(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記支軸の前記ばね部材に対応する箇所に、前記2つのばね部材の位置決めを行う段差部が形成されていると共に、前記段差部と隣接するようにテーパ部が形成されており、
前記テーパ部は、前記段差部から軸方向に離間する方向に向かうにしたがって漸次拡径するように形成されており、前記2つのばね部材の前記段差部から軸方向に離間する方向への移動を抑制することを特徴とする請求項4に記載の定力ばね調整機構。
前記支持部の前記一面の面方向における最外側に配置されている前記操作部の一部は、前記支持部よりも前記一面の面方向における外側に突出していることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の定力ばね調整機構。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1にあっては、地板、または輪列受けに、歯付きかなを調整部材の歯部に対して接離可能に設けているので、この分構造が複雑になる。このため、定力装置の製造コストが増大すると共に、定力装置が大型化してしまうという課題がある。また、定力装置を設けるにあたって、地板や輪列受けの設計変更も必要になる。このため、汎用性が低く、定力装置の組み付け性も悪いという課題がある。
【0008】
また、特許文献2にあっては、定力ばねの巻き上げ量の調整域と調整レバーの可動域とが比例する。つまり、例えば、定力ばねを1周分巻き上げようとすると、調整レバーも1周させなければならない。このため、調整レバーの可動域を確保するためのスペースが必要になり、定力装置が大型化してしまうという課題がある。
【0009】
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、簡素な構造で製造コストを抑えつつ、組み付け性の向上、小型化を図ることができると共に、汎用性の高い定力ばね調整機構、定力装置、および機械式時計を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明に係る定力ばね調整機構は、支持部と、前記支持部の一面に設けられ、それぞれ連係されている複数の操作部と、前記複数の操作部のうちの1つの第1操作部と、回転体と前記第1操作部のそれぞれに両端が取り付けられており、前記支持部と前記回転体との間でばね力を発生する定力ばねと、を備え、前記第1操作部は、前記定力ばねの巻き上げ方向および巻き解け方向に作動可能に設けられており、前記複数の操作部のうちの少なくとも1つは、前記支持部にトルク伝達部を介して設けられており、前記トルク伝達部は、所定トルク以上の力を受けると作動することを特徴とする。
【0011】
このように、支持部上に全ての部品が配置されるので、定力ばね調整機構をユニット化できる。このため、定力ばね調整機構の組み付け性を向上できると共に、汎用性を高めることができる。
また、従来のように第1操作部に対し、これ以外の操作部を接離可能に設ける必要がないので、構造を簡素化でき、小型化を図ることができる。
【0012】
本発明に係る定力ばね調整機構において、前記操作部は、歯車であることを特徴とする。
【0013】
このように構成することで、操作部の配置スペースだけ確保すればよくなるので、従来のように、操作部の可動域を確保するためのスペースが必要なくなる。このため、定力ばね調整機構を、さらに小型化できる。
【0014】
本発明に係る定力ばね調整機構は、前記第1操作部の歯数よりも、該第1操作部以外の前記操作部の歯数が少なく設定されていることを特徴とする。
【0015】
このように構成することで、第1操作部の回転比率を、この第1操作部以外の操作部の回転比率よりも小さくすることができる。すなわち、第1操作部を1回転させようとした場合、この第1操作部以外の操作部を1回転以上回転させることになる。このため、第1操作部の回転量を、微調整し易くすることができる。
【0016】
本発明に係る定力ばね調整機構において、前記トルク伝達部は、前記支持部の一面に立設された支軸を径方向外側から所定の押圧力で挟持する2つのばね部材からなり、前記操作部に、前記2つのばね部材の両端部が固定されていることを特徴とする。
【0017】
このように構成することで、トルク伝達部を簡素な構造とすることができ、製造コストも抑えることができる。
【0018】
本発明に係る定力ばね調整機構は、前記支軸の前記ばね部材に対応する箇所に、前記2つのばね部材の位置決めを行う段差部が形成されていると共に、前記段差部と隣接するようにテーパ部が形成されており、前記テーパ部は、前記段差部から軸方向に離間する方向に向かうにしたがって漸次拡径するように形成されており、前記2つのばね部材の前記段差部から軸方向に離間する方向への移動を抑制することを特徴とする。
【0019】
このように構成することで、2つのばね部材によって、確実に支軸を挟持できると共に、支軸に対する2つのばね部材の位置を維持できる。このため、確実に2つのばね部材をトルク伝達部として機能させることができる。
【0020】
本発明に係る定力ばね調整機構において、前記トルク伝達部は、前記支持部に設けられた弾性を有するジャンパであり、前記ジャンパは、前記操作部の歯に係脱可能に配置されていることを特徴とする。
【0021】
このように構成することで、トルク伝達部を簡素な構造とすることができ、製造コストも抑えることができる。
【0022】
本発明に係る定力ばね調整機構において、前記支持部の前記一面の面方向における最外側に配置されている前記操作部の一部は、前記支持部よりも前記一面の面方向における外側に突出していることを特徴とする。
【0023】
このように構成することで、支持部が邪魔になることなく、最外側に配置された操作部を容易に操作することができるので、定力ばね調整機構による調整作業を容易化できる。
【0024】
本発明に係る定力装置は、上記に記載の定力ばね調整機構と、前記回転体である外キャリッジと、該外キャリッジに対して回転可能に支持される内キャリッジと、前記
外キャリッジに設けられたストップ車と、前記
内キャリッジに設けられ、前記ストップ車と係合可能なストッパと、を備え、前記内キャリッジに、前記支持部を設けたことを特徴とする。
【0025】
このように構成することで、簡素な構造で製造コストを抑えつつ、組み付け性の向上、小型化を図ることができると共に、汎用性の高い定力装置を提供できる。
【0026】
本発明に係る機械式時計は、上記に記載の定力装置を備え、前記外キャリッジは、地板に対して回転可能に支持されており、前記内キャリッジに、脱進調速機構が設けられており、前記外キャリッジに、輪列の駆動力が伝達されることを特徴とする。
【0027】
このように構成することで、簡素な構造で製造コストを抑えつつ、組み付け性の向上、小型化を図ることができると共に、汎用性の高い機械式時計を提供できる。
また、ストップ車とストッパとによって、輪列の駆動力が伝達される外キャリッジを、内キャリッジに対して回転させたり停止させたり(タクト駆動)することができるので、定力ばねを定期的に巻き上げることができる。このため、主ぜんまいの巻き解けによる脱進調速機構への影響を小さくできる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、支持部上に全ての部品が配置されるので、定力ばね調整機構をユニット化でき、定力ばね調整機構の組み付け性を向上できると共に汎用性を高めることができる。また、定力ばね調整機構の構造を簡素化でき、小型化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0031】
(機械式時計)
図1は、機械式時計1のムーブメントの表側の平面図である。
同図に示すように、機械式時計1は、ムーブメント10と、このムーブメント10を収納する不図示のケーシングと、により構成されている。
【0032】
ムーブメント10は、基板を構成する地板11を有している。この地板11の裏側には不図示の文字板が配置されている。なお、ムーブメント10の表側に組み込まれる輪列を表輪列と称し、ムーブメント10の裏側に組み込まれる輪列を裏輪列と称する。
地板11には、巻真案内穴11aが形成されており、ここに巻真12が回転自在に組み込まれている。この巻真12は、おしどり13、かんぬき14、かんぬきばね15および裏押さえ16を有する切換装置により、軸方向の位置が決められている。また、巻真12の案内軸部には、きち車17が回転自在に設けられている。
【0033】
このような構成のもと、巻真12が、回転軸方向に沿ってムーブメント10の内側に一番近い方の第1の巻真位置(0段目)にある状態で巻真12を回転させると、不図示のつづみ車の回転を介してきち車17が回転する。そして、このきち車17が回転することにより、これと噛合う丸穴車20が回転する。そして、この丸穴車20が回転することにより、これと噛合う角穴車21が回転する。さらに、この角穴車21が回転することにより、香箱車22に収容された不図示の主ぜんまいを巻き上げる。
【0034】
ムーブメント10の表輪列は、上述した香箱車22の他に、二番車25、三番車26、四番車27、および五番車28により構成されており、香箱車22の回転力を伝達する機能を果している。また、ムーブメント10の表側には、定力装置付トゥールビヨン30が配置されている。
二番車25は、香箱車22に噛合う歯車とされている。三番車26は、二番車25に噛合う歯車とされている。四番車27は、三番車26に噛合う歯車とされている。五番車28は、四番車27に噛合う歯車とされている。そして、五番車28に、定力装置付トゥールビヨン30が噛合されている。
【0035】
(定力装置付トゥールビヨン)
図2は、定力装置付トゥールビヨン30の脱進調速機構100の図示を省略した斜視図である。
図3は、定力装置付トゥールビヨン30の脱進調速機構100の図示を省略した側面図である。
図1〜
図3に示すように、定力装置付トゥールビヨン30は、表輪列の回転を制御するための脱進調速機構100(
図1参照)や、この脱進調速機構100に伝達される回転トルクの変動を抑制するための定力装置3を備えている。また、定力装置付トゥールビヨン30は、地板11および、この地板11に対して対向配置された不図示のキャリッジ受(輪列受)に回転自在に支持された外キャリッジ33と、この外キャリッジ33の内側に、外キャリッジ33に対して回転自在に支持された内キャリッジ34と、を備えている。
【0036】
(外キャリッジ)
図4は、外キャリッジ33をキャリッジ受側からみた斜視図である。
図3、
図4に示すように、外キャリッジ33は、地板11側に配置された略円板状の第1外キャリッジ軸受部35と、キャリッジ受側に配置された略円板状の第2外キャリッジ軸受部36と、を有している。
【0037】
第1外キャリッジ軸受部35は、地板11側の外面35aがこの地板11に回転自在に支持される一方、地板11とは反対側の内面35bが内キャリッジ34を回転自在に支持する。また、第2外キャリッジ軸受部36は、キャリッジ受側の外面36aがこのキャリッジ受に回転自在に支持される一方、キャリッジ受とは反対側の内面36bが内キャリッジ34を回転自在に支持する。
なお、以下の説明では、外キャリッジ33の回転軸方向を単に軸方向、外キャリッジ33の回転方向を周方向、これら軸方向と周方向とに直交する方向を径方向と称して説明する。
【0038】
第1外キャリッジ軸受部35よりも径方向外側には、リング状の外歯歯車部41が設けられている。この外歯歯車部41が、五番車28に噛合されている。また、外歯歯車部41と第1外キャリッジ軸受部35は、互いに3つの第1アーム部42により連結されている。3つの第1アーム部42は径方向に沿って延び、周方向に等間隔に配置されている。
一方、第2外キャリッジ軸受部36の外周部には、径方向外側に向かって延出する3つの第2アーム部43が一体成形されている。これら第2アーム部43は、第1外キャリッジ軸受部35側の第1アーム部42に対応するように、周方向に等間隔に配置されている。
【0039】
第1アーム部42と外歯歯車部41との接続部、および第2アーム部43の先端には、それぞれ略円板状のシャフト取付座44,45が一体成形されている。そして、これらシャフト取付座44,45の間に、軸方向に沿って延びるシャフト46がそれぞれ設けられている。シャフト46の両端は、シャフト取付座44,45の上から螺入されるねじ47によって、シャフト取付座44,45に締結固定されている。
【0040】
また、第1外キャリッジ軸受部35と外歯歯車部41との間には、第1外キャリッジ軸受部35の周囲を取り囲むようにリング状に形成された支持バー48が設けられている。支持バー48は、第1アーム部42と連結するように一体成形されている。支持バー48には、ストップ車軸受ユニット50、およびこのストップ車軸受ユニット50に回転自在に支持されるストップ車70が設けられている。ここで、ストップ車軸受ユニット50およびストップ車70は定力装置3を構成するものである。定力装置3の詳細については、後述する。
【0041】
(内キャリッジ)
図5は、内キャリッジ34を地板11側からみた斜視図である。
図3、
図5に示すように、内キャリッジ34は、地板11側に配置された略円板状の第1内キャリッジ軸受部81と、キャリッジ受側に配置された略円板状の第2内キャリッジ軸受部82と、を有している。これら第1内キャリッジ軸受部81および第2内キャリッジ軸受部82は、外キャリッジ33の第1外キャリッジ軸受部35および第2外キャリッジ軸受部36と同軸上に配置されている。
【0042】
そして、第1内キャリッジ軸受部81が、定力装置3の一部を介して第1外キャリッジ軸受部35の内面35b側に回転自在に支持されている。また、第2内キャリッジ軸受部82が、第2外キャリッジ軸受部36の内面36b側に回転自在に支持されている。
このように回転自在に支持された第1内キャリッジ軸受部81と第2内キャリッジ軸受部82との間に、脱進調速機構100が設けられている。
【0043】
図1に示すように、脱進調速機構100は、内キャリッジ34の回転力を受けて回転するがんぎ車101や、がんぎ車101の回転力を受けて自由振動するてんぷ102を備えている。がんぎ車101は、てんぷ102の自由振動の影響を受けて常に一定周期で脱進運動を行う。
【0044】
図3、
図5に戻り、第1内キャリッジ軸受部81の外周部には、径方向外側に向かって延出する3つの第1アーム部88が一体成形されている。また、第2内キャリッジ軸受部82の外周部には、径方向外側に向かって延出する3つの第2アーム部89が一体成形されている。これら第1アーム部88および第2アーム部89は、それぞれ周方向に等間隔に配置されており、さらに、軸方向で対向するように配置されている。
【0045】
各アーム部88,89の先端には、それぞれ略円板状のシャフト取付座91,92が一体成形されている。そして、これらシャフト取付座91,92の間に、軸方向に沿って延びるシャフト93がそれぞれ設けられている。シャフト93の両端は、シャフト取付座91,92の上から螺入されるねじ94によって、シャフト取付座91,92に締結固定されている。なお、各アーム部88,89の長さは、てんぷ102にシャフト93が干渉しない長さに設定されている。
【0046】
さらに、第1内キャリッジ軸受部81の径方向外側には、この第1内キャリッジ軸受部81の周囲を取り囲むようにリング状に形成された支持バー95が設けられている。支持バー95は、第1アーム部88と連結するように一体成形されている。支持バー95には、定力装置3を構成するストッパ96が設けられている。
ストッパ96は、ストップ車70の後述の鉤部76に対して係合、解除するものである。ストッパ96は、支持バー95に固定された支持部99と、支持部99に保持され、この支持部99から周方向に沿って突出するように設けられたつめ部98と、を備えている。
【0047】
(定力装置)
図3〜
図5に示すように、定力装置3は、外キャリッジ33に設けられたストップ車軸受ユニット50およびストップ車70と、内キャリッジ34に設けられたストッパ96の他に、外キャリッジ33の第1外キャリッジ軸受部35と内キャリッジ34の第1内キャリッジ軸受部81との間に設けられた定力ばね調整機構110を備えている。
【0048】
図3、
図4に詳示するように、ストップ車軸受ユニット50は、外キャリッジ33における支持バー48の地板11側に取り付けられている第1ストップ車軸受部52と、支持バー48のキャリッジ受側に取り付けられている第2ストップ車軸受部53と、を備えている。第1ストップ車軸受部52は、不図示のねじによって支持バー48に締結固定されている。また、第2ストップ車軸受部53は、ねじ64によって支持バー48に締結固定されている。支持バー48と第2ストップ車軸受部53との間には、隙間S1が形成されている。
【0049】
このような第1ストップ車軸受部52と第2ストップ車軸受部53とにより、ストップ車軸体71が回転自在に支持されている。ストップ車軸体71の軸方向中央の大部分には、ストップかな部71aが一体成形されている。このストップかな部71aは、地板11に設けられている不図示の固定車に噛合されている。また、ストップ車軸体71のキャリッジ受側には、支持バー48と第2ストップ車軸受部53との隙間S1に介在されるようにストップ車70が設けられている。
【0050】
ストップ車70は、例えば金属材料や単結晶シリコン等の結晶方位を有する材料等により形成された部材あって、電鋳加工や、フォトリソグラフィ技術のような光学的な手法を取り入れたLIGA(Lithographie Galvanoformung Abformung)プロセス、DRIE(Deep Reactive Ion Etching)、MIM(Metal Injection Molding)等により形成されている。
【0051】
ストップ車70は、ストップ車軸体71に外嵌固定される中央のハブ部(不図示)と、ハブ部の径方向外側に配置され、ハブ部73の周囲を取り囲むようにリング状に形成されたリム部74と、これらハブ部73とリム部74と、を連結するスポーク部75とが一体成形されたものである。リム部74の外周部には、複数(この実施形態では5つ)の鉤部76が径方向外側に向かって突出形成されている。この鉤部76に、内キャリッジ34に設けられたストッパ96のつめ部98が係合、解除される。
【0052】
さらに、支持バー48には、ひげ持受66が設けられている。このひげ持受66には、ひげ持67が挿入されている。そして、ひげ持67は、ねじ105によりひげ持受66に締結固定されている。ひげ持67には、定力ばね調整機構110を構成する定力ばね68の外端部68aが固定されている。
【0053】
(第1実施形態)
(定力ばね調整機構)
図6は、定力ばね調整機構110を地板11側からみた斜視図である。
図7は、
図6のA−A線に沿う断面図である。
図4〜
図7に示すように、定力ばね68は、外キャリッジ33と内キャリッジ34との間でばね力を発生するためのものである。換言すれば、定力ばね68は、外キャリッジ33に対して内キャリッジ34に回転力を付与する。定力ばね68は、渦巻状に形成されており、内端部68bが調整歯車111に固定されている。
【0054】
図8は、調整歯車111の斜視図である。
同図に示すように、調整歯車111は、この調整歯車111を回転させることにより、定力ばね68の巻き上げ量を調整するためのものである。調整歯車111は、円環状に形成された歯車本体112を有している。この歯車本体112の外周部に歯部112aが形成されている。また、歯車本体112の内周部には、一方向に平行に延びる一対のスポーク部113,114が一体成形されている。各スポーク部113,114は弾性を有しており、互いに離間する方向に向かって僅かに弾性変形可能に構成されている。
【0055】
また、各スポーク部113,114の長手方向中央には、互いに離間する方向に向かって湾曲するように支軸挟持部113a,114aが形成されている。これら支軸挟持部113a,114aは、1つの任意の円上に沿って配置された状態になっている。また、2つの支軸挟持部113a,114aのうち、一方の支軸挟持部114aには、溶接台座115が支軸挟持部113a側とは反対側に向かって延出形成されている。
【0056】
溶接台座115には、貫通孔115aが形成されている。この貫通孔115aに略円柱状の定力ばね内端溶接部116が挿入されている。定力ばね内端溶接部116は、地板11側に向かって突出しており、先端に切欠き部116aが形成されている。この切欠き部116aに、定力ばね68の内端部68bが固定されている。なお、この内端部68bの固定方法としては、例えばレーザー溶接等の方法が挙げられる。
【0057】
図6、
図7に戻り、各支軸挟持部113a,114aは、支軸117を挟持している。支軸117は、外周面が先端に向かうに従って段差部を介して縮径するように段付円筒形状に形成されている。すなわち、支軸117は、基端側から順に第1段差部117aを介して第1縮径部117bが形成されており、この第1縮径部117bから第2段差部117cを介して第2縮径部117dが形成されている。
このような構成のもと、支軸117には、軸部108が挿入される(
図4、
図7参照)。この軸部108は、外キャリッジ33の第1外キャリッジ軸受部35に、内キャリッジ34の第1内キャリッジ軸受部81を回転自在に支持させるためのものである。
【0058】
また、支軸117の第2縮径部117dに、この第2縮径部117dを挟持するように調整歯車111の支軸挟持部113a,114aが配置されている。
より具体的には、支軸挟持部113a,114aは、第2縮径部117dによって若干押し広げられるように弾性変形した状態で、この第2縮径部117dを挟持している。このため、第2縮径部117dと支軸挟持部113a,114aとの間には、所定の摩擦力が発生する。このため、調整歯車111に所定の回転トルク以上のトルクが作用しないと、支軸117に対して調整歯車111が回転しない。
【0059】
また、支軸挟持部113a,114aは、第2段差部117cに当接することにより、支軸117に対して位置決めされている。
さらに、第2縮径部117dには、軸方向略中央よりもやや第2段差部117c寄りから第2段差部117cに至る間に、逆テーパ部118が形成されている。つまり、第2縮径部117dの支軸挟持部113a,114aに対応する箇所で、且つ前記第2段差部117cに隣接する箇所に、逆テーパ部118が形成されている。逆テーパ部118は、第2段差部117c側に向かって徐々に縮径するように形成されている。逆テーパ部118を形成することにより、支軸117から支軸挟持部113a,114aが抜けにくくなる。
一方、支軸117の第1縮径部117bには、略円板状の支持プレート120が外嵌固定されている。
【0060】
図9は、定力ばね調整機構110をキャリッジ受側からみた斜視図である。
図5〜
図7、
図9に示すように、支持プレート120は、内キャリッジ34を構成する第1内キャリッジ軸受部81の地板11側に、ねじ106により締結固定されている。支持プレート120の直径は、第1内キャリッジ軸受部81の直径とほぼ同一に設定されている。
【0061】
支持プレート120の径方向略中央には、貫通孔120aが形成されている。この貫通孔120aに支軸117の第1縮径部117bが、例えば圧入等により外嵌固定されている。また、支持プレート120は、支軸117の第1段差部117aに当接しており、これにより、支持プレート120と支軸117との相対位置が決定される。支軸117は、支持プレート120に外嵌固定された状態で、この支持プレート120の表面(地板11側の面)120bから第2縮径部117dが突出した状態になる。
【0062】
また、支持プレート120の表面120bには、調整歯車111に噛合される操作歯車123が配置されている。操作歯車123は、この操作歯車123を回転させることにより、調整歯車111を回転させる役割を有している。操作歯車123は、支持プレート120の表面120bに突設された副支軸124に回転自在に支持されている。操作歯車123の外周部には、歯部123aが形成されている。この歯部123aが調整歯車111の歯部112aに噛合されている。
【0063】
ここで、操作歯車123の基準円直径は、調整歯車111の基準円直径よりも小さく設定されている。このため、操作歯車123の歯部123aの歯数は、調整歯車111の歯部112aの歯数よりも少なく設定されている。また、操作歯車123は、歯部123aの一部が支持プレート120の外周部よりも径方向外側に突出するように配置されている。
【0064】
また、支持プレート120の表面120bとは反対側の面である裏面(キャリッジ受側の面)120c側には、外周部の全周に渡って段差を介して薄肉化された段差面121が形成されている。さらに、支持プレート120には、段差面121よりも径方向やや内側寄りに、ねじ106が挿入される貫通孔122が形成されている。この貫通孔122の表面120b側には、ざぐり部122aが形成されている。これにより、貫通孔122に挿入されたねじ106の頭部が支持プレート120から突出しないようになっている。
また、支持プレート120の裏面120cには、支軸177を挟んだ両側で、且つ貫通孔122を避けた位置に、それぞれ位置決めピン125が突設されている。
【0065】
一方、内キャリッジ34の第1内キャリッジ軸受部81には、地板11側の面に支持プレート120の段差面121に対応する円環状の凸条部、支持プレート120の貫通孔122に対応する雌ねじ部、および支持プレート120の位置決めピン125に対応する位置決め凹部(何れも不図示)が、それぞれ形成されている。
このような構成のもと、第1内キャリッジ軸受部81の地板11側の面に、支持プレート120の裏面120cが重ね合わされている。そして、ねじ106によって、第1内キャリッジ軸受部81に支持プレート120が締結固定されている。
【0066】
ここで、第1内キャリッジ軸受部81に支持プレート120を締結固定する際、第1内キャリッジ軸受部81の凸条部と支持プレート120の段差面121とにより、これら第1内キャリッジ軸受部81と支持プレート120との径方向中心の位置決めが行われる。また、第1内キャリッジ軸受部81の位置決め凹部と支持プレート120の位置決めピン125とによっても、これら第1内キャリッジ軸受部81と支持プレート120との径方向中心の位置決めが行われる。さらに、第1内キャリッジ軸受部81の位置決め凹部と支持プレート120の位置決めピン125とにより、これら第1内キャリッジ軸受部81と支持プレート120との周方向の位置決めが行われる。そして、支持プレート120表面120b側から貫通孔122にねじ106を挿入し、このねじ106を第1内キャリッジ軸受部81の雌ねじ部に螺入する。
【0067】
(定力装置付トゥールビヨンの動作)
次に、定力装置付トゥールビヨン30の動作について説明する。
外キャリッジ33は、外歯歯車部41が五番車28(
図1参照)に噛合されているので、香箱車22の回転力が表輪列を介して外キャリッジ33に伝達される。また、ストップ車70は、ストップかな部71cが地板11に設けられている不図示の固定車に噛合されている。このため、外キャリッジ33が回転すると、ストップ車70は、ストップかな部71cの軸心回りに自転しつつ、外キャリッジ33の回転軸回りに公転する。
【0068】
一方、内キャリッジ34は、外キャリッジ33に対して回転自在に支持されていると共に、定力ばね調整機構110(定力ばね68)を介して外キャリッジ33に連結されている。このため、外キャリッジ33に対し、内キャリッジ34が定力ばね68の付勢力を受けて回転する。
また、内キャリッジ34の回転力を受けて脱進調速機構100が駆動する。具体的には、内キャリッジ34の回転力を受けて回転するがんぎ車101が回転し、このがんぎ車101の回転力を受けててんぷ102が自由振動する。がんぎ車101は、てんぷ102の自由振動の影響を受けて常に一定周期で脱進運動を行う。なお、内キャリッジ34は、例えば1分間で1回転するように構成されている。
【0069】
さらに、内キャリッジ34が回転することにより、ストップ車70の鉤部76とストッパ96のつめ部98が、係合、解除を繰り返す。
具体的には、ストップ車70の鉤部76とストッパ96のつめ部98とが係合されている状態では、外キャリッジ33が回転することなく、内キャリッジ34のみが回転し続ける。このとき、ストッパ96は内キャリッジ34と一体となって回転するので、鉤部76からつめ部98が解除される方向に移動する。
【0070】
そして、鉤部76とつめ部98との係合状態が解除されると、外キャリッジ33が回転し、これに伴ってストップ車70がストップかな部71cの軸心回りに自転しつつ、外キャリッジ33の回転軸回りに公転する。すると、再び鉤部76とつめ部98とが係合され、外キャリッジ33が停止する。このとき、外キャリッジ33が回転した分、定力ばね68が巻き上げられ、定力ばね68の付勢力によって内キャリッジ34が引き続き回転する。これを繰り返すことにより、内キャリッジ34が一定速度で回転し続けると共に、脱進調速機構100が一定周期で脱進運動を行い続ける。
【0071】
(定力ばね調整機構の調整方法)
次に、
図6に基づいて、定力ばね調整機構110の調整方法について説明する。
ここで、上述したように、定力ばね調整機構110の定力ばね68の巻き上げ量は、内キャリッジ34および脱進調速機構100の動作に影響を及ぼす。具体的には、てんぷ102の振角(振幅)が変化する。すなわち、定力ばね68の巻上げ量は、所望の振角に合せて決定される。所望の振角としては、外乱や不図示のひげぜんまいの重心移動の影響を受けにくい高い振角(280〜300°)や、不図示のてん輪の片重り(重心が軸上からずれている場合)の影響がなくなる220°などが挙げられる。このため、定力ばね68の初期の巻き上げ量は、てんぷ102の所望の振角(振幅)に基づいて調整されていることが望ましい。
【0072】
図6に示すように、定力ばね68の巻き上げ量を調整するには、操作歯車123を回転させる。操作歯車123は、歯部123aの一部が支持プレート120の外周部よりも径方向外側に突出するように配置されている。このため、この突出した箇所を指や工具を用いて回転させることにより、操作歯車123を容易に回転させることができる。そして、操作歯車123を回転させると、この操作歯車123に噛合されている調整歯車111に回転力が伝達される。
【0073】
ここで、調整歯車111は、支持プレート120に突設された支軸117に、支軸挟持部113a,114aを介して取り付けられている。このため、調整歯車111に所定の回転トルク以上のトルクが作用すると、支軸117に対して調整歯車111が回転する。すなわち、スポーク部113,114(支軸挟持部113a,114a)は、調整歯車111に所定以上のトルクがかかると、支軸117に対して調整歯車111を回転させるトルク伝達部として機能している。
【0074】
調整歯車111には、定力ばね68の内端部68bが接続されているので、調整歯車111が回転することにより、定力ばね68の巻き上げ量が調整される。そして、定力ばね68の巻き上げ量が所定量に達した時点で、定力ばね調整機構110の調整が完了する。
なお、支軸117(第2縮径部117d)と支軸挟持部113a,114aとの間に生じる摩擦力は、定力ばね68のばね力では、支軸117に対して調整歯車111が回転することがない程度の力に設定される。
【0075】
このように、上述の第1実施形態における定力ばね調整機構110は、支持プレート120の表面120bに、調整歯車111、操作歯車123、および定力ばね68の全てが設けられている。このため、定力ばね調整機構110をユニット化できる。そして、このユニット化された定力ばね調整機構110の支持プレート120を、内キャリッジ34の第1内キャリッジ軸受部81に取付けるだけで、定力ばね調整機構110の取付作業をほぼ完了させることができる。よって、定力ばね調整機構110の組み付け性を向上できると共に汎用性を高めることができる。
また、従来のように、調整歯車111に対して操作歯車123を接離可能に設ける必要がないので、定力ばね調整機構110の構造を簡素化でき、小型化を図ることができる。
【0076】
さらに、定力ばね68の巻き上げ量を調整するにあたり、2つの歯車111,123(調整歯車111、操作歯車123)を回転させるだけである。これら歯車111,123は、それぞれ支軸117、副支軸124を中心に回転するので、支持プレート120上を移動することがない。このため、従来のように、定力ばね68の巻き上げ量を調整するための操作部の可動域を確保するためのスペースが必要なくなる。よって、定力ばね調整機構110を、さらに小型化できる。
【0077】
また、操作歯車123の歯部123aの歯数は、調整歯車111の歯部112aの歯数よりも少なく設定されている。このため、調整歯車111の回転比率を、操作歯車123の回転比率よりも小さくすることができる。すなわち、調整歯車111を1回転させようとした場合、操作歯車123を1回転以上回転させることになる。このため、調整歯車111の回転量を、微調整し易くすることができる。
【0078】
さらに、調整歯車111は、支持プレート120に突設された支軸117に、支軸挟持部113a,114aを介して取り付けられている。これら支軸挟持部113a,114aを構成する各スポーク部113,114は、弾性を有している。そして、各スポーク部113,114の弾性力を利用して支軸117に対して支軸挟持部113a,114aに摩擦力を発生させている。このため、調整歯車111に所定の回転トルク以上のトルクが作用しないと、支軸117に対して調整歯車111が回転しないようなトルク伝達部を、簡素な構造で実現できる。よって、定力ばね調整機構110の製造コストを低減できる。
【0079】
また、操作歯車123は、歯部123aの一部が支持プレート120の外周部よりも径方向外側に突出するように配置されている。このため、この突出した箇所を指や工具を用いて回転させることにより、操作歯車123を容易に回転させることができる。
【0080】
さらに、支軸117の第2縮径部117dには、調整歯車111の支軸挟持部113a,114aに対応する箇所に、逆テーパ部118が形成されている。逆テーパ部118を形成することにより、支軸117から支軸挟持部113a,114aが抜けてしまうことを抑制できる。このため、支軸挟持部113a,114aによって確実に支軸117を挟持できると共に、支軸117に対する支軸挟持部113a,114aの位置を維持できる。よって、確実にスポーク部113,114(支軸挟持部113a,114a)をトルク伝達部として機能させることができる。
【0081】
なお、支軸117に調整歯車111を軽圧入する構成とし、調整歯車111に所定以上のトルクがかかると、支軸117に対して調整歯車111が回転するように構成してもよい。この構成が、スポーク部113,114(支軸挟持部113a,114a)に代わるトルク伝達部として機能する。
【0082】
(第2実施形態)
次に、この発明の第2実施形態を
図10に基づいて説明する。
【0083】
(定力ばね調整機構)
図10は、第2実施形態における定力ばね調整機構210を地板11側からみた斜視図であって、前述の
図6に対応している。なお、第1実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明を省略する。
同図に示すように、第1実施形態と第2実施形態との相違点は、第1実施形態では、支軸117に、支軸挟持部113a,114aを介して調整歯車111が支持されているのに対して、第2実施形態では、調整歯車211に支軸117が挿入されている点にある。
【0084】
調整歯車211は、略円板状に形成されており、外周部に歯部212aが形成されている。また、調整歯車211の径方向中央には、不図示の貫通孔が形成されており、この貫通孔に支軸117が挿入されている。このため、支軸117に対し、余計な摩擦力が作用することなく調整歯車211が回転するように構成されている。
【0085】
ここで、支持プレート120の表面120bには、ジャンパ230が設けられている。ジャンパ230は、支持プレート120の外周部に、この外周部に沿って円弧状に延在されたベース部231と、ベース部231の周方向一端から表面120bの面方向に沿って、且つ調整歯車211の外周に沿って延出するアーム部232と、が一体成形されたものである。
【0086】
ベース部231には、周方向中央に貫通孔231aが形成されていると共に、この貫通孔231aを挟んで両側に位置決め孔231bが形成されている。
一方、支持プレート120には、貫通孔231aに対応する位置に不図示の雌ねじ部が刻設されている。また、支持プレート120には、位置決め孔231bに対応する位置に、この位置決め孔231bに挿入される位置決めピン241が立設されている。
そして、これら位置決め孔231bおよび位置決めピン241により、支持プレート120に対するジャンパ230の位置決めが行われる。また、貫通孔231aにねじ240を挿入し、このねじ240が支持プレート120の雌ねじ部に螺入されることにより、支持プレート120にジャンパ230が締結固定される。
【0087】
アーム部232は、先端が調整歯車211から離間する方向に向かって弾性変形可能なように構成されている。また、アーム部232の先端には、調整歯車211の歯部212aに対して係合、解除可能な鉤部233が一体成形されている。具体的には、鉤部233は、アーム部232の先端から径方向内側に向かって延出している。そして、鉤部233は、径方向内側に向かうに従って徐々に先細りとなるように形成されている。
【0088】
このような構成のもと、操作歯車123を回転させると、この操作歯車123に噛合されている調整歯車211に回転力が伝達される。調整歯車211の歯部212aには、ジャンパ230の鉤部233が係合されているが、調整歯車211に回転力が付与されると、鉤部233に径方向外側に向かう押圧力が作用する。
このため、調整歯車211に所定の回転トルク以上のトルクが作用すると、ジャンパ230のアーム部232が押し広げられ、調整歯車211の歯部212aとジャンパ230の鉤部233との係合が解除される。すなわち、調整歯車211およびジャンパ230は、いわゆる回転ラッチ構造になっている。換言すれば、ジャンパ230は、調整歯車211に所定以上のトルクがかかると、支軸117に対して調整歯車211を回転させるトルク伝達部として機能している。
【0089】
そして、ジャンパ230のアーム部232が押し広げられると、調整歯車211の歯部212aとジャンパ230の鉤部233との係合が解除される。これにより、支軸117に対して調整歯車211が回転する。
調整歯車211には、定力ばね68の内端部68bが接続されているので、調整歯車211が回転することにより、定力ばね68の巻き上げ量が調整される。そして、定力ばね68の巻き上げ量が所定量に達した時点で、定力ばね調整機構210の調整が完了する。
したがって、上述の第2実施形態によれば、前述の第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0090】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、定力装置付トゥールビヨン30に、定力ばね調整機構110,210を設けた場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、輪列内に組み込まれるさまざまな定力装置(定力ばねを有する装置)に、定力ばね調整機構110,210を設けることが可能である。
【0091】
また、上述の実施形態では、定力ばね調整機構110,210は、それぞれ調整歯車111,211と操作歯車123との2つの歯車を備え、これら2つの歯車を回転させて定力ばね68の巻き上げ量を調整する場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、定力ばね調整機構110,210を、複数の歯車を噛合させて構成してもよい。
【0092】
この場合、定力ばね68の内端部68bが接続される調整歯車111に、2つ以上の操作歯車123を噛合させてもよい。各操作歯車123の歯部123aの歯数を異ならせることにより、例えば、1つの操作歯車123を粗調整用とし、もう1つの操作歯車123を微調整用とすることも可能である。つまり、各操作歯車123を、用途に応じて使い分けることが可能になる。
また、調整歯車111に、複数の歯車を一列に連係させてもよい。このように構成することで、定力ばね調整機構の配置スペースに応じて歯車の位置を柔軟に変更できる。このため、定力ばね調整機構の設計自由度を高めることができる。
【0093】
さらに、上述の第1実施形態では調整歯車111に、トルク伝達部としてスポーク部113,114(支軸挟持部113a,114a)が設けられている場合について説明した。また、上述の第2実施形態では、調整歯車211に、トルク伝達部としてジャンパ230が係合、解除可能に設けられている場合について説明した。
しかしながら、これらに限られるものではなく、操作歯車123側にスポーク部113,114(支軸挟持部113a,114a)を設けたり、ジャンパ230を係合、解除可能に設けたりしてもよい。このように構成した場合であっても、定力ばねの巻き上げ量を調整できる。
【0094】
また、定力ばね調整機構110,210を、複数の歯車を噛合させて構成させる場合、これら複数の歯車のうちの少なくとも1つが、支持プレート120に、スポーク部113,114(支軸挟持部113a,114a)やジャンパ230を介して設けられていればよい。或いは、複数の歯車のうちの少なくとも1つが、支持プレート120から突設される支軸に軽圧入されており、この軽圧入をトルク伝達部として機能させていればよい。
【0095】
さらに、調整歯車111,211や操作歯車123に代えて、操作レバー等を複数配置してもよい。この場合であっても、複数の操作レバーを設けることにより、1つの操作レバーの可動域を省スペース化できる。このため、定力ばね調整機構を小型化できる。
また、操作レバー以外にも例えば、押しねじ等併用して定力ばね68の巻き上げ量を調整するように構成してもよい。
【0096】
さらに、上述の実施形態では、定力ばね68の外端部68aを外キャリッジ33に取付け、内端部68bを定力ばね調整機構110,210に取り付ける場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、内キャリッジ34に定力ばね68の内端部68bを取付け、定力ばね調整機構110,210に定力ばね68の外端部68aを取り付けるように構成してもよい。この場合、定力ばね調整機構110,210の支持プレート120は、外キャリッジ33側に取り付けられる。
【0097】
また、上述の実施形態では、操作歯車123を、指や工具を用いて回転させる場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、操作歯車123を回転させるための構成を別途設けてもよい。例えば、操作歯車123に工具と係合する突起部等を設けて回転させてもよい。