(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
接着部が前記針またはカニューレを前記ハブに固定しており、前記接着部は前記スロットの後端の後方に配されていることを特徴とする請求項1に記載の注入セット組立体。
前記丸みを帯びた突起は後部に隣接する2つの対向する側部を有して前記スロットを囲んでおり、前記側部および前記後部の各々のまわりに前記針またはカニューレが曲げることができることを特徴とする請求項1に記載の注入セット組立体。
【背景技術】
【0002】
血糖値レベルを厳密に管理された状態に維持するための日々のインスリン注入のような、ある形態の注入療法を使用する糖尿病などの条件に苦しむ多数の人々が存在する。日々のインスリン療法には二つの主要なモードがある。第1のモードには注射器とインスリンペンが含まれる。これらのデバイスは、使い方が簡単でコストも比較的低廉であるものの、注射毎の針刺し、通常一日あたり3〜4回の針刺しが必要である。第2のモードには注入ポンプ療法が含まれ、約3年間続けた後のインスリンポンプの購入を伴う。ポンプの初期コストは大きいが、ユーザの観点から、ポンプを使用している患者の圧倒的多数が、生活の休息のためにポンプを維持することを好んでいる。注入ポンプは、シリンジおよびペンよりも複雑であるが、インスリンの連続注入、高精度の投与およびプログラム可能な送達スケジュールの利点を提供するためである。これは、健康に近い血糖値コントロールと、改善された感覚をもたらす。
【0003】
注入ポンプの使用には、ポンプ内のリザーバからユーザの皮膚内へとインスリンを移送する、一般に注入セットまたは注入ポンプセットと称される廃棄可能な構成要素の使用が必要となる。一般に、注入セットは、ポンプコネクタ、長さのあるチューブ、ハブまたはベースおよびそれから延在する中空注入針またはカニューレからなる。ハブまたはベースは接着部を有し、これは使用中に皮膚表面上にベースを保持する。接着部は手操作で、あるいは手動または自動挿入デバイスを用いることで皮膚に貼着することができる。
【0004】
現在のインスリン注入セットのほとんどは、固定された金属針または可撓性のプラスチックカニューレのいずれかを使用して、皮膚の皮下層にインスリンを送達する。そのような注入セットは、一般に、皮膚の表面下4〜10mmにインスリンを送達する。しかし皮膚面の上部3mmの皮内空間では、より良好な薬物吸収が促進される。残念ながら、皮内層の相対的な薄さに起因して、そのような深さに針を挿入し、この狭い帯域内で長期間にわたって注入部位を維持することは困難である。
【0005】
皮内注射を提供するための一つの技術にマントー技術がある。当業者に知られているように、マントー技術は、ツベルクリン検査を行う場合に一般に使用される。熟練した施術者は、まず親指と人差し指の間の皮膚の選択領域を展張させ、次いでゆっくりと針を挿入し、皮膚表面に対し5〜15度の角度で上向きに傾ける。施術者は、その後、約3mm表皮を通して針を進め、展張させていた皮膚を解放し、薬剤を注入する。しかし、皮内送達は、たとえ標準的なマントー技術を用いて実現することができる場合でも、この方法は非常に不確か(variable)であり、ユーザエラーの影響を受ける。
【0006】
ほとんどのインスリン注入セットは、通常、挿入された針を衝撃またはその他の外力から絶縁するためのいかなる特徴も提供していない。これらの注入セットは、一般に皮膚の表面下4〜10mmにインスリンを送達するので、衝撃またはその他の外力は、より深く挿入された針にさほど影響を与えない。しかしながら、皮膚面の上部3mmを目標とするよう試みる場合、セッの移動や衝撃は、針挿入と注入性能に悪影響を与え得る。
【0007】
さらに、ほとんどのインスリンセットは、皮膚面の上部3mmを正確に目標とする針の挿入前または挿入中に皮膚表面がいくらかゆがんでいる場合、挿入中に皮膚表面の「テンティング」をもたらし得る挿入器を有している。
【0008】
大きな力が注入セットに作用した場合や、接着パッチの接着が失敗した場合には、挿入された針は移動し得る。針の曲げ半径は0.005インチと小さいことがあり、これは2〜10回の曲げサイクル後に針の破損をもたらし得る。従って、針の変形および破損を防止するために挿入された針の曲げ半径を増加させる必要がある。
【0009】
概して、注入セットには、ユーザに不快を感じさせないようにしながら、より良い薬物吸収を促進するために皮膚面の上部3mmの皮内空間に内容物を送達することができるようにする必要がある。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面全体を通して、同様の参照番号は、同様の部品、構成要素および構造物を示すと理解される。
【0022】
以下に説明され、
図1〜
図60に示される本発明の例示的な実施形態は、ユーザの動きを介し、皮膚表面に対してある角度をもって皮内針の挿入を実行する手段を提供し、ユーザの動きの角度は、針の挿入角度と異なっているものである。挿入は、正確に皮膚面の上部3ミリメートルをターゲットとし、標準インスリンポンプ(不図示)を介して皮膚の皮内層にインスリンを送達する。
【0023】
例えば
図6および
図10は、注入セット組立体1と、皮膚表面に対する第1の方向(
図6および
図7の矢印94で示される)におけるユーザの動きを介して針6を挿入する動きを示している。第1の方向は、本発明の例示的実施形態による、挿入された針の第2の方向(
図6および
図7において角度αで示される)とは異なる。
図4〜
図6は、使用前の自由状態での注入セット組立体1を示している。
図10は、本発明の例示的な実施形態による、皮膚表面に対してある角度で挿入を行う間の注入セット組立体1を示し、挿入は、針の挿入角度とは異なる、皮膚表面に対するある角度で生じるユーザの動きを介して行われる。
【0024】
図1に示すように、注入セット組立体1は、挿入器2および注入セット3を含む。挿入器2は、固定挿入器部材4と、これに対し可動に接続された可動挿入器部材5とを備えている。可動挿入器部材5は、
図5に示す第1の位置から
図10に示す第2の位置まで移動可能である。注入セット3は、
図14に示すように、硬質の針6、ハブ7、可動スライド部材8および固定ベース部材9を含む。接着パッドまたはパッチ10は、皮膚表面にベース部材9を固定する。硬質の針6は、スライド部材8に固定的に接続されたハブ7に固定して接続される。スライド部材8は、針6が注入セット3の外部に露出しない第1の位置から、針6が注入セット3の外部に露出する第2の位置まで、固定ベース部材9に対して相対的に移動する。接着パッド10の開口部11は、針6の通過を許容する。コネクタ12は、注入ポンプ(不図示)から注入セット3へのチューブを接続する。
【0025】
硬質の針6は、それを通した薬剤の送達を促進するために好ましくは中空であり、好ましくは尖鋭な傾斜先端をもつ31ゲージのステンレス鋼で作られている。患者側端における針6の端部ポートによって、薬剤を注入部位に送達することができる。端部ポートに加えて、またはそれに代えて、側部ポートが使用されてもよい。針6の非患者側端の開口部は、インスリンポンプからチューブを介して薬剤13を受容する。
【0026】
図26〜
図30に示すように、ハブ7は針6を固定して受容するが、接着など任意の適切な方法で固定を行うことができる。ハブ7のボア19は針6を受容し、接着部でそこに固定することができる。針6の患者側端14は、ハブ7の第1端15を越えて延在する。ハブ7の第2端17に隔壁16が配されることで、ハブが封止され、針6の非患者側端18の開口部へのアクセスが防止される。隔壁16は、好ましくはイソプレンから作製されるが、任意の適切な材料を用いることができる。ハブ7は、好ましくは射出成形プラスチックで作製されるが、任意の適切な材料を用いることができる。
【0027】
図18〜
図23に示すように、スライド部材8は、前端23および後端24を有する。上面26の傾斜部分25は、前端23から後端24に向けて、上方に傾斜している。好ましくは、傾斜部分25は、約10〜45度までの間のすべてを含めた角度を有する。より好ましくは、傾斜部分は約20度の角度を有する。開口27が上面26の傾斜部分25に形成されている。空洞28がスライド部材8の下面29に形成され、ハブ7を受容するようになっている。可撓アーム30および31が空洞28の近傍の下面29から外方に延在し、空洞28へのハブ7の固定が容易となるようにしている。好ましくは、ハブ7は傾斜部分25の角度と実質的に同じ角度で固定される。外側レール32および33が、スライド部材8の両側から外方に延在している。好ましくは、外側レール32および33は、傾斜部分25と実質的に同じ角度で配置される。スナップアーム34および35が、外側レール32と33との内側に配置されている。フック36および37が、スナップアーム34および35の端部から上方に延在している。外側レール32および33とスナップアーム34および35との間には、それぞれ係止アーム38と39とが配置される。後端部24の開口80および81はコネクタアーム78および79(
図14)を受容し、コネクタ12をそこに固定する。スライド部材8は、好ましくはPETGなどの射出成形プラスチック製であるが、任意の適切な材料を用いることができる。
【0028】
図41〜
図46に示すように、ベース部材9は前端部40および後端部41を有する。下面42は前端部40から後端部41に向って延在する。下面42の開口43によって、針6の通過が可能となる。好ましくは、開口43は実質的に楕円形状を有する。上面44は、前端部40から後方に延在し、上面44と下面42との間に、スライド部材8を受容するための空洞45を画成している。外側チャネル46および47が、下面42と上面44との間に延在する側壁48および49に形成されている。
図44に示すように、下側タブ50が下面42から上方に延在している。
図42および
図44に示すように、上側タブ51および52が上面44から下方に延在している。内側チャネル53と54とが、上側タブ51および52とチャネル46および47との間に配置されている。ベース部材9は、好ましくは、PETGのような射出成形プラスチック製であるが、任意の適切な材料を用いることができる。
【0029】
図1、
図3および
図14に示すように、接着パッド10がベース部材9の下面42に接続されている。接着バッキング55が接着パッド10に接続され、使用前に接着パッドを覆うようになっている。接着バッキング55がタブ部材56を有することで、接着パッドが注入部位に固定される際に接着パッドを露出させるために、接着パッド10のカバーの分離が容易となる。感圧接着(pressure sensitive adhesive pad)パッド10は、接着剤ファブリック(adhesive fabric)などの任意の適切な材料を含むことができる。
【0030】
図35〜
図40に示すように、固定挿入器部材4は、上面57と、そこから下方に延在する壁58とを有している。上面57および壁58は空洞59を画成する。好ましくは、壁58は、前壁60と、対向側壁61および62と、空洞59へのアクセスを提供するために開放された後方部分とを有している。空洞59内に棚63が配置され、側壁61と62との間で横方向に延在している。可撓性梁64が空洞59で前壁60から後方に延在している。固定挿入器部材4は、好ましくは、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)のような射出成形プラスチック製であるが、任意の適切な材料を用いることができる。
【0031】
可動挿入器部材5は、
図29〜
図34に示すように、後壁65と、そこから前方に延在する対向側壁66および67とを有している。ラッチアーム68が後壁65から前方に延在しており、その自由端部には下方に延在するタブ69が設けられる。ラッチアーム68の両側には、スロット70および71が平行に延在している。可撓性部材72は、好ましくは、リビングヒンジ73によって可動挿入器部材5に接続されるが、可撓性部材を接続するためには、可撓性部材の撓みを可能にする任意の適切な手段を使用することができる。ロック脚部74および75が、側壁66および67から前方に延在している。可動挿入器部材5は、好ましくはPETGなどの射出成形プラスチックで作製されるが、任意の適切な材料を用いることができる。
【0032】
図14に示すように、コネクタ12は、インスリンポンプ(不図示)から注入セット3へ薬剤を送達するために接続された可撓性プラスチックチューブ13を有する。ポンプコネクタ76は、インスリンポンプに接続するチューブ13の一方に配置されている。コネクタ12は、注入セット3のスライド部材8に接続するために、チューブ13の他方の端部に配置される。チューブ13はコネクタ12の後面89を通して接続する。針77はコネクタ12から前方に延在し、コネクタ12がスライド部材8に接続されたときにハブ7内に配置された隔壁16を貫通する。ハブの隔壁16を貫通することにより、ハブ針6がインスリンポンプに流体接続される。スナップアーム78および79がスライド部材8に受容されることで、コネクタ12がそこに固定される。スナップアーム78および79を内側に移動させることによって、必要に応じて注入セット3からコネクタ12を取り外す(disconnect)することができる。
【0033】
図17および
図48〜
図51に示すように、コネクタタブ82は、ベース83と、そこから下方に延在する脚部84および85とを有している。コネクタタブ82の脚部84および85は、可動挿入器部材5のスロット70および71に受容され、ベース83がラッチアーム68の上方に配置されるようになっている。代替的に、コネクタタブ82を、単一ピースとして可動挿入器部材5と一体的に形成することができる。
【0034】
動作および組立体
例示的な実施形態は、皮膚面の上部3mmで正確に目標づけられて皮内針の挿入を行うために、接着により固定される注入セット3および廃棄可能な挿入器2を含む。注入セット3は、皮膚表面に対して接着による取り付けを行うことができ、挿入部2は針6を傾けて所望の挿入位置に挿入するのに使用することができる。針6の挿入位置は、ベース部材9にスライド部材8を固定して挿入針6を保持し、且つ挿入位置にあるときにはスライド部材8および挿入針6の後退を防止することによって維持される。
【0035】
図1および
図2に示すように、注入セット組立体1は、廃棄可能な挿入器2を含むことができる。必要に応じて、挿入器2を再利用可能なものとすることもできる。好ましくは、注入セット組立体1は、注入セット3が挿入器2によって保持されるように包装される。あるいは、挿入器2なしで注入セット3を包装することができる。針6は、初期には若干注入セット6に対してくぼんでおり、不慮の針刺しが実質的に防止されるようにされるが、注入セット2の底部から
図4に示すように視認できるようにして、注入部位に注入セット3を接着する前に、注入セット3のプライミングをユーザが目視で判定することができるようになっている。
【0036】
例示的な実施形態は、効率的且つ使い勝手の良いものとなるように構成されている。まずユーザは接着剤バッキング55を剥がし、注入セット3のベース部材9の下面42の接着パッド10を露出させる。そして、ユーザによる下向きの圧力すなわち貼着力で注入セット組立体1を注入部位に接着することができる。以下でより詳細に説明するように、スライドベース部材5のスライド動作によって針6が傾いて皮膚面の上部3mmの皮内空間に挿入されることで、良好な薬物吸収が促進される。針6が挿入された後には、挿入器2を除去し、適切に処分することが可能となる。必要に応じて、ユーザは、コネクタ12を取り外し、再接続することができる。
【0037】
図4〜
図6に示すように、作動前には注入セットスライド部材8および可動挿入器部材5は、それらの第1位置にロックされる。上述したように、針6は、
図4に示すように、それぞれ、接着パッド10内でくぼんだ位置にあって、ベース部材9の開口部11および43を通して視認可能であるので、
図4に示すように不慮の針刺しが防止され、注入セット3の可視プライミングが可能となる。可動挿入器部材5のラッチアーム68のタブ69は、
図5、
図47および
図48に示すように固定された挿入器部材4の棚63に係合するので、固定された挿入器部材4からの可動挿入器部材の分離が阻止される。さらに作動前には、
図47に示すように、固定された挿入器部材4の可撓性梁64が可動挿入器部材5の可撓性部材72から下方に延在するリブ86に係合しているので、注入セット3の不慮の起動が防止される。従って、可動挿入器部材5が固定された挿入器部材4から引き出されることが防止されるとともに、固定された挿入器部材内に移動することが防止される。
【0038】
さらに、
図4に示すように、注入セット3は、作動前の挿入器2からの脱落が防止される。可動挿入器部材4のロック脚部74および75は、長手方向に延在するベース部材87および88に係合しているので(
図42)、完全に針6が挿入する前に挿入器2が2注入セット3から除去されてしまうことが防止される。内方に延在する保持リブ90および91がコネクタ12の後面89に係合することで、作動前に注入セット3が挿入器2から後退することが防止される。従って、注入セット3は、作動前および針6が完全に挿入されるまでは、挿入器2によって保持される。
【0039】
図6および
図7に示すように、注入セット3は、可撓性部材72を移動させ、および挿入器2をともに圧搾することによって作動する。矢印92で示す方向に、内方に可撓性部材72を押圧することにより、リビングヒンジ73のまわりの可撓性部材72の回転が生じ、それによって挿入器2のロックが解除される。可撓性部材72は固定された挿入器部材4の可撓性梁64と係合して下方を移動させ(
図2の矢印93によって示される)、それによって固定挿入器部材4内への可動挿入器部材5の可撓性部材72の摺動(
図7の矢印94によって示される)が可能となる。
【0040】
図8に示すように、可動挿入器部材5が固定された挿入器部材5内に摺動するとき、可動挿入器部材5はコネクタ12の後面を押す。
図9に示すように、可動挿入器部材5の、内方に延在する保持リブ90および91がコネクタ12に係合して前方に押す。コネクタ12は注入セットスライド部材8に接続され、コネクタ12の前方への移動に伴ってスライド部材8が前方に移動するようになっている。スライド部材9が注入セットのベース部材9内に移動することによって、針6が真皮層に挿入される。
図8に示すように、可動挿入器部材5は部分的に固定挿入器部材4に挿入され、針が部分的に挿入されるようになっている。
図9に示すように、可動挿入器部材5の固定脚部74および75が、固定された挿入器部材9の長手方向に延在するベース部材87および88と依然として係合しており、挿入器2はまだ注入セット3から取り外すことができないようになっている。従って、針6が完全に挿入されるまでは注入セット3からの挿入器2の取り外しが阻止され、それによって、ユーザが誤って部分的にのみ針6を挿入することが防止される。
【0041】
さらに、
図17および
図48に示すように、コネクタタブ82の脚部84および85がスライド部材8の後端24に係合することによって、コネクタタブ82が接続された可動挿入器部材5の前進とともにスライド部材8の前進が一層容易となる。
【0042】
図8および
図9に示すように、可動挿入器部材5の前方への移動によってコネクタ12の前進が生じ、これによって完全に挿入された第2の位置に向う注入セットスライド部材8の移動が生じる。外側レール32および33(
図18〜
図23)は、注入セットの固定部材9の外側チャネル46および47(
図41、
図42および
図44)によって案内される。外側チャネル46および47は、皮膚表面に対する角度α(
図6および
図44)をもってスライド部材8を前方に案内する。好ましくは、角度αは約10度から45度の間のすべてを含めた角度である。より好ましくは、角度αは約20度である。針6は、好ましくは、スライド部材8の傾斜した挿入方向と整列し、針がハブ7の実質的な軸方向に挿入されるようになっている。あるいは、針6を挿入角度αからオフセットされたものとし、針6の挿入方向がハブ7に対して軸方向および半径方向成分の双方を含むようにすることができる。かかる構成では、針6の配向角は、スライド部材8およびハブ7の挿入スライド角度からずれている。
【0043】
係止アーム38および39が注入セットのベース部材9の内側チャネル53および54の端部に当接すると、注入セットスライド部材8の前方への移動が停止する。コネクタ12および可動挿入器部材5の前進もまた、スライド部材8の前進停止によって停止する。このとき、
図10〜
図12に示すように、注入セット3が完全に起動され、針6は角度αをもって完全に注入部位に挿入される。このときスライド部材8および可動挿入器部材5は第2の位置となる。スライド部材8の開口27は、
図10に示すように、スライド部材8が第2の位置に移動したときにベース部材9の下側タブ50を受容し、それによってベース部材9にスライド部材8がロックされることで、挿入された針6の不慮の脱落が防止される。また、スライド部材8のスナップアーム34および35のフック36および37は、ベース部材9の上面44から下方に延在する上側タブ51および52に係合し、スライド部材8がベース部材9に対してさらに固定される。
【0044】
図11に示すように、可動挿入器部材5が第2の位置に到達したとき、可動挿入器部材4のロック脚部74および75は、長手方向に延在するベース部材87および88を越えて移動している。さらに、
ロック脚部74および75の後部95および96が長手方向に延在するベース部材87および88の後部97および98に係合できることで、針6が完全に挿入されるまで、挿入器2の取り外しを防ぐことが容易となる。ロック脚部74および75の後部95および96は、それらが長手方向に延在するベース部材87および88から外れると(clear)、長手方向に延在するベース部材87および88の後部97および98から外れる。従って、このとき挿入器2は、注入セット3に対して上方に挿入器を上昇させることにより、注入セット3から除去され、適切に処分することができる。必要に応じてコネクタ12を取り外し、スライド部材8に接続することができる。上述のようにスライド部材8が恒久的にベース部材9にロックされることによって、セット3がユーザによって取り外されるまで、針6はその皮内注射位置に維持される。
【0045】
角度を付けた針6の挿入は、注入部位を維持する確かな(solid)アンカーを提供する。一般に、短い(すなわち1〜3mmの)針の位置を皮膚内で維持することは非常に困難である。しかし、角度を付けて針6を挿入することにより、皮膚自体が垂直保持力を提供する。従って、挿入された針6は垂直および水平の両方向に固定される。さらに、角度の付いた挿入は、カニューレ開口の垂直方向の高さを低減することにより、注入用の針またはカニューレをより柔軟に選択できるものとなる。また、角度を付けて針6が挿入されるために、同じ皮内深さを目標として傾斜しない挿入を行うために提供されるものよりも、より長い針および/または針の開口を使用することができる。
【0046】
最初に皮膚表面に注入セット組立体1を接着することにより、正確な機械的基礎が提供され、これは、針の角度、皮膚の張り、伸張および/または平坦化、および挿入深さの一貫性を確実にする。さらに、そうすることで、テンティングも低減または排除される。さらに、ポンプ接続部から針部位を離すことにより、振動や動きが低減される。加えて、薄型化(low-profile)が提供され、針6はいかなる外力からも絶縁される。
【0047】
皮下送達システムと比較した場合、皮膚の皮内層に注入することによって、本発明の例示的な実施形態は、インスリンのより良い吸収の可能性を提供する。そうすることで、一般的なユーザは、より少ないインスリン消費およびより良い薬物養生の双方を維持することが可能となり得る。所望であれば、単一の針または微小針の代わりに、複数の針または微小針を使用することができることが理解されよう。
【0048】
ユーザのために確かで固定された基礎を提供し、可動挿入器部材5をスライドさせて針6を傾けて挿入することによって、適切な構成が実現する。このような確かで固定された基礎は、接着層10によって提供される。皮膚接着層は、所要の向きに注入セット3を固定し、針ハブ7および針6が使用時に所要の向きとなるとともに、ユーザが挿入部位に対して様々な角度で注入セット3を保持することが実質的に防止されるようになる。したがって、正確な再現性のある挿入が達成される。
【0049】
また、針ハブの角度は、針の挿入角度と最終配置に影響を与えるために、本発明のこの、または他の実施形態において変更することができる。
図6に示すように、針6は、ハブ7の移動方向と整列している。あるいは、針6は、ハブ7の移動方向からオフセットされたものとすることができる。
【0050】
さらに、本発明の別の例示的な実施形態では、注入セット3は挿入器2なしに作動させることができる。挿入は完全に注入セット3に統合され、ユーザが挿入器を運ぶか、または挿入器に注入セットをロードする必要がないようにされる。統合されたシステムは、挿入器2を運ぶことからユーザがより自由になることを可能にする。このようなシステムおよび方法は、経済的で簡単且つコンパクトであり、装置と一体化されている挿入システムを提供する。従って、ユーザは挿入器2なしで正しくデバイスを挿入することができる。
【0051】
第2の例示的実施形態
本発明の第2の例示的実施形態におけるハブ107が、
図53〜
図60に示されている。ハブ107は、挿入されたカニューレに小さな曲げ半径が生じることを実質的に防止し、それによってカニューレの破損を防ぐ。第2の例示的実施形態の注入セット103は、
図1〜
図52に示した第1の例示的実施形態の注入セット3と実質的に同様であるので、以下では、第1の例示的実施形態と異なっている第2の例示的実施形態の特徴のみを説明する。例えば「1xx」などの100番台を除き、第2の例示的実施形態の特徴を説明するために同様の参照番号が使用される。
【0052】
注入セット103は、
図53に示すように、硬質の中空針106、ハブ107、可動スライド部材108および固定ベース部材109を含む。接着パッドまたはパッチ110は、皮膚表面にベース部材109を固定する。硬質の針106は、スライド部材108に固定的に接続されたハブ107に固定して接続される。スライド部材108は、針106が注入セット103の外部に露出しない第1の位置(
図2)から、針106が注入セット103の外部に露出する
図53に示すような第2の位置まで、固定ベース部材109に対して相対的に移動する。接着パッド110の開口部111は、針106の通過を許容する。コネクタ112は、注入ポンプ(不図示)から注入セット103へのチューブ113を接続する。
【0053】
図53〜
図60に示すように、ハブ107は針106を固定して受容するが、接着など任意の適切な方法で固定を行うことができる。ハブ107のボア119は針106を受容し、接着剤でそこに固定することができる。針106の患者側端114は、ハブ107の第1端115を越えて延在する。ハブ107の第2端117に隔壁116が配されることで、ハブが封止され、針106の非患者側端118の開口部へのアクセスが防止される。隔壁116は、好ましくはイソプレンから作製されるが、任意の適切な材料を用いることができる。コネクタ112は隔壁116を貫通するための梁177を有し、ハブ針116が注入ポンプ(不図示)と流体連通するようになっている。ハブ107は、好ましくは射出成形プラスチックで作製されるが、任意の適切な材料を用いることができる。
【0054】
ハブ107の第1端の遠位面191は、注入部位で皮膚に挿入される針106の長さを制限するためのポジティブストップとして作用する。針106の患者側端114が浅すぎる場合には、注入圧力はポンプの閉塞アラームが発生するレベルにまで高くなり得る。針の患者側端部114が深すぎる場合には、皮内層よりもむしろ皮下層で薬剤の堆積(deposition)が生じ、これにより薬剤の吸収にネガティブな影響を与える可能性がある。係止部として作用するハブ107の遠位面191は、力が注入セット103に作用するときの挿入深さの変動を排除する。例えば、ユーザが注入セットを載せたとき、ハブ107の遠位面191は、固定ベース部材109の開口143に皮膚が押され、針106が体内にさらに押されることを防止する。
【0055】
接着パッド110の接着が失敗した場合、または注入セット103に大きな力が作用した場合には、針106のまわりの皮膚が注入セット103に対して相対移動し得る。この皮膚の動きによって針106が押され(yield)、針106の変形や破損をもたらし得る。
図54、
図56、
図59および
図60に示すように、細長いスロット192がハブ107の下面193に形成され、第1端部115から後方に延在している。ハブ107の下面193に細長いスロット192があることで、針106をハブ107に固定する接着剤接合部(glue joint)などの接着部190がスロット192の端部195の後方に配置され、
図55に示すように挿入部位にさらされることがないようにしている。加えて、接着剤190はハブ107の下面193から離隔している。
図55および
図57に示すように、接着剤190は、針106の非患者側端118とスロット195の後端192との間に配置される。接着剤接合部と皮膚表面との間の針106の部分は自由に撓むので、ハブの移動時に針106が容易に曲がり、針の応力が低減される。好ましくは、針106のこの部分の長さは約0.158インチである。
【0056】
丸みを帯びた突起194が細長いスロット192を囲んでいる。好ましくは、突起部194の丸みは0.020インチ径である。従って、針106がどの方向に曲がっても、針106は丸みを帯びた突起194のまわりで曲がるので、破損する前により多くの曲げサイクルが許容される。すなわち、針に生じる応力は丸みを帯びた突起194によって提供される増加した曲げ半径により実質的に低減されるからである。他の例としては、
図57に示すように、針198は、丸みを帯びた突起194の後方部分199のまわりで後方に曲げられる。例えば、
図58に示すように、針196は丸みを帯びた突起194の側部197のまわりに曲げられる。
図57および
図58には、比較の手段として曲がっていない針106が示されている。従って、丸みを帯びた突起部194は最小0.020インチの曲げ半径を好ましく提供し、それにより針の変形が防止され、針の破損前の曲げサイクルの数が増加する。接着剤190の位置によって提供される針106の屈曲部分は、ハブ107が変位したときに突起194のまわりの針の曲がりを容易にする。曲げ半径の増加は、針106の応力を実質的に低減し、それによってカニューレが損傷するおそれが減少する。挿入された針106の上方への曲がりのためには丸みを帯びた突起がないが、固定ベース部材109の下面193が約10度〜15度を超える曲がりを防止する。
【0057】
第2の例示的実施形態の注入セット103のその他の構造、特徴および動作は、第1の例示的実施形態の注入セット3のものと実質的に同様であり、簡略化のためにその説明を省略する。
【0058】
以上説明した実施形態は皮内注入セットに関連したものであるが、本発明の原理はまた、患者のカニューレが硬質金属導入針に補助されて挿入される軟質プラスチックカテーテルを含んでいる皮下注入セットなど、他のタイプの注入セットにも適用可能である。
【0059】
以上では、本発明の僅かな例示的実施形態のみを説明したが、当業者であれば、本発明の新規な教示および利点から実質的に逸脱することなく、多くの変更が例示的な実施形態において可能であることを容易に理解するであろう。従って、添付の特許請求の範囲およびその均等物に定義されるような本発明の範囲は、すべてのそのような変更を含むことを意図している。