(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記信号変換ステップにおいて、前記信号変換手段は、車両の走行中に外部から前記振動伝達手段に入力された走行振動を前記入力振動として検出して、前記検出信号に変換すること
を特徴とする請求項4または請求項5に記載の報知方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、車両走行時に発生する車両用シートの振動は、路面状況の変化等によって大きく変化する。このため、車両用シートに対して入力される振動は、必ずしも車両の走行速度やエンジンの回転数の変化に一致して変動するものではない。
【0008】
また、車両用シートの振動を検出する振動検出センサを用いて、車両用シートに入力される振動の振動レベルを検出し、検出された振動の振動レベルに応じて警報振動の振動レベルを変更させる構成も考えられる。しかしながら、路面状況による振動と警報による振動とを、1台の振動検出センサで識別することは容易ではない。このため、警報振動の出力だけを検出するセンサを新たに設ける必要が生じてしまい、装置のコストアップを招くという問題があった。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、振動によって報知を行う報知装置において、簡易な構成で警報振動の振動レベル調整を行うことが可能な報知装置および報知方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る報知装置は、外部から振動伝達手段に入力された入力振動を、検出信号に変換する信号変換手段と、報知対象となる状況を検出すると報知情報を出力する報知状況検出手段から前記報知情報が出力されていない場合に、前記信号変換手段より前記検出信号を取得して、当該検出信号に基づいて、調整レベルを決定する調整レベル決定手段と、前記報知情報が出力された場合に、当該報知情報に基づいて報知信号を生成する報知信号生成手段と、前記調整レベル決定手段により決定された前記調整レベルに基づいて、前記報知信号生成手段により生成された前記報知信号の信号レベルを調整する報知信号調整手段と、該報知信号調整手段により調整された前記報知信号を報知振動に変換して、前記振動伝達手段に出力する振動変換手段とを有し、前記調整レベル決定手段は、前記報知情報が出力された場合に、当該報知情報が出力される直前に決定した前記調整レベルの値を維持し、前記報知信号調整手段は、前記報知情報が出力されている間、前記調整レベル決定手段により維持された前記調整レベルの値に基づいて、前記報知信号の信号レベルを調整することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る報知方法は、振動伝達手段を介して報知振動を出力させる報知方法であって、信号変換手段が、外部から前記振動伝達手段に入力された入力振動を検出して、検出信号に変換する信号変換ステップと、報知対象となる状況を検出すると報知情報を出力する報知状況検出手段から前記報知情報が出力されていない場合に、調整レベル決定手段が、前記信号変換ステップにおいて変換された前記検出信号を取得し、当該検出信号に基づいて、調整レベルを決定する調整レベル決定ステップと、前記報知情報が出力された場合に、報知信号生成手段が、当該報知情報に基づいて報知信号を生成する報知信号生成ステップと、前記調整レベル決定ステップにおいて決定された前記調整レベルに基づいて、報知信号調整手段が、前記報知信号生成ステップにおいて生成された前記報知信号の信号レベルを調整する報知信号調整ステップと、振動変換手段が、該報知信号調整ステップにおいて調整された前記報知信号を前記報知振動に変換して、前記振動伝達手段に出力する振動変換ステップとを有し、前記調整レベル決定ステップにおいて、前記調整レベル決定手段は、前記報知情報が出力された場合に、当該報知情報が出力される直前に決定した前記調整レベルの値を維持し、前記報知信号調整ステップにおいて、前記報知信号調整手段は、前記報知情報が出力されている間、前記調整レベル決定ステップにおいて維持された前記調整レベルの値に基づいて、前記報知信号の信号レベルを調整することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る報知装置および報知方法では、外部から振動伝達手段に入力された入力振動を検出信号に変換し、検出信号に基づいて調整レベルを決定し、決定された調整レベルに基づいて報知信号の信号レベルを調整した後に、調整された報知信号を報知振動に変換して、振動伝達手段に出力する。このように、外部から実際に入力される振動の振動レベルに応じて報知振動の振動レベルを調整することができるので、入力振動の振動レベルが変化する場合であっても、報知振動の認知性を高めることが可能になる。
【0013】
また、本発明に係る報知装置および報知方法では、報知情報が出力された場合に、報知情報が出力される直前に決定された調整レベルの値を維持し、報知情報が出力されている間、維持された調整レベルの値に基づいて、報知信号の信号レベルを調整する。このため、報知情報が出力されていて、検出信号を検出することができない場合でも、直前に決定された調整レベルの値に基づいて、報知信号の信号レベルを調整することができる。このため、報知情報の出力の有無に拘わらず、適切に報知信号の信号レベルを調整することが可能になる。
【0014】
また、上述した報知装置において、前記調整レベル決定手段は、前記信号変換手段から前記検出信号を取得して、当該検出信号の信号レベルを検出する信号レベル検出手段と、
該信号レベル検出手段により検出された信号レベルを微分して前記信号レベルの変化量を算出する変化量算出手段と、前記信号レベルと前記変化量とを加算して前記調整レベルを算出する調整レベル算出手段とを有するものであってもよい。
【0015】
また、上述した報知方法において、前記調整レベル決定手段は、信号レベル検出手段と、変化量算出手段と、調整レベル算出手段とを有し、前記調整レベル決定ステップは、前記信号レベル検出手段が、前記信号変換手段から前記検出信号を取得して、当該検出信号の信号レベルを検出する信号レベル検出ステップと、前記変化量算出手段が、前記信号レベル検出手段により検出された信号レベルを微分して前記信号レベルの変化量を算出する変化量算出ステップと、前記調整レベル算出手段が、前記信号レベルと前記変化量とを加算して前記調整レベルを算出する調整レベル算出ステップとを有するものであってもよい。
【0016】
本発明に係る報知装置および報知方法では、検出信号に基づいて調整レベルを決定する場合に、検出信号の信号レベルを求めるだけでなく、検出信号の信号レベルを微分することによって、検出信号が増加傾向にあるのか減少傾向にあるのかを示した変化量を求める。そして、検出信号の信号レベルと変化量とを加算して調整レベルを算出することによって、検出信号(つまり、入力振動)の増減傾向を考慮した変化量で補正が行われた調整レベルを決定することができる。
【0017】
このため、報知情報が出力されている間に、報知信号の信号レベルを調整する場合には、直前のタイミングで取得された検出信号の増減傾向を考慮した調整レベルを用いて、報知信号の信号レベルを調整することができる。
【0018】
また、上述した報知装置において、前記信号変換手段と前記振動変換手段とは、同一の変換手段により構成され、当該変換手段は、前記入力振動を検出信号に変換し、且つ、前記報知信号を前記報知振動に変換するものであってもよい。
【0019】
さらに、上述した報知方法において、前記信号変換手段と前記振動変換手段とは、同一の変換手段により構成され、前記信号変換ステップにおいて、前記変換手段は、前記入力振動を検出信号に変換し、前記振動変換ステップにおいて、前記変換手段は、前記報知信号を前記報知振動に変換するものであってもよい。
【0020】
本発明に係る報知装置および報知方法では、信号変換手段と振動変換手段とを同一の変換手段により構成することにより、装置の簡素化を図ることが可能になる。さらに、電気信号から振動への変換(振動出力)と、振動から電気信号への変換(振動検出)という可逆性のある処理を1つの変換手段で行うことができるため、検出信号の信号レベルの値に基づいて、実際に出力される報知信号(報知振動)の信号レベル(振動レベル)を適切に調整することが可能になる。
【0021】
また、上述した報知装置において、前記信号変換手段は、車両の走行中に外部から前記振動伝達手段に入力された走行振動を前記入力振動として検出して、前記検出信号に変換するものであってもよい。
【0022】
さらに、上述した報知方法は、前記信号変換ステップにおいて、前記信号変換手段が、車両の走行中に外部から前記振動伝達手段に入力された走行振動を前記入力振動として検出して、前記検出信号に変換するものであってもよい。
【0023】
本発明に係る報知装置および報知方法では、信号変換手段が、車両の走行中に外部から振動伝達手段に入力された走行振動を入力振動として検出する。このため、車両走行によって車室内の振動レベルが変化しやすい状況において、報知信号(報知振動)の信号レベル(振動レベル)を適切かつ迅速に調整することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る報知装置および報知方法では、外部から振動伝達手段に入力された入力振動を検出信号に変換し、検出信号に基づいて調整レベルを決定し、決定された調整レベルに基づいて報知信号の信号レベルを調整した後に、調整された報知信号を報知振動に変換して、振動伝達手段に出力する。このように、外部から実際に入力される振動の振動レベルに応じて報知振動の振動レベルを調整することができるので、入力振動の振動レベルが変化する場合であっても、報知振動の認知性を高めることが可能になる。
【0025】
また、本発明に係る報知装置および報知方法では、報知情報が出力された場合に、報知情報が出力される直前に決定された調整レベルの値を維持し、報知情報が出力されている間、維持された調整レベルの値に基づいて、報知信号の信号レベルを調整する。このため、報知情報が出力されていて、検出信号を検出することができない場合、直前に決定された調整レベルの値に基づいて報知信号の信号レベルを調整することができる。このため、報知情報の出力の有無に拘わらず、適切に報知信号の信号レベルを調整することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係る報知装置について、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る報知装置の一例である、車両用振動警報装置の概略構成を示したブロック図である。車両用振動警報装置1は、警報振動信号設定部(報知信号生成手段)10と、警報振動信号調節部(報知信号調整手段)20と、車体振動信号検出部(調整レベル決定手段)30と、増幅部40と、スピーカ(信号変換手段、振動変換手段、変換手段)50とを有している。車両用振動警報装置1は、車両に設置される。
【0028】
[エキサイタ、増幅部]
本実施の形態に係る車両用振動警報装置1では、スピーカの一例として、接触面を振動させることにより振動の出力を行うエキサイタを用いる。エキサイタ50は、車両用シート(振動伝達手段)80を構成する座面部(振動伝達手段)81のクッション内部に埋設される。エキサイタ50は、入力された電気信号(警報振動信号:報知信号)を振動に変換することにより、警報振動(報知振動)を発生させる振動発生手段として機能する。
【0029】
また、エキサイタ50、車両用シート80に伝わる車体振動(入力振動)を検出して車体振動信号(検出信号)に変換する振動検出手段(振動センサ)としても機能する。エキサイタ50により変換された車体振動信号は、車体振動信号検出部30へ出力される。
【0030】
増幅部40は、エキサイタ50より警報振動を出力させるための警報振動信号を、増幅する。増幅部40において増幅された警報振動信号は、低インピーダンスでエキサイタ50へ出力される。
【0031】
[車体振動信号検出部30]
車体振動信号検出部30は、エキサイタ50より警報振動が出力されていない場合に、エキサイタ50から車体振動信号を高インピーダンスで受信する。車体振動信号を高インピーダンスで受信することにより、増幅部40からの影響を低減することができる。
エキサイタ50より警報振動が出力されている場合には、車体振動信号に警報振動の振動成分が含まれてしまうため、車体振動の振動レベルだけを検出することができない。このため、車体振動信号検出部30は、エキサイタ50より警報振動が出力されていない場合に、車体振動信号を受信する。
【0032】
図2は、車体振動信号検出部30の概略構成を示したブロック図である。車体振動信号検出部30は、警報情報判定部31と、包絡線検波部32と、スムージング部33と、デシベル変換部(信号レベル検出手段)34と、微分部(変化量算出手段)35と、信号レベル判定部(調整レベル算出手段)36とを有している。
【0033】
警報情報判定部31は、警報情報(報知情報)を取得することが可能となっている。警報情報とは、車載用の警報状況検出装置(電子制御ユニット:報知状況検出手段)90によって発せられる情報である。警報状況検出装置90は、例えば、車線境界線逸脱情報や、車両接近情報や、居眠り検知情報などの警報情報を、それぞれの警報状況に該当する間だけ連続して出力する。例えば、車両が左右の車線境界線を踏んで走行していることを、警報状況検出装置90が検知した場合、警報状況検出装置90は、車両が車線境界線を踏んでいる間だけ連続して、車線境界線逸脱情報を出力する。警報状況に該当しなくなると、警報状況検出装置90は、警報情報の出力を停止する。
【0034】
[警報情報判定部の処理]
警報情報判定部31は、包絡線検波部32と、スムージング部33と、デシベル変換部34と、微分部35と、信号レベル判定部36とに対して、更新信号の出力および停止を行う。
【0035】
図3は、警報情報判定部31における更新信号の出力・停止処理を示したフローチャートである。警報情報判定部31は、警報状況検出装置90より警報情報を取得する処理(サンプリング処理)を行う(S.1)。そして、警報情報判定部31は、警報情報を取得できたか否かの判断を行う(S.2)。警報情報を取得できなかった場合(S.2においてNoの場合)、警報情報判定部31は、包絡線検波部32と、スムージング部33と、デシベル変換部34と、微分部35と、信号レベル判定部36とに対して、更新信号を出力し(S.3)、更新信号の出力・停止処理を終了する。
【0036】
一方で、警報情報を取得できた場合(S.2においてYesの場合)、警報情報判定部31は、包絡線検波部32と、スムージング部33と、デシベル変換部34と、微分部35と、信号レベル判定部36とに対して、更新信号を出力せずに(更新信号を停止して)(S.4)、更新信号の出力・停止処理を終了する。
図3に示した警報情報判定部31における更新信号の出力・停止処理は、一定の更新タイミングで繰り返し実行される。
【0037】
図4は、警報情報判定部31が警報情報を取得する処理(サンプリング処理、S.1)の実行タイミングと、警報情報の出力の有無と、警報情報判定部31が更新信号を出力する処理(S.3)の実行タイミングとを示した図である。
【0038】
図4に示すように、警報情報判定部31が警報情報を取得する処理(サンプリング処理、S.1)は、一定の更新タイミングで周期的に実行される。また、警報情報は、警報状況に該当する期間だけ、警報状況検出装置90から出力される。従って、警報情報判定部31より更新信号を出力する処理は、警報情報が出力されていない期間であって、警報情報判定部31が警報情報を取得する処理(サンプリング処理)を実行する更新タイミングの時だけ実行される。
図4では、時間t11までの更新タイミングで、警報情報判定部31が更新信号を出力する。
【0039】
しかしながら、警報情報が出力される時間t11から時間t12までの間、警報情報判定部31は、更新信号の出力を行わない(更新信号を停止する)。そして、警報情報判定部31は、警報情報の出力が終了した時間t12以降の更新タイミングで、更新信号の出力を再開する。
【0040】
更新信号が警報情報判定部31より周期的に出力されている間、包絡線検波部32と、スムージング部33と、デシベル変換部34と、微分部35と、信号レベル判定部36とは、次述する処理を実行する。警報情報判定部31による周期的な更新信号の出力が停止された場合、包絡線検波部32と、スムージング部33と、デシベル変換部34と、微分部35と、信号レベル判定部36は、最後に更新信号を受信した時に実行した処理の結果(車体振動信号の信号レベルの値や、変化量の値等)のデータ(値)を維持する。そして、更新信号の出力が停止されている間(
図4に示す時間t11から時間t12までの区間)、つまり、警報情報判定部31に対して警報情報が入力されている間、包絡線検波部32と、スムージング部33と、デシベル変換部34と、微分部35と、信号レベル判定部36は、維持されたデータ(値)に基づいて処理を継続する。
【0041】
[包絡線検波部、スムージング部、デシベル変換部、微分部]
包絡線検波部32は、エキサイタ50より車体振動信号を取得して、車体振動信号の包絡線を検波する。スムージング部33は、包絡線検波部32により検波された包絡線に対して、ローパスフィルタを用いたスムージング処理を行う。スムージング部33によるスムージング処理によって、路面のギャップ等を車両が通過するときに発生する非定常的な車体振動の振動レベル変化を低減させることができる。
【0042】
デシベル変換部34は、スムージング部33によりスムージング処理されたリニアな車体振動信号(リニア信号)をデシベル単位の信号(デシベル信号)に変換する。微分部35は、デシベル変換部34によりデシベル信号に変換された車体振動信号に対して、ハイパスフィルタを用いた微分処理を行う。微分部35による微分処理によって、車体振動信号における信号レベルの変化量(以下、変化量と称する)を求めることができる。
【0043】
包絡線検波部32と、スムージング部33と、デシベル変換部34と、微分部35と、信号レベル判定部36とは、既に説明したように、警報情報判定部31が周期的に更新信号を出力している間、それぞれの処理を実行し、更新信号の出力が停止されている間、最後に更新信号を受信した時のデータ(値)を維持して処理を実行する。そして、警報情報判定部31に対する警報情報の入力が停止され、警報情報判定部31による更新信号の出力が再開された場合には、新たにエキサイタ50から受信した車体振動信号に基づいて、包絡線検波部32と、スムージング部33と、デシベル変換部34と、微分部35と、信号レベル判定部36がそれぞれの処理を実行する。
【0044】
[信号レベル判定部]
信号レベル判定部36は、デシベル変換部34により求められた車体振動信号の信号レベルの値と、微分部35により求められた変化量の値との和によって、警報振動信号の信号レベル(警報振動の振動レベル)を算出する。算出される警報振動信号の信号レベルを以下、振動信号レベル(調整レベル)と称する。
図5(a)は、デシベル変換部34より取得した車体振動信号の信号レベル特性(信号レベルの時間変化)を示した図であり、
図5(b)は、微分部35より取得した変化量の信号レベル特性(車体振動信号の微分値の時間変化、車体振動信号のオフセットレベル変化)を示した図である。
【0045】
図5(a)(b)に示す時間t11とt12は、
図4に示した更新信号の更新タイミングの時間t11およびt12に該当する。時間t11は、警報情報判定部31において警報情報が受信される直前のタイミングを示す。時間t11のタイミングでデジタル信号に変換された車体振動信号の信号レベルの値をG1(dB)とする。また、時間t11のタイミングで求められた変化量の値(微分値)をG1s(dB)とする。時間t11の次に、警報情報判定部31で更新信号が出力される時間は時間t12である。このため、時間t11から時間t12の直前までの間、車体振動信号の信号レベルの値はG1に維持(ホールド)され、変化量の値(微分値)はG1sに維持(ホールド)される。そして、時間t12において警報情報判定部31が更新信号を出力すると、デシベル変換部34により新たな車体振動信号の信号レベルの値が求められ、微分部35により新たな変化量の値(微分値)が求められる。
【0046】
図5(b)に示す変化量の値は、上述したように、車体振動信号を微分して信号レベルのオフセットを求めた値である。
図5(b)に示す時間t11の変化量G1sは、
図5(a)に示す時間t11の直前の信号レベルG1が増加方向にあるため、プラス側のオフセット(G1s>0)になる。時間t11における車体振動信号の値がG1、変化量(オフセット)の値がG1sとなるため、信号レベル判定部36は、時間t11における振動信号レベル(車体振動の振動レベル、調整レベル)の値G1d(dB)を、G1d=G1+G1sにより算出する(G1とG1sとを加算することにより求める)。この振動信号レベルの値G1dは、時間t11から時間t12まで維持されて、警報振動信号調節部20へ出力される。
【0047】
また、
図5(a)(b)には、時間t11および時間t11と同様にして、時間t21のタイミングで警報情報判定部31が更新信号を出力した後、時間t22の直前まで更新信号の出力が行われず、時間t22のタイミングで更新信号の受信が再開された状態が示されている。
図5(b)に示す時間t21の変化量の値−G2sは、
図5(a)に示す時間t21の直前の信号レベルG2が減少方向にあるため、マイナス側のオフセット(−G2d<0)となる。時間t21における車体振動信号の値がG2、変化量(オフセット)の値が−G2sとなるため、信号レベル判定部36は、時間t21における振動信号レベルの値G2dを、G2d=G2+(−G2s)により算出する(G2と−G2sとを加算することにより求める)。変化量(オフセット)の値はマイナスの値となるため、振動信号レベルの値G2dは、実質的にG2から|−G2s|(−G2sの絶対値)を減算した値となる。この車体振動の振動信号レベルの値G2dは、時間t21から時間t22まで維持されて、警報振動信号調節部20へ出力される。
【0048】
信号レベル判定部36は、時間t11や時間t21のタイミングにおいて、車体振動信号の信号レベルに加えて、車体振動信号の変化量を含めて、車体振動の振動信号レベルを決定する。このため、警報状況検出装置90により警報情報が出力されて、包絡線検波部32で車体振動信号を直接受信できない場合であっても、車体振動信号を受信していない区間(時間)における振動信号レベルの予測が可能となり、実際の車体振動の振動レベルに近似した振動信号レベルの値を算出することが可能になる。
【0049】
[警報振動信号設定部]
警報振動信号設定部10は、警報状況検出装置90より取得した警報情報に基づいて振動パターン信号を生成する。
図6は、警報振動信号設定部10が、警報情報として車線境界線逸脱情報を受信した場合に設定する振動パターンを示した図である。車線境界線逸脱情報における振動パターンは、1周期が0.5secの信号を3周期分設定することによって、1パターン分の振動パターンが構成される。具体的には、
図6に示すように、2周期分だけ連続して信号レベルをON(
図6では、信号レベル1)に設定し、その後1周期分だけ信号レベルをOFF(
図6では、信号レベル0)に設定することにより1パターン分の振動パターンが生成される。1パターンの振動パターンは1.5secの長さとなる。警報振動信号設定部10では、警報状況検出装置90より警報情報が入力されている間、
図6に示す振動パターンからなる振動パターン信号を連続的に生成する。警報振動信号設定部10により生成された振動パターン信号は、警報振動信号調節部20へ出力される。
【0050】
[警報振動信号調節部]
警報振動信号調節部20は、警報振動信号設定部10より取得した振動パターン信号と、車体振動信号検出部30から取得した車体振動の振動信号レベルの値とに基づいて、警報振動信号を生成する。
図7は、振動ゲインにおける振動信号レベルと信号ゲインとの関係を示した図である。
図7に示す信号ゲイン(dB)は、警報振動信号の信号レベルおよび後述するスイープ信号の信号レベルを決定するために用いられる値(ゲイン)である。
図7では、振動信号レベルに対する信号ゲインの増加割合を示した3種類の振動ゲインP1,P2,P3が示されている。振動ゲインP1,P2,P3の振動信号レベルが一定の信号レベル増加した場合、振動ゲインP1よりも振動ゲインP2の方が信号ゲインの増加量が大きく、さらに、振動ゲインP2よりも振動ゲインP3の方が信号ゲインの増加量(効果量)が大きくなる。警報振動信号調節部20では、振動ゲインP1,P2,P3のいずれかを予め選択するか、あるいは所望のタイミングで選択することが可能となっている。
【0051】
警報振動信号調節部20は、選択された振動ゲイン(
図7のP1〜P3のいずれか)と振動信号レベルとに基づいて、振動信号レベルに対応する信号ゲインの値を求める。そして、警報振動信号調節部20は、求められた信号ゲインを基準として、振動パターン1周期分のスイープ信号を生成する。
【0052】
図8(a)は、1周期分(0.5sec)のスイープ信号の振幅特性を示した図である。なお、
図8(a)には、警報情報が車線境界線逸脱情報の場合における1周期分の振幅特性が示されている。また、
図8(a)では、振動ゲインとして
図7に示すP1の振動ゲインが選択され、振動信号レベルが0dBの場合に求められた場合の信号ゲイン(つまり、信号ゲインも0dB)に基づいて、スイープ信号の振幅値が設定されている。
図8(a)に示すスイープ信号は、中心周波数を44Hzとし、低域側の下限の周波数を36Hzとし、高域側の上限の周波数を52Hzとした周波数範囲で、連続的に周波数が変更(スイープ)された信号である。
【0053】
次に、警報振動信号調節部20は、生成された1周期分のスイープ信号を、振動パターン信号の振動パターンに応じて組み合わせることによって、振動レベルがON・OFF設定された警報振動信号を生成する。
図8(b)は、車線境界線逸脱情報に基づく警報振動信号の振幅特性を示している。
図8(b)に示すように、警報振動信号の振動パターンでは、1パターンが1.5secの信号が繰り返し生成される。
【0054】
なお、振動ゲインとして
図7に示すP3の振動ゲインが選択されて、振動信号レベルが6dBである場合には、信号レベルとして6dBが検出される。この6dBの信号レベルに基づいて警報振動信号が生成される場合には、警報振動信号の振幅が、
図8(b)に示す振幅の2倍の値になる。
【0055】
このようにして警報振動信号調節部20によって生成された警報振動信号は、警報振動信号設定部10において警報情報が受信される間だけ継続して、増幅部40へ出力される。そして、増幅部40で信号レベル調整が行われた警報振動信号は、エキサイタ50において警報振動に変換されて、車両用シート80に対して振動を発生させる。
【0056】
以上説明したように、実施の形態に係る車両用振動警報装置1では、車両用シート80に実際に伝達される車体振動をエキサイタ50で車体振動信号に変換して、実際の車室内の振動レベルを求めことができる。このため、車両の走行速度やエンジン回転数などではなく、実際の車体振動の振動レベルに応じて、警報振動信号の信号レベルを調節することができる。従って、警報振動の大きさを、実際の車体振動に対応した大きさに設定することができ、警報の認知性向上を図ることが可能となる。
【0057】
特に、車両用振動警報装置1では、警報状況検出装置90によって警報情報が出力されており、エキサイタ50から車体振動信号を取得することができない場合であっても、直前の車体振動信号の信号レベルの値に対し、直前の車体振動信号の変化量(微分値を)を加算することにより、振動信号レベル(車体振動の振動レベル)の値を算出する。このため、車体振動信号における信号レベルの増減傾向を考慮した振動信号レベルの値を用いて、警報振動信号の信号レベルを調節することが可能になる。
【0058】
また、本実施の形態に係る車両用振動警報装置1では、電気信号から振動への変換(振動出力)と、振動から電気信号への変換(振動検出)という可逆性のある処理を1台のエキサイタ50で行う。このため、装置の簡素化を図ることが可能となり、検出される車体振動信号の信号レベルの値に基づいて、実際に出力される警報振動信号の信号レベルを調整する場合であっても、調整された信号レベルで適切に振動出力を行うことが可能になる。
【0059】
以上、本発明に係る報知装置および報知方法について、一例を示して詳細に説明を行った。しかしながら、本発明に係る報知装置および報知方法は、実施の形態に示した例には限定されない。
【0060】
実施の形態に係る車両用警報装置1では、車両用シート80を構成する座面部81のクッション内部に、エキサイタ50が設けられる場合について説明した。しかしながら、エキサイタ50の設置位置は、座面部81には限定されず、背もたれ部や、ヘッドレスト部に設置するものであってもよい。振動により運転者に警報を行うことが可能であれば、エキサイタ50の設置位置は特に限定されるものではない。
【0061】
また、実施の形態に係る車両用警報装置1では、振動出力手段および振動検出手段としてエキサイタ50を用いる場合を一例として示して説明を行った。しかしながら、振動出力手段および振動検出手段として用いられるものは、必ずしもエキサイタ50には限定されない。電気信号から振動への変換(振動出力)と、振動から電気信号への変換(振動検出)という可逆性のある処理を1つの手段で行うことができるものであれば、他のスピーカやマイクロフォン等であっても、本発明に係る報知装置および報知方法の信号変換手段および振動変換手段として用いることが可能である。
【0062】
さらに、実施の形態に係る車両用警報装置1では、スイープ信号を用いて警報振動信号を生成する場合について説明したが、警報振動信号は必ずしもスイープ信号に基づいて生成されるものには限定されず、スイープしない所定の周波数の信号に基づいて生成されるものであってもよい。また、スイープ信号を用いる場合であっても、スイープされる周波数範囲は、実施の形態に示した周波数範囲(36Hzから52Hzまでの周波数範囲)には限定されるものではない。
【0063】
また、実施の形態に係る車体振動信号検出部30では、警報情報判定部31による継続的な更新信号の出力が停止された場合に、包絡線検波部32と、スムージング部33と、デシベル変換部34と、微分部35と、信号レベル判定部36で、最後に更新信号を受信した時に実行した処理のデータ(値)を維持する場合を一例として説明した。また、更新信号の出力が停止されている間、つまり、警報情報判定部31に対して警報情報が入力されている間、包絡線検波部32と、スムージング部33と、デシベル変換部34と、微分部35と、信号レベル判定部36が、維持されたデータ(値)に基づいて処理を継続する場合について説明した。
【0064】
しかしながら、本発明に係る報知装置および報知方法は、実施の形態に係る警報情報判定部31により周期的な更新信号の出力が停止された場合に、各機能部32〜36の全てが、最後に更新信号を受信した時の処理のデータ(値)を維持し、更新信号の出力が停止されている間に、そのデータ(値)に基づいて処理を継続する構成には限定されない。少なくとも、更新信号の出力が停止される場合に、更新信号停止の直前に算出された振動信号レベルの値が、信号レベル判定部36から警報振動信号調節部20へ出力される構成であれば十分である。
【0065】
このため、例えば、周期的な更新信号の出力が停止された場合に、包絡線検波部32と、スムージング部33と、デシベル変換部34と、微分部35とが処理を停止する構成にしてもよい。このように、各機能部32〜35が処理を停止した場合であっても、警報情報判定部31に警報情報が入力される(更新信号が停止される)直前に算出された振動信号レベルの値を維持したまま(ホールドされた状態で)、信号レベル判定部36が警報振動信号調節部20へ振動信号レベルの値を継続して出力する構成とすることにより、実施の形態に示した効果と同等の効果を奏することが可能である。また、各機能部32〜36のいずれかが処理を停止し、他のいずれかが、最後に更新信号を受信した時のデータ(値)を用いて処理を実行する構成とするものであってもよく、この場合であっても、警報情報判定部31への警報情報の入力直前に算出した振動信号レベルの値を、信号レベル判定部36が警報振動信号調節部20へ出力できれば十分である。