(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材と、乾燥された封入剤層と、乾燥されたポリマー厚膜透明導体組成物から形成される透明導体とを含む容量性スイッチ回路であって、前記ポリマー厚膜透明導体組成物が、
(a) 酸化インジウムスズ粉末、酸化アンチモンスズ粉末およびそれらの混合物からなる群から選択される導電性酸化物粉末10〜70重量%と、
(b) トリエチルホスフェートに溶解された熱可塑性ウレタン樹脂および熱可塑性ポリヒドロキシエーテル樹脂を含む有機媒体30〜90重量%と
を含み、
前記有機媒体は、前記有機媒体の全重量に基づいて、1〜50重量%の前記熱可塑性ウレタン樹脂および10〜50重量%の前記熱可塑性ポリヒドロキシエーテル樹脂を含み、
前記導電性酸化物粉末および前記有機媒体の重量パーセントが前記ポリマー厚膜透明導体組成物の全重量に基づく
ことを特徴とする容量性スイッチ回路。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、電気回路、特に、容量性スイッチ回路を熱成形するのに使用するためのポリマー厚膜透明導体組成物に関する。導体の層を基材上に印刷し、乾燥させて機能回路を製造し、次に、回路全体を、回路をその所望の三次元特性に変形する圧力および熱、すなわち、熱成形に供する。
【0007】
ポリマー厚膜で熱成形された回路において一般に使用される基材は、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)等である。PCは、比較的高い温度において熱成形され得るので、一般的に好ましい。しかしながら、PCは、その上に堆積される層において使用される溶剤に非常に影響されやすい。
【0008】
ポリマー厚膜(PTF)透明導体組成物は、(i)酸化インジウムスズ(ITO)粉末、酸化アンチモンスズ(ATO)粉末およびそれらの混合物からなる群から選択される導電性酸化物粉末と、(ii)トリエチルホスフェートに溶解された熱可塑性ウレタン樹脂および熱可塑性ポリヒドロキシエーテル樹脂の両方を含む有機媒体とからなる。
【0009】
さらに、粉末および印刷助剤を添加して組成物を改良してもよい。
【0010】
透明という用語の使用は、相対的な使用である。ここにおいて、透明は、印刷された/乾燥された導体を通る少なくとも30%の光の透過率を意味することが意図される。
【0011】
本発明のPTF透明導体組成物の各成分を以下に詳細に検討する。
【0012】
A.透明導電性粉末
当該厚膜組成物中の導体は、ITO粉末、ATO粉末、またはそれらの混合物である。粉末粒子の様々な粒径および形状が考えられる。実施形態において、導電性粉末粒子は、球状粒子、フレーク(棒状体、円錐体、板状体)、およびそれらの混合物など、任意の形状を包含してもよい。一実施形態において、ITOはフレークの形態である。
【0013】
実施形態において、ITOおよびATO粉末の粒度分布は0.3〜50ミクロンであり、さらなる実施形態において、0.5〜15ミクロンである。
【0014】
実施形態において、導電性酸化物粉末粒子の表面積/重量比は、1.0〜100m
2/gの範囲である。
【0015】
ITOは、スズがドープされた酸化インジウム、Sn:In
2O
3、すなわち、典型的に90重量%のIn
2O
3および10重量%のSnO
2を有するIn
2O
3およびSnO
2の固溶体である。ATOは、アンチモンがドープされた酸化スズ、Sb:SnO
2、すなわち、典型的に10重量%のSb
2O
3および90重量%のSnO
2を有するSb
2O
3およびSnO
2の固溶体である。
【0016】
さらに、少量の他の金属をPTF透明導体組成物に添加して導体の電気的性質を改良してもよいことは公知である。このような金属のいくつかの例には、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、白金、パラジウム、モリブデン、タングステン、タンタル、スズ、インジウム、ランタン、ガドリニウム、ホウ素、ルテニウム、コバルト、チタン、イットリウム、ユウロピウム、ガリウム、硫黄、亜鉛、シリコン、マグネシウム、バリウム、セリウム、ストロンチウム、鉛、アンチモン、導電性炭素、およびそれらの組合せの他、厚膜組成物の技術分野において一般的なその他の金属が含まれる。付加的な金属は全組成物の約1.0重量パーセントまで占めてもよい。しかしながら、これらの金属が加えられる時に透明度が損なわれる場合がある。
【0017】
一実施形態において、導電性酸化物粉末は、PTF透明導体組成物の全重量に基づいて10〜70重量%で存在している。別の実施形態において、それは、またPTF透明導体組成物の全重量に基づいて20〜60重量%で存在しており、さらに別の実施形態において、それは25〜55重量%で存在している。
【0018】
B.有機媒体
有機媒体は、トリエチルホスフェートに溶解された熱可塑性ウレタン樹脂および熱可塑性ポリヒドロキシエーテル樹脂の両方からなる。
【0019】
ウレタン樹脂は、下地基材に対する十分な接着性を達成しなければならない。それは、熱成形後に回路の性能に適合しなければならず、それに悪影響を与えてはならない。一実施形態において熱可塑性ウレタン樹脂は有機媒体の全重量の1〜50重量%である。別の実施形態において熱可塑性ウレタン樹脂は有機媒体の全重量の1〜25重量%であり、さらに別の実施形態において熱可塑性ウレタン樹脂は有機媒体の全重量の3〜15重量%である。一実施形態において熱可塑性ウレタン樹脂はウレタンホモポリマーである。別の実施形態において熱可塑性ウレタン樹脂はポリエステル系コポリマーである。
【0020】
一実施形態において熱可塑性ポリヒドロキシエーテル樹脂は有機媒体の全重量の10〜50重量%である。別の実施形態において熱可塑性ポリヒドロキシエーテル樹脂は有機媒体の全重量の10〜25重量%であり、さらに別の実施形態において熱可塑性ポリヒドロキシエーテル樹脂は、有機媒体の全重量の10〜20重量%である。
【0021】
ポリマー樹脂を典型的に機械混合によってトリエチルホスフェート溶剤に添加して、媒体を形成する。トリエチルホスフェートを有機溶剤として使用することによって、組成物に有益な性質が与えられることにここで留意すべきである。
【0022】
付加的な粉末
様々な粉末をPTF導体組成物に添加して接着性を改良し、レオロジーを変え、低剪断粘度を増加させ、それによって印刷適性を改良してもよい。
【0023】
PTF導体組成物の適用
「ペースト」とも称される、PTF透明導体組成物は典型的に、ガスおよび湿気に対して不透質である、ポリカーボネートなどの基材上に堆積される。また、基材は、プラスチックシートとその上に堆積される任意選択の金属または誘電体層との組合せから構成される複合材料のシートであり得る。また、透明導体が、例えばDuPont(登録商標)5042または5043(本件特許出願人)を使用することにより形成される熱成形可能なAg導体の上に、または熱成形可能な誘電体層の上に堆積されてもよい。あるいは、熱成形可能なAg導体が、透明導体の上に形成されてもよい。
【0024】
PTF透明導体組成物の堆積は典型的にスクリーン印刷によって行なわれるが、スクリーン印刷、ステンシル印刷、シリンジ分注またはコーティング技術などの他の堆積技術を利用することができる。スクリーン印刷の場合、スクリーンメッシュの大きさが、堆積された厚膜の厚さを制御する。
【0025】
一般的に、厚膜組成物は、適切な電気的機能性を組成物に与える機能相を含む。機能相は、機能相のためのキャリアとして作用する有機媒体中に分散された電気的機能性粉末を含む。一般的に、組成物を焼成してポリマーと有機媒体の溶剤との両方を燃焼消失させ、電気的機能性を付与する。しかしながら、ポリマー厚膜の場合、有機媒体のポリマー部分は、乾燥後に組成物の一体部分のまま存在し、したがって、得られた導体の一体部分である。
【0026】
PTF透明導体組成物は、全ての溶剤を除去するために必要な時間および温度で加工される。例えば、堆積された厚膜は典型的に10〜15分間にわたって130℃の熱暴露によって乾燥される。
【0027】
回路構成
使用される基礎基材は典型的に、厚さ10ミルのポリカーボネートである。PTF透明導体組成物を上に記載された条件の通りに印刷し、乾燥させた。いくつかの層を印刷して乾燥させることができる。後続の工程は、ユニット全体を熱成形(190℃、750psi)する工程を包含してもよく、それは3D容量性スイッチ回路の製造において典型的である。一実施形態において、乾燥されたPTF導電性組成物、すなわち、透明導体の上に封入層が堆積され、次に、乾燥される。
【0028】
一実施形態において、封入剤は、PTF透明導体組成物に含有されるのと同じ樹脂、すなわち、PTF導電性組成物中に存在しているのと同じ比率の同じ樹脂からなる。別のこのような実施形態において、封入剤は、PTF透明導体組成物に含有されるのと同じ樹脂、すなわち、PTF透明導体組成物中に存在しているのと異なった比率だが同じ樹脂からなる。
【0029】
別の実施形態において、封入剤層は、乾燥されたPTF透明導体組成物の上に堆積され、次に紫外線硬化される。この実施形態において封入剤は、1つまたは複数の紫外線硬化性ポリマー、例えば、アクリレート系ポリマーからなる。封入剤層を形成するために適した1つのPTF紫外線硬化性組成物は、高伸長ウレタンオリゴマー、アクリレートモノマー、アクリル化アミンおよび無機粉末からなる。
【0030】
封入剤の使用によって、熱成形された回路の歩留りが改善される(すなわち破損率を減少させる)ことが見出された。
【0031】
3次元容量性回路を製造する間、熱成形工程の後に、最終工程はしばしば、ポリカーボネートなどの樹脂を使用して射出成形によって完成回路が形成される成形工程である。このプロセスはイン・モールディングとも称され、より高い温度を必要とする。選択される樹脂に応じて、これらの温度は典型的に、10〜30秒間にわたって250℃を超える。このようにPTF組成物に使用される樹脂の選択は重要である。本PTF組成物に使用される樹脂の組合せは金型内プロセスに耐え、完全に機能回路部品を製造することが示されているのに対して、PTF組成物に典型的に使用される大抵の樹脂はそうではない。
以下に、本発明の好ましい態様を示す。
[1] (a) 酸化インジウムスズ粉末、酸化アンチモンスズ粉末、およびそれらの混合物からなる群から選択される導電性酸化物粉末10〜70重量%と、
(b) 1〜50重量%の熱可塑性ウレタン樹脂および10〜50重量%の熱可塑性ポリヒドロキシエーテル樹脂を含む有機媒体30〜90重量%と
を含むポリマー厚膜透明導体組成物であって、
前記熱可塑性ウレタン樹脂および前記熱可塑性ポリヒドロキシエーテル樹脂が両方ともトリエチルホスフェートに溶解され、
前記熱可塑性ウレタン樹脂および前記熱可塑性ポリヒドロキシエーテル樹脂の重量パーセントが前記有機媒体の全重量に基づき、
前記導電性酸化物粉末および前記有機媒体の重量パーセントがポリマー厚膜透明導体組成物の全重量に基づく
ことを特徴とするポリマー厚膜透明導体組成物。
[2] 前記熱可塑性ウレタン樹脂がウレタンホモポリマーまたはポリエステル系コポリマーであり、前記熱可塑性ウレタン樹脂がポリエステル系コポリマーであることを特徴とする[1]に記載のポリマー厚膜透明導体組成物。
[3] 基材と、ポリマー厚膜透明導体組成物から形成される透明導体とを含む容量性スイッチ回路であって、前記ポリマー厚膜透明導体組成物は、
(a) 酸化インジウムスズ粉末、酸化アンチモンスズ粉末およびそれらの混合物からなる群から選択される導電性酸化物粉末10〜70重量%と、
(b) 1〜50重量%の熱可塑性ウレタン樹脂および10〜50重量%の熱可塑性ポリヒドロキシエーテル樹脂を含む有機媒体30〜90重量%と
を含み、
前記熱可塑性ウレタン樹脂および前記熱可塑性ポリヒドロキシエーテル樹脂が両方ともトリエチルホスフェートに溶解され、
前記熱可塑性ウレタン樹脂および前記熱可塑性ポリヒドロキシエーテル樹脂の重量パーセントが前記有機媒体の全重量に基づき、
前記導電性酸化物粉末および前記有機媒体の重量パーセントがポリマー厚膜透明導体組成物の全重量に基づくことを特徴とする容量性スイッチ回路。
[4] 前記容量性スイッチ回路が熱成形されていることを特徴とする[3]に記載の容量性スイッチ回路。
[5] 熱成形可能な銀導体をさらに含み、前記容量性スイッチ回路が熱成形される前に、前記透明導体が前記熱成形可能な銀導体上に形成されていることを特徴とする[4]に記載の容量性スイッチ回路。
[6] 熱成形可能な銀導体をさらに含み、前記ポリマー厚膜透明導体組成物を乾燥させて前記透明導体を形成した後、前記容量性スイッチ回路が熱成形される前に、前記熱成形可能な銀導体が前記透明導体の頂面上に形成されていることを特徴とする[4]に記載の容量性スイッチ回路。
[7] 前記容量性スイッチ回路が、引き続いて射出成形プロセスに供せられることを特徴とする[4]に記載の容量性スイッチ回路。
[8] 基材と、乾燥された封入剤層と、乾燥されたポリマー厚膜透明導体組成物から形成される透明導体とを含む容量性スイッチ回路であって、前記ポリマー厚膜透明導体組成物が、
(a) 酸化インジウムスズ粉末、酸化アンチモンスズ粉末およびそれらの混合物からなる群から選択される導電性酸化物粉末10〜70重量%と、
(b) 1〜50重量%の熱可塑性ウレタン樹脂および10〜50重量%の熱可塑性ポリヒドロキシエーテル樹脂を含む有機媒体30〜90重量%と
を含み、
前記熱可塑性ウレタン樹脂および前記熱可塑性ポリヒドロキシエーテル樹脂が両方ともトリエチルホスフェートに溶解され、
前記熱可塑性ウレタン樹脂および前記熱可塑性ポリヒドロキシエーテル樹脂の重量パーセントが前記有機媒体の全重量に基づき、
前記導電性酸化物粉末および前記有機媒体の重量パーセントが前記ポリマー厚膜透明導体組成物の全重量に基づく
ことを特徴とする容量性スイッチ回路。
[9] 前記容量性スイッチ回路が熱成形されていることを特徴とする[8]に記載の容量性スイッチ回路。
[10] 前記容量性スイッチ回路が、引き続いて射出成形プロセスに供せられることを特徴とする[9]に記載の容量性スイッチ回路。
【実施例】
【0032】
実施例、比較実験
実施例1
PTF透明導体組成物を以下の方法で調製した。有機媒体69重量%が使用され、5.0重量%のDesmocoll 406 ポリウレタン(Bayer Material Science LLC, Pittsburgh, PA)および15.0重量%のPKHHポリヒドロキシエーテル樹脂(Phenoxy Associates, Rock Hill, SC)を80.0重量%のトリエチルホスフェート(Eastman Chemical, Kingsport, TN)有機溶剤と混合することによって調製された。樹脂の分子量は約20,000であった。この混合物を90℃で1〜2時間加熱して樹脂を溶解した。約0.5ミクロンの平均粒度を有するZelec 3010−XC ATO粉末(Milliken Chemical, Spartanburg, SC)31重量%を有機媒体に添加した。有機媒体およびATO粉末の重量%は、PTF透明導体組成物の全重量に基づいていた。
【0033】
この組成物を30分間にわたって遊星形ミキサーで混合し、次に、三本ロールミルに数回供した。
【0034】
次に、回路を以下のように製造した。厚さ10ミルのポリカーボネート基材上に、一連の相互にかみ合せた線のパターンを325メッシュステンレス鋼スクリーンを使用して印刷した。パターン化された線を強制空気箱形炉内で10分間130℃において乾燥させた。部品が検査され、下地基材の歪みはごくわずかであった。190℃において熱成形後、導電線は導電性のままであり、基材に十分に付着していた。1900Ω/□/ミルの抵抗率の値が約5ミクロンの乾燥厚さにおいて得られた。
【0035】
比較実験A
PTF透明導体組成物を以下の方法で調製した。DiBasic Esters−9(本件特許出願人)をトリエチルホスフェートの代わりに溶剤として使用したこと以外は、実施例1の組成物と全く同様に組成物を調製した。
【0036】
9200Ω/□/ミルの抵抗率の値が約6ミクロンの乾燥厚さにおいて得られた。
【0037】
トリエチルホスフェートを溶剤として使用する利点は著しい。ポリカーボネートは大抵の熱成形および射出成形された回路のために好ましい基材であるので、抵抗率を低減するものは何れも重要である。両方がポリカーボネート基材上に形成されるとき、実施例1の透明導体の抵抗率の値は、比較実験Aの透明導体の抵抗率の値の約20%である。
【0038】
また、透明導体をポリエステル基材上に形成した。ポリエステル基材上の実施例1および比較実験Aの透明導体を85℃の温度および85%の相対湿度に500時間供したが、これは長期老化をシミュレートするものである。抵抗率が低下し、調製されただけの透明導体の場合よりもさらに大きい差を示す。
【0039】
全ての結果を第1表に示す。
【0040】
【表1】