(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
吸着質を吸着させることにより発熱する吸着剤を内蔵する蓄熱槽と、前記吸着剤の機能を再生するための気体を生成する蓄熱用熱交換器と、当該気体を前記蓄熱槽に供給する送気手段と、前記吸着剤を発熱させて生成した高温低湿気体と熱交換して冷却するための冷却用熱交換器と、前記高温低湿気体、又は当該高温低湿気体を冷却した後の気体を用いて、負荷に供給される熱媒と熱交換を行う冷温熱兼用熱交換器とを備える冷温熱供給装置を用いて行う温熱生成方法であって、
前記蓄熱用熱交換器が供給する前記気体によって前記吸着剤の機能を再生する工程と、
前記高温低湿気体を用いて前記冷温熱兼用熱交換器が熱交換を行い、温熱を生成する工程と、
を含む温熱生成方法。
吸着質を吸着させることにより発熱する吸着剤を内蔵する蓄熱槽と、前記吸着剤の機能を再生するための気体を前記蓄熱槽に供給する蓄熱用熱交換器と、前記吸着剤を発熱させて生成した高温低湿気体と熱交換して冷却するための冷却用熱交換器と、前記高温低湿気体、又は当該高温低湿気体を冷却した後の気体を用いて熱交換を行う冷温熱兼用熱交換器とを備える冷温熱供給装置を用いて行う冷熱生成方法であって、
前記蓄熱用熱交換器が供給する前記気体によって前記吸着剤の機能を再生する工程と、
前記冷却用熱交換器が前記高温低湿気体を冷却する工程と、
前記高温低湿気体を冷却した後の気体を用いて前記冷温熱兼用熱交換器が熱交換を行い、冷熱を生成する工程と、
を含む冷熱生成方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。以下に説明する実施形態は例示にすぎず、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0020】
<実施形態>
図1A及び
図1Bは、本実施形態に係る蓄熱槽を説明するための図である。
図1Aは、蓄熱運転(「脱着運転」とも呼ぶ)を説明するための図である。
図1Bは、放熱運転(「吸着運転」とも呼ぶ)を説明するための図である。
図1A及び
図1Bに示す蓄熱槽11は、蓄熱材が充填された容器である。本実施形態では、蓄熱材として、吸着質を吸着させることにより発熱する吸着剤を用いる。すなわち、本実施形態における蓄熱とは、吸着剤から吸着質を脱着して、吸着剤の発熱する機能を再生する処理をいう。なお、
図1A及び
図1Bでは、矢印によって気体の流れを示している。具体的には、例えば、容器の入口及び出口には分配チャンバが設けられ、吸着剤は、容器の入口側及び出口側の両端を目の細かい金網で固定される。なお、
図1では蓄熱槽11の上下方向に空気を流通させているが、実際は鉛直方向に空気を流通させるように蓄熱槽11を設置してもよいし、水平方向に空気を流通させるように蓄熱槽11を設置してもよい。
【0021】
図1Aに示すように、蓄熱槽11内の吸着剤の水分を脱着する場合、高温空気を蓄熱槽11に供給して吸着剤を乾燥させる。上述のように、本実施形態に係る吸着剤は水分の吸着時に放熱するため、吸着剤からの水分の脱着処理は吸着剤の吸着機能を再生する処理であり、本実施形態における蓄熱運転といえる。一方、
図1Bに示すように、放熱運転時には、湿潤空気を蓄熱槽11に供給する。なお、湿潤空気は、例えば外気である。外気は、吸着剤を通過して生成された乾燥空気と比較して湿潤であるため、本実施形態では、湿潤空気と呼ぶものとする。また、外気は、屋外空気のほか別室の空気であってもよく、系外空気をいうものとする。このとき、吸着剤は水分の吸着熱を発し、蓄熱槽11の出口からは相対的に高温低湿となった空気を得ることができる。吸着剤としては、シリカゲル、ゼオライト、非晶質アルミニウムケイ酸塩と低結晶性粘土からなる複合体、例えばハスクレ
イ(登録商標)、高分子収着材等のような材料を用いて、通風抵抗や熱伝達率、物質伝達率等について所望の性能を有する造粒体を生成し、利用することができる。
【0022】
<冷温水供給装置の構成>
図2〜
図4は、本実施形態に係る冷温水供給装置の構成及び動作を説明するための図である。本実施形態に係る冷温水供給装置1は、蓄熱槽11と、ダンパ121〜127と、ファン13と、蓄熱用熱交換器14と、冷却用熱交換器15と、気化冷却器16と、冷温水兼用熱交換器17とを含み、これらがダクトを介して接続されている。
【0023】
<蓄熱運転>
図2は、冷温水供給装置の蓄熱運転のフローを示す図である。ダンパ121は、冷温水供給装置1への外気の導入量を調整する。
図2の例ではダンパ121は全開になっている。ファン13は、ダンパ121を介して外気を取り込み、蓄熱用熱交換器14へ送る。なお、矢印は、取り込まれた外気の流れを表す。
【0024】
蓄熱用熱交換器14は、所定の熱源から熱媒が供給され、取り込まれた外気との間で熱交換を行うための熱交換器である。蓄熱用熱交換器14は、
図2に示すように蓄熱運転において稼働する。なお、蓄熱用熱交換器14へは、例えば、いわゆるコジェネレーションシステムの排熱や、太陽熱のような再生可能エネルギー源からの熱が供給されることが好ましい。蓄熱用熱交換器14を通過することで昇温された空気は、相対的に外気よりも高温で且つ相対的湿度が低い空気となる。
【0025】
ダンパ122〜ダンパ125は、蓄熱槽11の出入口に設けられ、開閉によって蓄熱槽11に接続される流路を切り替え、蓄熱槽11を気体が通過する方向を変更することができる。蓄熱用熱交換器14の下流側は、ダンパ122及びダンパ123を介して蓄熱槽11と接続されている。蓄熱槽11は、その内部に吸着剤を含む容器であり、空気の出入口を逆に切り替えることで蓄熱運転と放熱運転とを切り替える。ダンパ122は、蓄熱槽11を基準として、冷温水供給装置1が形成する気体の流路の上流側、且つ蓄熱運転時における蓄熱槽11の入口側に設けられている。また、ダンパ123は、冷温水供給装置1が形成する気体の流路の上流側、且つ放熱運転時における蓄熱槽11の入口側に設けられている。ダンパ124は、冷温水供給装置1が形成する気体の流路の下流側、且つ蓄熱運転時における蓄熱槽11の出口側に設けられている。また、ダンパ125は、冷温水供給装置1が形成する気体の流路の下流側、且つ放熱運転時における蓄熱槽11の出口側に設けられている。
図2に示すように、蓄熱運転時においては、ダンパ122及びダンパ124が開かれ、蓄熱用熱交換器14によって生成された高温低湿の空気によって、蓄熱槽11の吸着剤から水分が脱着される。以上のようにして、蓄熱槽11の吸着剤が再生され、放熱運転が可能となる。
【0026】
なお、蓄熱運転においては、冷却用熱交換器15、気化冷却器16及び冷温水兼用熱交換器17は稼働しない。また、開閉により冷温水供給装置1内の流路を循環させるか否か切り替えるためのダンパ126は閉じられ、冷温水供給装置1を循環した空気を循環系から排気するためのダンパ127は開かれている。
【0027】
<温水生成処理(放熱運転)>
図3は、冷温水供給装置の放熱運転のうち、温水生成時のフローを示す図である。ダンパ121は、冷温水供給装置1への外気の導入量を調整する。
図3では、ダンパ121が半開にされている。ファン13は、ダンパ121を介して外気を取り込むと共に、冷温水供給装置1内を循環する空気を半開状態のダンパ126を介して取り込み、送風する。外気と循環空気は混合され、ファン13から蓄熱用熱交換器14へ送られる。なお、温水生成処理において蓄熱用熱交換器14は稼働しない。したがって、蓄熱運転時よりも湿潤な
空気(相対湿度が高い空気)が蓄熱槽11へ送られることになる。
【0028】
また、
図3に示すように、放熱運転時においては、ダンパ123及びダンパ125が開かれ、蓄熱槽11の吸着剤に空気中の水分が吸着される。このとき、吸着剤が発熱して空気が昇温され、高温且つ低湿の空気が生成される。
【0029】
また、生成された高温低湿の空気は冷温水兼用熱交換器17へ送られ、当該冷温水兼用熱交換器17へ導入される水との間で熱交換が行われる。そして、冷温水兼用熱交換器17へ導入される水が昇温され、温水が生成される。
【0030】
なお、温水生成処理においては、冷却用熱交換器15及び気化冷却器16は稼働しない。また、
図3では、開閉により冷温水供給装置1内の流路の循環量を調整するためのダンパ126、及び冷温水供給装置1を循環した空気を排気するためのダンパ127はそれぞれ半開にされている。なお、ダンパの開度は、例えば、ダンパ127が全開の場合はダンパ126を全閉にするように、ダンパ126とダンパ127との開度の合計が100%になるように制御してもよい。また、ダンパ121とダンパ126との開度の合計も100%になるように(すなわち、ダンパ121及びダンパ127の開度が同じになるように)制御してもよい。
【0031】
<冷水生成処理(放熱運転)>
図4は、冷温水供給装置の放熱運転のうち、冷水生成時のフローを説明するための図である。ダンパ121は、冷温水供給装置1への外気の導入量を調整する。
図4でも、ダンパ121は半開にされている。ファン13は、ダンパ121を介して外気を取り込むと共に、冷温水供給装置1内を循環する空気を送風する。空気は、ファン13から蓄熱用熱交換器14へ送られる。なお、冷水生成処理においても蓄熱用熱交換器14は稼働しない。また、蓄熱槽11内の空気の流れは前述の通りである。
【0032】
また、
図4に示すように、放熱運転時においては、ダンパ123及びダンパ125が開かれ、蓄熱槽11の吸着剤に空気中の水分が吸着される。このとき、吸着剤が発熱して高温且つ低湿の空気が生成され、冷却用熱交換器15に送られる。
【0033】
また、冷水生成処理においては、冷却用熱交換器15には所定の冷却水が供給される。冷却水は、例えば、冷却塔から供給される32℃程度の水を用いる。そして、冷却用熱交換器15に送られた高温低湿の空気と冷却水との間で熱交換が行われ、例えば35℃程度までの、あら熱が除去された空気が生成される。
【0034】
次に、あら熱が除去された空気は気化冷却器16へ導入される。気化冷却器16は、例えば空気の流路に直接水を噴霧し、導入された空気から気化熱を奪って低温の空気を生成するエアワッシャである。なお、気化冷却器16は、例えばあら熱が除去された空気が流通するコイルに水を散水または噴霧し、間接的に気化熱を奪うような形式の装置であってもよい。
【0035】
また、気化冷却器16によって生成された低温の空気は、冷温水兼用熱交換器17へ送られ、当該冷温水兼用熱交換器17へ別途導入される水との間で熱交換が行われる。そして、冷温水兼用熱交換器17へ導入される水が冷却され、冷水が生成される。本実施形態では、例えば20℃弱程度の冷水が生成される。また、温水生成処理及び冷水生成処理において説明したように、単一の冷温水兼用熱交換器17が、負荷へ供給される熱媒の加熱機能及び冷却機能を兼ねている。
【0036】
なお、
図4では冷水生成処理においても、開閉により冷温水供給装置1内の流路の循環
量を調整するためのダンパ126、及び冷温水供給装置1を循環した空気を排気するためのダンパ127は、それぞれ半開にされている。
【0037】
<効果>
以上のように、本実施形態に係る冷温水供給装置1は、温水の生成及び冷水の生成のいずれにも蓄熱を利用できる。したがって、通年で使用できる稼働率の高い蓄熱システムを実現でき、蓄熱システムの費用対効果は向上する。
【0038】
<実験結果>
図5は、蓄熱運転及び放熱運転における蓄熱槽内部の温度等を測定する実験装置を示す図である。
図5の実験装置は、給気部と、調温/湿部と、蓄熱槽部とを備える。給気部は、ファンを有し、空気を送風する。調温/湿部は、除湿器と、流量制御器Fと、加湿器と、加熱ヒーターと、温度検出器Tと、湿度検出器Hとを有し、目標とする温度及び湿度の空気を生成することができる。蓄熱槽部は、吸着剤が充填された蓄熱槽と、蓄熱槽の入口付近の温度を測定する温度検出器Tと、蓄熱槽の入口から出口へ向かって吸着剤の5か所に設けられた温度検出器Tと、蓄熱槽の出口付近の温度を測定する温度検出器Tと、実験装置の出口付近に設けられた温度検出器Tと、湿度検出器Hと、流量制御器Fとを有する。なお、蓄熱槽の容器内の形状は117×117×1000(H)[mm]であり、充填された吸着剤の容積は13.69Lであった。また、蓄熱運転及び放熱運転において、蓄熱槽の出入口付近の温度及び湿度ととともに、蓄熱槽の高さ方向が異なる5点における吸着剤の温度を測定した。なお、吸着剤は、ゼオライト(ゼオライト13X)の造粒物を用いた。
【0039】
図6Aは、蓄熱運転における蓄熱槽出入口と蓄熱槽内の温度の経時的変化を示すグラフである。縦軸は温度、横軸は運転時間を表す。
図6Bは、蓄熱運転における蓄熱槽出入口の湿度の経時的変化を示すグラフである。縦軸は湿度(相対湿度と絶対湿度)又は脱着速度、横軸は運転時間を表す。蓄熱運転では、調温/湿部から蓄熱槽へ、約130℃の空気を供給した。実験装置の熱容量の影響により、
図6Aのように蓄熱槽内入口温度は常温から上昇し、約1時間後に120℃に達した。蓄熱槽内の温度は入口に近い側から順に上昇した。そして、蓄熱槽内出口温度は、約1.5時間後に上昇を開始し、約3.0時間後に120℃に達した。約3.0時間後の時点においては、
図6Bに示すように蓄熱槽内出口相対湿度はほぼ0%RHであった。すなわち、蓄熱槽内の吸着剤は乾燥状態となり、蓄熱運転は完了した。
【0040】
図7Aは、放熱運転における蓄熱槽出入口と蓄熱槽内の温度の経時的変化を示すグラフである。縦軸は温度、横軸は運転時間を表す。
図7Bは、放熱運転における蓄熱槽出入口の湿度を示すグラフである。縦軸は湿度(相対湿度と絶対湿度)又は吸着速度、横軸は運転時間を表す。放熱運転では、蓄熱槽に約30℃且つ約50%RHの常温空気を供給した。すると、
図7Aに示すように、まず蓄熱槽内の入口に近い側の吸着剤が水分を吸着して温度が上昇した。そして、入口に近い側から順に発熱し、蓄熱槽内出口温度は約0.3時間後に急上昇し、70℃以上に達した。その後、約2.0時間後以降は蓄熱槽内出口温度は低下して、約3.0時間後には蓄熱槽内出口温度は蓄熱槽内入口温度と同等の常温となり、放熱運転は完了した。約2.0時間後以降では
図7Bに示すように、蓄熱槽内出口相対湿度は急上昇し約50%RHを示した。
【0041】
なお、
図5に示した実験装置よりも蓄熱槽の規模を拡大することで、上述した冷温水供給装置の運転時間を延ばすことができる。
【0042】
<予測値>
図8Aから
図8Cは、実施形態の
図4において生成される冷水の温度の予測値を説明す
るための図である。
図7Aに示した放熱運転における0.5〜2.0時間の蓄熱槽11出口の温度及び湿度に基づいて、生成される冷水温度を
図8Cの空気線図のように推算した。
図8Bの表のように、(2)蓄熱槽11出口の、乾球温度77.9℃且つ絶対湿度2.5g/kgDAの空気は、絶対湿度2.5g/kgDA一定の下で予熱用熱交換器15において32℃の冷却水によって冷却され、(3)冷却用熱交換器15出口の空気の乾球温度35.0℃になったとき、その比エンタルピーは41.62kJ/kgと推定できる。ここでは、予冷熱用熱交換器15のアプローチを3degと仮定した。さらに、比エンタルピー41.62kJ/kg一定の下で気化冷却器16において水噴霧によってさらに冷却され、その(4)気化冷却器16出口の空気は、乾球温度14.8℃且つ絶対湿度10.6g/kgDAと推定できる。予冷熱用熱交換器と同様に冷温水兼用熱交換器のアプローチを3degと仮定すると、
図8Aのような冷温水供給装置1において約17.8℃の冷水生成が可能になる。この冷水は、例えば天井放射パネルでの使用に適した温度といえる。
【0043】
図9A及び
図9Bは、冷却用熱交換器15に井戸水を導入する変形例を説明するための図である。冷温水供給装置1で得られる冷水の温度は、吸着槽11から得られる高温低湿空気の温度及び湿度、あら熱を除去する冷却用熱交換器15に導入される冷却水の温度、及び冷温水兼用熱交換器17の効率(アプローチ)に依存する。ここで、冷却水温度を、実施形態の約32℃とする代わりに、
図9Aのように冷却水温度を井戸水に相当する約17℃として、(3)冷却用熱交換器15出口の空気の乾球温度20.0℃、且つ絶対湿度2.5g/kgDA、且つ比エンタルピー26.46kJ/kgを推定した。さらに、比エンタルピー26.46kJ/kg一定の下で、(4)気化冷却器16出口の空気の乾球温度8.8℃且つ絶対湿度7.0g/kgDAを推定した。冷温水兼用熱交換器17のアプローチを3degと仮定すると、
図9Aのような冷温水供給装置1において約11.8℃の冷水生成が可能になる。
【0044】
<変形例1>
図10は、変形例1に係る冷温水供給装置の構成を示す図である。上述した
図7Bの放熱運転の0.5〜2.0時間における蓄熱槽の出口の乾球温度は70℃以上であり、
図3に示した実施形態の温水生成処理において、冷温水供給装置1は、60℃程度の温水の生成が十分に可能である。ここで、供給温水の温度を60℃、供給温水の出入口温度差を10deg(すなわち、戻り水の温度を50℃)と仮定すると、
図3の冷温水兼用熱交換器17の出口の空気温度は50℃以上になる。このとき、ダンパ127からの排気の温度も50℃以上であり、排気と外気の温度差に相当する熱ロスが生じることになる。
【0045】
そこで、
図10の変形例1では、ダンパ127から排出される排気とダンパ121が取り入れる外気との間で熱交換を行う熱回収用熱交換器(「顕熱回収用熱交換器」とも呼ぶ)18を設けた。その他の構成は実施形態と同様であるため、構成要件に対応する符号を付して詳細な説明は省略する(以下、変形例について同様)。熱回収用熱交換器18は、例えば50℃の排気と32℃の外気との間で熱交換を行い、排気からの熱回収を行う。熱回収により、蓄熱槽11の入口の空気温度は外気温度よりも高温になるため、吸着剤の水分吸着に応じた発熱によって昇温された蓄熱槽11の出口の高温低湿空気は、熱回収用熱交換器18を設けない場合よりも高温になる。したがって、熱回収により、温水の生成効率(すなわち、蓄熱の利用率)を高めることができる。
【0046】
<変形例2>
図11A及び
図11Bは、変形例2に係る冷温水供給装置の構成を示す図である。
図11Aの冷温水供給装置1は、蓄熱槽11の出入口にそれぞれ設けられた温度検出器T及び湿度検出器Hと、温度検出器T及び湿度検出器Hがそれぞれ検出した温度及び湿度に基づいて蓄熱槽11の蓄熱量を算出する演算部19とを備える。演算部19は、マイクロプロ
セッサやマイクロコントローラ等の処理装置である。また、冷温水兼用熱交換器17に導入される水の量を調整する弁171を備える。そして、演算部19はダンパ126及び弁171の開度を調節することにより、冷温水兼用熱交換器17が生成する温水又は冷水の温度及び量を変更することができる。また、後述する蓄熱利用率に応じて、ダンパ及び弁の制御を行うか、ダンパのみの制御を行うか切り替えるようにしてもよい。
【0047】
また、
図11Bの冷温水供給装置1は、
図11Aの構成に加え、ダンパ127から排出される排気とダンパ121が取り入れる外気との間で熱交換を行う熱回収用熱交換器18を備えている。熱回収用熱交換器18の機能は、
図10に示した変形例1と同様である。このように、ダンパ126及び弁171の開度の制御と、排気と吸気との間での熱回収とを併用するようにしてもよい。
【0048】
<ダンパ制御処理>
図12は、ダンパ制御処理の一例を示す処理フロー図である。処理は、主として蓄熱運転モード、放熱運転モード及び運転を停止する保管モードを含む。なお、本処理では、放熱運転時に、
図11A及び
図11Bに示したダンパ126及び弁171の開度を制御する。
【0049】
まず、演算部19は、例えばユーザから運転モードの入力を受ける(S1)。そして、運転モードが蓄熱運転モードである場合(S2:YES)、演算部19は、蓄熱槽11内の水分量M
w’[g]の初期値に、予め保持している放熱完了時の蓄熱槽11内の水分量M
w(r)を代入する(S3)。また、演算部19は、ファン13から運転信号と、ファンの回転数(風量G)のデータを取得する(S4)。また、演算部19は、蓄熱槽11の入口及び出口に設けられた温度検出器T及び湿度検出器Hから、温度及び湿度のデータを取得する(S5)。なお、S4とS5の処理は順序が逆であってもよいし、並列に実行してもよい。そして、演算部19は、ファン13の運転信号に基づいて運転の有無を判断し(S6)、ファンが稼働していない場合(S6:NO)、S4の処理へ戻る。
【0050】
一方、ファンが稼働している場合(S6:YES)、演算部19は、蓄熱槽11内の水分量M
w[g]を算出する(S7)。水分量M
w[g]は、以下の式(1)によって求めることができる。
M
w=M
w’+G・(X
in−X
out)・Δt ・・・(1)
なお、Δtは時間[s]、M
w’はΔt前の蓄熱槽11内水分量[g]、Gは風量[kg/s]、X
inは入口空気の絶対湿度[g/kg]、X
outは出口空気の絶対湿度[g/kg]である。なお、絶対湿度Xは、温度と湿度(相対湿度)とを用いて算出できる。また、絶対湿度を直接、検出しても良い。
【0051】
そして、演算部19は、蓄熱槽11内の水分量M
w’をM
wで更新する(S8)。その後、演算部19は、所定の蓄熱完了時間が経過したか、又は入口空気の絶対湿度X
inと出口空気の絶対湿度X
outとが同一であるか判断する(S9)。所定の蓄熱完了時間が経過しておらず、且つ入口空気の絶対湿度X
inと出口空気の絶対湿度X
outとが同一でない場合(S9:NO)、S4の処理に戻る。
【0052】
一方、所定の蓄熱完了時間が経過したか、入口空気の絶対湿度X
inと出口空気の絶対湿度X
outとが同一である場合(S9:YES)、蓄熱完了時の蓄熱槽11内の水分量M
w(s)として算出したM
wを記憶し(S10)、蓄熱運転を終了する。このように、蓄熱運転モードでは、測定される蓄熱槽11出入口空気の温度T及び湿度Hのデータを用いてM
wを演算し、蓄熱完了時の槽内水分量M
w(s)を求める。また、入口空気絶対湿度X
inと出口空気絶対湿度X
outとがほぼ同一であるという条件で蓄熱完了した場合は、その時の相対湿度HによってM
w(s)を補正するようにしてもよい。
【0053】
また、S2において運転モードが蓄熱運転モードでない場合(S2:NO)、演算部19は、運転モードが放熱運転モードであるか判断する(S11)。運転モードが放熱運転モードである場合(S11:YES)、演算部19は、蓄熱槽11内の水分量M
w’[g]の初期値に、予め保持している蓄熱完了時の蓄熱槽11内の水分量M
w(s)を代入する(S12)。そして、演算部19は、外気の温度及び湿度に基づいて、放熱完了時の蓄熱槽11内の水分量M
w(r)[g]を設定する(S13)。本ステップでは、以下の式(2)に基づいて利用可能な熱量Q
s[J]を求める。
Q
s=潜熱[J/g]・(M
w(r)−M
w(s)) ・・・(2)
【0054】
また、演算部19は、ファン13から運転信号と、ファンの回転数(風量G)のデータを取得する(S14)。また、演算部19は、蓄熱槽11の入口及び出口に設けられた温度検出器T及び湿度検出器Hから、温度及び湿度のデータを取得する(S15)。なお、S14とS15の処理は順序が逆であってもよいし、並列に実行してもよい。そして、演算部19は、ファン13の運転信号に基づいて運転の有無を判断し(S16)、ファンが稼働していない場合(S16:NO)、S14の処理へ戻る。
【0055】
一方、ファンが稼働している場合(S16:YES)、演算部19は、蓄熱槽11内の水分量M
w[g]を算出する(S17)。水分量M
w[g]は、上述の式(1)によって求めることができる。
【0056】
そして、演算部19は、以下の式(3)を用いて、利用した蓄熱量Q[J]を算出する(S18)。
Q=潜熱[J/g]・(M
w−M
w(s)) ・・・(3)
また、演算部19は、以下の式(4)を用いて、蓄熱利用率ηを求める。
η=Q/Q
s ・・・(4)
【0057】
また、演算部19は、ηが所定の設定値よりも小さいか判断する(S19)。なお、放熱運転モードにおいては、ηの演算結果に応じて、ダンパの制御又はダンパ及び弁の制御の2種類の制御を切り替え、目標温度の温水を得る。ηが所定の設定値よりも小さい場合(S19:YES)、蓄熱槽11の発熱能力は十分に大きいと判断し、ダンパの制御のみを行う(S20)。一方、ηが所定の設定値以上である場合(S19:NO)、蓄熱槽11の発熱能力が不十分であると判断し、ダンパ制御及び冷温水兼用熱交換器17に供給される水の流量を減少させる制御を行う(S21)。
【0058】
図7Aに示した約2時間後以降のデータのように、放熱運転の終盤には蓄熱槽11の水分吸着能力(発熱能力)が低下し、蓄熱槽11内出口温度が低温化する。よって、蓄熱槽11の発熱能力はηの関数として定式化できる。ここで、必要な温水生成能力と比べて、蓄熱槽11の発熱能力が十分に大きい場合(すなわち、算出されたηが所定の値η(設定
値)よりも小さい場合)には、生成される温水の計測値と目標値に応じて、再循環系のダ
ンパ126の開度を調節する。このとき、排気系のダンパ127から排気される空気の量も決まる。放熱過程が進行し、蓄熱槽11の発熱能力が低下した場合(算出されたηが所定の値η(設定値)以上の場合)は、ダンパ制御に加えて冷温水兼用熱交換器17の弁制御を行う。すなわち、生成する温水の量(温水生成能力)を低減させることで、ダンパ126の調節により温水温度の目標値を達成できるようにする。
【0059】
S20又はS21の後、演算部19は、蓄熱槽11内の水分量M
w’をM
wで更新する(S22)。その後、演算部19は、所定の放熱完了時間が経過したか、又は入口空気の絶対湿度X
inと出口空気の絶対湿度X
outとが同一であるか判断する(S23)。所定の放熱完了時間が経過しておらず、且つ入口空気の絶対湿度X
inと出口空気の絶対湿
度X
outとが同一でない場合(S23:NO)、S14の処理に戻る。
【0060】
一方、所定の放熱完了時間が経過したか、入口空気の絶対湿度X
inと出口空気の絶対湿度X
outとが同一である場合(S23:YES)、放熱完了時の蓄熱槽11内の水分量M
w(r)として算出したM
wを記憶し(S24)、放熱運転を終了する。
【0061】
また、S11において放熱運転モードでないと判断された場合(S11:NO)、演算部19及びは処理を行わない保管モードに移行する(S25)。
【0062】
このようなダンパ制御により、目標となる温度の温水又は冷水を得ることができる。
【0063】
<変形例3>
図13は、負荷に供給される冷媒と熱交換する直接接触型熱交換器を有する気化冷却器16aを採用する例を示す図である。実施形態に係る冷温水兼用熱交換器17のアプローチを0degと仮定することと同意となり、冷却用熱交換器15の冷却水温度が約32℃の場合の気化冷却器16aの供給冷水は14.8℃(
図8Bの(4)気化冷却器出口の乾球温度)となり、冷却水温度を約17℃とした場合の供給冷水は8.8℃(
図9Bの(4)気化冷却器出口の乾球温度)となり、より低温の冷水(すなわち、エクセルギーの高い冷水)が供給できるようになる。
【0064】
<変形例4>
図14は、ロータ式の熱回収熱交換器18aを備える冷温水供給装置1を示す図である。ロータ式の熱回収熱交換器18aは、
図10に示した熱回収熱交換器18と同様に、冷温水供給装置1の排気系の流路と給気系の流路との間で熱交換を行う。例えば、ロータ式の熱回収熱交換器18aは、排気系と給気系とを区画する筐体内に回転自在に取り付けられたロータを有する。ロータは、回転することで、排気系を構成していた部分と給気系を構成していた部分とが入れ替わる。そして、排気が通過する際にロータに蓄熱されると共に、給気が通過する際に給気はロータの熱で昇温される。このようなロータ式の熱回収熱交換器18aを用いることでも、排気と外気の温度差に相当する熱ロスを低減することができる。
【0065】
<変形例5>
図15は、フロンなどの冷媒循環系を有する熱回収熱交換器18bを設ける例を示す。この場合、系内に圧縮機を設置した蒸気圧縮式冷媒サイクルの構成でも、ヒートパイプでも良い。熱回収熱交換器18bも、
図10に示した熱回収熱交換器18と同様に、冷温水供給装置1の排気系の流路と給気系の流路との間で熱交換を行う。このような熱回収熱交換器18を用いることでも、排気と外気の温度差に相当する熱ロスを低減することができる。
【0066】
<その他>
上述した実施形態及び変形例では、冷温水兼用熱交換器17において冷水又は温水を得るものとしたが、このような例には限定されない。例えばフロン系冷媒に熱を移して供給するものであってもよい。すなわち、負荷へ供給される熱媒は水に限定されず、冷温熱兼用熱交換器を備える冷温熱供給装置としてもよい。
【0067】
上述した実施形態及び変形例では、放熱運転において外気をそのまま蓄熱槽に導入するものとしたが、加湿処理を行ってから蓄熱槽に導入するようにしてもよい。このようにすれば、季節によって外気の湿度が異なる場合も、蓄熱槽での発熱量を制御することができる。
【0068】
上述のような冷温水供給装置は、都市域や工場・工業団地において、コジェネレーションシステムの廃熱のほか、工場廃熱、太陽熱、ヒートポンプ廃熱から冷暖房熱源を再生する大規模地域熱ネットワークにおいて用いることもできる。実施形態及び変形例に示した放熱運転時に蓄熱槽で生成される高温低湿の空気は、各種のバイオマス工場をはじめ、工場の乾燥工程等への利用に好適である。また、冷温水供給装置によれば、温熱利用だけでなく冷熱利用も可能であり、使用期間が所定の季節に限定されるような稼働率の問題は解決される。よって、熱ネットワークにおける生産側と利用側の統合システムに上述の冷温水供給装置を採用することで、空調システム系外からの熱を利用して空調システムのエネルギー消費を低減させることができる。
【0069】
なお、上述した実施形態及び変形例の内容は、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において可能な限り組み合わせることができる。