特許第6592108号(P6592108)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6592108-ガス流を脱硫するための方法及び装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6592108
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】ガス流を脱硫するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20191007BHJP
   B01J 38/14 20060101ALI20191007BHJP
   B01J 23/745 20060101ALI20191007BHJP
   B01J 38/12 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
   B01D53/14 220
   B01J38/14ZAB
   B01J23/745 M
   B01J38/12 Z
【請求項の数】20
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-558645(P2017-558645)
(86)(22)【出願日】2016年3月7日
(65)【公表番号】特表2018-516744(P2018-516744A)
(43)【公表日】2018年6月28日
(86)【国際出願番号】EP2016054723
(87)【国際公開番号】WO2016180555
(87)【国際公開日】20161117
【審査請求日】2018年1月22日
(31)【優先権主張番号】102015208791.3
(32)【優先日】2015年5月12日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517298149
【氏名又は名称】シーメンス アクティエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ・ヨー
(72)【発明者】
【氏名】リューディガー・シュナイダー
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス・フォルトマイヤー
(72)【発明者】
【氏名】ゲルハルト・ツィマーマン
【審査官】 松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/170047(WO,A1)
【文献】 特開昭63−297496(JP,A)
【文献】 特表2016−515936(JP,A)
【文献】 実開平03−025541(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0283812(US,A1)
【文献】 特開平08−266851(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0059864(US,A1)
【文献】 特開平10−235128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/14− 53/18
B01D 53/02− 53/12
B01J 21/00− 38/74
C10K 1/00− 3/06
F02B 47/08− 47/10
F02M 26/00− 26/74
F02C 1/00− 9/58
F23R 3/00− 7/00
F02B 51/00− 51/06
F02M 27/00− 27/08
F23J 13/00− 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービン(23)内での燃焼に使用可能な、硫化水素を含有するガス流(3)を脱硫するための方法であって、
前記ガス流(3)は、硫化水素の吸収のために、触媒活性成分(17)を含有する浄化媒体(7)と接触させられ、硫黄元素を生成し、前記触媒活性成分(17)は硫黄元素の生成の際に還元され、還元された前記触媒活性成分(17)を含有する浄化媒体(7)は、再生段(11)に供給され、前記再生段内では、還元された前記触媒活性成分(17)は、前記再生段(11)に供給された酸素含有ガス(19)による酸化によって再生成され、前記酸素含有ガス(19)は、ガスタービン(23)の圧縮機(21)から、前記再生段(11)に供給され
前記再生段(11)内において、前記触媒活性成分(17)の再生の際に生じる排気(49)は、前記ガスタービン(23)の圧縮機(21)内に返送される方法。
【請求項2】
前記浄化媒体(7)が、前記再生段に、そのヘッド部(15)において供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸素含有ガス(19)が、前記再生段(11)に、その底部(29)において供給される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記触媒活性成分(17)として、金属塩が用いられる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記再生段(11)に供給される酸素含有ガス(19)の量が、供給される酸素の量の、前記触媒活性成分(17)の量に対する比が1より大きくなるように調量される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記酸素含有ガス(19)が、前記再生段(11)に流入する前に冷却される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記酸素含有ガス(19)の冷却の際に放出された熱が、前記浄化媒体(7)を処理するための処理装置(43)に供給される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記触媒活性成分(17)の再生の際に生じる排気(49)が、前記ガスタービン(23)の前記圧縮機(21)に返送される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
再生された前記浄化媒体(7)が、前記再生段(11)から排出される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
再生された前記浄化媒体(7)が、前記再生段(11)から、吸収装置(5)内に誘導される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ガスタービン(23)内での燃焼に使用可能な、硫化水素を含有するガス流(3)を脱硫するための装置(1)であって、
‐触媒活性成分(17)を含む浄化媒体(7)を用いて、硫黄元素を生成し、前記ガス流(3)から硫化水素を吸収するための吸収装置(5)と、
‐前記吸収装置(5)と流体的に接続された、硫黄の生成の際に還元された前記触媒活性成分(17)を再生するための再生段(11)と、
‐圧縮機(21)を含むガスタービン(23)と、を含んでおり、
前記再生段(11)は、酸素含有ガス(19)を供給するために、吸気供給部(27)を有しており、前記吸気供給部には、前記ガスタービン(23)の前記圧縮機(21)の排出導管(25)が、流体的に接続されており、
前記再生段(11)内において、前記触媒活性成分(17)の再生の際に生じる排気(49)は、前記ガスタービン(23)の圧縮機(21)内に返送される装置(1)。
【請求項12】
前記再生段(11)のヘッド部(15)には、前記浄化媒体(7)のための供給導管(13)が接続されている、請求項11に記載の装置(1)。
【請求項13】
前記吸気供給部(27)が、前記再生段(11)の底部(29)に接続されている、請求項11又は12に記載の装置(1)。
【請求項14】
前記触媒活性成分(17)として、金属塩が用いられている、請求項11から13のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項15】
前記再生段(11)に供給される酸素の量の、前記触媒活性成分(17)の量に対する比が1より大きい値である、請求項11から14のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項16】
前記吸気供給部(27)が、熱交換器(35)を含む供給導管として構成されている、請求項11から15のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項17】
前記熱交換器(35)が、処理装置(43)と連結されている、請求項16に記載の装置(1)。
【請求項18】
前記再生段(11)には、前記ガスタービン(23)の前記圧縮機(21)に流体的に接続された排気導管(49)が接続されている、請求項11から17のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項19】
蓄圧器(34)には、前記浄化媒体(7)のための排出導管(37)が接続されている、請求項11から18のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項20】
前記再生段(11)が、前記吸収装置(5)に流体的に連結されている、請求項19に記載の装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫化水素を含有するガス流、特にガスタービン内での燃焼に使用可能なガス流を脱硫するための方法に関する。本発明はさらに、ガス流を脱硫するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガスは、燃焼に際して排出される二酸化炭素(CO)とその他の廃棄物との量が、比較的少ない化石燃料である。天然ガスの、世界の最も重要なエネルギー源の1つとしての貢献は、ますます増大している。原料の不足、及び増大を続けるエネルギー需要を背景に、環境保護の理由から、天然ガスの処理及び利用は、効率的かつ低エミッションにエネルギーを生成するための、前途有望な可能性である。
【0003】
従って、ガスタービンにおいて天然ガスを燃料ガスとして用いることは、容易かつ安価に、電気的エネルギー及び力学的エネルギーを生成可能にするためには望ましいことである。とは言え、これまでのところ、未処理の天然ガスをそのまま用いることは、硫化水素(HS)等の酸性成分が含有されているので、限られた範囲でのみ可能である。故障を生じずに、エネルギー効率良くガスタービンを運転するためには、燃料ガスにおける硫黄の含有量を制限することが必要であり、それは、一方では高温による腐食を回避するか、又は少なくとも減少させるためであり、他方では硫黄酸化物(SO)に関して世界規模で厳しくなったエミッション限界値を遵守するためである。従って、硫化水素を含有する燃料ガス、特に酸性の天然ガスを、適切に処理する必要がある。
【0004】
ガスから硫化水素を分離するためには、様々な分離技術が知られており、当該分離技術においては、ガスそれぞれがさらなる利用に必要とする純度を保証するために、浄化媒体とも呼ばれる物理吸収媒体又は化学吸収媒体が用いられる。例えばクラウスプロセスを用いた、後続のHS変換を伴う、古典的な吸収‐脱着法の他に、特に比較的小さな容量に関して、いわゆる液体レドックス法が用いられる。
【0005】
この液体レドックス法は、反応吸収、すなわち吸収と酸化との組み合わせという構想に基づいて行われる。ガスそれぞれから硫化水素を分離するために、ガスは浄化媒体と接触させられ、ガス中に含まれる硫化水素は、化学的又は物理的に、浄化剤の活性物質と結合する。硫化水素が浄化された燃料ガスは、ガスタービン内で燃焼可能である。
【0006】
硫化水素を含有する浄化媒体の処理は、引き続いて、酸化還元剤によって行われる。酸化還元剤は、浄化媒体に含有される硫化水素を硫黄元素に変換し、硫化水素を浄化媒体から除去する。酸化還元剤は、硫化水素によって還元される。酸素含有ガスと接触することによって、酸化還元剤は再び酸化され、適切に再生される。その際、酸素含有ガスの供給は、例えば、そのために外部に設置された送風機を通じて、又は、外部で供給された、前もって圧縮された酸素を含有する空気を導入することによって行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の第1の課題は、燃料ガスの脱硫を、従来の方法よりも効果的かつ安価に実施することを可能にする方法を記載することにある。
【0008】
本発明の第2の課題は、対応する方法を経済的に実施することができる装置を記載することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、本発明の第1の課題は、硫化水素を含有するガス流、特にガスタービン内での燃焼に使用可能なガス流を脱硫するための方法によって解決され、その際、当該ガス流は、硫化水素の吸収のために、触媒活性成分を含有する浄化媒体と接触させられ、硫黄元素を生成し、当該触媒活性成分は硫黄元素の生成の際に還元され、還元された触媒活性成分を含有する浄化媒体は、再生段に供給され、当該再生段では、還元された触媒活性成分は、再生段に供給された酸素含有ガスでの酸化によって再び生成され、酸素含有ガスは、ガスタービンの圧縮機から、再生段に供給される。
【0010】
本発明は、可能な限り高いエネルギー効率及び経済効率は、ガス処理と、従って処理されたガスの燃焼に用いられるガスタービンとから構成される設備全体の最適化を必要とするという考察を前提にしている。しかしながら、これまでのところ、酸性ガスの処理とガスタービンの運転とは、2つの互いに独立して構成されたプロセスである。従って、液体レドックスプロセスのための酸化用空気の必要は、これまでのところ多くの労力と費用を要して、別個の送風機又は対応する圧縮機によって満たされている。
【0011】
さらに本発明は、ガス及び蒸気タービン(GUD)発電所(IGCC‐ガス化複合発電)における統合されたガス化の範囲では、ガスタービンの圧縮機の排気の利用が可能であるという事実を考慮している。その際、圧縮機から取り出された空気は、さらなる使用のために、例えばガス化装置に供給され、目的に従って使用される。
【0012】
本発明は、この知識をガス流の脱硫プロセスに転用し、ガスタービンプロセス又はガスタービンの圧縮機から取り出された空気を、ガス流の脱硫で用いることが、同様に可能であることを認識している。圧縮機によって供給された空気は酸素を含んでおり、酸素は、ガス処理又は液体レドックスプロセスにおいて、触媒活性成分の再生に利用可能である。それゆえ、触媒活性成分の再生のための酸素含有ガスは、ガスタービンの圧縮機から、再生段に供給される。
【0013】
酸素含有ガスは、特に再生段での直接利用を可能にする圧力レベルにおいて、圧縮機から取り出される。従って、再生段に流入する前の、酸素含有ガスの圧縮又は膨張は不要である。その際、取り出される空気の圧力は、圧縮機の機械技術的デザイン及び再生段の最適化された圧力レベルによって決定される。
【0014】
言い換えると、ガス流の脱硫プロセスとガスタービンプロセスとの連結又は組み合わせが重要であり、それによって、触媒活性成分の再生のために要求される空気流量が、プロセスに付加的なエネルギーを入力せずとも得られる。この組み合わせは、特にエネルギー効率と、従ってプロセス全体の経済性とに有利に作用する。再生プロセスのエネルギー効率は、従来のプロセスに比べて明らかに上昇している。なぜなら、ガスタービンの圧縮機は、高いエネルギー効率で仕事するからである。さらに、費用が減少する。なぜなら、ガス処理のための別個の空気圧縮機が不要だからである。
【0015】
特に、供給された酸素含有ガスの酸素分圧の増大は、物質移動の改善と、従って、再生段内部での触媒活性成分の再生の効率化と、につながり、それによって、最終的には、硫化水素の変換に必要な空気の量を減少させることができる。
【0016】
さらに、ガス処理の際の圧力レベルの最適化に関して、より多くの自由度が生じる。浄化媒体からの硫黄元素の分離は、好ましくは、そのために適切に構成された蓄圧器又はフラッシュ容器内で、前もって行われた脱ガスに続いて行われる。従って、硫黄の分離のために排出される流れ又は対応する懸濁液において、望ましくない泡の発生を防止することができる。
【0017】
再生段として、例えば気泡塔が用いられる。気泡塔は、触媒活性成分と酸素との反応に必要な物質交換面を供給する。浄化媒体は、ヘッド部において再生段に供給されると合理的である。この供給は、好ましくは吸収装置を始点として行われ、当該吸収装置内では、分離されるべき硫化水素が、浄化媒体に吸収されている。
【0018】
触媒活性成分に加えて、吸収装置から流出する浄化媒体には、生成された硫黄元素が含まれている。この硫黄元素は、好ましくは、浄化媒体が再生段に流入する前に、浄化媒体から分離される。分離は、有利な態様においては、吸収装置に後置された蓄圧器内で行われる。当該蓄圧器を始点として、浄化媒体は、還元された触媒活性成分、すなわち消費された触媒と共に、再生段に供給される。
【0019】
その際、浄化媒体は、吸収装置内で支配的な圧力に基づいて、又はポンプを用いて、再生段のヘッド部に誘導される。浄化媒体は、ヘッド部を始点として、再生段を通過し、下方、すなわち再生段の底部に向かって流れる。浄化媒体として、好ましくは浄化活性物質としてアミノ酸塩を有する浄化媒体が用いられる。
【0020】
酸素含有ガスは、その底部において再生段に供給されると合理的であり、浄化媒体の流れ方向とは反対の流れ方向において、再生段を貫流する。
【0021】
浄化媒体に含まれる硫化水素の、硫黄元素を生成する反応は、触媒活性成分を用いた、吸収装置内での硫化物の生成を通じて進行する。その際、吸収装置内部では、硫化水素と浄化媒体との接触によって、硫化物が生成され、当該硫化物は、浄化媒体に含まれる触媒活性成分の還元下で反応し、硫黄元素を生成する。
【0022】
その際、基本的に、触媒活性成分が、浄化媒体に含まれており、浄化媒体と共に循環するというだけではなく、それに加えて、触媒活性成分が、再生段内部にも含まれているという可能性が存在する。例えば、再生段における固体粒子が考えられる。
【0023】
好ましくは、触媒活性成分として、金属塩が用いられる。その際、原則的にその金属イオンが複数の酸化段階において存在し得る金属塩が適している。好ましくは、金属である鉄、マンガン、又は、銅の塩が用いられる。これらの金属塩は、安価に入手され、望ましい触媒活性を有している。
【0024】
1つ又は各金属塩の可溶性を改善するためには、錯化剤が添加された浄化媒体を使用すると有利である。錯化剤は、金属イオンが金属硫化物(MeS)として沈殿することを防止する。原則的に、金属イオンを溶液中に維持できる全ての錯化剤が適している。好ましくは、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、HEDTA(ヒドロキシエチル−エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)及び/又はNTA(ニトリロ三酢酸)が用いられる。
【0025】
基本的に、硫化水素の酸化による硫黄元素の生成は、金属イオンの還元のもとで行われる。例えば、触媒活性成分として鉄(III)錯イオンを含有する浄化媒体中では、溶液中の鉄(III)イオンと硫化水素(HS)との反応によって、硫黄元素(S)と鉄(II)イオンとが生成される。従って、鉄(III)イオンは、硫化水素との反応を通じて還元され、その際、硫化水素は酸化され、硫黄が生成される。
【0026】
硫黄は固体として沈殿し、鉄(II)イオンは溶液中に残存する。鉄(II)イオンを溶液中に保持し、硫化鉄(FeS)の生成を防止するために、上述したように、浄化媒体には錯化剤が添加されるので、キレート錯体の形でマスキングされた鉄(II)イオンが浄化媒体内に存在する。
【0027】
触媒活性成分の再生成は、ガスタービンの圧縮機から取り出され、再生段に流入している酸素含有ガスでの酸化を通じて行われる。浄化媒体が酸素含有ガスと接触すると、当該ガス中に含まれる酸素は、気相から液相、すなわち浄化媒体に移行する。液相において、すでに硫黄の生成の際に還元された、上述したような例えば鉄(II)イオンといった金属イオンの、鉄(III)イオンへの酸化が行われるので、当該金属イオンは再び、酸化によって硫黄元素として硫化水素を分離するために利用される。
【0028】
触媒活性成分の可能な限り完全な再生を保証するために、好ましくは、再生段に、酸素が、酸化される触媒活性成分の量に対して過剰な量で添加される。好ましくは、再生段に供給される酸素含有ガスの量は、供給される酸素の量の、触媒活性成分の量に対する比が1より大きくなるように調量される。従って、調量された酸素の量に関しては、酸素の過剰が存在する、化学量論比を超えた反応となる。
【0029】
本発明の別の有利な態様においては、酸素含有ガスは、再生段に流入する前に冷却される。酸素含有ガスの冷却の際に放出される熱は、好ましくはさらに利用される。特に好ましくは、酸素含有ガスの冷却の際に放出される熱は、用いられた浄化媒体の処理のために、処理装置に供給される。代替的又は付加的に、本発明は、放出された熱を脱硫プロセスに供給することも規定している。
【0030】
特に有利な態様では、触媒活性成分の再生の際に生じる排気は、ガスタービンの圧縮機に返送される。当該排気は、触媒活性成分の酸化の際に変換された酸素が枯渇した排気流であり、当該排気流は、依然として、わずかな割合の同伴された浄化媒体、及び、その他の脱ガス生成物を含有し得る。
【0031】
再生段の排気が、ガスタービンの燃焼プロセスを通過する場合、望ましくないエミッションは減少する。排気流は、好ましくは、そのヘッド部において、再生段から取り出される。その際、排気流の冷却は、任意で、熱交換器を通じて実施可能である。代替的な態様では、排気流は吹き出される。
【0032】
再生された浄化媒体は、底部において、再生段から放出される。その際、浄化媒体は、再生された触媒成分、及び、好ましくは5重量%までの固体、すなわち硫黄を含んでいる。濾過のために分岐した流れは、非常に少ないものではあるが、生成される必要量の硫黄を排出することが可能である。有利には、再生された浄化媒体は、再生段から吸収装置に誘導される。吸収装置内で、浄化媒体は再び、特に酸性の天然ガスからの硫化水素の吸収に用いられる。
【0033】
還元された触媒活性成分を含む浄化媒体は、再生段に供給される前に、好ましくは、蓄圧器、いわゆるフラッシュ容器に供給される。蓄圧器は、吸収装置と再生段との間に、好ましくは流体技術的に接続されている。蓄圧器内部では、浄化媒体が脱ガス化される。
【0034】
好ましくは、脱ガス化された、硫黄元素を含む浄化媒体の流れは、蓄圧器から取り出され、蓄圧器に流体技術的に接続された分離ユニットに供給される。分離ユニットにおいて、浄化媒体に含まれた硫黄は、当該浄化媒体から分離される。分離ユニットとして、浄化媒体のための処理装置の一部として、例えば濾過ユニット又はサイクロンを用いることが可能である。固体が浄化された浄化媒体は、再び、再生段に供給される。
【0035】
本発明によると、本発明の第2の課題は、硫化水素を含有するガス流、特にガスタービン内での燃焼に使用可能な燃料ガス流を脱硫するための装置によって解決され、当該装置は、触媒活性成分を含む浄化媒体を用いて、硫黄元素を生成し、ガス流から硫化水素を吸収するための吸収装置と、当該吸収装置と流体技術的に接続された、硫黄の生成の際に還元された活性成分を再生するための再生段と、を含んでおり、再生段は、酸素含有ガスを供給するために、吸気供給部を有しており、当該吸気供給部には、ガスタービンの圧縮機の排出導管が、流体技術的に接続されている。
【0036】
ガスタービンの圧縮機の排出導管と再生段の吸気供給部との流体技術的な接続を通って、ガスタービンの圧縮機から取り出された空気は、再生段に流入し、ガス流の脱硫に必要な量の酸素を供給する。このような装置は、ガスの脱硫とガスタービンの運転との、容易で安価で経済効率の良い、プロセスに関する組み合わせを可能にする。
【0037】
浄化媒体から硫黄元素を分離した後、消費された触媒活性成分を含む浄化媒体は、再生段と吸収装置との流体技術的接続を通じて、吸収装置から再生段に供給される。その際、吸収装置は、好ましくは排出導管を通じて再生段の供給導管に連結されている。浄化媒体を添加するための再生段の供給導管は、好ましくは、そのヘッド部に接続されている。
【0038】
酸素含有ガスを供給するために、再生段の吸気供給部は、好ましくはその底部に接続されている。当該吸気供給部は、例えば1つ又は複数の開口部の形で再生段内に構成可能であり、触媒活性成分の再生に必要な量の酸素の空気供給を可能にする。
【0039】
好ましくは、浄化媒体に吸収された硫化水素を硫黄元素に変換するために、触媒活性成分として、金属塩が用いられている。
【0040】
浄化媒体としては、好ましくは、アミノ酸塩水溶液が用いられている。触媒活性成分が、浄化媒体に混合されていると合理的である。浄化媒体には、同様に金属イオンのマスキングのための錯化剤が混合されていると合理的である。
【0041】
触媒活性成分の再生成のために再生段に供給された酸素の量の、触媒活性成分の量に対する比は、有利には1よりも大きい値である。それによって、触媒活性成分の完全な再生が保証される。
【0042】
吸気供給部が、熱交換器を含む供給導管として構成されていると合理的である。当該供給導管は、再生段に接続されていると合理的であり、好ましくは、ガスタービンの圧縮機の排出導管に流体技術的に接続されている。
【0043】
熱交換器を用いて、圧縮機から取り出された酸素含有ガスが冷却される。その際に放出される熱は、好ましくは別の方法で利用される。熱交換器はそのために、好ましくは浄化媒体のための処理装置と熱技術的に連結されている。代替的又は付加的に、放出された熱は、脱硫プロセスに連結され得る。
【0044】
特に好ましくは、再生段には、ガスタービンの圧縮機と流体技術的に接続された排気導管が接続されている。当該排気導管を通じて、触媒活性成分の再生の際に生じる排気は、ガスタービンの圧縮機に返送される。当該排気導管は、再生段のヘッド部に接続されていると合理的である。排気をガスタービンの圧縮機に供給するために、排気導管は、好ましくは、ガスタービンの圧縮機の供給導管に流体技術的に接続されている。
【0045】
別の有利な態様では、再生段に、再生された浄化媒体のための排出導管が接続されている。再生された浄化媒体とは、再生段で再生された触媒活性成分を含む浄化媒体であると理解される。好ましくは、再生段は、排出導管を通じて、吸収装置に流体技術的に接続されている。それによって、再生された浄化媒体は、再び吸収装置に供給される。そのためには、再生段の排出導管は、吸収装置の供給導管に連結されていると合理的である。それによって、浄化媒体は循環させられる。
【0046】
当該方法の好ましい態様に関して挙げられた利点は、当該装置の対応する態様に、意味に即して転用され得る。
【0047】
以下に、図面を用いて、本発明の実施例を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】ガス流、特にガスタービンのための燃料ガス流を脱硫するための装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1は、ガス流3、特にガスタービンのための燃料ガス流を脱硫するための装置1を示している。ガス流3は、吸収装置5内で、浄化媒体7であるアミノ酸塩水溶液と接触する。吸収装置5内で、ガス流3に含まれる硫化水素は、浄化媒体7に吸収される。硫化水素が浄化されたガスは吸収装置5から取り出され、排出導管8を通じて、ガスタービンプロセスにおける燃焼に供給される。
【0050】
吸収装置5に接続された別の排出導管9を通じて、浄化媒体7は、再生段11に供給される。そのために、吸収装置5に接続された排出導管9は、再生段11の供給導管13に流体技術的に接続されている。供給導管13は、ヘッド部15において、再生段11に接続されている。
【0051】
吸収装置5内で用いられる浄化媒体7は、触媒活性成分17を含んでいる。浄化媒体7内での硫化水素の吸収の際に、硫化物が生成され、当該硫化物は、触媒活性成分17が存在するゆえに、すでに吸収装置5内で反応し、硫黄元素を生成している。その際、触媒活性成分17、ここでは鉄(III)錯イオンが還元される。硫黄は固体として沈殿し、還元によって生成された鉄(II)イオンは、溶液中に残存し、浄化媒体に添加された錯化剤であるEDTAによってマスキングされる。このような方法で、消費された触媒活性成分17及び硫黄元素を含む浄化媒体7は、排出導管9を通じて、吸収装置5から排出される。
【0052】
触媒活性成分17を再生成し、再び触媒として用いることを可能にするために、硫黄元素と鉄(II)イオンとを含有する浄化媒体7が、再生段11に供給される。再生段11内では、ガスタービン23の圧縮機21から取り出された酸素含有ガス19が添加される。
【0053】
酸素含有ガス19の供給は、圧縮機21の排出導管25と、再生段11の、供給導管として構成された吸気供給部27との接続を通じて行われる。吸気供給部27は、再生段11の底部29に構成されている。この、ガスタービン23の圧縮機21の排出導管25と、再生段11の供給導管27との流体技術的な接続を通って、圧縮機21から取り出された空気19は再生段11に流入し、触媒活性成分17の酸化に必要な量の酸素を供給することができる。
【0054】
酸素含有ガス19、すなわちガスタービン23から取り出された空気は、浄化媒体7の流れ方向31とは反対の流れ方向33において、供給導管27を通って、再生段11の底部29から再生段11に流入する。供給導管27内には、熱交換器35が配置されており、熱交換器35は、ガス19を、再生段11に流入する前に冷却する。その際に生じる熱は、例えば浄化媒体7に関する処理プロセスにおいて利用され得る。
【0055】
触媒活性成分17の再生成は、浄化媒体7と酸素含有ガス19との接触を通じて行われる。その際、ガス19内に含まれる酸素は、気相から液相、すなわち浄化媒体7に移行する。液相において、すでに硫黄の生成の際に還元されていた鉄(II)イオンの酸化が行われ、鉄(III)イオンが生じる。この鉄(III)イオンは、浄化媒体7に含まれる硫化水素の分離に再び用いられる。
【0056】
再生段11に流入する前に、浄化媒体7は、蓄圧器34に供給される。蓄圧器34は、再生の前に、浄化媒体7の脱ガス化に用いられる。蓄圧器34は、吸収装置5と再生段11との間に流体技術的に接続され、浄化媒体7から硫黄元素を分離するために必要な圧力レベルを供給する。
【0057】
蓄圧器34の底部36に接続された排出導管37を通じて、硫黄元素は、浄化媒体7の一部と共に、懸濁液39の形で排出され、分離ユニット41に供給される。吸収装置5内で時間単位当たりに生成される量の硫黄が、プロセスから排出される。ここでは濾過ユニットとして構成された分離ユニット41内では、硫黄が完全に浄化媒体7から分離され、プロセスから除去される。残存する浄化媒体7は、処理装置43に供給され、最後に浄化される。
【0058】
脱ガス化され、懸濁液39の排出によって硫黄が浄化された浄化媒体7は、蓄圧器34を始点として、同様にその底部36において、別の排出導管45を通じて排出され、再生段11にさらに誘導される。そのために、蓄圧器34の排出導管45は、再生段11の供給導管13に流体技術的に接続されている。
【0059】
処理装置43には、さらに、返送導管47が接続されており、返送導管47は、蓄圧器の排出導管45、又は、再生段11の供給導管13に接続されている。それを通じて、処理された浄化媒体7は、再生段11に供給される。
【0060】
再生段11内での、触媒活性成分17の再生の際に生じる排気49は、ガスタービン23の圧縮機21内に返送される。そのために、再生段11には、そのヘッド部15において、排気導管51が接続されており、排気導管51は、圧縮機21の供給導管53に接続されている。排気49は、触媒活性成分17の酸化の際に酸素が枯渇した排気流であり、その後、ガスタービン23の燃焼プロセスを通過する。
【符号の説明】
【0061】
1 装置
3 ガス流
5 吸収装置
7 浄化媒体
8 排出導管
9 排出導管
11 再生段
13 供給導管
15 ヘッド部
17 触媒活性成分
19 酸素含有ガス
21 圧縮機
23 ガスタービン
25 排出導管
27 吸気供給部
29 底部
31 流れ方向
33 流れ方向
34 蓄圧器
35 熱交換器
36 底部
37 排出導管
39 懸濁液
41 分離ユニット
43 処理装置
45 排出導管
47 返送導管
49 排気
51 排気導管
図1