(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記圧力制御対象は、前記サーボモータで駆動される油圧ポンプと、前記油圧ポンプからの作動油で駆動されて被駆動体を駆動する油圧シリンダとで構成される油圧発生機構であり、
前記圧力制御対象に発生する圧力は、前記油圧発生機構における前記作動油の油圧である、
請求項1〜5のいずれか1項に記載のモータ制御装置。
【背景技術】
【0002】
プレス、鍛造、屈曲、圧延、切断、圧着(リベット)等を行う鍛圧機械が知られている。このような鍛圧機械において、一方の型を有するスライド(可動部)と他方の型を有するボルスタ(固定部)とを備え、スライド、又はボルスタ側のダイクッション機構を駆動制御する機械がある。
スライドを駆動制御する場合、鍛圧機械では、一方の型を他方の型に搭載された対象物に接触させ、スライドによって対象物に作用する圧力を一定に制御する圧力制御を行う。
ボルスタ側のダイクッション機構を駆動制御する場合、鍛圧機械では、一方の型が他方の型に搭載された対象物に接触するまでは、スライドを所定のストロークで往復動作させ、ダイクッション機構を待機位置に待機させる。そして、一方の型が対象物に接触した後に、鍛圧機械では、ダイクッション機構をスライドと共に移動させることによって対象物に作用する圧力を一定に制御する圧力制御を行う。
【0003】
このような鍛圧機械において、スライド、又はボルスタ側のダイクッション機構を駆動するボールねじと、ボールねじを駆動するサーボモータとを用い、サーボモータを制御して圧力制御を行うモータ制御装置がある。
【0004】
また、このような鍛圧機械において、スライド、又はボルスタ側のダイクッション機構を駆動する油圧シリンダ及び油圧ポンプで構成される油圧発生機構と、油圧発生機構における油圧ポンプを駆動するサーボモータとを用い、サーボモータを制御して圧力制御を行うモータ制御装置がある(例えば、特許文献1及び2参照)。
油圧ポンプは、サーボモータで駆動され、油圧シリンダに作動油を供給したり、又は油圧シリンダ内の作動油を排出させたりする。これにより、油圧シリンダに供給される作動油の圧力が増減され、油圧シリンダでスライド、又はボルスタ側のダイクッション機構が駆動される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、モータ制御装置では、フィードバック制御において最終的な圧力の偏差を0に漸近させるために、積分(I)制御を含む圧力制御、例えば比例・積分(PI)制御又は比例・積分・微分(PID)制御が用いられる。
ところで、鍛圧機械では、スライドとダイクッション機構との間に弾性特性を有する弾性体が存在する。そのため、積分(I)制御を含む圧力制御において、圧力のオーバーシュート又はアンダーシュートが発生することがある。
特に、圧力制御において、圧力のアンダーシュートが発生すると、成形品の品質が低下したり、機械が故障したりすることがある。例えば、油圧ポンプ(圧力制御対象)として、油圧が負値になると故障してしまう油圧ポンプがある。
【0007】
本発明は、圧力制御対象に発生する圧力のアンダーシュートを低減するモータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明に係るモータ制御装置(例えば、後述のモータ制御装置1)は、圧力制御対象(例えば、後述の油圧発生機構(油圧ポンプ及び油圧シリンダ)5)を駆動するサーボモータ(例えば、後述のサーボモータ2)を制御するモータ制御装置であって、前記圧力制御対象に発生する圧力を制御する圧力制御を行うモータ制御装置において、前記圧力制御対象に発生する圧力を指令する圧力指令を作成する圧力指令部(例えば、後述の圧力指令部20)と、前記圧力制御対象に発生する圧力を検出する圧力検出部(例えば、後述の圧力検出部22)と、前記圧力指令部で作成された圧力指令と前記圧力検出部で検出された圧力とに基づいて、前記圧力制御のための前記サーボモータの速度指令を作成する圧力制御部(例えば、後述の圧力制御部24)と、前記圧力制御部で作成された前記圧力制御のための速度指令に基づいて、前記サーボモータの速度を制御するサーボ制御部(例えば、後述のサーボ制御部)とを備え、前記圧力制御部は積分動作を行い、前記積分動作において圧力を上げる側を積分動作の正方向、圧力を下げる側を負方向と定義したときに、前記積分動作の正方向の上限と負方向の下限との中央値が0よりも大きい。
【0009】
(2) (1)に記載のモータ制御装置において、前記圧力制御部の積分動作の下限は0であってもよい。
【0010】
(3) (1)又は(2)に記載のモータ制御装置において、前記圧力制御部の積分動作の上限は、設定変更可能であってもよい。
【0011】
(4) (3)に記載のモータ制御装置は、速度制御のための前記サーボモータの速度指令を作成する速度指令部(例えば、後述の速度指令部10)と、前記速度指令部で作成された前記速度制御のための速度指令と前記圧力制御部で作成された前記圧力制御のための速度指令との何れかであって、前記圧力制御対象に発生する圧力を下げる方向の速度指令を選択する選択部(例えば、後述の選択部30)とを更に備え、前記サーボ制御部は、前記選択部で選択された速度指令に基づいて、前記サーボモータの速度を制御してもよい。
【0012】
(5) (4)に記載のモータ制御装置において、前記圧力制御部の積分動作の上限は、前記速度制御のための速度指令であってもよい。
【0013】
(6) (1)から(5)のいずれかに記載のモータ制御装置において、前記圧力制御対象は、前記サーボモータで駆動される油圧ポンプと、前記油圧ポンプからの作動油で駆動されて被駆動体を駆動する油圧シリンダとで構成される油圧発生機構(例えば、後述の油圧発生機構5)であり、前記圧力制御対象に発生する圧力は、前記油圧発生機構における前記作動油の油圧であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、圧力制御対象に発生する圧力のアンダーシュートを低減するモータ制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0017】
図1は、本実施形態に係るモータ制御装置の構成を示す図である。
図1に示すように、モータ制御装置1は、例えばプレス機におけるサーボモータ2を制御する。
【0018】
プレス機では、スライド3を所定のストロークで往復動作させてスライド3とボルスタとでワーク(対象物)Wを挟み込み、ボルスタ側のダイクッション機構(以下、被駆動体ともいう)4をスライド3と共に移動させることによってワークWに圧力を作用してワークWを変形させる。
ボルスタ側のダイクッション機構4は油圧発生機構5によって駆動され、油圧発生機構5はサーボモータ2によって駆動される。
【0019】
油圧発生機構5は、油圧ポンプと油圧シリンダとから構成される。油圧ポンプは、サーボモータ2で駆動され、油圧シリンダに作動油を供給したり、又は油圧シリンダ内の作動油を排出させたりする。これにより、油圧シリンダに供給される作動油の圧力が増減され、油圧シリンダでボルスタ側のダイクッション機構4が駆動される。
【0020】
モータ制御装置1は、油圧発生機構(以下、圧力制御対象ともいう)5の油圧ポンプを駆動するサーボモータ2を制御する。その際、モータ制御装置1は、サーボモータ2の速度を制御する速度制御と、油圧発生機構5の作動油の圧力(力)を制御する圧力制御(力制御)との2つの制御を行う。
【0021】
モータ制御装置1は、
図1に示すように、速度指令部10と、圧力指令部20と、圧力検出部22と、圧力制御部24と、選択部30と、サーボ制御部40と、速度検出部42とを備える。
【0022】
速度指令部10は、サーボモータ2の回転速度(換言すれば、被駆動体4の速度)を指令する速度指令(速度制御のための速度指令)を作成する。速度指令部10は、図示しない上位制御装置や外部入力装置等から入力されるプログラムや命令に従って、速度制御のための速度指令を作成する。
【0023】
圧力指令部20は、油圧発生機構5の作動油の圧力(換言すれば、被駆動体4によってワークWに作用する力、更に換言すれば、ワークWによって被駆動体4に作用する圧力)を指令する圧力指令(力指令)(圧力制御のための圧力指令)を作成する。圧力指令部20は、図示しない上位制御装置や外部入力装置等から入力されるプログラムや命令に従って、圧力制御のための圧力指令を作成する。
【0024】
圧力検出部22は、例えば油圧発生機構5に設けられた圧力センサである。圧力検出部22は、油圧発生機構5の作動油の圧力を検出する。油圧発生機構5の作動油の圧力は、被駆動体4によってワークWに作用する力、換言すればワークWによって被駆動体4に作用する圧力に対応するので、圧力検出部22は、被駆動体4に作用する圧力を検出することとなる。検出された圧力は圧力フィードバック(圧力FB)として利用される。
【0025】
圧力制御部24は、圧力指令部20で作成された圧力指令と圧力検出部22で検出された圧力FBとに基づいて、圧力制御のためのサーボモータ2の速度指令を作成する。具体的には、圧力制御部24は、圧力指令部20で作成された圧力指令と圧力検出部22で検出された圧力FBとの圧力偏差を求め、この圧力偏差に積分(I)制御を含む制御、例えば比例・積分(PI)制御又は比例・積分・微分(PID)制御を施し、圧力制御のための速度指令を生成する。
【0026】
ところで、プレス機では、スライド3とダイクッション機構4との間に弾性特性を有する弾性体が存在する。そのため、積分(I)制御を含む圧力制御において、圧力のオーバーシュート又はアンダーシュートが発生することがある。圧力のオーバーシュート又はアンダーシュートが発生すると、成形品の品質が低下したり、機械が故障したりすることがある。例えば、油圧発生機構5の油圧ポンプとして、油圧が負値になると故障してしまう油圧ポンプがある。
また、一般に、積分動作を行う積分器の出力は正値及び負値になり得る。また、サーボモータの駆動信号が正値のみならず負値になり得る。しかし、上述したように、油圧発生機構5の油圧ポンプとして、油圧が負値になると故障してしまう油圧ポンプがある。このような油圧ポンプでは、油圧を常に正値に保つ必要がある。
【0027】
この点に関し、本実施形態では、圧力制御部24の積分動作において圧力を上げる側を積分動作の正方向、圧力を下げる側を負方向と定義したときに、
図3に示すように、圧力制御部24の積分動作の正方向の上限Vuと負方向の下限Vlとの中央値Vc(Vc=(Vu+Vl)/2)が0よりも大きく設定される。これにより、油圧発生機構5の油圧ポンプに発生する圧力のアンダーシュートを抑制することができる。
更に、圧力制御部24の積分動作の下限Vlは0に設定される。これにより、油圧発生機構5の油圧ポンプに発生する圧力のアンダーシュートを更に抑制し、油圧発生機構5の油圧ポンプの圧力が負値になることを避けることができる。そのため、油圧発生機構5の油圧ポンプの故障を避けることができる。
【0028】
また、圧力制御部24の積分動作の上限Vuは、速度制御のための速度指令に設定される。これにより、油圧発生機構5の油圧ポンプに発生する圧力のオーバーシュートを抑制することができ、油圧発生機構5の油圧ポンプに過剰な圧力が発生することを避けることができる。そのため、油圧発生機構5の油圧ポンプの故障を避けることができる。
【0029】
選択部30は、速度制御と圧力制御とのいずれかを選択することにより、速度制御と圧力制御とを切り換える。具体的には、選択部30は、速度指令部10で作成された速度制御のための速度指令と圧力制御部24で作成された圧力制御のための速度指令とを比較して、いずれか小さい方を選択する。これにより、選択部30は、油圧発生機構5の作動油の圧力を下げる方向の速度指令を選択することとなる。
【0030】
速度検出部42は、例えばサーボモータ2に設けられたエンコーダである。速度検出部42は、サーボモータ2の回転速度を検出する。サーボモータ2の回転速度は被駆動体4の速度に対応するので、速度検出部42は、被駆動体4の速度を検出することとなる。検出された速度は速度フィードバック(速度FB)として利用される。
【0031】
サーボ制御部40は、選択部30で選択された速度指令と速度検出部42で検出された速度FBとに基づいてサーボモータ2のトルク指令を生成し、生成したトルク指令に基づいてサーボモータ2の駆動電流を生成する。例えば、サーボ制御部40は、選択部30で選択された速度指令と速度検出部42で検出された速度FBとの速度偏差を求め、この速度偏差にPI制御を施し、トルク指令を作成する。
【0032】
モータ制御装置1は、例えば、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field−Programmable Gate Array)等の演算プロセッサで構成される。モータ制御装置1の各種機能(速度指令部10、圧力指令部20、圧力制御部24、選択部30、及び、サーボ制御部40)は、例えば記憶部に格納された所定のソフトウェア(プログラム)を実行することで実現される。モータ制御装置1の各種機能は、ハードウェアとソフトウェアとの協働で実現されてもよいし、ハードウェア(電子回路)のみで実現されてもよい。
【0033】
次に、
図4を参照して、本実施形態のモータ制御装置1の動作について説明する。
図4は、本実施形態に係るモータ制御装置1のタイミングチャートを示す図である。
図4における1段目のタイミングチャートは、スライド3の位置(破線)及びボルスタ側のダイクッション機構4の位置(実線)を示す。
図4における2段目のタイミングチャートは、圧力検出部22からの圧力フィードバック(実線)(換言すれば、油圧発生機構5の作動油の圧力、更に換言すれば、ダイクッション機構4によってワークWに作用する力)を示す。この2段目のタイミングチャートには、圧力指令部20で作成された圧力制御のための圧力指令(一点鎖線)も示されている。
図4における3段目のタイミングチャートは、圧力制御部24で作成された圧力制御のための速度指令(実線)を示す。この3段目のタイミングチャートには、速度指令部10で作成された速度制御のための速度指令(一点鎖線)も示されている。
図4における4段目のタイミングチャートは、圧力制御部24の積分器の出力(実線)を示す。この4段目のタイミングチャートにも、速度指令部10で作成された速度制御のための速度指令(一点鎖線)が示されている。
なお、
図4における2〜4段目には、比較のために、圧力制御部24の積分動作において上限及び下限を設けない場合の、圧力フィードバック(破線)、圧力制御のための速度指令(破線)、圧力制御部24の積分器の出力(破線)がそれぞれ示されている。
(ワークWに圧力を加えるとき)
まず、スライド3を所定のストロークで往復動作させ、ワークWを搭載するボルスタ側のダイクッション機構4を待機位置に待機させる。スライド3とダイクッション機構4との接触により生じる圧力により、ワークWは加工される。
【0034】
ダイクッション機構4には、速度指令部10により作成される速度制御のための速度指令と、圧力指令部20によってワークWを加工する圧力制御のための圧力指令とのいずれか一方が指令される。ダイクッション機構4は通常、スライド3に対して下側(地面側)に設置され、速度指令は鉛直上向きを正値として指令される。鉛直上向きへの移動を指令されたダイクッション機構4は、機械的なストッパにより待機位置に待機させられる。
【0035】
スライド3がボルスタ側のダイクッション機構4上のワークWに接触するとき(時刻t1)、油圧発生機構5の作動油の圧力は所定の圧力に保持されており、圧力指令は油圧ポンプの所定の圧力よりも大きい(2段目のタイミングチャート)。
圧力制御部24は、圧力指令と圧力FBとの圧力偏差に基づいて、積分動作を含む制御、例えば、比例・積分制御(PI制御)や比例・積分・微分制御(PID制御)を行う。
このとき、圧力FBは所定の圧力であり、圧力制御部24で作成される圧力制御のための速度指令であって、圧力指令と圧力FBとの圧力偏差に基づく圧力制御のための速度指令は、速度制御のための速度指令よりも大きい(3段目のタイミングチャート)。すなわち、速度制御のための速度指令が、油圧発生機構5の作動油の圧力を下げる方向の速度指令である。これにより、選択部30は、速度制御のための速度指令を選択している。
このとき、待機位置に待機させられているダイクッション機構4に対しスライド3が押し込み動作を行い、ワークWに作用する力(すなわち、被駆動体4に作用する圧力)は上昇する(2段目のタイミングチャート)。
【0036】
また、油圧発生機構5の作動油の圧力、すなわち圧力FBが次第に上昇し、圧力制御部24で生成される圧力制御のための速度指令であって、圧力指令と圧力FBとの圧力偏差に基づく圧力制御のための速度指令は次第に低下する(3段目のタイミングチャート)。そして、圧力制御のための速度指令が速度制御のための速度指令よりも小さくなるとき、すなわち、圧力制御のための速度指令が油圧発生機構5の作動油の圧力を下げる方向の速度指令となるとき、選択部30は、速度制御のための速度指令から圧力制御のための速度指令に切り換える。
これにより、モータ制御装置1は、ボルスタ側のダイクッション機構4をスライド3と共に移動させ、ワークWに作用する力(すなわち、被駆動体4に作用する圧力)を一定に制御する圧力制御を行う(時刻t3)。
【0037】
ところで、鍛圧機械では、スライド3とダイクッション機構4との間に弾性特性を有する弾性体が存在する。この弾性体の弾性特性が理想的な弾性特性であると仮定し、圧力制御部24が積分(I)制御を含まない圧力制御、例えば比例(P)制御あるいは比例・微分(PD)制御を行う場合、圧力制御中に圧力指令がステップ状に変化しても圧力FBのオーバーシュートは発生しない。一方、最終的な圧力の偏差を0に漸近させるため、一般には、圧力制御部24は積分(I)制御を含む圧力制御、例えば比例・積分(PI)制御、あるいは比例・積分・微分(PID)制御を行う。このような積分(I)制御を含む圧力制御では、圧力FBのオーバーシュートが発生し得る(2段目のタイミングチャートの破線、時刻t3近傍)。
【0038】
この点に関し、本実施形態のモータ制御装置1は、
図3に示すように圧力制御を行う際に、圧力制御部24の積分動作の出力の上限値Vuを速度制御のための速度指令に制限する。これにより、圧力制御部24の積分動作は圧力を増加させる途中で停止する(4段目のタイミングチャートの時刻t2)。積分動作停止後は積分動作を行わない制御特性に近づき、オーバーシュートが抑制される(2段目のタイミングチャートの実線、時刻t3近傍)。このため、油圧発生機構5の油圧ポンプに過剰な圧力が発生することを避けることができる。
【0039】
(ワークWに加えた圧力を開放するとき)
次に、スライド3の移動方向が反転する(時刻t5)。
このとき、速度指令部10によって速度制御のための速度指令が既に変更(増加)されている。
モータ制御装置1は、ボルスタ側のダイクッション機構4をスライド3と共に反対方向に移動させ、ワークWに作用する力(すなわち、被駆動体4に作用する圧力)を減少させる圧力制御を行う。
このとき、圧力指令が一定であるのに対して圧力FBは減少するため(2段目のタイミングチャート)、圧力制御部24で生成される圧力制御のための速度指令であって、圧力指令と圧力FBとの圧力偏差に基づく圧力制御のための速度指令は増加する(3段目のタイミングチャート)。
【0040】
その後、圧力FBは所定の圧力まで低下する。
このとき、圧力制御部24が積分(I)制御動作を含む圧力制御、例えば比例・積分(PI)制御、あるいは比例・積分・微分(PID)制御を行う場合、圧力FBのアンダーシュートが発生し得る(2段目のタイミングチャートの破線、時刻t6近傍)。
この点に関し、本実施形態では、
図3に示すように圧力制御を行う際に、圧力制御部24の積分動作の出力の下限値Vlは0以上に制限される。換言すれば、圧力制御部24の積分動作の正方向の上限Vuと負方向の下限Vlとの中央値Vc(Vc=(Vu+Vl)/2)が0よりも大きく設定される。これにより、圧力制御部24の積分動作は圧力を減少させる途中で停止する(4段目のタイミングチャートの時刻t5)。積分動作停止後は積分動作を行わない制御特性に近づき、アンダーシュートが抑制される(2段目のタイミングチャートの実線、時刻t6近傍)。このため、油圧発生機構5の油圧ポンプの圧力が負値になることを避けることができる。換言すれば、圧力制御部24の積分動作の出力は常に正値となり、サーボモータ2の駆動信号を常に正値に保つことができ、油圧ポンプの油圧を正値に保つことができる。
【0041】
その後、スライド3がボルスタ側のダイクッション機構4上のワークWから離反すると(時刻t7)、ワークWを搭載するボルスタ側のダイクッション機構4を待機位置に待機させ、スライド3が所定位置まで戻る。
【0042】
以上説明したように、本実施形態のモータ制御装置1によれば、圧力制御部24の積分動作において圧力を上げる側を積分動作の正方向、圧力を下げる側を負方向と定義したときに、圧力制御部24の積分動作の正方向の上限と負方向の下限との中央値が0よりも大きい。これにより、油圧発生機構5の油圧ポンプに発生する圧力のアンダーシュートを低減することができる。
また、本実施形態のモータ制御装置1によれば、圧力制御部24の積分動作の下限は0である。これにより、油圧発生機構5の油圧ポンプに発生する圧力のアンダーシュートを更に低減し、油圧発生機構5の油圧ポンプの圧力が負値になることを避けることができる。換言すれば、圧力制御部24の積分動作の出力は常に正値となり、サーボモータ2の駆動信号を常に正値に保つことができる。そのため、油圧発生機構5の油圧ポンプの圧力を常に正値に保つことができる。そのため、油圧発生機構5の油圧ポンプの故障を回避することができる。
【0043】
また、本実施形態のモータ制御装置1によれば、圧力制御部24の積分動作の上限は、速度制御のための速度指令である。これにより、油圧発生機構5の油圧ポンプに発生する圧力のオーバーシュートを低減することができ、油圧発生機構5の油圧ポンプに過剰な圧力が発生することを避けることができる。そのため、油圧発生機構5の油圧ポンプの故障を回避することができる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更及び変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、速度制御と圧力制御とを行うモータ制御装置を例示したが、本発明の特徴は、
図2に示すように圧力制御のみを行うモータ制御装置にも適用可能である。
【0045】
また、本発明の特徴は、位置制御と圧力制御とを行うモータ制御装置にも適用可能である。例えば、
図1に示すモータ制御装置において、速度指令部10に代えて位置指令部と位置制御部とを備える。
位置指令部は、サーボモータ2の回転位置(換言すれば、被駆動体4の位置)を指令する位置指令(位置制御のための位置指令)を作成する。位置指令部は、図示しない上位制御装置や外部入力装置等から入力されるプログラムや命令に従って、位置制御のための位置指令を作成する。
位置制御部は、位置指令部で作成された位置指令と位置検出部(例えば、サーボモータ2に設けられたエンコーダ)42で検出された位置FBとに基づいて、位置制御のためのサーボモータ2の速度指令を作成する。具体的には、位置制御部は、位置指令部で作成された位置指令と位置検出部42で検出された位置FBとの位置偏差を求め、この位置偏差にPI制御を行い、位置制御のための速度指令を生成する。
選択部30は、位置制御と圧力制御とのいずれかを選択することにより、位置制御と圧力制御とを切り換える。具体的には、選択部30は、位置制御部で作成された位置制御のための速度指令と圧力制御部24で作成された圧力制御のための速度指令とを比較して、いずれか小さい方を選択する。これにより、選択部30は、油圧発生機構5の作動油の圧力を下げる方向の速度指令を選択することとなる。
【0046】
また、上述した実施形態では、ボルスタ側のダイクッション機構4を駆動するモータ制御装置を例示したが、本発明の特徴は、ボルスタを固定としスライド3を駆動するモータ制御装置にも適用可能である。
【0047】
また、上述した実施形態では、スライド3、又はボルスタ側のダイクッション機構4を駆動する油圧シリンダ及び油圧ポンプで構成される油圧発生機構5と、油圧発生機構5における油圧ポンプを駆動するサーボモータ2とを用い、サーボモータ2を制御して圧力制御を行うモータ制御装置を例示したがこれに限定されない。例えば、本発明の特徴は、スライド3、又はボルスタ側のダイクッション機構4を駆動するボールねじと、ボールねじを駆動するサーボモータ2とを用い、サーボモータ2を制御して圧力制御を行うモータ制御装置にも適用可能である。
この場合、モータ制御装置は、圧力制御対象を被駆動体(スライド3、又はボルスタ側のダイクッション機構4)とし、圧力制御対象に発生する圧力として、被駆動体に作用する圧力(すなわち、ワークWに作用する力)を制御すればよい。
この形態でも、圧力制御部24の積分動作において圧力を上げる側を積分動作の正方向、圧力を下げる側を負方向と定義したときに、
図5に示すように、圧力制御部24の積分動作の正方向の上限Vuと負方向の下限Vlとの中央値Vc(Vc=(Vu+Vl)/2)が0よりも大きく設定されればよい。換言すれば、油圧発生機構5の油圧ポンプに発生する圧力を下げる負方向の速度指令を作成するときの圧力制御部24の積分動作の出力の絶対値の最大値|Vl|は、油圧発生機構5の油圧ポンプに発生する圧力を上げる正方向の速度指令を作成するときの圧力制御部24の積分動作の出力の絶対値の最大値|Vu|よりも小さく設定されればよい。これにより、圧力制御対象に発生する圧力のアンダーシュートを低減することができる。
【0048】
また、上述した実施形態では、圧力制御部24の積分動作の上限Vuは、速度制御のための速度指令に設定されたが、使用状況に応じて設定変更可能であってもよい。例えば、圧力制御対象に発生する圧力のオーバーシュートの抑制が求められる場合には、上述したように圧力制御部24の積分動作の上限Vuを速度制御のための速度指令に設定し、圧力制御の応答性が求められる場合には、圧力制御部24の積分動作の上限Vuを速度制御のための速度指令よりも大きく設定してもよい。圧力制御部24の積分動作の上限Vuの設定は、例えば図示しない上位制御装置や外部入力装置等からの命令に基づいて行われればよい。