理部19は、宛先の数だけフレームを複製すると共に、当該複製されたフレームにそれぞれ宛先ポート識別子を付加して中継処理部37へ送信する。
【0085】
プロセッサ部CPUは、RAMに格納されたプログラムを実行することで、例えば、自ラインカードの管理や、中継処理部37と連携して複雑なプロトコルの処理等を行う。なお、外部インタフェース部35および内部インタフェース部36のそれぞれは、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等に実装される。また、中継処理部37は、例えば、内蔵RAMを含んだFPGA(Field Programmable Gate Array)等に実装され、FDBは、例えば、CAM(Content Addressable Memory)等に実装される。ただし、各部の具体的な実装形態は、勿論、これに限定されるものではなく、ハードウェアまたはソフトウェアあるいはその組合せを用いて適宜実装されればよい。
【0086】
《中継装置のフレーム中継動作》
図11は、
図8の中継装置を
図5の中継システムに適用した場合の概略動作例を示す説明図である。
図11には、
図5における中継装置SW1の動作例が示される。
図11において、まず、ラインカードLCh2は、物理ポートPPh2で、端末TM1からのフレーム(非カプセル化フレーム)MCFn1を受信する。当該フレームMCFn1には、送信元MACアドレス(SA)“MA1”、宛先MACアドレス(DA)“MCA”およびサービスVLAN識別子“SVID1”が含まれる。なお、詳細には、送信元MACアドレスおよび宛先MACアドレスは、送信元カスタマ用MACアドレス(CSA)および宛先カスタマ用MACアドレス(CDA)となる。
【0087】
外部インタフェース部35は、当該受信したフレームに受信ポート識別子{PPh2}を付加した上で中継処理部37へ送信する。中継処理部37において、テーブル処理部16は、イングレスLPテーブル21aに基づき、受信ポート識別子{PPh2}およびサービスVLAN識別子“SVID1”からロジカルポートLP2_1のポート識別子{LP2_1}を取得し、受信ポート識別子を当該ポート識別子{LP2_1}に置き換える。VID変換部17は、イングレスVID変換テーブル22aに基づき、サービスVLAN識別子“SVID1”を内部VLAN識別子“IVID1”に変換し、それを当該フレームに付加する。
【0088】
FDB処理部18は、当該フレームの送信元MACアドレス“MA1”および内部VLAN識別子“IVID1”を、受信ポート識別子{LP2_1}に対応付けてFDBに学習する。また、FDB処理部18は、当該フレームの宛先MACアドレスが“MCA”であるため、当該フレームにMCフラグを付加して内部インタフェース部36へ送信する。内部インタフェース部36において、MC処理部19は、MCフラグが付加されたフレームを受信したため、LCテーブル23aに基づき、“IVID1”に対応する宛先ラインカード識別子{LCh1}{LCh2}を取得する。MC処理部19は、複製によって生成した2個のフレームにそれぞれ宛先ラインカード識別子{LCh1}{LCh2}を付加する。
【0089】
MC処理部19は、宛先ラインカード識別子{LCh1}が付加されたフレームをファブリック経路部30へ送信する。一方、MC処理部19は、宛先ラインカード識別子{LCh2}が付加されたフレームに関しては、自ラインカード宛てであるため、ポートテーブル23bを用いて処理する。具体的には、MC処理部19は、ポートテーブル23bに基づき、“IVID1”に対応する宛先ポート識別子{LP2_1}を取得する。ここで、MC処理部19は、受信ポート識別子と宛先ポート識別子が共に{LP2_1}であるため、当該フレームを破棄する。
【0090】
ファブリック経路部30(フルメッシュ状の配線)は、ラインカード識別子{LCh1}が付加されたフレームをラインカードLCh1へ中継する。ラインカードLCh1に中継されたフレームは、ラインカードLCh1の内部インタフェース部36で受信される。当該内部インタフェース部36のMC処理部19は、MCフラグが付加されたフレームをファブリック用端子FPで受信したため、ポートテーブル23bに基づき、“IVID1”に対応する宛先ポート識別子{LP1_1}{LP1_2}を取得する。MC処理部19は、当該宛先ポート識別子が共に受信ポート識別子と異なるため、複製によって2個のフレームを生成し、当該2個のフレームにそれぞれ宛先ポート識別子{LP1_1}{LP1_2}を付加して中継処理部37へ送信する。
【0091】
中継処理部37において、ループ防止部20は、受信した2個のフレームが共に自ラインカードの物理ポートPPh1に設定されるロジカルポート間の中継に該当しないため、当該2個のフレームの中継を許可する。具体的には、ループ防止部20は、例えば、受信ポート識別子が{LP1_x}(xは任意の整数)ではないことから、ロジカルポート間の中継ではないと判断する。
【0092】
VID変換部17は、イーグレスVID変換テーブル22bに基づき、2個のフレームに含まれる内部VLAN識別子“IVID1”を、共にバックボーンVLAN識別子“BVID1”およびサービスインスタンス識別子“ISID1”に変換する。なお、中継処理部37は、より詳細には、カプセル化実行部を備えている。カプセル化実行部は、当該2個のフレームを、共に、バックボーンVLAN識別子“BVID1”およびサービスインスタンス識別子“ISID1”、ならびに送信元/宛先カプセル化用MACアドレスBMACでカプセル化することで、カプセル化フレームを生成する。送信元カプセル化用MACアドレス(BSA)は、中継装置SW1のMACアドレスであり、宛先カプセル化用MACアドレス(BDA)は、“MCA”である。
【0093】
テーブル処理部16は、宛先ポート識別子{LP1_1}が付加されたフレームを受信し、イーグレスLPテーブル21bに基づき、宛先ポート識別子{LP1_1}から、物理ポートPPh1のポート識別子{PPh1}およびバックボーンVLAN識別子“BVID1”を取得する。テーブル処理部16は、宛先ポート識別子を当該ポート識別子{PPh1}に置き換え、さらに、カプセル化フレームのバックボーンVLAN識別子を当該“BVID1”に置き換える(ただし、この場合は置き換え前後で同一となる)。
【0094】
同様に、テーブル処理部16は、宛先ポート識別子{LP1_2}が付加されたフレームを受信し、イーグレスLPテーブル21bに基づき、宛先ポート識別子{LP1_2}から、物理ポートPPh1のポート識別子{PPh1}およびバックボーンVLAN識別子“BVID2”を取得する。テーブル処理部16は、宛先ポート識別子を当該ポート識別子{PPh1}に置き換え、さらに、カプセル化フレームのバックボーンVLAN識別子を当該“BVID2”に置き換える。
【0095】
外部インタフェース部35は、フレームに付加されている不必要な情報を削除した上で、宛先ポート識別子に基づき、当該2個のフレーム(カプセル化フレーム)MCFc1,MCFc2を物理ポートPPh1から送信する。カプセル化フレームMCFc1は、送信元MACアドレス(SA)“MA1”、宛先MACアドレス(DA)“MCA”、バックボーンVLAN識別子“BVID1”、サービスインスタンス識別子“ISID1”を含む。
【0096】
詳細には、送信元MACアドレス(SA)は、送信元カスタマ用MACアドレス(CSA)となる“MA1”と、送信元カプセル化用MACアドレス(BSA)となる中継装置SW1のMACアドレスとを含む。また、宛先MACアドレス(DA)は、共に“MCA”となる宛先カスタマ用MACアドレス(CDA)および宛先カプセル化用MACアドレス(BDA)を含む。また、カプセル化フレームMCFc2は、バックボーンVLAN識別子BVIDが異なることを除いて、カプセル化フレームMCFc1と同様である。
【0097】
図12は、
図8の中継装置を
図5の中継システムに適用した場合の他の概略動作例を示す説明図である。
図12には、
図5における中継装置SW2の動作例が示される。
図12において、まず、ラインカードLCh1は、物理ポートPPh1で、
図11で述べた中継装置SW1からのフレーム(カプセル化フレーム)MCFc1を受信する。
【0098】
外部インタフェース部35は、当該受信したフレームに受信ポート識別子{PPh1}を付加した上で中継処理部37へ送信する。中継処理部37において、テーブル処理部16は、イングレスLPテーブル21aに基づき、受信ポート識別子{PPh1}およびバックボーンVLAN識別子“BVID1”からロジカルポートLP1_1のポート識別子{LP1_1}を取得し、受信ポート識別子を当該ポート識別子{LP1_1}に置き換える。VID変換部17は、イングレスVID変換テーブル22aに基づき、バックボーンVLAN識別子“BVID1”およびサービスインスタンス識別子“ISID1”を内部VLAN識別子“IVID1”に変換し、それを当該フレームに付加する。
【0099】
FDB処理部18は、当該フレームの送信元MACアドレス“MA1”および内部VLAN識別子“IVID1”を、受信ポート識別子{LP1_1}に対応付けてFDBに学習する。詳細には、FDB処理部18は、送信元MACアドレスとして、送信元カスタマ用MACアドレス(CSA)となる“MA1”と、送信元カプセル化用MACアドレス(BSA)となる中継装置SW1のMACアドレスとを学習する。
【0100】
また、FDB処理部18は、当該フレームの宛先MACアドレスが“MCA”であるため、当該フレームにMCフラグを付加して内部インタフェース部36へ送信する。内部インタフェース部36において、MC処理部19は、MCフラグが付加されたフレームを受信したため、LCテーブル23aに基づき、“IVID1”に対応する宛先ラインカード識別子{LCh1}{LCh2}を取得する。MC処理部19は、複製によって生成した2個のフレームにそれぞれ宛先ラインカード識別子{LCh1}{LCh2}を付加する。
【0101】
MC処理部19は、宛先ラインカード識別子{LCh2}が付加されたフレームをファブリック経路部30へ送信する。一方、MC処理部19は、宛先ラインカード識別子{LCh1}が付加されたフレームに関しては、自ラインカード宛てであるため、ポートテーブル23bを用いて処理する。具体的には、MC処理部19は、ポートテーブル23bに基づき、“IVID1”に対応する宛先ポート識別子{LP1_1}{LP1_2}を取得する。
【0102】
ここで、当該MC処理部19は、宛先ポート識別子{LP1_1}に関しては、受信ポート識別子と同一であるため宛先ポートから除外する。その結果、当該MC処理部19は、宛先ポート識別子{LP1_2}を付加したフレームを中継処理部37へ送信する。中継処理部37において、ループ防止部20は、受信したフレームが自ラインカードの物理ポートPPh1に設定されるロジカルポート間の中継に該当するため、当該フレームの中継を禁止する(例えばフレームを破棄する)。具体的には、ループ防止部20は、例えば、受信ポート識別子が{LP1_x}(xは任意の整数)であることから、ロジカルポート間の中継であると判断する。
【0103】
一方、ファブリック経路部30を介してラインカードLCh2に中継されたフレームは、ラインカードLCh2の内部インタフェース部36で受信される。当該内部インタフェース部36のMC処理部19は、MCフラグが付加されたフレームをファブリック用端子FPで受信したため、ポートテーブル23bに基づき、“IVID1”に対応する宛先ポート識別子{LP2_1}を取得する。MC処理部19は、当該宛先ポート識別子が受信ポート識別子と異なるため、当該フレームに宛先ポート識別子{LP2_1}を付加して中継処理部37へ送信する。
【0104】
中継処理部37において、ループ防止部20は、受信したフレームが自ラインカードの物理ポートPPh2に設定されるロジカルポート間の中継に該当しないため、当該フレームの中継を許可する。具体的には、ループ防止部20は、例えば、受信ポート識別子が{LP2_x}(xは任意の整数)ではないことから、ロジカルポート間の中継ではないと判断する。
【0105】
VID変換部17は、イーグレスVID変換テーブル22bに基づき、当該フレームに含まれる内部VLAN識別子“IVID1”を、サービスVLAN識別子“SVID2”に変換する。なお、中継処理部37は、より詳細には、デカプセル化実行部を備えている。デカプセル化実行部は、当該フレーム(カプセル化フレーム)のカプセル化部分を削除し、サービスVLAN識別子“SVID2”を含んだ非カプセル化フレームを生成する。
【0106】
テーブル処理部16は、宛先ポート識別子{LP2_1}が付加されたフレームを受信し、イーグレスLPテーブル21bに基づき、宛先ポート識別子{LP2_1}から、物理ポートPPh2のポート識別子{PPh2}およびサービスVLAN識別子“SVID2”を取得する。テーブル処理部16は、宛先ポート識別子を当該ポート識別子{PPh2}に置き換え、さらに、非カプセル化フレームのサービスVLAN識別子を当該“SVID2”に置き換える(ただし、この場合は置き換え前後で同一となる)。
【0107】
外部インタフェース部35は、フレームに付加されている不必要な情報を削除した上で、宛先ポート識別子に基づき、当該フレーム(非カプセル化フレーム)MCFn2を物理ポートPPh2から送信する。カプセル化フレームMCFn2は、送信元MACアドレス(SA)(言い換えれば、送信元カスタマ用MACアドレス(CSA))“MA1”、宛先MACアドレス(DA)(言い換えれば、宛先カスタマ用MACアドレス(CDA))“MCA”、およびサービスVLAN識別子“SVID2”を含む。
【0108】
なお、
図11および
図12において、FDBの学習に際しては、各ラインカードでFDBの保持内容を同期化するため、例えば、受信したフレームのヘッダ部分のみを含んだ学習用フレーム等を用いる。
図11の例では、ラインカードLCh2の中継処理部37は、学習用フレームを生成し、それを自ラインカードを除く全てのラインカードへ送信する。当該学習用フレームを受信した各ラインカードの中継処理部37は、当該学習用フレームに含まれる送信元情報を自ラインカードのFDBに学習する。
【0109】
また、
図8に示した低帯域用のラインカードLCl1は、
図9におけるテーブル処理部16やループ防止部20を備えずに、ロジカルポートではなく物理ポートのポート識別子に基づいて
図11等の場合と同様の処理を行うような構成になっている。例えば、当該ラインカードLCl1のFDB処理部18は、MACアドレスおよび内部VLAN識別子IVIDを物理ポートのポート識別子(例えば{PPl1})に対応付けてFDBに学習する。これに伴い、各ラインカードのFDBには、
図10(c)に示されるように、ロジカルポートのポート識別子と、物理ポートのポート識別子とが混在することになる。ただし、各ラインカードのFDB処理部18は、物理ポートのポート識別子かロジカルポートのポート識別子かを特に区別することなく取り扱うことができる。これによって処理の簡素化等が図れる。
【0110】
以上、本実施の形態2の中継装置を用いることで、実際の形態1で述べたような各種効果を、シャーシ型のL2スイッチを用いた効率的な仕組みで得ることが可能になる。例えば、ループ防止部20をイーグレス側のラインカードで機能させることで、ループを効率的に防止できる。
【0111】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、前述した実施の形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0112】
例えば、ここでは、PBB網11を用い、バックボーンVLAN識別子BVIDで経路を選択するような中継システムを例としたが、必ずしもPBB網11を用いる必要はなく、一般的なVLAN識別子を用いて経路を選択するような中継システムであってもよい。また、ここでは、中継装置として、L2スイッチを例としたが、勿論、OSI参照モデルのL2の処理に加えてレイヤ3(L3)の処理を行うL3スイッチ等であってもよい。