(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「結晶性樹脂」とは、示差走査熱量計(DSC)によって室温から20℃/分の昇温速度で昇温した際に生じる結晶融解熱量が5J/g以上である樹脂を意味する。
「Mw/Mn」は、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミドを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(以下、GPCとも記す。)によって得られたクロマトグラム(横軸:溶出時間、縦軸:出力)について、標準ポリマーとしてポリスチレンを用いた較正曲線によって溶出時間を分子量に換算して求めた質量平均分子量Mwおよび数平均分子量Mnから得られた値である。
「積分分子量分布曲線」は、
図1に示すように横軸に分子量(対数値)、縦軸に溶出時間の濃度分率の積算値(すなわち、低分子量側から各分子量の成分の割合を積算した積算値)をプロットしたものであり、GPCによって得られたクロマトグラム(横軸:溶出時間、縦軸:出力)から公知の手法(GPCシステムに付属のソフトウェア)によって作成できる。
【0018】
<芳香族ビニル系樹脂(A)>
芳香族ビニル系樹脂(A)は、芳香族ビニル系単量体に基づく構成単位を有する重合体であり、特定の分子量および特定の分子量分布を有する。
芳香族ビニル系樹脂(A)としては、成形品の耐薬品性に優れる点から、シアン化ビニル系単量体に基づく構成単位をさらに有するものが好ましい。
芳香族ビニル系樹脂(A)は、芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体以外の他のビニル系単量体に基づく構成単位をさらに有していてもよい。
芳香族ビニル系樹脂(A)としては、結晶性樹脂(B)への分散性に優れる点から、ポリスチレン換算の質量平均分子量Mwが大きいものが好ましい。
【0019】
(芳香族ビニル系単量体)
芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、o−エチルスチレン、o−クロロスチレン、o,p−ジクロロスチレン等が挙げられる。
芳香族ビニル系単量体としては、重合性、経済性の点から、スチレンまたはα−メチルスチレンが好ましい。
芳香族ビニル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
(シアン化ビニル系単量体)
シアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
シアン化ビニル系単量体としては、重合性、成形品の耐衝撃性の点から、アクリロニトリルが好ましい。
シアン化ビニル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
(他のビニル系単量体)
他のビニル系単量体としては、下記のものが挙げられる。
アクリル酸エステル:メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アミノアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート等。
メタクリル酸エステル:メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、アミノメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等。
不飽和酸無水物:無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等。
不飽和酸:アクリル酸、メタクリル酸等。
α,β−不飽和ジカルボン酸のイミド化合物:マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−(p−メチルフェニル)マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等。
エポキシ基含有不飽和化合物:グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等。
不飽和カルボン酸アミド:アクリルアミド、メタクリルアミド等。
アミノ基含有不飽和化合物:アクリルアミン、メタクリル酸アミノメチル、メタクリル酸アミノエーテル、メタクリル酸アミノプロピル、アミノスチレン等。
水酸基含有不飽和化合物:3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシスチレン等。
オキサゾリン基含有不飽和化合物:ビニルオキサゾリン等。
他のビニル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
(構成単位の割合)
芳香族ビニル系樹脂(A)中の芳香族ビニル系単量体に基づく構成単位とシアン化ビニル系単量体に基づく構成単位との質量比(シアン化ビニル系単量体に基づく構成単位/芳香族ビニル系単量体に基づく構成単位)は、成形品の反り変形の低減の点から、0.42以下が好ましく、0.40以下がより好ましく、0.38以下がさらに好ましい。シアン化ビニル系単量体に基づく構成単位/芳香族ビニル系単量体に基づく構成単位は、成形品の機械的特性(耐衝撃性、剛性等)の点から、0.10以上が好ましく、0.17以上がより好ましく、0.24以上がさらに好ましい。
芳香族ビニル系樹脂(A)中の他のビニル系単量体の割合は、0〜50質量%が好ましく、0〜25質量%がより好ましい。
【0023】
(分子量分布)
芳香族ビニル系樹脂(A)の、GPCによって得られたポリスチレン換算の質量平均分子量Mwとポリスチレン換算の数平均分子量Mnとの比Mw/Mnは、2.0以上であり、2.0〜4.0が好ましく、2.0〜3.0がより好ましい。Mw/Mnが前記範囲の下限値以上であれば、成形品の反り変形を低減できる。
【0024】
(積算値50質量%分子量)
積算値50質量%分子量は、
図1に示すようにGPCによって得られた積分分子量分布曲線における、低分子量側から各分子量の成分の割合を積算した積算値が50質量%となる分子量である。
芳香族ビニル系樹脂(A)の積算値50質量%分子量は、1×10
5〜5×10
5であり、1×10
5〜3×10
5が好ましく、1×10
5〜2×10
5がより好ましい。積算値50質量%分子量が前記範囲の下限値以上であれば、成形品の反り変形を低減できる。積算値50質量%分子量が前記範囲の上限値を超えると、成形時のガス発生量(アウトガス)を低減できない。
【0025】
(積算値10質量%分子量)
積算値10質量%分子量は、
図1に示すようにGPCによって得られた積分分子量分布曲線における、低分子量側から各分子量の成分の割合を積算した積算値が10質量%となる分子量である。
芳香族ビニル系樹脂(A)の積算値10質量%分子量は、2.5×10
4以上が好ましく、3×10
4〜4.0×10
4がより好ましく、3.0×10
4〜3.5×10
4がさらに好ましい。積算値10質量%分子量が前記範囲の下限値以上であれば、成形時のガス発生量(アウトガス)を低減できる。
【0026】
(芳香族ビニル系樹脂(A)の製造)
芳香族ビニル系樹脂(A)は、芳香族ビニル系単量体、必要に応じてシアン化ビニル系単量体、他のビニル系単量体を含む単量体成分を公知の重合方法によって重合することによって製造できる。
重合方法としては、乳化重合法、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、これらを組み合わせた重合法等が挙げられる。
単量体成分は、初期に一括で仕込んでもよく、単量体成分の一部または全部を連続的または断続的に仕込んでもよい。
【0027】
懸濁重合法としては、(i)懸濁剤として難水溶性無機塩とアニオン性界面活性剤との組み合わせを用いる方法、(ii)水溶性高分子(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等)を用いる方法等が挙げられる。
(ii)の方法は、水溶性高分子が芳香族ビニル系樹脂(A)に残留しやすいため、芳香族ビニル系樹脂(A)の品質に悪影響を及ぼす場合がある。また、重合終了後の排水の水質が悪化するため、排水処理の負荷が大きくなる。したがって、懸濁重合法としては、(i)の方法が採用されることが多い。
【0028】
難水溶性無機塩としては、第3リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等)、アルキル硫酸塩(ラウリル硫酸ナトリウム等)が挙げられる。
【0029】
懸濁重合法に用いられる重合開始剤としては、アゾ系重合開始剤(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等)、有機過酸化物系重合開始剤(ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート等)等が挙げられる。
重合開始剤の量は、単量体成分の100質量部に対して0.05〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましい。
【0030】
懸濁重合法に用いられる連鎖移動剤としては、メルカプタン類(オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、tert−テトラデシルメルカプタン等)、アクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコール、テルピノレン、α−メチルスチレンのダイマー等が挙げられる。
連鎖移動剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
連鎖移動剤は、一括で添加してもよく、連続的または断続的に添加してもよい。
連鎖移動剤の量は、単量体成分の100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、0.2〜6質量部がより好ましい。連鎖移動剤の添加量が前記範囲の下限値未満では、溶液粘度が上昇し、反応制御が困難になることがある。連鎖移動剤の添加量が前記範囲の上限値を超えると特定の分子量および特定の平均分子量を有する芳香族ビニル系樹脂(A)が得られないおそれがある。また、重合が十分に進行しないことがある。
【0031】
芳香族ビニル系樹脂(A)の分子量分布Mw/Mn、積算値50質量%分子量および積算値10質量%分子量は、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤、溶媒等の種類や量によって調整できる。また、単量体成分の仕込み方法、添加時間、重合時間、重合温度等によって調整できる。特に、積算値50質量%分子量および積算値10質量%分子量は、重合開始剤の量によって調整できるが、連鎖移動剤の添加によって調整することが好ましい。
【0032】
(作用機序)
以上説明した本発明の芳香族ビニル系樹脂(A)にあっては、特定の分子量および特定の平均分子量を有するため、繊維強化樹脂組成物からなる成形品の機械的特性(耐衝撃性、剛性等)および熱的特性(耐熱性)の低下を抑えつつ、寸法安定性の低さ(反り変形)を改善できる改質剤として好適である。
【0033】
<繊維強化樹脂組成物>
本発明の繊維強化樹脂組成物は、本発明の芳香族ビニル系樹脂(A)と、結晶性樹脂(B)(ただし、芳香族ビニル系樹脂(A)を除く。)と、繊維状充填材(C)とを含む。
本発明の繊維強化樹脂組成物は、必要に応じて、他の添加剤を含んでいてもよい。
【0034】
(結晶性樹脂(B))
結晶性樹脂(B)としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリ乳酸、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、シンジオタクチックポリスチレン等)、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリアセタール、ポリ四フッ化エチレン、結晶性ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリケトン等が挙げられる。
【0035】
結晶性樹脂(B)としては、成形品の熱的特性(耐熱性等)、化学的特性(耐薬品性等)の点から、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリ乳酸、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンが好ましい。
【0036】
(ポリアミド)
ポリアミドは、アミド結合を有する高分子からなる樹脂である。
ポリアミドは、アミノ酸、ラクタムまたはジアミンと、ジカルボン酸とを主たる原料とする。本発明においては、これらの原料から誘導されるポリアミドホモポリマーまたはコポリマーを各々単独または混合物の形で用いることができる。
【0037】
アミノ酸としては、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸等が挙げられる。
ラクタムとしては、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム等が挙げられる。
ジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、メタキシレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジン等が挙げられる。
【0038】
ジカルボン酸としては、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等が挙げられる。
【0039】
ポリアミドの具体例としては、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリペンタメチレンアジパミド(ポリアミド56)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリペンタメチレンセバカミド(ポリアミド510)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド6/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド/ポリカプロアミドコポリマー(ポリアミド66/6I/6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ポリアミド6T/12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6T/6I)、ポリキシリレンアジパミド(ポリアミドXD6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ−2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド6T/M5T)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド6T/5T)、これらの混合物ないし共重合体等が挙げられる。
【0040】
ポリアミドとしては、成形品の機械的特性(強度、耐衝撃性等)の点から、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6/66コポリマー、ポリアミド6/12コポリマー等が好ましく、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド12がより好ましい。好ましいポリアミドは、成形性、熱的特性、機械的特性等の必要特性に応じて2種以上を混合物として用いてもよい。
【0041】
ポリアミドの重合度には、特に制限はない。ポリアミドの重合度の目安としては、相対粘度が用いられる。ポリアミドの相対粘度は、1.5〜7.0が好ましく、1.8〜6.0がより好ましい。相対粘度が前記範囲内であれば、成形品の耐衝撃性に優れる。また、繊維強化樹脂組成物の溶融粘度が適度な範囲となり、成形性に優れる。
ポリアミドの相対粘度は、ポリアミドを98質量%濃硫酸に溶解して調製されたポリアミドの濃度が0.01g/mLの溶液について25℃で測定された値である。
【0042】
(ポリエステル)
ポリエステルとしては、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と、ジオールまたはそのエステル形成性誘導体とを主たる原料とする縮合反応によって得られた重合体もしくは共重合体、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0043】
ジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等)、脂肪族ジカルボン酸(アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸等)、脂環式ジカルボン酸(1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等)、これらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
【0044】
ジオールとしては、炭素数2〜20の脂肪族グリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール等)、分子量400〜6,000の長鎖グリコール(ポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等)、これらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
【0045】
ポリエステルの具体例としては、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレンナフタレ−ト、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/5−ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリブチレン(テレフタレート/5−ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリエチレンナフタレ−ト、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0046】
ポリエステルとしては、繊維強化樹脂組成物の成形性の点から、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレンナフタレ−ト、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートが好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートがより好ましい。
【0047】
ポリエステルの固有粘度は、成形品の機械的特性、繊維強化樹脂組成物の成形性の点から、0.36〜1.60dL/gが好ましく、0.52〜1.35dL/gがより好ましい。
ポリエステルの固有粘度は、ポリエステルのo−クロロフェノール溶液について25℃で測定された値である。
【0048】
(ポリフェニレンスルフィド)
ポリフェニレンスルフィドとしては、成形品の耐熱性の点から、下記構造式で表される構成単位を有する重合体が好ましく、下記構造式で表される構成単位を70モル%以上有する重合体がより好ましく、下記構造式で表される構成単位を90モル%以上有する重合体がさらに好ましい。
【0050】
ポリフェニレンスルフィドは、下記構造式で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種の構成単位を30モル%以下有していてもよい。
【0052】
ポリフェニレンスルフィドとしては、繊維強化樹脂組成物の成形性と成形品のバリア性とを兼備する点から、p−フェニレンスルフィド/m−フェニレンスルフィド共重合体(m−フェニレンスルフィド単位20%以下)が好ましい。
【0053】
ポリフェニレンスルフィドは、ポリハロゲン芳香族化合物とスルフィド化剤とを極性有機溶媒中で反応させて得られるポリフェニレンスルフィドを回収および後処理することによって、高収率で製造できる。
ポリフェニレンスルフィドの具体的な製造方法としては、(i)特公昭45−3368号公報に記載される比較的分子量の小さな重合体を得る方法、(ii)特公昭52−12240号公報または特開昭61−7332号公報に記載される比較的分子量の大きな重合体を得る方法等が挙げられる。
【0054】
(i)の方法で得られたポリフェニレンスルフィドは、(α)加熱による架橋/高分子量化処理、(β)不活性ガス雰囲気下または減圧下での熱処理、(γ)有機溶媒、熱水、酸水溶液等による洗浄処理、(δ)官能基含有化合物による活性化処理等の種々の処理を施した上で用いてもよい。
【0055】
(α)架橋/高分子量化処理の方法としては、酸化性ガス(空気、酸素等)の雰囲気下、または酸化性ガスと不活性ガス(窒素、アルゴン等)との混合ガスの雰囲気下で、加熱容器中で所定の温度にて目標とする溶融粘度が得られるまで加熱を行う方法が挙げられる。加熱処理温度は、通常170〜280℃であり、200〜270℃が好ましい。加熱処理時間は、通常0.5〜100時間であり、2〜50時間が好ましい。温度および時間をコントロールすることによって目標とする溶融粘度が得られる。加熱容器は、通常の熱風乾燥機であってもよいく、回転式または撹拌翼付の加熱装置であってもよく、効率よく、かつ均一に処理する点から、回転式または撹拌翼付の加熱装置が好ましい。
【0056】
(β)熱処理の方法としては、不活性ガス(窒素等)の雰囲気下または減圧下で、加熱容器中で所定の温度および時間にて加熱を行う方法が挙げられる。加熱処理温度は、通常150〜280℃であり、200〜270℃が好ましい。加熱処理時間は、通常0.5〜100時間であり、2〜50時間が好ましい。加熱容器は、通常の熱風乾燥機であってもよいく、回転式または撹拌翼付の加熱装置であってもよく、効率よく、かつ均一に処理する点から、回転式または撹拌翼付の加熱装置が好ましい。
【0057】
(γ)洗浄処理としては、(γ1)有機溶媒洗浄処理、(γ2)熱水洗浄処理、(γ3)酸水溶液洗浄処理等が挙げられる。洗浄処理は、2種以上を組み合わせてもよい。本発明に用いられるポリフェニレンスルフィドとしては、洗浄処理を施されたポリフェニレンスルフィドが好ましい。
【0058】
(γ1)有機溶媒洗浄処理に用いる有機溶媒としては、ポリフェニレンスルフィドを分解する作用等を有しないものが挙げられる。例えば、含窒素極性溶媒(N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、スルホキシド系溶媒(ジメチルスルホキシド等)、スルホン系溶媒(ジメチルスルホン等)、ケトン系溶媒(アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノン等)、エーテル系溶媒(ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等)、ハロゲン系溶媒(クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、クロルベンゼン等)、アルコール系溶媒(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、フェノール系溶媒(フェノール、クレゾール等)、芳香族炭化水素系溶媒(ベンゼン、トルエン、キシレン等)等が挙げられる。
有機溶媒としては、N−メチルピロリドン、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、クロロホルムが好ましい。
有機溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0059】
(γ1)有機溶媒洗浄処理の方法としては、有機溶媒中にポリフェニレンスルフィドを浸漬し、必要に応じて適宜撹拌または加熱する方法等が挙げられる。
(γ1)有機溶媒洗浄処理における温度は、特に制限はなく、常温〜300℃の範囲から任意の温度を選択すればよい。温度が高くなるほど洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃で十分効果が得られる。
有機溶媒で洗浄されたポリフェニレンスルフィドは、残留している有機溶媒を除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。
【0060】
(γ2)熱水洗浄処理に用いる水としては、熱水洗浄によるポリフェニレンスルフィドの好ましい化学的変性の効果を発現する点から、蒸留水または脱イオン水が好ましい。
(γ2)熱水洗浄処理の方法としては、所定量の水に所定量のポリフェニレンスルフィドを投入し、常圧下または圧力容器内で加熱、撹拌する方法が挙げられる。
ポリフェニレンスルフィドの量は、水よりも少ないことが好ましく、水1Lに対して200g以下がより好ましい。
【0061】
(γ2)熱水洗浄処理においては、周期表の第II族の金属元素を含む水溶液を用いることが好ましい。周期表の第II族の金属元素を含む水溶液は、前記水に、周期表の第II族の金属元素を有する水溶性塩を添加したものである。水に対する周期表の第II族の金属元素を有する水溶性塩の濃度は、0.001〜5質量%が好ましい。
周期表の第II族の金属元素としては、カルシウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛が好ましい。水溶性塩のアニオンとしては、酢酸イオン、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、炭酸イオン等が挙げられる。水溶性塩としては、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛、塩化カルシウム、臭化カルシウム、塩化亜鉛、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム等が挙げられ、酢酸カルシウムが好ましい。
周期表の第II族の金属元素を含む水溶液の温度は、130℃以上が好ましく、150℃以上がより好ましい。温度の上限は、特に制限はなく、通常のオートクレーブを用いる場合には250℃程度である。
周期表の第II族の金属元素を含む水溶液の浴比(質量比)は、ポリフェニレンスルフィド1に対し、2〜100が好ましく、4〜50がより好ましく、5〜15がさらに好ましい。
【0062】
(γ3)酸水溶液洗浄処理に用いる酸としては、ポリフェニレンスルフィドを分解する作用等を有しないものが挙げられる。例えば、脂肪族飽和モノカルボン酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等)、ハロ置換脂肪族飽和カルボン酸(クロロ酢酸、ジクロロ酢酸等)、脂肪族不飽和モノカルボン酸(アクリル酸、クロトン酸等)、芳香族カルボン酸(安息香酸、サリチル酸等)、ジカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸等)、無機酸性化合物(硫酸、リン酸、塩酸、炭酸、珪酸等)等が挙げられる。
酸としては、酢酸、塩酸が好ましい。
【0063】
(γ3)酸水溶液洗浄処理の方法としては、酸水溶液中にポリフェニレンスルフィドを浸漬し、必要に応じて適宜撹拌または加熱する方法等が挙げられる。
酸水溶液で洗浄されたポリフェニレンスルフィドは、残留している酸や塩などを除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。洗浄に用いる水は、酸水溶液洗浄によるポリフェニレンスルフィド樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない点から、蒸留水または脱イオン水が好ましい。
【0064】
(δ)活性化処理に用いる官能基含有化合物としては、酸無水物、アミン、イソシアネート、官能基含有ジスルフィド化合物等が挙げられる。
【0065】
ポリフェニレンスルフィドの灰分量は、成形時の流動性や成形サイクル等の特性を付与する点から、0.1〜2質量%が好ましく、0.2〜1質量%がより好ましく、0.3〜0.8質量%がさらに好ましい。
ポリフェニレンスルフィドの灰分量は、下記の方法によって求めたポリフェニレンスルフィド中の無機成分量である。
1)583℃で焼成、冷却した白金皿にポリフェニレンスルフィドの5〜6gを秤量する。
2)白金皿とともにポリフェニレンスルフィドを450〜500℃で予備焼成する。
3)583℃に設定したマッフル炉に白金皿とともに予備焼成したポリフェニレンスルフィドを入れ、完全に灰化するまで約6時間焼成する。
4)デシケーター内で冷却した後、秤量する。
5)下記式から灰分量を算出する。
灰分量(質量%)=(灰分の質量(g)/ポリフェニレンスルフィドの質量(g))×100
【0066】
ポリフェニレンスルフィド樹脂の溶融粘度は、成形品の耐薬品性、成形時の流動性等の特性を付与する点から、1〜2,000Pa・sが好ましく、1〜200Pa・sがより好ましく、1〜50Pa・sがさらに好ましい。
溶融粘度は、温度:300℃、剪断速度:1,000sec
−1の条件下でノズル径:0.5mmφ、ノズル長:10mmのノズルを用い、高化式フローテスターによって測定された値である。
【0067】
ポリフェニレンスルフィドのクロロホルム抽出量は、成形品の耐薬品性、成形時の流動性等の特性を付与する点から、1〜5質量%が好ましく、1.5〜4質量%がより好ましく、2〜4質量%がさらに好ましい。ポリフェニレンスルフィドのクロロホルム抽出量は、有機系低重合成分(オリゴマー)量の目安となる。
ポリフェニレンスルフィドのクロロホルム抽出量は、ポリフェニレンスルフィドの10gおよびクロロホルムの200mLを用いたソックスレー抽出によって5時間処理した時の残差量から算出された値である。
【0068】
(ポリ乳酸)
ポリ乳酸は、L−乳酸およびまたはD−乳酸を主たる構成単位とする重合体である。ポリ乳酸は、本発明の効果を損なわない範囲で、乳酸以外の他の共重合成分に基づく構成単位を有していてもよい。
他の共重合成分としては、多価カルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等が挙げられる。
【0069】
多価カルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、フマル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸等が挙げられる。
多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA、ビスフェノールにエチレンオキシドを付加反応させた芳香族多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸等が挙げられる。
ラクトンとしては、グリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトン等が挙げられる。
他の共重合成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0070】
ポリ乳酸としては、成形品の耐熱性に優れる点から、ポリ乳酸を構成する乳酸の光学純度が高い方が好ましい。ポリ乳酸を構成する乳酸のうち、L体またはD体の割合は、80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましく、95モル%以上がさらに好ましい。
【0071】
ポリ乳酸の製造方法としては、公知の方法、例えば、乳酸からの直接重合法、ラクチドを介する開環重合法等が挙げられる。
【0072】
ポリ乳酸の分子量および分子量分布は、実質的に成形が可能な範囲であれば、特に制限されない。ポリ乳酸の質量平均分子量は、1×10
4以上が好ましく、4×10
4以上がより好ましく、8×10
4以上がさらに好ましい。
ポリ乳酸の質量とは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノールを用いたGPCによって得られたポリメチルメタクリレート換算の質量平均分子量である。
【0073】
(ポリプロピレン)
ポリプロピレンとしては、プロピレン単独重合体、プロピレンとエチレンおよびまたはα−オレフィンとのランダムまたはブロック共重合体(エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体等)等が挙げられる。プロピレン単独重合体は、アイソタクティック、アタクティック、シンジオタクティック等のいずれであってもよい。
ポリプロピレンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0074】
ポリプロピレンは、芳香族ビニル系樹脂(A)と結晶性樹脂(B)との相溶性が向上し、芳香族ビニル系樹脂(A)と結晶性樹脂(B)とからなるポリマーアロイ中に分散した芳香族ビニル系樹脂(A)の粒子をより均一性が高くかつ微細に制御することが可能である点から、α,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性された変性ポリプロピレンを含むことが好ましい。
α,β−不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、ハイミック酸、ビシクロ(2,2,2)オクタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸、1,2,3,4,5,8,9,10−オクタヒドロナフタレン−2,3−ジカルボン酸、ビシクロ(2,2,1)オクタ−7−エン−2,3,5,6−テトラジカルボン酸、7−オキサビシクロ(2,2,1)ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸等が挙げられる。
α,β−不飽和カルボン酸の誘導体としては、酸無水物、エステル、アミド、イミド、金属塩等が挙げられる。例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水ハイミック酸、マレイン酸モノメチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、マレイン酸−N,N−ジエチルアミド、マレイン酸−N−モノブチルアミド、マレイン酸−N,N−ジブチルアミド、フマル酸−N,N−ジブチルアミド、マレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム等が挙げられる。
α,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、無水マレイン酸が好ましい。
α,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0075】
(ポリメチルペンテン)
ポリメチルペンテンは、4−メチルペンテン−1を主たる構成単位とする重合体である。ポリメチルペンテン中の4−メチルペンテン−1に基づく構成単位の割合は、70モル%以上が好ましい。
ポリメチルペンテンは、必要に応じて30モル%以下の他の共重合成分またはグラフト成分に基づく構成単位を有していてもよい。
ポリメチルペンテンとしては、4−メチルペンテン−1の単独重合体、または4−メチルペンテン−1と、30モル%以下のエチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、イソブチレンまたはスチレンとの共重合体が好ましい。
【0076】
ポリメチルペンテンは、芳香族ビニル系樹脂(A)と結晶性樹脂(B)との相溶性が向上し、芳香族ビニル系樹脂(A)と結晶性樹脂(B)とからなるポリマーアロイ中に分散した芳香族ビニル系樹脂(A)の粒子をより均一性が高くかつ微細に制御することが可能である点から、α,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性された変性ポリメチルペンテン樹脂を含むことが好ましい。
α,β−不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、ハイミック酸、ビシクロ(2,2,2)オクタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸、1,2,3,4,5,8,9,10−オクタヒドロナフタレン−2,3−ジカルボン酸、ビシクロ(2,2,1)オクタ−7−エン−2,3,5,6−テトラジカルボン酸、7−オキサビシクロ(2,2,1)ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸等が挙げられる。
α,β−不飽和カルボン酸の誘導体としては、酸無水物、エステル、アミド、イミド、金属塩等が挙げられる。例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水ハイミック酸、マレイン酸モノメチルエステル、フマル酸モノメチルエステル、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイン酸ジアミド、マレイン酸−N,N−ジエチルアミド、マレイン酸−N−モノブチルアミド、マレイン酸−N,N−ジブチルアミド、フマル酸−N,N−ジブチルアミド、マレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、アクリル酸カリウム等等が挙げられる。
α,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、無水マレイン酸が好ましい。
α,β−不飽和カルボン酸またはその誘導体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0077】
(繊維状充填材(C))
繊維状充填材(C)としては、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、金属繊維、有機繊維等が挙げられる。
繊維状充填材(C)としては、成形品の機械的特性(曲げ強度、たわみ率、耐衝撃性等)、外観の点から、ガラス繊維が好ましい。
【0078】
ガラス繊維としては、公知のガラス繊維を用いることができる。
ガラス繊維の形態としては、チョップドストランド、ロービング等が挙げられる。
ガラス繊維に用いられるガラスとしては、成形品の品質の点から、Eガラス、ジルコニウム元素を含む耐腐食ガラスが好ましい。
ガラス繊維の断面形状としては、円形状、円筒状、繭形状、楕円状等が挙げられる。
ガラス繊維の直径および長さは、特に制限されない。
【0079】
繊維状充填材(C)としては、マトリックス樹脂との界面特性を向上させる点から、有機処理剤で表面処理されたものが好ましい。
有機処理剤としては、アミノシラン化合物、エポキシ化合物等が挙げられる。
アミノシラン化合物およびエポキシ化合物としては、公知の物が挙げられる。
加熱減量値で示される有機処理剤の量は、繊維状充填材(C)100質量%のうち、1質量%以上が好ましい。
【0080】
(他の添加剤)
他の添加剤としては、改質剤(ただし、芳香族ビニル系樹脂(A)を除く。)、離型剤、光安定剤、熱安定剤、帯電防止剤、染料、顔料、難燃剤等が挙げられる。
【0081】
(各成分の割合)
芳香族ビニル系樹脂(A)の割合は、芳香族ビニル系樹脂(A)と結晶性樹脂(B)との合計100質量%のうち、3〜50質量%であり、5〜50質量部が好ましく、5〜40質量部がより好ましい。芳香族ビニル系樹脂(A)の割合が前記範囲の下限値以上であれば、成形品の反り変形を低減できる。芳香族ビニル系樹脂(A)の割合が前記範囲の上限値以下であれば、成形品の熱的特性(耐熱性等)が優れる。
【0082】
結晶性樹脂(B)の割合は、芳香族ビニル系樹脂(A)と結晶性樹脂(B)との合計100質量%のうち、50〜97質量%であり、50〜95質量%が好ましく、60〜95質量%がより好ましい。結晶性樹脂(B)の割合が前記範囲の下限値以上であれば、成形品の耐熱性が優れる。結晶性樹脂(B)の割合が前記範囲の上限値以下であれば、成形品の反り変形を低減できる。
【0083】
繊維状充填材(C)の量は、芳香族ビニル系樹脂(A)と結晶性樹脂(B)との合計100質量部に対して、3〜60質量部であり、5〜50質量部が好ましく、10〜50質量部がより好ましい。繊維状充填材(C)の量が前記範囲の下限値以上であれば、成形品の機械的特性(耐衝撃性、剛性等)が優れる。繊維状充填材(C)の量が前記範囲の上限値を超えると、成形品を製造することが困難である。
【0084】
(繊維強化樹脂組成物の製造)
本発明の繊維強化樹脂組成物は、芳香族ビニル系樹脂(A)と結晶性樹脂(B)と繊維状充填材(C)とを混合し、必要に応じて混練することによって製造できる。
混合装置としては、ヘンシェルミキサ、タンブラーミキサ、ナウターミキサ等が挙げられる。
混練装置としては、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサ、コニーダ等が挙げられる。
【0085】
(作用機序)
以上説明した本発明の繊維強化樹脂組成物にあっては、芳香族ビニル系樹脂(A)と結晶性樹脂(B)と繊維状充填材(C)とを特定の割合で含むため、機械的特性(耐衝撃性、剛性等)および熱的特性(耐熱性)と、寸法安定性(反り変形の低減)とが両立された成形品を得ることができる。
【0086】
<成形品>
本発明の成形品は、本発明の繊維強化樹脂組成物が成形したものである。
成形法としては、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、ブロー成形法、真空成形法、圧空成形法、カレンダー成形法、インフレーション成形法等が挙げられる。
成形法としては、量産性に優れ、寸法精度の高い成形品を得ることができる点から、射出成形法、射出圧縮成形法が好ましい。
【0087】
(成形品の用途)
本発明の成形品は、ウエルド部やヒンジ部を有する成形品、インサート成形品等の複雑な形状の成形品、または薄肉成形品に好適である。
本発明の成形品は、自動車部品、電気・電子部品、機械部品、光学部品、精密機械部品、家庭用品、建設部品等に好適であり、自動車部品、電気・電子部品に特に好適である。
【0088】
自動車部品としては、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクタ、ICレギュレータ、ライトディヤ用ポテンショメーターベース、各種バルブ(排気ガスバルブ等)、各種パイプ(燃料系パイプ、排気系パイプ、吸気系パイプ等)、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディ、キャブレタースペーサ、排気ガスセンサ、冷却水センサ、油温センサ、ブレーキパットウェアーセンサ、スロットルポジションセンサ、クランクシャフトポジションセンサ、エアーフローメータ、ブレーキバット磨耗センサ、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダ、ウォーターポンプインペラ、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビュタ、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクタ、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターロータ、ランプソケット、ランプリフレクタ、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルタ、点火装置ケース等が挙げられる。
【0089】
電気・電子部品としては、家庭電気製品部品(ビデオテープレコーダ部品、テレビ部品、アイロン部品、ヘアードライア部品、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響機器部品、音声機器(オーディオ、レーザーディスク(登録商標)、コンパクトディスク等)部品、照明機器部品、冷蔵庫部品、エアコン部品等)、事務電気製品部品(タイプライタ部品、ワードプロセッサ部品、オフィスコンピュータ関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品等)等が挙げられる。具体的には、各種ギア、各種ケース、センサ、発光ダイオードランプ、コネクタ、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサ、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナ、スピーカ、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モータ、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶ディスプレー部品、磁気ディスクドライブキャリッジ、磁気ディスクドライブシャーシ、ハードディスクドライブ部品、モーターブラッシュホルダ、パラボラアンテナ、コンピュータ関連部品等が挙げられる。
【0090】
機械部品としては、洗浄用治具、各種軸受(オイルレス軸受、船尾軸受、水中軸受等)、モータ部品、ライタ部品、タイプライタ部品等が挙げられる。
光学部品としては、顕微鏡部品、双眼鏡部品、カメラ部品等が挙げられる。
精密機械部品としては、時計部品等が挙げられる。
家庭用品としては、遊戯用器具、トイレタリー用品、娯楽用品、玩具用品等が挙げられる。
建設部品としては、化学プラント部品等が挙げられる。
他の部品としては、航空機部品等が挙げられる。
【0091】
(作用機序)
本発明の成形品は、本発明の繊維強化樹脂組成物からなるものであるため、機械的特性(耐衝撃性、剛性等)および熱的特性(耐熱性)と、寸法安定性(反り変形の低減)が両立されたものとなる。本発明の成形品は、反り変形がほとんどなく、薄肉成形品であっても大型成形品であっても低反りである。
【実施例】
【0092】
以下、具体的に実施例を示す。本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
以下、「部」および「%」は、それぞれ「質量部」および「質量%」を意味する。
【0093】
(還元粘度)
芳香族ビニル系樹脂(A)をN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させ、濃度が0.2g/dLの芳香族ビニル系樹脂(A)の溶液を調製した。芳香族ビニル系樹脂(A)の溶液について、ウベローデ粘度管を用い、25℃における還元粘度ηsp/C(単位:dL/g)を測定した。
【0094】
(分子量および分子量分布)
芳香族ビニル系樹脂(A)の質量平均分子量Mwおよび数平均分子量Mnは、下記装置を用い、下記条件でGPCによって得られたクロマトグラムについて、標準ポリマーとしてポリスチレンを用いた較正曲線によって溶出時間を分子量に換算して求めた。また、MwおよびMnから分子量分布Mw/Mnを算出した。また、芳香族ビニル系樹脂(A)の積算値50質量%分子量および積算値10質量%分子量は、下記装置を用い、下記条件でGPCによって得られたクロマトグラムから積分分子量分布曲線を作成し、積分分子量分布曲線から求めた。
GPCシステム:島津製作所社製、GP−2014、
カラム:東ソー社製、HLC−8820、
溶媒:N,N−ジメチルホルムアミド、
流速:0.35mL/分、
温度:25℃。
【0095】
(耐衝撃性)
実施例または比較例で得られたペレットを用い、ISO試験方法294に準拠して試験片を作製した。ISO179に準拠し、厚さ4mm、温度23℃でのノッチ付きシャルピー衝撃値を測定した。
【0096】
(剛性)
実施例または比較例で得られたペレットを用い、ISO試験方法294に準拠して試験片を作製した。ISO178に準拠し、温度23℃での曲げ弾性率を測定した。
【0097】
(耐熱性)
実施例または比較例で得られたペレットを用い、ISO試験方法294に準拠して試験片を作製した。ISO75に準拠し、荷重1.8MPaでの荷重たわみ温度を測定した。
【0098】
(寸法安定性)
100mm×100mm×1mmの平板金型(1点ピンゲート)および75トン射出成形機(日本製鋼所社製、型式:J75EIIP)を用い、シリンダ温度:250℃、金型温度:80℃、射出速度:150g/secの条件にて、実施例または比較例で得られたペレットから、100mm×100mm×1mmの平板成形板を得た。平板成形板の任意の角を平滑な台に固定し、24時間後にその対角の角が台から浮き上がった高さを反り量として求めた。反り量の測定は異なる2つの対角の組み合わせについてそれぞれ測定し、平均値を反り量とした。反り量が小さいほど、寸法安定性が高いことを示す。
【0099】
(アウトガス)
75トン射出成形機(日本製鋼所社製、型式:J75EIIP)を用い、シリンダ温度:260℃、金型温度:60℃の条件にて、実施例または比較例で得られたペレットから、100mm×100mm×3mmの板を成形する際に、充填樹脂量を金型内容積の約1/2に下げてショートショットになるようにした。60秒サイクルで30ショット成形した後、金型に付着したガスを目視にて確認し、下記基準にて判定した。
◎:金型に付着したガスがほとんどみられない。
〇:金型に付着したガスがかなり少なく、実用に耐え得る。
×:金型に付着したガスが多く、実用に耐えない。
【0100】
(合成例1)
芳香族ビニル系樹脂(A−1)の製造:
窒素置換した反応器に、水の120部、リン酸カルシウムの0.45部、アルケニルコハク酸カリウムの0.003部、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートの0.13部、1,1−ジ(tert−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサンの0.17部、1−メチル−4−イソプロピリデン−1−シクロヘキセンの0.25部、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンの0.25部を仕込んだ。アクリロニトリルの26部およびスチレンの74部を用意し、反応器にアクリロニトリルの全部とスチレンの一部を仕込み、スチレンの残部を逐次添加しながら、7時間かけて開始温度60℃から120℃まで昇温した。120℃で3時間反応させた後、重合物を取り出し、芳香族ビニル系樹脂(A−1)を得た。結果を表1に示す。
【0101】
(合成例2)
芳香族ビニル系樹脂(A−2)の製造:
窒素置換した反応器に、水の120部、リン酸カルシウムの0.40部、アルケニルコハク酸カリウムの0.003部、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートの0.12部、1,1−ジ(tert−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサンの0.16部、1−メチル−4−イソプロピリデン−1−シクロヘキセンの0.50部、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンの0.50部を仕込んだ。アクリロニトリルの27部およびスチレン73部からなる単量体混合物を反応器に仕込み、6時間かけて開始温度60℃から120℃まで昇温した。120℃で3時間反応させた後、重合物を取り出し、芳香族ビニル系樹脂(A−2)を得た。結果を表1に示す。
【0102】
(合成例3)
芳香族ビニル系樹脂(A−3)の製造:
窒素置換した反応器に、水の120部、リン酸カルシウムの0.40部、アルケニルコハク酸カリウムの0.003部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルの0.11部、tert−ドデシルメルカプタンの0.25部を仕込んだ。アクリロニトリルの28部およびスチレンの72部からなる単量体混合物を反応器に仕込み、5時間かけて開始温度75℃から120℃まで昇温した。120℃で3時間反応させた後、重合物を取り出し、芳香族ビニル系樹脂(A−3)を得た。結果を表1に示す。
【0103】
(合成例4)
芳香族ビニル系樹脂(A−4)の製造:
窒素置換した反応器に、水の125部、リン酸カルシウムの0.37部、アルケニルコハク酸カリウムの0.003部、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートの0.06部、1,1−ジ(tert−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサンの0.15部、1−メチル−4−イソプロピリデン−1−シクロヘキセンの0.23部、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンの0.23部を仕込んだ。アクリロニトリルの30部およびスチレンの70部を用意し、反応器にアクリロニトリルの全部とスチレンの一部を仕込み、スチレンの残部を逐次添加しながら、7時間かけて開始温度60℃から120℃まで昇温した。120℃で3時間反応させた後、重合物を取り出し、芳香族ビニル系樹脂(A−4)を得た。結果を表1に示す。
【0104】
(合成例5)
芳香族ビニル系樹脂(A−5)の製造:
窒素置換した反応器に、水の125部、リン酸カルシウムの0.50部、アルケニルコハク酸カリウムの0.003部、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートの0.07部、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルへキシルカーボネートの0.11部、tert−ドデシルメルカプタンの0.56部を仕込んだ。アクリロニトリルの24部、スチレンの30部およびメチルメタクリレートの46部を用意し、反応器にアクリロニトリルおよびメチルメタクリレートの全部とスチレンの一部を仕込み、スチレンの残部を逐次添加しながら、8時間かけて開始温度50℃から120℃まで昇温した。120℃で3時間反応させた後、重合物を取り出し、芳香族ビニル系樹脂(A−5)を得た。結果を表1に示す。
【0105】
(合成例6)
芳香族ビニル系樹脂(A−6)の製造:
窒素置換した反応器に、水の125部、リン酸カルシウムの0.55部、アルケニルコハク酸カリウムの0.003部、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートの0.06部、1,1−ジ(tert−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサンの0.22部、tert−ドデシルメルカプタンの0.17部を仕込んだ。アクリロニトリルの28部、スチレンの24部、α−メチルスチレンの37部およびN−フェニルマレイミドの11部を用意し、反応器にアクリロニトリルおよびN−フェニルマレイミドの全部とスチレンおよびα−メチルスチレンの一部を仕込み、スチレンおよびα−メチルスチレンの残部を逐次添加しながら、8時間かけて開始温度50℃から120℃まで昇温した。120℃で2時間反応させた後、重合物を取り出し、芳香族ビニル系樹脂(A−6)を得た。結果を表1に示す。
【0106】
(合成例7)
芳香族ビニル系樹脂(A−7)の製造:
窒素置換した反応器に、水の125部、リン酸カルシウムの0.55部、アルケニルコハク酸カリウムの0.003部、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートの0.07部、1,1−ジ(tert−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサンの0.22部、tert−ドデシルメルカプタンの0.19部を仕込んだ。アクリロニトリルの15部、スチレンの28部、α−メチルスチレンの43部およびN−フェニルマレイミドの14部を用意し、反応器にアクリロニトリルおよびN−フェニルマレイミドの全部とスチレンおよびα−メチルスチレンの一部を仕込み、スチレンおよびα−メチルスチレンの残部を逐次添加しながら、8時間かけて開始温度50℃から120℃まで昇温した。120℃で2時間反応させた後、重合物を取り出し、芳香族ビニル系樹脂(A−7)を得た。結果を表1に示す。
【0107】
(合成例8)
芳香族ビニル系樹脂(A−8)の製造:
窒素置換した反応器に、水の120部のうちの一部、リン酸カルシウムの0.60部、アルケニルコハク酸カリウムの0.003部、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートの0.18部、1,1−ジ(tert−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサンの0.33部、tert−ドデシルメルカプタンの0.17部を仕込んだ。アクリロニトリルの11部およびスチレンの89部からなる単量体混合物を反応器に仕込み、水の残部を逐次添加しながら、6時間かけて開始温度65℃から120℃まで昇温した。120℃で0.5時間反応させた後、重合物を取り出し、芳香族ビニル系樹脂(A−8)を得た。結果を表1に示す。
【0108】
(合成例9)
芳香族ビニル系樹脂(A−9)の製造:
窒素置換した反応器に、水の120部のうちの一部、リン酸カルシウムの0.40部、アルケニルコハク酸カリウムの0.003部、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートの0.12部、1,1−ジ(tert−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサンの0.14部、1−メチル−4−イソプロピリデン−1−シクロヘキセンの0.50部、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンの0.70部を仕込んだ。アクリロニトリルの26部およびスチレンの74部からなる単量体混合物を反応器に仕込み、水の残部を逐次添加しながら、6時間かけて開始温度60℃から120℃まで昇温した。120℃で4時間反応させた後、重合物を取り出し、芳香族ビニル系樹脂(A−9)を得た。結果を表1に示す。
【0109】
(合成例10)
芳香族ビニル系樹脂(A−10)の製造:
窒素置換した反応器に、水の125部のうちの一部、リン酸カルシウムの0.42部、アルケニルコハク酸カリウムの0.003部、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートの0.05部、1,1−ジ(tert−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサンの0.73部、tert−ドデシルメルカプタンの0.19部を仕込んだ。アクリロニトリルの20部およびスチレンの80部からなる単量体混合物を反応器に仕込み、水の残部を逐次添加しながら、6時間かけて開始温度65℃から120℃まで昇温した。120℃で3時間反応させた後、重合物を取り出し、芳香族ビニル系樹脂(A−10)を得た。結果を表1に示す。
【0110】
(合成例11)
芳香族ビニル系樹脂(A−11)の製造:
窒素置換した反応器に、水の120部、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの0.003部、ポリビニルアルコールの0.5部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルの0.11部、tert−ドデシルメルカプタンの0.24部を仕込んだ。アクリロニトリルの27部およびスチレンの73部からなる単量体混合物を反応器に仕込み、5時間かけて開始温度75℃から120℃まで昇温した。120℃で3時間反応させた後、重合物を取り出し、芳香族ビニル系樹脂(A−11)を得た。結果を表1に示す。
【0111】
(合成例12)
芳香族ビニル系樹脂(A−12)の製造:
窒素置換した反応器に、水の120部、リン酸カルシウムの0.42部、アルケニルコハク酸カリウムの0.003部、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートの0.06部、1,1−ジ(tert−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサンの0.73部、tert−ドデシルメルカプタンの0.45部を仕込んだ。アクリロニトリルの27部およびスチレンの73部を用意し、反応器にアクリロニトリルの全部とスチレンの一部を仕込み、スチレンの残部を逐次添加しながら、6時間かけて開始温度60℃から120℃まで昇温した。120℃で4時間反応させた後、重合物を取り出し、芳香族ビニル系樹脂(A−12)を得た。結果を表1に示す。
【0112】
(合成例13)
芳香族ビニル系樹脂(A−13)の製造:
窒素置換した反応器に、水の125部、リン酸カルシウムの0.39部、アルケニルコハク酸カリウムの0.003部、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートの0.03部、1,1−ジ(tert−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサンの0.06部、tert−ドデシルメルカプタンの0.54部を仕込んだ。アクリロニトリルの35部およびスチレンの65部を用意し、反応器にアクリロニトリルの全部とスチレンの一部を仕込み、スチレンの残部を逐次添加しながら、7時間かけて開始温度60℃から120℃まで昇温した。120℃で2時間反応させた後、重合物を取り出し、芳香族ビニル系樹脂(A−13)を得た。結果を表1に示す。
【0113】
(合成例14)
芳香族ビニル系樹脂(A−14)の製造:
窒素置換した反応器に、水の120部のうちの一部、リン酸カルシウムの0.60部、アルケニルコハク酸カリウムの0.003部、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートの0.18部、1,1−ジ(tert−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサンの0.33部、tert−ドデシルメルカプタンの0.17部を仕込んだ。アクリロニトリルの18部およびスチレンの82部からなる単量体混合物を反応器に仕込み、水の残部を逐次添加しながら、6時間かけて開始温度65℃から120℃まで昇温した。120℃で0.5時間反応させた後、重合物を取り出し、芳香族ビニル系樹脂(A−14)を得た。結果を表1に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
(結晶性樹脂(B))
結晶性樹脂(B)として、市販品のポリブチレンテレフタレート(ポリプラスチックス社製、ジュラネックス(登録商標)2000)を用意した。
【0116】
(無機充填材(C))
無機充填材(C)として、ガラス繊維(日本電気硝子社製、ECS03−T187)を用意した。
【0117】
(実施例1〜22、比較例1〜8)
表2〜表5に示す組成となるように各成分を混合、混練し、ペレット化して、繊維強化樹脂組成物を得た。さらに評価用の成形品を得た。結果を表2〜表5に示す。
【0118】
【表2】
【0119】
【表3】
【0120】
【表4】
【0121】
【表5】
【0122】
実施例1〜22の本発明の成形品は、反り量が少なく、剛性および耐熱性に優れていた。特に、実施例5、6、14〜17、20〜22では、反り量が少なく、実施例1〜4、10、11、17〜19では、耐熱性が良好であり、実施例19〜22では、剛性が良好であった。
【0123】
芳香族ビニル系樹脂(A)の割合が3質量%未満である比較例1、2では、反り変形を低減させる効果が小さかった。
芳香族ビニル系樹脂(A)の割合が50質量%を超える比較例3では、耐熱性に劣った。
芳香族ビニル系樹脂(A)のMw/Mnが2.0未満である比較例5〜7では、反り変形を低減させる効果が小さかった。
芳香族ビニル系樹脂(A)の積算値50質量%分子量が1×10
5未満である比較例4、6〜8では、反り変形を低減させる効果が小さかった。
また、芳香族ビニル系樹脂(A)の積算値10質量%分子量が2.5×10
4未満である比較例8では、ガス発生量が多く、実用に耐え得るものではなかった。