(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。なお、実施の形態を説明するための各図において、同一の機能を有する要素には同一の名称、符号を付して、その繰り返しの説明を省略する。
【実施例1】
【0013】
本実施例のシステムについて、
図1、
図2、
図3を用いて説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施例1における圧縮機を構成するブロック図である。圧縮機1は、空気を圧縮するスクロール圧縮機本体2、圧縮機本体を駆動するモータ3、圧縮機1全体の制御を行う制御回路4、圧縮機本体2より圧縮された空気を蓄える空気タンク5、空気タンク5の圧力を検出する圧力センサ6、圧縮機1の周囲温度を検出する温度センサ(周囲)7、圧縮機本体2の表面温度を検出する温度センサ(本体)8、設定値等のデータを記憶する記憶回路9、メンテナンス実施時期を知らせる表示器10より構成している。
【0015】
なお、本実施例では圧縮機本体2はスクロール圧縮機としているが、スクロール圧縮機に限らず圧縮機本体の種類は何でも良い。また、圧力センサ6は空気タンク5の圧力を検出しているが、検出場所は圧縮機本体2の出力側の圧縮機1内空気回路上ならばどこでも良く、空気タンク5がない場合でも良い。
【0016】
制御回路4は、圧力センサ6による検出圧力を用いて、空気タンク5内の流体圧力が下限圧力まで低下した場合はモータ3を駆動し、また上限圧力まで上昇した場合はモータ3を停止することにより、空気タンク5内の圧力を上限圧力と下限圧力との間に保つ。また、制御回路内の算出部(図示せず)では、圧縮機の運転時間を求め、以下に述べるように、圧縮流体の圧力および周囲温度に応じて運転時間を補正して補正運転時間を求める。そして、圧縮機の使用開始から、或いは、メンテナンス後の使用開始からの補正運転時間を累積して累積運転時間を求め、累積運転時間が予め設定したメンテナンス設定時間に達するとメンテナンス指示信号を出す。
【0017】
図2は、圧力センサ6で検出した圧縮流体の圧力と運転時間の補正係数である圧力メンテナンス係数Kmpとの関係の一例を示す補正マップである。タンク内および関連する圧縮機本体内の圧力が上昇すると、過酷な運転条件となり、圧縮機本体を構成する部品等に摩耗や損傷が生じ易くなる。そのため、圧縮流体の圧力に応じて図に示されるような、補正係数を用いる。
図2の補正マップは、2つの変曲点について、軸受やグリースの劣化を計算して求め、グラフ化したものであるが、実験により求めても良い。
【0018】
図3は、温度センサ(周囲)7で検出した周囲温度と運転時間の補正係数である温度メンテナンス係数Kmtとの関係の一例を示す補正マップである。圧縮機本体の温度が上昇すると、過酷な運転条件となり、圧縮機本体で使用されているグリースやシールなどが劣化し易くなる。そのため、周囲温度に応じて図に示されるような、補正係数を用いる。このマップは、圧縮流体の圧力Pが閾値Pkよりも大きい場合に用いる曲線3−1と、圧縮流体の圧力Pが閾値Pk以下の場合に用いる曲線3−2を備えている。
図3の補正マップも、予め計算により、或いは実験により求めれば良い。
図2或いは
図3の補正マップは、予めテーブルとして記憶回路9に記憶しておいても良いし、または計算式として記憶回路9に記憶しておいても良い。
【0019】
本実施例の動作は、制御回路4において圧力センサ6の検出値から
図2の補正マップを用いて圧力メンテナンス係数Kmpを算出する。同様に、制御回路4において温度センサ(周囲)7の検出値より
図3の補正マップを用いて温度メンテナンス係数Kmtを算出する。温度メンテナンス係数Kmtを求める際は、圧縮機本体の内部圧力を考慮して、温度メンテナンス係数Kmtの変曲点を変更し、圧力センサ6の検出値Pが閾値Pkを越えた場合は曲線3−1を用い、閾値Pk以下の場合は曲線3−2を用いる。これらの補正係数の算出は、記憶回路9に記憶した補正マップのテーブル或いは計算式に基づいて算出する。
【0020】
制御回路4内の算出部(図示せず)では、算出した圧力メンテナンス係数Kmp、温度メンテナンス係数Kmtと圧縮機本体2の運転時間Tから、次の式1より補正運転時間Tmを求める。
【0021】
Tm=T×1/(Kmp×Kmt) ・・・(式1)
圧縮機の使用開始から、或いは、メンテナンス後の使用開始からの補正運転時間Tmの積算値により累積運転時間を求め、累積運転時間が予め設定したメンテナンス設定時間に達するとメンテナンス指示信号を出す。
【0022】
表示器10では、制御回路4で求めた累積運転時間を表示し、また、メンテナンス指示信号に応じてメンテナンス時期であることを使用者に報知する。
【0023】
図2の、圧縮流体の圧力に応じた圧力メンテナンス係数Kmpは、圧力が小さい領域では大きい値をとり、変曲点から圧力の上昇とともに低下し、圧力が大きい領域では小さい値となる。そのため、式1から、圧力が大きい場合には運転時間を増やすように補正され、また、圧力が小さい場合には運転時間を減らすように補正される。したがって、圧縮機本体の構成部品の劣化が大きい高圧力の運転状態ではメンテナンス時期が短くなり、圧縮機本体の構成部品の劣化が少ない低圧力の運転状態ではメンテナンス時期が延長される。
【0024】
図3の、周囲温度に応じた温度メンテナンス係数Kmtは、周囲温度が低い領域では大きい値(1.0)をとり、変曲点から温度の上昇とともに低下する。また、圧力に応じて変曲点が異なり、圧力が閾値Pkより大きい場合には低い温度から低下する曲線3−1を用い、圧力が閾値Pk以下の場合は高い温度で低下する曲線3−2を用いる。そのため、式1から、周囲温度が高い場合には運転時間を増やすように補正されるとともに、圧力が高い場合にはより低い周囲温度から運転時間を増やすように補正が行われる。したがって、圧縮機本体の構成部品の劣化が大きい高温の運転状態ではメンテナンス時期が短くなるとともに、圧縮機本体の内部温度が上昇する高圧力の場合には、さらにメンテナンス時期が短くなるように補正が行われる。圧縮機の周囲温度は内部温度とは異なるため、圧力に応じて補正係数を切り替えることにより、実際の内部温度に応じたメンテナンス時期を求めることができる。
【0025】
図3の曲線3−1と曲線3−2とを切り換えることは、温度の重み付けを変えることである。すなわち、圧力が閾値Pkよりも大きい時は温度の重み付けを大きくし、圧力が閾値Pk以下の時は温度の重み付けを小さくしている。
【0026】
なお、
図3の補正マップでは、閾値Pkにより圧力領域を2つの領域に分割したが、3つ以上の圧力領域に分割して、対応する補正曲線を設定すれば、より正確にメンテナンス時間を求めることができる。
【0027】
また、この実施例では、温度の検出に温度センサ(周囲)7を用いたが、温度センサ(本体)8を用いても良い。温度センサ(本体)8は圧縮機本体の表面などに設けられるものであり、圧縮機本体の内部温度を検出できないことに変わりはない。
【0028】
また、この実施例では、圧縮機本体2は1台であるが、圧縮機本体を複数台設けて運転制御するようにしても良い。
【0029】
本実施例によれば、圧縮流体の圧力に応じて温度の重み付けを変えて補正運転時間を求め、メンテナンス時間を算出するように構成したので、正確なメンテナンス時間を得ることができる。そして、圧縮機を高負荷で使用した場合には、メンテナンス時間が短縮されるため、確実に故障防止を行うことができる。また、圧縮機を低負荷で使用した場合には、メンテナンス時間が延長されるため、メンテナンスを行うまでの期間が延び顧客メリットが生じる。
【実施例2】
【0030】
本実施例のシステムについて、
図4および
図5を用いて説明する。実施例1と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0031】
図4は、本実施例における圧縮機を構成するブロック図である。実施例1に対しての変更点は、モータ3の回転速度を制御するためにインバータ回路11を設けていることである。
【0032】
インバータ回路11は、圧力センサ6で検出する空気タンク5内の圧力が一定となるように、モータ3の回転速度をインバータ制御する。
【0033】
図5は、回転速度比と運転時間の補正係数である回転速度メンテナンス係数Kmrとの関係の一例を示す補正マップである。ここで回転速度比とは、最高回転速度に対するインバータ回路11より検出したモータ回転速度の比率である。回転速度が小さい場合には軸受等の劣化が少なくなるため、回転速度比が小さくなるにつれて回転速度メンテナンス係数は大きくなる。
【0034】
本実施例の動作は、実施例1と同様に、制御回路4が圧力メンテナンス係数Kmp、温度メンテナンス係数Kmtを算出する。また、インバータ回路11より検出したモータ回転速度より、記憶回路9に記憶された
図5に示される補正マップのテーブル或いは計算式に基づいて、回転速度メンテナンス係数Kmrを算出する。
【0035】
制御回路内の算出部(図示せず)では、制御回路4が算出した圧力メンテナンス係数Kmp、温度メンテナンス係数Kmt、回転速度メンテナンス係数Kmrと圧縮機本体2の運転時間Tから、次の式2より補正運転時間Tmを求める。
【0036】
Tm=T×1/(Kmp×Kmt×Kmr) ・・・(式2)
実施例1と同様に、圧縮機の使用開始から、或いは、メンテナンス後の使用開始からの補正運転時間Tmの積算値により累積運転時間を求め、累積運転時間が予め設定したメンテナンス設定時間に達するとメンテナンス指示信号を出す。
【0037】
表示器10では、制御回路4で求めた累積運転時間を表示し、また、メンテナンス指示信号に応じてメンテナンス時期であることを使用者に報知する。
【0038】
インバータ制御の圧縮機においては、空気タンク5内の圧力が一定となるようにモータ3の回転数がインバータ制御されるが、圧力の設定手段を設けておいて、設定圧力を変更できるように構成しても良い。
【0039】
本実施例によれば、実施例1の効果に加えて、インバータ搭載の可変速圧縮機において、圧縮機回転速度の変化による負荷変化も考慮した正確なメンテナンス時間の算出が可能となる。
【実施例3】
【0040】
本実施例は、実施例1もしくは実施例2の圧縮機において、表示器10を使用しないでユーザにメンテナンス時期を報知するようにしたものである。
【0041】
制御回路4から発するメンテナンス指示信号により、制御回路4はモータ3を制御して、圧縮機1の上限圧力または圧縮機本体2の回転速度を低下して、製品の性能を落とすことでメンテナンス時期を使用者に報知する。或いは、メンテナンス指示信号により、圧縮機本体2を停止させても良い。
【0042】
本実施例によれば、実施例1に記載の、メンテナンス実施時期を知らせる表示器10が不要となる。
【実施例4】
【0043】
本実施例のシステムについて、
図6および
図7を用いて説明する。
【0044】
本実施例は、圧縮機本体の稼働率R
0に基づいて温度の重み付けを変えるものである。
【0045】
図6は、圧縮機をON−OFF駆動する場合の駆動状況を示す図であり、圧縮機がT
ON1の期間駆動されると流体圧力は次第に上昇し、上限圧力に達すると圧縮機は停止され流体圧力は次第に低下し、下限圧力に達すると圧縮機は再びT
ON2の期間駆動される。そして、圧縮機はこの動作を繰り返す。圧縮機本体2の稼働時間T
ON1〜T
ONnまでの総和を、全時間T
0で除した値を圧縮機本体2の稼働率R
0と定義する(式3)。
【0046】
【数1】
【0047】
図7は、温度センサで検出した周囲温度と運転時間の補正係数である温度メンテナンス係数Kmtとの関係の一例を示す補正マップである。圧縮機本体の温度が上昇すると、過酷な運転条件となり、圧縮機本体で使用されているグリースやシールなどが劣化し易くなる。そのため、周囲温度に応じて図に示されるような、補正係数を用いる。また、このマップは、稼働率R
0が0.8以上の場合に用いる曲線3と、稼働率R
0が0.5以上の場合に用いる曲線2と、稼働率R
0が0.5未満の場合に用いる曲線1とを備えている。
図7の補正マップも、予め計算により、或いは実験により求めれば良い。
【0048】
図7の補正マップは、予めテーブルとして記憶回路9に記憶しておいても良いし、または計算式として記憶回路9に記憶しておいても良い。
【0049】
本実施例の動作は、先ず、実施例1の圧縮機のブロック図において、制御回路4が圧縮機本体2の稼働率R
0を算出する。算出した稼働率R
0の値に応じて、
図7に示す温度メンテナンス係数の変曲点が異なる曲線1〜3を選択し、周囲温度に対応する温度メンテナンス係数Kmtを求める。
【0050】
実施例1と同様に、算出した温度メンテナンス係数Kmt、圧力メンテナンス係数Kmpと運転時間Tから、式1に基づいて補正運転時間Tmを算出する。圧縮機の使用開始から、或いは、メンテナンス後の使用開始からの補正運転時間Tmの積算値により累積運転時間を求め、累積運転時間が予め設定したメンテナンス設定時間に達するとメンテナンス指示信号を出す。
【0051】
表示器10では、制御回路4で求めた累積運転時間を表示し、また、メンテナンス指示信号に応じてメンテナンス時期であることを使用者に報知する。
【0052】
図7の、周囲温度に応じた温度メンテナンス係数Kmtは、周囲温度が低い領域では大きい値(1.0)をとり、変曲点から温度の上昇とともに低下する。また、稼働率R
0に応じて変曲点が異なり、稼働率が大きい場合には低い温度から低下する曲線3を用い、稼働率が小さい場合は高い温度で低下する曲線1を用いる。そのため、式1から、周囲温度が高い場合には運転時間を増やすように補正されるとともに、稼働率が高い場合にはより低い周囲温度から運転時間を増やすように補正が行われる。したがって、圧縮機本体の構成部品の劣化が大きい高温の運転状態ではメンテナンス時期が短くなるとともに、圧縮機本体の内部温度が上昇する稼働率が高い場合には、さらにメンテナンス時期が短くなるように補正が行われる。圧縮機の周囲温度は内部温度とは異なるため、稼働率に応じて補正係数を切り替えることにより、実際の内部温度に応じたメンテナンス時期を求めることができる。
【0053】
図7の曲線1〜3を切り換えることは、温度の重み付けを変えることであり、稼働率が大きい時は温度の重み付けを大きくし、稼働率が小さい時は温度の重み付けを小さくしている。
【0054】
本実施例では、実施例1の効果に加えて、圧縮機本体2の寿命に影響を与える稼働率R
0を含めたメンテナンス実施時期の変更を行う為、正確なメンテナンス時間の算出が可能となる。
【実施例5】
【0055】
本実施例は、実施例1または実施例2の圧縮機において、メンテナンス実施までの残り時間を推定し、使用者に知らせるように構成したものである。制御回路4において、予め設定したメンテナンス設定時間から実施例1等で求めた累積運転時間を差し引くことによって、メンテナンス実施までの残り時間を求めることができる。そして、得られた残り時間を表示器10で表示する。
【0056】
本実施例によれば、メンテナンス実施までの残り時間が表示されるため、残りの運転時間を知ることができ、ユーザの使い勝手が向上する。