(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6592073
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】機器の制御装置
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20191007BHJP
B23Q 11/14 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
H05K7/20 J
H05K7/20 G
B23Q11/14
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-251829(P2017-251829)
(22)【出願日】2017年12月27日
(65)【公開番号】特開2019-117885(P2019-117885A)
(43)【公開日】2019年7月18日
【審査請求日】2019年5月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】藤本 泰生
【審査官】
五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平9−138044(JP,A)
【文献】
特開平4−7898(JP,A)
【文献】
国際公開第2004/089052(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
B23Q 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器の制御装置であって、
筐体と、
前記筐体に格納される湿度取得部と、
前記筐体に取り付けられて前記筐体内を送風するファンと、
前記筐体に形成された第1の開口に対して開閉自在に設けられた第1の窓と、
前記第1の開口の周辺に配置され、水を含む液体が収容された開口部を有するタンクと、
一部が前記筐体内に延び、前記タンクに接続されて前記液体を通す配管と、
前記筐体内の湿度を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記湿度取得部において取得される湿度が所定値よりも低いとき、前記第1の窓を開放し、前記タンクから生じる湿気を前記筐体内に取り込むように前記ファンを作動させ、
前記湿度取得部において取得される湿度が所定値よりも高いとき、前記第1の窓を閉鎖し、前記筐体内の雰囲気を前記配管の一部に向けて送るように前記ファンを作動させる、機器の制御装置。
【請求項2】
前記筐体に格納される温度取得部と、
前記筐体に形成された第2の開口に対して開閉自在に設けられた第2の窓と、をさらに備え、
前記制御部は、前記温度取得部において取得される温度が所定値よりも高いとき、前記第2の窓を開放し、前記筐体内の雰囲気を排出するように前記ファンを作動させる、請求項1に記載の機器の制御装置。
【請求項3】
前記筐体を複数備え、
前記制御部は、複数の前記筐体内の湿度を制御可能である、請求項1または2に記載の機器の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器の制御装置に関し、より詳しくは、制御盤内部の湿度を制御する機器の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器が搭載される工作機械の制御盤の内部では、湿度の変化が生じやすいことが知られている。湿度が高いと結露が生じ、湿度が低過ぎると静電気が発生するので、電子機器が正常に動作するために、制御盤の内部は常に適切な湿度に保たれることが望ましい。
【0003】
湿度を制御する方法として、ペルチェ素子を用いた湿度制御方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法は、ペルチェ素子によって雰囲気が冷却されるとき、同時に除湿効果が得られることを利用している。すなわち、湿度が所定値を超えるとき、クーラ運転によって装置内の除湿が行われる。また、同様の原理を用いた工作機械特有の除湿方法として、
図6に示されるように、制御盤クーラが設けられる構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−141089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の構成では、ペルチェ素子が別途必要である。一方、
図6に示される制御盤クーラは高価である。さらに、これらのいずれの構成によっても、制御盤の内部を加湿することはできない。
【0006】
本発明は、安価な装置によって、常に適切な湿度を保つことが可能な制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)機器の制御装置(例えば、後述の制御装置10)であって、筐体(例えば、後述の制御盤12)と、前記筐体に格納される湿度取得部(例えば、後述の湿度センサ20)と、前記筐体に取り付けられて前記筐体内を送風するファン(例えば、後述のファン18)と、前記筐体に形成された第1の開口(例えば、後述の第1の開口O)に対して開閉自在に設けられた第1の窓(例えば、後述の第1の窓16)と、前記第1の開口の周辺に配置され、水を含む液体(例えば、後述の切削液)が収容された開口部を有するタンク(例えば、後述のクーラントタンク14)と、一部が前記筐体内に延び、前記タンクに接続されて液体を通す配管(例えば、後述の配管24)と、前記筐体内の湿度を制御する制御部(例えば、後述の制御部22)とを備え、前記制御部は、前記湿度取得部において取得される湿度が所定値よりも低いとき、前記第1の窓を開放し、前記タンクから生じる湿気を前記筐体内に取り込むようにファンを作動させ、前記湿度取得部において取得される湿度が所定値よりも高いとき、前記第1の窓を閉鎖し、前記筐体内の雰囲気を前記配管の一部に向けて送るように前記ファンを作動させることを特徴とする。
【0008】
(2) (1)の機器の制御装置において、前記筐体に格納される温度取得部(例えば、後述の温度センサ32)と、前記筐体に形成された第2の開口(例えば、後述の第2の開口P)に対して開閉自在に設けられた第2の窓(例えば、後述の第2の窓30)とをさらに備え、前記制御部は、前記温度取得部において取得される温度が所定値よりも高いとき、前記第2の窓を開放し、前記筐体内の雰囲気を排出するように前記ファンを作動させてもよい。
【0009】
(1)または(2)のいずれかに記載の機器の制御装置において、前記筐体を複数備え、前記制御部は、複数の前記筐体内の湿度を制御可能であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、安価な装置によって、常に適切な湿度を保つことが可能な制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る制御装置の加湿モードを示す図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る制御装置の除湿モードを示す図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る制御装置の除湿モードを示す図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係る制御装置の冷却モードを示す図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る制御装置の加湿モードを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係る制御装置について説明する図である。
制御装置10は、図示しない工作機械等の機器を制御する制御装置である。制御装置10は、制御盤(筐体)12とクーラントタンク(タンク)14を備える。制御盤12の一部には第1の開口Oが形成される。第1の開口Oは、クーラントタンク14の周辺に位置する。第1の開口Oには、第1の窓16が開閉自在に取り付けられ、第1の窓16は第1の開口Oを閉塞しうる。第1の開口Oの近傍にはファン18が取り付けられる。制御部22は、湿度センサ(湿度取得部)20によって検知される湿度に基づいて、第1の窓16とファン18とを制御する。
【0013】
クーラントタンク14には配管24が接続され、配管24にはタンク14内に収容された切削液が流通する。配管24に設けられたポンプ26は、切削液の流量を調節する。配管24は、その一部である除湿部28が制御盤12の内部を通って延びる。除湿部28はファン18に対向する位置に設けられる。
【0014】
第1の実施形態に係る制御装置10の動作を説明する。第1の実施形態では、加湿モードと除湿モードとが備えられている。
図1は、加湿モードの動作を説明する図である。加湿モードは、湿度センサ20が検知する制御盤12の内部の湿度が所定値よりも低いときに実行される。
【0015】
タンク14は、例えば金網によって蓋がされているため、切削液の水面は外気に触れて、自然蒸発による湿気が生じている。湿度センサ20が検知する湿度が所定値を下回ったとき、制御部22は第1の窓16を開放する。また、制御部22は、矢印で示される方向に風が生じるようにファン18を正回転させる。このとき、第1の開口Oの周辺に設けられたタンク14から生じる湿気が、制御盤12の内部に取り込まれる。これにより、制御盤12の内部の湿度は上昇する。
【0016】
図1の構成において、タンク14の蓋は必ずしも金網である必要はなく、切削液の湿気が放出される形状であればよい。例えば、タンク14の蓋の一部に開口が形成されるか、あるいは切削液が漏れない状態を維持できる場合、蓋ではなく側面の一部に開口が形成されてもよく、湿気が放出される構造であればいかなる構成でもよい。第1の開口Oは、クーラントタンク14の周辺に位置するが、周辺とは、クーラントタンクからの湿気が取り込める位置を意味する。
【0017】
図2は、除湿モードの動作を説明する図である。除湿モードは、湿度センサ20が検知する制御盤12の内部の湿度が所定値よりも高いときに実行される。
【0018】
湿度センサ20が検知する湿度が所定値よりも高いとき、制御部22は、第1の窓16を閉鎖して第1の開口Oを閉塞する。また、制御部22は矢印で示される方向に風が生じるようにファン18を逆回転させる。このとき、制御盤12の内部の雰囲気は、配管24の一部である除湿部28に吹き付けられる。除湿部28において、吹き付けられた雰囲気に含まれる水蒸気は結露し、凝縮して水滴となる。水滴は制御盤12に設けられた排出口(図示せず)から排出される。これにより、制御盤12の内部の湿度は低下する。
【0019】
図2に示される除湿部28は、制御盤12の外周の長さに対して相対的に短いが、より長くてもよい。除湿部28が長いほど除湿効果が高まる。
【0020】
このように、第1の実施形態における制御装置によれば、安価かつ簡易な構成によって加湿と除湿の両方の制御が可能となる。すなわち、
図6に示される従来の構成と比較すると、除湿に用いられる高価な制御盤クーラ60は必要ない。また、従来の制御盤12に対して、簡易な技術を用いた変更、すなわち、第1の開口Oの形成、ファン18の設置、および除湿部28の配置を施すだけで、本発明が実施できる。これにより、制御盤12の内部は常に適切な湿度に保たれるという効果が得られる。
【0021】
なお、第1の実施形態の構成において、第1の開口Oの近傍にはファン18が取り付けられるが、ファン18はタンク14からの湿気を取り込める位置にあればよい。あるいは、第1の開口Oの近傍にファン18が配置できない場合、ダクト(図示せず)を配置することによって、第1の開口Oへの通気が促されてもよい。つまり、第1の開口Oに対する通気の構造に応じて、ファン18は複数配置されてもよく、必ずしも、上記のように1つのファン18が正回転/逆回転を行う必要はない。
【0022】
図3〜5は、本発明の第2の実施形態に係る制御装置を説明する図である。第1の実施形態との違いは、冷却モードがさらに備えられることである。冷却モードの追加に伴い、第2の窓30と温度センサ(温度取得部)32とがさらに設けられる。なお、第1の実施形態と共通の部材には同一の符号が付されている。
【0023】
図3は、第2の実施形態に係る除湿モードの動作を説明する図である。除湿モードは、湿度センサ20が検知する湿度が所定値よりも高いときに実行される。
【0024】
制御盤12には第2の開口Pが形成される。第2の開口Pは、クーラントタンク14からの湿気が入り難い位置で、かつファン18からの風が届く位置にあることが望ましい。第2の開口Pには開閉自在な第2の窓30が取り付けられ、第2の窓30は第2の開口Pを閉塞しうる。
【0025】
制御部22は、湿度センサ20が検知する湿度が所定の値よりも高いとき、第1の窓16を閉めて第1の開口Oを閉塞し、また第2の窓30を閉めて第2の開口Pを閉塞する。制御部22は、矢印で示される方向に風が生じるようにファン18を逆回転させる。上述のように、除湿部28に吹き付けられた雰囲気に含まれる水蒸気は結露し、凝縮して水滴となったのち排出口(図示せず)から排出される。これにより、制御盤12の内部の湿度は低下する。
【0026】
図4は、第2の実施形態に係る冷却モードの動作を説明する図である。冷却モードは、除湿モードのときに限り実行される。これは、冷却モードでは湿度が低下することを前提としているからである。すなわち、冷却と除湿とは湿度制御の観点から相乗効果が得られるため、これらは同時に行われてもよい。
【0027】
したがって、湿度センサ20において検知された湿度が所定の値より高いときであって、かつ温度センサ32で取得された温度が所定の値より高いとき、冷却モードに移行する。冷却モードに移行すると、制御部22は第2の窓30を開放する。制御部22は、ファン18を正回転させることによって、制御盤12の内部の高温の雰囲気を第2の開口Pから排出する。これにより、制御盤12の内部の温度は低下する。
【0028】
上述の通り、本実施形態では、除湿モードのときに限り温度に応じて、冷却モードが実行される。しかし、例えば、加湿モードの間に、機器が誤動作を起こす程の異常な高温が検知された場合には、冷却モードが実行されてもよい。これにより、制御盤12に格納された機器が、高温による誤動作を起こすのを防止できる。
【0029】
図5は、第2の実施形態に係る加湿モードの動作を説明する図である。加湿モードは、湿度センサ20が検知する制御盤12の内部の湿度が所定値よりも低いときに実行される。制御部22は、第1の窓16を開放し、第2の窓30を閉鎖する。また、制御部22は、矢印で示される方向に風が生じるようにファン18を正回転させる。タンク14から生じる湿気は、第1の開口Oを通って制御盤12の内部に取り込まれる。これにより、制御盤12の内部の湿度は上昇する。
【0030】
このように、第2の実施形態の構成によれば、第1の実施形態の効果に加えて、制御盤12の内部の温度を適切に保つことで、制御盤12に格納された機器の温度異常による誤動作を防止する効果が得られる。
【0031】
上記第1および第2の実施形態において、図示しない内部窓が設けられてもよい。内部窓は、ファン18から第1の開口Oまでの空間を仕切るように、制御盤12の内部に設けられる。すなわち、第1の窓16と内部窓とが閉鎖されるとき、ファン18が取り付けられた壁、内部窓、制御盤12の壁、および第1の窓16によって、ひとつの閉空間が形成される。内部窓は、除湿モードにおいて開放され、加湿モードにおいて閉鎖される。内部窓が設けられることによって、特に加湿モードにおける加湿の効果が高められる。
【0032】
上記第1および第2の実施形態は、工作機械の制御盤に限らず、例えばロボット等の精密機器の制御装置にも適用されうる。なお、第1および第2の実施形態における制御部22は、制御盤12毎に設けられなくてもよい。ひとつの空間に配置された複数の制御盤12の湿度はほぼ同一であるため、制御部22は、複数の制御盤12の内部の湿度を並行して制御することができる。また、湿度センサ20および温度センサ32は、露点計で代用されてもよい。
【符号の説明】
【0033】
10 機器の制御装置
12 制御盤(筐体)
14 クーラントタンク(タンク)
16 第1の窓
18 ファン
20 湿度センサ(湿度取得部)
22 制御部
24 配管
30 第2の窓
32 温度センサ(温度取得部)
O 開口