特許第6591879号(P6591879)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6591879
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】車両用報知装置および車両用報知方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20191007BHJP
   B60R 11/04 20060101ALI20191007BHJP
   B60R 21/00 20060101ALI20191007BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20191007BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20191007BHJP
【FI】
   B60R16/02 640Z
   B60R11/04
   B60R21/00 993
   G08G1/16 C
   B60N2/90
【請求項の数】9
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-232633(P2015-232633)
(22)【出願日】2015年11月30日
(65)【公開番号】特開2017-100468(P2017-100468A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2018年9月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】クラリオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118094
【弁理士】
【氏名又は名称】殿元 基城
(72)【発明者】
【氏名】藤田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】橋本 武志
(72)【発明者】
【氏名】河野 賢司
【審査官】 菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−090956(JP,A)
【文献】 特開2012−035793(JP,A)
【文献】 特開2008−084219(JP,A)
【文献】 特開2007−257505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
B60N 2/90
B60R 11/04
B60R 21/00
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内のシートに設けられた振動手段と、
所定の周波数範囲で周波数を変化させた第1スイープ信号を生成する信号生成手段と、
前記車室内の振動を収振する収振手段と、
車両停止時および車両走行時に、前記第1スイープ信号を前記振動手段へ入力させた状態で、前記収振手段により前記車室内の振動を収振させることにより、車両停止時の周波数特性と車両走行時の周波数特性とを求めて、車両停止時の前記周波数特性における信号レベルよりも、車両走行時の前記周波数特性における信号レベルの方が所定レベル量以上高い値となる周波数範囲を検出する周波数解析手段と、
前記周波数解析手段により検出された前記周波数範囲において前記第1スイープ信号の信号レベルを制限させるためのフィルタを生成し、生成された当該フィルタを前記第1スイープ信号に適用することにより第2スイープ信号を生成する周波数可変手段と
を有し、
前記振動手段は、前記周波数可変手段によるフィルタ処理によって、前記周波数解析手段により検出された前記周波数範囲の信号レベルが制限された前記第2スイープ信号に基づいて、報知振動を発生させる
ことを特徴とする車両用報知装置。
【請求項2】
車室内のシートに設けられた振動手段と、
所定の周波数範囲で周波数を変化させた第1スイープ信号を生成する第1信号生成手段と、
前記車室内の振動を収振する収振手段と、
車両停止時および車両走行時に、前記第1スイープ信号を前記振動手段へ入力させた状態で、前記収振手段により前記車室内の振動を収振させることにより、車両停止時の周波数特性と車両走行時の周波数特性とを求めて、車両停止時の前記周波数特性における信号レベルよりも、車両走行時の前記周波数特性における信号レベルの方が所定レベル量以上高い値となる周波数範囲を検出する周波数解析手段と、
前記第1スイープ信号において周波数を変化させる所定の前記周波数範囲から、前記周波数解析手段により検出された前記周波数範囲を除外した新たな周波数範囲で、周波数を変化させることにより第2スイープ信号を生成する第2信号生成手段と
を有し、
前記振動手段は、前記第2信号生成手段により生成された前記第2スイープ信号に基づいて、報知振動を発生させる
ことを特徴とする車両用報知装置。
【請求項3】
時間経過に伴って振幅値が変動する補正信号を、前記第2スイープ信号に乗算することによって、前記第2スイープ信号の振幅値を時間経過に応じて変動させる補正処理を行う補正処理手段を有し、
前記振動手段は、前記補正処理手段によって前記補正処理が行われた前記第2スイープ信号に基づいて、報知振動を発生させる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用報知装置。
【請求項4】
前記補正信号の振幅特性は、ランブルストリップス上を車両が通過した場合に車両に発生する振動の振幅特性に基づいて設定されること
を特徴とする請求項3に記載の車両用報知装置。
【請求項5】
車室内のシートに設けられた振動手段より報知振動を発生させる車両用報知装置の車両用報知方法であって、
所定の周波数範囲で周波数を変化させた第1スイープ信号を、信号生成手段が生成する信号生成ステップと、
前記車室内の振動を、収振手段が収振する収振ステップと、
車両停止時および車両走行時に、前記第1スイープ信号を前記振動手段へ入力させた状態で、前記収振手段により前記車室内の振動を収振させることにより、周波数解析手段が、車両停止時の周波数特性と車両走行時の周波数特性とを求めて、車両停止時の前記周波数特性における信号レベルよりも、車両走行時の前記周波数特性における信号レベルの方が所定レベル量以上高い値となる周波数範囲を検出する周波数解析ステップと、
前記周波数解析ステップにより検出された前記周波数範囲において前記第1スイープ信号の信号レベルを制限させるためのフィルタを生成し、生成された当該フィルタを前記第1スイープ信号に適用することにより、周波数可変手段が第2スイープ信号を生成する周波数可変ステップと、
前記振動手段が、前記周波数可変ステップにおけるフィルタ処理によって、前記周波数解析ステップで検出された前記周波数範囲の信号レベルが制限された前記第2スイープ信号に基づいて、報知振動を発生させる報知振動発生ステップと
を有することを特徴とする車両用報知方法。
【請求項6】
車室内のシートに設けられた振動手段より報知振動を発生させる車両用報知装置の車両用報知方法であって、
所定の周波数範囲で周波数を変化させた第1スイープ信号を、第1信号生成手段が生成する第1信号生成ステップと、
前記車室内の振動を、収振手段が収振する収振ステップと、
車両停止時および車両走行時に、前記第1スイープ信号を前記振動手段へ入力させた状態で、前記収振手段により前記車室内の振動を収振させることにより、周波数解析手段が、車両停止時の周波数特性と車両走行時の周波数特性とを求めて、車両停止時の前記周波数特性における信号レベルよりも、車両走行時の前記周波数特性における信号レベルの方が所定レベル量以上高い値となる周波数範囲を検出する周波数解析ステップと、
前記第1スイープ信号において周波数を変化させる所定の前記周波数範囲から、前記周波数解析ステップにおいて検出された前記周波数範囲を除外した新たな周波数範囲で、周波数を変化させることにより、第2信号生成手段が、第2スイープ信号を生成する第2信号生成ステップと、
前記振動手段が、該第2信号生成ステップにおいて生成された前記第2スイープ信号に基づいて、報知振動を発生させる報知振動発生ステップと
を有することを特徴とする車両用報知方法。
【請求項7】
前記周波数解析ステップにおいて前記周波数解析手段により、車両停止時の前記周波数特性における信号レベルよりも、車両走行時の前記周波数特性における信号レベルの方が所定レベル量以上高い値となる周波数範囲が検出されなかった場合、前記報知振動発生ステップにおける前記振動手段は、前記第1スイープ信号を前記第2スイープ信号として用いて、報知振動を発生させる
ことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の車両用報知方法。
【請求項8】
時間経過に伴って振幅値が変動する補正信号を、前記第2スイープ信号に乗算することによって、補正処理手段が、前記第2スイープ信号の振幅値を時間経過に応じて変動させる補正処理を行う補正処理ステップを有し、
前記報知振動発生ステップにおいて前記振動手段が、前記補正処理ステップで前記補正処理が行われた前記第2スイープ信号に基づいて、報知振動を発生させる
ことを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか1項に記載の車両用報知方法。
【請求項9】
前記補正処理ステップにおいて用いられる前記補正信号の振幅特性は、ランブルストリップス上を車両が通過した場合に車両に発生する振動の振幅特性に基づいて設定されること
を特徴とする請求項に記載の車両用報知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用報知装置および車両用報知方法に関し、より詳細には、周波数を初期周波数からターゲット周波数まで変化させたスイープ信号を、車室内のシートに設けられた振動手段へ入力させることにより、振動手段より報知振動を発生させることが可能な車両用報知装置および車両法報知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両走行時に、車両が車線を逸脱したことを運転者に知らせる構造として、予め道路中央や路肩などの路面に波状面を形成し、車両が波状面を通過した場合に、意図的に振動および振動音を発生させるランブルストリップスが知られている。
【0003】
また、予め路面に波状面を形成するのではなく、カメラによる画像解析等によって車両前方の車線を認識し、車線を逸脱したときに、報知音や報知灯などを発することによって、運転者に報知を行う車両用報知装置が知られている。また、運転者に対する報知方法として、報知音や報知灯ではなく、シート内部に設けられた振動モータを駆動させて運転者に報知を行う報知装置等も提案されている。
【0004】
例えば、車室内の異なる2つの内装部材に振動機構を設けて、一方の振動機構から他方の振動機構へと、振動の発生を移行させることによって、運転者に危険状況の報知を行う報知装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、電動シートを駆動するために設けられているモータを利用して、シートに振動を発生させることにより、運転者に対して警報を行う車両用警報装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−298281号公報
【特許文献2】特開2008−260444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したような報知装置・警報装置では、モータ等の振動のみで細かな振動制御を行うことが容易でないため、振動に対する運転者の識別性・認識性を高めることが容易ではないという問題があった。
【0008】
また、車両走行中に路面から伝達される振動(ロードノイズ等)によって、報知用の振動等(報知振動・警報振動)が打ち消されてしまったり、振動が低減されてしまうおそれがあった。このように、報知振動・警報振動が路面からの振動により打ち消されてしまうことを、一般的に、報知振動・警報振動が「マスキングされる」と呼ぶ。路面からの振動によって報知振動・警報振動がマスキングされてしまうと、車両走行時において、運転者により、報知振動・警報振動が十分に識別・認識されないおそれがあるという問題があった。
【0009】
このようなマスキング等による報知振動・警報振動の識別性・認識性低下を回避するために、振動だけでなく警報音等の聴覚的な報知手法を用いることも考えられる。しかしながら、警報音による報知では、運転者以外の他の同乗者も警報音に気付いてしまうため、同乗者の気分を害したり(不快にさせたり)、却って不安にさせたりするおそれがあるという問題があった。
【0010】
他の方法として、ランブルストリップスのような波状面を設けた車線を車両が走行すると、車体全体で振動・振動音が発生するため、運転者に対する警報効果を高めることができる。しかしながらが、全ての車線に波状面を形成することは現実的でない。また、ランブルストリップスによる振動・振動音は、同乗者にも識別・認識されてしまうため、運転者だけに警報を行うことができず、同乗者に不快感や不安感を与えてしまうという問題が生じてしまう。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、同乗者に識別・認識されることなく、運転者のみに識別・認識させることが可能な報知を行うための車両用報知装置および車両用報知方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明に係る車両用報知装置は、車室内のシートに設けられた振動手段と、所定の周波数範囲で周波数を変化させた第1スイープ信号を生成する信号生成手段と、前記車室内の振動を収振する収振手段と、車両停止時および車両走行時に、前記第1スイープ信号を前記振動手段へ入力させた状態で、前記収振手段により前記車室内の振動を収振させることにより、車両停止時の周波数特性と車両走行時の周波数特性とを求めて、車両停止時の前記周波数特性における信号レベルよりも、車両走行時の前記周波数特性における信号レベルの方が所定レベル量以上高い値となる周波数範囲を検出する周波数解析手段と、前記周波数解析手段により検出された前記周波数範囲において前記第1スイープ信号の信号レベルを制限させるためのフィルタを生成し、生成された当該フィルタを前記第1スイープ信号に適用することにより第2スイープ信号を生成する周波数可変手段とを有し、前記振動手段は、前記周波数可変手段によるフィルタ処理によって、前記周波数解析手段により検出された前記周波数範囲の信号レベルが制限された前記第2スイープ信号に基づいて、報知振動を発生させることを特徴とする。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る車両用報知方法は、車室内のシートに設けられた振動手段より報知振動を発生させる車両用報知装置の車両用報知方法であって、所定の周波数範囲で周波数を変化させた第1スイープ信号を、信号生成手段が生成する信号生成ステップと、前記車室内の振動を、収振手段が収振する収振ステップと、車両停止時および車両走行時に、前記第1スイープ信号を前記振動手段へ入力させた状態で、前記収振手段により前記車室内の振動を収振させることにより、周波数解析手段が、車両停止時の周波数特性と車両走行時の周波数特性とを求めて、車両停止時の前記周波数特性における信号レベルよりも、車両走行時の前記周波数特性における信号レベルの方が所定レベル量以上高い値となる周波数範囲を検出する周波数解析ステップと、前記周波数解析ステップにより検出された前記周波数範囲において前記第1スイープ信号の信号レベルを制限させるためのフィルタを生成し、生成された当該フィルタを前記第1スイープ信号に適用することにより、周波数可変手段が第2スイープ信号を生成する周波数可変ステップと、前記振動手段が、前記周波数可変ステップにおけるフィルタ処理によって、前記周波数解析ステップで検出された前記周波数範囲の信号レベルが制限された前記第2スイープ信号に基づいて、報知振動を発生させる報知振動発生ステップとを有することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る車両用報知装置および車両用報知方法では、車両停止時の周波数特性における信号レベルよりも、車両走行時の周波数特性における信号レベルの方が所定レベル量以上高い値となる周波数範囲を検出する。車両走行時における信号レベルの方が車両停止時における信号レベルよりも所定レベル量以上高い値である場合、スイープ信号に基づいて振動手段より発生する報知振動は、車両走行に伴い路面から入力・伝達される振動によりマスキングされている(報知振動が体感されない状況になっている)と判断することができる。このように、報知振動がマスキングされてしまう周波数範囲では、スイープ信号により報知振動を発生させても、シートの着座者に対して十分な報知を行うことができない。
【0015】
従って、本発明に係る車両用報知装置および車両用報知方法では、周波数解析手段により検出された周波数範囲において第1スイープ信号の信号レベルを制限させるためのフィルタを生成し、フィルタを第1スイープ信号に適用して第2スイープ信号生成し、生成された第2スイープ信号に基づいて、振動手段より報知振動を発生させる。このようにフィルタ処理された第2スイープ信号を用いることによって、マスキングされた周波数範囲以外の周波数範囲で報知振動を積極的に発生させることができ、シートの着座者に対する報知振動の識別性・認識性を高めることが可能になる。
【0016】
また、本発明に係る車両用報知装置および車両用報知方法では、振動手段より報知振動を発生させるための入力信号として、信号生成手段でスイープ信号を生成する。このように、スイープ信号を生成して振動手段に入力させることにより、振動手段の設けられたシート等の共振特性を利用して、報知振動を出力(発生)させることができる。このため、振動手段へ入力されるスイープ信号の信号レベルが小さい場合であっても、共振特性を利用して報知振動を増大させることが可能になり、報知振動に対する運転者の識別性・認識性をより高めることが可能になる。また、スイープ信号の信号レベルが小さくても、大きな報知振動を発生させることができるので、パワーアンプの小出力化と省電力化とを図ることが可能になる。
【0017】
また、本発明に係る車両用報知装置は、車室内のシートに設けられた振動手段と、所定の周波数範囲で周波数を変化させた第1スイープ信号を生成する第1信号生成手段と、前記車室内の振動を収振する収振手段と、車両停止時および車両走行時に、前記第1スイープ信号を前記振動手段へ入力させた状態で、前記収振手段により前記車室内の振動を収振させることにより、車両停止時の周波数特性と車両走行時の周波数特性とを求めて、車両停止時の前記周波数特性における信号レベルよりも、車両走行時の前記周波数特性における信号レベルの方が所定レベル量以上高い値となる周波数範囲を検出する周波数解析手段と、前記第1スイープ信号において周波数を変化させる所定の前記周波数範囲から、前記周波数解析手段により検出された前記周波数範囲を除外した新たな周波数範囲で、周波数を変化させることにより第2スイープ信号を生成する第2信号生成手段とを有し、前記振動手段は、前記第2信号生成手段により生成された前記第2スイープ信号に基づいて、報知振動を発生させることを特徴とする。
【0018】
さらに、本発明に係る車両用報知方法は、車室内のシートに設けられた振動手段より報知振動を発生させる車両用報知装置の車両用報知方法であって、所定の周波数範囲で周波数を変化させた第1スイープ信号を、第1信号生成手段が生成する第1信号生成ステップと、前記車室内の振動を、収振手段が収振する収振ステップと、車両停止時および車両走行時に、前記第1スイープ信号を前記振動手段へ入力させた状態で、前記収振手段により前記車室内の振動を収振させることにより、周波数解析手段が、車両停止時の周波数特性と車両走行時の周波数特性とを求めて、車両停止時の前記周波数特性における信号レベルよりも、車両走行時の前記周波数特性における信号レベルの方が所定レベル量以上高い値となる周波数範囲を検出する周波数解析ステップと、前記第1スイープ信号において周波数を変化させる所定の前記周波数範囲から、前記周波数解析ステップにおいて検出された前記周波数範囲を除外した新たな周波数範囲で、周波数を変化させることにより、第2信号生成手段が、第2スイープ信号を生成する第2信号生成ステップと、前記振動手段が、該第2信号生成ステップにおいて生成された前記第2スイープ信号に基づいて、報知振動を発生させる報知振動発生ステップとを有することを特徴とする。
【0019】
本発明に係る車両用報知装置および車両用報知方法では、車両停止時の周波数特性における信号レベルよりも、車両走行時の周波数特性における信号レベルの方が所定レベル量以上高い値となる周波数範囲を検出する。車両走行時における信号レベルの方が車両停止時における信号レベルよりも所定レベル量以上高い値である場合、スイープ信号に基づいて振動手段より発生する報知振動は、車両走行に伴い路面から入力・伝達される振動によりマスキングされている(報知振動が体感されない状況になっている)と判断することができる。このように、報知振動がマスキングされてしまう周波数範囲では、スイープ信号に基づいて報知振動を発生させても、シートの着座者に対して十分な報知を行うことができない。
【0020】
従って、本発明に係る車両用報知装置および車両用報知方法では、第1スイープ信号において周波数を変化させる所定の周波数範囲から、周波数解析手段により検出された周波数範囲を除外した新たな周波数範囲で、周波数を変化させることにより第2スイープ信号を生成し、生成された第2スイープ信号に基づいて、振動手段より報知振動を発生させる。このように新たな周波数範囲に基づいて生成された第2スイープ信号を用いることによって、マスキングされた周波数範囲以外の周波数範囲で報知振動を積極的に発生させることができ、シートの着座者に対する報知振動の識別性・認識性を高めることが可能になる。
【0021】
また、上述した車両用報知装置は、時間経過に伴って振幅値が変動する補正信号を、前記第2スイープ信号に乗算することによって、前記第2スイープ信号の振幅値を時間経過に応じて変動させる補正処理を行う補正処理手段を有し、前記振動手段は、前記補正処理手段によって前記補正処理が行われた前記第2スイープ信号に基づいて、報知振動を発生させるものであってもよい。
【0022】
さらに、上述した車両用報知方法において、時間経過に伴って振幅値が変動する補正信号を、前記第2スイープ信号に乗算することによって、補正処理手段が、前記第2スイープ信号の振幅値を時間経過に応じて変動させる補正処理を行う補正処理ステップを有し、前記報知振動発生ステップにおいて前記振動手段が、前記補正処理ステップで前記補正処理が行われた前記第2スイープ信号に基づいて、報知振動を発生させるものであってもよい。
【0023】
本発明に係る車両用報知装置および車両用報知方法では、時間経過に伴って振幅値が変動する補正信号を、第2スイープ信号に乗算することによって、第2スイープ信号の振幅値を時間経過に応じて変動させる補正処理を行い、補正処理が行われた第2スイープ信号に基づいて、振動手段より報知振動を発生させる。このように、第2スイープ信号に対して時間経過に伴って振幅値が変動する補正信号を乗算した後に、振動手段より報知振動を発生させることによって、報知振動の振幅値を時間経過に伴って変動させることができる。このため、振幅値が一定になる報知振動ではなく、振幅値が時間経過と共に変化する報知振動を用いて報知を行うことができ、シートの着座者に対する報知振動の識別性・認識性を高めることが可能になる。
【0024】
また、上述した車両用報知装置において、前記補正信号の振幅特性は、ランブルストリップス上を車両が通過した場合に車両に発生する振動の振幅特性に基づいて設定されるものであってもよい。
【0025】
さらに、上述した車両用報知方法において、前記補正処理ステップにおいて用いられる前記補正信号の振幅特性は、ランブルストリップス上を車両が通過した場合に車両に発生する振動の振幅特性に基づいて設定されるものであってもよい。
【0026】
本発明に係る車両用報知装置および車両用報知方法では、補正信号の振幅特性を、ランブルストリップス上を車両が通過した場合に車両に発生する振動の振幅特性に基づいて設定する。このため、振動手段より発生する報知振動の振幅変化状態を、ランブルストリップス上を車両が通過したときに、路面より車室内へ伝達・発生される振動変化状態に近づけることが可能となり、シートの着座者に対する報知振動の識別性・認識性を、より一層高めることが可能になる。
【0027】
また、本発明に係る車両用報知方法において、前記周波数解析ステップにおいて前記周波数解析手段により、車両停止時の前記周波数特性における信号レベルよりも、車両走行時の前記周波数特性における信号レベルの方が所定レベル量以上高い値となる周波数範囲が検出されなかった場合、前記報知振動発生ステップにおける前記振動手段が、前記第1スイープ信号を前記第2スイープ信号として用いて、報知振動を発生させるものであってもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る車両用報知装置および車両用報知方法では、周波数解析手段により検出された周波数範囲において第1スイープ信号の信号レベルを制限させるためのフィルタを生成し、フィルタを第1スイープ信号に適用して第2スイープ信号生成し、生成された第2スイープ信号に基づいて、振動手段より報知振動を発生させる。このようにフィルタ処理された第2スイープ信号を用いることによって、マスキングされた周波数範囲以外の周波数範囲で報知振動を積極的に発生させることができ、シートの着座者に対する報知振動の識別性・認識性を高めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施の形態に係る車両用警報装置の概略構成を示したブロック図である。
図2】40[Hz]から120[Hz]まで正弦波の周波数を変化させることにより生成されたスイープ信号の振幅特性を示した図である。
図3】車両停止時にエキサイタへスイープ信号を入力させることにより発生した警報振動の周波数特性を示した図である。
図4】(a)は、ランブルストリップスの構成を示した平面図であり、(b)は、ランブルストリップスの構成を示した断面図であり、(c)は、チャッターバーの構成を示した平面図であり、(d)は、チャッターバーの構成を示した断面図である。
図5】(a)は、ランブルストリップス上を30[km/h]で走行したときに収振した車室内の振幅特性を示した図であり、(b)は、周波数特性を示した図である。
図6】ランブルストリップスを50[km/h]で走行したときに収振した車室内の一の周波数特性と、図3に示した周波数特性との両方を示した図である。
図7】ランブルストリップスを50[km/h]で走行したときに収振した車室内の他の周波数特性と、図3に示した周波数特性との両方を示した図である。
図8】(a)は、60[Hz]〜120[Hz]用のバンドパスフィルタのフィルタ特性を示した図であり、(b)は、50[Hz]の信号レベル出力を制限するためのピーキングフィルタのフィルタ特性を示した図である。
図9】(a)は、40[Hz]〜120[Hz]の周波数範囲で周波数を変化させたスイープ信号に対して、65[Hz]〜120[Hz]のバンドパスフィルタを適用した信号の周波数特性を示した図であり、(b)は、40[Hz]〜120[Hz]の周波数範囲で周波数を変化させたスイープ信号に対して、中心周波数75[Hz]のピーキングフィルタを適用した信号の周波数特性を示した図である。
図10】車両走行時における車室内の周波数特性と車両停止時における車室内の周波数特性とを例示した図である。
図11】実施の形態に係る補正処理部の処理内容を示したフローチャートである。
図12】(a)は、1周期が300[mm]のランブルストリップス上を30[km/h]で走行したと想定した場合のパルス信号の振幅特性を示した図であり、(b)は、図12(a)に示すパルス信号を2つ用意して位相差を設けて加算し、さらにローパスフィルタ処理を行った補正信号の振幅特性を示した図である。
図13】(a)は、1周期が300[mm]のランブルストリップス上を50[km/h]で走行したと想定した場合のパルス信号の振幅特性を示した図であり、(b)は、図13(a)に示すパルス信号を2つ用意して位相差を設けて加算し、さらにローパスフィルタ処理を行った補正信号の振幅特性を示した図である。
図14】(a)は、図9(a)に示したスイープ信号の振幅特性を示した図であり、(b)は、図12(b)に示した補正信号を、図14(a)に示したスイープ信号に乗算した信号の振幅特性を示している。
図15】実施の形態に係る車両用警報装置の各構成部における簡単な処理内容を示したフローチャートである。
図16】実施の形態に係る車両用警報装置の他の概略構成を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る車両用報知装置について、車両用警報装置を一例として用いることにより、詳細に説明を行う。図1は、実施の形態に係る車両用警報装置の概略構成を示したブロック図である。車両用警報装置1は、図1に示すように、信号発生部(信号生成手段)3と、エキサイタ(振動手段)4と、マイクロフォン(収振手段)5と、周波数解析部(周波数解析手段)6と、周波数可変部(周波数可変手段)7と、補正処理部(補正処理手段)8とを有している。
【0031】
車両用警報装置1は、エキサイタ4より警報用の振動(以下、警報振動と称する。報知振動に該当する)を出力した後に、マイクロフォン5より車室内の振動・音を収振(以下、「収振」には「収音」が含まれるものとする)することにより、スイープ信号のマスキング状態を判断し、スイープ信号がマスキングされた場合には、エキサイタ4より、運転者に対する識別性・認識性を高めた警報振動を出力する。
【0032】
また、信号発生部3には、警報情報出力部10が接続されている。警報情報出力部10は、エキサイタ4より警報振動を出力させる必要が生じた場合、信号発生部3に対して警報情報を出力する。ここで、警報情報出力部10とは、車両逸脱信号や、車両接近情報や、居眠り検知情報や、急カーブ信号等に基づく警報情報を信号発生部3へ出力する装置である。警報情報出力部10における警報対象の検出は、車両前方映像を撮影して画像解析する方法や、レーダー波を前方に照射して反射波を測定することにより検出する方法等、一般的に用いられている方法により行われる。
【0033】
[信号発生部]
信号発生部3は、正弦波のスイープ信号を生成する役割を有している。信号発生部3は、初期周波数である40[Hz]からターゲット周波数である120[Hz]までを1周期とし、正弦波の周波数を1周期当たり0.8[s]で変化させる(スイープさせる)ことによってスイープ信号(第1スイープ信号)を生成する。図2は、信号発生部3において生成された1周期分のスイープ信号の振幅特性を示している。図2に示した振幅特性では、正弦波の周波数が、時間経過と共に40[Hz]から120[Hz]へと変化している。周波数の変化状態は、図2に示すように、隣接する正弦波における時間経過(図2の横軸)の波形間隔により判断することができる。
【0034】
信号発生部3は、警報情報出力部10より警報情報を受信している間、継続してスイープ信号を生成する。このため、信号発生部3は、スイープ信号が生成されている間、周波数が変化された正弦波を何周期分も繰り返し生成する(40[Hz]から120[Hz]まで正弦波の周波数が変化した後に、また周波数を40[Hz]に戻して、繰り返し、正弦波の周波数を40[Hz]から120[Hz]まで変化させる)。
【0035】
なお、生成されるスイープ信号の周波数範囲は、40[Hz]から120[Hz]には限定されない。しかしながら、エキサイタ4へ入力されるスイープ信号に基づいて、音ではなく振動(警報振動)が、エキサイタ4より発生されるように、スイープさせる周波数範囲を低帯域の周波数範囲にすることが望ましい。
【0036】
信号発生部3において生成されたスイープ信号は、エキサイタ4へ入力されるか、あるいは、周波数可変部7へ入力される。車両停止時における車室内の周波数特性を求める場合、信号発生部3は、生成されたスイープ信号を、エキサイタ4へ出力する。車両停止時の車室内の周波数特性は、周波数解析部6によって求められ(解析され)、後述する記録部11に記録される。車両走行時における車室内の周波数特性を求める場合、信号発生部3は、生成されたスイープ信号を、周波数可変部7へ出力する。
【0037】
また、信号発生部3は、周波数が一定の正弦波を生成するのではなく、初期周波数40[Hz]からターゲット周波数120[Hz]まで、正弦波の周波数を変化させたスイープ信号を生成する。このように、スイープ信号を生成してエキサイタ4へ入力させることによって、エキサイタ4より出力される警報振動の信号レベルを、共振特性を利用して増大させることが可能になる。
【0038】
共振が発生する共振周波数は、エキサイタ4の個体差、振動を伝えるシート素材のばらつき、エキサイタの取り付け位置の違い、またそれらの経年変化等によって変化することが知られている。このように共振周波数が変化する場合であっても、スイープ信号を用いて正弦波の周波数を変化させることによって、正弦波の周波数を共振周波数に一致させることができるので、共振特性を利用して、警報振動の信号レベルを確実に増大させることが可能になる。
【0039】
さらに、共振を利用して警報振動の信号レベルを増大させることができるため、スイープ信号の信号レベルが小さい場合であっても、十分に大きな警報振動を発生させることができ、警報振動に対する運転者の識別性・認識性をより高めることが可能になる。また、スイープ信号の信号レベルが小さくても大きな警報振動を発生させることができるので、パワーアンプの小出力化と省電力化とを図ることが可能になる。
【0040】
[エキサイタ]
エキサイタ4は、信号発生部3において生成されたスイープ信号(第1スイープ信号)、あるいは、補正処理部8により後述する補正処理が行われたスイープ信号が入力させることにより、スイープ信号に基づく警報振動を発生(出力)させる役割を有している。
【0041】
エキサイタ4は、ボイスコイルから伝わる振動力を、エキサイタ4に接触する対象物に伝達し、対象物を振動板として利用することによって振動や音を出力させることが可能な出力装置(振動手段)である。スイープ信号をエキサイタ4へ入力させることにより、エキサイタ4の設置される部材等を介して振動を伝達させることが可能になっている。本実施の形態に係るエキサイタ4は、車両の運転席(シート)の内部に設置されている。このため、エキサイタ4より警報振動が発生された場合には、他の同乗者に気付かれることなく、運転者に振動による警報を行うことが可能になる。
【0042】
運転席に設けられるエキサイタの個数および運転席におけるエキサイタの設置位置は、特に限定されない。運転者が警報振動を識別・認識することが可能なシート位置であって、警報振動を認識・識別することが可能な個数であれば、シートのどの位置に何個のエキサイタを設置してもよい。また、本実施の形態では、スイープ信号の入力に基づいて警報振動を発生させるための振動デバイス(振動手段)としてエキサイタ4を一例として用いるが、振動デバイスはエキサイタには限定されず、ダイナミック型スピーカ等の他のデバイスを用いることも可能である。
【0043】
[マイクロフォン]
マイクロフォン5は、車室内の騒音および振動を測定(収振)する収振手段としての役割を有している。上述した車両停止時には、車両走行に伴う騒音(走行騒音)や振動(走行振動)が発生しない。このため、車両停止時に、スイープ信号をエキサイタ4へ入力させた状態で、マイクロフォン5によって車室内の振動・騒音を測定することにより、走行騒音・走行振動の影響を受けていない車室内の周波数特性を求めることができる。また、車両走行時にマイクロフォン5で、走行騒音・走行振動を含む車室内の振動・騒音を測定することにより、車両走行時の車室内の周波数特性を求めることができる。
【0044】
マイクロフォン5の設置位置は、車室内の騒音や振動を測定することができる箇所であれば、特に限定されないが、車両停止時にエキサイタ4より出力される警報振動を測定するため、運転席の周辺に設置されることが好ましい。
【0045】
また、本実施の形態では、マイクロフォンを収振手段として用いるが、収振手段として車室内の騒音や振動を測定することが可能なデバイスであれば、振動等を電気変換するピックアップ等のデバイスを収振手段として用いることも可能である。
【0046】
[周波数解析部]
周波数解析部6は、マイクロフォン5によって収振された騒音・振動の周波数特性を求める(算出する)役割を有している。周波数解析部6では、上述したように、車両停止時に車室内の振動・騒音をマイクロフォン5で収振したときの周波数特性(車両停止時の周波数特性と称する)と、マイクロフォン5を用いて車両走行時に収振した車室内の周波数特性とを求める処理を行う。
【0047】
周波数解析部6には、記録部11が接続されている。周波数解析部6は、記録部11に対するデータの読み書き処理を行うことが可能となっている。周波数解析部6は、車両停止時に車室内の周波数特性を算出した後、記録部11に車両停止時の周波数特性を記録する。なお、記録部11は、必ずしも周波数解析部6と別に設けられる構成には限定されず、周波数解析部6の内部にRAM等を内設することによって、データを記録する構造であってもよい。
【0048】
図3は、周波数解析部6において算出された車両停止時の周波数特性の一例を示した図である。図3に示す周波数特性は、初期周波数が40[Hz]、ターゲット周波数が120[Hz]であって、1周期(0.8[s])分のスイープ信号がエキサイタ4へ入力された場合の車室内の周波数特性を示している。周波数解析部6では、1周期分のスイープ信号(警報振動)の時間領域データを、所定のサンプル数のサンプルブロックとして、周波数領域のデータへと変換することによって、周波数特性の算出を行う。従って、図3に示す車両停止時の周波数特性は、スイープ信号において周波数が変化する周波数範囲(1周期分、0.8[s]分)の40[Hz]〜120[Hz]における最大の信号レベル[dB]が示されて(含まれて)いる。
【0049】
なお、スイープ信号において変化される周波数の周波数範囲は、40[Hz]から120[Hz]までであるが、マイクロフォン5において収振される車両停止時の車室内の振動音等は、この周波数範囲に限定されない。このため、図3には、40[Hz]から120[Hz]までの周波数範囲以外の帯域の信号レベルが示されている。40[Hz]以下の帯域や120[Hz]以上の帯域における周波数特性は、車室内の反射等の影響を含んだ特性であるが、本願発明では特に重要視しない。また、図3に示す車両停止時の周波数特性において、40[Hz]〜120[Hz]の各帯域の信号レベルが異なって(変化して)いる(信号レベルが一定でない)が、これは、運転席のシート特性による共振帯域が変化することにより生じるものである。
【0050】
また、周波数解析部6は、車両走行時にマイクロフォン5によって収振された騒音・振動等に基づいて、警報振動がマスキングされているか否かの判断を行う役割を有している。
【0051】
車両走行時に、エキサイタ4へスイープ信号を入力させて、エキサイタ4から警報振動を発生させながら、マイクロフォン5で車室内の騒音・振動を収振する場合には、警報振動に加えて車両走行に伴う路面からの振動や振動音が収振される(含まれる)ことになる。このため、車両走行時にスイープ信号に基づいて警報振動を発生させても、路面からの振動や振動音(走行振動・走行騒音)によって警報振動がマスキングされてしまい、運転者が警報振動を識別・認識しにくくなってしまうおそれがある。このため、周波数解析部6では、車両走行時に収振された騒音・振動等の周波数特性(車両走行時の周波数特性)と、記録部11に記録した車両停止時の周波数特性との信号レベル差を求めることによって、警報振動がマスキングされているか否かの判断を行う。
【0052】
本実施の形態では、走行実験等の結果に基づいて、スイープ信号の入力に基づいてエキサイタ4より発生される警報振動の振幅よりも、車両走行時であって警報振動のマスキングが生じた状況において収振された騒音・振動の振幅の方が、倍以上大きい場合に、運転者が警報振動を体感的に識別・認識し難くなると判断した。従って、倍以上の振幅の振動差に対応する信号レベル(信号レベル量)、つまり、車両停止時にスイープ信号の入力に基づいて発生する警報振動の信号レベル(車両停止時の周波数特性における信号レベル)に対して、車両走行時であって警報振動にマスキングが生じる状況の信号レベル(車両走行時の周波数特性における信号レベル)が、例えば6[dB]以上大きい場合に、運転者が警報振動を認識・識別しにくくなると判断することができる。
【0053】
このため、本実施の形態に係る周波数解析部6では、スイープ信号において変化する周波数の周波数範囲(40[Hz]〜120[Hz])において、車両走行時の周波数特性における信号レベルが、車両停止時の周波数特性における信号レベルより6[dB]以上大きい場合に、該当する周波数範囲において、警報振動にマスキングが発生していると判断する。なお、この6[dB]は、マスキング判断を行うための閾値(判断値)の一例であり、必ずしも6[dB]には限定されない。警報振動を体感しにくくなる信号レベル差以上の値を閾値として設定すればよい。閾値の設定は、車両内部の構造、運転席の構造、走行路面状況、車の防音性能・防振性能等によって、適宜変更し得るものであり、ある程度のマージンを持たせる設定とするものであってもよい。
【0054】
また、本実施の形態において、信号レベル差が6[dB]以上であるかを求める場合に用いる、車両停止時の周波数特性における信号レベルは、車両停止時に事前に測定しておいた周波数特性を記録部11より読み出すことにより用いられる。ただし、車両停止時の周波数特性における信号レベルは、事前に記録部11へ記録しておく構成には限定されない。例えば、車両が停止した場合に、マイクロフォン5で車室内の振動・騒音を収振することにより、車両停止時の周波数特性における信号レベルをその都度、算出する構成であってもよい。
【0055】
図5(a)および図5(b)は、ランブルストリップス上を30[km/h]で走行したときに収振した車室内の振幅特性と周波数特性との一例を示した図である。ランブルストリップスとは、切削型注意喚起舗装とも呼ばれ、図4(a)(b)に示すように、舗装路面の表面に一定の間隔で凹型の切削溝を設けることによって意図的に波状面をつくり、この波状面を車両が通過する際に音と振動を発生させて、車線逸脱等を運転者に注意喚起するものである。また、図4(c)(d)のように、速度を落とさせる目的や車線外への逸脱を防ぐ目的で、大型で細長い道路鋲からなるチャッターバー(反射板が設けられたものをキャッツアイと呼ぶ)を、舗装路面に設置することにより、車両がランブルストリップスを通過するときと同様に、音と振動を発生させるものが知られている。
【0056】
ランブルストリップスは、上述したように車両走行時に音と振動を発生させて運転者に注意を喚起することを目的としているため、ランブルストリップス上を走行したときの車室内の周波数特性を測定すると、一部の周波数範囲で信号レベルが高くなり、マスキングが生じることになる。このように、ランブルストリップス上を走行したときの車室内の周波数特性は、マスキングが発生したときの車両走行時の周波数特性として最も適した例に該当する。
【0057】
ランブルストリップスは、図4(a)(b)に示すように、一定間隔で路面に凹型の切削溝が設けられているため、周波数特性において特定の周波数にピークが発生し、また、倍音成分を含むことになる。ピークが発生する周波数は、ランブルストリップス上を走行する車両の速度と、凹型の切削溝の設置間隔等に基づいて解析することができる。図4(a)(b)に示すランブルストリップスでは、切削溝の設置間隔をIとし、切削溝そのものの幅をLとする。
【0058】
本実施の形態では、この間隔Iと幅Lとの寸法を、間隔Iが150[mm]、幅Lを150[mm]とし、ランブルストリップスの1つの切削溝の1周期(一の切削溝の始まりから次の切削溝の直前まで)をL+I=300[mm]とする。切削溝は一定間隔で形成されているため、例えば30[km/h]で車両が走行すると、
30[km/h]=8.333[m/s]
(300[mm]/1000)/8.333[m/s]=0.036[s]
よって、300[mm]だけ通過するための時間は、0.036[s]掛かることになる。このため、1/0.036[s]=27.7778[Hz]の周波数が、車両走行中の周波数特性におけるピークになる。図5(b)に示した周波数特性を参照すると、上記計算式によって求められた27[Hz]付近の周波数において信号レベルが高くなり、ピークが示されていることを確認することができる。また、27[Hz]の整数倍の周波数において、倍音信号による他のピークが示されている。
【0059】
このように、マイクロフォン5において車両走行時の騒音・振動を収振することによって、例えば、ランブルストリップス等のような凹凸面上を走行した場合に発生し得る振動の振動特性を解析することが可能である。このため、ランブルストリップスやチャッターバーだけには限らず、様々な路面状況を測定することが可能となる。
【0060】
図6図7は、エキサイタ4より40[Hz]〜120[Hz]の周波数範囲で周波数を変化させたスイープ信号をエキサイタ4へ入力させた状態において、ランブルストリップス上を50[km/h]で走行した場合の車室内の周波数特性を示した図である。図6図7とは、異なる時間帯に測定された車両走行中の周波数特性が示されている。
【0061】
さらに、図6および図7には、車両停止時に測定された周波数特性(図3に示す周波数特性)が示されている。既に説明したように、車両走行時の周波数特性から車両停止時の周波数特性を差し引いた信号レベル差(信号レベル量の差)が6[dB]以上である場合に、走行騒音・走行振動によって、スイープ信号の信号レベルがマスキングされていると判断することができる。図6を確認すると、50[Hz]付近において、車両停止時の周波数特性における信号レベルと、車両走行時の周波数特性における信号レベルとのレベル差が6[dB]以上になっている。このため、50[Hz]付近の帯域で、車両走行時の騒音によるマスキングが発生していると判断することができる。
【0062】
図7に示す車両走行時の周波数特性では、図6に示す周波数特性と同様に、50[Hz]付近に信号レベルのピークが表れている。一方で、図7に示す周波数特性では、図6と異なり、90[Hz]付近にもピークが示されている。しかしながら、90[Hz]付近における、車両停止時の周波数特性における信号レベルと、車両走行時の周波数特性における信号レベルとのレベル差は、6[dB]未満である。このように、信号レベル差が小さい(6[dB]未満の)場合には、車両走行時の騒音によってマスキングが発生しているのではなく、90[Hz]付近のスイープ信号が出力中であったと判断することができる。
【0063】
図6および図7に示したように、ランブルストリップス上を50[km/h]で走行した場合に測定される車室内の周波数特性は、約50[Hz]付近で信号レベルのピークが発生し、その周波数の倍音成分が他のピークとして発生することになる。
【0064】
また、上述したように、ランブルストリップスを50[km/h]で走行する場合であって、図4(a)(b)に示す間隔Iが150[mm]、幅Lが150[mm]のとき(1周期は、I+Lの300[mm])の車室内の周波数特性において、信号レベルがピークとなる周波数を算出すると、
50[km/h]=13.8889[m/s]
(300[mm]/1000)/13.8889[m/s]=0.0216[s]
となる。従って、1/0.0216[s]=46.2963[Hz]となり、信号レベルがピークとなる周波数は、計算上、約46[Hz]として求めることができる。
【0065】
なお、図6および図7で求められるピークの周波数(約50[Hz])と、上述した計算により求められるピークの周波数(約46[Hz])とに誤差が生じている。この理由は、マイクロフォン5より収振を行う場合に測定された車両の走行速度に誤差が含まれ得るためである。
【0066】
図6および図7に示すように、ランブルストリップス上を50[km/h]で走行した場合の周波数特性では、50[Hz]付近にマスキングが生じることになるため、周波数解析部6では、この50[Hz]に対して±10[Hz]のマージンを確保して、40[Hz]〜60[Hz]の周波数範囲においてマスキングが発生するものと判断する。そして、周波数解析部6は、この40[Hz]〜60[Hz]の周波数範囲をマスキング領域情報として、周波数可変部7へと出力する。
【0067】
一方で、車両走行時の周波数特性における信号レベルと、車両停止時の周波数特性における信号レベルとの信号レベル差が6[dB]以上となる周波数を検出することができなかった場合、周波数解析部6はマスキングが発生した周波数が存在しない旨のマスキング領域情報を、周波数可変部7へ出力する。
【0068】
[周波数可変部]
周波数可変部7は、周波数解析部6より受信したマスキング領域情報に基づいて、スイープ信号に適用するためのフィルタを設計する役割を有している。例えば、車両走行中の周波数特性においてマスキングされた周波数範囲が検出された場合、この周波数範囲のスイープ信号をエキサイタ4へ入力させても、マスキングにより運転者がスイープ信号に基づく警報振動に気付かないおそれがある。このため、周波数可変部7では、マスキングされた周波数範囲の信号レベルが制限(抑制)されたスイープ信号(マスキングされていない周波数領域の信号レベルだけが出力されるスイープ信号。第2スイープ信号)を生成するためのフィルタを設計する。
【0069】
例えば、上述した図6および図7に示したように、周波数解析部6より受信したマスキング領域情報が40[Hz]〜60[Hz]であった場合、周波数可変部7では、40[Hz]〜120[Hz]の周波数範囲で周波数が変化するスイープ信号において、マスキング領域情報に該当しない周波数範囲を対象とした60[Hz]〜120[Hz]のバンドパスフィルタを設計する。
【0070】
図8(a)は、60[Hz]〜120[Hz]用のバンドパスフィルタのフィルタ特性を一例として示している。図8(a)に示すバンドパスフィルタは、カットオフ周波数が120[Hz]の6次のローパスフィルタ3段と、カットオフ周波数が60[Hz]である6次のハイパスフィルタ3段とを組み合わせたフィルタにより設計されている。
【0071】
このようにして設計されたバンドパスフィルタを、信号発生部3において生成されたスイープ信号(40[Hz]〜120[Hz]周波数範囲で正弦波の周波数が変化するスイープ信号。第1スイープ信号)に適用(フィルタ処理)することによって、スイープ信号の信号レベル出力が、60[Hz]〜120[Hz]に制限されることになる。60[Hz]〜120[Hz]に周波数範囲の制限が行われたスイープ信号(第2スイープ信号)を、エキサイタ4へ入力させることにより、マスキングされ得る周波数範囲で警報振動が出力されてしまうことを防止しつつ、マスキングされない周波数範囲の警報振動を確実にエキサイタ4より発生させることが可能になる。
【0072】
また、図8(a)に示すようなバンドパスフィルタを設計するのではなく、図8(b)に示すような50[Hz]の信号レベルを制限するピーキングフィルタを、周波数可変部7で設計する構成にすることも可能である。このようなピーキングフィルタを、スイープ信号に適用することによって、マスキングが行われる50[Hz]付近の信号レベルを抑制することができ、マスキングされない周波数の警報振動を確実にエキサイタ4より発生させることが可能になる。
【0073】
図9(a)は、周波数可変部7において設計された65[Hz]〜120[Hz]のバンドパスフィルタを、40[Hz]〜120[Hz]の周波数範囲で周波数を変化させたスイープ信号に適用して生成された信号(フィルタ処理後のスイープ信号、第2スイープ信号)の周波数特性を示した図である。上述したようにマスキング領域情報が40[Hz]〜60[Hz]である場合には、5[Hz]のマージンを確保して、スイープ信号におけるマスキングされた周波数範囲に隣接した周波数(開始周波数)を65[Hz]にしてもよい。
【0074】
また、図6および図7の場合には、40[Hz]〜60[Hz]の周波数範囲がマスキングされた場合を示したが、マスキングされる周波数範囲は、必ずしもスイープ信号において周波数が変化する周波数範囲の低周波数側の帯域には限定されず、高周波数側の帯域となる場合もある。例えば、図10は、車両走行時の周波数特性と車両停止時の周波数特性とを示した図であって、車両走行時の周波数特性における信号レベルと、車両停止時の周波数特性における信号レベルとのレベル差が6[dB]以上となる周波数が、75[Hz]〜85[Hz]の周波数範囲(車両走行時のピークが75[Hz]付近)である場合を示している。
【0075】
このように、75[Hz]〜85[Hz]の周波数範囲がマスキングされた周波数範囲である場合、周波数解析部6は、75[Hz]〜85[Hz]の周波数範囲をマスキング領域情報として、周波数可変部7に出力する。周波数可変部7は、周波数解析部6より受信したマスキング領域情報に基づいて、40[Hz]〜120[Hz]の周波数範囲で周波数を変化させるスイープ信号において、75[Hz]〜85[Hz]の信号レベルを抑制するピーキングフィルタを設計する。図9(b)は、スイープ信号に対して中心周波数75[Hz]のピーキングフィルタを適用した信号(フィルタ処理後のスイープ信号:第2スイープ信号)の周波数特性を示している。
【0076】
このように周波数可変部7において、周波数解析部6より受信したマスキング領域情報に基づいて、フィルタ設計を行い、信号発生部3より出力されるスイープ信号に対してフィルタ処理を行うことによって、マスキングによって警報振動による認識効果・認知効果を得にくい周波数範囲の信号レベルを抑制(低減)する。このようにマスキングされた周波数範囲の信号レベルを抑制することによって、パワーアンプの小出力化と省電力化を図ることが可能になる。周波数可変部7においてフィルタ処理されたスイープ信号(第2スイープ信号)は、補正処理部8へ出力される。
【0077】
一方で、周波数解析部6より受信されたマスキング領域情報が、マスキングが発生した周波数が存在しない旨の情報である場合、周波数可変部7はフィルタの設計処理およびスイープ信号へのフィルタ処理を行わない。周波数可変部7は、信号発生部3より入力されたスイープ信号をそのまま(入力された第1スイープ信号を第2スイープ信号として)補正処理部8へと出力する。
【0078】
[補正処理部]
補正処理部8は、周波数可変部7より受信したスイープ信号(第2スイープ信号)に対して、ランブルストリップス上を走行したような振幅特性を付加する役割を有している。
【0079】
図11は、補正処理部8の処理内容を示したフローチャートである。補正処理部8は、車両本体より走行時の車両速度を示す車速信号を取得することにより走行速度判断(走行速度取得)を行う(S.100)。次に、補正処理部8は、走行速度に基づいて、ランルストリップス上を走行したときに発生する振動に相当するパルス信号を生成する(S.101)。
【0080】
図4(a)(b)に示すように、ランブルストリップスには一定の間隔で切削溝が形成されている。従って、ランブルストリップス上を走行するときの振動に対応するパルス信号を生成し、周波数可変部7より入力されたスイープ信号に対して、パルス信号に基づいて生成された補正信号を乗算することによって、スイープ信号にランブルストリップス上を走行したときと同様の振動パターンを付加することができる。
【0081】
図12(a)は、ランブルストリップスの1周期を300[mm](図4(a)(b)に示す間隔Iを150[mm]、幅Lを150[mm]とし、1周期はI+Lの300[mm])とし、30[km/h]で走行したと想定した場合のパルス信号の振幅特性を示した図である。既に説明したように、1周期300[mm]を30[km/h]で走行すると、1周期300[mm]を走行するのに0.036[s]掛かることになる。図12(a)においても、パルス信号の1周期の時間は0.036[s]になっている。
【0082】
車両が実際にランブルストリップス上を走行する場合には、前輪と後輪との2輪が通過することになるので、位相差のある2つのパルス波形を加算したパルス信号が、ランブルストリップス上を走行したときに車両に入力・伝達される振動になる。さらに、車両が実際にランブルストリップス上を走行する場合には、車両に入力・伝達される振動はサスペンション等の影響により滑らかな振動変化となったパルス波形となる。
【0083】
このため、補正処理部8は、図12(a)に示したパルス信号を前輪用と後輪用とで2つ用意して位相差を付けて加算し、さらに加算処理されたパルス信号にローパスフィルタ処理を施すことによって、0と1とのパルス信号の振幅変化状態を滑らかにする処理を行う(S.102)。図12(b)は、2つのパルス信号を加算し、さらにローパスフィルタ処理が行われた信号の振幅特性を示した図である。図12(b)に示すように、2つのパルス信号を加算し、さらにローパスフィルタ処理を行うことによって、周波数可変部7より入力されるスイープ信号に、次述する補正信号を乗算する場合に発生し得る細かい振幅変動の揺らぎを低減させることができ、異音の発生を防止することが可能になる。
【0084】
また、図13(a)は、1周期が300[mm]のランブルストリップス上を50[km/h]で走行した場合を想定したパルス信号を示している。図13(b)は、図13(a)に示したパルス信号を2つ用意して位相差を付けて加算し、ローパスフィルタ処理によりパルス信号の振幅変化状態を滑らかにした信号の振幅特性を示している。図12(a)(b)と図13(a)(b)とを比較すると明らかなように、車速信号によって取得された車両速度(S.100)が速くなるに従って、パルス信号の1周期の時間およびローパスフィルタ処理された信号(以下、補正信号と称する)の1周期の時間が短くなる。このため、ランブルストリップス上を走行したときの車両速度に応じて変化する振幅特性を備えた補正信号を生成することが可能である。
【0085】
そして、補正処理部8は、周波数可変部7より入力されたスイープ信号に対して、補正信号(2つのパルス信号の加算処理およびローパスフィルタ処理が行われた信号)を乗算して、スイープ信号に対してランブルストリップス上を走行したときに発生し得る振幅変化を付加する(S.103)。
【0086】
図14(a)は、図9(a)に示した65[Hz]〜120[Hz]の周波数範囲で周波数が変化するスイープ信号の振幅特性を示している。図14(b)は、図12(b)に示した30[km/h]での走行を想定して生成した補正信号を、図14(a)に示したスイープ信号に乗算した信号の振幅特性を示している。図14(a)に示した振幅が一定のスイープ信号に対して、図12(b)に示した補正信号を乗算することによって、図14(b)に示すように、実際にランブルストリップス上を走行した場合に発生する振動と同様の振幅特性を、スイープ信号(第2スイープ信号)に付加することが可能になる。このようにしてランブルストリップス上を走行したときと同様の振幅特性を備えたスイープ信号(第2スイープ信号)を、補正処理部8からエキサイタ4へ入力させることによって、ランブルストリップス上を走行したときと同様の振幅特性を備えた警報振動を、運転席の運転者にだけに体感させることが可能になる。
【0087】
図15は、上述した車両用警報装置1における各構成部(信号発生部3、周波数解析部6、周波数可変部7および補正処理部8)の簡単な処理内容を示したフローチャートである。既に説明したように、車両用警報装置1では、まず、信号発生部3がスイープ信号(第1スイープ信号)を生成して、エキサイタ4へ入力させる(S.201:信号生成ステップ)。そして、マイクロフォン5によりエキサイタ4で発生した警報振動を含む車室内の音・振動等の収振を行い(S.202:収振ステップ)、周波数解析部6が、収振された音・振動の周波数特性を求める(S.203:周波数解析ステップ)。周波数解析部6は、求められた周波数特性が車両停止時の周波数特性である場合(S.204においてNoの場合)、求められた周波数特性を記録部11に記録する(S.205)。
【0088】
一方で、求められた周波数特性が車両走行時の周波数特性である場合(S.204においてYesの場合)、周波数解析部6は、車両走行時の周波数特性における信号レベルと車両停止時の周波数特性における信号レベルとのレベル差を求めて(S.206:周波数解析ステップ)、レベル差が6[dB]以上となる周波数範囲が存在するか否かを判断する(S.207:周波数解析ステップ)。レベル差が6[dB]以上となる周波数範囲が存在する場合(S.207においてYesの場合)、周波数可変部7は、該当する周波数範囲の信号レベルを制限するフィルタを作成してスイープ信号に適用し(S.208:周波数可変ステップ)、補正処理部8へ信号(第2スイープ信号)を出力する。一方で、レベル差が6[dB]以上となる周波数範囲が存在しなかった場合(S.207においてNoの場合)、周波数可変部7は、スイープ信号にフィルタ処理を行うことなく、スイープ信号をそのまま(第1スイープ信号を第2スイープ信号として)補正処理部8へ出力する(S.209)。
【0089】
そして、補正処理部8では、ランブルストリップスに基づく振幅特性を備えた補正信号を、周波数可変部7より受信した信号(第2スイープ信号)に乗算することにより補正処理し(S.210:補正処理ステップ)、補正処理したスイープ信号(補正処理された第2スイープ信号)をエキサイタ4へ入力させて、エキサイタ4より警報振動を発生させる(S.211:報知振動発生ステップ)。
【0090】
このように、車両用警報装置1では、車両走行時の周波数特性における信号レベルと、車両停止時の周波数特性における信号レベルとの信号レベル差に基づいて、スイープ信号に対するマスキングの有無を判断し、マスキングがされている場合に、スイープ信号におけるマスキングされた周波数範囲の信号レベルを制限させる(マスキングされた周波数範囲をさける)ためのフィルタ処理を行う。このように、マスキングされた周波数範囲の信号レベルを制限させることによって、マスキングにより運転者の認識性・識別性が低くなる周波数の信号出力を回避することができ、パワーアンプの小出力化と省電力化を図ることが可能になる。
【0091】
さらに、マスキングされた周波数範囲を除く周波数におけるスイープ信号の振幅特性を、ランブルストリップス上を走行したと想定した場合に車室内に侵入・伝達される振動特性に対応するように補正処理することによって、ランブルストリップス上を走行したときと同じような、認識性・識別性の高い振幅特性の警報振動を、エキサイタ4より発生させることが可能になる。
【0092】
特に、スイープ信号において、マスキングされた周波数範囲を除く他の周波数において、ランブルストリップス上を走行したときと同じような振幅特性を備えた警報振動を発生させるため、マスキングされない周波数範囲に基づく警報振動を、運転者に確実に体感させることが可能になる。
【0093】
さらに、警報振動はエキサイタ4が設けられる運転席にしか発生しないため、警報振動が発生しても、運転者以外の同乗者に警報振動を体感させることがない。このため、ランブルストリップス上を走行したときと同じような振動がエキサイタ4より発生しても、他の同乗者が振動の発生を全く認識・識別することがなく、同乗者に不快感や不安感を与えることがなくなる。一方で、運転者は、単調な振動ではなく、ランブルストリップス上を走行したときと同じような振動を体感することになるので、警報振動の有無をより顕著かつ確実に認識・識別することが可能となる。
【0094】
以上、本発明に係る車両用報知装置および車両用報知方法について、車両用警報装置1を一例として示して詳細に説明したが、本発明に係る車両用報知装置および車両用報知方法は、実施の形態に示した例には限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても実施の形態に示した例と同様の効果を奏することが可能である。
【0095】
例えば、実施の形態に係る車両用警報装置1では、信号発生部3において40[Hz]〜120[Hz]の周波数範囲で正弦波の周波数が変化するスイープ信号を生成し、周波数可変部7において、マスキングされた周波数を除くフィルタを設計してスイープ信号にフィルタ処理を施すことにより、マスキングされた周波数の信号出力を制限したスイープ信号を生成する場合について説明した。しかしながら、本発明に係る車両用報知装置および車両用報知方法は、周波数解析部6においてマスキングされた周波数を除くフィルタを設計する構成には限定されず、補正処理部8に対して、マスキングされた周波数が除かれた(マスキングされた周波数の信号レベルが制限された)スイープ信号を出力することが可能であれば、その構成は特に限定されない。
【0096】
例えば、図16に示すように、図1に示した信号発生部3と周波数可変部7とをまとめて信号発生部(第1信号生成手段、第2信号生成手段)3aとする構成であってもよい。図16に示す車両用警報装置1aにおいて、信号発生部3aは、変化させる周波数の周波数範囲が異なる、複数のスイープ信号を生成することができるものとする。従って、車両停止時に、信号発生部3aは、40[Hz]〜120[Hz]の周波数範囲で周波数が変化するスイープ信号を生成して、エキサイタ4へ出力する構成とすることが可能である。さらに、車両走行中に、信号発生部3aは、周波数解析部6より受信したマスキング領域情報に基づいて、マスキングされた周波数を除外した(除く)周波数範囲で周波数が変化するスイープ信号を生成して、補正処理部8へ出力する構成にすることも可能である。図16に示すように車両用警報装置1aを構成する場合であっても、図1に示した車両用警報装置1と同様の効果を奏することが可能である。
【0097】
また、補正処理部8の補正処理に用いられる補正信号は、必ずしもランブルストリップスの振動特性を備える補正信号には限定されない。異なる振動特性を備える補正信号であっても、警報振動に対する運転者の識別性・認識性および注意力を高めることが可能であれば、どのような振動特性に基づいて補正信号を設定するものであってもよい。
【0098】
さらに、実施の形態に係る車両用警報装置1では、ランブルストリップス上を走行時に車両に伝達・発生する振動特性を備える補正信号を生成する場合について説明し、特に、車速信号より取得した車両速度に基づいて振動間隔を調整することによって、ランブルストリップス上を走行する車両の走行速度に応じて、振幅間隔が変化する振動特性について説明した。しかしながら、補正信号の振幅間隔(ランブルストリップス上を走行した場合を想定して発生し得る警報振動の振幅間隔)を、車両の走行速度に関わりなく、一定とした振動特性にすることも可能である。車両速度に応じて振動間隔・振幅特性を変化させるのではなく、車両速度の速度値にかかわらず同じ振動間隔・振幅特性からなる補正信号を用いて警報振動の出力を行うものであってもよい。
【符号の説明】
【0099】
1、1a …車両用警報装置(車両用報知装置)
3 …信号発生部(信号生成手段)
3a …信号発生部(第1信号生成手段、第2信号生成手段)
4 …エキサイタ(振動手段)
5 …マイクロフォン(収振手段)
6 …周波数解析部(周波数解析手段)
7 …周波数可変部(周波数可変手段)
8 …補正処理部(補正処理手段)
10 …警報情報出力部
11 …記録部
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