特許第6592006号(P6592006)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6592006旧式システムと互換性を持つ低電力モード
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6592006
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】旧式システムと互換性を持つ低電力モード
(51)【国際特許分類】
   H04B 3/32 20060101AFI20191007BHJP
   H04M 11/06 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
   H04B3/32
   H04M11/06
【請求項の数】14
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-563176(P2016-563176)
(86)(22)【出願日】2015年4月28日
(65)【公表番号】特表2017-516391(P2017-516391A)
(43)【公表日】2017年6月15日
(86)【国際出願番号】US2015027983
(87)【国際公開番号】WO2015168117
(87)【国際公開日】20151105
【審査請求日】2018年3月28日
(31)【優先権主張番号】61/985,168
(32)【優先日】2014年4月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512320571
【氏名又は名称】ティーキュー デルタ, エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】TQ DELTA, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100092956
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 栄男
(74)【代理人】
【識別番号】100101018
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 正
(72)【発明者】
【氏名】マルコス・シー・ツァネス
【審査官】 佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第02369781(EP,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0271129(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0026926(US,A1)
【文献】 特開2005−323301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 3/32
H04M 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランシーバにより、L2モードに移行する前に、前記L2モードから1回目のL2モード終了ステップ後に少なくとも最小期待スループットを示すパラメータを持つメッセージを送信するステップまたは受信するステップと、
前記L2モード中に、第1の終了ステップ後の期待スループットが前記メッセージに示された最小期待スループット以上であることを条件として作動するステップと、
を備える方法。
【請求項2】
前記作動は、L2モード中に少なくとも一つのビットアロケーション値を決定するステップを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記作動は、L2モード中に少なくとも一つのフレーミングパラメータ値を決定するステップを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記メッセージは、初期化中に送信される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
L2モード終了手順中に、前記メッセージに示された前記最小期待スループット以上である期待スループットをもたらす少なくとも一つの送信パラメータを選択するステップを更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも一つの送信パラメータ値を持つ第2メッセージを送信するステップを更に備える、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
送信機と受信機とを備え、L2モードに移行する前に、前記L2モードから1回目のL2モード終了ステップ後に少なくとも最小期待スループットを示すパラメータを持つメッセージを送信または受信するように作動可能なトランシーバであって、
前記トランシーバは、前記L2モード中に、第1の終了ステップ後の期待スループットが前記メッセージに示された前記最小期待スループット以上であることを条件として作動するトランシーバ。
【請求項8】
前記作動は、L2モード中に少なくとも一つのビットアロケーション値を決定することを備える、請求項7に記載のトランシーバ。
【請求項9】
前記作動は、L2モード中に少なくとも一つのフレーミングパラメータ値を決定することを備える、請求項7に記載のトランシーバ。
【請求項10】
前記メッセージは、初期化中に送信される、請求項7に記載のトランシーバ。
【請求項11】
L2モード終了手順中に、前記メッセージに示された前記最小期待スループット以上である期待スループットをもたらす少なくとも一つの送信パラメータを選択可能な低電力モードモジュールを更に備える、請求項7に記載のトランシーバ。
【請求項12】
前記トランシーバは、少なくとも一つの送信パラメータ値を持つ第2メッセージを更に送信する、請求項11に記載のトランシーバ。
【請求項13】
請求項1〜6のうちの任意の一以上に記載のステップを実行するように構成された、一以上の手段。
【請求項14】
一以上のプロセッサにより実行されたとき、請求項1〜6のうちの任意の一以上の請求項に記載の方法を実行させる命令を記憶した、コンピュータが可読な非一時的情報記憶媒体。


【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、米国特許法119条(e)の規定により、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、2014年4月28日に出願した「Low Power Mode with Legacy Compatibility」という表題の米国特許出願第61/985,168号の利益および優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
例示的態様は、通信システムに関する。更に詳しくは、例示として、方法、システム、手段、プロトコルおよびコンピュータ可読記憶媒体が、通信システムにおける低電力モードに関する。
【背景技術】
【0003】
DSL(デジタル加入者線)システムのための低電力モード(LPM)(L2モードとしても知られる)の開発中、最も重要な課題の一つは、既設の旧式DSLシステムへの影響であることが明らかとなった。隣接回線からの漏話雑音が大きく変化すると、旧式DSLシステムは、LPMへの移行およびLPMの終了という作動ができない。例えば、LPMについての従前の方法は少なくとも、リトレインが全く発生しないことを保証するために、旧式設備の通信線が保護されることを確かなものとはしていない。
【発明の概要】
【課題を解決する手段】
【0004】
本明細書で考察する目的および改善策の一つは、以下の(相容れない)サービス要件に適合する低電力モードを提供することである。
1. 超高速でのL2モードの終了(例:1〜2秒):この要件は、ユーザ体験に関連するアプリの要件となる。最も普遍的な例は、直ちにHDTVデータストリームを必要とするテレビのスイッチをユーザが入れることである。ユーザは、リモコン装置のボタンを押した後1〜2秒程度でテレビが映ると期待するのが、普通である。
2. 低電力モードを終了するとき、隣接回線への漏話/雑音が過度の変動(非定常)にならないようにすること。トランシーバが低電力モードを終了するとき、送信電力レベルが増加するのに伴い、隣接回線への漏話が増加する可能性がある。漏話が増加すると、他の回線にビット誤りまたはリトレインをも惹起させる可能性がある。このようなことは、DSLサービス提供者にとっては、断じて、容認できない。
【0005】
低電力モードについての従前の方法は、このような問題に対処しようと努力してきたが、すべて、一つの重要な点において、失敗に終わった。従前の方法は、旧式の(既設の)システムへの対処を行わなかった。言い換えれば、新たな低電力モード機能および既設のものとは異なった新たなシステムにて実施可能な特徴事項を定義することで、これらの要件を充足する新たなLPMを設計することは、困難ではなかった。問題は、新たな機能を持たず、新たなLPM機能および特徴事項を追加するための改良を行うことができない既設のDSLシステムが、夥しくあることである。特に、要件(2)は、現実に既設されているシステムにとっては、重大な問題である。なぜならば現実に既設されているシステムは、通常、漏話雑音のレベルが大きく変化すると、安定的に作動できないからである。
【0006】
本明細書で開示する技術から享受できるいくつかの例示的な効果は、以下を含む。
1. アプリのデータ転送速度の超高速終了(1〜2秒)要件を充足できる。例えば、L2モードポリシーおよび/またはLPM手順は、L2モード終了データ転送速度が、アプリの要件を充足できることを確かなものとしている。
2. 旧式の既設システムにおいて、リトレインを避けることができる。例えば、ΔPSD、および/またはPSDの増加もしくはL2モード終了ステップの電力増加を制限する新たなL2モードポリシーおよび/またはLPM手順を用いることで、旧式システムの安定化を確かなものとすることができる。これらに代えてまたはこれらに加えて、先のL0モード中にアクティブである全ての副搬送波をL2モード中にアクティブに保持させることで、漏話が大きく増加することを避けることができる。
3. 電力を節減できる。この技術により、安定性およびアプリ要件(1)および(2)を充足させながら、節減対策を最大限に発揮できる、新たなL2モードポリシーを実施することで、電力節減を図ることができる。
【0007】
上記した態様および他の態様の何れかを、ネットワーク管理システムの内部か、ネットワークおよび/またはトランシーバの内側または外側に配置されたネットワーク操作装置の内部に配置することができる。ネットワークの内側または外側に配置されたネットワーク操作装置またはネットワーク管理装置は、ユーザ、消費者、サービス提供者もしくは電力供給業者、または政府機関によって管理および/または運営されることができる。
【0008】
これらおよび他の特徴事項や利点は、本明細書の以下の例示的実施形態の詳細な説明に記載されており、また、その記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
添付図面を参照して、例示的実施形態を詳細に説明する。以下において、
【0010】
図1図1は、二台のトランシーバを備えた通信システムの一例を示す。
【0011】
図2図2は、低電力モードへの移行のための、第1トランシーバと第2トランシーバとの間の流れを示す。
【0012】
図3図3は、低電力モードの終了のための、第1トランシーバと第2トランシーバとの間の流れを示す。
【詳細な説明】
【0013】
例示的実施形態を、DSKシステムにおける低電力モードのための通信システム、プロトコル、技術、方法に関連して、すなわち、全体として、通信プロトコル(種類不問)を用いた通信ネットワーク操作(種類不問)に関連して説明する。このようなネットワークの例として、家庭用電力線ネットワーク、アクセス電力線ネットワーク、家庭用同軸ケーブルネットワーク、有線ネットワーク、アクセス同軸ケーブルネットワーク、家庭用電話網、無線LANネットワーク、無線WANネットワークおよびアクセス電話網がある。しかしながら、全体としては、本明細書で述べているシステム、方法および技術は、他の型式の通信環境、ネットワークおよび/またはプロトコルについても等しく機能することは理解されるべきである。
【0014】
例示的なシステムおよび方法は、次のようなものとの関連において記載される。有線もしくは無線モデムおよび/またはソフトウェアおよび/またはハードウェアテストモジュール、通信試験装置等、ラインカード、G.hnトランシーバ、MOCAトランシーバ、Homeplug(商標)トランシーバ、電力線モデム、有線または無線モデム、DSLモデム、テスト機器、マルチキャリアトランシーバ、無線による広域/ローカルエリア・ネットワークシステム、衛星通信システム、IP、イーサネット(商標)またはATMシステムのようなネットワークを利用した通信システム、診断機能を装備したモデム、無線および/またはネットワーク機能付きモデム等、あるいは、MOCA、G.hn、Homeplug(商標)、802.11、802.11x、802.15、802.16等の通信プロトコルの内の任意に一以上のものと連動して作動可能な通信装置を備えた、別個に設けられたプログラム化された汎用コンピュータ。しかしながら、本開示を不必要にわかりにくくしないように、以下においては、ブロックダイアグラム形式で示すことができるか、あるいは包括的ないしは周知の構造、作動および装置の記載を省略する。
【0015】
説明を行うにあたり、技術内容を徹底的に理解してもらうために、多数の詳細例について述べてある。しかしながら、本明細書で開示の技術内容は、本明細書で説明する特定の具体例のみならず、種々の態様で実用化が可能である。更に、本明細書で説明する例示的実施形態においては、統合されたシステムの種々の構成要素が示されているが、システムの種々の構成要素は、分散ネットワークの離れた箇所に配置することができることは理解されたい。分散ネットワークの例としては、通信ネットワーク、ノード、ドメインマスターおよび/またはインターネット内部、専用のセキュア化された、セキュア化されていないおよび/または暗号化されたシステム内部および/またはネットワーク内外に設けられたネットワーク操作装置またはネットワーク管理装置内部等がある。一例としては、ドメインマスターは、ネットワークまたは通信環境のいずれか一以上の態様を管理および/または構築するすべての装置、システムまたはモジュールを意味する場合にも使用できる。
【0016】
したがって、システムの構成要素は、一以上の装置に組み込み使用されたり、分離されて複数の装置に使用されたりすることができることは理解されるべきである。装置の例としては、モデム、局、ドメインマスター、ネットワーク操作装置またはネットワーク管理装置、ノードつまり通信ネットワークのような分散ネットワークの特定のノードに配置されたものがある。以下の記載から理解されるように、計算効率上の理由から、システムの構成要素は、稼働に影響を与えない限り、分散ネットワーク内であれば、どこにでも配置することができる。例えば、種々の構成要素を、ドメインマスターや、ノードや、MIB、ネットワーク操作装置またはネットワーク管理装置のようなドメイン管理装置や、前述した装置を組み合わせたものに、配置することができる。同様に、システムにおける一以上の機能部を、モデムと該モデムと関連する計算装置ないし計算システムの間、ならびに/あるいは専用試験装置および/または専用測定装置内に分散して配置することができる。
【0017】
更に、構成要素を接続する通信チャネルを備える種々のリンク5は、有線リンク、無線リンクまたは両者の任意の組み合わせ、あるいは他の公知のまたは将来開発されるであろう構成要素であって、接続された構成要素に対して、および接続された構成要素からデータ供給および/またはデータ通信を行うことができるものであってよいことは理解されるべきである。本明細書で使用されているモジュールという用語は、公知のまたは将来開発されるであろうハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアまたはそれらの組み合わせであって、構成要素に関連する機能を遂行可能なものの全てを含意する。本明細書で使用されている、決定する、計算する、および演算するという用語、ならびにそれらの変化形は同じ意味で使用され、どんな種類の方法論、過程、技法、数式演算またはプロトコルをも包含するものである。本明細書では、トランシーバおよびモデムという用語は、同じ意味で使用される。本明細書では、送信モデムおよび送信トランシーバだけでなく、受信モデムおよび受信トランシーバという用語もまた、同じ意味で使用される。
【0018】
管理インターフェースという用語は、管理エンティティおよび/または技術者と、トランシーバとの間の、例えば、国際電気通信連合標準G.997.1にて記載されているようなCO−MIBまたはCPE−MIB等のどんな種類のインターフェースをも指す。この国際電気通信連合標準G.997.1は、引用によりその全体が本明細書において援用される。
【0019】
更に、本明細書に記載した例示的実施形態のいくつかは、所定の機能を行うトランシーバの送信部に関して記載しているが、この開示は、同じトランシーバおよび/または他のトランシーバの両方における、対応する受信側の機能をも含むことも意図している。その逆の場合も同様である。
【0020】
図1には、トランシーバ100および200を備える、一の例示的実施形態にかかる通信システムが示されている。トランシーバ100および200は、本明細書で考察している技術を具体的に実現するように、構成されている。
【0021】
周知の構成要素類(図面が複雑になるのを避けるために、図示を省略)に加えて、トランシーバ100および200の各々は、低電力モードモジュール124を備えると共に、次の構成要素を、オプションとして備える。一以上のアンテナ4、インターリーバ兼デインターリーバ108、アナログフロントエンド(AFE)112、メモリないし記憶装置116、スクランブラ兼デスクランブラ140、制御装置たるマイクロプロセッサ120、送信機128、変調器兼復調器132、エンコーダ兼デコーダ136、受信機142、DAC/ADC158(アナログ・デジタルコンバータ兼デジタル・アナログコンバータ)ならびにオプションとしてのセルラー方式無線機、Bluetooth(商標)およびBluetooth(商標)低エネルギー無線機154のような、一以上の無線機。トランシーバ100および200内のこれらの種々の構成要素は、一以上のリンク(図面が複雑になるのを避けるために、再度、図示を省略)により接続されている。例えばスクランブラ、エンコーダ、変調器等のような機能ブロックは、例えば、イコライザ、増幅器およびエコーキャンセラー(図示略)のような他のトランシーバの構成要素類、と組み合わされると、高性能化をもたらすのに裨益する。デスクランブラの受信機側においては、送信されたペイロードデータを復号するために逆操作が行われる。
【0022】
通信チャネル5を介した有線通信に加えて、トランシーバ100および200は、オプションとして、多入力・多出力(MIMO)通信やBluetooth(商標)等のような無線通信に用いるために、一以上のアンテナ4を持つことができる。アンテナ4には、指向性アンテナ、無指向性アンテナ、モノポールアンテナ、パッチアンテナ、ループアンテナ、マイクロストリップアンテナ、ダイポールアンテナ、およびその他の通信の送受信に適したアンテナがあるが、これらに限定されるものではない。一の例示的実施形態においては、MIMOを用いた送受信は、特定のアンテナ設置空間を必要とするかもしれない。別の例示的実施形態では、MIMO送受信は、空間ダイバーシティが各アンテナにおいて異なるチャネル特性を考慮することができるようにする。更にまた別の実施形態例においては、MIMO送受信を用いて、複数のユーザに対して資源配分を行うことができる。
【0023】
通信チャネル5は、通常、アナログフロントエンド(AFE)112と相互作用をなすので、通信チャネル5を介して受信した変調信号処理を正確に行うことができる。AFE112は、受信したアナログ信号を、処理のために、デジタル信号に変換する。
【0024】
トランシーバ100および200の各々はまた、制御装置たるマイクロプロセッサ120およびメモリないし記憶装置116を備えることができる。トランシーバ100および200は、本明細書に記載の情報を構成および送信、または受信するのに必要な情報や処理手順を記憶できるメモリないし記憶装置116と相互作用し得る。メモリないし記憶装置116はまた、制御装置たるマイクロプロセッサ120によるアプリプログラムや命令を実行するのに関連して、そしてプログラム命令および/またはデータを、一時的に、または長期的に記憶するために使用できる。例として、メモリないし記憶装置116は、コンピュータ可読装置、RAM、ROM、DRAM、SDRAMおよび/または他の記憶装置および/または情報伝達媒体を備えることができる。
【0025】
制御装置であるマイクロプロセッサ120は、トランシーバ100に関連したアプリプログラムまたは命令を実行する、プログラム可能な汎用処理装置ないしは制御装置から構成することができる。更には、制御装置であるマイクロプロセッサ120は、本明細書に記載の情報を構成および送信するための処理を行うことができる。制御装置たるマイクロプロセッサ120は、多重プロセッサコアを含むことができ、および/または多重仮想プロセッサを実装することができる。オプションとして、制御装置であるマイクロプロセッサ120は、多重物理プロセッサを備えることができる。一例として、制御装置たるマイクロプロセッサ120は、特別に構成された特定用途向け集積回路(ASIC)または他の集積回路、デジタル信号処理装置、制御装置、結線された電子ないし論理回路、プログラム可能論理装置ないしゲートアレイ、特定用途向けコンピュータ等を備えることができる。
【0026】
トランシーバ100および200の各々は、更に、他の装置へ信号を送信する送信機128および他の装置から信号を受信する受信機142を備えることができる。
【0027】
トランシーバ100および200はまた、オプションとして、セキュリティモジュール(図示略)を含めることができる。このセキュリティモジュールは、トランシーバ100を無線機器、アクセスポイント、他の装置または他の利用可能なネットワークに接続するために必要なセキュリティパラメータに関する情報を含むことができるが、この情報に限定されるわけではなく、かつWEPまたはWPAセキュリティアクセスキー、ネットワークキー等を備えることができる。WEPセキュリティアクセスキーは、Wi−Fiネットワークにより使用されているセキュリティパスワードである。このコードを知ることで、無線機器は、アクセスポイントと情報交換を行うことが可能となるものである。情報交換は、しばしばネットワーク管理者によって選ばれるWEPアクセスコードを用いてコード化されたメッセージを通じて行われ得る。WPAは、WEPに比べて暗号の堅牢性が強いネットワーク接続と関連して使用される、追加的なセキュリティ標準である。
【0028】
更には、トランシーバ200は、一以上の装置、例えば、テレビ204、セットトップボックス208、モバイル機器、タブレット、スマートフォン、計算装置212、一以上のIoT(Internet of Things)装置等に接続可能であり、全体として、どのような装置もトランシーバ200と接続可能となっている。以上論じたように、これらの装置の一以上のものは、例えば、当該装置のスイッチが入っているか切れているか、アプリが作動中か休止中か、および/または低電力モードモジュールに対するバンド幅要件に関する情報について、情報通信を行うことができる。例えば、スマートフォンまたはリモコン装置は、直接的または間接的に、トランシーバに、ユーザが高品位のビデオストリームを3分52秒だけ流す要請をしたことを指示することができる。トランシーバは、ビデオストリーム継続時間が、L2モードを、指示に依拠して適切に管理できることを知ることができる。加えて、またはこれに代えて、一以上のトランシーバが低電力モードモジュールやプロセッサとの連携により、テレビ、セットトップボックス、計算装置等のうちの一以上のもののバンド幅消費の変化を監視することができる。この定量されたバンド幅の変化を、本明細書で論議されているL2モードへの移行やL2モードの終了に用いることができる。
【0029】
更に、低電力モードの終了は、例えば、2秒未満で完了するので、ユーザ体験が改善される。一例示的実施形態においては、トランシーバ100に新たなL2モードポリシーが規定される。L2モードポリシーは、以下のパラメータ(または、これらのパラメータを示す情報)のうちの一以上を使用する。
1. L2−TARATPR:L2モードにおける目標総送信電力低減(単位:dB)
2. L2−ETR−MIN:L2モード間の最小期待スループット(ETR)(単位:kbit/s)
3. MINDR−FS:1回目のL2モード終了ステップ後の最小データ転送速度(またはETR)。このデータ転送速度(またはETR)は、アプリのデータ転送速度要件に依拠する。例えば、ユーザがテレビをつけた時、データ転送速度を5 Mbpsに設定してビデオストリームをサポートすることができる。
4. MAXΔPSD−PS:L2モードへの移行またはL2モード終了ステップについて、ステップ毎の最大ΔPSD。これは、旧式システムのCO−MIB構成に依拠する。例えば、この値は、旧式システムがSRA_DOWNSHIFT_MARGIN = 3 dBであれば、3 dBと設定できる。
5. MINTIME−PS:L2モードへの移行ステップ間またはL2モード終了ステップ間におけるステップ時間当たりの最小時間。これは、旧式システムのSRA反応時間に依拠することができる。例えば、この値は、旧式システムが全帯域SRAを実行可能ならしめる場合は、40秒と設定できる。
6. MAXSTEPS:L2モードへの移行またはL2モードの終了に要するステップの最大数
【0030】
トランシーバ100は、これらのパラメータ(または、これらのパラメータを示す情報)のうちの一以上を、DSL制御エンティティすなわちCO−MIBのようなインターフェース、またはベクトル化制御エンティティ(VCE)のようなDSL制御エンティティ等(図示略)から受信することができる。
【0031】
トランシーバ100は、これらのパラメータ(または、これらのパラメータを示す情報)のうちの一以上を、送信機128を用いて送信したり、第2トランシーバから、受信機142を用いて、初期化中に送信されたメッセージにて、受信したりすることができる。第2トランシーバは、トランシーバ100と同等の構成要素類を備える。
【0032】
トランシーバ100は、これらのパラメータ(または、これらのパラメータを示す情報)のうちの一以上を送信したり、第2トランシーバから、SHOWTIME(安定状態送信またはユーザデータ送信モードとしても知られる)中に送信されたメッセージにて、受信したりすることができる。このメッセージは、EOCメッセージとすることができる。ここで、EOCメッセージとは、埋め込み操作チャネル(EOC)を介して送受信されるメッセージのことである。
【0033】
これに代えて、またはこれに加えて、低電力モードモジュール124およびプロセッサ120が協働して、トランシーバ100は、これらのパラメータ(または、これらのパラメータを示す情報)を決定することができる。トランシーバ100に代わって、VCEが、これらのパラメータ(または、これらのパラメータを示す情報)を決定することもできる。
【0034】
一例示的実施形態によれば、L2モードに移行する前に、トランシーバ100は、これらのパラメータ(または、これらのパラメータを示す情報)のうちの一以上を、送信したり、受信したりする。したがって、トランシーバ100は、L2モードで使用される送信パラメータ(例:データ転送速度、電力レベル、PSDレベル、ビットアロケーションテーブル、微細利得テーブル等の内の少なくとも一つ)をこれらのパラメータの一以上に依拠して決定することができる。
【0035】
一例示的実施形態においては、これらのパラメータ(または、これらのパラメータを示す情報)は、ユーザデータ送信モードまたはSHOWTIMEの間に、更新ないし変更される。この更新ないし変更は、低電力モードモジユール124が協働して、CO−MIBを介し、またはVCEによって、あるいはトランシーバ100によって独立して行うことができる。この場合、例えば、ユーザデータ送信モードまたはSHOWTIMEの間に、メッセージは、トランシーバ100によって送信されたり受信されたりすることができる。更新は、次の一以上に依拠して行うことができる。
漏話雑音状態の変化
雑音状態の変化
近隣の電話回線サービスの新設または撤去
ベクトル化されたグループの回線サービスの新設または撤去
HDTVチャネル等のアプリケーション等の新設または撤去
【0036】
これに代えて、またはこれに加えて、本明細書に記載された一以上のメッセージ(例:初期化メッセージおよび/またはEOCメッセージおよび/またはL2モードへの移行の開始に使用される第1メッセージ)は、低電力モードモジュール124で決定されるものであって、更に、トランシーバがL2モード中に、先のL0モード中にアクティブであった副搬送波を不能ならしめることが可能か(否か)を示す情報を備えるものである。例えば、メッセージ中のビットは、次のことを示すのに使用できる。このビットが1と設定される場合、トランシーバがL2モード中に、副搬送波を不能(不作動)にすることができ、ビットが0と設定される場合、トランシーバがL2モード中に、副搬送波を不能(不作動)にすることができない。この場合に副搬送波を不能にすることは、例えば、当該副搬送波に電力を供給しないこと、あるいは、例えば、当該副搬送波の微細利得値を0に設定することを意味する。不能とされた副搬送波は、不活性副搬送波としても知られている。
【0037】
L2モードポリシー
一例示的実施形態においては、トランシーバ100がL2モード中に、少なくとも以下の作動を行う。
1. 一以上の制限条件に依拠して、L2モードの中のビットローディングテーブル、L2モード中のフレーミングパラメータおよびL2モード中のΔPSDのうちの少なくとも一つを決定すること。
ETR ≧ L2−ETR−MIN
1回目のL2モード終了ステップ後のデータ転送速度 ≧ MINDR−FS
各L2モード終了ステップのΔPSD ≦ MAXΔPSD−PS
衝撃ノイズ保護 = L0モード中と同じ
アルファ−ベータ遅延 ≦ 6 ms
2. これら制限条件の充足後、トランシーバは、更に次の何れか一を実行することができる。
L2−TARATPRまで、L2モードにおける総送信電力低減を最大化すること、および
MAXSNRMまでL2モードマージンを最大化すること。
【0038】
トランシーバ100のL2モードへの移行方法の例示
【0039】
第1トランシーバおよび第2トランシーバ(夫々、図1に示したものと同様の構成部品を備えている)は、L0モード(フルパワーモードまたは通常パワーモード)で作動しており、現在のデータ転送速度は、例えば、20 Mbpsである。例えば、現在のデータ転送速度は、各々が5 Mbps必要とする3つのHDTVチャネルに使用し、残りの5 Mbps(20−3×5=5 Mbps)を、インターネットへの接続やIP電話(VoIP)サービス等を介した音声通話に使用できる。
【0040】
第1送信トランシーバ(送信トランシーバ)または第2トランシーバ(受信トランシーバ)は、ユーザは現在のデータ転送速度での作動を必要とする少なくとも一つのアプリケーションを使用していないので、データ転送速度を低減できる、と判断する。この判断は、例えば、上層から来るプリミティブあるいはパケットあるいはセルを監視することで行うことができる。例えば、トランシーバは、全ての3つのHDTVチャネルが使用されておらず、かつインターネットへのアクセスが行われていないことを判断することができる。この事態が生じれば、L2モードへの移行方法が開始され得る。これに代えて、またはこれに加えて、トランシーバは少なくとも一台のビデオモニタ装置(例:テレビまたはコンピュータ用モニタ)と通信中か、または少なくとも一台のビデオモニタ装置(例:テレビまたはコンピュータ用モニタ)と接続されたセットトップデバイス等のデバイスと通信中である。ユーザがビデオ鑑賞を止めると(例:テレビを消すあるいはビデオ画像配信を止める等)、トランシーバは本明細書に記載のL2モード移行方法を開始することになる。
【0041】
L2モードへの移行は、次のようなステップの一以上をこの順序で(または異なった順序でも良い)含む。
1. L2モードへの移行に先立ち、第1トランシーバ100は、一以上の次のパラメータ:L2−TARATPR、L2−ETR−MIN、MINDR−FS、MAXΔPSD−PS、MINTIME−PSおよびMAXSTEPSを含む、第2トランシーバ200に、初期化メッセージすなわちEOCメッセージを送信する。これに代えて、またはこれに加えて、初期化メッセージまたはEOCメッセージは、トランシーバがL2モード中に、先のL0モード中にアクティブであった一以上の副搬送波を不能ならしめることが可能か(否か)を示す情報を含むことができる。
2. 第1トランシーバ100は、第1メッセ―ジを送信することによりL2モードへの移行ステップを開始し、認証を待つ。この第1メッセージは、認証が受信されるまで、繰り返して送信することができる。第1メッセージは、L2モードへの移行ステップ番号(1〜MAXSTEP)を表示することができる。L2モードへの移行ステップ番号の初期値は、1とすることができる。これに代えて、またはこれに加えて、第1メッセージは、一以上の次のパラメータ:L2−TARATPR、L2−ETR−MIN、MINDR−FS、MAXΔPSD−PS、MINTIME−PSおよびMAXSTEPSを含む。これに代えて、またはこれに加えて、第1メッセージは、トランシーバがL2モード中に、先のL0モード中にアクティブであった一以上の副搬送波を不能ならしめることが可能か(否か)を示す情報を含むことができる。
3. 第1メッセージを受信すると、第2トランシーバ200は、第1メッセージ、初期化メッセージまたはEOCメッセージにて受信したパラメータの内の少なくとも一つを用いてL2モード中にパラメータの送信または受信があったかを判断する。例えば、第2トランシーバ200は、L2−TARATPR、L2−ETR−MIN、MINDR−FS、MAXΔPSD−PS、MINTIME−PSおよびMAXSTEPSの内の少なくとも一つに依拠して、L2モード中におけるデータ転送速度、L2モード中における少なくとも一つの副搬送波についてのPSDレベル、L2モード中における少なくとも一つの副搬送波についてのビットアロケーション値、L2モード中におけるフレーミングパラメータ、L2モード中における少なくとも一つの副搬送波についての微細利得値の内の一以上を決定することができる。第2トランシーバ200は、128 ms以内に第2メッセージを送信することにより第1メッセージを認証する。而して、第2メッセージには、L2モードへの移行ステップについての、ビットローディングテーブル、少なくとも一つのビットアロケーション値および少なくとも一つのフレーミングパラメータの内の一以上のものを、表示する。一例示的実施形態においては、メッセージ中に示されたパラメータは、上述したL2モードポリシーの制限条件に適合する。これに代えて、またはこれに加えて、以前のメッセージにて受信した情報に依拠して、トランシーバは、先のL0モード中においてアクティブであったいかなる副搬送波、または少なくとも一つの副搬送波を不能にすることができない。この場合、ビットローディングテーブルは、いかなる不能化された副搬送波(bi = 0およびgi = 0)をも含むことができず、副搬送波が、期待されたΔPSDに起因して、どんなビットも搬送できないとき、当該搬送は、例えば、監視対象の副搬送波(bi = 0およびgi > 0)に変換ないし変更されることができる(biは、第i番目のサブチャネル/副搬送波/搬送波を介して送信可能なビット数であって、giは、サブチャネル/副搬送波/搬送波の利得ないし微細利得である)。
4. 第2メッセージを受信すると、第1トランシーバ100は、例えば128 ms以内に、L2−SYNCHROパターンと共に第2メッセージを認証する。一の例示的実施形態においては、メッセージは、9個の同期シンボルからなるパターンを伴う一つの倒置同期シンボルを備える。一般には、同期シンボルのような予め定義された信号を少なくとも一つ備えた信号は、L2−SYNCHROパターンとして使用できる。
5. L2−SYNCHROパターン後の第1シンボルを根幹として、第1トランシーバおよび第2トランシーバの双方は、第2メッセージに示されたビットローディングおよび/またはフレーミングパラメータを適用する。第1トランシーバは、この時点においては、送信PSDレベルを変更しない。
6. 第1のL2−SYNCHROパターンを受信すると、第2トランシーバ200は、64 ms以内に第3メッセージを送信することにより第1のL2−SYNCHROパターンを認証する。第3メッセージは、第2トランシーバ200が第2メッセージのビットローディングおよび/またはフレーミングパラメータを調節するような適応希望の、少なくとも一つのΔPSDを示す。ΔPSDは、少なくとも、ΔPSD ≦ MAXΔPSD−PSという条件式を満足する。
7. 第3メッセージを受信すると、第1トランシーバ100は、128 ms以内に第2のL2−SYNCHROパターンを送信することにより第3メッセージを認証する。
8. 第2のL2−SYNCHROパターン後の第1シンボルを根幹として、第1トランシーバ100および第2トランシーバ200の双方は、第3メッセージに示されたΔPSDを適用する。
9.
a. L2モードへの移行ステップ番号がMAXSTEPSに等しい場合、L2モードへの移行手順が終了し、VTUがL2モードとなるに至る。
b. L2モードへの移行ステップ番号がMAXSTEPS未満の場合、第1トランシーバ100は、L2モードへの移行ステップ番号を1だけ増加させる。第1トランシーバ100は、少なくともMINTIME−PSを待ち、その後第4メッセージを送信することにより新たなL2モードへの移行ステップを開始して認証を待つ。この第4メッセージは、認証が受信されるまで、繰り返して送信することができる。第4メッセージは、更新されたL2モードへの移行ステップ番号を示す。
10. 第4メッセージを受信すると、第2トランシーバ200は、第4メッセージを拒絶するか認証する。
a. 拒絶:L2モードポリシーの制限内において送信電力の更なる低減が不可能な場合、第2トランシーバ200は、第5メッセージを送信することにより第4メッセージを拒絶する。第5メッセージは、第4メッセージを拒絶する。この場合、L2モードへの移行手順が終了して、第2トランシーバ200が、新たにL2モードとなる。
b. 認証:L2モードポリシーの制限内においてまだ送信電力の低減が可能な場合、第2トランシーバ200は、L2モードへの移行手順のステップ3に戻り、残りのステップを繰り返し実行する。
11. 第4メッセージを受信すると、L2モードへの移行手順が終了して、第1トランシーバが、新たにL2モードとなる。
【0042】
L2モードの例示的な終了方法
【0043】
第1トランシーバ100および第2トランシーバ200は、現在のL2モードにおけるデータ転送速度、例えば、256 kbpsまたは一般論としては、任意のデータ転送速度でもって作動する。例えば、現在のデータ転送速度は、IPを介しての音声用およびキープアライブまたはハートビート信号用として使用できる。
【0044】
第1トランシーバ100(送信トランシーバ)または第2トランシーバ200(受信トランシーバ)は、データ転送速度の増加の必要性を決定する。なぜならばユーザは、現在のL2モードにおけるデータ転送速度よりも速いデータ転送速度で作動することが要請される、少なくとも一つのアプリケーションのスイッチを入れているからである(例えば、ユーザは既に、テレビをつけたり、ストリーミングビデオを鑑賞したりしているからである)。この決定は、例えば、上層から来るプリミティブおよび/またはパケットおよび/またはセルを監視することにより行うことができる。例えば、トランシーバ100は、HDTVチャネルが既にオンにされ(すなわち既に作動され)ており、当該チャネルが少なくとも5 Mbpsを必要とすることを決定することができる。この決定がなされると、L2モードの終了方法を開始することができる。
1. 第1トランシーバ100は、第1メッセージを送信し認証を待つことによりL2モード終了ステップを開始する。この第1メッセージは、認証が受信されるまで、繰り返して送信することができる。第1メッセージは、L2モード終了ステップ番号(1〜MAXSTEPS)を示す。L2モード終了ステップ番号の初期値は、1とすることができる。これに代えて、またはこれに加えて、この第1メッセージは、一以上の次のパラメータ:L2−TARATPR、L2−ETR−MIN、MINDR−FS、MAXΔPSD−PS、MINTIME−PSおよびMAXSTEPSを含む。
2. 第1メッセージを受信すると、第2トランシーバ200は、128 ms以内に第2メッセージと共に第1メッセージを認証する。第2メッセージは、例えば、第2トランシーバが適用を欲するΔPSDを示すことができる。ΔPSDは、次の条件式を満足する。ΔPSD ≦ MAXΔPSD−PS。第2メッセージの送信後、第2トランシーバ200は、次の128 ms内において、第1のL2−SYNCHROパターンの受信を待つ。
3. 第2メッセージを受信すると、第1トランシーバ100は、128 ms以内にL2−SYNCHROパターンと共に第2メッセージコマンドを認証する。一の例示的実施形態においては、ある倒置同期シンボルは、9個の同期シンボルからなるパターンを伴う。一般的には、少なくとも一つの同期シンボルを備える信号はどれでも、L2−SYNCHROパターンとして使用できる。
4. L2−SYNCHROパターン後の第1シンボルを根幹として、第1トランシーバ100および第2トランシーバ200の双方は、L2−ΔPSD−リクエストに表示されたΔPSDトリムを適用する。この時点においては、第1トランシーバは、ビットローディングテーブルおよびフレーミングパラメータの変更は行わない。
5. L2−SYNCHROパターンを受信すると、第2トランシーバ200は、SNRを推定し、64 ms以内に第3メッセージを送信することにより第1のL2−SYNCHROパターンを認証する。第3メッセージは、少なくとも、適用されたΔPSDに適合するビットローディングおよびフレーミングパラメータを示す。ビットローディングテーブルおよびフレーミングパラメータは、少なくとも次の条件を満足する:1回目のL2モード終了ステップ後のデータ転送速度 ≧ MINDR−FS。
これに代えて、またはこれに加えて、以前のメッセージから得られた情報に依拠して、トランシーバは、先のL0モードにおいてアクティブであったいかなる副搬送波、または少なくとも一つの副搬送波を不能にすることができない。この場合、ビットローディングテーブルは、いかなる不能化された副搬送波(bi = 0かつgi = 0)をも含むことができず、ある副搬送波が、期待されたΔPSDに起因して、ビットを全く搬送できない場合は、この副搬送波は、監視の対象となる搬送波(bi = 0かつgi > 0)に変換される。
6. 第3メッセージを受信すると、第1トランシーバ100は、128 ms以内に第2のL2−SYNCHROパターンを送信することにより第3メッセージを認証する。
7. 第2のL2−SYNCHROパターン後の第1シンボルを根幹として、第1トランシーバおよび第2トランシーバの双方は、第3メッセージに示されたビットローディングテーブルおよび/またはフレーミングパラメータを適用する。
8.
a. L2モード終了ステップ番号がMAXSTEPSに等しい場合、L2モード終了手順が終了し、VTUがL0モードとなるに至る。
b. L2モード終了ステップ番号がMAXSTEPS未満の場合、第1トランシーバ100は、L2モード終了ステップ番号を1だけ増加させる。第1トランシーバ100は、少なくともMINTIME−PSを待ち、その後、第4メッセージを送信することにより新たなL2モード終了手順を開始して、認証を待つ。この第4メッセージは、認証が受信されるまで、繰り返して送信することができる。第4メッセージは、更新されたL2モード終了ステップ番号を示す。
9. 第4メッセージを受信すると、第2トランシーバ200は、第4メッセージを拒絶または認証することができる。
a. 拒絶:現在のPSD、ビットローディングテーブルおよびフレーミングパラメータがL0モードポリシーを充足する場合、第2トランシーバ200は、第5メッセージを送信することにより第4メッセージを拒絶する。この場合、L2モード終了手順が終了して、第2トランシーバが、新たにL0モードとなる。
b. 認証:第2トランシーバ200が未だにL0モードポリシーの要件を充足していない場合、第2トランシーバ200は、L2モードへの移行手順のステップ3に戻り、残りのステップを繰り返し実行する。
10. 第5メッセージを受信すると、L2モード終了手順は終了し、第1トランシーバ100が、新たにL0モードとなる。
【0045】
図2は、低電力モードへの移行方法を例示的に示すものである。更に詳しく述べれば、上記したような、新たなL2モードポリシーが具体的に記載される。L2モードポリシーは、次のパラメータ(または、これらのパラメータを示す情報)の一以上のものを使用する。
1. L2−TARATPR:L2モードにおける目標総送信電力低減(単位:dB)
2. L2−ETR−MIN:L2モード中における最小期待スループット(単位:kbit/s)
3. MINDR−FS:1回目のL2モード終了ステップ後の最小データ転送速度(またはETR)。このデータ転送速度は、アプリのデータ転送速度要件に依拠する。例えば、ユーザがテレビをつけた時、データ転送速度を5 Mbpsに設定してビデオストリームをサポートすることができる。
4. MAXΔPSD−PS: L2モードへの移行またはL2モード終了ステップについて、ステップ毎の最大ΔPSD。これは、旧式システムCO−MIB構成に依拠する。例えば、この値は、旧式システムがSRA_DOWNSHIFT_MARGIN = 3 dBであれば、3dBと設定できる。
5. MINTIME−PS:L2モードへの移行ステップ間またはL2モード終了ステップ間におけるステップ時間当たりの最小時間。これは、旧式システムのSRA反応時間に依拠する。例えば、この値は、旧式システムが全帯域SRAを実行可能ならしめる場合は、40秒と設定できる。
6. MAXSTEPS:L2モードへの移行またはL2モードの終了に要するステップの最大数。
【0046】
トランシーバはオプションで、これらのパラメータ(または、これらのパラメータを示す情報)のうちの一以上を、DSL制御エンティティすなわちCO−MIBのようなインターフェース、またはベクトル化制御エンティティ(VCE)のようなDSL制御エンティティ等(図示略)から受信することができる。
【0047】
これに代えて、またはこれに加えて、トランシーバは、これらのパラメータ(または、これらのパラメータを示す情報)のうちの一以上を、初期化中に送信されたメッセージにて、第2トランシーバへ送信したり、第2トランシーバから受信したりすることができる。
【0048】
これに代えて、またはこれに加えて、トランシーバは、これらのパラメータ(または、これらのパラメータを示す情報)のうちの一以上を、SHOWTIME(安定状態送信またはユーザデータ送信モードとしても知られる)中に送信されたメッセージにて、第2トランシーバへ送信したり、第2トランシーバから受信したりすることができる。このメッセージは、EOCメッセージとすることができる。ここで、EOCメッセージとは、埋め込み操作チャネル(EOC)を介して送受信されるメッセージのことである。
【0049】
これに代えて、またはこれに加えて、トランシーバは、これらのパラメータ(または、これらのパラメータを示す情報)を決定することができる。トランシーバに代わって、VCEが、これらのパラメータ(または、これらのパラメータを示す情報)を決定することもできる。
【0050】
一の例示的実施形態によれば、トランシーバは、L2モードに移行する前に、これらのパラメータ(または、これらのパラメータを示す情報)のうちの一以上を、送信したり、受信したりする。したがって、トランシーバは、L2モードで使用される送信パラメータ(例:データ転送速度、電力レベル、PSDレベル、ビットアロケーションテーブル、微細利得テーブル等のうちの少なくとも一つ)をこれらのパラメータの一以上に依拠して決定することができる。
【0051】
一の例示的実施形態においては、これらのパラメータ(または、これらのパラメータを示す情報)は、ユーザデータ送信モードまたはSHOWTIMEの間に、更新ないし変更される。この更新ないし変更は、CO−MIBを介したり、VCEによってなされたり、トランシーバにより独立してなされたりする。この場合、例えば、ユーザデータ送信モードまたはSHOWTIMEの間に、メッセージは、トランシーバによって送信されたり受信されたりすることができる。更新は、次の一以上に依拠して行うことができる。
漏話雑音状態の変化
雑音状態の変化
近隣の電話回線サービスの新設または撤去
ベクトル化されたグループの回線サービスの新設または撤去
HDTVチャネル等のアプリケーション等の新設または撤去
【0052】
これに代えて、またはこれに加えて、本明細書に記載された一以上のメッセージ(例:初期化メッセージおよび/またはEOCメッセージおよび/またはL2モードへの移行を開始するために使用される第1メッセージ)は、更に、トランシーバがL2モード中に、先のL0モード中にアクティブであった副搬送波を不能にできるか(否か)を示す情報を備えるものである。例えば、メッセージ中のビットは、次のことを示すのに使用できる。このビットが1と設定される場合は、トランシーバがL2モード中に、副搬送波を不能にすることができ、ビットが0と設定される場合、トランシーバがL2モード中に、副搬送波を不能にすることができない。この場合に副搬送波を不能にすること、例えば、当該副搬送波に電力を供給しないこと、あるいは、例えば、当該副搬送波の微細利得値を0に設定することを、意味する。
【0053】
L2モードポリシー
一例示的実施形態においては、トランシーバがL2モード中に、少なくとも以下の作動を行う。
1. 一以上の制限条件に依拠して、L2モード中のビットローディングテーブル、L2モード中のフレーミングパラメータおよびL2モード中のΔPSDのうちの少なくとも一つを決定すること。
ETR ≧ L2−ETR−MIN
1回目のL2モード終了ステップ後のデータ転送速度 ≧ MINDR−FS
各L2モード終了ステップのΔPSD ≦ MAXΔPSD−PS
衝撃ノイズ保護 = L0モード中と同じ
アルファ−ベータ遅延 ≦ 6 ms
2. これら制限条件の充足後、トランシーバは、更に次の何れか一を実行することができる。
L2−TARATPRまで、L2モードにおける総送信電力低減を最大化すること、および
MAXSNRMまでL2モードマージンを最大化すること。
【0054】
L2モードへの移行方法の例示
【0055】
第1トランシーバおよび第2トランシーバは、L0モード(フルパワーモードまたは通常パワーモード)で作動しており、現在のデータ転送速度は、例えば、20 Mbpsである。例えば、現在のデータ転送速度は、各々が5 Mbps必要とする3つのHDTVチャネルに使用し、残りの5 Mbps(20−3×5 =5 Mbps)を、インターネットへの接続やIP電話(VoIP)サービス等を介した音声通話に使用できる。
【0056】
第1送信トランシーバ(送信トランシーバ)または第2トランシーバ(受信トランシーバ)は、ユーザは現在のデータ転送速度での作動を必要とする少なくとも一つのアプリケーションを使用していないので、データ転送速度を低減できる、と判断する。この判断は、例えば、上層から来る基本要素および/またはパケットおよび/またはセルを監視することで行うことができる。例えば、トランシーバは、全ての3つのHDTVチャネルが使用されておらず、かつインターネットへのアクセスが行われていないことを判断することができる。この事態が惹起すれば、L2モードへの移行方法が開始され得る。L2モードへの移行は、次のようなステップの一以上をこの順序で(異なった順序でも良い)含む。
ステップ1. 第1トランシーバは、一以上の次のパラメータ:L2−TARATPR、L2−ETR−MIN、MINDR−FS、MAXΔPSD−PS、MINTIME−PSおよびMAXSTEPSを含む、第2トランシーバに、初期化メッセージまたはEOCメッセージを送信する。これに代えて、またはこれに加えて、初期化メッセージまたはEOCメッセージは、トランシーバがL2モード中に、先のL0モード中にアクティブであった副搬送波を不能にすることが可能か(否か)を示す情報を含むことができる。
ステップ2. 第1トランシーバは、第1メッセ―ジを送信することによりL2モードへの移行ステップを開始し、認証を待つ。この第1メッセージは、認証が受信されるまで、繰り返して送信することができる。第1メッセージは、L2モードへの移行ステップ番号(1〜MAXSTEP)を表示することができる。L2モードへの移行ステップ番号の初期値は、1とすることができる。これに代えて、またはこれに加えて、第1メッセージは、一以上の次のパラメータ:L2−TARATPR、L2−ETR−MIN、MINDR−FS、MAXΔPSD−PS、MINTIME−PSおよびMAXSTEPSを含む。これに代えて、またはこれに加えて、第1メッセージは、トランシーバがL2モード中に、先のL0モード中にアクティブであった副搬送波を不能ならしめることが可能か(否か)を示す情報を含むことができる。
ステップ3. 第1メッセージを受信すると、第2トランシーバは、第1メッセージ、初期化メッセージまたはEOCメッセージにて受信したパラメータの内の少なくとも一つを用いて、L2モード中にパラメータ送信または受信があったかを判断する。例えば、第2トランシーバは、L2−TARATPR、L2−ETR−MIN、MINDR−FS、MAXΔPSD−PS、MINTIME−PSおよびMAXSTEPSの内の少なくとも一つに依拠して、L2モード中におけるデータ転送速度、L2モード中における少なくとも一つの副搬送波についてのPSDレベル、L2モード中における少なくとも一つの副搬送波についてのビットアロケーション値、L2モード中におけるフレーミングパラメータ、L2モード中における少なくとも一つの副搬送波についての微細利得値の内の一以上を決定することができる。第2トランシーバは、128 ms以内に第2メッセージを送信することにより第1メッセージを認証する。而して、第2メッセージには、L2モードへの移行ステップについての、ビットローディングテーブル、少なくとも一つのビットアロケーション値および少なくとも一つのフレーミングパラメータの内の一以上のものを、表示する。一の例示的実施形態においては、メッセージ中に示されたパラメータは、上述したL2モードポリシーの制限条件に適合する。これに代えて、またはこれに加えて、以前のメッセージにて受信した情報に依拠して、トランシーバは、先のL0モード中においてアクティブであった少なくとも一つの副搬送波を不能にすることができない。この場合、ビットローディングテーブルは、いかなる不能化された副搬送波(bi = 0およびgi = 0)をも含むことができず、副搬送波が、期待されたΔPSDに起因して、どんなビットも搬送できないとき、当該搬送は、例えば、監視対象の副搬送波(bi = 0およびgi > 0)に変換ないし変更されることができる。
ステップ4. 第2メッセージを受信すると、第1トランシーバは、例えば128 ms以内に、L2−SYNCHROパターンと共に第2メッセージを認証する。一の例示的実施形態においては、メッセージは、9個の同期シンボルからなるパターンを伴う一つの倒置同期シンボルを備える。一般には、同期シンボルのような予め定義された信号を少なくとも一つ備えた信号は、L2−SYNCHROパターンとして使用できる。
ステップ5. L2−SYNCHROパターン後の第1シンボルを根幹として、第1トランシーバおよび第2トランシーバの双方は、第2メッセージに示されたビットローディングテーブルおよび/またはフレーミングパラメータを適用する。第1トランシーバは、この時点においては、送信PSDレベルを変更しない。
ステップ6. 第1のL2−SYNCHROパターンを受信すると、第2トランシーバは、64 ms以内に第3メッセージを送信することにより第1のL2−SYNCHROパターンを認証する。第3メッセージは、第2トランシーバが第2メッセージのビットローディングテーブルおよび/またはフレーミングパラメータを調節するような適応希望の、少なくとも一つのΔPSDを示す。ΔPSDは、少なくとも、ΔPSD ≦ MAXΔPSD−PSという条件式を満足する。
ステップ7. 第3メッセージを受信すると、第1トランシーバは、128 ms以内に第2のL2−SYNCHROパターンを送信することにより第3メッセージを認証する。
ステップ8. 第2のL2−SYNCHROパターン後の第1シンボルを根幹として、第1トランシーバおよび第2トランシーバの双方は、第3メッセージに示されたΔPSDを適用する。
ステップ9.
a. L2モードへの移行ステップ番号がMAXSTEPSに等しい場合、L2モードへの移行手順が終了し、VTUがL2モードとなるに至る。
b. L2モードへの移行ステップ番号がMAXSTEPS未満の場合、第1トランシーバは、L2モードへの移行ステップ番号を1だけ増加させる。第1トランシーバは、少なくともMINTIME−PSを待ち、その後第4メッセージを送信して認証を待つことにより新たなL2モードへの移行ステップを開始する。この第4メッセージは、認証が受信されるまで、繰り返して送信することができる。第4メッセージは、更新されたL2モードへの移行ステップ番号を示す。
ステップ10. 第4メッセージを受信すると、第2トランシーバは、第4メッセージを拒絶するか認証する。
a. 拒絶:L2モードポリシーの制限内において送信電力の更なる低減が不可能な場合、第2トランシーバは、第5メッセージを送信することにより第4メッセージを拒絶する。第5メッセージは、第4メッセージを拒絶する。この場合、L2モードへの移行手順が終了して、第2トランシーバが、新たにL2モードとなる。
b. 認証:L2モードポリシーの制限内においてまだ送信電力の低減が可能な場合、第2トランシーバは、L2モードへの移行手順のステップ3に戻り、残りのステップを繰り返し実行する。
ステップ11. 第4メッセージを受信すると、L2モードへの移行手順は終了して、第1トランシーバが、新たにL2モードとなる。
【0057】
L2モードへの移行の例示的方法論
【0058】
第1トランシーバおよび第2トランシーバは、現在のL2モードにおけるデータ転送速度、例えば、256 kbpsでもって作動する。例えば、現在のデータ転送速度は、IPを介しての音声用およびキープアライブまたはハートビート信号用として使用できる。
【0059】
第1トランシーバ(送信トランシーバ)または第2トランシーバ(受信トランシーバ)は、データ転送速度の増加の必要性を決定する。なぜならばユーザは、現在のL2モードにおけるデータ転送速度よりも速いデータ転送速度で作動することが要請される、少なくとも一つのアプリケーションのスイッチを入れているからである。この決定は、例えば、上層から来るプリミティブ、パケットまたはセルを監視することにより行うことができる。例えば、トランシーバは、HDTVチャネルが既にオンされ(すなわち作動され)ており、当該チャネルが少なくとも5 Mbpsを必要とすることを決定することができる。



【0060】
これに代えて、またはこれに加えて、トランシーバは、少なくとも一台のビデオ/データモニタ装置(例:一台以上のテレビ、計算装置、タブレット、セットトップボックス、またはコンピュータ用モニタ等)と通信中か、または少なくとも一台のビデオモニタ装置(例:テレビまたはコンピュータ用モニタ)と接続されたセットトップデバイス等のデバイスと通信中である。ユーザがビデオ鑑賞すなわちデータ消費を始めると(例:テレビをつけるあるいはビデオ画像配信を開始する等)、トランシーバは、本明細書に記載のL2モードの終了方法を開始することになる。
【0061】
この事態が起きると、図3に示されるように、L2モードの終了方法を開始することができる。
ステップ1. 第1トランシーバは、第1メッセージを送信することによりL2モード終了ステップを開始し、認証を待つ。この第1メッセージは、認証が受信されるまで、繰り返して送信することができる。第1メッセージは、L2モード終了ステップ番号(1〜MAXSTEPS)を示す。L2モード終了ステップ番号の初期値は、1とすることができる。これに代えて、またはこれに加えて、この第1メッセージは、一以上の次のパラメータ:L2−TARATPR、L2−ETR−MIN、MINDR−FS、MAXΔPSD−PS、MINTIME−PSおよびMAXSTEPSを含む。
ステップ2. 第1メッセージを受信すると、第2トランシーバは、128 ms以内に第2メッセージと共に第1メッセージを認証する。第2メッセージは、例えば、第2トランシーバが適用を欲するΔPSDを示すことができる。ΔPSDは、次の条件式を満足する。ΔPSD ≦ MAXΔPSD−PS。第2メッセージの送信後、第2トランシーバは、次の128 ms内において、第1のL2−SYNCHROパターンの受信を待つ。
ステップ3. 第2メッセージを受信すると、第1トランシーバは、128 ms以内にL2−SYNCHROパターンと共に第2メッセージコマンドを認証する。一の例示的実施形態においては、ある倒置同期シンボルは、9個の同期シンボルからなるパターンを伴う。一般的には、少なくとも一つの同期シンボルを備える信号はどれでも、L2−SYNCHROパターンとして使用できる。
ステップ4. L2−SYNCHROパターン後の第1シンボルを根幹として、第1トランシーバおよび第2トランシーバの双方は、L2−ΔPSD−リクエストに表示されたΔPSDトリムを適用する。この時点においては、第1トランシーバは、ビットローディングテーブルおよびフレーミングパラメータの変更は行わない。
ステップ5. L2−SYNCHROパターンを受信すると、第2トランシーバは、SNRを推定し、64 ms以内に第3メッセージを送信することにより、第1のL2−SYNCHROパターンを認証する。第3メッセージは、少なくとも適用されたΔPSDに適合するビットローディングおよびフレーミングパラメータを示す。ビットローディングテーブルおよびフレーミングパラメータは、少なくとも次の条件を満足する:1回目のL2モード終了ステップ後のデータ転送速度≧MINDR−FS。
これに代えて、またはこれに加えて、以前のメッセージから得られた情報に依拠して、トランシーバは、先のL0モードにおいてアクティブであったいかなる副搬送波を不能ならしめることができない。この場合、ビットローディングテーブルは、いかなる不能化された副搬送波(bi = 0かつgi = 0)をも含まず、ある副搬送波が、期待されたΔPSDに起因して、ビットを全く搬送できない場合は、この副搬送波は、監視の対象となる搬送波(bi = 0かつgi > 0)に変換される。
ステップ6. 第3メッセージを受信すると、第1トランシーバは、128 ms以内に第2のL2−SYNCHROパターンを送信することにより第3メッセージを認証する。
ステップ7. 第2のL2−SYNCHROパターン後の第1シンボルを根幹として、第1トランシーバおよび第2トランシーバの双方は、第3メッセージに示されたビットローディングテーブルおよび/またはフレーミングパラメータを適用する。
ステップ8.
a. L2モード終了のステップ番号がMAXSTEPSに等しい場合、L2モード終了手順が終了し、VTUがL0モードとなるに至る。
b. L2モード終了ステップ番号がMAXSTEPS未満の場合、第1トランシーバは、L2モード終了ステップ番号を1だけ増加させる。第1トランシーバは、少なくともMINTIME−PSを待ち、その後、第4メッセージを送信することにより新たなL2モード終了手順を開始して、認証を待つ。この第4メッセージは、認証が受信されるまで、繰り返して送信することができる。第4メッセージは、更新されたL2モード終了ステップ番号を示す。
ステップ9. 第4メッセージを受信すると、第2トランシーバは、第4メッセージを拒絶するか認証することができる。
a. 拒絶:現在のPSD、ビットローディングテーブルおよびフレーミングパラメータがL0モードポリシーを充足する場合、第2トランシーバは、第5メッセージを送信することにより第4メッセージを拒絶する。この場合、L2モード終了手順が終了して、第2トランシーバが、新たにL0モードとなる。
b. 認証:第2トランシーバが未だにL0モードポリシーの要件を充足していない場合、第2トランシーバは、L2モードへの移行手順のステップ3に戻り、残りのステップを繰り返し実行する。
ステップ10. 第5メッセージを受信すると、L2モード終了手順は終了し、第1トランシーバが、新たにL0モードとなる。
【0062】
上述したメッセージがパラメータを示しているとき、このメッセージは、パラメータ値を持つビットフィールドを含めることができる。これに代えて、このメッセージは、前記したパラメータ値の決定に使用できる情報を含むことができる。
【0063】
第1トランシーバは、中央局(CO)のトランシーバ、宅内機器、VTU(VDSL送信装置)、ATU(ADSL送信装置)、FTU(G.fast使用送信装置)、無線機器等であってよい。
【0064】
第2トランシーバは、中央局(CO)のトランシーバ、宅内機器、VTU(VDSL送信装置)、ATU(ADSL送信装置)、FTU(G.fast使用送信装置)、無線機器等であってよい。
【0065】
本明細書においては、ビットローディングテーブルとビットアロケーションテーブル(BAT)という用語は、同じ意味で使われる。
【0066】
本明細書においては、L2モードとLPMモードという用語は、同じ意味で使われる。
【0067】
本明細書においては、副搬送波とサブチャネルという用語は、同じ意味で使われる。
【0068】
本明細書においては、メッセージとコマンドという用語は、同じ意味で使われる。
【0069】
本明細書においては、期待スループット(ETR)とデータ転送速度という用語は、同じ意味で使われる。
【0070】
更に、例示したいくつかのステップについては、ステップ間に所定の時間間隔が設定されるように図示されているが、これらの時間間隔は、任意の時間間隔に変更できることは理解されたい。加えて、図示したステップの内の一以上のものは、任意のものであって、省略することができる。また、図示したステップは、上記した順序とは異なった順序で実行することが可能である。
【0071】
例示的な実施形態は、xDSL環境におけるLPMに関するものとして、記載されている。しかしながら、全体として見れば、本明細書に記載のシステムおよび方法は、無線、電力線、同軸ケーブルおよび/または光ケーブル等のどのような環境においても、いかなるタイプの通信システムに対しても、等しくかつ正しく作動するものであることは理解されるべきである。
【0072】
本明細書では、例示的な実施形態に係るシステムおよび方法は、ADSLモデムおよびVDSLモデムのようなマルチキャリアモデムならびに関連する通信用のハードウェア、ソフトウェアおよび通信チャネルに関連して記載されている。しかしながら、本件開示内容が必要以上に複雑なものとなるのを避けるために、以下においては、ブロックダイアグラム形式や総括表示可能な、周知の構造および装置については、記載を省略してある。
【0073】
説明上、技術の完全理解のために、多数の具体例を述べてある。しかしながら、本明細書で開示した技術は、明細書で述べた個々の具体的詳細にとらわれずに、種々の方法にて実用化されることができることを理解すべきである。
【0074】
更に、本明細書で説明した例示的実施形態においては、システムを構成する種々の構成要素をまとめて表示してあるが、システムを構成する種々の構成要素は、通信ネットワークおよび/またはインターネットのような分散ネットワークの離れた位置においたり、専用のセキュア化された、セキュア化されていないおよび/または暗号化されたシステム内に配置したりすることが可能であることを理解すべきである。したがって、システムの構成要素は、組み合わされてモデムのような一以上の装置としたり、通信ネットワークのような、分散ネットワークの特定のノードにまとめて配置したりすることができることは理解されるべきである。以下の記載から理解できるように、そして、計算効率の理由から、システムの構成要素は、システムの作動に影響を与えることなく、分散ネットワーク内の任意の箇所に配置することができる。例えば、種々の構成要素は、中央局のモデム(CO、ATU−CおよびVTU−O)、宅内モデム(CPE、ATU−RおよびVTU−R)、xDSL管理装置、またはそれらを組み合わせたものの内に配置することができる。同様に、システムの一以上の機能部は、モデムと該モデムと関連する計算装置との間に配置することができる。
【0075】
更に、構成要素(図示略)を接続する通信チャネル5を備える種々のリンクは、有線リンク、無線リンクもしくは両者の任意の組み合わせ、あるいは他の公知のまたは将来開発されるであろう構成要素であって、接続された構成要素に対して、および接続された構成要素からデータ供給および/またはデータ通信を行うことができるものであってよいことは理解されるべきである。本明細書で使用されているモジュールという用語は、公知のまたは将来開発されるであろうハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアまたはそれらの組み合わせであって、構成要素に関連する機能遂行を行うことができるものの全てを指すことができる。本明細書で使用されている、決定する、計算する、および演算するという用語、ならびにそれらの変化形は同じ意味で使用され、どんな種類の方法論、過程、数式演算または技法を包含するものである。本明細書においては、送信用モデムと送信用トランシーバとは、および、受信用モデムと受信用トランシーバとは、夫々、同じ意味で使用されている。
上述したフローチャートは、特定の処理の流れとして論議したが、技術の作用に重大な影響を与えることなく、この流れを変更することも可能であることは理解されるべきである。更に、例示した実施形態に述べたように、処理の正確な流れは必ずしも必要ではなく、むしろ双方のトランシーバが初期化に使用されている技術を認識しているという条件で、通信システムにおいて、一方または他方のトランシーバによりステップを実行できる。
更に、本明細書で説明した例示的技術は、特に説明した実施形態に限定されず、他の実施形態と共に利用でき、記載された各特徴事項は、個々に独立して、クレームに記載できるものである。
【0076】
上記したシステムは、有線および/または無線通信機器上に実装させることができる。而して、このような機器としては、モデム、マルチキャリアモデム、DSLモデム、ADSLモデム、xDSLモデム、VDSLモデム、ラインカード、試験装置、マルチキャリアトランシーバ、有線および/または無線の広域/ローカルエリア・ネットワークシステム、衛星通信システム、IP、イーサネット(商標)またはATMシステムのようなネットワークを利用した通信システム、診断機能を装備したモデム等、または通信装置を備えるか、CDSL、ADSL2、ADSL2+、VDSL1、VDSL2、HDSL、DSL Lite、IDSL、RADSL、SDSL、UDSL等の通信プロトコルの何れかと連係している、システムとは別個のプログラムで作動する汎用コンピュータがある。
【0077】
本明細書で使用されているトランシーバという用語は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアおよびこれらの組み合わせを備え、かつ本明細書に記載されたいかなる方法をも実行できる全ての装置を指すことができる。
【0078】
本明細書で使用されているモジュールという用語は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアおよびこれらの組み合わせを備え、かつ本明細書に記載されたいかなる方法をも実行できるように作動されたり構成されたりする全ての装置を指すことができる。
【0079】
更に、システム、方法およびプロトコルは、次の内の一以上のものに実装されることができる。専用コンピュータ、プログラム化されたマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラおよび周辺機器の集積回路構成要素、ASICあるいはその他の集積回路、デジタル信号プロセッサ、デスクリート素子回路等のハードワイヤード電子回路またはハードワイヤードロジック回路、PLD、PLA、FPGAおよびPAL等のプログラム化されたロジック装置、モデム、送受信機、全ての同等の装置、等々。総じては、本明細書で説明した方法を、順次、実行することができるステートマシンを実装できる全ての装置は、本件開示に従った、種々の通信方法、プロトコルおよび技法を実行することができる。
【0080】
更には、開示された方法は、容易に、多様なコンピュータやワークステーションのプラットホームにおいて使用可能なポータブルソースコードを提供する、オブジェクトを用いたソフトウェアまたはオブジェクト指向ソフトウェア開発環境において実行可能である。
これに代えて、開示されたシステムは、標準ロジック回路またはVLSI設計を用いたハードウェアにおいて、部分的または全面的に、実行することができる。本明細書で開示されたシステムを実装するためにソフトウェアを使うかハードウェアを使うかは、当該システムの速度および/または効率要件、特定の機能、および使用される特定のソフトウェアもしくはハードウェアシステム、マイクロプロセッサもしくはマイクロコンピュータシステムに依存する。本明細書で説明した通信システム、方法およびプロトコルは、容易に、本明細書にて提供される機能的な記載に適用可能な技術分野における当業者であり、かつコンピュータおよび通信技術の全般的基本知識を有する者により、ハードウェアおよび/またはソフトウェアに、公知のまたは将来開発されるであろうシステムまたは構造、装置および/またはソフトウェアを用いて実装されることができる。
【0081】
更に、開示された方法は、容易に、記憶媒体に記憶可能なソフトウェアおよび/またはファームウェアに実装されることができ、コントローラおよびメモリが協働してプログラム化された汎用コンピュータ、専用コンピュータおよびマイクロプロセッサ等で実行されることができる。これらの場合においては、システムおよび方法は、applet、JAVA(商標).RTMまたはCGIスクリプト等のパソコンに埋め込まれたプログラムとして、サーバまたはコンピュータワークステーションに常駐する資源として、あるいは専用通信システムまたはシステム構成部品に組み込まれた手順等として実装されることができる。また、システムおよび/または方法を、通信トランシーバのハードウェアおよびソフトウェアシステムのようなソフトウェアおよび/またはハードウェアシステムに物理的に組み込むことにより、システムを実装することができる。
【0082】
説明を行うにあたり、本実施形態を徹底的に理解してもらうために、多数の詳細例につて述べてある。しかしながら、本明細書で開示の技術内容は、本明細書で説明する特定の具体例のみならず、種々の態様で、実用化が可能であることは理解されるべきである。
【0083】
更に、本明細書で説明した例示的技術は、特に説明した実施形態例に限定されるものではなく、他の実施形態例も利用が可能であり、明細書に記載した特徴事項は、個々に分離して、クレームに記載が可能なものである。
【0084】
上述したシステムは、xDSLモデムおよび802.11トランシーバ等のような有線/無線通信装置/システム等に実装されることができる。この技術に用いることができる無線通信プロトコルの例には、次のようなものがある。802.11a、802.11b、802.11g、802.11n、802.11ac、802.11ad、802.11af、802.11ah、802.11ai、802.11aj、802.11aq、802.11ax、WiFi、LTE、4G、Bluetooth(商標)、WirelessHD、WiGig、WiGi、3GPP、無線LAN、WiMAX等。
【0085】
本明細書に記載したようなプロセッサの例には、次のようなものがあるが、これらに限定されるわけではない。Qualcomm(商標) Snapdragon(商標) 800および801、4G LTE Integrationおよび64−bit計算機能付きQualcomm(商標)Snapdragon(商標)610および615、64ビットアーキテクチャ機能付きApple(商標)A7プロセッサ、Apple(商標)M7モーション・コプロセッサ、Samsung(商標)Exynos(商標)シリーズ、Intel(商標)CoreTMプロセッサ群、the Intel(商標)Xeon(商標)プロセッサ群、the Intel(商標)AtomTMプロセッサ群、the Intel Itanium(商標)プロセッサ群、Intel(商標)Core(商標)i5−4670Κおよびi7−4770Κ 22nm Haswell、Intel(商標)Core(商標)i5−3570Κ 22nm Ivy Bridge、the AMD(商標)FXTMプロセッサ群、AMD(商標)FX−4300、FX−6300、およびFX−8350 32nm Vishera、AMD(商標)Kaveriプロセッサ、Texas Instruments(商標)Jacinto C6000TM自動車インフォテインメントプロセッサ、Texas Instruments(商標)OMAPTM自動車用のモバイルプロセッサ、ARM(商標)CortexTM−Mプロセッサ、ARM(商標)Cortex−AおよびARM926EJ−STMプロセッサ、Broadcom(商標)AirForce BCM4704/BCM4703無線ネットワークプロセッサ、AR7100無線ネットワーク処理装置、他の業者から提供される同等のプロセッサ。プロセッサは、公知のまたは将来開発されるであろう標準命令セット、ライブラリおよび/またはアーキテクチャを用いて、計算機能を遂行することができる。
【0086】
したがって、トランシーバを低電力モードで作動させるシステムおよび方法が提供されたことは、明白である。実施形態は、複数の実施形態により記載したが、適用可能な技術分野における当業者にとっては、多くの代替例、変更例および変形例があることは理解できるはずである。かくして、本開示の精神と範囲内にある、かような代替例、変更例、均等物および変形例の全てを包摂することを、本開示は意図している。
図1
図2
図3