特許第6591858号(P6591858)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6591858-熱可塑性樹脂及び光学部材 図000009
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6591858
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂及び光学部材
(51)【国際特許分類】
   C08G 64/08 20060101AFI20191007BHJP
   C08G 63/64 20060101ALI20191007BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20191007BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
   C08G64/08
   C08G63/64
   G02B1/04
   C08J5/18CEZ
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-209020(P2015-209020)
(22)【出願日】2015年10月23日
(65)【公開番号】特開2017-82040(P2017-82040A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】布目 和徳
(72)【発明者】
【氏名】松井 学
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 一良
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−10522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 64/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)と式(2)で表される構成単位を含み、式(1)で表される単位と式(2)で表される単位との割合がモル比で75:25〜10:90の範囲で構成されたポリカーボネートまたはポリエステルカーボネートである熱可塑性樹脂。
【化1】
(式(1)中、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20のアリールオキシ基である。Xは炭素数2〜8のアルキレン基、炭素数5〜12のシクロアルキレン基または炭素数6〜20のアリーレン基である。mおよびnはそれぞれ独立に1〜10の整数である。)
【化2】
(式(2)中のR〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20のアリールオキシ基である。Yは炭素数2〜8のアルキレン基、炭素数5〜12のシクロアルキレン基または炭素数6〜20のアリーレン基である。oおよびpはそれぞれ独立に1〜10の整数である。)
【請求項2】
式(1)で表される単位と式(2)で表される単位との割合がモル比で50:50〜10:90の範囲で構成された請求項1に記載の熱可塑性樹脂。
【請求項3】
式(1)で表される単位において、R、Rが水素原子、Xがエチレン基、m、nが1である請求項1〜のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
【請求項4】
式(2)で表される単位において、R、Rがフェニル基、Yがエチレン基、o、pが1である請求項1〜のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
【請求項5】
式(2)で表される単位において、R、Rが水素原子、Yがエチレン基、o、pが1である請求項1〜のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
【請求項6】
熱可塑性樹脂中のエステル基のモル量がエステル基とカーボネート基の合計モル量の0〜50モル%である請求項1〜のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
【請求項7】
比粘度が0.12〜0.40である請求項1〜のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
【請求項8】
アッベ数が23〜26である請求項1〜のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
【請求項9】
屈折率が1.635〜1.660である請求項1〜のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
【請求項10】
配向複屈折の絶対値が6×10−3以下である請求項1〜のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
【請求項11】
耐折り曲げ性が20mm以下である請求項1〜10のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の熱可塑性樹脂からなる光学部材。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれかに記載の熱可塑性樹脂からなる光学レンズ。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれかに記載の熱可塑性樹脂からなる透明フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高屈折率、高アッベ数であり、かつ、耐折り曲げ性に優れた熱可塑性樹脂に関する。また、該熱可塑性樹脂からなる光学部材に関する。
【背景技術】
【0002】
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)とホスゲンあるいは炭酸ジフェニルなどの炭酸エステル形成性化合物と反応させて製造される従来のポリカーボネート樹脂は、透明性が高く、耐熱性や耐衝撃性に優れるため、光ディスク等の光学部材に使用されてきた。しかしながら、屈折率が低く、複屈折が大きく、表面が傷つきやすいといった欠点があり、使用用途が限られていた。高屈折化、低複屈折化する方法として、側鎖にフルオレン構造を有するビスフェノール類の共重合が報告されている。(特許文献1,2,3)。しかしながら、特許文献1のポリカーボネート樹脂は、溶融時の粘度が極めて高く、光学レンズや光ディスクなどを成形するのは困難である。また、特許文献2や特許文献3のポリカーボネート樹脂は、成形上の問題のない溶融粘度を有するポリカーボネートであり、光ディスクに好適との記載があるが、光学レンズに使用するには屈折率が不十分であった。
【0003】
そこで、さらに高屈折率であるポリカーボネート樹脂が提案されている(特許文献4,5)。しかしながら、特許文献4,5に記載のポリカーボネート樹脂は脆いため、射出成形時に成形片やスプルーが折れやすいという問題があった。また、光学フィルムとして使用する際に、耐折り曲げ性が不十分であるといった問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−109342号公報
【特許文献2】特開平10−101786号公報
【特許文献3】特開平10−101787号公報
【特許文献4】WO2014/073496号公報
【特許文献5】特開2015−86265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明の目的は、高屈折率、高アッベ数であり、かつ、耐折り曲げ性に優れた熱可塑性樹脂を提供することにある。また、該熱可塑性樹脂からなる光学部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らはこの目的を達成せんとして鋭意研究を重ねた結果、下記熱可塑性樹脂及び光学部材によって、上記課題を解決することができることを見出し本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明は、
1.式(1)と式(2)で表される構成単位を含み、式(1)と式(2)との割合がモル比で75:25〜10:90の範囲で構成されたポリカーボネートまたはポリエステルカーボネートである熱可塑性樹脂。
【化1】
(式(1)中、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20のアリールオキシ基である。Xは炭素数2〜8のアルキレン基、炭素数5〜12のシクロアルキレン基または炭素数6〜20のアリーレン基である。mおよびnはそれぞれ独立に1〜10の整数である。)
【化2】
(式(2)中のR〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20のアリールオキシ基である。Yは炭素数2〜8のアルキレン基、炭素数5〜12のシクロアルキレン基または炭素数6〜20のアリーレン基である。oおよびpはそれぞれ独立に1〜10の整数である。)
.式(1)で表される単位と式(2)で表される単位との割合がモル比で50:50〜10:90の範囲で構成された前記1に記載の熱可塑性樹脂。
.式(1)で表される単位において、R、Rが水素原子、Xがエチレン基、m、nが1である上記1〜のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
.式(2)で表される単位において、R、Rがフェニル基、Yがエチレン基、o、pが1である前記1〜のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
.式(2)で表される単位において、R、Rが水素原子、Yがエチレン基、o、pが1である前記1〜のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
.熱可塑性樹脂中のエステル基のモル量がエステル基とカーボネート基の合計モル量の0〜50モル%である前記1〜のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
.比粘度が0.12〜0.40である前記1〜のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
.アッベ数が23〜26である前記1〜のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
.屈折率が1.635〜1.660である前記1〜のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
10.配向複屈折の絶対値が6×10−3以下である前記1〜のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
11.耐折り曲げ性が20mm以下である前記1〜10のいずれかに記載の熱可塑性樹脂。
12.前記1〜11のいずれかに記載の熱可塑性樹脂からなる光学部材。
13.前記1〜11のいずれかに記載の熱可塑性樹脂からなる光学レンズ。
14.前記1〜11のいずれかに記載の熱可塑性樹脂からなる透明フィルム。
【発明の効果】
【0008】
本発明の熱可塑性樹脂及び光学部材は、高屈折率、高アッベ数であり、かつ、耐折り曲げ性に優れるため、その奏する産業上の効果は、格別である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】耐折り曲げ性試験を行う装置の簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。
〈熱可塑性樹脂〉
本発明の熱可塑性樹脂は、式(1)で表される単位と式(2)で表される単位との割合がモル比で、100:0〜5:95であり、75:25〜10:90であると好ましく、50:50〜10:90であるとより好ましい。式(1)と式(2)の割合が上記範囲内であると、高屈折率、高アッベ数であり、耐折り曲げ性に優れるため好ましい。
【0011】
【化3】
【0012】
(式(1)中、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20のアリールオキシ基である。Xは炭素数2〜8のアルキレン基、炭素数5〜12のシクロアルキレン基または炭素数6〜20のアリーレン基である。mおよびnはそれぞれ独立に1〜10の整数である。)
【0013】
【化4】
【0014】
(式(2)中のR〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルコキシル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数6〜20のアリールオキシ基である。Yは炭素数2〜8のアルキレン基、炭素数5〜12のシクロアルキレン基または炭素数6〜20のアリーレン基である。oおよびpはそれぞれ独立に1〜10の整数である。)
【0015】
本発明の熱可塑性樹脂の式(1)で表される単位において、R、Rはそれぞれ独立に水素原子またはフェニル基であることが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂の式(1)で表される単位において、Xはエチレン基であることが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂の式(1)で表される単位において、m、nはそれぞれ独立に1〜2であることが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂の式(2)で表される単位において、R、Rはそれぞれ独立に水素原子またはフェニル基であることが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂の式(2)で表される単位において、Yはエチレン基であることが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂の式(2)で表される単位において、o、pはそれぞれ独立に1〜2であることが好ましい。
【0016】
本発明の熱可塑性樹脂は、式(1)および/または、式(2)で表される構成単位を含むが、本発明の特性を損なわい程度に他のジオール成分を共重合してもよい。他のジオール成分は、全繰り返し単位中10mol%以下が好ましい。その他のジオール成分として、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、デカリン−2,6−ジメタノール、ノルボルナンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、シクロペンタン−1,3−ジメタノール、スピログリコール、イソソルビド、ヒドロキノン、レゾルシノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,3−ビス(2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル)ベンゼン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビフェノール、ビスフェノールフルオレン、ビスクレゾールフルオレン、1,1−ビ(2−(2−ヒドロキシエトキシ)ナフタレン)、1,1−ビ−2−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン、ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、10,10−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アントロン等が挙げられる。
【0017】
本発明の熱可塑性樹脂は、式(1)および/または、式(2)で表されるカーボネート単位を含むが、エステル単位も含むポリエステルカーボネート樹脂であっても良い。
本発明の熱可塑性樹脂中のエステル基のモル量は、エステル基とカーボネート基の合計モル量の0〜50モル%であると好ましく、0〜25モル%であるとより好ましい。
【0018】
本発明の熱可塑性樹脂中のエステル基を構成するジカルボン酸成分として、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸が挙げられる。また、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の単環式芳香族ジカルボン酸や、2,6−ナフタレンジカルボン2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸等の多環式芳香族ジカルボン酸が挙げられる。また、2,2’−ビフェニルジカルボン酸等のビフェニルジカルボン酸や、1,4−シクロジカルボン酸、2,6−デカリンジカルボン酸等の脂還族ジカルボン酸が挙げられる。これらは単独または二種以上組み合わせて用いてもよい。また、これらの誘導体としては酸クロライドやエステル類が用いられる。
【0019】
本発明の熱可塑性樹脂の比粘度は、0.12〜0.40が好ましく、0.15〜0.35であるとさらに好ましく、0.18〜0.30であるとよりいっそう好ましい。比粘度が上記範囲内であると成形性と機械強度のバランスに優れるため好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂の屈折率は、1.635〜1.660であると好ましく、1.640〜1.660であるとさらに好ましく、1.643〜1.660であるとよりいっそう好ましい。屈折率は25℃、波長589nmにおいて測定する。屈折率が1.635以上の場合、レンズの球面収差を低減でき、さらにレンズの焦点距離を短くする事ができるため好ましい。
【0020】
本発明の熱可塑性樹脂のアッベ数(ν)は、23〜26であると好ましい。アッベ数は25℃、波長486nm、589nm、656nmの屈折率から下記式を用いて算出する。また、小数点以下は四捨五入して算出する。
ν=(nD−1)/(nF−nC)
nD:波長589nmでの屈折率
nC:波長656nmでの屈折率
nF:波長486nmでの屈折率
【0021】
本発明の熱可塑性樹脂は、配向複屈折(Δn)の絶対値が、好ましくは0〜6×10−3、より好ましくは0〜4×10−3、さらに好ましくは0〜2×10−3の範囲である。配向複屈折(Δn)は、該ポリカーボネート樹脂より得られる厚さ100μmのキャストフィルムをTg+10℃で2倍延伸した時、波長589nmにおいて測定する。配向複屈折が上記範囲内であると、レンズの光学歪が小さくなるため好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂は、1mm厚の全光線透過率が、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは88%以上である。全光線透過率が上記範囲内であると、光学部材として適している。
【0022】
本発明の熱可塑性樹脂は、23℃、24時間浸漬後の吸水率が0.25%以下であると好ましく、0.20%以下であるとより好ましい。吸水率が上記範囲内であると、吸水による光学特性の変化が小さいため好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂は、ガラス転移点(Tg)が120〜160℃であると好ましく、130〜160℃であるとより好ましい。ガラス転移点が上記範囲内であると、耐熱性と成形性のバランスに優れるため好ましい。
【0023】
本発明の熱可塑性樹脂は、耐折り曲げ性が20mm以下であると好ましく、15mm以下であるとより好ましく、10mm以下であるとよりいっそう好ましい。耐折り曲げ性とは、長さ40mm、幅10mm、厚さ100μmのフィルムを用いて、万力の左右の接合面の間隔を40mmに開き、前記試験片の両端を接合面内に固定した。次に左右の接合面の間隔を2mm/秒以下の速度で狭めていき、折れ曲がった試験片全体を該接合面内で圧縮した。そして、接合面間が完全に密着する迄に試験片が折れ曲がり部で2片(又は3片以上の破片)に割れた際、万力の接合面の移動を停止し、接合面の間隔を測定した。耐折り曲げ性の数値が大きいほど、フィルムが割れやすいことを示す。耐折り曲げ性が上記範囲内であると、光学部材として十分な機械強度があるため好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂は、用途や必要に応じて熱安定剤、可塑剤、光安定剤、重合金属不活性化剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、離型剤等の添加剤を配合することができる。
【0024】
〈ポリカーボネートの製造方法〉
本発明のポリカーボネート樹脂は、通常のポリカーボネート樹脂を製造するそれ自体公知の反応手段、例えばジオール成分に炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を反応させる方法により製造される。次にこれらの製造方法について基本的な手段を簡単に説明する。
【0025】
カーボネート前駆物質として炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応は、不活性ガス雰囲気下所定割合の芳香族ジヒドロキシ成分を炭酸ジエステルと加熱しながら撹拌して、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点などにより異なるが、通常120〜300℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応を完結させる。また、必要に応じて末端停止剤、酸化防止剤等を加えてもよい。
【0026】
前記エステル交換反応に使用される炭酸ジエステルとしては、置換されてもよい炭素数6〜12のアリール基、アラルキル基等のエステルが挙げられる。具体的には、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネートおよびm−クレジルカーボネート等が例示される。なかでもジフェニルカーボネートが特に好ましい。ジフェニルカーボネートの使用量は、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、好ましくは0.90〜1.02モル、より好ましは0.95〜1.00モルである。
【0027】
また溶融重合法においては重合速度を速めるために、重合触媒を用いることができ、かかる重合触媒としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、塩基性リン化合物、含窒素化合物、金属化合物等が挙げられる。このような化合物としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の、有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物、アルコキシド、4級アンモニウムヒドロキシド等が好ましく用いられ、これらの化合物は単独もしくは組み合わせて用いることができる。
【0028】
アルカリ金属化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、フェニルリン酸2ナトリウム、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2セシウム塩、2リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、リチウム塩等が例示される。
【0029】
アルカリ土類金属化合物としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、二酢酸マグネシウム、二酢酸カルシウム、二酢酸ストロンチウム、二酢酸バリウム等が例示される。塩基性ホウ素化合物としては、例えば、テトラメチルホウ素、テトラエチルホウ素、テトラプロピルホウ素、テトラブチルホウ素、トリメチルエチルホウ素、トリメチルベンジルホウ素、トリメチルフェニルホウ素、トリエチルメチルホウ素、トリエチルベンジルホウ素、トリエチルフェニルホウ素、トリブチルベンジルホウ素、トリブチルフェニルホウ素、テトラフェニルホウ素、ベンジルトリフェニルホウ素、メチルトリフェニルホウ素、ブチルトリフェニルホウ素等のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩、あるいはストロンチウム塩等が挙げられる。
【0030】
塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、あるいは四級ホスホニウム塩等が挙げられる。
【0031】
含窒素化合物としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル、アリール基等を有する4級アンモニウムヒドロキシド類が挙げられる。また、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン等の3級アミン類、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、ベンゾイミダゾール等のイミダゾール類が挙げられる。また、アンモニア、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルアンモニウムテトラフェニルボレート等の塩基あるいは塩基性塩等が例示される。
【0032】
金属化合物としては亜鉛アルミニウム化合物、ゲルマニウム化合物、有機スズ化合物、アンチモン化合物、マンガン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物等が例示される。これらの化合物は1種または2種以上併用してもよい。
これらの重合触媒の使用量は、ジオール成分1モルに対し好ましくは1×10−9〜1×10−2当量、好ましくは1×10−8〜1×10−3当量、より好ましくは1×10−7〜1×10−5当量の範囲で選ばれる。
【0033】
また、必要によって反応後期に触媒失活剤を添加してもよい。使用する触媒失活剤としては、公知の触媒失活剤が有効に使用されるが、この中でもスルホン酸のアンモニウム塩、ホスホニウム塩が好ましい。更にドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等のドデシルベンゼンスルホン酸の塩類、パラトルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩等のパラトルエンスルホン酸の塩類が好ましい。
【0034】
また、スルホン酸のエステルとして、ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸ブチル、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホン酸フェニル、パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル、パラトルエンスルホン酸ブチル、パラトルエンスルホン酸オクチル、パラトルエンスルホン酸フェニル等が好ましく用いられる。なかでも、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩が最も好ましく使用される。
【0035】
これらの触媒失活剤の使用量はアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物より選ばれた少なくとも1種の重合触媒を用いた場合、その触媒1モル当たり好ましくは0.5〜50モルの割合で、より好ましくは0.5〜10モルの割合で、更に好ましくは0.8〜5モルの割合で使用することができる。
【0036】
〈ポリエステルカーボネートの製造方法〉
本発明のポリエステルカーボネート樹脂は、ジオール成分とジカルボン酸成分またはそのエステル形成性誘導体と炭酸ジエステルとを、触媒の存在下、溶融重縮合法により好適に得ることができる。
本発明のポリエステルカーボネート樹脂に使用する触媒として使用する塩基性化合物としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ビスフェノールAのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属化合物としては水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウム等が挙げられる。
【0037】
本発明のポリエステルカーボネート樹脂に使用する助触媒として使用する含窒素塩基性化合物としてはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン、ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
【0038】
本発明のポリエステルカーボネート樹脂に使用するエステル交換触媒としては亜鉛、スズ、ジルコニウム、鉛、チタン、ゲルマニウム、アンチモン、オスミウム、アルミニウムの塩が挙げられ、例えば、酢酸亜鉛、安息香酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸スズ(II)、酢酸スズ(IV)、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキサイド、ジブチルスズジメトキシド、ジルコニウムアセチルアセトナート、オキシ酢酸ジルコニウム、ジルコニウムテトラブトキシド、酢酸鉛(II)、酢酸鉛(IV)、チタンテトラブトキシド(IV)、チタンテトライソプロポキシド、チタン(IV)=テトラキス(2−エチル−1−ヘキサノラート)、酸化チタン、トリス(2,4−ペンタジオネート)アルミニウム(III)等が用いられる。
本発明のポリエステルカーボネート樹脂に使用する触媒は単独で用いても、二種以上併用してもよく、これらの重合触媒の使用量はジオール成分とジカルボン酸成分の合計1モルに対して、10−9〜10−3モルの比率で用いられる。また、必要によって反応後期に触媒失活剤を添加してもよい。
【0039】
〈光学部材〉
本発明の熱可塑性樹脂からなる光学部材は、射出成形、圧縮成形、射出圧縮成形、溶融押出成形、溶融押出製膜、キャスティング製膜等の任意の方法により成形、加工することができる。
本発明の熱可塑性樹脂からなる光学部材とは、光ディスク、透明導電性基板、光カード、シート、フィルム、光ファイバー、レンズ、プリズム、光学膜、基盤、光学フィルター、ハードコート膜等である。
【0040】
〈光学レンズ〉
本発明の熱可塑性樹脂からなる光学レンズは、射出成形、圧縮成形、射出圧縮成形、溶融押出成形、キャスティング等の任意の方法により成形、加工することができるが、射出成形が特に好適である。射出成形の成形条件は特に限定されないが、成形機のシリンダ温度は180〜320℃が好ましく、220〜300℃がより好ましく、260〜290℃がよりいっそう好ましい。また、金型温度は70〜150℃が好ましく、80〜140℃がより好ましく、90〜130℃がよりいっそう好ましい。射出圧力は100〜2,000kgf/cmが好ましく、500〜1,700kgf/cmが好ましく、700〜1,500kgf/cmがよりいっそう好ましい。また、成形加工前に、本発明のポリカーボネート樹脂を100〜130℃で1〜12時間事前乾燥することが好ましい。
【0041】
本発明のポリカーボネート樹脂からなる光学レンズは、屈折率が高いことを特徴とする。一般的に、屈折率が高いと、同一屈折率を有するレンズエレメントをより曲率の小さい面で実現できるため、この面で発生する収差量を小さくできる。その結果、レンズの枚数を減らしたり、レンズの偏心感度を低減したり、レンズ厚みを薄くして軽量化することが可能になる。
【0042】
本発明の熱可塑性樹脂からなる光学レンズは、光学歪みが小さいことを特徴とする。一般的なビスフェノールAタイプのポリカーボネートからなる光学レンズは光学歪みが大きい。成形条件によりその値を低減することも不可能ではないが、その条件幅は非常に小さく成形が非常に困難となる。本発明の樹脂は、樹脂の配向により生じる光学歪みが極めて小さく、また成形歪みも小さいため、成形条件を厳密に設定しなくても良好な光学レンズを得ることができる。
【0043】
本発明の熱可塑性樹脂からなる光学レンズは、必要に応じて非球面レンズの形で用いることが好適に実施される。非球面レンズは、1枚のレンズで球面収差を実質的にゼロとすることが可能であるため、複数の球面レンズの組み合わせで球面収差を取り除く必要がなく、軽量化および生産コストの低減化が可能になる。従って、非球面レンズは、光学レンズの中でも特にカメラレンズとして有用である。
【0044】
また、本発明の熱可塑性樹脂は、流動性が高いため、薄肉小型で複雑な形状である光学レンズの材料として特に有用である。具体的なレンズサイズとして、中心部の厚みが0.05〜3.0mm、より好ましくは0.05〜2.0mm、さらに好ましくは0.1〜1.0mmである。また、直径が1.0mm〜20.0mm、より好ましくは1.0〜10.0mm、さらに好ましくは3.0〜10.0mmである。また、その形状として片面が凸、片面が凹であるメニスカスレンズであることが好ましい。
【0045】
本発明の熱可塑性樹脂からなる光学レンズの表面には、必要に応じ、反射防止層あるいはハードコート層といったコート層が設けられていても良い。反射防止層は、単層であっても多層であっても良く、有機物であっても無機物であっても構わないが、無機物であることが好ましい。具体的には、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタニウム、酸化セリウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム等の酸化物あるいはフッ化物が例示される。
また、本発明の熱可塑性樹脂からなる光学レンズは、金型成形、切削、研磨、レーザー加工、放電加工、エッジングなど任意の方法により成形されてもよい。さらには、金型成形がより好ましい。
【0046】
〈透明フィルム〉
本発明の熱可塑性樹脂からなる透明フィルムは、溶融押出製膜、キャスト製膜等の任意の方法により成形、加工することができる。
本発明の熱可塑性樹脂からなる透明フィルムとは、ディスプレイ用フィルム、延伸フィルム、加飾フィルム等である。
溶融押出製膜においては、Tダイを用いて樹脂を押し出し冷却ロールに送る方法が好ましく用いられる。押出機のシリンダ温度は、180〜320℃が好ましく、200℃〜300℃の範囲がより好ましい。また、成形加工前に、本発明の熱可塑性樹脂を100〜130℃で1〜12時間事前乾燥することが好ましい。
【0047】
本発明で用いる熱可塑性樹脂は、有機溶媒に対する溶解性が良好なので、溶液キャスト製膜も適用することが出来る。溶媒としては塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ジオキソラン、ジオキサン等が好適に用いられる。
本発明の熱可塑性樹脂からなる透明フィルムの厚みは、30〜500μmの範囲が好ましく、より好ましくは40〜400μmの範囲である。
【実施例】
【0048】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明する。
各実施例および比較例の評価用サンプルは以下の(a)の方法で調製した。
(a)フィルム
得られた樹脂3gを塩化メチレン50mlに溶解させ、ガラスシャーレ上にキャストする。室温にて十分に乾燥させた後、該樹脂のTgから120℃以下の温度にて8時間乾燥して、厚さ約100μmのキャストフィルムを作成した。
【0049】
評価は下記の方法によった。
(1)比粘度:重合終了後に得られた樹脂を十分に乾燥し、該樹脂0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から、その溶液の20℃における比粘度(ηsp)を測定した。
(2)共重合比:重合終了後に得られた樹脂を日本電子社製JNM−AL400のプロトンNMRを用いて測定した。
(3)屈折率(nd)、アッベ数(ν):(a)の手法により作成したフィルムをATAGO製DR−M2のアッベ屈折計を用いて、25℃における屈折率(波長:589nm)及びアッベ数を測定した。
(4)配向複屈折:(a)の手法により作成したフィルムを長さ7cm、幅1.5cmにカットした後、長手方向の両端をチャックに挟み(チャック間4.5cm)、樹脂のTg+10℃で2倍延伸し、日本分光(株)製エリプソメーターM−220を用いて589nmにおける位相差(Re)を測定し、下記式より配向複屈折(Δn)を求めた。
Δn=Re/d
Δn:配向複屈折
Re:位相差
d:厚さ
(5)耐折り曲げ性:(a)の手法により作成したフィルムから長さ40mm、幅10mmの長方形の試験片を切り出した。万力の左右の接合面の間隔を40mmに開き、前記試験片の両端を接合面内に固定した。次に左右の接合面の間隔を2mm/秒以下の速度で狭めていき、折れ曲がった試験片全体を該接合面内で圧縮した。そして、接合面間が完全に密着する迄に試験片が折れ曲がり部で2片(又は3片以上の破片)に割れた際、万力の接合面の移動を停止し、接合面の間隔を測定した。
【0050】
(光学レンズの成形)
作成したポリカーボネート樹脂100重量部に、BASF製IRGAFOS168を0.05重量部、理研ビタミン(株)製リケマールS−100Aを0.1重量部加えて、ベント付きφ15mm単軸押出機を用いてペレット化した。その後、120℃で8時間乾燥した後、住友重機械(株)製SE30DU射出成形機を用いて、厚さ0.3mm、凸面曲率半径5mm、凹面曲率半径4mm、φ5mmの光学レンズを射出成形した。評価は、500ショット成形した際に、成形片、スプルー、ランナーが折れ、金型に樹脂が残ってしまう等で連続成形を止めた回数を評価し、結果を表1に記載した。
【0051】
実施例1
ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)スルホン(以下“BPS−2EO”と省略することがある)101.51部、ジフェニルカーボネート(以下“DPC”と省略することがある)63.62部、及び水酸化ナトリウム0.012×10−3部を攪拌機および留出装置付きの反応釜に入れ、窒素置換を3度行った後、ジャケットを180℃に加熱し、原料を溶融させた。完全溶解後、20分かけて20kPaまで減圧すると同時に、60℃/hrの速度でジャケットを260℃まで昇温し、エステル交換反応を行った。その後、ジャケットを260℃に保持したまま、80分かけて0.13kPaまで減圧し、260℃、0.13kPa以下の条件下で5〜30分重合反応を行った。反応終了後、生成したポリカーボネート樹脂をペレタイズしながら抜き出し、ポリカーボネート樹脂ペレットを得た。該ペレットを用いて、比粘度、共重合比、屈折率、配向複屈折、耐折り曲げ性を測定し、結果を表1に記載した。
【0052】
実施例2
BPS−2EOを76.14部、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレン(以下“OPBPEF”と省略することがある)44.30部、DPCを63.62部、及び水酸化ナトリウム0.012×10−3部を攪拌機および留出装置付きの反応釜に入れ、窒素置換を3度行った後、ジャケットを180℃に加熱し、原料を溶融させた。完全溶解後、20分かけて20kPaまで減圧すると同時に、60℃/hrの速度でジャケットを260℃まで昇温し、エステル交換反応を行った。その後、ジャケットを260℃に保持したまま、80分かけて0.13kPaまで減圧し、260℃、0.13kPa以下の条件下で5〜30分重合反応を行った。反応終了後、生成したポリカーボネート樹脂をペレタイズしながら抜き出し、ポリカーボネート樹脂ペレットを得た。該ペレットを用いて、比粘度、共重合比、屈折率、配向複屈折、耐折り曲げ性を測定し、結果を表1に記載した。
【0053】
実施例3
BPS−2EOを50.76部、OPBPEFを88.61部とする以外は、実施例2と同様の方法でポリカーボネート樹脂ペレットを得た。該ペレットを用いて、比粘度、共重合比、屈折率、配向複屈折、耐折り曲げ性を測定し、結果を表1に記載した。
【0054】
実施例4
BPS−2EOを25.38部、OPBPEFを132.91部とする以外は、実施例2と同様の方法でポリカーボネート樹脂ペレットを得た。該ペレットを用いて、比粘度、共重合比、屈折率、配向複屈折、耐折り曲げ性を測定し、結果を表1に記載した。
【0055】
実施例5
BPS−2EOを15.23部、OPBPEFを150.63部とする以外は、実施例2と同様の方法でポリカーボネート樹脂ペレットを得た。該ペレットを用いて、比粘度、共重合比、屈折率、配向複屈折、耐折り曲げ性を測定し、結果を表1に記載した。
【0056】
実施例6
BPS−2EOを10.15部、OPBPEFを159.49部とする以外は、実施例2と同様の方法でポリカーボネート樹脂ペレットを得た。該ペレットを用いて、比粘度、共重合比、屈折率、配向複屈折、耐折り曲げ性を測定し、結果を表1に記載した。
【0057】
実施例7
BPS−2EOを15.23部、OPBPEFを9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン(以下“BPEF”と省略することがある)に変更し、111.82部とする以外は、実施例2と同様の方法でポリカーボネート樹脂ペレットを得た。該ペレットを用いて、比粘度、共重合比、屈折率、配向複屈折、耐折り曲げ性を測定し、結果を表1に記載した。
【0058】
実施例8
BPS−2EOを10.15部、OPBPEFを150.63部、テレフタル酸ジメチル(以下、“DMT”と省略することがある)を2.91部、DPCを60.41部、及びチタンテトラブトキシド15.3×10−3部を攪拌機および留出装置付きの反応釜に入れ、窒素置換を3度行った後、ジャケットを180℃に加熱し、原料を溶融させた。完全溶解後、20分かけて40kPaまで減圧すると同時に、60℃/hrの速度でジャケットを260℃まで昇温し、エステル交換反応を行った。その後、ジャケットを260℃に保持したまま、80分かけて0.13kPaまで減圧し、260℃、0.13kPa以下の条件下で5〜30分重合反応を行った。反応終了後、生成したポリカーボネート樹脂をペレタイズしながら抜き出し、ポリカーボネート樹脂ペレットを得た。該ペレットを用いて、比粘度、共重合比、屈折率、配向複屈折、耐折り曲げ性を測定し、結果を表1に記載した。
【0059】
比較例1
BPS−2EOを0部、OPBPEFを177.21部とする以外は、実施例1と同様の方法で、WO2014/073496号公報の実施例12相当のポリカーボネート樹脂ペレットを得た。該ペレットを用いて、比粘度、共重合比、屈折率、配向複屈折、耐折り曲げ性を測定し、結果を表1に記載した。
【0060】
比較例2
OPBPEFを159.49部、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下、“BCF”と省略すること事がある)11.36部、DPCを64.91部、及び水酸化ナトリウム0.012×10−3部を攪拌機および留出装置付きの反応釜に入れ、窒素置換を3度行った後、ジャケットを180℃に加熱し、原料を溶融させた。完全溶解後、20分かけて20kPaまで減圧すると同時に、60℃/hrの速度でジャケットを260℃まで昇温し、エステル交換反応を行った。その後、ジャケットを260℃に保持したまま、80分かけて0.13kPaまで減圧し、260℃、0.13kPa以下の条件下で5〜30分重合反応を行った。反応終了後、生成したポリカーボネート樹脂をペレタイズしながら抜き出し、特開2015−86265号公報の実施例4相当のポリカーボネート樹脂ペレットを得た。該ペレットを用いて、比粘度、共重合比、屈折率、配向複屈折、耐折り曲げ性を測定し、結果を表1に記載した。
【0061】
比較例3
BCFをビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(以下、BPSと省略することがある)に変更し、7.51部とする以外は、比較例2と同様の方法でポリカーボネート樹脂ペレットを得た。該ペレットを用いて、比粘度、共重合比、屈折率、配向複屈折、耐折り曲げ性を測定し、結果を表1に記載した。
【0062】
【表1】
【0063】
実施例1〜8で得られた熱可塑性樹脂は、高屈折率、高アッベ数であり、かつ、耐折り曲げ性に優れる。また、連続成形性も良い。これに対して、比較例1〜3で得られた熱可塑性樹脂は、脆いため、耐折り曲げ性及び連続成形性に劣る。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の熱可塑性樹脂は、光ディスク、透明導電性基板、光カード、シート、フィルム、光ファイバー、レンズ、プリズム、光学膜、基盤、光学フィルター、ハードコート膜等の光学部材に用いることができ極めて有用である。
【符号の説明】
【0065】
1.作業台
2.万力
21.取付基部
22.上取付部
23.下取付部
231.取付雌ネジ
232.取付ネジ軸
233.ハンドル
234.挟持板
24.固定口金
241.試験片設置用治具
242.挟持雌ネジ
243.接合面
25.可動口金
251.試験片設置用治具
252.シャフト
253.ハンドル
254.接合面
3.試験片
図1