【課題を解決するための手段】
【0006】
本目的は、独立請求項の主題によって達成することができる。有利な実施形態および改善は、従属請求項の主題である。
【0007】
1つの態様は、薬物送達デバイスに関する。デバイスは、ハウジングを含むことができる。デバイスは、さらに、カートリッジホルダを含むことができる。カートリッジホルダは、ハウジングに連結可能、たとえば螺着可能になることができる。カートリッジホルダは、複数の用量の薬物を保持するためのカートリッジを受けるように適用され配置される。カートリッジホルダは、カートリッジの交換を可能にするためにハウジングから着脱可能になることができる。デバイスは、こうして再使用可能なデバイスになることができる。デバイスは、さらに、複数の用量の薬物を保持するためのカートリッジを含むことができる。本明細書で使用する用語「薬物」は、好ましくは少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0008】
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0009】
インスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0010】
エキセンジン−4は、たとえば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0011】
エキセンジン−4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0012】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,
Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0013】
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0014】
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0015】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0016】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0017】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類により抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
【0018】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(CH)と可変領域(VH)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0019】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0020】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(HV)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0021】
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0022】
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0023】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
【0024】
カートリッジは、ハウジングに連結可能、たとえば螺着可能になることができる。代替的には、カートリッジをカートリッジホルダ内に保持することができ、カートリッジホルダは、ハウジングに連結可能になることができる。カートリッジは、栓を含むことができる。栓は、カートリッジの内部で可動式に配設される。デバイスは、さらに、ピストンロッドを含む。ピストンロッドは、カートリッジに対して動くことができる。ピストンロッドは、ハウジング内に案内される。ピストンロッドは、薬物の用量をデバイスから投薬するために、特にカートリッジから投薬するために初期位置から端部位置に動かされるように適用され配置される。初期位置は、ピストンロッドが、デバイスが製造者から供給されたときに位置する位置になることができる。容量を投薬するために、ピストンロッドは、栓と機械的に共働することができ、それによって栓をカートリッジに対して動かし、こうして薬物をカートリッジから排出する。好ましくは、ピストンロッドは、カートリッジがデバイス内に装填されたとき、栓と恒久的に機械的に接触している。
【0025】
薬物のすべての量またはほぼすべての量が、カートリッジから投薬されたとき、ピストンロッドは、端部位置に位置する。ピストンロッドは、デバイスのリセット作動を実行するために端部位置から初期位置に向かって動かされて戻るように適用され配置される。好ましくは、ピストンロッドは、薬物のすべての量がカートリッジから投薬された後、端部位置から初期位置に向かって動かされる。ピストンロッドは、動かされて初期位置に戻り、取り換え用カートリッジをデバイス内に挿入する準備をする。
【0026】
デバイスは、さらに、少なくとも1つの弾性部材を含む。弾性部材は、ばね部材になることができる。弾性部材は、たとえば、ばねアームを含むことができる。弾性部材は、ピストンロッドと直接機械的に接触するように適用され配置される。弾性部材は、ピストンロッドと当接する、好ましくは、恒久的に当接することができる。
【0027】
少なくとも1つの弾性部材は、ピストンロッドとの機械的共働により、ピストンロッドが初期位置に向かって意図せずに動くことを防止するように適用され配置される。初期位置に向かうピストンロッドの意図しない動きは、連結可能なカートリッジまたはカートリッジホルダがデバイスから意図せずに部分的に取り出され、たとえば螺脱される(unscrewed)とき、たとえばユーザがデバイス上のニードルアセンブリを取り換えようとするときに起こることがある。換言すれば、ピストンロッドの動きは、たとえば、ピストンロッドが、カートリッジがデバイス内に装填されたままで初期位置に向かって動かされたときに意図しないものとなる。より全般的には、ピストンロッドの意図しない動きは、ユーザによって能動的に引き起こされない、初期位置に向かうピストンロッドのあらゆる動きになることができる。
【0028】
好ましくは、弾性部材は、ピストンロッドと機械的に共働し、それにより、ピストンロッドは、最小限の力をピストンロッドに対して軸方向にかけなければ、初期位置に向かって動いて戻ることはできない。換言すれば、ピストンロッドが初期位置に向かって動いて戻るための最小限必要とされる力は、ピストンロッドと機械的に共働する弾性部材によってピストンロッド上に及ぼされた摩擦力によって、この摩擦力が機械的抵抗に相当するようにして決定される。ピストンロッドは、それ自体の重量により、初期位置に向かって動くことはできない。
【0029】
このようにして、ピストンロッドは、栓に対して良好に定められた位置を常に含む。特に、カートリッジを含むカートリッジホルダが、−意図せずに−、部分的にデバイスから螺脱されたときに、ピストンロッドが栓との機械的共働から脱する(out of mechanical cooperation)ことが、防止される。軸方向の力がピストンロッド上にかけられた場合のみ、たとえば、ユーザが、カートリッジホルダが取り外され、カートリッジが完全に取り出された後にピストンロッドを意図的に押さえ付けたときにのみ、ピストンロッドは、初期位置に向かって動くことができるようになる。このようにして、ユーザにとって致命的な結果になることがあるカートリッジからの過少用量の投薬を防止することができる。こうして、安全かつユーザにやさしいデバイスの提供が、容易になる。
【0030】
1つの実施形態によれば、弾性部材は、径方向に可撓性である。弾性部材は、初期位置と端部位置の間のピストンロッドの動きが妨げられるように、径方向力、特に径方向内向きに向けられた力をピストンロッドの周囲または外側表面上に及ぼす。好ましくは、カートリッジに対するピストンロッドのいかなる動きも、弾性部材によって妨害される。弾性部材は、ピストンロッドが初期位置と端部位置の間で動かされるとき、ピストンロッドに沿って摺動することができる。好ましくは、弾性部材によってピストンロッドの周囲表面上に及ぼされる力は、結果として、薬物の用量を投薬するために、すなわちピストンロッドを端部位置に向かって移動させるために必要とされる力の大幅な増大にはならない。弾性部材によってピストンロッド上にかけられる力は、弾性部材の弾力性またはばね力、弾性部材の長さ、弾性部材の数、および/またはピストンロッドの直径を調整することによって調整可能になることができる。このようにして、柔軟に使用できる薬物送達デバイスの提供が、容易になる。
【0031】
1つの実施形態によれば、弾性部材は、自由端面を含む。自由端面は、デバイスの別の構成要素(component)に連結されない、またはその一部ではない端面になることができる。このようにして、弾性部材の高い弾力性が達成される。自由端面は、スプーン様に成形される。自由端面は、円形になることができる。自由端面は湾曲することができる。自由端面は、凸状に湾曲した部分または側面を含むことができる。自由端面は、さらに、凹状に湾曲した部分または側面を含むことができる。凸状に湾曲した部分および凹状に湾曲した部分は、互いに対向して配置される。自由端面の凸状部分は、好ましくは、ピストンロッドと直接機械的に接触している。凸状部分は、ピストンロッドと当接する、好ましくは恒久的に当接する。このようにして、弾性部材およびピストンロッドの妨害を防止することができる。特に、弾性部材が、ピストンロッドの周囲縁上に配置されたねじ山によって傾斜することを防止することができる。このようにして、誤差が起こりにくい信頼高い薬物送達デバイスの提供が、容易にされる。
【0032】
1つの実施形態によれば、デバイスは、2つ、3つ、またはそれ以上の弾性部材を含む。弾性部材は、ピストンロッドの周りに対称的に配置される。この場合、種々の弾性部材は、等しいばね力を有することができる。このようにして、初期位置に向かうピストンロッドの意図しない動きを効果的に防止することができる。さらに、弾性部材は、ピストンロッドをデバイス内の中心に置くのに役立つ。代替的には、種々の弾性部材は、互いと比較して異なるばね力を有することができる。この場合、弾性部材の対称的な配置は、必要ではない。弾性部材の種々のばね力により、ピストンロッドをデバイス内の中心に置くことができ、さらに、初期位置に向かうピストンロッドの意図しない動きを防止することができる。
【0033】
1つの実施形態によれば、デバイスは、さらに、相互作用部材(interaction member)を含む。相互作用部材は、ハウジングに対する回転から保護される。相互作用部材およびハウジングは、ハウジングに対する相互作用部材の回転を防止するために、機械的に互いに共働するように構成される。相互作用部材は、リング様に成形することができる。相互作用部材は、弾性のものになることができる。相互作用部材は、ばね部材になることができる。相互作用部材は、並列多軸ばね(multispring)になることができる。
【0034】
1つの実施形態によれば、相互作用部材は、弾性部材を含む。好ましくは、相互作用部材は、2つ、3つ、またはそれ以上の弾性部材を含むことができる。弾性部材および相互作用部材は、一体形成することができる。弾性部材は、相互作用部材から形成することができる。
【0035】
1つの実施形態によれば、相互作用部材は、開口部、好ましくは内側開口部を含む。ピストンロッドは、相互作用部材の開口部内に少なくとも部分的に配置される。ピストンロッドは、開口部を通って初期位置と端部位置の間で動くことができる。特に、相互作用部材は、ピストンロッドの周りに配置される。弾性部材は、たとえば、相互作用部材から、ピストンロッドに向かって径方向内向きに突起するように適用され配置される。弾性部材は、デバイス上の平面図で分かるように、径方向内向きに開口部内へと突起するように適用され配置される。このようにして、開口部の内側直径は、減少または低減することができる。特に、ピストンロッドがデバイスの作動中にそこを通って動かされるデバイス内の領域は、弾性部材によって低減することができる。特に、弾性部材は、ピストンロッドがそこを通って案内される開口部の直径を低減するように構成される。このようにして、弾性部材は、ピストンロッドが初期位置と端部位置の間で動かされるとき、ピストンロッドと機械的に共働する。
【0036】
1つの実施形態によれば、弾性部材は、2つの端面を含む。一方の端面は、たとえば、相互作用部材と機械的に接触することができる。代替的には、端面は、デバイスの別の構成要素と機械的に接触することができる。換言すれば、この端面は、自由ではない。他方の端面は、相互作用部材または別の構成要素との機械的接触を有さない。換言すれば、前記端面は、前に説明した自由端面である。弾性部材の自由端面は、ピストンロッドと機械的に共働するために、−デバイス上の平面図で分かるように−、相互作用部材の開口部内に突起する。
【0037】
1つの実施形態によれば、相互作用部材は、金属を含む。相互作用部材は、キャリア(carrier)を含むことができる。キャリアは、プレート様に成形することができる。キャリアは、円形またはほぼ円形になることができる。キャリアは、薬物送達デバイスの直径、特に、内径の形状に対応する形状を含むことができる。キャリアは、開口部を含む内部領域を含むことができる。開口部は、キャリアの内側領域から打ち抜くことができる。
【0038】
1つの実施形態によれば、弾性部材は、相互作用部材の内部領域から形成される。弾性部材は、キャリアから突起することができる。こうして、デバイスの構成要素の数は、少なく保たれる。したがって、コスト効果が高く、信頼高い薬物送達デバイスの提供が、容易になる。弾性部材は、金属を含む。弾性部材は、相互作用部材と同じ金属を含むことができる。
【0039】
1つの実施形態によれば、相互作用部材、特にキャリアは、少なくとも1つの固定部材(securing member)を含む。キャリアは、2つ、3つ、またはそれ以上の固定部材を含むことができる。一方の端部では、固定部材をキャリアに固定することができる。別の端部では、固定部材は、自由になることができる。固定部材は、たとえば、ばねアームを含むことができる。弾性部材および固定部材は、相互作用部材の両側に配置される。相互作用部材は、近位側および遠位側を含むことができる。遠位側は、デバイスの投薬端部のより近くに配置される側になることができる。弾性部材は、近位側に配置される。固定部材は、遠位側に配置される。
【0040】
1つの実施形態によれば、デバイスは、さらに、案内部材、たとえばガイドナットを含む。案内部材は、初期位置と端部位置の間のピストンロッドの動きを案内するために、ピストンロッドと機械的に共働するように適用され配置される。案内部材との機械的共働により、ピストンロッドは、ハウジング内でらせん運動を実行することができる。固定部材は、案内部材と係合するために弾性的にキャリア上に取り付けることができる。このようにして、ハウジングに対する案内部材の回転を防止することができる。
【0041】
1つの実施形態によれば、相互作用部材は、さらに、保持手段を含む。保持手段は、固定端部および自由端部を有するカンチレバー(cantilever)構造として形成することができる。固定端部は、キャリア上に固定することができる。保持手段は、弾性的に形成することができる。保持手段は、たとえば、ばねアームを含むことができる。保持手段は、スナップ機能、たとえば突起部を含むことができる。スナップ機能は、保持部材をハウジングに対して回転方向にロックするためにデバイスの保持部材と機械的に共働するように適用され配置される。相互作用部材および保持部材は、デバイスのハウジング内に組み付けられたとき、案内部材を包囲するように適用され配置される。保持部材は、ハウジングとの機械的共働により、ハウジングに対する軸方向運動から保護される。カートリッジホルダが、ハウジングに堅固に連結されないとき、保持部材は、第1と第2の位置の間で回転可能になることができる。このようにして、固定部材は案内部材とは係合せず、案内部材は、ハウジングに対して回転することができ、ピストンロッドが初期位置に向かうらせん運動を実行することになり得る。カートリッジホルダがハウジングに堅固に連結されるとき、保持部材は、相互作用部材との機械的共働により、ハウジングに対する回転から保護される。その結果、固定部材は、案内部材と係合することができ、案内部材は、ハウジングに対して回転することが防止されるようになり、ピストンロッドは、初期位置に向かって動いて戻ることが防止されるようになり、しかし投薬によって端部位置に向かって動くことができる。
【0042】
1つの実施形態によれば、デバイスは、さらに、内側部材を含む。内側部材は、金属を含むことができる。内側部材は、プレート様に成形することができる。内側部材は、リング様構造を含むことができる。内側部材は、キャリアまたはベースプレートを含むことができる。開口部が、キャリアの内側領域内に設けられる。開口部は、相互作用部材の開口部と比較してより小さい直径を有することができる。ピストンロッドは、内側部材の開口部内に少なくとも部分的に配置される。内側部材および弾性部材は、一体形成することができる。したがって、弾性部材は、相互作用部材に連結され、または代替的には内側部材によって相互作用部材に連結されずにこれに隣接して配置される。弾性部材は、金属を含む。弾性部材は、内側部材と同じ金属を含む。
【0043】
弾性部材は、内側部材から、特にキャリアから突起することができる。内側部材、特にキャリアは、内側側面を含むことができる。内側側面は、ピストンロッドの周囲表面に対向して配置される。内側部材、特にキャリアは、外側側面を含むことができる。外側側面は、キャリアの(外側)縁または側部を形成することができる。内側側面は、キャリアの(内側)縁または側部を形成することができる。弾性部材は、外側側面から内側側面に向かって突起することができる。これは、相互作用部材と一体化して形成される弾性部材の長さより長い長さを含む弾性部材を設けるのに役立つことができる。このようにして、弾性部材および弾性部材の端面の弾力性は、最適には、ピストンロッドのサイズおよび直径に合わせて調整することができる。
【0044】
1つの実施形態によれば、デバイス上の平面図で分かるように、内側部材は、相互作用部材の開口部内に少なくとも部分的に配置される。平面図で分かるように、内側部材は、相互作用部材の開口部内に少なくとも部分的に突起する。特に、弾性部材は、相互作用部材の外側側面から開口部内に突起することができる。このようにして、相互作用部材の開口部の直径を低減することができる。弾性部材は、ピストンロッドと機械的に共働するために開口部内に突起する。
【0045】
1つの実施形態によれば、弾性部材、特に内側部材は、相互作用部材に連結される。換言すれば、弾性部材および相互作用部材は、一体形成されない。そうではなく、弾性部材を含む内側部材は、相互作用部材と係合することができる。これは、弾性部材を相互作用部材の機能から独立して設計することができるため、デバイスの開発コストを削減するのに役立つことができる。内側部材は、たとえば、相互作用部材の開口部内にスナップ留めされる。こうして、内側部材および相互作用部材は、解放可能に連結することができる。代替的には、内側部材を相互作用部材にレーザ溶接することができる。したがって、内側部材および相互作用部材を解放不能に連結することができる。
【0046】
1つの実施形態によれば、内側部材および相互作用部材は、ハウジング内に隣接して配置される。内側部材および相互作用部材は、互いに当接するように配置される。しかし、内側部材と相互作用部材の間には連結特徴は存在しない。このようにして、弾性部材は、相互作用部材の機能から独立的して設計することができる。特に、弾性部材の構築における自由度は、内側部材が相互作用部材に連結される実施形態と比較してより大きくなることができる。したがって、弾性部材の長さは、内側部材が相互作用部材に連結される実施形態と比較して長くなることができる。また、内側部材の外径、特に全体サイズは、内側部材が相互作用部材に連結される実施形態と比較してより大きくなることができる。
【0047】
内側部材および相互作用部材は、互いに対する所定の位置で配置される。所定の位置は、所定の回転位置または角度位置になることができる。相互作用部材および内側部材を互いに対する所定の位置に配置するために、内側部材の外側形状は、相互作用部材の外側形状に等しく、または少なくとも類似することができる。特に、相互作用部材および内側部材のキャリアは、同じ輪郭もしくは外側形状、または少なくとも類似する輪郭または外側形状を含むことができる。特に、相互部材および内側部材は、同様にまたは等しく成形された位置決め要素(positioning element)を含むことができる。ハウジングは、少なくとも1つの位置決め要素、たとえば2つ、3つ、またはそれ以上の位置決め要素を含むことができる。位置決め要素は、たとえば、切欠部または溝を含むことができる。位置決め要素は、内側部材および相互作用部材を互いに対する所定の位置に配置するために内側部材および相互作用部材を受けるように適用され配置される。
【0048】
内側部材もまた、少なくとも1つの位置決め要素、たとえば2つ、3つまたはそれ以上の位置決め要素を含むことができる。内側部材の位置決め要素の数は、ハウジングの位置決め要素の数と等しくなることができる。内側部材の位置決め要素は、ハウジングの位置決め要素と機械的に共働するように適用され配置される。位置決め要素は、たとえば、突起部を含むことができる。突起部は、内側部材のキャリアから突起することができる。相互作用部材は、少なくとも1つの位置決め要素、たとえば2つ、3つ、またはそれ以上の位置決め要素を含むことができる。相互作用部材の位置決め要素の数は、ハウジングおよび内側部材の位置決め要素の数に等しくなることができる。相互作用部材の位置決め要素は、ハウジングの位置決め要素と機械的に共働するように適用され配置される。位置決め要素は、たとえば突起部を含むことができる。突起部は、相互作用部材のキャリアから突起することができる。内側部材の位置決め要素の外側形状は、相互作用部材の位置決め要素の外側形状に等しくなることができる。内側部材および相互作用部材の位置決め要素は、内側部材および相互作用部材が、ハウジングに対して、また互いに対して回転方向にロックされるように、ハウジングの位置決め要素と機械的に共働するように適用され配置される。
【0049】
弾性部材は、カートリッジホルダの端部セクションに配置された針デバイスをユーザが交換するときに起こることがある、カートリッジホルダがハウジングから部分的にのみ取り出されまたは螺脱されたとき、初期位置に向かうピストンロッドの動きを妨げるように適用され配置される。デバイス、特に弾性部材を用いることにより、ピストンロッドは、カートリッジホルダ、したがってカートリッジがデバイスから完全に取り出されるまで、栓と共に配置された状態に保たれる。このようにして、ユーザにやさしく、安全な薬物送達デバイスが、提供される。
【0050】
当然ながら、種々の態様および実施形態に関連して上記で説明した特徴は、互いにかつ以下に説明する特徴と組み合わせることができる。
【0051】
さらなる特徴および改善は、添付の図に関連する例示的な実施形態の以下の説明から明白になる。