(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
外表面のうち非現像領域で且つクリーニング器との接触領域にマーキングが形成された円筒状基体と、前記円筒状基体上に形成された光導電層と、を備えた電子写真感光体と、前記電子写真感光体の前記外表面に接触する前記クリーニング器と、
前記電子写真感光体の回転方向において、前記クリーニング器よりも下流側に位置し、前記マーキングを検出可能なセンサと、
前記電子写真感光体の回転方向において、前記クリーニング器よりも下流側に位置している除電器と、
前記除電器と前記センサとの間に位置する遮蔽部材と、を備える画像形成装置。
前記電子写真感光体は、前記円筒状基体と前記光導電層との間に形成された電荷注入阻止層と、前記光導電層上に形成された表面層と、をさらに備える、請求項1〜3のいずれかに記載の画像形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態に係る電子写真感光体および画像形成装置について、図面を参照しつつ説明する。
【0010】
<電子写真感光体>
図2は、
図1に示した画像形成装置を構成する感光体の軸方向における断面図である。なお、
図2は、画像形成装置1を、感光体2の軸方向(長尺方向)に沿って切断した時の断面を模式的に示している。
【0011】
本実施形態に係る感光体2は、
図2に示すように、円筒状の基体10の外周面に、耐圧層11、電荷注入阻止層12および光導電層13を順次形成しており、光導電層13上には表面層14が被着されている。感光体2は、円筒状に形成されている。また、感光体2は、円筒形状の中心軸を回転軸として自転するものである。
【0012】
(基体10)
基体10は、耐圧層11の支持体となるものであり、少なくとも表面は導電性を有する。基体10は、例えばアルミニウム(Al)、ステンレス(SUS)および銀(Ag)などの金属材料によって形成される。また、基体10は、樹脂またはセラミックスなどの絶縁体の表面に、例示した金属材料などを膜状に被着したものであってもよい。
【0013】
(耐圧層11)
耐圧層11は、基体10の表面に形成される。例えば、アルミニウム基板に成膜された膜は帯電器により帯電させる
。その際に、
電荷注入阻止層12が電荷注入を阻止
するが、異常な印加があった場合に、
電荷注入阻止層12が放電破壊されることを抑制する役割を有する。耐圧層11の材料としては例えばSiN等が挙げられる。
【0014】
(電荷注入阻止層12)
電荷注入阻止層12は、基体10からのキャリア(電子)の注入を阻止する役割を有する。電荷注入阻止層12は、例えばアモルファスシリコン(a−Si)系材料で形成される。また、電荷注入阻止層12は、例えばアモルファスシリコン(a−Si)にドーパントとしてホウ素(B)、窒素(N)および酸素(O)を含有させる。電荷注入阻止層12の厚みは、例えば2μm以上10μm以下とされている。
【0015】
(光導電層13)
光導電層13は、レーザ光などの光照射によってキャリアを発生させる役割を有する。光導電層13は、例えばアモルファスシリコン(a−Si)系材料およびアモルファスセレン(a−Se)系材料で形成されている。本実施形態の光導電層13は、アモルファスシリコン(a−Si)ならびにアモルファスシリコン(a−Si)に炭素(C)、窒素(N)および酸素(O)などを加えたアモルファスシリコン(a−Si)系材料で形成されており、ドーパントとしてホウ素(B)を含有している。
【0016】
光導電層13の厚みは、使用する光導電性材料および所望の電子写真特性に応じて適宜
設定される。例えば、アモルファスシリコン(a−Si)系材料を用いて光導電層13を形成する場合には、光導電層13の厚みは、例えば5μm以上100μm以下に設定される。
【0017】
(表面層14)
表面層14は、光導電層13の表面を保護する役割を有するものである。表面層14は、画像形成装置1内での摩擦による摩耗に対して耐性の高い非晶質炭素、つまりアモルファスカーボン(a−C)で形成されている。表面層14の厚みは、例えば0.5μm以上2.0μm以下に設定される。
【0018】
以上のような、感光体2における耐圧層11、電荷注入阻止層12、光導電層13および表面層14は、例えばプラズマCVD装置を用いて形成される。
【0019】
図3は、
図1に示した画像形成装置の感光体と受発光素子モジュールとの位置関係を示す図である。
【0020】
感光体2の表面は、
図3に示すように、現像器5によって印画される現像領域R1と、印画されない非現像領域R2を有している。非現像領域R2は、クリーニングブレード20と接触し、感光体2の表面に付着する残トナーが除去される第3領域R3を有し、また、クリーニングブレード20の端部より外側の領域に第4領域R4を有する。
【0021】
マーキング部10aは、感光体2の基体10の外表面であって第3領域R3に位置する。なお、第3領域R3には、露光器4の端部が含まれるが、マーキング部10aの位置は、露光器4の端部の内側、外側、あるいは内外に跨っていても問題ない。
【0022】
マーキング48の加工方法としては、レーザ加工を用いればよいが、その他の微細加工を用いても良い。マーキング48は、トナー等の汚染による影響を受けにくく、読み取り可能であれば、形状を問わない。例えば、レーザで基体10の表面に幅の異なる線を加工するケースが挙げられ、この場合においても、加工された部分の反射光が、非加工部と異なることから、多少加工深さが変わっても、トナーが付着する等の汚染がなければ、読み取ることができる。
【0023】
ここで、本明細書において、個体識別情報とは、例えば、円筒状基体の製造に使用する金属管の製造トレサビリティー情報(例えば、材料情報、インゴット情報、生産日等)、円筒状基体の加工情報(例えば、加工条件、加工機。生産日等)、および、個体識別番号などを含むものであり、それらの情報が円筒状基体にマーキングされる。また、感光体位置情報とは、印画に使用する部分の特性を位置限定するための基準点を示す情報、および感光体表面の特性ムラを補正するための位置情報などを含むものであり、それらの情報を上述のような個体識別情報のマーキングとともに円筒状基体にマーキングしておけばよい。
【0024】
<画像形成装置>
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の断面図である。画像形成装置1を、感光体2の軸方向に直交する方向に沿って切断した時の断面を模式的に示している。また、
図1中の矢印Aは、感光体2の回転方向を示している。
【0025】
本実施形態に係る画像形成装置1は、画像形成方式としてカールソン法を採用したものである。そして、画像形成装置1は、
図1に示すように、感光体2、帯電器3、露光器4、現像器5、転写器6、定着器7、クリーニング器8、除電器9およびセンサ21を備えている。本実施形態においては、センサ21として、受発光素子モジュールを例に説明を行なう。
【0026】
(感光体2)
感光体2は、上述の通りである。
【0027】
(帯電器3)
帯電器3は、感光体2の表面を帯電する役割を有する。帯電器3は、例えば芯金を導電性ゴムあるいはPVDF(ポリフッ化ビニリデン)によって被覆して構成される接触型帯電器が使用される。また、帯電器3は、放電ワイヤを備える非接触型帯電器(例えばコロナ帯電器)を採用してもよい。
【0028】
(露光器4)
露光器4は、感光体2に静電潜像を形成する役割を有する。具体的には、露光器4は、画像信号に応じて特定波長(例えば630nm以上780nm以下)の露光光(例えばレーザ光)を感光体2に照射することによって、帯電状態にある感光体2の露光光の照射部分の電位を減衰させて静電潜像を形成する。露光器4としては、例えば複数のLED素子(波長は例えば600nm以上800nmに設定される。)を配列させてなるLEDヘッドを採用することができる。
【0029】
(現像器5)
現像器5は、感光体2の静電潜像を現像してトナー像を形成する役割を有するものである。現像器5は、
図1に示すように、現像剤(トナー)Tを磁気的に保持する磁気ローラ15を備えている。
【0030】
現像剤Tは、感光体2の表面上に形成されるトナー像を構成するものであり、現像器5において摩擦帯電する。現像剤Tとしては、例えば、磁性キャリアおよび絶縁性トナーを含んでなる2成分系現像剤と、磁性トナーを含んでなる1成分系現像剤とが挙げられる。
【0031】
磁気ローラ15は、感光体2の表面(現像領域)に現像剤を搬送する役割を有するものである。磁気ローラ15は、現像器5において摩擦帯電した現像剤Tを一定の穂長に調整された磁気ブラシの形で搬送する。この搬送された現像剤Tは、感光体2の現像領域において、静電潜像との静電引力によって感光体2の表面に付着してトナー像を形成する(静電潜像を可視化する)。トナー像の帯電極性は、正規現像によって画像形成が行なわれる場合には感光体2の表面の帯電極性と逆極性とされ、反転現像によって画像形成が行なわれる場合には感光体2の表面の帯電極性と同極性とされる。
【0032】
図3は、
図1に示した画像形成装置の感光体と
センサとしての受発光素子モジュールとの位置関係を示す図である。
【0033】
(転写器6)
転写器6は、感光体2と転写器6との間の転写領域に供給された記録媒体Pに、感光体2のトナー像を転写する役割を有するものである。転写器6は、
図1に示すように、転写用チャージャ16および分離用チャージャ17を備えている。転写器6では、転写用チャージャ16において記録媒体Pの背面(非記録面)がトナー像とは逆極性に帯電され、この帯電電荷とトナー像との静電引力によって、記録媒体P上にトナー像が転写される。また、転写器6では、トナー像の転写と同時的に、分離用チャージャ17において記録媒体Pの背面が交流帯電され、記録媒体Pが感光体2の表面から速やかに分離させられる。
【0034】
(定着器7)
定着器7は、記録媒体Pに転写されたトナー像を記録媒体Pに定着させる役割を有する
ものであり、一対の定着ローラ19を備えている。定着ローラ19は、例えば金属ローラ上に四フッ化エチレンなどで表面被覆したものである。定着器7では、一対の定着ローラ19の間を通過させる記録媒体Pに対して熱および圧力などを作用させることによって、記録媒体Pにトナー像を定着させることができる。
【0035】
(クリーニング器8)
クリーニング器8は、感光体2の表面に残存するトナーを除去する役割を有するものであり、クリーニングブレード20を備えている。クリーニングブレード20は、感光体2の表面から残留トナーを掻きとる役割を有するものである。クリーニングブレード20は、例えばポリウレタン樹脂を主成分としたゴム材料で形成される。
【0036】
(除電器9)
除電器9は、感光体2の表面電荷を除去する役割を有するものであり、特定波長(例えば600nm以上800nm以下)の光を出射可能とされている。除電器9は、例えばLEDなどの一列に配列された複数の発光部9aを有しており、複数の発光部9aによって感光体2の表面の軸方向全体を光照射することにより、感光体2の表面電荷(残余の静電潜像)を除去するように構成されている。
【0037】
感光体2の近傍周辺に、
図1に示すように、感光体2の回転方向に沿って、帯電器3、露光器4、現像器5、転写器6、クリーニング器8および除電器9が、順次配置されている。なお、受発光素子モジュール21は、次に説明するような位置に配置されればよい。
【0038】
(受発光素子モジュール
(センサ)21)
図7は、
図1に示した画像形成装置を構成する
センサとしての受発光素子モジュールの断面図である。
【0039】
受発光素子モジュール21は、
図7に示すように、配線基板22と、配線基板22上に配された発光部(発光素子)23および受光部(受光素子)24とを有している。
【0040】
そして、受発光素子モジュール21は、発光素子23から感光体2に光を照射し、感光体2で反射した反射光を受光素子24で受光することによって、反射光の光強度の変化からマーキング48の情報を読み取ることができる。
【0041】
具体的には、受発光素子モジュール21の発光素子23から出射した光は、感光体2の表面層14、光導電層13、電荷注入阻止層12および耐圧層11を通過して、基体10の表面にて反射し、再び表面層14などを通過して受発光素子モジュール21の受光素子24にて受光される。このとき、基体10のうちマーキング48が形成された部分とマーキング48が形成されていない部分とにおける反射光の強度の変化を読み取ることによって、感光体2の個体識別情報および感光体面内位置情報を得ることができる。これらの情報と事前に準備される感光体の面内特性ムラ情報と
が関連づけされることで、その情報を基に印画のための条件を調整し、均一な画像品質を得ることができる。
【0042】
なお、印画のための調整とは、例えば感光体2の表面の光感度特性ムラ(例えば、光導電層
13の感度のムラおよび表面層
14の膜厚ムラなど)に対して、感光体2の面内位置情報および面内特性ムラ情報に基づいて、光感度が遅い部分では露光量を強く、光感度が速い部分では露光量を弱くすることで面内濃度ムラ
を改善することなどが挙げられる。また、感光体2の基体10の寸法精度によっては、磁気ローラ15との間隔が均一にはならずに濃度ムラが生じる可能性があるが、これに対しても感光体2の面内位置情報および面内特性ムラの寸法情報に基づいて、現像電位の調整を行うことで面内濃度ムラ
を改善することが可能となる。
【0043】
なお、感光体2の基体10の外表面にマーキング48を形成することによって、内面側の場合に感光体の両端面に取り付けられるフランジなどによってマーキング48を正確に検出できないということを抑制することが可能となる。また、フランジにマーキングを行なう場合と比べて、基体10の表面に各種層を成膜する前からのトレサビリティー情報を確認することが可能となり、また、感光体2の面内位置情報を得ることも可能となる。
【0044】
次に、受発光素子モジュール21の感光体2の回転方向における配置としては、
図1に示すように、感光体2の表面のトナー等の汚れによる読み取り不良を抑制する観点から、クリーニング器
8から現像器
5までの間に設けることができる。なお、帯電器
3の近傍は、帯電のための放電による放電生成物の汚染が生じ得ることから、それを抑制する観点からは帯電器
3の近傍以外の位置に配置すればよい。なお、
図1においては、除電器9に配置された受発光素子モジュール21aおよび露光器4に配置された受発光素子モジュール21bを示しているが、いずれか一方を設ければよい。また、受発光素子モジュール21は、除電器9および露光器4に配置される場合において、それらに対して感光体
2の回転
方向の上流側、中央部および下流側のいずれに配置されてもよい。
【0045】
図3は、
図1に示した画像形成装置の感光体と受発光素子モジュールとの位置関係を示す図である。
【0046】
また、受発光素子モジュール21の感光体2の軸方向における配置としては、
図3に示すように、符号21eで示すように第3領域R3に配されるようにすればよい。
【0047】
図4および
図5は、受発光素子モジュール21の基板25に配置される発光素子23および受光素子24と、感光体2の基体10に形成されたマーキング48a、48bとの位置関係を示す図であり、感光体2は、図において上から下へと回転するものとする。
【0048】
マーキング48は、受光強度、パターンを事前にデータ化しておけば、クリーニングブレード20の損傷やトナーおよびトナー成分の付着による読み取り不良を生じなければ、その形状を特定しなくて良い。
図4に示すように、2次元のマーキングであれば、マーキング48aのように感光体2の回転方向に配置し、発光素子23および受光素子24も感光体2の回転方向に並べて配置すれば読み取りやすい。画像形成装置1は、印画速度を印画品質によって変更する場合があるため、2次元のマーキングの場合は、感光体2の線速度情報を反映すればよい。
【0049】
図5は、
図4と異なり、発光素子23および受光素子24が感光体2の軸方向に配置されたものである。このように、感光体2の軸方向に発光素子23および受光素子24を配置した場合は、感光体2のR面の影響が少なく反射光の検知が可能となる。発光素子23および受光素子24の配置は、どちらが感光体2の端部側に配置されても良い。除電器9および露光器4に設置した場合には、除電器9および露光器4からの漏れ光の影響を抑制あるいは低減する観点から、受光素子24を感光体2の端部側に配置すればよい。また、感光体2の軸方向に発光素子23および受光素子24を配置した場合は、マーキング48は、マーキング48bのようなQRコード
(登録商標)形状のものであっても良い。
【0050】
図6は、
図1に示した画像形成装置を構成する感光体の基体におけるマーキングと、除電器に設けられた受発光素子モジュールとの位置関係を示す断面図である。
【0051】
発光素子23から出射した光は、感光体2の基体10まで届き、基体10で反射した反射光が受光素子24に届く必要があるため、感光体2の膜厚や膜構成を考慮して、比較的長い波長とすればよい。除電器9の発光部9aからの光が、マーキング48の位置まで届かない場合においては、発光素子23から出射してマーキング48で反射した反射光が受
光素子24で読み取れればよいが、除電器9の発光部9aからの光がマーキング48の位置に届く場合は、除電器9の発光部9aからの光よりも長い波長を選択すればよい。
【0052】
また、除電器9の発光部9aからの光の影響を受けないように、受発光素子モジュール21を発光部9aから離して配置すればよい。さらに、除電器9の発光部9aからの漏れ光が、受光素子24における受光に影響がある場合には、受発光素子モジュール21と除電器9の発光部9aとの間に、遮蔽部材47を設けることができる。さらに、除電器9の発光部9aからの漏れ光の影響が大きく、遮蔽部材47も配置できない場合には、除電器9の消灯時に読み取る方法をとればよい。
【0053】
(受発光素子モジュールの構成について)
なお、
図7は、
図1で示した画像形成装置1の断面のうち受発光素子モジュール21の部分を拡大して示している。なお、説明の便宜上、
図7において直交座標系(X,Y,Z)を定義し、Z軸方向の正側を上方とする。また、
図1に示した受発光素子モジュール21の向きと、
図7に示した受発光素子モジュール21の向きとは、一致するものではない。
【0054】
配線基板22は、発光素子23および受光素子24が実装されるものである。そして、配線基板22は、外部装置に電気的に接続されて、例えば発光素子23および受光素子24に電圧を印加する。配線基板22は、例えば樹脂基板またはセラミック基板を使用することができる。配線基板22は、従来周知の方法によって形成することができる。
【0055】
発光素子23および受光素子24は、図
7に示すように、同一の基板25上に形成されている。基板25は、一導電型の半導体材料からなる。本実施形態に係る基板25は、例えばn型のシリコン(Si)基板を使用している。すなわち、基板25は、シリコン(Si)基板にn型の不純物をドーピングしている。シリコン(Si)基板に対するn型の不純物は、例えばリン(P)および窒素(N)などが挙げられる。基板25は、例えば、シリコン(Si)のインゴットをウェハ状にスライスして、ウェハに不純物をドーピングすることによって形成することができる。
【0056】
なお、本実施形態に係る受発光素子モジュール21において、一導電型をn型とする。しかしながら、一導電型はn型に限られず、一導電型をp型としても構わない。また、一導電型をn型としたとき他導電型はp型であり、一導電型をp型としたとき他導電型はn型である。したがって、本実施形態に係る受発光素子モジュール21において、他導電型はp型である。
【0057】
図8は、
図7に示した受発光素子モジュールの発光素子23を拡大して示す断面図である。
【0058】
発光素子23は、
図8に示すように、基板25の上面に配された複数の半導体層26と、複数の電極27とを有している。その結果、複数の電極27を介して複数の半導体層26に電圧を印加することによって、発光素子23を発光させることができる。
【0059】
複数の半導体層26は、バッファ層28、一導電型のコンタクト層29、一導電型のクラッド層30、活性層31、他導電型のクラッド層32および他導電型のコンタクト層33を有している。
【0060】
また、複数の電極27は、第1電極34と第2電極35を有している。そして、第1電極34は一導電型のコンタクト層29に接続しており、第2電極35は他導電型のコンタクト層33に接続している。なお、
図8に示すように、複数の半導体層26の表面には、
複数の電極27との接続箇所を除いて、絶縁層36が配されている。
【0061】
バッファ層28は、基板25の上面に積層されている。バッファ層28は、基板25と発光素子23との界面において、両者の格子定数の差を緩衝するものである。その結果、複数の半導体層26全体の格子欠陥または結晶欠陥を少なくすることができる。バッファ層28は、例えば、ガリウムヒ素(GaAs)で形成される。
【0062】
一導電型のコンタクト層29は、バッファ層28の上面に積層されている。一導電型のコンタクト層29は、上面に形成される第1電極34との接触抵抗を低減するものである。一導電型のコンタクト層29は、例えばガリウムヒ素(GaAs)にn型の不純物をドーピングして形成される。ガリウムヒ素(GaAs)に対するn型の不純物としては、シリコン(Si)またはセレン(Se)などが挙げられる。
【0063】
一導電型のクラッド層30は、一導電型のコンタクト層29の上面に積層されている。一導電型のクラッド層30は、活性層31に正孔を閉じ込める機能を有している。一導電型のクラッド層30は、例えばアルミニウムガリウムヒ素(AlGaAs)にn型の不純物をドーピングして形成される。アルミニウムガリウムヒ素(AlGaAs)に対するn型の不純物は、例えばシリコン(Si)またはセレン(Se)などが挙げられる。
【0064】
活性層31は、一導電型のクラッド層30に積層されている。活性層31は、電子や正孔が集中して、両者が再結合することによって、発光するものである。活性層31は、例えば、アルミニウムガリウムヒ素(AlGaAs)で形成される。
【0065】
他導電型のクラッド層32は、活性層31の上面に積層されている。他導電型のクラッド層32は、活性層31に電子を閉じ込める機能を有している。他導電型のクラッド層32は、例えばアルミニウムガリウムヒ素(AlGaAs)にp型の不純物をドーピングして形成される。アルミニウムガリウムヒ素(AlGaAs)に対するp型の不純物は、例えば亜鉛(Zn)またはマグネシウム(Mg)などが挙げられる。
【0066】
他導電型のコンタクト層33は、他導電型のクラッド層32の上面に積層されている。他導電型のコンタクト層33は、上面に形成される第2電極35との接触抵抗を低減するものである。他導電型のコンタクト層33は、例えばアルミニウムガリウムヒ素(AlGaAs)にp型の不純物をドーピングして形成される。なお、p型コンタクト層33は、電極との接触抵抗を低減するために、p型クラッド層32よりもキャリア密度が高く設定されている。
【0067】
複数の電極27は、例えば金(Au)またはアルミニウム(Al)などの材料で形成される。絶縁層36は、例えば窒化ケイ素(SiN)または二酸化ケイ素(SiO
2)などの材料で形成される。
【0068】
発光素子23は、以下の方法によって形成することができる。まず、複数の半導体層26を、例えばMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法を利用して、基板25の上面に順次エピタキシャル成長させることによって形成する。次いで、絶縁層36を、例えばP−CVD(Plasma Chemical Vapor Deposition)法を利用して、複数の半導体層26の表面に形成する。次いで、複数の電極27を、例えば蒸着法、スパッタ法またはめっき法などを利用して、複数の半導体層26の一部の半導体層上に形成する。以上の方法によって、発光素子23を形成することができる。
【0069】
受光素子24は、
図7に示すように、基板25の上面のうち発光素子23から離れた領域において、他導電型の半導体領域37を設けることによって形成されている。すなわち
、一導電型の基板25に対して他導電型の半導体領域37を形成することによってpn接合を形成し、受光素子24を構成している。
【0070】
他導電型の半導体領域37は、基板25にp型の不純物をドーピングすることによって形成することができる。本実施形態に係る基板25はSi基板であることから、p型の不純物としては、例えばホウ素(B)、亜鉛(Zn)またはマグネシウム(Mg)などが挙げられる。
【0071】
受発光素子モジュール21は、
図8に示すように、遮光体38と、レンズ部材39をさらに有している。遮光体38は、例えば、受光素子24が外部からの迷光を受光しないように、迷光を遮断する機能を有している。レンズ部材39は、発光素子23からの光を感光体2に誘導したり、感光体2での反射光を受光素子24に誘導したりする機能を有している。
【0072】
具体的には、遮光体38は、発光素子23および受光素子24を取り囲んだ枠状の壁部40と、壁部40の内面に設けられて壁部40で囲んだ領域を覆うように配された蓋部41とを有している。すなわち、壁部40の内面と蓋部41の下面とに囲まれる領域に、発光素子23および受光素子24が収容されている。また、発光素子23の光が通過する複数の光通過部42を有している。なお、本実施形態に係る光通過部42は、複数の穴によって形成されている。
【0073】
遮光体38は、例えば、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリスチレン樹脂(PS)、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(ABS)などの汎用プラスチック、ポリアミド樹脂(PA)ポリカーボネイト樹脂(PC)などのエンジニアリングプラスチック、液晶ポリマーなどのスーパーエンジニアリングプラスチック、およびアルミニウム(Al)、チタン(Ti)などの金属材料で形成される。遮光体38は、例えば射出形成などにより形成される。
【0074】
また、レンズ部材39は、光が通過するレンズ部43と、レンズ部43を支持する支持部44とを有している。そして、レンズ部材39は、支持部44を介して、遮光体38の壁部40の内面と蓋部41の上面とに囲まれる領域にはめ込まれている。
【0075】
レンズ部材39は、透光性の材料で形成される。レンズ部材39は、例えばシリコーン樹脂、ウレタン樹脂ならびにエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、またはポリカーボネイト樹脂ならびにアクリル樹脂などの熱可塑性樹脂などのプラスチック、あるいはサファイアおよび無機ガラスなどで形成される。レンズ部材39は、例えば射出形成などにより形成される。
【0076】
レンズ部43は、発光素子23の出射光および被対象物での反射光を集光し誘導する機能を有する。レンズ部43は、発光素子23の出射光を集光する第1レンズ45と、被対象物からの反射光を集光する第2レンズ46とを有している。本実施形態に係る第1レンズ45および第2レンズ46のそれぞれは、例えば凸レンズ、球面レンズまたは非球面レンズなどである。
【0077】
支持部44は、レンズ部43を保持する機能を有する。支持部44は、例えば板状に形成される。支持部44は、レンズ部43と一体的に形成されることによってレンズ部43を保持してもよいし、支持部44にレンズ部43の第1レンズ45および第2レンズ46がはめ込まれることによってレンズ部43を保持してもよい。
【0078】
次に、以上のような電子写真感光体および画像形成装置
の製造方法および利用方法について、図を用いて説明する。
【0079】
図9は、感光体
の基体に対するマーキングの工程およびマーキングの情報を利用する工程を説明するブロック図である。
【0080】
(感光体の製造工程)
まず、用意された基体
用の加工金属管は、成膜前に加工される。なお、本加工は、円筒状基体を切削加工してもよく、切削加工まで行わない無切削管でもよい。
【0081】
加工された基体10に金属管の情報と加工の情報および個体識別情報に関するマーキング48が形成される。マーキング48は、主にはレーザ加工される。
【0082】
その後、成膜工程にて成膜される。アモルファスシリコン感光体の場合は
プラズマCVD
装置で
成膜され、有機感光体の場合は塗工される。
【0083】
成膜された感光体は、検査準備として、検査機に配置されるセンサにて面内位置情報を得る。
【0084】
検査では、面内位置情報をもとに面内特性ムラ情報を収集する。面内特性ムラ情報は、サーバーもしくはメモリに入力される。
【0085】
(複写機の製造工程)
図9(a)に示すように、感光体を組み込んで画像形成装置(複写機)が形成される。
【0086】
複写機に搭載されたセンサでマーキング48を読み取り、その個体識別情報に基づいて、製造工程のサーバーにアクセスし、複写機に面内特性ムラ情報がダウンロードされる。
【0087】
複写機では、ダウンロードされた面内特性ムラ情報に基づいて、面内特性ムラ補正が行われる。
【0088】
(感光体交換時)
図9(b)に示すように、感光体交換時は、複写機がインターネット環境などにある場合は、上述の複写機の製造工程と同様にサーバーにアクセスし、データをダウンロードして、面内特性ムラ補正が行われる。インターネット環境にない場合は、あらかじめメモリに入力された面内特性ムラ情報を複写機に入力し、複写機でマーキング48を読み取り、自動で面内特性ムラ補正が行われる。
【0089】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良などが可能である。
【0090】
例えば、上述の本実施形態では感光体2として無機感光体を例にして説明しているが、これに代えて有機感光体を用いてもよい。この場合には、受発光素子モジュール21の発光素子23の露光波長としては、感光体2の基体10まで到達するものを選択すればよい。
【0091】
また、上述の実施形態では、受発光素子モジュール21を、
図1に示すように、クリーニング器
8から現像器
5までの間に設けている。これに代えて、例えば残トナーが少ない画像形成装置においては、クリーニング器
8を設けずに、受発光素子モジュール21を転写器
6から現像器
5までの間に設けてもよい。