(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6591875
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】含水汚泥の乾燥システム
(51)【国際特許分類】
C02F 11/12 20190101AFI20191007BHJP
F26B 3/20 20060101ALI20191007BHJP
F26B 23/00 20060101ALI20191007BHJP
F26B 21/00 20060101ALI20191007BHJP
C02F 11/13 20190101ALI20191007BHJP
【FI】
C02F11/12
F26B3/20
F26B23/00 Z
F26B21/00 F
C02F11/13
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-228877(P2015-228877)
(22)【出願日】2015年11月24日
(65)【公開番号】特開2017-94268(P2017-94268A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】390004879
【氏名又は名称】三菱マテリアルテクノ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091904
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 重雄
(72)【発明者】
【氏名】山崎 正康
(72)【発明者】
【氏名】水無瀬 直史
(72)【発明者】
【氏名】小林 佳史
(72)【発明者】
【氏名】宮本 卓裕
(72)【発明者】
【氏名】安藤 賢亮
(72)【発明者】
【氏名】西澤 基広
(72)【発明者】
【氏名】広田 正幸
(72)【発明者】
【氏名】小野 恭一
(72)【発明者】
【氏名】清水 英知
【審査官】
富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−163648(JP,A)
【文献】
特開2002−310559(JP,A)
【文献】
特開昭56−045800(JP,A)
【文献】
特開2005−330712(JP,A)
【文献】
特開2013−188723(JP,A)
【文献】
特開昭58−124600(JP,A)
【文献】
特開平09−061053(JP,A)
【文献】
特開2012−206035(JP,A)
【文献】
特開2011−153810(JP,A)
【文献】
特開2008−142616(JP,A)
【文献】
米国特許第04590686(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00−11/20
F26B 1/00−25/22
B30B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
含水汚泥の貯留手段から取り出された上記含水汚泥と当該含水汚泥が乾燥された乾燥汚泥とを混合する混合機と、この混合機から排出された混合汚泥を加圧して含有水分の一部を除去する一軸圧搾機と、この一軸圧搾機から排出された脱水汚泥を第1の熱媒体による間接加熱によって加熱して水分を蒸発させる加熱部材を備えた乾燥装置と、この乾燥装置の上記加熱部材に上記第1の熱媒体を循環供給する第1の循環ラインと、この第1の循環ラインに介装されて上記乾燥装置から排出された上記第1の熱媒体を再加熱する再加熱装置と、上記乾燥装置から排出された乾燥汚泥の一部を上記混合機へ上記乾燥汚泥として供給する搬送手段とを備えてなることを特徴とする含水汚泥の乾燥システム。
【請求項2】
上記再加熱装置は、第2の熱媒体を循環させる第2の循環ラインと、この第2の循環ラインに介装されて上記第1の熱媒体を上記乾燥装置への供給温度まで加熱する第1の熱交換器と、この第1の熱交換器から排出された上記第2の熱媒体を断熱膨張させる膨張弁と、この膨張弁を経た上記第2の熱媒体を上記乾燥装置から排出される蒸気によって加熱する第2の熱交換器と、この第2の熱交換器から排出された上記第2の熱媒体を上記第1の熱交換器への供給温度まで加熱する補助加熱手段とを備えてなることを特徴とする請求項1に記載の含水汚泥の乾燥システム。
【請求項3】
上記補助加熱手段は、上記第2の熱交換器から排出された上記第2の熱媒体を断熱圧縮して昇温させる電動の圧縮機であることを特徴とする請求項2に記載の含水汚泥の乾燥システム。
【請求項4】
上記第1の熱媒体は蒸気であり、かつ上記第2の熱媒体はフロンであることを特徴とする請求項2または3に記載の含水汚泥の乾燥システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水汚泥等の含水汚泥を乾燥して燃料化するための含水汚泥の乾燥システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、下水処理場から排出される下水汚泥等の含水汚泥の処理法として、環境汚染防止上の制約や処分場の枯渇の問題等から、焼却処分が多く採用されている。そして、上記焼却処分の一例として、セメントクリンカー製造用の乾式キルン内において上記焼却処分を行うことが実施されている。
【0003】
このようなセメントクリンカー製造用の設備を利用して含水汚泥を処理する方法として、下記特許文献1においては、有機性汚泥に油を混入して流動性を保ちながら加熱して汚泥中の水分を蒸発除去し、得られた乾燥汚泥をセメントクリンカーの焼成工程に投入処理する有機性汚泥の処理方法が提案されている。
【0004】
ところが、焼却に先だって含水汚泥を乾燥する方法を用いた場合には、特に当該下水汚泥を加熱して水分を蒸発させる工程や乾燥汚泥を搬送する過程において、下水汚泥に含まれるアンモニア等による悪臭が発生し、周辺環境を悪化させる虞がある。
【0005】
そこで、下記特許文献2においては、原料ミルで粉砕されたセメント原料を予熱するプレヒータと、このプレヒータが窯尻部分に接続されて、予熱された上記セメント原料を焼成する乾式キルンとを有するセメントクリンカーの製造設備に併設される下水汚泥の処理設備であって、含水スラリー状の下水汚泥を貯留する汚泥タンクと、この汚泥タンク内の下水汚泥を圧送する圧送ポンプと、この圧送ポンプに接続されて下水汚泥を乾式キルン内へと直接投入する配管とを備えてなり、かつ上記配管が窯尻部または仮焼炉に接続されていることを特徴とする含水汚泥の処理設備が提案されている。
【0006】
当該含水汚泥の処理設備を用いた下水汚泥の処理によれば、下水汚泥を乾燥や添加剤添加等の前処理を施すことなく、また環境汚染の問題もなく、既存の乾式キルンで直接焼却処理することにより、効率的かつ低コストに最終処分することができるとともに、下水汚泥を配管圧送して直接焼却処理しているので、臭気等の問題が生起することもないという効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭58−92718号公報
【特許文献2】特許第3246509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、下水汚泥を、そのまま乾式キルン内に投入する上記処理設備にあっては、乾式キルン内において、セメント原料焼成用の燃料の一部が上記下水汚泥の水分の蒸発用に消費されることになるために、上記燃料の供給量を増やす必要があり、この結果セメント製造設備から排ガスとして廃棄される熱量が増加して全体としての熱効率か低下するという問題点があった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、焼却設備における熱効率を低下させることなく、かつ臭気等の問題を生じることなく効率的に含水汚泥を乾燥して焼却処理することが可能になる含水汚泥の乾燥システムを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の含水汚泥の乾燥システムは、含水汚泥の貯留手段から取り出された上記含水汚泥と当該含水汚泥が乾燥された乾燥汚泥とを混合する混合機と、この混合機から排出された混合汚泥を加圧して含有水分の一部を除去する一軸圧搾機と、この一軸圧搾機から排出された脱水汚泥を第1の熱媒体による間接加熱によって加熱して水分を蒸発させる加熱部材を備えた乾燥装置と、この乾燥装置の上記加熱部材に上記第1の熱媒体を循環供給する第1の循環ラインと、この第1の循環ラインに介装されて上記乾燥装置から排出された上記第1の熱媒体を再加熱する再加熱装置と、上記乾燥装置から排出された乾燥汚泥の一部を上記混合機へ上記乾燥汚泥として供給する搬送手段とを備えてなることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記再加熱装置が、第2の熱媒体を循環させる第2の循環ラインと、この第2の循環ラインに介装されて上記第1の熱媒体を上記乾燥装置への供給温度まで加熱する第1の熱交換器と、この第1の熱交換器から排出された上記第2の熱媒体を断熱膨張させる膨張弁と、この膨張弁を経た上記第2の熱媒体を上記乾燥装置から排出される蒸気によって加熱する第2の熱交換器と、この第2の熱交換器から排出された上記第2の熱媒体を上記第1の熱交換器への供給温度まで加熱する補助加熱手段とを備えてなることを特徴とするものである。
【0012】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、上記補助加熱手段が、上記第2の熱交換器から排出された上記第2の熱媒体を断熱圧縮して昇温させる電動の圧縮機であることを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の発明において、上記第1の熱媒体が蒸気であり、かつ上記第2の熱媒体がフロンであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1〜4のいずれかに記載の発明によれば、含水汚泥を当該乾燥システムによって乾燥し、得られた乾燥汚泥を焼却設備において焼却処理することができるために、含水汚泥を乾燥処理することなく直接焼却設備に投入する場合と比較して、当該焼却設備から排出されて廃棄される熱量を極力少なくすることができ、よって全体としての熱効率を向上させることができる。
【0015】
特に、本発明においては、下水汚泥の貯留手段から取り出された下水汚泥と当該下水汚泥が乾燥された乾燥汚泥とを混合して、得られた混合汚泥を一軸圧搾機によって加圧することにより含有水分の一部を除去した後に、上記混合汚泥を乾燥装置に投入しているために、乾燥装置において直接下水汚泥を乾燥するよりも乾燥に要する熱量を低減させることができ、一層の熱効率を向上させることができる。
【0016】
しかも、上記一軸圧搾機によって含有水分の一部を除去する際に、下水汚泥に含まれていた塩素分(NaCl)も水分とともに除去することができるために、最終製品としての乾燥汚泥を乾式キルンに投入して燃料の一部として利用した場合にも、上記乾式キルン内に持ち込まれた上記塩素分に起因してプレヒータの閉塞等の弊害が生じることを抑止することができる。
【0017】
ちなみに、一般的に下水汚泥は、予め下水処理場において高圧のフィルタープレスやスクリュープレス等の脱水装置によって脱水された上で搬送されているが、上記脱水装置によっては、含水率を80%以下に低下させることが困難であった。これは、下水汚泥のような活性汚泥は、加圧脱水された際に表面がゲル状になり、この結果更なる水分の排水が封じられるためと推測される。
【0018】
これに対して、本願発明においては、先ず乾燥装置から排出された乾燥汚泥の一部を戻りラインから混合機において下水汚泥と混合する乾燥汚泥として供給し、当該混合機で両者を充分に混合することにより、上記混合時の摩擦によって下水汚泥表面のゲル状を破壊した上で、上記フィルタープレスやスクリュープレス等の他の脱水装置に比べて遙かに面圧の高い一軸圧搾機によって加圧しているために、上記下水汚泥に含まれていた水分を更に除去することができる。
【0019】
また、従来は、下水汚泥等の含水汚泥を乾燥させる際に、燃焼炎等によって直接乾燥しており、この結果上記含水汚泥から蒸発した蒸気に燃焼ガスも加わって排ガス量が増加する。このため、当該排ガスを、コンデンサーによってドレン化させて浄化処理を施したうえで河川に排水処理する際に、上記排ガスに含まれていた熱も無駄に廃棄されていた。
【0020】
これに対して、本発明においては、乾燥装置内において、間接加熱によって上記含水汚泥中の水分を蒸発させているために、乾燥装置から取り出される排ガスは含水汚泥から蒸発した蒸気のみになる。加えて、上述したように、乾燥装置には、予め一軸圧搾機において下水汚泥から含有水分の一部が除去された脱水汚泥を供給している。
【0021】
このため、上記排ガスをドレン化させて浄化処理する際に、発生するドレン量を少なくすることができ、よって当該浄化処理が容易になるとともに、特に上記含水汚泥が下水汚泥である場合には、上記排ガスの臭気対策が容易になるとともに、当該排ガスからアンモニア分を分離して別途利用することも可能になる。
【0022】
さらに、請求項2に記載の発明においては、乾燥装置内において含水汚泥を循環供給される第1の熱媒体を用いた間接加熱によって当該含水汚泥に含まれる水分を蒸発させるとともに、再加熱装置の第2の熱交換器において、上記乾燥装置から排出された排ガス(蒸気)も上記第1の熱媒体を再加熱するための熱源の一部として利用しているために、上記含水汚泥の乾燥における熱効率を一段と高めることができる。
【0023】
なお、乾燥装置内で下水汚泥と熱交換して排出された第1の熱媒体を、再加熱装置において上記乾燥装置において必要とされる温度まで昇温させるためには、下水汚泥から蒸発した蒸気のみでは熱量が不足するために、当該不足分を補うための補助加熱手段が必要になる。
【0024】
上記補助加熱手段としては、補助ボイラや焼却設備から排出される排ガスの一部等を用いることが可能であるが、例えば請求項3に記載の発明のように、第2の熱交換器から排出された第2の熱媒体を断熱圧縮して昇温させる電動の圧縮機を用いれば、補助ボイラの大掛かりな設備を要することなく、設備全体がコンパクトになるとともに、一層熱効率を向上させることができる。加えて、電動モータの回転数を制御することにより、第1の熱媒体の温度も容易に制御することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態を示す概略構成図である。
【
図2】
図1の補助加熱手段を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1および
図2は、本発明に係る含水汚泥の乾燥システムの一実施形態を示すもので、図中符号4は、ダンプトラック等の運搬車によって搬送されてき水分が約80重量%の下水汚泥が投入されるホッパである。
そして、このホッパ4の下部には、当該ホッパ4から排出された下水汚泥を搬送するとともに、この下水汚泥と後述する乾燥装置1で乾燥された乾燥汚泥とを混合する混合機21が配置され、この混合機21の下流側に、一軸圧搾機22が設けられている。
【0027】
この一軸圧搾機22は、上記下水汚泥が載置される堅固な金網と、この金網上の下水汚泥を押圧する電動または油圧駆動のシリンダとから概略構成されたものである。そして、この一軸圧搾機22の下流側に、圧搾されて水分の一部が除去された脱水汚泥を乾燥するための乾燥装置1が配置されている。
【0028】
この乾燥装置1は、両端面が塞がれた円筒状の本体1aの内部に、加熱部材2が図示されない電動モータによって回転自在に設けられている。この加熱部材2は、主軸2aに複数枚の円板型撹拌翼(以下、ディスクと略称する。)2bが軸線方向に等間隔をおいて固定されたもので、各々のディスク2bの外周には、処理物(本実施形態においては下水汚泥)の掻き揚げと移送を目的とした撹拌羽根が取り付けられている。
【0029】
この加熱部材2は、主軸2aおよびディスク2bともに内部が中空に形成されており、乾燥装置1の本外1aから外方に延出する主軸2aの両端部には、それぞれロータリージョイントを介して蒸気(第1の熱媒体)の循環ライン(第1の循環ライン)3における供給側3aおよび排出側3bが接続されている。
【0030】
また、蒸気の排出側3bが接続されている側の本体1aの上部に、上記一軸圧搾機22の排出部からこの乾燥装置1の内部に下水汚泥を供給するための原料投入口5が設けられている。他方、蒸気の供給側3aが接続されている側の本体1aの側面には、乾燥処理された乾燥汚泥を側面オーバーフロー方式によって外部に排出するためのシュート6が設けられている。そして、このシュート6の排出口には、上記乾燥汚泥の一部を混合機21へと搬送するための搬送手段23が設けられている。
【0031】
また、乾燥装置1の本体1aの上端部には、内部で加熱部材2によって加熱されることにより下水汚泥から発生した蒸気を排出するための排気管7が接続されている。この排気管7には、蒸気に同伴したダスト類を捕集するための集塵装置8が介装されている。この集塵装置8としては、バグフィルタやシンターラメラーフィルタ(日鉄鉱業株式会社の登録商標)が好適である。また、集塵装置8には、集塵されたダスト類を再度乾燥装置1に戻すための戻り管9が設けられている。
【0032】
そして、蒸気の循環ライン3には、本体1aから排出されたドレンを含む蒸気を再加熱するための再加熱装置10が介装されている。
この再加熱装置10は、
図2に示すように、フロン(第2の熱媒体)を循環させる循環ライン(第2の循環ライン)11と、この循環ライン11に介装されて循環ライン3の蒸気を乾燥装置1への供給温度まで加熱する凝縮器(第1の熱交換器)12と、この凝縮器12から排出されたフロンを断熱膨張させる膨張弁13と、この膨張弁13を経たフロンを乾燥装置1から排気管7を通じて排出される蒸気によって加熱する蒸発器(第2の熱交換器)14と、この蒸発器14から排出されたフロンを断熱圧縮して凝縮器12への供給温度まで加熱する圧縮機(補助加熱手段)15とから概略構成されたものである。なお、図中符号16は、圧縮機15を回転駆動するための電動モータである。
【0033】
また、蒸発器14においてフロンを加熱した蒸気は、ドレンとなって排出管7aからドレンタンク17に導入されている。そして、このドレンタンク17において、同伴したアンモニアを含む空気が分離され、上部の排気管18から取り出されるようになっている。
【0034】
他方、ドレンタンク17において気体分が分離されたドレンは、
図1および
図2に示すように、排水管19から分離膜20を通されたうえで、工業用水として供給されるようになっている。なお、この分離膜20としては、ナノろ過膜あるいは塩化ナトリウムの混入を防止し得る逆浸透膜が好適である。
【0035】
以上の構成からなる含水汚泥の乾燥システムによって下水汚泥を乾燥させるには、ダンプトラック等の運搬車によってホッパ4に投入された水分が約80重量%の下水汚泥を抜き出して混合機21に送る。これと併行して、乾燥装置1のシュート6の排出口から排出された水分が約10重量%の乾燥汚泥の一部(例えば、1/2)を、搬送手段23から混合機21に送る。
【0036】
そして、この混合機21において、上記下水汚泥と乾燥汚泥とを充分に混合する。これにより、上記混合時における下水汚泥と乾燥汚泥との摩擦によって下水汚泥表面のゲル状が破壊され、水分の流路が形成された混合汚泥となる。
【0037】
そこで、この混合汚泥を一軸圧搾機22に送り、金網上の上記混合汚泥をシリンダによって押圧して圧搾する。すると、一軸圧搾機22は、フィルタープレスやスクリュープレス等の他の脱水装置に比べて面圧が遙かに高いために、混合汚泥中に含まれている下水汚泥の水分の一部が、更に金網から落下して除去されることにより、水分が約40〜60重量%になる。
【0038】
次いで、圧搾された混合汚泥を、原料投入口5から乾燥装置1の本体1a内に導入する。これと併行して、加熱部材2の主軸2aを回転駆動させることにより、ディスク2bを回転させるとともに、再加熱装置10によって約165℃に加熱された蒸気を循環ライン3の供給側3aから加熱部材2内に供給する。
【0039】
すると、本体1a内の下水汚泥は、ディスク2bの回転に伴って順次シュート6側に向けて送られて行くとともに、その過程で加熱部材2によって間接加熱され、当該下水汚泥に含まれる水分が蒸発する。そして、最終的に所定の水分(10重量%以下)まで乾燥されて、シュート6に設けられたゲートをオーバーフローし、シュート6から下方へと排出されて行く。
【0040】
このようにしてシュート6から排出された乾燥汚泥の一部は、搬送手段23から上記混合機21へと送られるとともに、残部はセメント製造設備の乾式キルン内に投入されて燃料に一部として利用される。また、乾燥装置1において下水汚泥から蒸発した蒸気は、排気管7から集塵装置8に送られてダスト分が捕集された後に、再加熱装置10の蒸発器14に熱源として供給される。
【0041】
他方、下水汚泥の加熱によって降温した加熱部材2内の蒸気は、ドレンを含んだ約120℃の蒸気となって排出側3bから循環ライン3と送り出され、再加熱装置10の凝縮器12に導入される。そして、この凝縮器12において、循環ライン11のフロンによって再度加熱部材2への供給温度(約165℃)まで昇温されて、循環ライン3の供給側3aから乾燥装置1の加熱部材2へと供給されて行く。
【0042】
一方、凝縮器12において蒸気を加熱することによって降温したフロンは、循環ライン11に介装された膨張弁13において断熱膨張されることにより、さらに降温して蒸発器14へと送られて、排気管7から供給される蒸気と熱交換し、加熱されて蒸発する。そして、蒸発したフロンは、圧縮機15によって断熱圧縮されることにより凝縮器12へ供給すべき温度まで加熱される。このよう、フロンは、再加熱装置10内において循環ライン11を循環される。
【0043】
また、蒸発器14においてフロンを加熱した蒸気は、降温してドレンとなって排出管7aからドレンタンク17に導入される。そして、このドレンタンク17において、同伴したアンモニアを含む空気が分離され、上部の排気管18から取り出される。このようにしてアンモニア分が除去されたドレンは、ドレンタンク17の排水管19から分離膜20を通され、残渣分が除去された後に、別途工業用水として供給されて行く。
【0044】
以上説明したように、上記構成からなる含水汚泥の乾燥システムによれば、下水汚泥を当該乾燥システムによって乾燥し、得られた乾燥汚泥をセメント製造設備の乾式キルン内に投入して燃料の一部として利用したうえで焼却処理することができるために、下水汚泥を乾燥処理することなく直接焼却設備に投入する場合と比較して、当該焼却設備から排出されて廃棄される熱量を極力少なくすることができ、よって全体としての熱効率を向上させることができる。
【0045】
特に、この乾燥システムにおいては、ホッパ4から取り出された下水汚泥と当該下水汚泥が乾燥された乾燥汚泥とを混合して、得られた混合汚泥を一軸圧搾機22によって加圧することにより含有水分の一部を除去した後に、上記混合汚泥を乾燥装置1に投入しているために、乾燥装置1において直接下水汚泥を乾燥するよりも乾燥に要する熱量を低減させることができる。
【0046】
加えて、乾燥装置1内において下水汚泥を、循環ライン3から熱媒体として循環供給される蒸気を用いた間接加熱によって当該下水汚泥に含まれる水分を蒸発させるとともに、乾燥装置1内において生成した蒸気を、さらに再加熱装置10の蒸発器14において循環ライン11のフロンを加熱することにより、加熱部材2の熱媒体となる蒸気の再加熱の熱源の一部として利用している。
【0047】
この結果、この乾燥システムによれば、上記下水汚泥の乾燥における熱効率を一段と高めることができる。
【0048】
また、一軸圧搾機22によって含有水分の一部を除去する際に、下水汚泥に含まれていた塩素分(NaCl)も水分とともに除去することができるために、最終製品としての乾燥汚泥を乾式キルンに投入して燃料の一部として利用した場合にも、上記乾式キルン内に持ち込まれた上記塩素分に起因してプレヒータの閉塞等の弊害が生じることを抑止することができる。
【0049】
さらに、この乾燥システムにおいては、乾燥装置1に、予め一軸圧搾機22において下水汚泥から含有水分の一部が除去されることにより水分が約40〜60重量%になった脱水汚泥を供給するとともに、乾燥装置1内においては、循環供給される蒸気を用いた間接加熱によって上記下水汚泥中の水分を蒸発させているために、乾燥装置1から取り出される排ガスは下水汚泥から蒸発した蒸気のみになる。
【0050】
このため、上記排ガスをドレン化させて浄化処理する際に、発生するドレン量を少なくすることができ、よって当該浄化処理が容易になる。
【0051】
また、得られた乾燥汚泥は、石炭等の化石燃料よりも窒素分を多く含有するために、例えばセメント製造設備における乾式キルンにおいて焼却処理する場合には、高温燃焼時にサーマルNO
Xが発生するが、この乾燥システムにおいては、ドレンタンク17において、分離したドレン中に含まれるアンモニア分を上記セメント製造設備における脱硝剤として有効に活用することができる。
【0052】
さらに、再加熱装置10における補助加熱手段として電動モータ16によって駆動される圧縮機15を用いているために、補助ボイラ等の大掛かりな設備を要することなく、設備全体がコンパクトになるとともに、一層熱効率を向上させることができる。また、電動モータ16の回転数を制御することにより、フロンの温度を調節することができ、よって加熱部材2に供給する蒸気の温度も容易に制御することが可能になる。
【0053】
なお、上記実施形態においては、含水汚泥として下水汚泥を用いた場合についてのみ説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、あらゆる性状の含水汚泥の乾燥に用いることができる。また、この乾燥システムにおいて得られた乾燥汚泥は、上述したセメント製造設備における乾式キルンに拘わらず、様々な焼却設備において焼却処理あるいは燃料の一部としての利用を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 乾燥装置
2 加熱部材
3 蒸気(第1の熱媒体)の循環ライン(第1の循環ライン)
4 ホッパ(貯留手段)
7 蒸気の排気管
10 再加熱装置
11 フロン(第2の熱媒体)の循環ライン(第2の循環ライン)
12 凝縮器(第1の熱交換器)
13 膨張弁
14 蒸発器(第2の熱交換器)
15 圧縮機(補助加熱手段)
16 電動モータ
21 混合機
22 一軸圧搾機
23 乾燥汚泥の搬送手段