(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、特許文献1として提示する特開2006−33510号公報に開示されているような画像作成および切り抜き装置が知られている。
【0003】
こうした画像作成および切り抜き装置においては、記録紙などのメディアに対して印刷を行うためのインクヘッドと、当該メディアをカッティングするためのカッティングヘッドとが、マグネットなどにより構成された連結装置を介して着脱自在な構成となっている。
【0004】
この連結装置は、一方のヘッドに配設されたマグネットと、他方のヘッドに配設されたマグネットまたは板金とにより構成され、一方のヘッドと他方のヘッドとが連結するときには、一方のヘッドに配設されたマグネットを、他方のヘッドに配設された板金(あるいはマグネット)に吸着させ、一方のヘッドと他方のヘッドとを分離するときには、一方のヘッドに配設されたマグネットと、他方のヘッドに配設された板金(あるいはマグネット)との吸着状態を解除するようにする。
【0005】
そして、カッティングヘッドは、駆動モーターの駆動によりワイヤーを介して直動レール上を独立して移動可能な構成であり、インクヘッドは、連結装置を介してカッティングヘッドと連結することにより、カッティングヘッドとともに直動レール上を移動可能な構成となっている。
【0006】
従って、画像作成および切り抜き装置においては、画像作成する際にはカッティングヘッドとインクヘッドとを連結して、カッティングヘッドおよびインクヘッドを移動しながらメディアに対して印刷を行い、カッティングする際にはカッティングヘッドからインクジェットを分離してカッティングヘッドのみを移動しながらメディアに対してカッティングを行う。
【0007】
ところで、こうした画像作成および切り抜き装置に用いられる連結装置では、所定の位置にインクヘッドを固定した状態で、駆動モーターに所定量の電流を供給することにより、ワイヤーを介して所定の方向に所定量の力でカッティングヘッドを移動し、インクヘッドからカッティングヘッドを分離するようにしている。
【0008】
なお、この所定量の電流とは、マグネットの吸着力に基づいて設定された電流値であり、この所定量の電流を駆動モーターに供給すれば、ワイヤーを介してカッティングヘッドを所定の方向に所定量の力で移動することができる適当な電流値である。
【0009】
しかしながら、連結装置に用いられるマグネットには、個体差による吸着力のバラツキがあり、所定量の電流を駆動モーターに供給してもインクヘッドからカッティングヘッドを分離することができない場合があった。
【0010】
そこで、こうしたバラツキを許容するために、高出力の駆動モーターを用いるようにして、インクヘッドからカッティングヘッドを分離する際に、所定量より大きい電流を供給し、所定の方向に所定量以上の力でカッティングヘッドを移動するようにして、インクヘッドからカッティングヘッドを分離するようにしていた。
【0011】
これにより、画像作成および切り抜き装置では、高価な高出力の駆動モーターを用いなければならず、製造コストが上昇してしまっていた。
【0012】
このため、高価な高出力の駆動モーターを用いることなく、マグネットの吸着力のバラツキを許容することができる連結装置および当該連結装置を備えた画像作成および切り抜き装置の提案が望まれていた。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明による連結装置の実施の形態の一例を説明することとする。
【0023】
図1には、本発明による連結装置を備えた画像作成および切り抜き装置の概略構成説明図が示されており、また、
図2(a)には、インクヘッドとカッティングヘッドとを中心とした
図1に示す画像作成および切り抜き装置の要部を模式的に示す説明図が示されており、また、
図2(b)には、カッティングヘッドに配設された板金の説明図が示されており、また、
図2(c)には、マグネットと支持部材と板金とを示す概略構成斜視説明図が示されている。
【0024】
この
図1に示す画像作成および切り抜き装置10は、基台部材12に支持され、主走査方向に延長して配設された固定系のベース部材14を備えている。
【0025】
このベース部材の左右両端には、側方部材16Lと側方部材16Rとがそれぞれ配設されている。
【0026】
左右2つの側方部材16L、16Rを連結する中央壁18の壁面に、主走査方向に延長してガイドレール20が配設されている。
【0027】
また、ガイドレール20には、摺動自在にカッティングヘッド24が配設されている。
【0028】
中央壁18の壁面に平行して主走査方向に移動自在にワイヤー22が配設されており、このワイヤー22には、カッティングヘッド24が固定的に配設されている。
【0029】
なお、ワイヤー22は、駆動モーター44によりその動作が制御される。
【0030】
従って、カッティングヘッド24は、駆動モーター44の駆動により、ワイヤー22を介してガイドレール20上を主走査方向に移動可能な構成となっている。
【0031】
さらに、カッティングヘッド24の右方側には、ガイドレール20に摺動自在にインクヘッド28が配設されており、カッティングヘッド24とインクヘッド28とは、連結装置30を介して着脱自在な構成となっている。
【0032】
なお、カッティングヘッド24およびインクヘッド28は、ベース部材14上に位置するメディアたるシート26に対向するように配設されている。
【0033】
こうした画像作成および切り抜き装置10の全体の動作は、側方部材16R内に搭載されたマイクロコンピューター(図示せず。)によって制御されており、シート26は
図1において主走査方向と直交する副走査方向の後方側から前方側に搬送される。
【0034】
さらに、側方部材16Rには、インクヘッド28を固定する構成が配設されており、例えば、特許文献1に開示されているように、インクヘッド28のメンテナンスを行うキャッピング装置が配設されている。
【0035】
ここで、連結装置30は、マグネット32、板金34および支持部材36より構成されている。
【0036】
マグネット32は、インクヘッド28の左方側に配設され、また、支持部材36は、カッティングヘッド24の右方側に配設され、また、板金34は、支持部材36に支持されている。
【0037】
より詳細には、マグネット32は円板形状を備え、支持部材36に支持される板金34に吸着可能な位置で、インクヘッド28の左方側に配設される。
【0038】
板金34は、マグネット32に吸着可能な材料により形成されている。
【0039】
そして、板金34の上方側には、副走査方向に延長するように長孔34aが形成されるとともに、板金34の下方側には、副走査方向に延長するように長孔34bが形成されている。
【0040】
そして、長孔34a、34bは、副走査方向において一致した位置に形成され、長孔34aの副走査方向の長さと長孔34bの副走査方向の長さとが一致して形成されている。
【0041】
また、長孔34aと長孔34bとは、高さ方向において間隔g2を空けて形成されており、この間隔g2は、マグネット32の高さ方向における長さよりも大きくなるように設計されている。
【0042】
なお、本実施の形態においては、長孔34a、34bは、
図2(b)に示すように板金34においてやや後方側に形成されるようにするが、これに限られるものではなく、長孔34a、34bは、板金34においてやや前方側に形成されるようにしてもよいし、板金34の副走査方向における中央部分に形成されるようにしてもよい。
【0043】
支持部材36は、カッティングヘッド24の右方側において、インクヘッド26と対向するよう配設された支持部36−1を備えている。この支持部36−1に、インクヘッド26に配設されたマグネット32と対向するように板金34が固定される。
【0044】
この支持部36−1には、副走査方向の略中央位置の上方側および下方側に孔部36−1a、36−1bが形成されている。
【0045】
この孔部36−1aと孔部36−1bとの高さ方向の間隔g1は、板金34に形成された長孔34aと長孔34bとの間隔g2と一致している。
【0046】
そして、孔部36−1a、36−1bの内周面にはそれぞれ、板金34を支持部36−1に固定するためのネジ40、42に形成されたネジ山と螺合可能なネジ溝が形成されている。つまり、孔部36−1aは、ネジ40がネジ結合するネジ孔であり、また、孔部36−1bは、ネジ42がネジ結合するネジ孔である。
【0047】
これにより、この支持部36−1に支持される板金34は、支持部36−1における固定位置を長孔34a、34bの副走査方向の長さだけ、前方側および後方側に移動することができる。
【0048】
以上の構成において、板金34を支持部材36に固定するには、板金34の長孔34aにネジ40を挿通して、ネジ40を支持部36−1の孔部36−1aにネジ結合させるとともに、板金34の長孔34bにネジ42を挿通して、ネジ42を支持部36−1の孔部36−1bにネジ結合させる。
【0049】
そして、例えば、工場出荷時や定期あるいは不定期のメンテナンス時などの所定のタイミングで、板金34の固定位置を決定する処理がおこなわれ、この処理により、マグネット32による板金34の吸着力が適当であると判断される固定位置に板金34が固定される。
【0050】
この処理においては、カッティングヘッド24とインクヘッド28とが分離可能であるか否かの判断を行う(以下、「分離判断」と適宜に称する。)とともに、カッティングヘッド24とともにインクヘッド28を移動可能か否かの判断を行う(以下、「移動判断」と適宜に称する。)。
【0051】
なお、分離判断では、カッティングヘッド24とインクヘッド28とを連結し、インクヘッド28が固定位置(例えば、キャッピング装置によりキャッピングがなされる位置である。)で固定された状態で、カッティングヘッド24をインクヘッド28から分離するための第1の値による電流を駆動モーター44に供給して、カッティングヘッド24がインクヘッド28から分離できるか否かの判断を行う。
【0052】
また、移動判断では、カッティングヘッド24とインクヘッド28とが連結し、インクヘッド28が固定位置で固定されていない状態で、カッティングヘッド24とともにインクヘッド28を移動するための第2の値による電流を駆動モーター44に供給して、カッティングヘッド24とインクヘッド28との主走査方向の右方側から左方側への移動および左方側から右方側への移動を繰り返し行って、カッティングヘッド24がインクヘッド28から分離するか否かの判断を行う。
【0053】
そして、分離判断においてカッティングヘッド24がインクヘッド28から分離すると判断されると、次に、移動判断を行い、この移動判断においてカッティングヘッド24がインクヘッド28から分離しないと判断されると、マグネット32による板金34の吸着力が適当であると判断され、この時点で固定している板金34の位置を、マグネット32による板金34の吸着力が適当であると判断される固定位置として決定する。
【0054】
一方、移動判断においてカッティングヘッド24がインクヘッド28から分離したと判断されると、マグネット32による板金34の吸着力が小さいものと判断される。
【0055】
その後、マグネット32による板金34の吸着力を大きくするために、マグネット32と板金34とが重なる領域である接着面積が大きくなるように、支持部36−1における板金34の副走査方向における位置を調整する。
【0056】
分離判断および移動判断を行った際のマグネット32と板金34との接着面積が、例えば、
図3(b)や
図3(c)に示すような状態であるときには、マグネット32と板金34との接着面積が大きくなるように、支持部36−1において板金34を後方側にスライドして固定する(例えば、
図3(a)の状態である。)。
【0057】
具体的には、分割判断および移動判断を行った際のマグネット32と板金34との接着面積が、例えば、
図3(b)に示す状態であるときには、支持部36−1において板金34を後方側にスライドして、例えば、
図3(a)に示す位置で板金34を固定する。また、分離判断および移動判断を行った際のマグネット32と板金34との接着面積が、例えば、
図3(c)に示す状態であるときには、支持部36−1において板金34を後方側にスライドして、例えば、
図3(a)や
図3(b)に示す位置で板金34を固定する。
【0058】
その後、再度分離判断および移動判断を行って、分離判断においてカッティングヘッド24がインクヘッド28から分離し、移動判断でカッティングヘッド24がインクヘッド28から分離しないような板金34の支持部36−1における固定位置を探し、探した固定位置を、マグネット32による板金34の吸着力が適当であると判断される固定位置として決定する。
【0059】
また、分離判断においてカッティングヘッド24がインクヘッド28から分離しないと判断されると、マグネット32による板金34の吸着力が大きいものと判断される。
【0060】
その後、マグネット32による板金34の吸着力を小さくするために、マグネット32と板金34とが重なる領域である接着面積が小さくなるように、支持部36−1における板金34の副走査方向における位置を調整する。
【0061】
分離判断を行った際のマグネット32と板金34との接着面積が、例えば、
図3(a)や
図3(b)に示すような状態であるときには、マグネット32と板金34との接着面積が小さくなるように、支持部36−1において板金34を前方側にスライドして固定する(例えば、
図3(c)の状態である。)。
【0062】
具体的には、分割判断を行った際のマグネット32と板金34との接着面積が、例えば、
図3(a)に示す状態であるときには、支持部36−1において板金34を前方側にスライドして、例えば、
図3(b)や
図3(c)に示す位置で板金34を固定する。また、分離判断を行った際のマグネット32と板金34との接着面積が、例えば、
図3(b)に示す状態であるときには、支持部36−1において板金34を前方側にスライドして、例えば、
図3(c)に示す位置で板金34を固定する。
【0063】
その後、再度分離判断を行って、分離判断においてカッティングヘッド24がインクヘッドから分離すると判断されると、移動判断を行う。
【0064】
そして、分離判断においてカッティングヘッド24がインクヘッド28から分離し、移動判断でカッティングヘッド24がインクヘッド28から分離しないような板金34の支持部26−1における固定位置を探して、探した固定位置を、マグネット32による板金34の吸着力が適当であると判断される固定位置として決定する。
【0065】
以上において説明したように、本発明による連結装置を備えた画像作成および切り抜き装置10は、マグネット32に吸着される板金34の副走査方向における位置を調整することが可能な連結装置30を備えるようにした。
【0066】
これにより、マグネット32の吸着力に応じて、マグネット32と板金34との接着面積の大きさを調整することができるようになる。
【0067】
このため、本発明による連結装置30を備えた画像作成および切り抜き装置10においては、マグネットの吸着力に関わらず、所定量の電流を駆動モーター44に供給することで、カッティングヘッド24からインクヘッド28を分離することができるようになる。
【0068】
これにより、本発明による連結装置を備えた画像作成および切り抜き装置10によれば、高価な高出力の駆動モーターを用いる必要がなくなり、製造コストを抑制することができるようになる。
【0069】
また、本発明による連結装置を備えた画像作成および切り抜き装置10によれば、マグネット32の吸着力のバラツキの許容範囲が広がるため、マグネット32の吸着力の公差が緩和され、さらなる製造コストの抑制も見込める。
【0070】
なお、上記した実施の形態は、以下の(1)乃至(4)に示すように変形するようにしてもよい。
【0071】
(1)上記した実施の形態においては、板金34を副走査方向において前方側および後方側にスライド可能な構成としたが、これに限られるものではないことは勿論であり、板金34を高さ方向において上方側および下方側にスライド可能な構成とし、これにより、マグネット32と板金34との接着面積を調整するようにしてもよい。
【0072】
(2)上記した実施の形態においては、連結装置30によりカッティングヘッド24とインクヘッド28とを連結する場合について説明したが、これに限られるものではないことは勿論であり、インクヘッド28を、例えば、打刻ヘッドや箔押しヘッドなどに変更してもよいし、また、カッティングヘッド24を、例えば、打刻ヘッドや箔押しヘッドなどに変更してもよく、要するに、連結装置30は、連結および分離の制御がなされる種々の部材間を連結するための構成として用いることができる。
【0073】
(3)上記した実施の形態においては、マグネット32をインクヘッド28に配設するとともに、支持部材36および板金34をカッティングヘッド24に配設するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、マグネット32をカッティングヘッド24に配設するとともに、支持部材36および板金34をインクヘッド28に配設するようにしてもよい。
【0074】
(4)上記した実施の形態ならびに上記した(1)乃至(3)に示す変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。