(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて、本発明の冷菓材成形装置10について詳細に説明する。
【0016】
<全体構成>
図1は、本発明の実施形態に係る冷菓材成形装置10で凹部を成形した冷菓(氷菓)50の完成状態の図であり、同図(a)が断面図、同図(b)が外観斜視図である。
図2は、冷菓材成形装置10を示す正面外観図であり、
図3は成形型ユニット151Uを示す図であり、同図(a)が正面図、同図(b)が上面図、同図(c)が成形型151の外観図、同図(d)が断面図である。
【0017】
なお、説明の便宜上、冷菓材成形装置10における各種方向の定義として、上流から下流に向かう方向(
図1の左から右に向かう方向)となる第一方向を搬送方向Tとし、搬送方向Tに直交する方向となる第二方向を搬送幅方向Wとし、搬送方向T及び搬送幅方向Wに対して直交する方向(同図の上下方向)となる第三方向を搬送高さ方向Hと称する。
【0018】
図1に示すように、冷菓(氷菓)50は、カップ状の容器21に収容され、略中央部分に凹部30が形成された状態で冷凍されている。凹部30の形状は、本実施形態では頂部が下方に位置する略円錐形状であるが、この形状に限定されず、例えば円柱状、角柱状、半球状などであってもよい。凹部30の内部は中空部分となっている。
【0019】
図2を参照して冷菓材成形装置10は、冷菓材23の一部を中空の凹部形状に連続的に硬化(凍結)させる成形装置であり、搬送手段11と、充填手段13と、成形手段15と、冷媒供給手段17と、冷媒注入手段19を有する。これら冷菓材成形装置10の各部は、制御ユニットによって統括的に制御される。制御ユニットは、CPU、RAM、及びROMなどから構成され、各種制御を実行する。CPUは、いわゆる中央演算処理装置であり、各種プログラムが実行されて各種機能を実現する。RAMは、CPUの作業領域として使用される。ROMは、CPUで実行される基本OSやプログラムを記憶する。
【0020】
搬送手段11は、複数の容器21を連続して搬送する例えばコンベア装置であり、搬送幅方向Wに沿って複数(例えば、5個〜10個など)の容器21を並べた状態で、搬送方向Tに例えば間欠的に搬送する。容器21はここでは、カップ状の本体(
図1参照)と蓋体(不図示)とを有する冷菓用容器(冷菓材用容器)のうちの本体である。
【0021】
充填手段13は、搬送手段11によって搬送される容器21内に冷菓材23を順次充填するミックス充填機13である。冷菓材23は例えばかき氷アイスの原材料である。ミックス充填機13には、例えば、削氷装置(不図示)で削氷された後、ラインクラッシャー(不図示)で粒度が調整された氷とアイスクリームミックスを混合した冷菓材23が充填されており、ミックス充填機13の搬送高さ方向Hの下方に移動する容器21を認識して所定量の冷菓材23を容器21に充填する。充填時に、冷菓材23のオーバーランは例えば10%〜30%に調整される。
【0022】
成形手段15は、搬送手段11の上方に配置され、冷菓材23の少なくとも一部を中空の凹部形状に連続的に硬化させる凹部成形装置15である。凹部成形装置15は、冷却された凸状の成形型151と、これを搬送高さ方向H(上下方向)に昇降移動させる駆動手段153を少なくとも有し、容器21に充填されて凹部成形装置15の下方に搬送される冷菓材23内に成形型151を順次投入し、また冷菓材23から抜き出す。これにより成形型151の周囲の冷菓材23(成形型151の表面と当接する冷菓材23)の少なくとも一部が中空の凹部形状に連続的に冷却硬化(凍結)される。成形型151は、
図1に示す凹部30の形状を成形するものであり、冷菓材23の全体は凹部成形装置15においては硬化されず、下流工程において全体が冷却硬化(以下、単に硬化という)されて
図1に示す冷菓50が製造される。
【0023】
冷媒供給手段17は、貯槽(不図示)から配管175を通じて冷媒を成形型151に供給して成形型151を冷却する手段である。本実施形態では一例として冷媒に液体窒素(液化窒素:LN2)を採用する。冷媒供給手段17は、配管175内の液化窒素を過冷却状態にすることで、安定的に凹部成形装置15に液化窒素を供給する。
【0024】
冷媒注入手段19は、凹部成形装置15によって硬化された冷菓材23の凹部分に追加で冷媒(液体窒素)を直接注入する液体窒素注入装置である。
<凹部成形装置>
図3を参照して、凹部成形装置15は、複数の成形型151が一体的に取り付けられた成形型ユニット151Uを有する。複数の成形型151は搬送方向Tおよび搬送幅方向Wに沿って行列状に並び、搬送幅方向Wの数は搬送手段11によって搬送される容器21の数に対応している。また、搬送方向Tには、この例では前後(上流側と下流側)に並ぶ複数の成形型151を有する(同図(a),同図(b))。
【0025】
具体的には、凹部成形装置15は、搬送方向Tにおいては上流側(同図(a),同図(b)では左側)に位置する第1成形型151Aと、下流側(同図(a),同図(b)では右側)に位置する第2成形型151Bと、を有する。なお上述のとおり、第1成形型151Aと第2成形型151Bはそれぞれ搬送幅方向Wに複数並んでいるが(同図(b))、以下では便宜上、2個の第1成形型151Aと第2成形型151Bとして説明する。
【0026】
同図(c)、同図(d)を参照して、成形型151(151A,151B)は、金属を略円錐形状に成形したものであり、内側が中空部分159となっている。中空部分159の形状は外形状に沿った略円錐形状であり、円錐の頂部Tに対向する位置には開口部157が設けられている。そして頂部Tが搬送高さ方向Hの下方に位置するように、すなわち下に凸となる状態でホッパー173(後述する)に取り付けられる。中空部分159にはホッパー173を介して液体窒素が供給され、略円錐形状の外表面が冷菓材23と接触する。
【0027】
成形型151の金属は、食品に直接触れても問題がない材質であって、冷菓材23との熱交換が効率良く行える程度に熱伝導率が高く、図示のような略円錐形状などの加工がしやすい材料であり、例えば、ステンレス(SUS304)である。また、同図に示す完成状態での略円錐部分の板厚Dは全体に亘って略均一であり、例えば、0.1mm〜2.0mm、好適には、0.3mm〜1.5mm、より好適には0.5mm〜1.0mmである。本実施形態では一例として、成形型151の板厚Dを0.5mmとした。
【0028】
また、少なくとも、冷菓材23と接触する外表面151Oは、例えば電解研磨で表面処理されている。なお、外表面は例えば、冷菓材23の付着を防止するような加工(例えば,凹凸加工や撥水加工など)を施してもよい。
【0029】
なお、金属は、食品に直接触れても問題がない材質であって、冷菓材23との熱交換が効率良く行える程度に熱伝導率が高く、加工がしやすい材料であればステンレスに限らない。例えば、成形型151の金属としては砲金(銅(Cu)と錫(Sn)の合金:Gunmetal)でもよい。砲金の熱伝導率はステンレスの3倍〜4倍と高く、冷菓材23との熱交換も良好に行える。一方で、ステンレスよりも硬度が低く加工はしにくいが、高熱伝導率であるため、上記のステンレスの場合よりも板厚Dを厚くでき、加工のしにくさを補うことができる。なお、本実施形態の2つの成形型151A、151Bは同様の構成である。
【0030】
成形型ユニット151Uは、容器21に対して相対的に近接・離間する。例えば、凹部成形装置15は、成形型ユニット151Uを昇降させることで、第1成形型151Aと第2成形型151Bを同時に昇降させてそれぞれを冷菓材23内に投入させ、冷菓材23から抜き出す。なお、第1成形型151Aと第2成形型151の昇降は、同時でなくても良い。また、容器21が成形型ユニット151Uに近接・離間するように搬送手段11が昇降移動する構成であってもよい。
【0031】
第1成形型151Aと第2成形型151Bとのピッチは、搬送方向Tに沿って並ぶ2つ(前後2列)の容器21のピッチと同等である。詳細には、第1成形型151Aと第2成形型151Bと略円錐状の頂部を通る中心軸間の距離L(同図(a)参照)は、搬送方向Tに沿って前後に並ぶ略円筒形の容器21の中心軸間の距離とほぼ同等である。つまり、搬送方向Tの前後に並ぶ第1成形型151Aと第2成形型151Bによって、搬送方向Tの前後に並ぶ2個の冷菓材23に対して(略)同時に、凹部の成形を行う。
【0032】
凹部成形装置15は、成形型151が所定時間に所定数の成形を行うように成形型151を移動させる。つまり一つの成形型151は、容器21に充填されて連続して搬送される少なくとも2個の冷菓材23に対して、当該冷菓材23内への投入と抜き出しが繰り返され、その結果、成形型151の周囲と当接する冷菓材23の少なくとも一部が中空の凹部形状になるように硬化処理を行う。
【0033】
そして、一つの成形型151は、搬送方向Tに沿って前後に連続して搬送される2個の冷菓材23のうち、先行する(搬送方向Tの下流の)冷菓材(第一の冷菓材)の硬化処理から、後行(搬送方向Tの上流)の冷菓材(第二の冷菓材)の硬化処理までの間に所定の温度に冷却される。すなわち、凹部成形装置15は、下流側の冷菓材23の硬化処理(詳細には、一部を硬化した冷菓材23からの抜き出し)から上流側の冷菓材23硬化処理(ミックスへの再投入)までの間に、成形型151が所定の温度に冷却される速度で、成形型151を上下に昇降移動させる。
【0034】
具体的には、ある1つの冷菓材23に着目した場合、未硬化で搬送される冷菓材23は先ず上流側の第1成形型151Aによって中央付近の一部が凹部となるように硬化されて薄皮状態の硬化部35(
図4参照)が形成され、その硬化部35(凹部状の部分)に下流側の第2成形型151Bが挿入されて更に(重ねて)硬化される。つまり、1つの冷菓材23の凹部状の硬化部35は成形型151が複数(この例では2回)挿抜されて形成され、さらに、1つの冷菓材23の凹部は異なる成形型151A、151Bが挿抜されて形成される。
【0035】
本実施形態では、複数の成形型151(151A,151B)によって、1つの容器21に収容された冷菓材23に対して複数回の昇降動作を行い、凹部状の硬化部35を形成する。これにより、それぞれの成形型151A,151Bが冷菓材23に当接する時間を短縮し、成形型151A,151Bの温度(冷却温度)の上昇(高温化)を最小限にすることができる。また、1つの成形型151の当接時間を短縮した分、1つの硬化部35について複数回の成形処理を行うことで、硬化の状態を良好に維持する(十分な成形状態で次工程に移送する)ことができる。
【0036】
図4を参照して凹部成形装置15によって形成された凹部30について説明する。同図は、或る1つの冷菓材23の時間経過に応じた状態を示しており、同図(a)が第1成形型151Aによって硬化(成形)された後の状態であり、同図(b)がその後に第2成形型151Bによって硬化(成形)された状態であり、同図(c)は液体窒素が注入された状態である。
【0037】
同図(a)に示すように、所定の条件(時間、後述する)で成形型151を昇降させて冷却した場合、硬化されるのは成形型151と接触する一部の冷菓材23のみである。そして同図に示すように成形型151の形状に沿った薄皮状態の硬化部35が形成される。硬化部35の形成によって、冷菓材23の中央付近に凹部30が創出されている。
【0038】
また、同図(b)に示すように2回目(第2成形型151B)により追加の硬化を行うと、薄皮状態の硬化部35が2層に積層された状態となる。これにより、1層の場合と比較して硬化部35が崩れることを防止できる。
【0039】
そして、同図(c)に示すように、硬化部35の内側に液体窒素注入装置19によって液体窒素37を注入する。これにより液体窒素37に接触している底部付近の冷菓材23も硬化する(硬化部35が更に広がる)。冷菓材23の底部付近が硬化するため、開口部付近の冷菓材23の硬化が十分でなくても、それらの荷重に耐えることができ、さらに硬化部35の崩れを防止できる。
【0040】
なお、一つの冷菓材23に対して挿抜する成形型の数(回数)を増やせば、薄皮状態の硬化部35の積層数が増えるため、硬化部35の崩れの防止には効果的であるが、下流工程(急速冷凍庫)への移送が遅れる。また、冷菓材23の組成によっても、硬化の程度は異なる。従って、処理効率、冷菓材23の組成等に応じて、上記の処理条件(動作条件)や、成形型151による成形回数は適宜選択する。
<冷媒供給手段>
再び
図2を参照して、冷媒供給手段(液体窒素供給装置)17は不図示の液体窒素貯槽と、液体窒素過冷却システム171,ホッパー173及びこれらを接続する配管175などを備える。
図3に示すようにホッパー173は例えば略立方体形状であり、底部に供給口(不図示)が設けられている。この底部に成形型ユニット151Uが取り付けられ、成形型151(151A,151B)の開口部157がホッパー173の供給口を完全に覆うとともにこれと連通する。
【0041】
液体窒素貯槽内の液体窒素は、液体窒素過冷却システム171を介して配管175を通じてホッパー173に供給され、ホッパー173の供給口から成形型151の開口部157を介して、成形型151の中空部分159に供給される。ホッパー173は上部に液面センサを備え、液化窒素の液面を任意の位置に維持するよう、電磁弁を切り替えて、成形型151の中空部分159に液体窒素を自動で供給する。これにより、成形型151が冷却される。
【0042】
液体窒素過冷却システム171は安定的に過冷却の液体窒素を供給できる装置(例えば、クールテクノス社製サブクーラーなど)であり、既存のものであるため詳細な説明は省略するが、配管175中の液体窒素を過冷却するものである。液体窒素は1気圧下での沸点が−196℃の極低温で、液体窒素貯槽からユースポイントまでの距離が長くなると、配管175中の液体窒素がガス化(窒素ガス:GN2)され、末端(ホッパー173など)での液体窒素の供給が不安定になったり、液体窒素ノズルなどを用いている場合には脈動を起こし、微量のコントロールができないといった現象が起こる。本実施形態では、液体窒素過冷却システム171をホッパー173の近傍に設置し、配管175中の液化窒素を過冷却状態にすることで、安定的にホッパー173に液化窒素を供給している。
<液体窒素注入装置>
液体窒素注入装置19は、凹部成形装置15の下流に設けられ、凹部成形装置15によって成形された冷菓材23の凹部状の硬化部35に所定量の液体窒素を直接注入する。液体窒素の注入によって硬化部35およびその付近の硬化をより十分に行い(追加の硬化処理を行い)、下流工程に移送するまでの硬化部35の崩れを防止する。
【0043】
液体窒素注入装置19は、ホッパー191と注入ノズル193を有しており、配管175によって液体窒素過冷却システム171と接続している。液体窒素貯槽内の液体窒素は、液体窒素過冷却システム171を介して配管175を通じホッパー191にも供給される。ホッパー191には注入ノズル193が取り付けられ、当該注入ノズル193から、冷菓材23の硬化部35に対して液体窒素が自動供給される。液体窒素は、注入ノズル193から連続的に注入されるが、ホッパー191と注入ノズル193の間には不図示のニードルバルブがあり、その開度の強弱で液体窒素の注入量を調整することができる。
【0044】
注入された液体窒素は、冷菓材23が冷菓材成形装置10の下流端部に到達するまでの間に気化する。そして注入された液体窒素が気化した後に、容器21に対して蓋体(不図示)が装着される。蓋体は例えば、冷菓材成形装置10の下流付近に設けられた蓋体装着装置(不図示)などにより容器21に装着され、冷菓材23が封止される。蓋体は例えば、成形された凹部状の硬化部35に沿う、すなわち成形型151と同様の凸状部を有する(略円錐形状の)蓋体であってもよいし、凸状部を有しない、例えば、フィルム状や平板状の蓋体であってもよい。
【0045】
本実施形態の冷菓材成形装置10は、凹部成形装置15と液体窒素注入装置19によって、冷菓材23の略中央部分に凹部状の硬化部35が形成される。そして冷菓材成形装置10から排出されて蓋体が装着された冷菓材23を、急速冷凍庫(不図示)に移送し、未硬化の冷菓材23部分を冷却硬化させる。
【0046】
冷菓材成形装置10は、中央付近に凹部30を有する冷菓50の製造に際し、上述の凹部成形装置15(成形型151)を採用するとともに、凹部成形装置15および液体窒素注入装置19の効果的な制御を行うことによって、生産効率を向上させつつ、成形の仕上がりも良好にしている。以下、この点を含めて冷菓材成形装置10の動作およびこれによる冷菓材成形方法について説明する。
<冷菓材成形装置の動作および冷菓材成形方法>
図5および
図2を参照して冷菓材成形装置10の動作および冷菓材成形方法について説明する。
図5は、凹部成形装置15の動作を説明する概略図であり、
図5(a)〜同図(h)ではそれぞれの左側が上流側、右側が下流側であり、冷菓材23入りの容器21は
図5の左から右に搬送される。
【0047】
まず、
図2を参照して、冷菓材成形装置10の上流端部において空の容器21(カップ形状の本体)が供給される。容器21は、搬送幅方向Wに沿って例えば8個〜10個が並ぶように、搬送手段11に供給される。
【0048】
その下流では、順次搬送される容器21に対して、ミックス充填機13から冷菓材23が供給される。ミックス充填機13は、下方に移動する容器21を認識して所定量の冷菓材23を容器21に充填する。
【0049】
また、液体窒素貯槽内(不図示)の液体窒素は、液体窒素過冷却システム171を介して配管175を通じホッパー173に供給され、ホッパー173の供給口から成形型151の中空部分159に供給される。ホッパー173は上部に液面センサを備え、液化窒素の液面を任意の位置に維持するよう、電磁弁を切り替えて、成形型151の中空部分159に液体窒素を自動で供給する。これにより、成形型151が冷却される。
【0050】
そして、凹部成形装置15にて凹部の成形を行う。すなわち、
図5に示すように凹部成形装置15は、その下方に移動する容器21を認識して成形型ユニット151Uを下降させる(
図5(a))。これによりまず、搬送方向Tの前後に並ぶ或る2つの冷菓材23のうち下流側に位置する冷菓材23(未硬化の冷菓材23)に対して、上流側の第1成形型151Aが投入される(
図5(b))。
【0051】
図4に示すように、冷菓材23は、液体窒素によって十分に冷却された第1成形型151Aと当接することによって、当該第1成形型151の周囲が冷却硬化され、薄皮状態の硬化部35が形成される。この硬化処理は、第1成形型151Aに着目すると、連続する成形処理のうち先の冷菓材23に対する硬化(第一の硬化)処理となる。また、冷菓材23に着目すると、1回目の硬化処理であり、上流側における硬化(上流側硬化)処理となる。これにより、第1成形型151Aの外表面に沿って略円錐形状の硬化部35が形成される。
【0052】
所定の時間(例えば、1秒〜2秒、好適には1.5秒前後、より好適には、1.33秒程度)が経過した後に、凹部成形装置15は、第1成形型151A(成形型ユニット151U)を上昇させ、冷菓材23から抜き出す(
図5(c))。なお、本実施形態では、搬送手段11は、容器21(冷菓材23)を間欠的に下流に搬送する。つまり、成形型151にて成形している間は、容器21(冷菓材23)は下流側に移動しない。したがって、成形型151(成形型ユニット151U)は、昇降動作のみを行うように構成されている。
【0053】
なお、上記の成形型151による冷却時間は、一例であり、当該冷却時間は長いほどよいが、生産能力を勘案して適宜選択される。
【0054】
成形型ユニット151Uが上昇すると、搬送手段11は搬送方向Tに容器21(冷菓材23)を一列移動させる。そして成形型ユニット151Uを再び下降させる(
図5(d))。このとき、下降した下流側の第2成形型151Bは、先に第1成形型151Aによって硬化(上流側硬化)されて形成された硬化部35の凹部状部分に挿入される(
図5(e))。そして硬化部35に第2成形型151Bが当接または近接し、更に硬化が進む。この硬化処理は、第2成形型151Bに着目すると、連続する成形処理のうち先のミックスに対する硬化(第一の硬化)処理となる。また、冷菓材23に着目すると、硬化部35形成後の2回目の硬化処理であり下流側における硬化(下流側硬化)処理となる。
【0055】
このとき同時に、上流側では第1成形型151Aは新たな未加工の冷菓材23内に投入され、第1成形型151Aの周囲が冷却硬化される。この硬化処理は、第1成形型151Aに着目すると、連続する成形処理のうち後の冷菓材23に対する硬化(第二の硬化)処理となる。また、冷菓材23に着目すると、1回目の硬化処理であり、上流側における硬化(上流側硬化)処理となる。
【0056】
所定の時間(例えば、1秒〜2秒、好適には1.5秒前後、より好適には、1.33秒程度)が経過した後に成形型ユニット151Uが上昇すると(
図5(f))、搬送手段11は搬送方向Tに容器21(冷菓材23)を一列移動させる。そして成形型ユニット151Uを再び下降させる(
図5(g))。このとき、下降した下流側の第2成形型151Bは、先に第1成形型151Aによって硬化(上流側硬化)がされて形成された冷菓材23(下流側の冷菓材23)の硬化部35に挿入される(
図5(h))。そして硬化部35に第2成形型151Bが当接または近接し、更に硬化が進む。この硬化処理は、第2成形型151Bに着目すると、連続する成形処理のうち後の冷菓材23に対する硬化(第二の硬化)処理となる。また、冷菓材23に着目すると、2回目の硬化処理であり下流側における硬化(下流側硬化)処理となる。
【0057】
これを順次繰り返し、第1成形型151Aおよび第2成形型151Bはそれぞれ連続的に冷菓材23に凹部状の硬化部35を形成する。つまり第1成形型151Aは未硬化の先行する冷菓材23に対する硬化処理(第一の硬化処理)と、未硬化の後続の冷菓材23に対する硬化処理(第二の硬化処理)を繰り返す。また第2成形型151Bは同様に、硬化部35が形成された先行する冷菓材23に対する硬化処理(第一の硬化処理)と、硬化部35が形成された後続の冷菓材23に対する硬化処理(第二の硬化処理)を繰り返す。
【0058】
また、ある1つの冷菓材23に着目すると未硬化の状態で第1成形型151Aが投入されて凹部状の硬化部35の形成(上流側硬化処理)が行われ、連続して、形成された硬化部35に第2成形型151Bが挿入されて、追加の硬化(下流側硬化処理)が行われる。
【0059】
このとき、本実施形態の冷菓材成形装置10は、所定時間に所定数の硬化(例えば、同時に搬送幅方向Wに8個(8列)生産できる冷菓材成形装置10において成形型ユニット151Uを1分間に20回を昇降動作させた場合、1分間に160個の硬化)を連続して行いつつも、それぞれの成形型151(第2成形型151B、第1成形型151A)において、第一の硬化(先の冷菓材23の硬化)処理から第二の硬化(後の冷菓材23の硬化)処理までの間に、所定の温度に冷却されるように昇降動作(の時間)が制御される。
【0060】
この所定の温度は、成形型151の周囲に接触(または近接)する冷菓材23の少なくとも一部を硬化させるために十分な温度であり、より具体的には、液体酸素の沸点(−183°C)以下の低温である。
【0061】
成形型151はそれぞれ、冷菓材23に投入することによって冷菓材23との熱交換が起こり、成形型151の表面温度は、液体窒素の沸点(−196℃)よりも上昇する。そして先の冷菓材23について第一の硬化処理が終了して、冷菓材23から抜き出されると、成形型151は液体窒素によって再び冷却され、いずれは液体窒素の沸点まで低下する。凹部成形装置15は、或る1つの成形型151(第1成形型151A、第2成形型151Bのいずれも同様)について、先の冷菓材23から抜き出した場合、成形型151の表面温度が少なくとも液体酸素の沸点(−183°C)まで低下した後に、後の冷菓材23に投入する。換言すると、先の冷菓材23から成形型151を抜き出した後、最も高温であっても液体酸素の沸点までは冷却する(それより更に低温でもよい)ように、上昇させた状態(冷菓材23とは非接触の状態)を維持(上方で待機し)、十分冷却したあとに、後の冷菓材23に投入して第二の硬化処理を行う。
【0062】
中空部分159に液体窒素が供給された成形型151を空気中に曝すと、空気中の酸素ガスが成形型151の外表面151Oに接触し液体酸素となる。そして、成形型151の外表面151Oに液体酸素が付着した状態で冷菓材23に投入すると、外表面151Oが乾いた状態で成形型151を投入する場合と比較して、成形型151に付着する冷菓材23の量を大幅に低減することができる。また、冷菓材23との接触によって成形型151に冷菓材23が付着した場合であっても、冷菓材23から抜き出して空気中に曝し、液体酸素を成形型151の表面に付着させることによって付着している冷菓材23を成形型151から剥離することも可能になる。
【0063】
本実施形態では、ある1つの成形型151について、先の冷菓材23から抜き出した後に後の冷菓材23に投入するまでの期間に、当該成形型151の外表面151Oに液体酸素が付着するように、成形型151の昇降の動作タイミングを制御する。
【0064】
例えば、ある組成の冷菓材23に硬化部35を形成する場合、冷菓材23から抜き出して空気中に曝された成形型151の外表面151Oに液体酸素が付着するまでの最短時間は、所定の生産能力(例えば1分間に160個の冷菓材23について硬化部35を形成可能)を前提とすると、例えば1秒〜2秒であり、好適には、1.5秒〜1.8秒であり、より好適には、1.6秒〜1.7秒である。
【0065】
なお、冷菓材23が硬化する(硬化部35が形成される)速度は、冷菓材23の組成や温度により異なる。つまり、冷菓材23に接触した成形型151の温度上昇も冷菓材23の組成や状態により異なり、ひいては、冷菓材23と非接触の状態で成形型151が冷却される時間も、冷菓材23の組成や状態により異なる。
【0066】
つまり、上記の、成形型151の表面に液体酸素が付着するまでの最短時間は一例であり、本実施形態の凹部成形装置15は、連続して冷菓材23に投入される成形型151のそれぞれについて、少なくとも成形型151の表面に液体酸素が付着するまでの期間は、成形型151を冷菓材23と非接触の状態で維持するものとし、非接触の状態で維持する期間は冷菓材23の組成や状態などに応じて適宜選択される。
【0067】
なお、成形型151(成形型ユニット151U)の昇降動作のタイミングは任意に設定可能であり、1個の成形型151の1回の昇降動作(以下「1ショット」という)を例えばエアシリンダなどによって調整し、容器21の移動速度と同期させる。
【0068】
硬化部35が成形された後、容器21は更に下流に搬送され、液体窒素注入装置19によって、成形された硬化部35に液体窒素が注入される(
図2参照)。注入量は例えば、硬化部35の深さD1の1/5〜1/2程度であり、好適には1/4程度(容量は、例えば、約9ml)である。
【0069】
この処理は、凹部成形装置15によって成形された硬化部35およびその近傍をより確実に硬化させるものである。凹部成形装置15による成形後は、
図4に示すように、冷菓材23が薄皮状態で硬化した硬化部35が形成されている。このような場合に追加の硬化処理(液体窒素注入による硬化処理)を行わないと、未硬化の部分、特に、底部付近の冷菓材23が開部付近の冷菓材23の重量に耐えられず、硬化部35が崩れる原因となる。
【0070】
一方で、このように薄皮状態であっても硬化部35が形成されていれば(全体が硬化されなくても)、蓋体で封止して下流工程である急速冷凍庫に移送できる。つまり、短時間で硬化部35のみを形成できれば十分である。
【0071】
また、製造工程中に使用する液体窒素の量が少ないほどコストの低減に寄与する。本実施形態では、後の急速冷凍工程に移送するまでに、硬化部35が崩れない程度に十分に硬化ができる条件として、液体窒素の注入量を例えば,凹部30の全体の深さD1のうち底部から例えば1/4程度が満たされる深さ(容量で例えば、約9ml)とした。これにより、特に底部付近の冷菓材23の硬化を進めることができるので、開口部付近の冷菓材23の荷重によって崩れることを防止でき、良好に硬化部35が形成された状態で、下流の急速冷凍庫に移送することができる。
【0072】
また、例えば、上流側の第1成形型151A(
図2に示す破線t1)から4列下流側(12秒後)のタイミング(破線t2)で液体窒素を注入するように構成している。この場合、液体窒素の注入量を硬化部35の深さD1の1/4程度までの深さに注入すると、製造工程内の環境下では、注入後6列下流側(18秒後)のタイミング(破線t3)までには液体窒素は気化する。つまり、注入後7列下流側以降であれば、容器21に蓋体を装着することができる。
【0073】
注入量が多いと気化するタイミングも遅れ、蓋体の装着が遅れると下流工程への移送も遅れる。本実施形態の注入量であれば、硬化部35の周囲を下流工程への移送が十分な程度に硬化できる最小限の注入量としているので、蓋体の装着および下流の急速冷凍庫への移送も最短で行うことができ、コストの増加防止と、作業時間の短縮が実現する。
【0074】
冷菓材成形装置10から排出された容器21(蓋体で硬化部35が形成された冷菓材23が封止されている)は、排出後、トレーに移載され、不図示の急速冷凍庫(例えば−40℃)で例えば20分間硬化させる。これにより、中央付近に凹部30を有する冷菓50(
図1参照)が得られる。
【実施例1】
【0075】
ある1つの成形型151について、先の冷菓材23から抜き出した後に空気中に曝した場合、約1.5秒〜1.8秒で成形型151の表面に液体酸素が付着した。これを踏まえて、以下の条件で硬化部35を形成し、良好な硬化が可能であるとともに所定の生産能力が得られることを実証した。
【0076】
冷菓材23は、一例として、アイスクリームミックに破砕された氷を混合したものであり、アイスクリームミックスの原料としては、例えば、糖類、乳製品、コーヒー、香料である。また、粉砕した氷を混ぜる前のミックスの固形は例えば、40%である。
【0077】
搬送手段11は1秒間で容器21を搬送方向Tに1列分移動させ、2秒間停止する間欠動作を行う。1個の成形型151の1回の昇降動作(1ショット)は3秒で行う。これにより、例えば、1分間に80個〜240個程度の冷菓材23について硬化部35が形成できる。
【0078】
この場合、或る1つの成形型151に着目すると、凹部成形装置15は、成形型151を冷菓材23に投入後、約1.33秒間維持して先の冷菓材23(第一の冷菓材)に硬化部35を形成する。そして、成形型151を冷菓材23から抜き出した後に後の冷菓材23(第2の冷菓材)に投入するまでの期間は、約1.67秒となる。
【0079】
つまり1つの冷菓材23に着目すると、第1成形型151Aが投入されてこれにより1.33秒間硬化され(第1成形型151Aが抜き出され)、1.67秒後に第2成形型151Bが投入されて更に1.33秒間硬化される。
【0080】
その後、形成された凹部状の硬化部35に、液体窒素注入装置19によって、約9mlの液体窒素を注入した。
【0081】
この結果、成形型151に冷菓材23が付着することもなく、形成された硬化部35は、下流の工程(急速冷凍庫)に移送するまでに崩れない程度に十分硬化されるとともに、硬化部35の表面に不要な冷菓材23の付着も見られず、良好な状態であった。
【0082】
以上、本実施形態の一例について説明したが、本発明の凹部成形装置15は、少なくとも1つの成形型151によって連続して搬送される先の冷菓材23と別の後の冷菓材23を冷却効果する場合、先の冷菓材23から抜き出した成形型151が液体酸素の沸点よりも低い温度に下がるまで空中で維持(待機)し、その後に後の冷菓材23を冷却する構成であれば上記の例に限らない。
【0083】
また、成形型151の温度上昇を防ぐためには上述のとおり、1つの冷菓材23の硬化部35に対して成形型151が複数(この例では2回)且つ、異なる成形型151A、151Bの挿抜で形成される構成が好適であるが、上記の例に限らない。すなわち、1つの冷菓材23の硬化部35に対して1つの成形型151を複数(この例では2回)挿抜して成形するようにしてもよい。
【0084】
例えば、1個の冷菓50について凹部30を成形するための総時間をT時間とした場合、成形型151による1回の硬化部35の成形時間は1/2T時間とし、2回挿抜させる。このようにすることで、1回の成形型151の挿抜で硬化部35の成形時間をT時間とした場合と比較して、成形型151の表面温度の上昇を低く抑えることができ、空中での待機時間を短くできるので、効率の良い成形ができる。
【0085】
また、好適には、1つの冷菓材23に対して複数回、成形型151を挿抜するとよいが、1回でもよい。
【0086】
成形型ユニット151Uは、上記の例では搬送幅方向W(例えば、行方向)および搬送方向T(例えば、列方向)それぞれに複数行、複数列の成形型151が並ぶ場合を示したが、例えば、成形型151が1行×複数列に並ぶものであってもよいし、複数行×1列に並ぶものであってもよい。
【0087】
搬送方向Tに沿う複数個(M個)の成形型151を設ける場合は、それぞれをN個(N=M−1>0)おきに冷菓材23内に挿抜することになり、その挿抜の待機期間中に液体酸素の沸点よりも低い温度に下がるように制御する。
【0088】
また、冷菓材23の状態(硬化のし易さ、ミックス状態での粘性、冷菓材23にした場合の硬度など)に応じて、成形型ユニット151Uに単一の成形型(1行×1列)が設けられて冷菓材23を順次成形するものとし、先の冷菓材23から後の冷菓材23までの間において空中で待機する時間を、液体酸素の沸点よりも低い温度に下がるまでとしてもよい。
【0089】
また、成形手段15は、複数の成形型151を個別に昇降移動可能に構成されていてもよい。この場合例えば、先行する成形型151Aが下降している際に後行の成形型151Bが上昇し、先行する成形型151Aが上昇している際に後行の成形型151Bが下降するように制御してもよい。
【0090】
また、上記の実施形態では、搬送手段が間欠的に搬送する例を示したが、連続して搬送するようにしてもよい。この場合、凹部成形装置15と液体窒素注入装置19を搬送手段11と同期して搬送方向Tに沿って移動可能にする。しかし、この場合は装置や制御が複雑になるので、上記のように間欠動作させるとコストも抑えられて望ましい。
【0091】
また、冷菓材23の組成(原料の割合)、オーバーラン等の値も上記の例に限らず、冷菓(氷菓)50の状態に応じて適宜選択される。また、冷菓材23はかき氷アイスのミックスに限らず、アイスクリーム類、シャーベットやその他冷凍(凍結)状態で提供されるデザート類等のミックスであってもよい。
【0092】
また、上述の冷菓材成形装置10の動作条件も一例であり、冷菓材23の組成や状態、製造する冷菓50の状態に応じて、硬化部35が成形されるよう、適宜選択される。
【0093】
以上、本発明は上記実施形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。