(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6592123
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】複数の独立して制御可能なゾーン及び内部バスバーを有するエレクトロクロミックデバイス
(51)【国際特許分類】
G02F 1/155 20060101AFI20191007BHJP
【FI】
G02F1/155
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-17481(P2018-17481)
(22)【出願日】2018年2月2日
(62)【分割の表示】特願2015-561319(P2015-561319)の分割
【原出願日】2013年7月22日
(65)【公開番号】特開2018-120222(P2018-120222A)
(43)【公開日】2018年8月2日
【審査請求日】2018年2月20日
(31)【優先権主張番号】13/790,167
(32)【優先日】2013年3月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504416080
【氏名又は名称】セイジ・エレクトロクロミクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100188857
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 智文
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・ディー・グリア
【審査官】
堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0260961(US,A1)
【文献】
実開平02−134519(JP,U)
【文献】
特表2004−537755(JP,A)
【文献】
特開平08−253076(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0200908(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/15 − 1/163
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のエレクトロクロミックゾーン、第2のエレクトロクロミックゾーンおよび第3のエレクトロクロミックゾーンを含み、かつ、第1の側および前記第1の側と反対の第2の側を有する基材であって、
前記第2のエレクトロクロミックゾーンは、前記第1および前記第3のエレクトロクロミックゾーンの間に配され、
前記第1、前記第2および前記第3のエレクトロクロミックゾーンのそれぞれは、前記基材の前記第1の側に隣接する第1の側、および、前記基材の前記第2の側に隣接する第2の側を有し、
前記第1、前記第2および前記第3のエレクトロクロミックゾーンは、独立して制御可能である、前記基材と、
前記第1および前記第2のエレクトロクロミックゾーンの前記第1の側に沿って、前記第1および前記第2のエレクトロクロミックゾーンと電気的に接続された第1の共通バスバーである第1のバスバーであって、前記第1のバスバーは、前記基材の前記第1の側に沿って、前記第1および前記第2のエレクトロクロミックゾーンに延在する長さを有し、かつ、前記第3のエレクトロクロミックゾーンと電気的に接続されない、前記第1のバスバーと、
前記第2および前記第3のエレクトロクロミックゾーンの前記第2の側に沿って、前記第2および前記第3のエレクトロクロミックゾーンと電気的に接続された第2の共通バスバーである第2のバスバーであって、前記第2のバスバーは、前記基材の前記第2の側に沿って、前記第2および前記第3のエレクトロクロミックゾーンに延在する長さを有し、かつ、前記第1のエレクトロクロミックゾーンと電気的に接続されない、前記第2のバスバーと、
を含む、エレクトロクロミックデバイス。
【請求項2】
第1の導線および前記第1の導線を前記第1のバスバーに電気的に接続する第1のはんだタブと、
第2の導線および前記第2の導線を前記第2のバスバーに電気的に接続する第2のはんだタブと、
をさらに含む、請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項3】
前記第1のエレクトロクロミックゾーンの前記第2の側に沿って、前記第1のエレクトロクロミックゾーンと電気的に接続された第3のバスバーをさらに含み、前記第1のエレクトロクロミックゾーンは、前記第3のバスバーに電気的に接続された前記基材上で唯一のエレクトロクロミックゾーンである、請求項1に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項4】
前記第3のエレクトロクロミックゾーンの前記第1の側に沿って、前記第3のエレクトロクロミックゾーンと電気的に接続された第4のバスバーをさらに含む、請求項3に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項5】
第1の導線および前記第1の導線を前記第1のバスバーに電気的に接続する第1のはんだタブと、
第2の導線および前記第2の導線を前記第2のバスバーに電気的に接続する第2のはんだタブと、
第3の導線および前記第3の導線を前記第3のバスバーに電気的に接続する第3のはんだタブと、
第4の導線および前記第4の導線を前記第4のバスバーに電気的に接続する第4のはんだタブと、
をさらに含み、
前記第3のエレクトロクロミックゾーンは、前記第4のバスバーに電気的に接続された前記基材上で唯一のエレクトロクロミックゾーンであり、
前記第1、前記第2および前記第3のエレクトロクロミックゾーンは、前記基材上で同一平面上に配される、請求項4に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項6】
前記第1、前記第2および前記第3のエレクトロクロミックゾーンは、前記基材上の単一のエレクトロクロミックコーティングから形成されている、請求項1乃至5の何れか1項に記載のエレクトロクロミックデバイス。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載のエレクトロクロミックデバイスを備える、絶縁ガラスユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2012年2月28日に出願された米国特許出願13/407,106の一部である、2013年3月8日に出願された米国特許出願第13/790,167号の継続出願であり、その内容は本明細書で引用されて本明細書に盛り込まれている。
【背景技術】
【0002】
エレクトロクロミックデバイスは、電位の印加に応答して着色等の光学特性を変化させることが知られているエレクトロクロミック材料を含み、それによりデバイスの透明度を増減又は反射率を増減させる。一般的な従来技術のエレクトロクロミックデバイスは、対向電極層、対向電極層に実質的に平行に配置されたエレクトロクロミック材料層、及び対向電極層をエレクトロクロミック層から分離するイオン導電性層をそれぞれ備える。更に、2つの透明導電層はそれぞれ対向電極層及びエレクトロクロミック層に実質的に平行で、及び接触している。対向電極層、エレクトロクロミック材料層、イオン導電層、及び導電層を形成するための材料は知られており、例えば米国特許出願第2008/0169185号に記載され、引用されて本明細書に組み込まれており、またそれらは望ましくは実質的に透明酸化物又は窒化物である。例えばそれぞれの導電層を低電圧電源へ接続させることにより電位がエレクトロクロミックデバイスの積層構造の両端に印加される場合、対向電極層に蓄積されたLi+イオン等のイオンは対向電極層からイオン導電体層を通ってエレクトロクロミック層に流れる。更に、電子は対向電極層から低電圧電源を含む外部回路を回ってエレクトロクロミック層へ流れ、対向電極層及びエレクトロクロミック層内の電荷の中性を維持する。イオン及び電子のエレクトロクロミック層への移動は、エレクトロクロミック層の光学的特性、及び任意に相補的なECデバイスの対向電極層を変化させ、それにより着色、及び従ってエレクトロクロミックデバイスの透明性を変化させる。
【0003】
図1A及び1Bは、一般的な従来技術のエレクトロクロミックデバイス20の、それぞれ平面図及び断面図を示す。デバイス20は、ガラスなどの基材34上に形成された分離された透明導電層領域26A及び26Bを含む。更に、デバイス20は、対向電極層28、イオン導電層32、エレクトロクロミック層30及び透明導電層24を含み、それらは導電層26の領域上に順次配置されている。デバイス20のエレクトロクロ層及び対向電極層の相対的な位置は交換できると理解されるべきである。更に、デバイス20は導電層領域26Aとだけ接触しているバスバー40、並びに導電層領域26B上に形成され、及びに導電層24と接触しているバスバー42を含む。導電層領域26Aは、導電層領域26B及びバスバー42から物理的に分離され、並びに導電層24はバスバー40から物理的に分離されている。エレクトロクロミックデバイスは、例えば湾曲した面を含むなど様々な形状を有してもよいが、例示的で典型的なデバイス20は、バスバー40及び42を有する長方形のデバイスであり、これらのバスバーはデバイス20のそれぞれ反対側の25、27に隣接して互いに平行に延び、及びに互いに距離W分離されている。更に、バスバー40及び42はそれぞれ低電圧電源22の正端子及び負端子に導線で接続されている(導線及び電源22は共に「外部回路」を構成する)。
【0004】
図1A及び1Bを参照すると、電源22がバスバー40、42との間に電位を印加するように操作される場合、電子、従って電流はバスバー42から透明導電層24を横切ってエレクトロクロミック層30に流れる。更に、多くの薄膜ECデバイスの場合と同様に、イオン導電層32が不完全な電子絶縁体である場合、一般にリーク電流と呼ばれる微小電流は、バスバー42から導電層24及びエレクトロクロミック層30を介してイオン導電層32へ流れ込む。更に、イオンは、対向電極層28からイオン導電層32を介してエレクトロクロミック層30へ流れ、電子が対向電極層28から抽出され、そして外部回路を介してエレクトロクロミック層30に挿入されることによって電荷バランスは維持される。電流がバスバー42から導電層24を横切ってバスバー40に向かって流れるので、電圧は一般的に約10〜20オーム/□である導電層24の有限のシート抵抗によって低下する。更に、電流は層30、32及び28(「スタック」)の組み合わせを通って引き入れられてデバイス20内にエレクトロクロミック着色を引き起こすので、導電層24を横切って流れる電流は徐々に減少する。
【0005】
その結果、バスバー40と42との間に配置された連続して隣接した、及び透明導電層24と導電層領域26Bとの間に延在するセグメントからデバイス20が形成されると考えられるならば、電流の大部分はスタックを通って下方に流れるので、バスバー40に最も近い導電層24のセグメントにおけるスタックを流れる電流の量は、ゼロに近いであろうと考えられる。透明導電層24のシート抵抗はバスバー40と42との間で実質的に均一であると仮定すると、バスバー40と42との間に延在する透明導電層24の両端の電圧降下は、デバイス20の各連続するセグメントを通って流れる電流に比例するであろう。従って、バスバー42からの距離に対する透明導電層の電圧降下率は、バスバー42に最も近い位置で最大で及びバスバー40の近傍で実質的にゼロであろう。デバイス20の連続するセグメントからの寄与の結果として、導電層領域26Aにおいてデバイス20を横切って流れる電流はバスバー40からバスバー42まで増加するという点で、バスバー40から導電層領域26Aを横切ってバスバー42へ向かって流れる電流に関して、実質的に鏡像の電流の流れが生じる。バスバー40と42との間のデバイスの幅にわたる導電層24と導電層領域26Aとの電圧プロファイル間の差は、バスバー40と42との間に延在するエレクトロクロミックデバイスの幅にわたる導電層24と導電層領域26Aとの間の電位差である。
【0006】
電位差は各々のセグメントを通って対向電極層28からエレクトロクロミック層30へ流れる電流の最大速度を決定し、デバイス20を着色状態に変換し、及び従ってデバイス20の着色をもたらす。リチウムイオン及び電子の形で条件を満たす電荷の供給準備があるのならば、電流はデバイスのセグメントの両端の電位差に比例した割合で流れる。その最終結果として、最初に不均一な着色が引き起こされ、透明導電体間の電位差が最大であるバスバーに最も近い領域で、デバイスの中央の領域よりも速く着色することになる。リーク電流の全くない理想的なデバイスでは、エレクトロクロミックデバイスは完全に着色された状態になるにつれて、最初はバスバーに最も近くでそしてデバイスの中央において対向電極の使用可能な電荷の供給が使い果たされるので、この不均一性は均一になり、それにより、デバイスの全領域にわたって均一な着色を生じるであろう。
【0007】
最初に電圧がエレクトロクロミックデバイス20のバスバー40、42間に印加された後、デバイス20を流れる電流がゼロに向かって低下し、従って、各々の透明導電層間の電圧降下もゼロに近づく。しかし、バスバー40と42との間に延在するエレクトロクロミックデバイス20の幅にわたる導電層24と導電層領域26Aとの間の電圧が、完全に着色状態において、おおよその印加電圧等の一定値に等しくなるか又は実質的に等しくなり、それにより最終的にエレクトロクロミックデバイス20に比較的均一な着色を生じるか否かは、電流が流れるバスバー40と42との間に延在するエレクトロクロミックデバイス20の導電層24及び導電層領域26Aの幅並びにデバイスを通るリーク電流の大きさに部分的に依存する。
【0008】
デバイス20と同様の構成を有する大型のエレクトロクロミックデバイスでは、電流が対向するバスバー間のエレクトロクロミックデバイスの導電層にわたって、例えば約40インチを超えるような比較的大きな距離を流れ、対向するバスバーから延在する導電層の幅にわたってスタック間で不均一な電圧降下が発生するので、完全に着色する場合においてもデバイスの不均一な着色が持続する場合がある。この不均一な電圧降下は、スタックの層が薄膜構成のためエレクトロクロミックデバイスで一般的に存在するデバイスを通るリーク電流の影響によって引き起こされる。リーク電流は、電位差の変動がバスバーとバスバーとの間に延在するエレクトロクロミックデバイスの幅にわたって生成されるように、スタックを通って流れる。リーク電流が非常に大きい場合には、電位差の変化は十分に大きくなり、エレクトロクロミックデバイス内に肉眼で見ることができる場合がある不均一な着色を引き起こす。エレクトロクロミックデバイス内の不均一な着色の結果として、一般的にはバスバー近傍のエレクトロクロミックデバイスの領域よりも、対向するバスバー間の中間の領域(「中間領域」)付近でより明るい領域が生じる。換言すると、エレクトロクロミックデバイスの中間領域はエレクトロクロミックデバイスの両側のバスバーに近い領域と同じ色に変化できない、又は同じ程度の暗色化を受けない若しくは暗色化に一貫性がない。
【0009】
また、デバイス20と同様に構成されたエレクトロクロミックデバイスが例えば2.5Vと4.0Vとの間の通常の動作電圧で動作する場合、リーク電流は、50〜500mA/m2程度であり、対向するバスバー間の距離が少なくとも約30インチである場合に、エレクトロクロミックデバイス中の不均一な着色が肉眼で見えるようになる場合があることが観察されている。一般的なリーク電流のレベルでは、エレクトロクロミックデバイスが完全に着色した状態にあり約30インチ未満のバスバー間隔を有する場合、着色の不均一性は肉眼ではすぐには分からない。
【0010】
図1Aを参照すると、バスバー40、42をデバイス20の側面25、27の非常に近くに配置して、バスバー40と42との間にあり、従って着色が制御できるデバイス20の領域を最大化することが非常に望ましい。また、デバイス20の側面付近にバスバーを配置することによって、一般的に約0.25インチ以下の厚さを有するバスバーは、見えないか又はかろうじて見えるので、デバイスが一般的な窓枠に設置される場合に審美的に心地よい。一般的にはデバイスの両側にあるバスバー間の距離が約40インチを超える大型のエレクトロクロミックデバイスは、オフィスビルの窓又は車のフロントガラスなどの多くの用途に望ましい。従って、このような大型のエレクトロクロミックデバイスの動作において、不均一な着色は、上述のようにリーク電流の影響により生じる場合があり、そしてそれは好ましくない。
【0011】
また、デバイス20に類似した大型のエレクトロクロミックデバイスにおいて、対向するバスバーに隣接するデバイスの領域が、バスバー間の中間領域よりもより色を早く変化する又は暗くなることが観察されている。更に、これらの同じ大型のエレクトロクロミックデバイスは、対向するバスバー間の距離がより短いエレクトロクロミックデバイスより透過状態(又は色)をよりゆっくりと変化させる場合があることが観察されている。この現象は、デバイスが大きいほど引き込まれる電流がより大きく、それゆえ透明導電体層において電圧降下がより大きくなり、それにより対向するバスバー間の幅がより小さいエレクトロクロミックデバイスに対してスタックに印加される正味の電位が低くなることに起因する。また、着色の変化が遅いことの1つは、最大レベル未満、例えば3Vの電圧をエレクトロクロミックデバイスへの印加することに基づいており、これによりスタックの層に損傷を与える可能性があるバスバー近傍のエレクトロクロミックデバイスの過負荷を回避できる。
【0012】
例えば、約6インチ離れて対向するバスバーを有するデバイス20と同様の従来技術のエレクトロクロミックデバイスの場合、デバイスが完全な透過状態(完全に透明)から光の5%だけがデバイスを通って透過される着色状態へ変化する一般的な時間は100秒であるが、約30インチ離れているバスバーを有するデバイス20と同様のエレクトロクロミックデバイスの場合、同じ着色変化を得るための一般的な時間は約400秒である場合がある。
【0013】
米国特許公開第2011/0260961号は3つのバスのエレクトロクロミックデバイスを開示するが、形成された2つのゾーンは独立して制御できない。
【0014】
米国特許公開第2009/0323160号は、2つの隣接するダイナミックエレクトロクロミックゾーンの間に2つの隣接するダイナミックエレクトロクロミックゾーンを電気的に分離する領域を備える、ゾーン分けされたエレクトロクロミックデバイスを開示している。言い換えれば、この公開公報は完全に分離されたエレクトロクロミックデバイスを開示している。
【発明の概要】
【0015】
本発明の一態様では、複数の独立して制御可能なエレクトロクロミックゾーンを備える基材であり、エレクトロクロミックゾーンの各々は、共通の連続するバスバーを共有する。一実施形態では、エレクトロクロミックゾーンは互いに完全には分離されていない。別の実施形態では、エレクトロクロミックゾーンのそれぞれは、同一の表面積を有す。別の実施形態では、エレクトロクロミックゾーンの各々は、異なる表面積を有す。いくつかの実施形態では、基材は積層体である。いくつかの実施形態では、エレクトロクロミックゾーンは、混合タングステン−ニッケル酸化物を含む少なくとも1つの薄膜を備える。
【0016】
別の実施形態では、基材は3つのバスバーを備える。別の実施形態では、3つのバスバーは、内部バスバーが第1の端部バスバーと第2の端部バスバーとの間に挟まれるように配置されている。別の実施形態では、第1のエレクトロクロミックゾーンは内部バスバーと第1の端部バスバーとの間の空間によって定義され、第2のエレクトロクロミックゾーンは内部バスバーと第2の端部バスバーとの間の空間によって定義される。別の実施形態では、エレクトロクロミックゾーンは、基材上の単一のエレクトロクロミックコーティングから形成される。別の実施形態では、3つのバスバーが互いに実質的に平行である。別の実施形態では、3つのバスバーは実質的に基材の長さに延在しており、3つのバスバーの各々はほぼ同じ大きさである。いくつかの実施形態では、基材は積層体である。いくつかの実施形態では、エレクトロクロミックゾーンは、混合タングステン−ニッケル酸化物を含む少なくとも1つの薄膜を備える。
【0017】
別の実施形態では、エレクトロクロミックゾーンは、基材上の単一のエレクトロクロミックコーティングから形成され、単一のエレクトロクロミックコーティングはカットされ、個々のエレクトロクロミックゾーンを形成する。別の実施形態では、基材は第1のバスバー及び第2のバスバーを備え、第1のバスバーは各々のエレクトロクロミックゾーンにわたって連続的に延在している。別の実施形態では、第2のバスバーは単一のバスバーから形成され、カットされて個々のバスバーセグメントを形成し、各々のバスバーセグメントは1つのエレクトロクロミックゾーンに対応する。
【0018】
更に別の実施形態では、両方のバスバーは複数のセグメントにカットされるが、別の場所では複数のエレクトロクロミックゾーンを作成する。これは、各々のバスバーを2つのセグメントにカットすることにより、3つのゾーンのデバイスを作製する際に特に有用であると考えられる。しかし、これは、3つのゾーンのデバイスだけに限定されるものではない(例えば、2つのゾーンのデバイス又は4つ以上のゾーンを有するデバイスにも適用することができる)。いくつかの実施形態では、エレクトロクロミックゾーンは、混合タングステン−ニッケル酸化物を含む少なくとも1つの薄膜を備える。いくつかの実施形態では、エレクトロクロミックゾーンは、積層体の基材上に配置される。
【0019】
別の実施形態では、基材は、ガラス、プラスチック、及び同じ又は異なる材料の2つの積層体からなる群から選択される。別の実施形態では、基材は、窓ガラスや窓アセンブリである。別の実施形態では、基材は断熱ガラスユニットの一部である。
【0020】
別の実施形態では、複数のエレクトロクロミックゾーンの各々は、エレクトロクロミック層又は対向電極層の一方を備える第1の電極と、エレクトロクロミック層又は対向電極層の他方を備える第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間でイオンを伝導するためのイオン導電体層と、第1の導電層と、及び第2の導電層と、を備え、第1及びに第2の電極並びにイオン導電体層は第1の及び第2の導電層の間に挟まれている。
【0021】
本発明の別の態様では、複数のエレクトロクロミックゾーンを有する基材を形成する方法であって、その方法は、(1)基材上にエレクトロクロミックコーティングを配置させることと、(2)エレクトロクロミックコーティングから複数のエレクトロクロミックゾーンを形成するためにエレクトロクロミックコーティング上に複数のバスバーを配置させることと、を備え、形成された複数のエレクトロクロミックゾーンは、少なくとも1つの共通の連続するバスバーを共有する。一実施形態では、方法は、少なくとも3つのバスの間隔が少なくとも2つのエレクトロクロミックゾーンを形成するように少なくとも3つのバスバーを配置させることを含む。別の実施形態では、エレクトロクロミックコーティングをカットして2つのエレクトロクロミックゾーンを形成する。
【0022】
本発明の別の態様は、マルチゾーンエレクトロクロミックデバイスの制御方法である。
【0023】
本発明の別の態様では、マルチゾーンエレクトロクロミックデバイス、又はマルチゾーンエレクトロクロミックデバイスを備えるIGUを車両や建物に設置する方法である。
【0024】
本発明の一態様では、複数の独立して制御可能なエレクトロクロミックゾーン及び少なくとも2つのバスバーを備えた基材であり、各々のバスバーはセグメント化され、少なくとも2つの隣接したエレクトロクロミックゾーンは、バスバーの少なくとも1つの連続する部分を共有する。いくつかの実施形態では、基材は積層体である。いくつかの実施形態では、エレクトロクロミックゾーンは、混合タングステン−ニッケル酸化物を含む少なくとも1つの薄膜を備える。
【0025】
本発明の別の態様では、少なくとも3つの独立した制御可能なエレクトロクロミックゾーンを含む基材であり、エレクトロクロミックゾーンが順次配置され、任意の多くて2つの隣接するエレクトロクロミックゾーンは、バスバーの少なくとも1つの連続する部分を共有する。いくつかの実施形態では、基材は、3つの独立した制御可能なエレクトロクロミックゾーンを備える。いくつかの実施形態では、隣接する第1及び第2のゾーンは第1のセグメント化されたバスバーの共通部分を共有し、隣接する第2及び第3のゾーンは、第2のセグメント化されたバスバーの共通部分を共有する。いくつかの実施形態では、エレクトロクロミックゾーンの各々は、異なる表面積を有する。いくつかの実施形態では、エレクトロクロミックゾーンの各々は、互いに完全には分離されていない。いくつかの実施形態では、エレクトロクロミックゾーンは、基材上の単一のエレクトロクロミックコーティングから形成されている。いくつかの実施形態では、第1の及び第2のセグメント化されたバスバーは互いに実質的に平行である。いくつかの実施形態では、第1のセグメント化されたバスバーの集合部及び第2のセグメント化されたバスバーの集合部は、実質的に基材の長さに延在している。いくつかの実施形態では、基材は積層体である。いくつかの実施形態では、エレクトロクロミックゾーンは、混合タングステン−ニッケル酸化物を含む少なくとも1つの薄膜を備える。
【0026】
いくつかの実施形態では、基材は、4つの独立して制御可能なエレクトロクロミックゾーンを備える。いくつかの実施形態では、隣接する第1及び第2のゾーンは第1のセグメント化されたバスバーの共通部分を共有し、隣接する第3及び第4のゾーンは、第2のセグメント化されたバスバーの共通部分を共有する。いくつかの実施形態では、基材は積層体である。いくつかの実施形態では、エレクトロクロミックゾーンは、混合タングステン−ニッケル酸化物を含む少なくとも1つの薄膜を備える。
【0027】
本発明の別の態様では、少なくとも2つの独立して制御可能なエレクトロクロミックゾーンを有する基材を形成する方法であって、その方法は、
(1)基材上にエレクトロクロミックコーティングを配置させることと、
(2)エレクトロクロミックコーティング上に2つのバスバーを配置することと、を備え、バスバーの少なくとも1つは不連続であり、各々は少なくとも2つの部分を有する。いくつかの実施形態では、基材は積層体である。いくつかの実施形態では、基材は3つのエレクトロクロミックゾーンを備える。いくつかの実施形態では、第1及び第2のゾーンは第1のセグメント化されたバスバーの共通部分を共有し、隣接する第2及び第3のゾーンは、第2のセグメント化されたバスバーの共通部分を共有する。いくつかの実施形態では、エレクトロクロミックゾーンの各々は、異なる表面積を有する。いくつかの実施形態では、エレクトロクロミックゾーンの各々は、互いに完全には分離されていない。いくつかの実施形態では、エレクトロクロミックゾーンは、基材上の単一のエレクトロクロミックコーティングから形成されている。いくつかの実施形態では、基材は4つのエレクトロクロミックゾーンを備える。いくつかの実施形態では、エレクトロクロミックゾーンは、混合タングステン−ニッケル酸化物を含む少なくとも1つの薄膜を備える。
【0028】
本発明の他の態様では、基材を備えるエレクトロクロミックデバイスであり、基材は複数の独立して制御可能なエレクトロクロミックゾーン及び少なくとも2つのバスバーを備え、各々のバスバーはセグメント化され、及び少なくとも2つの隣接したエレクトロクロミックゾーンは、バスバーの少なくとも1つの連続する部分を共有する。いくつかの実施形態では、エレクトロクロミックゾーンは混合タングステン−ニッケル酸化物を含む少なくとも1つの薄膜を備える。
【0029】
本発明の別の態様では、基材を備えるエレクトロクロミックデバイスであり、基材は少なくとも3つの独立して制御可能なエレクトロクロミックゾーンを備え、エレクトロクロミックゾーンが順次配置され、任意の2つ以下の隣接するエレクトロクロミックゾーンは、バスバーの少なくとも1つの連続する部分を共有する。いくつかの実施形態では、エレクトロクロミックゾーンは混合タングステン−ニッケル酸化物を含む少なくとも1つの薄膜を備える。
【0030】
本発明の別の態様では、エレクトロクロミックデバイスを備える絶縁されたガラスユニットであり、エレクトロクロミックデバイスは基材を備え、基材は複数の独立して制御可能なエレクトロクロミックゾーン及び少なくとも2つのバスバーを備え、各々のバスバーはセグメント化され、及び少なくとも2つの隣接したエレクトロクロミックゾーンは、バスバーの少なくとも1つの連続する部分を共有する。いくつかの実施形態では、エレクトロクロミックゾーンは混合タングステン−ニッケル酸化物を含む少なくとも1つの薄膜を備える。
【0031】
本発明の別の態様は、エレクトロクロミックデバイスを備える絶縁されたガラスユニットであり、エレクトロクロミックデバイスは基材を備え、基材は少なくとも3つの独立して制御可能なエレクトロクロミックゾーンを備え、エレクトロクロミックゾーンは順次配置され、及び任意の2つ以下の隣接するエレクトロクロミックゾーンは、少なくとも1つのバスバーの連続する部分を共有する。いくつかの実施形態では、エレクトロクロミックゾーンは混合タングステン−ニッケル酸化物を含む少なくとも1つの薄膜を備える。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1A】
図1Aは、従来技術のエレクトロクロミックデバイスの平面図である。
【
図1B】
図1Bは、断面線1B−1Bにおける
図1Aのエレクトロクロミックデバイスを示す図である。
【
図2】
図2はマルチゾーンエレクトロクロミックデバイスの断面図である。
【
図3A】
図3Aは、マルチゾーンエレクトロクロミックデバイスの平面図である。
【
図3B】
図3Bは、マルチゾーンエレクトロクロミックデバイスの断面図である。
【
図4A】
図4Aは、2つのゾーン及び3本の導線を有するエレクトロクロミックデバイスを示す。
【
図4B】
図4Bは、3つのゾーン及び4本の導線を有するエレクトロクロミックデバイスを示す。
【
図5】
図5は、3つのゾーンのエレクトロクロミックデバイス、及び結合された導線を示し、ゾーンの1つは非長方形の形状を有している。
【
図6】
図6は、2つのゾーンのエレクトロクロミックデバイス、及び結合された導線を示し、エレクトロクロミックデバイスはセグメント化されたバスバーを備える。
【
図7】
図7は、印加電圧及び電流との3つの電気接続を示す2ペイン、3バスバーのエレクトロクロミックデバイスを示す。
【
図8】
図8は、印加電圧及び電流との4つの電気接続を示す、3ペイン、4バスバーのエレクトロクロミックデバイスを示す。
【
図9】
図9は、印加電圧及び電流との3つの電気接続を示す、2ペイン、絶縁ゾーンのエレクトロクロミックデバイスを示す。
【
図10】
図10は、印加電圧及び電流との4つの電気接続を示す、3ペイン、絶縁ゾーンのエレクトロクロミックデバイスを示す。
【
図11】
図11は、バスバーセグメント及びレーザー分離工程を示す、3ペイン、絶縁ゾーンのデバイスのより詳細な図を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の一態様では、複数の独立して制御可能なエレクトロクロミックゾーンを備える基材であり、エレクトロクロミックゾーンの各々は共通の連続するバスバーを共有する。一実施形態では、エレクトロクロミックゾーンの各々は、互いに完全には分離されていない。いくつかの実施形態では、エレクトロクロミックゾーンの各々は、同じ又は異なるサイズ及び/若しくは表面積を有してもよい。他のいくつかの実施形態では、エレクトロクロミックゾーンの各々は、同じ又は異なる(湾曲した又は弓形の形状を含む)形状を有してもよい。
【0034】
一般的に、本発明のマルチゾーンECデバイスは、(1)ECデバイスの対向する側面又は端部での2つのバスバーと、対向する側面又は端部バスバー間に間隔をあけて内部に配置された更なるバスバーとを備えるものと、(2)エレクトロクロミックゾーンは、基材上の単一のエレクトロクロミックコーティングから形成されるもので、単一のエレクトロクロミックコーティングは、カットされ個々のエレクトロクロミックゾーンを形成するものと、の2つのカテゴリに分類される。これらの各タイプのマルチゾーンECデバイス及びそれらの各製造工程は本明細書に説明されている。
【0035】
本発明によるマルチゾーンエレクトロクロミックデバイスは、窓の他のダイナミックゾーンにおける日照調整の利点を最大化できるようにしながら、従来のダイナミックIGUに勝る多くの利点、例えば1つ以上のダイナミックゾーンを通して自然昼光を最適に取り込めるようにすること、を提供すると考えられる。様々な設計目標と要件を満たすために、窓の端部から任意の距離において異なるダイナミックゾーンを作製することができる。
【0036】
本発明の一態様はマルチゾーンエレクトロクロミックデバイスであり、ECデバイスの対向する側面に配置されたバスバーに加えて、対向する側面のバスバー間の内部空間に更なるバスバーが配置される。一実施形態では、内部バスバーはバスバーと対抗する第1の端部とバスバーと対向する第2の端部との間に配置される。もちろん、本発明はマルチゾーンECデバイスが3つのバスバー及び従って2つのゾーンを備えた実施形態に限定されない。4つ以上のバスバー(それぞれ3つ以上のゾーンを有する)を備えるマルチゾーンECデバイスは同様に考慮される。
【0037】
例えば、
図2を参照するとマルチゾーンエレクトロクロミックデバイス200は、2つの独立して操作可能及び制御可能なゾーン、即ち200A及び200B(又はエレクトロクロミックデバイスのゾーン)を含む。例示的なマルチゾーンECデバイス200は、中央のバスバー242並びにそれぞれのゾーンの対向する側面又は端部におけるバスバー240A及び240B(「外部バスバー」又は「第1及び第2の対向する端部バスバー」)を含むことができる。内部バスバー242は、マルチゾーンECデバイス200のゾーン200A及び200Bの両方に共通である。従って、第1のエレクトロクロミックゾーン200Aは内部バスバー242と第1の端部バスバー240Aとの間の空間によって定義され、第2のエレクトロクロミックゾーン200Bは内部バスバー242と第2の端部バスバー240Bとの間の空間によって定義される。
【0038】
図2のこの特定の実施形態では、内部バスバーはバスバーと対向する第1及び第2の端部に対して中央位置に配置される。しかし、内部バスバーは、第1及び第2の端部の対向するバスバー間の任意の位置に存在することができる。バスバー242及び240A及び240Bは、同一又は異なる距離で分離することができる。いくつかの実施形態において、バスバー242は、デバイスの中央領域にあり、バスバー240A及び240Bの各々から等距離に配置されている。他の実施形態において、バスバー242は、バスバー240Aと240Bとの間に配置されているが、242と240Aとの間の距離は242と240Bとの間の距離とは異なる。
【0039】
3つ以上のゾーンを有する実施形態では、追加の内部バスバーは第1と第2の端部の対向するバスバーとの間の任意の場所に配置することができる。例えば、3つ以上のゾーンを有するデバイスを備える追加の内部バスバーは第1と第2の端部の対向するバスバーとの間に等間隔に配置されることができる。これは、デバイスが各々のゾーンがほぼ同じ表面積を持つ複数のゾーンを有する結果となると考えられる。あるいは、3つ以上のゾーンを有するデバイスを備える更なる内側バスバーは、第1及び第2の対向する端部バスバー間の異なる距離に配置されてもよく、複数のゾーンは異なる表面積を有する結果となる。
【0040】
マルチゾーンデバイスは、単一の基材(例えば、ガラス又はプラスチック)上に作製される。いくつかの実施形態では、マルチゾーンエレクトロクロミックデバイスは、単一の連続ECデバイス(即ち、ガラス基材上に配置された薄膜の単一の連続スタック)から作製される。他の実施形態では、2つのECデバイスはガラス基材上に独立して配置され、各々の独立して配置されたECデバイスは側面又は端部に単一のバスバーを有し、これにより内部バスバーが配置され及び両方のデバイス間で共有される。例えば、第1のデバイス20は、それぞれの第1及び第2のデバイス20のバスバー42が互いに接触するように、第2のデバイス20へ隣接して、かつ鏡像をなすように配置される。ECデバイスを備える組成層及びその形成方法又は配置方法は、米国特許第8,004,744号、同第7,830,585号、同第7,593,154号、同第7,372,610号に開示され、それぞれの開示はその全内容が引用され本明細書に組み込まれている。例えば、周知の方法におけるエレクトロクロミックゾーン又はエレクトロクロミックデバイスの層を形成するための技術は、一般的に、物理蒸着、スパッタリング、熱分解コーティング技術、ゾルゲルプロセスなどの湿式化学技術、スピンコーティング技術、及び真空コーティング技術を含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、ガラス基材は底部透明導電体でコーティングされる。そして
図3A及び3Bに示されるように、この導電体はP1工程でカットされ、コーティングの異なる領域を分離する。次に、エレクトロクロミック膜が上面にコーティングされ、続いて上部透明導電膜がコーティングされる。例えば反射防止コーティング及び反射若しくはカラーマッチングのための着色コーティングなどの追加の光学コーティング又は機能性コーティング、又は環境からの水分の移動を防止する若しくはガラスからナトリウムイオンの移動を防止するようなバリアコーティングは、上部又は底部透明導電体のいずれかの上又は下に追加的に含まれることができることを当業者は認識するであろう。
【0042】
プロセスの最後に、最後のレーザー工程は示されたP3カット(底部導電体ではなく、上部導電体を貫く)及び示されたP4カット(両方の導体を貫く)を行い所望のゾーンに膜を分離して完了する。バスバーはガラスに付加され、続いて必要な追加のプロセス(例えば、バスバー又は膜を焼成する加熱工程)が行われる。カットまたはカット線を作製するのに適するレーザ−は、波長1064nmのNd:YAG等の固体レーザ−、並びに248nm及び193nmでそれぞれ放射するArF及びKrFエキシマレーザ−のようなエキシマレーザーを含む。他の固体レーザー及びエキシマレーザーも適している。
【0043】
ECスタック/ECデバイスを備える膜が配置されると、及びバスバーがスタック上に配置されると、単一のガラスペインは、積層体又は断熱ガラスユニットに製造される。ECデバイスを備える積層体を作製する方法は、米国特許公開第20110267672号に開示され、その全体が引用されて本明細書に組み込まれている。この製造プロセスの一部として、導線は各々のバスバーのはんだタブ部に取り付けられたことになる(例えば、米国同時継続出願第61/490,291号を参照、その開示は引用されて本明細書に組み込まれている)。
【0044】
2つ(又は3つ以上)のエレクトロクロミックゾーンが完全には独立ではなく、共通のバスバーを共有するため、標準エレクトロクロミック制御システムの2つのチャネルをガラスに単純に接続することはできない。一般的なエレクトロクロミック制御システムはブリッジ式出力を有することになり、どの接続がアース電位にあるかを変更することによって、正電圧のみを使用して+5Vと−5Vとの間で出力電位が変更される。例えば、アース(0V)をマイナス線へ及び3Vをプラス線へ印加することによりエレクトロクロミックペインへ3Vが印加されるが、2つを逆転して3Vをマイナス線へ及びアース(0V)をプラス線へ印加することによりペインへ−3Vが印加される。
【0045】
3つのゾーンを有するマルチゾーンECデバイスのための解決法は、各ペインに必要な電圧を加算して各導線(例えば、
図4Aを参照)に適用する正しい電位を決定することである。もし当業者は第1の導線へ4V、第2の導線へ2V、及び第3の導線へ0Vを適用するなら、第1のペインへ+2V、及び第2のペインへ−2Vという結果になるであろう。このように、2つのペインは完全に独立して制御することができる。しかし、一般的に制御システムは、1つのゾーンコントローラの要求する電圧の2倍までの電圧を印加できなければならない。同様の論理は4バスバー、3ゾーンのデバイスなど3つ以上のゾーンを有する他のマルチゾーンECデバイスに適用される。
【0046】
もう一つの例は、+3Vで最初の2つのペインを着色し、−2Vで第3のペインを透明にすることが望ましい3ゾーンの(4バスバー)デバイスである。バスバーの極性が順に+/−/+/−である場合、アースに対して3V、0V、3V、及び5Vを印加することができる。最初の2つの間の違いは、3−0=3であり、第2と第3との間の違いは3−0−3であり、第3と第4との間の違いは3−5=−2である。エレクトロクロミックデバイスを駆動する目的のために、隣接するバスバーにおける電位間の差とは対照的に、アースに対する絶対電位はそれほど重要ではないことに注意する必要がある。従って同じ結果を達成するために、4V、1V、4V及び6Vをそれぞれ印加することもできる。
【0047】
各サブペインにおける電流のモニタリングは、標準的な単一ゾーンのECデバイスではより複雑であるとも考えられる。2ゾーン、3バスバー場合、2つの外側の導線は、各サブペインの電流を決定するために監視することができ、一方中央の線は2つの電流の和を流す。3ゾーン、4バスバーの場合は更により複雑である。ここで、第1の導線は第1のゾーンの電流を流し、第4の導線は第3ゾーンの電流を流す(例えば、
図4B参照)。しかし、第2の(中間の)ゾーンに流れる電流を決定するためには、第1と第2の導線との間、又は第3と第4の導線との間のいずれかの間の電流の差を算出する必要がある。
【0048】
図7を参照すると、2ペイン、3バスバーのIGUの場合、ペイン1は(V1−V2)よって与えられ印加電圧及び電流I1を有し、一方ペイン2はV3−V2の印加電圧及び電流I3を有する。
【0049】
図8を参照すると、3ペイン、4バスバーのIGUの場合、ペイン1は今まで通り(V1−V2)よって与えられる印加電圧及び電流I1を有する。ペイン2は今まで通り(V3−V2)として印加電圧を測定することができるが、電流は(I2−I1)又は(I4−I3)のいずれかによって与えられる。ペイン3の電圧は(V3−V4)、電流は(−I4)である。
【0050】
マルチゾーンエレクトロクロミックデバイスは、各ゾーンの完全に独立して制御するので、ゾーンは異なる大きさ又は異なる形状が可能である。例えば、
図2を参照すると各ゾーン200A及び200Bは一般的に長方形の形状を有するとして示されているが、本明細書に開示された主題の規定によれば、複数のゾーンは、各々が選択された形状を有し、使用されることができる。更に、複数のペインIGU200は一般的に長方形の形状を有するものとして描かれるが、本明細書に開示された主題によれば、任意の選択されたサイズ及び形状の複数のペインIGUを使用できる。
【0051】
更なる非限定的な例として、
図5は、4バスバー、3ゾーンのデバイスを示しており、ゾーンが異なるサイズ(異なる表面積)であり、3つのゾーンの1つは形状が長方形ではない。このようなデバイスの場合、個々のサブペインを管理する適切な電圧及び電流のプロトコルを決定する必要があり、その後、完全な自律的に各々のサブペインを管理するために、前述のように電圧を制御し電流を監視することができる。
【0052】
中央のバスバー(複数も含む)は端部バスバーの2倍の電流が流れると考えられるので、端部バスバーの厚さ又は幅を小さくして中央バスバーの半分の導電率を達成することができる。あるいは、全てのバスバーは常に最大の電流を流すのに十分な大きさにすることができる。
【0053】
本発明の別の態様では、エレクトロクロミックゾーンは基材上の単一のエレクトロクロミックコーティングから形成され、単一のエレクトロクロミックコーティングをカットして個々のエレクトロクロミックゾーンを形成する。いくつかの実施形態では、基材は第1のバスバー及び第2のバスバーを備え、第1のバスバーは各々のエレクトロクロミックゾーン上に連続的に延在する。第2のバスバーはセグメント化され、各バスバーセグメントはエレクトロクロミックゾーンに対応する。単一のバスバーが一方の側面に沿って全てのゾーンを横断するように各ゾーンを設計することができる限り、各ゾーンは異なるサイズ又は異なる形状からなることができる。
【0054】
セグメント化された第2のバスバーは単一のバスバーから形成することができ(第1のバスバーが付加されたように付加される)、カットして個々のバスバーセグメントを形成することができる。代わりの実施形態では、セグメント化された第2のバスバーは複数のセグメントに付加されるか、又は1つ以上のギャップを有する単一のバスバーとして付加される。
【0055】
その処理(例えばレーザー加工/カット)の大部分は、通常の2バスバーデバイスと同じである。しかしながら、
図6を参照すると、追加のP4カットが存在し、そのカットは2つの動作ゾーンの間で完全に膜をカットし、それらのゾーン間に電流が流れるのを防ぐ。更に、バスバーの1つはセグメント化される。電気的に、このユニットは、上記で述べた3バスバー、2ゾーンのデバイスのように動作し、1つのバスバーが両方のゾーンの底部導電体に接続され、2つの独立したバスバーが各ゾーンの上部導電体に接続されている。制御ハードウェア及び論理は、3バスバーの場合と同じである。勿論、同じ論理が3つ以上のゾーンを有するデバイスにも適用される。いくつかの実施形態では、基材は積層体である。いくつかの実施形態では、エレクトロクロミックゾーンは、混合タングステン−ニッケル酸化物を含む少なくとも1つの薄膜を備える。
【0056】
図9を参照すると、このセグメント化されたバスバーを有する2ペインデバイスでは、ペイン1は(V1−V2)によって与えられる印加電圧及び電流I1を有し、一方、ペイン2はV3−V2の印加電圧及び電流I3を有する。
【0057】
別の実施形態では、上述したP4レーザ−プロセスは薄膜を、隣接するゾーンのペアを架橋する各端部に沿うバスバーセグメントと共に、3つの領域にカットするために使用される。本実施形態では、全ての接続が端部に沿っていたのに代わりコーナー近傍で可能になる利点を有し、それは少なくともいくつかのより多くのスペースが接続するのを可能にするとされている。また、電気的に直列に接続された3つのゾーンを有する4バスバー、3ゾーンのデバイスと電気的に等価である。いくつかの実施形態では、反対側に3つの別々のセグメントを有し1つのバスバーが全てのゾーンにまたがっている場合よりも少ない別の制御/導線構成が可能である。
【0058】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるエレクトロクロミック材料の代わりに、又はそれに加えてフォトクロミック材料又はサーモクロミック材料が使用される場合がある。例えば、いくつかのゾーンはエレクトロクロミック材料を含むことができ、一方、他のゾーンはエレクトロクロミック材料、フォトクロミック材料、又はサーモクロミック材料のうちの少なくとも1つを含むことができる。適切なフォトクロミック材料は、トリアリールメタン、スチルベン、アザスチルベン、ニトロン、フルギド、スピロピラン、ナフトピラン、スピロ−オキサジン、及びキノンを含むが、これらに限定されない。適切なサーモクロミック材料は、液晶及びロイコ染料を含むが、これらに限定されない。フォトクロミック材料及びサーモクロミック材料はいずれも、周知の方法で基材上に形成することができる。フォトクロミック又はサーモダイナミックゾーンの場合、それぞれ光と熱が材料の特性を変調するため、バスバーは不要になる。フォトクロミック及び/又はサーモクロミックダイナミックゾーンを使用する1つの例示的な実施形態は、採光のために能動的に制御される窓の上部に向かう少なくとも1つのエレクトロクロミックダイナミックゾーンと、直接日光の下でそれ自身が暗くなる窓の下部に向かう少なくとも1つのフォトクロミックダイナミックゾーンと、そのデバイスの別の領域に置かれる少なくとも第2のエレクトロクロミックゾーンと、を有する窓とすることができる。
【0059】
更に、本明細書で開示される主題の例示的な一実施形態は、複数の独立して制御されるダイナミックゾーンを備える単一のペイン又はガラス基材を有する建築窓などの窓を含むと解される。本明細書で開示される主題の別の例示的な実施形態は、1つのペイン上にエレクトロクロミック窓の複数のゾーンを備え、かつ他のペイン上に透明ガラスを備えるIGUを含む。本明細書で開示される主題の更に別の例示的な実施形態は、1つのペイン上にエレクトロクロミック窓の複数のゾーンを備え、かつ他のペイン上に低Eガラス、着色ガラス、又は反射ガラスを備えるIGUを含む。本明細書で開示される主題の更に別の例示的な実施形態は、IGUの1つのペイン上にエレクトロクロミック窓の複数のゾーンを備え、かつ他のペイン上にパターンガラス又は特殊ガラスを備えるIGUを含み、そのパターニング又は特徴は第1のペイン上のダイナミックゾーンの領域と調和し、それらの領域を補完し、及び/又はそれらの領域と対比する場合がある。これは、上述の例示的な実施形態は、複数のダイナミックゾーンを備える基材は、透明なガラス基材、低Eガラス基材、反射ガラス基材及び/又は部分的に反射するガラス基材であるように構成できることは理解されたい。
【0060】
米国同時継続出願第13/354,863号において記載される制御システム、電源システム、又は導線システム(無線制御を含む)のいずれかを、本明細書において記載されるようなマルチゾーンエレクトロクロミックデバイスと共に使用するように適用されることができることを当業者は認識するであろう。
【0061】
これまでに開示された主題は、明確に理解してもらうために詳細に説明されてきたが、添付の特許請求の範囲内にある或る特定の変更及び修正を実施できることは明らかであろう。従って、これらの実施形態は例示であって限定と見なされるべきではなく、本明細書中において開示される主題は、本明細書に与えられた詳細に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲及びその均等物内で修正されることができる。