(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6591982
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】スティック刃を使用する外周切削工具
(51)【国際特許分類】
B23F 21/10 20060101AFI20191007BHJP
【FI】
B23F21/10
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-540909(P2016-540909)
(86)(22)【出願日】2014年8月25日
(65)【公表番号】特表2016-529128(P2016-529128A)
(43)【公表日】2016年9月23日
(86)【国際出願番号】US2014052479
(87)【国際公開番号】WO2015034699
(87)【国際公開日】20150312
【審査請求日】2017年6月1日
(31)【優先権主張番号】61/873,477
(32)【優先日】2013年9月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500094370
【氏名又は名称】ザ グリーソン ワークス
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハーマン ジェイ.シュタットフェルト
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン ディー.チャーチ
【審査官】
村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2001/0024599(US,A1)
【文献】
特表2000−509336(JP,A)
【文献】
特表2007−532332(JP,A)
【文献】
特開2000−190117(JP,A)
【文献】
特開2008−137117(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 21/10 − 21/23
B23C 5/08 − 5/10
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のカッティング刃が配置可能である切削工具のための、切削工具本体に結合される可撓性のクランピング円板であって、
該可撓性のクランピング円板は、外側表面、前記切削工具本体に対向する内側表面、周辺部、および中心を含み、
前記クランピング円板は、前記中心を通って延びる回転軸周りで回転可能であり、
前記クランピング円板は、クランピング円板周りで離隔され、前記周辺部から内向きに延びる複数のスロットであって、単一のクランピングウェブウィングが2つの連続するスロット間に画定される状態で複数のクランピングウェブウィングを画定する複数のスロットを備え、
各々のクランピングウェブウィングの内側表面は、前記切削工具本体と対向して、1または複数のカッティング刃をクランプすることを特徴とするクランピング円板。
【請求項2】
中心周りで離隔された、クランプねじのための複数の開口をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のクランピング円板。
【請求項3】
各ウェブウィングの前記内側表面は、1または複数の、カッティング刃に接触する接触パッドを含むことを特徴とする請求項1に記載のクランピング円板。
【請求項4】
前記スロットのそれぞれは、前記クランピング円板の半径の約50パーセントに等しい長さを有することを特徴とする請求項1に記載のクランピング円板。
【請求項5】
各ウェブウィングの前記内側表面は、カッティング刃着座表面を含むことを特徴とする請求項1に記載のクランピング円板。
【請求項6】
各ウェブウィングは、単一のカッティング刃をクランプするためのサイズおよび配向のものであることを特徴とする請求項1に記載のクランピング円板。
【請求項7】
カッタ本体との組合せで、前記クランピング円板の前記内側表面は、前記カッタ本体の内側表面に面することを特徴とする請求項1に記載のクランピング円板。
【請求項8】
前記カッタ本体は、所定の配向でその内側表面内に配置された少なくとも1つのカッティング刃着座表面を備え、前記クランピング円板の前記スロットは、前記所定の配向と同じ配向で配置されることを特徴とする請求項7に記載のクランピング円板。
【請求項9】
少なくとも1つのカッティング刃が、前記少なくとも1つの着座表面内に配置され、前記クランピング円板は、前記少なくとも1つのカッティング刃をクランプすることを特徴とする請求項8に記載のクランピング円板。
【請求項10】
前記少なくとも1つのカッティング刃は前面を含み、前記前面は、前記クランピング円板の前記外側表面が配向される方向に配向されることを特徴とする請求項9に記載のクランピング円板。
【請求項11】
前記少なくとも1つのカッティング刃は前面を含み、前記前面は、前記クランピング円板の前記外側表面に対して概して接線の方向に配向されることを特徴とする請求項9に記載のクランピング円板。
【請求項12】
前記カッタ本体の前記少なくとも1つの着座表面は、互いに直交しないで配向された1対の斜めの着座表面を含むことを特徴とする請求項8に記載のクランピング円板。
【請求項13】
各ウェブウィングの前記内側表面は、2つの接触パッドを含み、各ウェブウィングは、クランピング中に偏向することが可能であり、それにより、前記2つの接触パッドは、前記少なくとも1つのカッティング刃に順次接触することを特徴とする請求項9に記載のクランピング円板。
【請求項14】
前記カッティング刃は、回転軸の方向で前記クランピング円板から外向きに面する外側表面を含み、前記2つの接触パッド間の前記ウェブウィングの前記外側表面の一部分は、前記カッティング刃の前記外側表面の接線が前記ウェブウィングの前記一部分と接触しないように位置することを特徴とする請求項13に記載のクランピング円板。
【請求項15】
前記カッタ本体は、各ウェブウィングと位置合わせされ、各ウェブウィングと接触しそれを移動することが可能であり、それによりカッティング刃の移動を可能にするジャッキねじを含みことを特徴とする請求項7に記載のクランピング円板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車用の切削工具、詳細にはスティックタイプのカッティング刃を備える外周削りおよびスカイビングカッタに向けられている。
【背景技術】
【0002】
本願は、2013年9月4日に出願された米国特許仮出願第61/873,477号明細書の利益を主張し、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
円筒歯車および傘歯車の機械加工に、また万能フライス盤または5軸工作機械上での一般的なフライス削り作業に使用されることになる外周カッタヘッドが知られている。大部分の外周削りカッタは、ソリッドカッタであり、ワンピースからなり、通常、高速鋼製である。他の外周カッタ設計は、円板状のカッタヘッドの外径に沿って片側または両側のポケット内に取り付けられる、またはろう付けされるカーバイドインサートを利用する。カーバイドインサートの場合の基材は、通常、浸炭焼入れ鋼である。円板状のカッタヘッドの外周表面上に取り付けられる、またはろう付けされるカーバイドインサートもまた、一般的に使用される設計である。
【0004】
インサートがその円周上にある円板状の切削工具でのフライス削りでは、切削の深さは、一部には切刃の半径方向長さに依存し得る。標準的なカーバイドインサートは、通常、約20mm未満の切刃長で使用可能であるので、そのようなカッタでは、単一のインサートより深い(たとえば、20mmより深い)切削深さを可能にするために、2つ以上のインサートをある重なり合いと共に半径方向に千鳥配置することが一般的である。切削深さと合致するチップ幅を必要とすることなしに大きな切削深さが必要とされる場合には、切刃の背後のカッタプロファイルが十分に低いプロファイルを有し、すでに機械加工された表面を通過する場合、何回かのパスで凹部、切欠き、または歯溝内に徐々に加工することが可能である。
【0005】
長い切刃で深い切削をもたらすために、半径方向に配向されるスティック刃を利用することも可能である。カッタ円板の外径に対する刃の先端の突出の量、および回転軸に対する切刃の角度に応じて、半径方向で使用可能なカーバイドスティック寸法を考慮して、たとえば50mm以上である切刃を達成することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6712566号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
スティック刃は、それらの長さに応じて、30回と150回の間で研ぎ直され得る。このこと、および刃プロファイルの研削により個々にカスタマイズされた刃角を実現することができることは、スティック刃システムを主に、外周カッタでの使用にとって非常に魅力的なものにする。しかし、スティック刃の適用は、スティック刃がそれらの側部の少なくとも2つの間でしっかりとクランプされなければならないことにより、これまで成功していない。スティック刃のクランピングは、一般に、クランプブロックおよびクランプねじを使用してスティック刃をクランプするための装備と共に、スティック刃を取り囲む剛性の刃取付けスロットを必要とする。外周カッタにおける剛性の周囲、クランプブロック、およびクランプねじは、カッタ軸の方向に著しい空間を必要とする。
【0008】
今日まで、既存のスティック刃外周カッタは、カッティング刃と(機械上に配置されたカッタに面して見て)カッタの前端との間で軸方向領域内に著しい量の材料を有するカッタヘッドを備える。そのような材料は、カッタの軸方向寸法(すなわち、厚さ)を増大し、カッタの前部と機械構成要素との間の衝突を回避するために軸方向移動の量が制約されなければならないのでカッティング刃の軸方向フィード量を制限する。さらに、切刃の長さより大きい切削深さ(切欠き、凹部、または歯車の歯)は、既存の外周スティック刃では、カッティング刃の前方の著しい軸方向カッタ寸法により実現され得ない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、スティック刃を有する低プロファイルの外周カッタに関する。カッタは、カッタ本体と、すべての刃をクランプするための可撓性円板とを備え、可撓性円板は、複数の刃クランピングウェブウィング(web wing)を提供するために各刃座間に複数のスロットを含み、ウェブウィングのそれぞれは、偏向ビームのように働き、刃を適所に保持する。好ましくは、各ウェブウィングは、1つのスティック刃をカバーする。好ましくは、可撓性円板ウェブウィング当たり2つの接触するパッドが、各刃をそのクランピング表面上で押圧し、その刃を適所に保持する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】スティック刃を有する従来の外周カッタヘッドの図である。
【
図2】本発明のスリムな低プロファイルの外周カッタの3次元図である。
【
図3】低プロファイルの外周カッタ上への上面図である。
【
図5(a)】上側クランピングパッドがちょうど接触している2点クランピング原理の図である。
【
図5(b)】部分的にクランプされた2点クランピング原理の図である。
【
図5(c)】完全にクランプされた2点クランピング原理の図である。
【
図6】その着座表面と可撓性円板の間の五角形の刃断面の断面図である。
【
図7】本発明のカッティング刃クランプ解除特徴の一実施形態の図である。
【
図8】本発明のカッティング刃クランプ解除特徴の他の実施形態の図である。
【
図9】カッティング刃の面がカッタの概して前方の方向に配向されているカッタの一例の図である。
【
図10】カッティング刃の面がカッタ本体に対して概して接線の方向に配向されているカッタの一例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で使用される「invention(発明)」「the invention(本発明)」および「the present invention(本発明)」という用語は、本明細書の主題のすべて、および下記の任意の特許請求の範囲を広く指すことが意図されている。これらの用語を含む文は、本明細書に記載の主題を制限するとも、下記の任意の特許請求の範囲の意味または範囲を制限するとも理解されるべきでない。さらに、本明細書は、本願の何らかの特定の部分、段落、文、または図面における任意の特許請求の範囲によって包含される主題について述べようとするものでも制限しようとするものではない。主題は、本明細書全体、すべての図面、および下記の任意の請求項を参照することによって理解されるべきである。本発明は、他の構成が可能であり、様々な方法で実施されること、または実行されることが可能である。また、本明細書で使用される言葉遣いおよび用語は、説明のためのものであり、限定するものとみなされるべきでないことを理解されたい。
【0012】
次に、本発明の詳細について、本発明を例としてのみ示す添付の図面を参照して論じる。図面では、同様の特徴および構成要素は、同様の符号によって参照される。
【0013】
本明細書における「including(含む)」「having(有する)」および「comprising(備える、含む)」ならびにそれらの変形形態の使用は、その後に列挙される項目およびそれらの均等物、ならびに追加の項目を包含することが意図されている。下記では、図面について述べる際に上側、下側、上向き、下向き、後方、下部、上部、前部、後部など方向が参照されることがあるが、これらの参照は、便宜上、(普通に見た)図面に対してなされる。これらの方向は、文字通り解釈されること、またはいかなる形態でも本発明を制限することはないものとする。さらに、「第1」「第2」「第3」などの用語は、本明細書では、説明のために使用され、重要性または有意性を示すことも暗示することもないものとする。
【0014】
図1は、たとえば特許文献1に開示されているものなど工作機械(図示せず)のスピンドルに取外し可能に固定される従来の外周切削工具2を示す。切削工具2は、複数のスティック刃6を有するカッタヘッド4を備える。クランプブロック8が各スティック刃の上方に位置する。
図1におけるカッタは、一体型のクランプねじ12と共に、クランプブロック8の上方に上部リング10を有する。クランプブロック8、上部リング10、およびクランプねじ12の構成は、カッティング刃の前方の軸方向に、かなりのカッタヘッドビルドアップBを生み出す。カッタの中心に向かって切刃の接線を延長すると、スティック刃がカッタ外径上のスロットを出る点を避けて通るのではなく、干渉する。
【0015】
本発明は、
図2に示されているように、スティック刃6(バーブレードとしても知られる)を有する低プロファイルの外周カッタ18に関する。従来技術のように各スティック刃について個々のクランプブロックおよび/またはクランプねじを収容するために必要とされる大きな壁の厚さを回避するために、本発明の可撓性クランピング円板20(以下、可撓性円板)が、カッタ可撓性円板の中心において、またはその周りで、1または複数のクランプねじ22ですべての刃6をクランプするために使用される。
図2は、本発明の低プロファイルの外周カッタの3次元図を示し、可撓性円板20がカッタ本体30の上部表面または内側表面33に隣接して位置し、カッタ18の領域内でカッティング刃6の刃シャンクをカバーする。
【0016】
スティック刃の公差ならびにカッタ着座表面内の公差内での個々のサイズ変動に対処するために、
図3は、本発明の可撓性円板20が複数のスロット24を含むカッタ18の上面図を示す。可撓性円板20は、そのそれぞれが偏向ビームのように働く複数の刃クランピングウェブウィング26を提供するために、カッタ本体30の刃座(
図6における48)のすべての間にスロット24が位置するように配置される。換言すれば、スロット24は、着座表面と連続する着座表面との間に存在する。組み立てられたカッタでは、スロット24は、カッティング刃6のすべての間に位置することになる。スロット24は、可撓性円板20の厚さを通って延び、可撓性円板周りで、好ましくは等距離で離隔される。スロット24は、可撓性円板20の周辺部から内向きに延び、可撓性円板の半径の概して約50パーセントの長さを有する。スロット24の方向は、カッティング刃6およびカッタ本体30の着座表面48の向きに依存する。
【0017】
カッティング刃6間のスロット24は、個々の可撓性のウェブウィング26を提供し、ウェブウィングのそれぞれは、中央ねじ22(この例では8本)にトルク付与されたときそれぞれのカッティング刃を適所に保持する。各ウェブウィング26は、1つの特定のスティック刃6を、好ましくは1または複数の着座表面を有する刃の側に対して反対のカッティング刃の側でカバーすることが好ましい。しかし、ウェブウィング26は、2以上のカッティング刃をカバーしクランプしてもよく、その場合、スロット24の数および位置は、それに応じて調整されることになる。
図4は、低プロファイルカッタ18の断面図を示す。好ましくは、各円板ウィング26の内側表面上の2つの接触パッド36、38(
図5(a))が、そのクランピング表面上の各刃6を適所に押圧する。あるいは、1つの接触パッドまたは2つより多い接触パッドが各ウェブウィング26上で使用されてもよい。カッタ本体30の外側表面35から内側表面33に延びるジャッキねじ31は、この図では、裏打ちされている。
【0018】
図4および
図5(a)に示されているように、可撓性円板20の中央ハブ28は、円板が刃6を保持するように適所に配置されたときカッタヘッド本体30上の位置決め表面32に接触しないような長さを有する。ハブ壁内に配置されるねじ22は、ハブ28の面34とカッタ本体30上の位置決め面32との間の初期間隙Δhが0に減少されるようにトルク付与され(すなわち、締め付けられ)なければならない。Δhは、2つの成分Δh
1およびΔh
2からなる。各ウェブウィング26の内側は、カッティング刃6をクランプするように働く2つのクランピングおよび接触パッド36、38(
図5(a))を有することが好ましい。スティック刃6の切刃により近い接触パッド36は、可撓性円板20がカッタ本体上でその位置に配置されたとき最初に接触する。カッタアセンブリのこの段階では、第2の接触パッド38(切刃に対して反対側である刃の端部により近い)は、Δdの刃クランピング表面に対する間隙を有し、下側ハブ面34とカッタ本体30上の位置決め面32との間の間隙は、Δhである。クランピングねじ22(
図5(a)には図示せず)は、トルク付与されない。ハブねじ22にトルク付与されるにつれて、間隙Δdは閉じられることになり、それと同時に、下側ハブ面34と位置決め表面32との間の間隙は、ΔhからΔh−Δh
1=Δh
2に減少されることになる。好ましくは、可撓性円板20は、無心焼入ればね鋼など線形弾性材料から製造される。Δdから0への間隙の減少は、
図5(b)に示されているように上側パッド36の接触力が所定の量(たとえば、9000N)に蓄積するように決定される。
【0019】
図5bは、下側クランピングパッド38が力のない状態で刃6のクランピング表面にちょうど接触するように部分的にトルク付与された2点クランピング原理を示す。部分的なトルク付与による弾性偏向は、上側クランピングパッド36にてクランピング力F
1(この例では9000N)を生み出す。下側ハブ面34とカッタ本体30上の位置決め面32との間の間隙は、いまΔh
2である。
【0020】
図5(c)でわかるように、ハブねじトルク付与を続行することにより、下側ハブ面34とカッタ本体30上の位置決め面32との間の間隙Δh
2が閉じられることになる。間隙Δh
2は、可撓性円板材料の線形弾性特性により、下側接触パッド38にて追加のクランピング力(たとえば、4500N)が蓄積されることになるように決定される。刃クランピング作用のこの第2の部分は、上側パッド36のクランピング力に、Δdの初期間隙決定で補償され得るわずかな程度で影響を及ぼし得る(たとえば、それを下げる)。可撓性円板20内のハブねじ22は、順番に、たとえば十字パターンを適用して共にトルク付与されることが好ましい。トルク付与の順番が適用されている間、間隙Δhは、上側パッド36および下側パッド38に対する第1および第2のクランピング力にかかわらず、1つのステップで閉じられる。
【0021】
図5(c)は、可撓性円板20のハブ28内のクランピングねじ22が完全にねじ込まれ、特定の値にトルク付与された後の2点クランピング原理を示す。下側ハブ面34とカッタ本体30上の位置決め面32との間の間隙は、いまΔh=0である。追加の弾性偏向が力F2(この例では4500N)を生成した。クランピングパッド36とクランピングパッド38の間の偏向および下側クランピングパッド38と下側ハブ面34の間の偏向の相互の影響について考慮されなければならない。可撓性円板20の設計は、上側クランピングパッド36の接触力をその初期値に保つために最適化されてもよい。間隙Δhが閉じる時点で上側クランピングパッド36が所望の力を出すように間隙Δdを増大または減少させることも可能である。また、間隙Δhは、ハブ円板28内のクランピングねじ22にトルク付与した後、間隙Δhが閉じる点で、下側クランピングパッド38での所望のクランピング力を確保するために最適化されなければならない可能性がある。
【0022】
最初にカッティング刃6をカッタ本体30内のそれらのそれぞれのスロット内に配置し(着座表面に接触し)、カッタ本体30内の対応するねじ穴と整列されたクランプねじ22で可撓性円板20をその場所に配置し、単に手の力での嵌合するまでねじ22を回すことが可能である。この状態では、カッティング刃をそれらの長さ方向(すなわち、カッティング刃軸方向)で所定の位置に摺動し、すべての刃の先端がカッタの中心に対して同じ距離を確実に有するようにすることが可能である。スティック刃6のこの軸方向の位置決めの後、所定のトルクまでハブねじ22にトルク付与することができる。これは、間隙Δhを閉じ、切削作業時のカッタ18の使用中、ゆるまないようにクランプねじ22を固定することになる。一例として、9インチ(228.6mm)の直径を有するカッタは、Δd=0.75mm、Δh
1=0.80mm、Δh
2=0.12mm、およびΔh=0.92mmのような間隙寸法および偏向を有することができる。
【0023】
カッタの組立て中(カッタ「ビルディング(building)」としても知られる)、スティック刃6は、それらの軸方向に少量だけシフトする傾向を有することがある。そのようなシフトは、半径方向のカッタ振れまたは先端振れとして知られる状態を引き起こすことがある。カッタビルディングにおける最終ステップは、カッタの形直しを含むこととすることができる。半径方向の刃先端の場所が測定された後で、カッティング刃は、補正された位置に少量だけ軸方向に移動されなければならず、これが形直しと呼ばれる。従来の外周スティック刃カッタでは、各刃は、1つまたは2つのクランプねじで固定される。これは、他の刃のどれにも影響を与えることなしに1つ(またはおそらくは両方)のクランプねじをゆるめ、個々の刃をその補正された位置に摺動することを可能にする。本発明の可撓性円板20によってクランプされた他の刃のいずれかの確実なクランピングに影響を与えることなしに単一の刃を半径方向で再配置することは、可撓性円板ハブねじ22の1または複数をゆるめることで可能でない。1つのハブねじがゆるめられた場合、刃6のどれも軸方向移動を可能にするように自由にならない。いくつかの隣接するハブねじ22がゆるめられた場合、いくつかの刃が自由になり、クランピングパッドを弛緩させるだけで何らかの小さな移動を受ける可能性さえある。
【0024】
本発明は、カッタ本体30の裏に位置するジャッキねじ31(
図4)の使用を介してカッティング刃をクランプ解除することによって、上記の欠点を克服する。各ジャッキねじ31は、クランピングウェブ26の反対側で刃に並んで、クランピングウェブウィング26がスティック刃6より広く、ジャッキねじ31の先端とウェブウィング26との間のしっかりとした規定された接触のために十分な表面積を提供する場所で配向される。個々の刃6を軸方向に少量だけ、または(異なる刃と交換するほど)大きな量で移動するために、ジャッキねじは、特定の刃をゆるめるのに十分なだけ裏からトルク付与される。次いで、刃は、所望の位置に自由に移動され得、ジャッキねじは解放され、これは再び特定の刃を所望の位置で確実にクランプすることになる。
【0025】
本発明の可撓性円板およびクランプ解除原理と組み合わされた本発明のカッタ本体設計は、カッタヘッドの中心に向かって切刃の延長を越えてクリアランスを有する低プロファイル外周カッタヘッドを生み出すという問題を解決する。本発明のカッタ18は、1種類の刃(たとえば、
図5(b)に示されているようにカッタの上部側7のみ、下部側9のみ、または両側7、9上の切刃)または代替の刃構成(たとえば、切刃が上部側7上にある1つの刃と、切刃が下部側9にあるそれに続く刃など)を備えることができる。上述のカッティング刃の場合、先端縁部11の全部または一部もまた切削のために使用され得る。代替の刃の場合、切刃の長さより深いフライス削り切欠きまたはスロットを可能にするために、切刃接線40、42(たとえば、
図5(b)参照)が概してカッタの中心に向かって延び、(裏または下部側にて)カッタ本体30および(上部または前部側にて)可撓性円板20を避けて通ることが重要である。
【0026】
図6は、カッティング刃6が非四角形状の刃断面を有する、
図10のカッタからのカッティング刃6の断面図を示す。カッティング刃6は、カッタ本体30内の刃取付けスロット48の着座表面44、46に接して、また可撓性円板ウェブウィング26の下部表面に接して配置される。この構成は、積極的な着座原理により最適な刃着座状態をもたらすが、本発明は、矩形または方形の断面を有するスティック刃と、したがってカッタ本体30内の相補的に形作られた刃取付けスロットとを有する低プロファイルカッタおよびクランピング原理をも企図している。さらに、各ウェブウィング26の下部または内側もまた、刃着座表面37を含むことができる。
【0027】
カッタ本体30および可撓性円板20は、その中に配置されるカッティング刃の配向の方向がカッタ18の軸Tと交差してもしなくてもよいように形成されてよい。カッティング刃は、切刃のチップ除去作用を最適化する、および/または刃前面を研削する際により自由度を可能にするために工具軸と交差しないように配向されてもよい。カッティング刃は、好ましくは回転軸に対して直交せず(たとえば、
図4参照)、それにより刃先端をカッタ前面の前に位置決めするが、カッタ回転軸に対するカッティング刃の直交する向きもまた本発明によって企図されている。非直交配置は、いくつかの切削作用を可能にし、
図1の従来技術のカッタで発生する可能性があるカッタの前での干渉を解消する。上記で論じた刃スロットの傾きは、刃クランピング表面と円錐形のクランプ円板ウェブウィング26との間の位置ずれに通じる可能性がある(
図6)。これは、刃側部がカッタ軸と整列する場合発生することがある。刃の着座表面は、カッタ本体30の刃着座表面44、46と円錐形の可撓性円板ウェブウィング26との間の最良の嵌合を見出すために、わずかに傾けられてもよい。
図6に示されている例では、可撓性円板ウェブウィング26の下部表面は、カッティング刃6との最適なクランピング接触を提供するために、適切な角度下でセレーションを含むことができる。
【0028】
図7および
図8は、可撓性のウェブウィング26をクランプ解除するために挿入可能および取外し可能なクランプ解除デバイス50を備える本発明の追加の特徴を示す。デバイス50は、ハブ円板28の中央開口56内に挿入可能な中央の段差付き円筒形部分54を有する本体52を備える。本体52は、円筒形部分54から半径方向外向きに延びるフランジ部分58をさらに含む。フランジ部分58は、好ましくは適切に配向された1または複数のねじ山付き開口60を備え、それにより、ねじ山付きねじ62などの手段が可撓性円板20のウェブウィング26内の穿孔64と嵌合係合するように通ることができる。ウェブウィング26と係合した後で、ねじ62またはナット66を回すことにより、ウェブウィング26がカッティング刃6から離れるように持ち上がり、それにより、刃の軸方向の調整、さらには交換のために刃を除去することが可能になる。デバイス50は、所望のウェブウィング26の上方に配置するために1つの開口を有してもよく、複数の開口(たとえば、可撓性円板20上のウェブウィング26と同数)を有してもよい。使用されていないとき、デバイス50は、中央開口56から除去される。
【0029】
カッティング刃6の前面は、
図9および
図10に示されているように異なる方向で配向されてもよい。
図9は、カッタ18および可撓性円板20の概して前方の方向(すなわち、概して軸Tの方向)に配向されたそれらのそれぞれの前面72(および関連の切刃および/またはクリアランス縁部)を有するカッティング刃6を示す。このタイプのカッタは、たとえば、荒削りおよび仕上げスカイビングプロセスを含めて、スカイビングによって歯車を生産するためのプロセスに適している。スカイビングのおおよその力の方向が、F
Sとして
図6に示されている。力Fsは、カッティング刃6を両着座表面44、46内に押圧することが好ましい。力の方向、および/またはカッタ本体30内の刃取付けスロット48の向きに応じて、F
Sは、着座表面に対して対称であってよく、これが好ましい。
【0030】
図10では、カッティング刃6の前面66(ならびに関連の切刃および/またはクリアランス縁部)が、カッタ本体30および可撓性円板20に対して概して接線の方向に配向される。このタイプのカッタは、たとえば、フライス削りによって歯車を生産するプロセスに適している。フライス削りのおおよその力の方向が、F
Mとして
図6に示されている。力F
Mは、カッティング刃6をより急峻な着座表面46に接して押圧することが好ましい。
【0031】
図9および
図10のカッタでは、四辺または非四角形のカッティング刃が使用され得る。非四角形のカッティング刃については、カッティング刃の前面の配向の方向にかかわらず、
図6に示されているようにカッタ本体30内に斜めの着座表面44、46(すなわち、互いに直交しない)を提供することが好ましい。そのような着座表面は、切削プロセス中にカッタの安定性を向上させる。
【0032】
本発明について好ましい実施形態を参照して述べられているが、本発明は、その詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、添付の特許請求の範囲の精神および範囲から逸脱することなしに、主題が関連する技術分野の当業者には明らかになるであろう修正を含むことが意図されている。