特許第6592077号(P6592077)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6592077
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】紫外線処理装置及びそのための遮光部品
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/12 20060101AFI20191007BHJP
   C02F 1/32 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
   B01J19/12 C
   C02F1/32
【請求項の数】16
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-505383(P2017-505383)
(86)(22)【出願日】2016年3月9日
(86)【国際出願番号】JP2016057447
(87)【国際公開番号】WO2016143829
(87)【国際公開日】20160915
【審査請求日】2018年10月26日
(31)【優先権主張番号】特願2015-48628(P2015-48628)
(32)【優先日】2015年3月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391031155
【氏名又は名称】株式会社日本フォトサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100077539
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 義仁
(72)【発明者】
【氏名】秋山 昇
(72)【発明者】
【氏名】山越 裕司
【審査官】 宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 実開平3−98940(JP,U)
【文献】 実開平1−92296(JP,U)
【文献】 特開2002−282851(JP,A)
【文献】 特開平10−48760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/12
C02F 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線ランプと、
前記紫外線ランプを内挿するランプ保護管と、
前記ランプ保護管の少なくとも一端が外部に露出するように該ランプ保護管を保持して収納し、かつ、処理対象物を収納する容器と、
前記容器における前記ランプ保護管を保持する部位において、該ランプ保護管の外周に密接して前記容器を密封する封止部材と
を具える紫外線処理装置において、
紫外線遮蔽素材からなる弾性の遮光板であって、少なくとも前記ランプ保護管の内面の円周長に応じた長さを持つ主遮光部と、該主遮光部の前記長さ方向の両端において非平行的な収束形状を成して延びた第1及び第2のオーバーラップ部とからなる前記遮光板を具備し、
前記遮光板を前記長さ方向に巻いた状態で前記ランプ保護管の内周に密接するように該ランプ保護管内に配置し、かつ、前記封止部材に対向するように位置させることを特徴とする紫外線処理装置。
【請求項2】
前記主遮光部は略平行な2辺を有し、前記各オーバーラップ部は、前記主遮光部の2辺間の幅を越えない横幅を持つ少なくとも1つの非平行的な収束形状からなる、請求項1に記載の紫外線処理装置。
【請求項3】
前記各オーバーラップ部は、前記主遮光部に接する部位を底辺とする略二等辺三角形状を成す、請求項1又は2に記載の紫外線処理装置。
【請求項4】
前記遮光板における各角を丸くした、請求項1乃至3のいずれかに記載の紫外線処理装置。
【請求項5】
前記遮光板の板厚が0.005mm乃至1mmの範囲である、請求項1乃至4のいずれかに記載の紫外線処理装置。
【請求項6】
前記遮光板の材質は、ステンレス系、銅系、ニッケル系、鉄、アルミニウム、アルミ合金、金、銀、モリブデン、チタン、アモルファス、コバール、ケイ素のいずれかからなる、請求項1乃至5のいずれかに記載の紫外線処理装置。
【請求項7】
前記遮光板の材質がステンレス系、銅系、ニッケル系、鉄、アルミニウム、アルミ合金、銀、モリブデン、チタン、アモルファス、コバール、ケイ素のいずれかからなり、かつ、表面に金メッキを施してなる、請求項1乃至5のいずれかに記載の紫外線処理装置。
【請求項8】
前記封止部材はOリングである、請求項1乃至7のいずれかに記載の紫外線処理装置。
【請求項9】
前記処理対象物は液体である、請求項1乃至8のいずれかに記載の紫外線処理装置。
【請求項10】
紫外線ランプと、前記紫外線ランプを内挿するランプ保護管と、前記ランプ保護管の少なくとも一端が外部に露出するように該ランプ保護管を保持して収納し、かつ、処理対象物を収納する容器と、前記容器における前記ランプ保護管を保持する部位において、該ランプ保護管の外周に密接して前記容器を密封する封止部材とを具える紫外線処理装置において使用される遮光部品であって、
紫外線遮蔽素材からなる弾性の遮光板であって、少なくとも前記ランプ保護管の内面の円周長に応じた長さを持つ主遮光部と、該主遮光部の前記長さ方向の両端において非平行的な収束形状を成して延びた第1及び第2のオーバーラップ部とからなる前記遮光板で構成されており、
使用時において、前記遮光板を前記長さ方向に巻いた状態で前記ランプ保護管の内周に密接するように該ランプ保護管内に配置し、かつ、前記封止部材に対向するように位置させることを特徴とする遮光部品。
【請求項11】
前記主遮光部は略平行な2辺を有し、前記各オーバーラップ部は、前記主遮光部の2辺間の幅を越えない横幅を持つ少なくとも1つの非平行的な収束形状からなる、請求項10に記載のに記載の遮光部品。
【請求項12】
前記各オーバーラップ部は、前記主遮光部に接する部位を底辺とする略二等辺三角形状を成す、請求項10又は11に記載の遮光部品。
【請求項13】
前記遮光板における各角を丸くした、請求項10乃至12のいずれかに記載の遮光部品。
【請求項14】
前記遮光板の板厚が0.005mm乃至1mmの範囲である、請求項10乃至13のいずれかに記載の遮光部品。
【請求項15】
前記遮光板の材質は、ステンレス系、銅系、ニッケル系、鉄、アルミニウム、アルミ合金、金、銀、モリブデン、チタン、アモルファス、コバール、ケイ素のいずれかからなる、請求項10乃至14のいずれかに記載の遮光部品。
【請求項16】
前記遮光板の材質がステンレス系、銅系、ニッケル系、鉄、アルミニウム、アルミ合金、銀、モリブデン、チタン、アモルファス、コバール、ケイ素のいずれかからなり、かつ、表面に金メッキを施してなる、請求項10乃至14のいずれかに記載の遮光部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線処理装置に関し、特に、容器を密封するためのOリング等の封止部材が紫外線によって劣化することを防止するための遮光手段を改良したことに関し、かつ、そのための遮光部品に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体やFPD(フラットパネルディスプレー)の工場では、製品の製造工程で超純水を用いている。その超純水の水質項目に生菌数とTOC(全有機体炭素)濃度がある。微生物を不活化するための設備として紫外線殺菌装置が使用されており、TOC濃度を低減するための設備の一つとして圧UV酸化装置が使用されている。これらの装置は円筒形の反応容器内に254nm光あるいは185nm光の紫外線を発する低圧水銀ランプが1本もしくは複数本充填されている。このランプは容器内の被処理水に直接触れることがないように石英製のランプ保護管内に1本ずつ挿填されている。被処理水はこのランプ保護管の外側と反応容器の内側との間を紫外線に曝露されながら圧送されている。処理水中の微生物は、254nm光の紫外線に曝露されて不活化される。この不活化は一般的に殺菌とも表現されている。また185nm光の紫外線に曝露された処理水からOHラジカルが生成されて、OHラジカルが酸化剤となってTOCを酸化分解している。同時に、低圧水銀ランプからの185nm光と254nm光により、有機物を直接分解している。同様の反応は波長300nm以下を発する光源(紫外線ランプ)であれば低圧水銀ランプに限らず、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、エキシマランプなどでも起こる。ランプ保護管の素材としては、石英、サファイア、フッ素樹脂などが用いられている。
【0003】
ランプ保護管の少なくとも一端は、容器の壁面にて支持されて該容器の外部に露出し、該外部に露出した一端からランプ保護管内部のランプが抜き差しできるようになっている。そして、該容器における該ランプ保護管を保持する部位において、該ランプ保護管の外周に密接して該容器内を密封するために弾力性に富んだ封止部材が設けられる。典型的には、封止部材はゴム製のOリングからなる。しかし、紫外線は、被処理水だけでなく、この封止部材(Oリング)にも少なからず照射しており、その蓄積がOリングの紫外線劣化を招き、漏水という不具合の発生原因となることがある。特に、低圧水銀ランプの出力が上がり、ランプとランプ保護管に使用する石英について254nm光あるいは185nm光の透過率が高いものを使用することにより、より短時間でOリングが紫外線劣化する傾向にある。
【0004】
ところで、光源と一体になった装置もしくは光源に対して、その一部に遮光を施すことにより、周辺部品の劣化を防ぐ従来技術として、下記特許文献に示されるようなものが知られている。特許文献1及び2は、紫外線を放射するアークチューブの電源接続端部の側から漏洩した紫外線が合成樹脂製絶縁プラグを劣化させることがないようにするために、リング状のUV遮光部材を設けることを開示している。特許文献3は、並列的に配置された複数の紫外線ランプから紫外線を空間中に放射して処理対象物に照射する構成からなる紫外線処理装置において、隣接するランプから放射される紫外線の影響を減少させるために、各ランプの隣接側面にUV遮光膜を設けることを開示している。
【0005】
特許文献4は、エキシマレーザ用ウィンドウにおいて、レーザ媒質ガスを封止するためのOリングがレーザ光により劣化することを防止するために、該ウィンドウとOリングとの密接面に紫外線を透過しない膜を蒸着し、その膜の上に酸化保護膜を被着させることを開示している。特許文献5は、固体レーザ発振器において、フィルタ筒の端部を液密に封止するOリングが励起光により劣化することがないように、励起ランプの端部から漏洩する光を遮るための遮光リングを設けることを開示している。特許文献6は、プラズマ処理室の気密性を保持するためのOリングが劣化することを防止するために、金属の薄い帯状鋼板をスパイラル状に巻いたもの、あるいは導線をソレノイドコイル状に巻いたもの若しくは筒状に編み上げたものからなるプラズマ遮断手段を、Oリングが嵌め込まれた環状溝よりも処理室側に形成した別の環状溝内に嵌め込むことを開示している。
【0006】
しかし、いずれの特許文献に記載されたものも、前述したようなランプ保護管の外周に密接してOリングを配置した構成に適するものではない。そのような構成においては、UV遮光手段をランプ保護管内に配置する必要がある。上記特許文献の知見により、円筒リング状のUV遮光手段をランプ保護管内に配置することが考えられるが、円筒状の遮光リングを用いる場合はランプ保護管の内径より幾分小さな外径の遮光リングを使用することにより、ランプ保護管内への挿入を容易にする構成が採用されるのが一般的である。しかし、そうすると、該遮光リングは、ランプ保護管内で幾分ルーズな状態となり、ランプ保護管内に収納された紫外線ランプを交換する時に、該ランプの口金に遮光リングが引っ掛かることで、遮光リングが移動し易くなり、面倒な位置修正が必要となるという問題が生じ、また、ランプの出し入れの妨げともなる。よって、固定径からなる円筒リング状のUV遮光手段をランプ保護管内に配置することは好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-270010号
【特許文献2】特開2003-123630号
【特許文献3】特開2014-159029号
【特許文献4】実開平6-29160号
【特許文献5】特開平11-274612号
【特許文献6】特開2005-63986号
【0008】
これに対して、弾力性のある金属製板材を巻き回してランプ保護管内に配置することにより、リング状のUV遮光手段を構成することが考えられる。これにより、板材そのものの弾力性によって、該巻き回されたリング状の板材がランプ保護管の内周に密着しやすくなり、ランプ保護管内でルーズに移動する恐れがなくなる筈である。しかし、発明者らの分析によると、図5(a)に示すような長方形のUV遮光板材1を使用した場合、該遮光板材1を長さ方向に巻いた状態でランプ保護管2の内周に密接するように該ランプ保護管2内に配置したとき、同図(b)に断面図で示すように、巻きの外側になった一端部1aはランプ保護管2の内周に密接するが、巻きの内側になった他端部1bの近傍が少し浮き上がる、という現象が起こることが分かった。そうすると、前記固定径からなる円筒リング状のUV遮光手段の場合と同様に、ランプ保護管内に収納された紫外線ランプを交換する時に、該ランプの口金に前記他端部1bの近傍の浮き上がり部分1cが引っ掛かることで、遮光リングが移動し易くなり、面倒な位置修正が必要となるという問題が生じ、また、ランプの出し入れの妨げともなる。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたもので、ランプ保護管の外周に密接して封止部材を配置した構成からなる紫外線処理装置において、ランプ保護管内に収納された紫外線ランプの出し入れの妨げにならないような構成からなる、該封止部材の紫外線劣化を防ぐための遮光手段(遮光部品)を提供することを目的とする。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る紫外線処理装置は、紫外線ランプと、前記紫外線ランプを内挿するランプ保護管と、前記ランプ保護管の少なくとも一端が外部に露出するように該ランプ保護管を保持して収納し、かつ、処理対象物を収納する容器と、前記容器における前記ランプ保護管を保持する部位において、該ランプ保護管の外周に密接して前記容器を密封する封止部材とを具える紫外線処理装置において、紫外線遮蔽素材からなる弾性の遮光板であって、少なくとも前記ランプ保護管の内面の円周長に応じた長さを持つ主遮光部と、該主遮光部の前記長さ方向の両端において非平行的な収束形状を成して延びた第1及び第2のオーバーラップ部とからなる前記遮光板を具備し、前記遮光板を前記長さ方向に巻いた状態で前記ランプ保護管の内周に密接するように該ランプ保護管内に配置し、かつ、前記封止部材に対向するように位置させることを特徴とする。
【0011】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る遮光部品は、紫外線ランプと、前記紫外線ランプを内挿するランプ保護管と、前記ランプ保護管の少なくとも一端が外部に露出するように該ランプ保護管を保持して収納し、かつ、処理対象物を収納する容器と、前記容器における前記ランプ保護管を保持する部位において、該ランプ保護管の外周に密接して前記容器を密封する封止部材とを具える紫外線処理装置において使用される遮光部品であって、紫外線遮蔽素材からなる弾性の遮光板であって、少なくとも前記ランプ保護管の内面の円周長に応じた長さを持つ主遮光部と、該主遮光部の前記長さ方向の両端において非平行的な収束形状を成して延びた第1及び第2のオーバーラップ部とからなる前記遮光板で構成されており、使用時において、前記遮光板を前記長さ方向に巻いた状態で前記ランプ保護管の内周に密接するように該ランプ保護管内に配置し、かつ、前記封止部材に対向するように位置させることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、遮光部品は前記主遮光部と前記第1及び第2のオーバーラップ部とからなる弾性の遮光板によって構成され、該遮光板を巻き回してランプ保護管内に配置した状態において、該第1及び第2のオーバーラップ部が該主遮光部にオーバーラップした状態で巻き回されることになる。このように、弾性の遮光板を巻き回してランプ保護管内に配置することにより、遮光板そのものの弾性によって、該巻き回されてリング状となった遮光板がランプ保護管の内周に密着しやすくなり、ランプ保護管内でルーズに移動する恐れがない。また、該遮光板が、前記主遮光部と、その両端から延びた前記第1及び第2のオーバーラップ部とによって構成されており、該主遮光部は、少なくとも前記ランプ保護管の内面の円周長に応じた長さを持つので、巻き回されてリング状を成したとき、該主遮光部によって封止部材に対向するランプ保護管の内周を適切にカバーすることができ、該封止部材に対する遮光性能が確保される。また、前記第1及び第2のオーバーラップ部は、前記主遮光部の前記長さ方向の両端において非平行的な収束形状を成して延びているので、該非平行的な収束形状により、該遮光板の端部での曲げに対する反発力を分散させることができ、もって、図5(b)に示したような浮き上がり1cを抑制することができる。すなわち、図5(a)のような単純な長方形の遮光板材1では、端部1bが矢印L方向に一直線を成しているため、矢印Lの位置での直角方向Bへの曲げ力に対して、一直線状の端部1b全体の反発力が作用するため、曲げに対する反発力が最大となり、そのために、その近傍で浮き上がり1cが生じると思われる。これに対して、本発明では、遮光板の両端部を成す第1及び第2のオーバーラップ部が非平行的な収束形状を成しているので、該遮光板の端部での曲げに対する反発力を分散させることができ、端部近傍での浮き上がりを抑制することができる。従って、本発明によれば、ランプ保護管内に収納された紫外線ランプの出し入れの妨げにならないような構成からなる遮光手段を提供することができ、また、ランプ保護管内に収納された紫外線ランプを交換する時に、該ランプの口金等に該遮光手段が引っ掛かってその配置がずれるという問題も起こらない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施例に係る紫外線処理装置の外観を略示する斜視図。
図2図1における1つの紫外線ランプユニットの一端部分を拡大して示す縦断面略図。
図3】(a)は、巻き回す前の、平板状に展開された、遮光板の一例を示す平面図、(b)は、遮光板を長さ方向に巻き回してランプ保護管の内周に密接するように該ランプ保護管内に配置した状態を示す横断面図。
図4】遮光板のいくつかの変形例を示す平面図。
図5】長方形の遮光板材の問題点を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、一実施例に係る紫外線処理装置10の外観を略示する斜視図であり、一例として液体を紫外線処理するものであり、例えば本明細書の冒頭で述べたような超純水処理を行うものである。容器11は、処理対象物としての液体を取り入れる取入口11aと、処理済の液体を排出する排出口11bとを有する。容器11には、複数の紫外線ランプユニット20が設置される。各紫外線ランプユニット20は同一構成のものであってよいため、以下、1つの紫外線ランプユニット20についてのみ詳細を説明する。
【0015】
図2は、1つの紫外線ランプユニット20の一端部分を拡大して示す縦断面略図である。紫外線ランプユニット20は、紫外線透過性の透明なランプ保護管21と、該ランプ保護管21に内挿される紫外線ランプ22とを含む。反応容器11の端部壁面11cの所定箇所に、該ランプ保護管21の容器11内部への挿入を許す孔が穿たれており、該ランプ保護管21は、該孔から容器11の内部に挿入され、該容器11の端部壁面11cにおいて、一端が外部に露出するようにして、支持される。容器11におけるランプ保護管21を保持する部位において、該ランプ保護管21の外周に密接してゴム製のOリング23(容器11を密封するための封止部材)が設けられる。容器11の端部壁面11cの前記孔には、外側寄りの所定箇所に雌ネジが設けられており、ランプ保護管21の端部を固定するためのキャップ24に設けられた雄ネジと螺合する。ランプ保護管21の端部寄りの適宜位置の外周にOリング23を嵌着した状態で、ランプ保護管21の端部にてキャップ24を締める方向にネジ回すことにより、キャップ24に設けられた雄ネジが容器11の端部壁面11cの前記孔に設けられた前記雌ネジに螺合し、図で左方向にキャップ24が進む。紫外線ランプ22は、波長300nm以下の紫外線(例えば185nm光と254nm光)を放射し得るものである。
【0016】
容器11の端部壁面11cの前記孔の内側寄りは、ランプ保護管21の外周に密接しうるサイズの小径部11dとなっていて、ランプ保護管21の外周を支持するための部位として機能すると共に、Oリング23をその位置で止めるためのストッパーとしても機能する。締める方向にネジ回すことによって図で左方向に進行するキャップ24の先端がOリング23を押し、該Oリング23が小径部11dの箇所で圧接して止められることにより、容器11の内部が液密に密封される。この密封状態において、ランプ保護管21の一端がキャップ24の内向きフランジ24aに当接するか、適宜の(例えば数mm程度の)隙間が設定されてもよい。ランプ保護管21の一端は開放端となっており、キャップ24の内向きフランジ24aの内側も開口24bとなっている。この開口24bを通して、ランプ保護管21の内部が容器11の外部に通じており、ランプ保護管21外への又は内へのランプ22の出し入れが可能となっている。更に、キャップ24の周囲にカバー25が設置され、ランプ22のコネクタ等が収納されるが、公知の構成であるため、詳細は省略する。
【0017】
本発明に係る遮光部品の一実施例である遮光板30は、1枚の紫外線遮蔽素材からなる弾性板材を巻き回して、ランプ保護管21内に配置したものであり、Oリング23に対向するように配置することにより、保護管21に内挿された光源ランプ22から該Oリング23に向かう紫外線を遮蔽する。図3(a)は、巻き回す前の、平板状に展開された、遮光板30の一例を示す平面図である。この遮光板30は、2つの機能的部位からなっており、その1つは、少なくともランプ保護管21の内面の円周長Cに略対応する長さを持つ主遮光部31であり、もう1つは、該主遮光部31の前記長さ方向の両端において非平行的な収束形状を成して延びた第1及び第2のオーバーラップ部32a,32bである。図示例では、主遮光部31は平行な2辺を有する長方形であり、その両端から延びた各オーバーラップ部32a,32bは、それぞれ、該主遮光部31の2辺間の幅を越えない横幅を持つ1つの非平行的な収束形状(すなわち三角形)を成している。勿論、主遮光部31と第1及び第2のオーバーラップ部32a,32bは、同一素材からなる一体物である。図3(a)においては、各オーバーラップ部32a,32bは、主遮光部31に接する部位を底辺とする略二等辺三角形からなっている。一例として、遮光板30は、ステンレスからなり、板厚は0.1mm程度である。
【0018】
なお、主遮光部31の幅Wは、ランプ保護管21からOリング23に向かう紫外線を遮蔽するのに十分な長さとするものとし、例えば、5cm前後であれば十分である。この主遮光部31の幅Wは、遮光板30を長さ方向に巻き回してランプ保護管21に配置した状態において、管軸方向(長尺のランプ22の長さ方向)に関して遮光板30が成す長さとなる。つまり、リング状に巻かれた遮光板30が幅Wの範囲でOリング23の周辺を遮光することになる。また、主遮光部31の長さ(ランプ保護管21の内周方向の長さ)として許容される最小値は、必ずしもランプ保護管21の内面の円周長Cと丁度同じ長さである必要はなく、その両端のオーバーラップ部32a,32bの形状によっては、それよりも(Cよりも)適宜短くてもよい。すなわち、ランプ保護管21の内面の円周長Cの全体を主遮光部31が完全にカバーしていなくとも、主遮光部31の両端のオーバーラップ部32a,32bの付け根近辺の部分によって不足箇所をカバーしうる場合がある。例えば、主遮光部31の長辺とオーバーラップ部32aの一辺とがなす角度α(図3(a)参照)が比較的大きく、また、主遮光部31の幅Wが比較的長ければ、オーバーラップ部32a,32bの付け根近辺の部分においても、Oリング23に向かう紫外線を十分に遮蔽することができる。勿論、主遮光部31の長さ(ランプ保護管21の内周方向の長さ)は、ランプ保護管21の内面の円周長Cより長い分には差し支えないが、不要に長くする必要はない。以上をまとめると、主遮光部31の長さ(ランプ保護管21の内周方向の長さ)は、少なくともランプ保護管21の内面の円周長Cに応じた長さ(Cよりも適宜短い場合も含む)を持っていればよい。
【0019】
図3(b)は、遮光板30を長さ方向に巻き回してランプ保護管21の内周に密接するように該ランプ保護管21内に配置した状態を示す横断面図である。なお、見やすくするために、ランプ保護管21の内周は点線で描き、遮光板30の断面は太い実線で描いてある。遮光板30の前記主遮光部31は、少なくともランプ保護管21の内面の円周長Cに応じた長さを持つので、巻き回されてリング状を成したとき、各オーバーラップ部32a,32bが主遮光部31に重なり、主として該主遮光部31によって(若しくは更にオーバーラップ部32a,32bの付け根近辺の部分によって)Oリング23に対向するランプ保護管21の内周全体を適切にカバーすることができ、該Oリング23に対する遮光性能が確保される。また、第1及び第2のオーバーラップ部32a,32bは、前記主遮光部31の前記長さ方向の両端において非平行的な収束形状(図3の例では略二等辺三角形)を成して延びているので、該非平行的な収束形状により、該遮光板30の端部での曲げに対する反発力を分散させることができる。すなわち、オーバーラップ部32a,32bの先端(二等辺三角形の頂点)は、曲げの始まりであるため比較的大きな反発力を発生するはずであるが、曲げ部位が点若しくは微小幅であるため、曲げに対する反発力はあまり大きくならない。オーバーラップ部32a,32bの付け根に近づくにつれて曲げ部位の幅が増すが、既に他の部分が曲げられているため曲げに対する反発力はあまり大きくならない。このようにして、遮光板30の端部での曲げに対する反発力を分散させることができるので、リング状に巻き回された遮光板30全体がランプ保護管21の内周に密接し、前記図5(b)に示したような端部近傍部分での浮き上がりが生じない、若しくは目立たないように抑制することができる。
【0020】
上述のように、遮光板30を長さ方向に巻き回してランプ保護管21の内周に密接するように該ランプ保護管21内に配置した状態において、端部近傍部分での浮き上がりが生じないので、該ランプ保護管21外へ又はランプ保護管21内から紫外線ランプ22を出し入れする際に、ランプの口金が遮光板30に引っ掛かるという問題が起こらない。
【0021】
遮光板30におけるオーバーラップ部32a,32bの形状は、上述した略二等辺三角形に限らず、種々に変更可能である。また、略二等辺三角形の場合も、その頂角を鋭角にする、あるいは鈍角にするなど、種々の変更が可能である。図4は、遮光板30のいくつかの変形例を示す。図4(a)は、オーバーラップ部32a,32bを略二等辺三角形の頂角βを鋭角とした例を示す。頂角βの鋭角度が増すほど、主遮光部31の長辺とオーバーラップ部32aの一辺とがなす角度αが増し、遮光板30の端部での曲げに対する反発力の分散度が増し、端部近傍部分での浮き上がりをより抑制することができる。勿論、オーバーラップ部32a,32bが長くなりすぎないようにするために、頂角βの鋭角度を増すには限度がある。一例として、経験的に、頂角βの最小値を略20度程度とするとよい。その場合、上記角度αは略170度程度となる。一方、オーバーラップ部32a,32bの略二等辺三角形の頂角βを鈍角としてもよく、その場合、鈍角度が増すほど、主遮光部31の長辺とオーバーラップ部32aの一辺とがなす角度αが減り、遮光板30の端部での曲げに対する反発力の分散度が減り、端部近傍部分での浮き上がりの抑制度合いが減少する。必要な浮き上がりの抑制を得るためには、頂角βの鈍角度にも限度がある。一例として、経験的に、頂角βの最大値を略140度程度とするとよい。その場合、上記角度αは略110度程度となる。そうすると、1つの指針として、主遮光部31の長辺とオーバーラップ部32a,32bの一辺とがなす角度αが、略110度乃至略170度程度の範囲に収まるように、オーバーラップ部32a,32bの形状を決定するのがよいと思われる。
【0022】
図4(b)は、オーバーラップ部32a,32bを略直角三角形とし、遮光板30全体を略平行四辺形に形成した例を示す。(c)は、オーバーラップ部32a,32bを略直角三角形とし、遮光板30全体を略台形に形成した例を示す。(d)は、オーバーラップ部32a,32bを不等辺三角形とした例を示す。これらの形状においても、オーバーラップ部32a,32bの非平行的な収束形状のために、遮光板30を長さ方向に巻き回してランプ保護管21の内周に密接するように該ランプ保護管21内に配置した状態において、遮光板30の端部での曲げに対する反発力が分散され、もって、端部近傍部分での浮き上がりが生じない、若しくは抑制することができる。なお、この場合も、主遮光部31の長辺とオーバーラップ部32a,32bの一辺とがなす角度αが、略110度乃至略170度程度の範囲に収まるように、オーバーラップ部32a,32bの形状を決定するのがよい。
【0023】
オーバーラップ部32a,32bが成す非平行的な収束形状は1つに限らず、図4(e)に示すように、複数あってもよい。図4(e)に示す複数の収束形状を持つ遮光板30において、各収束形状の先端の位置は、互いにずれており、一点鎖線で示すように不等辺三角形状若しくは多角形状の全体的な輪郭を提示する。このように複数の収束形状を持つ場合も、オーバーラップ部32a,32bの非平行的な収束形状のために、遮光板30を長さ方向に巻き回してランプ保護管21の内周に密接するように該ランプ保護管21内に配置した状態において、遮光板30の端部での曲げに対する反発力が分散され、もって、端部近傍部分での浮き上がりが生じない、若しくは抑制することができる。
【0024】
遮光板30は、金型プレス加工によって形成してもよいが、エッチング加工あるいはフォトレジストエッチング加工によって形成するのが経済的である。エッチングに適し、かつ、紫外線遮蔽性能を持つ材質としては、ステンレス系、銅系、ニッケル系、鉄、アルミニウム、アルミ合金、金、銀、モリブデン、チタン、アモルファス、コバール(Kovar)、ケイ素などがあり、これらのいずれかを遮光板30の素材として使用することができる。また、金以外の素材(ステンレス系、銅系、ニッケル系、鉄、アルミニウム、アルミ合金、銀、モリブデン、チタン、アモルファス、コバール、ケイ素)については表面に金メッキを施しても良い。また、遮光板30の板厚は、0.005mm乃至1mm程度の範囲であればよい。なお、遮光板30において角を成している各箇所に丸みを持たせるように加工するとよく、そうすると、角に何かが引っ掛かりにくくなり、また、作業時に指等が傷つけられるおそれもない。
【0025】
上記実施例では、主遮光部31の2つの長辺が直線状に延びて互いに平行となっているが、これに限らず、例えば、主遮光部31の2つの長辺が直線ではなく緩く湾曲したような曲線を成していてもよい。
【0026】
なお、紫外線ランプ22は、一端にのみ接続用の口金を持つタイプ、あるいは両端に接続用の口金を持つタイプ、のどちらを使用してもよい。前者のタイプの場合、該紫外線ランプ22を内挿するランプ保護管21は、容器の一端側の壁面11cでのみ支持され、かつ、該支持端側でのみ開口している。後者のタイプの場合、該紫外線ランプ22を内挿するランプ保護管21は、容器の両端側の壁面11cでそれぞれ支持され、かつ、該両端で開口しており、前記Oリング23及び前記遮光板30も、ランプ保護管21の両端側にそれぞれ設けられる。なお、本発明は、封止部材としてOリング23を用いるものに限らず、その他のゴム製パッキン等、任意の液密又は気密用の封止部材を用いるものにおいて適用することができる。
【0027】
上述した遮光板30は、紫外線処理装置10に付属して流通・販売されてよいのは勿論のこと、個々の紫外線ランプユニット20若しくは保護管21に付属して流通・販売されてもよく、また、紫外線処理装置10若しくは紫外線ランプユニット20において使用されるために、独立した遮光部品として単独で流通・販売されてもよい。また、本発明に係る紫外線処理装置とは、上述したような液体処理用の紫外線処理装置10に限らず、空気空間内に置かれた処理対象物体を殺菌・消毒するための紫外線殺菌装置もその範疇に含む。
図1
図2
図3
図4
図5